JP2004315610A - グリコール酸系共重合体の組成物 - Google Patents

グリコール酸系共重合体の組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】生分解性を有し、溶融押出や射出成形などの成形性に優れるグリコール酸系重合体からなる組成物を提供すること、及び該組成物を主体とする耐熱性や透明性が優れる成形体を提供すること。
【解決手段】共重合成分が炭素数が3〜5の脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分のグリコール酸系共重合体(A)と、共重合成分が炭素数が6〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分のグリコール酸系共重合体(B)および共重合成分が脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステル成分のグリコール酸系ブロック共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体とからなるグリコール酸系共重合体の組成物であって、これらのグリコール酸系共重合体の組成割合が、グリコール酸系共重合体(A)98重量%以下60重量%以上、グリコール酸系共重合体(B)とグリコール酸系共重合体(C)の合計量が40重量%以下2重量%以上である組成物、及び該組成物を主体とする成形体。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリコール酸系共重合体の組成物とその成形体に関する。更に詳しくは、耐熱性や透明性が優れる成形体の製造を可能にする、成形性に優れるグリコール酸系共重合体の組成物とその成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、押出成形や射出成形などにより製造されるプラスチック製品は、加工時や使用時の利便性ゆえに包装用資材、農業用資材、土木建築用資材、機械装置部品など様々な分野で利用されている。しかし、現在の大量消費社会では、その使用量は年々増加の一途をたどっており、同時にプラスチック廃棄物問題は年々深刻化している。プラスチック廃棄物は、多くは焼却や埋め立てにより処分されているが、近年は環境保全の観点から、回収して再びプラスチック製品の原料として用いるマテリアルリサイクルが提唱されている。
【0003】
食品や医薬品などの包装は、その内容物の輸送や分配の作業を容易にするものであると同時に、品質維持が特に重要な役割である。従って、包装用資材には、品質維持性能の高さが要求される。具体的には、長期保存時に内容物を保護する性能として、衝撃や突き刺しなどの外力に対する機械的強度、内容物の外気酸素による酸化劣化や水分蒸発による乾燥劣化に対するガスバリア性、包装用資材自体が変性や変形しない耐油性や耐熱性などの安定性が挙げられる。また、内容物の認識し易さや、購入者の購買意欲を促すディスプレイ効果によって商品価値を高める為に、包装用資材の要求特性としては透明性も重要な因子である。
【0004】
しかしながら、プラスチック製品の包装用資材としての要求性能は多岐にわたり、単一種類のプラスチックのみではこれら全ての要求を満たすことが出来ず、例えば複合化や多層化など、一般に数種類のプラスチックを組み合わせて用いられている。この様な包装用資材は、各種樹脂への分別が非常に困難であり、コスト面などを考慮するとマテリアルリサイクルは不可能である。
このような状況下、土壌、水中等の自然界で分解する生分解性の樹脂が注目され、包装用資材として研究されている。
【0005】
下記特許文献1には、土壌や海水中の湿った環境下において分解性を有する脂肪族ポリエステルに、脂肪族カルボン酸アミドなどの特定の透明化結晶核剤を添加することにより、透明性/耐熱性/分解性を併有する成形体を得ることが出来ると記載されている。
しかしながら、該特許文献1に記載の脂肪族ポリエステル成形体は、重合体を構成する繰返し単位が乳酸由来である乳酸系重合体からなる組成物を主体とする成形体であり、得られた成形体の耐熱性は不十分であった。尚、該特許文献1には、乳酸系重合体よりも高融点であるために耐熱性がより優れる成形体が得られると予想されるグリコール酸系重合体が脂肪族ポリエステルの一例として記載されているが、本発明者がグリコール酸系重合体に該特許文献1記載の透明化結晶核剤である脂肪族カルボン酸アミドや脂肪族カルボン酸塩を添加して得られた成形体の透明性は不十分であった(後述比較例)。
【0006】
また、下記特許文献2には、融点が150℃以上、融解熱が20J/g以上、無配向結晶化物の密度が1.50g/cm以上であるグリコール酸系重合体を含有する熱可塑性樹脂材料を融点〜255℃の温度範囲で溶融押出しすることにより、強靭でガスバリア性に優れた土中崩壊性を示すシート状成形体が得られると記載されている。
しかしながら、該特許文献2に記載のシート状成形体は、非晶シートを試験片として加熱速度10℃/分で示差走査熱量測定した場合の融解熱が20J/g以上、無配向結晶化物の密度が1.50g/cm以上である結晶性が非常に高いグリコール酸系重合体を含有する熱可塑性樹脂材料から形成されることから、溶融押出し後に急冷し熱固定していない非晶状態のシート状成形体では、耐熱性が劣り長期経時で透明性が悪化するし、熱固定したシート状成形体では、透明性が劣り脆いという問題点があった。
【0007】
更に、該特許文献2に規定されている溶融押出時の加熱温度は255℃までの高い温度範囲であるが、これは用いるグリコール酸系重合体の高度な結晶を十分融解させる為に融点よりもかなり高い温度に設定しなければならないからである。
グリコール酸系重合体は、熱重量分析による重量減少を測定すると240℃から熱分解が始まる(K.Chujo,et al.,Die Makromolekulare Chemie,No.100,P.267(1967))にも係わらず、該公報に規定される255℃までの高い温度範囲の加熱温度で溶融押出する場合には、熱劣化して溶融粘度が著しく低下し溶融押出が困難になったり、褐色に着色して得られるシート状成形体が不衛生な印象を与えるようになるという問題点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−278991号公報
【特許文献2】
特開平10−60137号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生分解性を有し、溶融押出や射出成形などの成形性に優れるグリコール酸系重合体からなる組成物を提供すること、及び該組成物を主体とする耐熱性や透明性が優れる成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、生分解性樹脂のなかでも融点が比較的高いグリコール酸系重合体に特定の生分解性の高分子結晶核剤を含有せしめることによって、熱劣化が起こり難い条件で溶融成形が可能な、成形性が著しく優れる組成物となることを見出し、また該組成物を用いることによって、耐熱性や透明性が優れた生分解性を有する成形体を製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、
[1] 下記グリコール酸系共重合体(A)と、下記グリコール酸系共重合体(B)およびグリコール酸系共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体とからなる組成物であって、これらのグリコール酸系共重合体の組成割合が、グリコール酸系共重合体(A)98重量%以下60重量%以上、グリコール酸系共重合体(B)とグリコール酸系共重合体(C)の合計量が40重量%以下2重量%以上であることを特徴とするグリコール酸系共重合体の組成物、
【0012】
グリコール酸系共重合体(A):グリコール酸由来の繰返し単位と炭素数が3〜5の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位からなる共重合体であって、該共重合体からなる非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm1(℃)、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc1(J/g)、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm1(J/g)が式(1)〜(3)を満たす。
175≦Tm1≦205 (1)
ΔHc1=0 (2)
0≦ΔHm1<20 (3)
【0013】
グリコール酸系共重合体(B):グリコール酸由来の繰返し単位と炭素数が6〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位からなる共重合体。
グリコール酸系共重合体(C):グリコール酸由来の繰返し単位からなるポリグリコール酸セグメントと、炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位および炭素数が2〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位からなるポリエステルセグメントとからなるブロック共重合体であって、且つ該ポリエステルセグメントを構成する脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位および脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位の炭素数の合計が8〜20である。
【0014】
[2] グリコール酸系共重合体(B)およびグリコール酸系共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体が、グリコール酸系共重合体(B)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]記載のグリコール酸系共重合体の組成物、
[3] グリコール酸系共重合体(A)がグリコール酸由来の繰返し単位と乳酸由来の繰返し単位からなる共重合体であることを特徴とする[1]又は[2]記載のグリコール酸系共重合体、
【0015】
[4] グリコール酸系共重合体(B)が、グリコール酸由来の繰返し単位とカプロラクトン由来の繰返し単位からなる共重合体であって、該共重合体からなる非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm2(℃)と融解熱ΔHm2(J/g)が式(4)〜(5)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のグリコール酸系共重合体の組成物、
210≦Tm2≦230 (4)
40≦ΔHm2≦120 (5)
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のグリコール酸系共重合体の組成物を主体とする成形材料を用いて成形してなる成形体、
である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のグリコール酸系重合体の組成物は、生分解性樹脂のなかでも融点が比較的高いグリコール酸系重合体に、生分解性樹脂である透明化高分子結晶核剤を含有せしめたことに特徴がある。
従来の技術の欄に記載の特許文献1において特に好ましい原料として記載されている乳酸系重合体は、不斉炭素を有する乳酸由来の繰返し単位から構成されており、光学純度によって該重合体の融点が著しく変化することが一般に知られているが、光学純度100%のホモポリマーの場合でも融点は175℃程度である(辻秀人・筏義人、「ポリ乳酸−医療・製剤・環境のために−」、第1版、高分子刊行会、1997年9月20日、p.39、図2−27を参照)。これに対し、グリコール酸系重合体は、ホモポリマーの融点は225℃程度であり(同書、p.45)、乳酸とのコポリマーの融点は共重合組成割合によっては乳酸ホモポリマーより高い(同書、P.48)ので、耐熱性がより優れる成形体を得ることができる。
【0017】
また、透明化結晶核剤としては、金属酸化物、無機金属塩、粘土鉱物類などの無機粒子や、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、リン酸エステル金属塩などの非相溶型有機系化合物、ソルビトール骨格を有する相溶型有機系化合物など様々な種類のものが知られているが、これらのうち無機粒子は粒径によっては光散乱を生じて透明性を悪化させたり、金属塩の有機系化合物はグリコール酸系重合体を分解したり、脂肪酸アミドでは透明化結晶核剤としての作用が乏しいという問題があった。本発明者は、特定分子構造の生分解性を有するグリコール酸系共重合体が、グリコール酸系共重合体の透明化高分子結晶核剤としての作用を有し、グリコール酸系重合体を主体とする成形体の透明性を著しく高めることができることを初めて見出した。本発明は該知見に基くものでもある。
【0018】
以下、本発明のグリコール酸系重合体の組成物及び成形体について詳細に説明する。
本発明の組成物の原料として用いるグリコール酸系共重合体とは、主たる繰返し単位がグリコール酸由来の繰返し単位である重合体をいい、単量体にグリコール酸の環状二量体であるグリコリド(1,4−ジオキサ−2,5−ジオン)を用いての開環重合、又はグリコール酸を用いての直接脱水重縮合、例えばグリコール酸メチルなどのグリコール酸エステル類を用いて脱アルコールしながらの重縮合などにより得られる重合体であって、これら単量体と共重合し得る他の単量体とのコポリマーである。尚、ここでいう主たる繰返し単位がグリコール酸である重合体とは、グリコール酸由来の繰返し単位が50mol%以上である重合体をさす。
【0019】
該共重合体の製造方法は、従来公知の一般的な方法で行われ、例えば主たる単量体にグリコリドを用い共重合成分である単量体と開環重合してグリコール酸系重合体を得る、Gildingらの方法(Polymer,vol.20,December(1979))などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
グリコール酸系共重合体(A)は、本発明の成形体の基材となるグリコール酸系共重合体であり、グリコール酸由来の繰返し単位を主たる繰返し単位とし、炭素数が3〜5の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位を共重合成分とする共重合体である。炭素数が6以上であるとグリコール酸系共重合体(A)の融点が低下し耐熱性が劣るものとなる。
【0020】
該共重合成分として用いられる単量体としては、例えば乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、ラクチド等の環状二量体、乳酸メチル等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル類が挙げれ、好ましくは、ラクチドである。
これらの中で好ましいグリコール酸系共重合体(A)の具体例としては、グリコリドとラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン)を用いて開環重合し得られる共重合体、或いはグリコール酸と乳酸を用いて直接脱水重縮合し得られる共重合体が挙げられる。より分子量の高い共重合体を得易いという観点から、グリコリドとラクチドを用いて開環重合し得られる共重合体が特に好ましい。なお、ラクチドや乳酸は光学活性物質でありL−体、D−体のいずれであってもよいし、D,L−体混合物やメソ体であってもよい。
【0021】
共重合体(A)の共重合組成割合は、共重合成分によって一概には言えないが、75〜90mol%が好ましい。例えば、単量体としてグリコリドとラクチドを用いて得られる共重合体である場合には、共重合体中のグリコリド成分割合が78〜90mol%とラクチド成分割合が22〜10mol%である開環重合により得られたグリコール酸−乳酸共重合体が好ましく、より好ましくはグリコリド成分割合が80〜88mol%のグリコール酸−乳酸共重合体である。
【0022】
該共重合体(A)の配列は特に限定されるものではなく、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの何れでも良いが、生分解性ブラスチックの規格、例えば日本における生分解性プラスチック研究会が定める規格、米国におけるASTM D−6400、ドイツにおけるDIN V−54900などに適合するものとする。
【0023】
本発明者は、該共重合体(A)の融点と結晶性が下記の特定の範囲にある場合に限って、成形材料の優れた成形性や、得られる成形体の優れた耐熱性と透明性を同時に併有することを見出した。即ち、該成形材料を成形加工する際に、熱劣化が起こり難い条件で溶融成形が可能であり、温度変化による著しい溶融粘度変化が起こらない優れた成形性と、乳酸系重合体からなる成形体では不可能であった170℃以上の優れた耐熱性と、結晶性が非常に高い場合には必要であった煩雑な急冷操作を経なくても得られる成形体の優れた透明性である。更に、得られた成形体を長期間保管した場合でも、透明性は高いレベルに維持することが可能である。
【0024】
本発明で用いられるグリコール酸系共重合体(A)は、該共重合体の非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において1回目の昇温過程での融点Tm1(℃)、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc1(J/g)、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm1(J/g)が下式(1)〜(3)を満たすことが必要である。
175≦Tm1≦205 (1)
ΔHc1=0 (2)
0≦ΔHm1<20 (3)
【0025】
上記共重合体(A)は、該共重合体の非晶シートを150℃に設定した熱風循環恒温槽中で100分間加熱した結晶化物を試験片として、加熱及び冷却速度が10℃/分の条件で測定した示差走査熱量測定(DSC、JIS K7121準拠)で1回目の昇温過程での融点Tm1が175℃以上205℃以下の範囲内である。該Tm1の値が175℃より高い場合は、該グリコール酸系重合体の組成物を主体とする成形体は耐熱性が十分なものとなる。一方、該Tm1の値が205℃より低い場合は、溶融成形の際の加工温度と重合体の分解温度の差が広くなり成形性が優れるものとなる。より好ましいグリコール酸系重合体は、より優れた耐熱性と成形性を兼備する為には、該Tm1は185℃以上200℃以下の範囲内である。尚、上記示差操作熱量測定において、結晶融解に起因する吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温の吸熱ピーク温度を融点Tm1とする。
【0026】
本発明でいう重合体の結晶性とは、重合体の結晶化し易さを指しおり、結晶化速度や結晶化度を指標として表される。結晶化速度は、過冷却融体から結晶状態に非可逆的に転移するときの速度であり、その目安として熱分析における等速冷却過程での結晶化温度の測定が行われていて、結晶化速度が速い方が結晶化温度は高くなるとされている(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.339、紀伊国屋書店(1995)参照)。
【0027】
一方、結晶化度は、高分子固体における結晶領域の重量分率として定義されており、例えば熱分析法などにより測定される。熱分析法では、一般に理論融解熱ΔHfに対する試験片の実測融解熱ΔHmの比として、結晶化度Xc(%)=ΔHm/ΔHf×100より求められる(日本分析化学会編、新版 高分子分析ハンドブック、p.339、紀伊国屋書店(1995)参照)。該式において、ΔHmは示差走査熱量測定(DSC;JIS K7122準拠)により測定した値を用い、ΔHfはホモポリマーの場合は例えばPOLYMER HANDBOOK(JOHN WILEY & SONS)等に記載の値が用いられている。しかし、ΔHfは、共重合体の場合は共重合成分やその成分割合が多岐に亘るために文献値が無い場合が多い。結晶化度Xcを求める上記計算式では、試験片の実測融解熱ΔHmが大きい方が結晶化度は高くなることを意味していることから、本発明においてはΔHmの値によって結晶性を判断する。
【0028】
上記グリコール酸系共重合体(A)は、該重合体の非晶シートを150℃に設定した熱風循環恒温槽中で100分間加熱した結晶化物を試験片として、加熱及び冷却速度が10℃/分の条件で測定した示差走査熱量測定(DSC、JIS K7122準拠)で1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc1が0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm1が0J/g以上20J/g未満の範囲内である。
【0029】
示差走査熱量測定(DSC)における等速冷却過程で結晶化ピークが現れない場合(結晶化熱ΔHc1=0J/g)は 、試験片の結晶性は、非晶質であり全く結晶化しないか、或いは結晶化速度が遅いためDSCの測定条件(冷却速度10℃/分)では結晶化が起こらないかの二通りが考えられる。該共重合体(A)は、前述のとおりDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tm1が175℃以上205℃以下であるので、非晶質で全く結晶化しない場合とは異なるものであり、DSCの測定条件(冷却速度10℃/分)では結晶化が起こらない結晶化速度を有するものである。該ΔHc1が0J/gである場合には、該共重合体の組成物を主体とする成形材料を用いて溶融成形する際に、急冷操作など特別な非晶化工程は不要となる。
【0030】
一方、上記グリコール酸系共重合体(A)の該ΔHm1の値が0J/gということは、前述の結晶化熱ΔHc1の場合と同様に、該共重合体(A)がDSCにおける1回目の昇温過程での融点Tm1が175℃以上205℃以下であるので非晶質で全く結晶化しない場合とは異なり、DSCの測定条件(昇温速度10℃/分)では結晶化が起こらない結晶化速度であることを意味しており、該共重合体の組成物を主体とする成形体は、長期間保管した場合でも透明性は高いレベルに維持することが可能になる。該ΔHm1の値が20J/g以下の場合は、該共重合体の結晶性が比較的低いために、該重合体の組成物を主体とする成形体は、長期間保管した場合に透明性を高いレベルに維持することができる。より好ましくは、得られる成形体を長期保管した場合により優れた透明性を維持する為に、該ΔHm1の値は0J/g以上18J/g以下の範囲内である。
【0031】
本発明で用いるグリコール酸系共重合体(A)の分子量は、該共重合体(A)を基材とした組成物の成形材料からなる成形体が十分な機械的特性を有する為に、或いは溶融押出や射出成形などの成形加工時に温度変化による著しい溶融粘度変化が起こらず優れた成形性を有する為に、対数粘度数で0.15m/kg以上であることが好ましく、0.18m/kg以上であることがより好ましい。一方、該重合体の分子量の上限は、より容易に成形体に成形加工するためには対数粘度数で0.80m/kg以下に留めることが望ましいが、可塑剤などの添加により溶融流動性を調整すれば良く特に限定されるものではない。
【0032】
対数粘度数[η]は、一般に下式(6)により求められる値であり、濃度0.2%以下の希薄溶液では高分子の分子量の指標として用いられる固有粘度に近似できる(化学大辞典 縮刷版、p.746、共立出版(1963)、及び新版 高分子分析ハンドブック、p.120、紀伊国屋書店(1995)参照)。
[η]={ln(t/to)}/c (6)
(式中、tは毛管粘度計で測定される高分子溶液の流下時間(秒)を、toは毛管粘度計で測定される溶媒の流下時間(秒)を、cは溶質高分子の濃度(kg/m)を示す。)
【0033】
尚、本発明で用いるグリコール酸系共重合体(A)の分子量は、重量平均分子量で表すと5×10以上であることが望ましく、より望ましくは1×10以上である。分子量の上限は、可塑剤などの添加により溶融流動性を調節すれば良く特に限定されるものではないが、重量平均分子量で表すと8×10以下に留めることが望ましい。
【0034】
本発明で用いられるグリコール酸系共重合体(B)は、上記グリコール酸系共重合体(A)の透明化高分子結晶核剤である。本発明者は、該共重合体(B)の共重合成分を特定することによって、上記共重合体(A)の透明化結晶核剤作用を著しく高くすることができることを見出した。即ち、グリコール酸由来の繰返し単位と、共重合成分として炭素数が6〜10、好ましくは6〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位とからなる共重合体である。
【0035】
該共重合成分の単量体としては、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシエナント酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシペラルゴン酸、ヒドロキシカプリン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、これらの環状体、これらの脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル類等が挙げれ、これらの中でもカプロラクトンが好ましい。
本発明において用いられるグリコール酸系共重合体(B)の好ましい具体例としては、グリコリドとε−カプロラクトンなどを用いて開環重合し得られる共重合体、及びグリコール酸とε−オキシカプロン酸などを用いて直接脱水重縮合し得られる共重合体が挙げられる。
【0036】
共重合体(B)の共重合組成割合は、共重合成分の種類にもよることから一概に言えないが2〜40mol%であることが好ましい。例えば、共重合体(B)が単量体としてグリコリドとε−カプロラクトンを用いて得られる共重合体である場合には、共重合体中のグリコリドの成分割合が60〜98mol%とカプロラクトンの成分割合が2〜40mol%である開環重合により得られたグリコール酸−カプロラクトン共重合体が好ましく、より好ましくはグリコリドの成分割合が70〜95mol%とカプロラクトンの成分割合が5〜30mol%である。
【0037】
該共重合体(B)は、著しく高い透明化結晶核剤作用を有するために、該共重合体の非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm2(℃)と融解熱ΔHm2(J/g)が式(4)〜(5)を満たすことが特に好ましい。
210≦Tm2≦230 (4)
40≦ΔHm2≦120 (5)
【0038】
該共重合体(B)は、該Tm2の値が210℃より高く、且つ該ΔHm2の値が40J/gより高い場合は、成形体をなす組成物の基材であるグリコール酸系共重合体(A)の結晶化速度を特に著しく高める透明化結晶核剤作用がある。一方、該Tm2が230℃より高く、且つ該ΔHm2が120J/gより高い場合は、共重合体(B)における炭素数が6〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分が少な過ぎるために、上記共重合体(A)との相溶性が高くなり過ぎ結晶核剤作用が低下する場合がある。
【0039】
本発明で用いられるグリコール酸系共重合体(B)は、その配列は特に限定されるものではなく、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの何れでも良い。また、分子量は特に限定されるものではなく、一般に高分子とみなされる分子量1000以上であれば良い。
グリコール酸系共重合体(C)は、上記グリコール酸系共重合体(B)と同様、上記グリコール酸系共重合体(A)の透明化高分子結晶核剤である。本発明者は、該共重合体(C)の共重合成分を特定することによって、上記共重合体(A)の結晶核剤作用が著しく高いことを見出した。
【0040】
本発明で用いられるグリコール酸系共重合体(C)は、グリコール酸由来の繰返し単位からなるポリグリコール酸由来のセグメントと、炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位、及び炭素数が2〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位からなるポリエステル由来のセグメントとのブロック共重合体であって、且つ該ポリエステル由来のセグメントを構成する脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位の炭素数の合計が8〜20である。好ましくは、共重合体(C)がグリコール酸由来の繰返し単位からなるポリグリコール酸由来のセグメントと、炭素数が4〜8の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位、及び炭素数が4〜8の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位からなるポリエステル由来のセグメントとのブロック共重合体であって、且つ該ポリエステル由来のセグメントを構成する脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位の炭素数の合計が10〜16である。
【0041】
該共重合体(C)のポリエステル由来のセグメントを構成する炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸とは、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸などであり、炭素数が2〜12の脂肪族ジオールとは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどである。好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸の脂肪族ジカルボン酸と、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールの脂肪族ジオールである。
【0042】
該共重合体(C)の好ましい例としては、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールのポリエステルとグリコリドを用いて開環重合し得られるブロック共重合体、及びアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールのポリエステルとグリコール酸を用いて直接脱水重縮合し得られるブロック共重合体である。
共重合体(C)の共重合組成割合は、共重合成分により一概には言えないがポリエステル成分割合が5〜45重量%が好ましい。例えば、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールのポリエステルとグリコリドを用いて得られるブロック共重合体の場合には、該共重合体中のグリコリド成分割合が55〜95重量%であり、ポリエステル成分割合が5〜45重量%であるグリコール酸系ブロック共重合体が好ましく、より好ましくはグリコリド成分割合が55〜95重量%であり、ポリエステル成分割合が10〜30重量%である。
【0043】
本発明で用いられるグリコール酸系共重合体(C)は、その分子量は特に限定されるものではなく、一般に高分子とみなされる分子量1000以上であれば良い。また、ブロック構造は、ポリグリコール酸由来のセグメントからなるブロックをG、ポリエステル由来のセグメントからなるブロックをEで現すと、G−E型、G−E−G型、E−G−E型、G−E−G−E型などが挙げられ、好ましくはG−E型、G−E−G型である。
【0044】
本発明のグリコール酸系共重合体の組成物は、グリコール酸系共重合体(A)と、グリコール酸系共重合体(B)およびグリコール酸系共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体とからなる組成物であり、グリコール酸系共重合体(A)、(B)、(C)の組成割合が、グリコール酸系共重合体(A)60重量%以上98重量%以下、グリコール酸系共重合体(B)とグリコール酸系共重合体(C)の合計量が2重量%以上40重量%以下であることが必要であり、好ましくはグリコール酸系共重合体(A)の組成割合が75重量%以上95重量%以下、グリコール酸系共重合体(B)とグリコール酸系共重合体(C)の合計量が5重量%以上25重量%以下である。
【0045】
また、本発明のグリコール酸系共重合体の組成物は、上記の組成割合を満足する範囲内で、グリコール酸系共重合体(A)と、グリコール酸系共重合体(B)、及びグリコール酸系共重合体(C)から選ばれる少なくとも一種のグリコール酸系共重合体とからなるが、中でもグリコール酸系共重合体(A)とグリコール酸系共重合体(B)とからなるグリコール酸系共重合体の組成物が好ましい。
【0046】
本発明のグリコール酸系重合体の組成物を主体とする成形体は、上述した透明化高分子結晶核剤の他に、透明化結晶核剤として窒化ホウ素系無機粒子などを併用しても良い。例えば、窒化ホウ素系無機粒子は、窒化ホウ素の成分割合が50%以上の無機粒子で、望ましい窒化ホウ素の成分割合は95%以上である。これらは、窒化ホウ素の成分割合が高い無機粒子に、希釈やその他の目的で窒化ホウ素以外の無機粒子を混合した粉末パウダーを用いてもよい。また、粒子形状は球状、針状、円盤状、柱状など特に限定されるものではない。窒化ホウ素系無機粒子以外の無機粒子としては、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの無機金属塩、タルク、マイカ、カオリンなどの粘土鉱物類の無機粒子が挙げられる。上記窒化ホウ素系無機粒子などの粉末パウダーを併用する場合には、その含有量はグリコール酸系共重合体の組成物100重量部に対し0.3重量部未満であることが望ましく、該含有量が0.3重量部を越える場合には、得られる成形品は無機粒子による光散乱が起こり透明性が悪化する場合がある。
【0047】
窒化ホウ素系無機粒子などの上記粉末パウダーは、その平均粒径はレーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が5.0μm以下であることが望ましい。該平均粒径が5.0μmより大きいい場合には、無機粒子による光散乱が多くなり得られる成形体の透明性が悪化する場合がある。
本発明のグリコール酸系共重合体の組成物を主体とする成形体は、その用途によって可塑剤を含有しても良い。
【0048】
成形材料中のグリコール酸系共重合体の組成物の含有量が95重量%程度より多く、可塑剤が5重量%程度より少ない場合は、該成形材料から得られた成形体を硬質な用途で利用することができ、グリコール酸系共重合体の組成物が95〜85重量%程度と可塑剤が5〜15重量%程度の場合は成形体を半硬質な用途で利用することができ、グリコール酸系共重合体組成物が85〜60重量%程度と可塑剤が15〜40重量%程度の場合は比較的優れた強度を保ちつつ軟質な用途で利用することができる。また、グリコール酸系共重合体組成物に可塑剤を含有せしめることにより、該組成物の結晶化速度をより高めることも可能になる。
【0049】
本発明で使用される可塑剤の具体例としては、例えばジオクチルフタレートやジエチルフタレートなどのフタル酸エステル類、ラウリン酸エチルやオレイン酸ブチル、リノール酸オクチルなどの脂肪酸エステル類、ジオクチルアジペートやジブチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、アセチルくえん酸トリブチルやアセチルくえん酸トリエチルなどの脂肪族三塩基酸エステル類、グリセリンジアセテートラウレートやグリセリントリアセテートなどのグリセリン脂肪酸エステル類、ジグリセリンテトラアセテートやテトラグリセリンヘキサアセテートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル類、リン酸ジオクチルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油などの変性植物油類、ポリブチレンセバケートなどのポリエステル系可塑剤などが挙げられ、これらから一種、または二種以上が選ばれる。安全衛生性の観点からグリセリン脂肪酸エステル類や脂肪族三塩基酸エステル類が望ましく、グリコール酸系重合体との相溶性の観点から溶解性パラメーター値(R.F.Fedors,Poly.Eng.Sci.,Vol.14,No.2,p.152(1974))が10(cal/cm0.5以上であるグリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、アセチルくえん酸トリエチルなどが特に望ましい。これらは、水酸基を持たないため、重合体と可塑剤とのエステル交換反応を起こす可能性が少ない。
【0050】
本発明のグリコール酸系重合体の組成物は、必要に応じて無機および/または有機化合物よりなる上記以外の添加剤、例えば、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が適宜含有されていてもよい。使用される酸化防止剤としては、例えばフェノール系、フェニルアクリレート系、リン系、イオウ系などが挙げられ、これらから一種、又は二種以上を選び、添加量が組成物中に10重量%未満含有させることができる。
本発明の成形材料は、その成形材料として上述したグリコール酸系共重合体(A)、(B)、(C)の合計が成形材料全体の50重量%以上、より望ましくは80重量%以上のものである。
【0051】
上述したグリコール酸系共重合体(A)、(B)、(C)以外の原料としては、これらと混合し得るグリコール酸系共重合体以外の生分解性樹脂、例えば、乳酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の重縮合体、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン)や蛛|カプロラクトンなどのラクトン類の開環重合体、エチレングリコールとアジピン酸などの多価アルコール類と多価カルボン酸類の重縮合体などの脂肪族ポリエステル類、この他にデンプン系やセルロース系などの天然高分子類、ポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸類、酢酸セルロースなどのセルロースエステル類、脂肪族ポリエステルカーボネート類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイドなどのポリエーテル類、低分子量のポリエチレン、ポリリンゴ酸等が挙げられる。また、得られる成形体の生分解性を阻害しない範囲であれば、例えば、ポリオレフィン類、芳香族ポリエステル類、ポリアミド類、エチレン−ビニルアルコール系共重合体類、石油樹脂類やテルペン系樹脂類、その水素添加物、その他公知の熱可塑性樹脂などを混合しても良い。
【0052】
本発明のグリコール酸系重合体の組成物の製造は、上述したグリコール酸系共重合体(A)、(B)、(C)、その他添加できる窒化ホウ素系無機粒子などの粉末パウダーからなる透明化結晶核剤、可塑剤、その他の添加剤、その他の熱可塑性樹脂類を、単軸、又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー等を使用して溶融混練させて行うのが望ましい。
本発明でいう成形体とは、例えば溶融押出法、カレンダー法、溶融プレス成形法などにより作製されるフィルム状やシート状の成形体、及びそれらを延伸加工したり、プラグアシスト成形法やエアークッション成形法などの真空成形加工、圧空成形加工、雄雌型成形加工したものなどが挙げられる。本発明において、フィルムとシートの区別は、単に厚みの違いによって異なる呼称を用いているものであり、通常は厚み200μm未満をフィルム状成形体、厚み0.2mm以上をシート状成形体と呼んでいる。その他に、射出成形体、射出成形法で得られたプリフォームを加熱しながら気体を吹き込むブロー成形体、発泡成形体なども挙げられる。
【0053】
本発明の成形体の製造方法は、特に限定されるものではなく従来公知の一般的な方法で行なわれ、具体的に説明すると、例えば溶融押出法では、成形材料を、事前に水分率が200wtppm以下になるまで乾燥させてから押出機に供給して、加熱溶融しながら押出機の先端に接続したダイスから押出し、その後冷却固化させることにより、シート状、若しくはチューブ状の溶融成形物として製造することができる。また、溶融プレス成形法では、前述した成形材料を、事前に水分率が200wtppm以下になるまで乾燥させてから金型に供給して、常圧或いは減圧雰囲気下で加熱溶融させプレスし、その後冷却固化させることにより、シート状の溶融成形物として製造することができる。
【0054】
また、延伸成形体は、シート状、若しくはチューブ状成形体を加熱しながら少なくとも一軸方向に延伸して得られる成形体である。この延伸方法は、特に限定されるものではなく従来公知の一般的な方法で行われ、具体的には、例えば一軸延伸の場合は、溶融押出法でTダイより溶融押出し、キャストロールで冷却したシート状成形物を、ロール延伸機でシートの流れ方向に縦一軸延伸したり、該縦延伸倍率を極力抑えてテンターで横一軸延伸して製造する方法、或いは二軸延伸の場合は、溶融押出法でTダイより溶融押出し、キャストロールで冷却したシート状成形物を、先ずロール延伸機で縦延伸してからテンターで横延伸する逐次二軸延伸や、テンターで縦横両方向に延伸する同時二軸延伸で製造する方法、溶融押出法でサーキュラーダイより溶融押出し、水冷リング等で冷却したチューブ状成形物を、チューブラー延伸して製造する方法などがある。また、溶融プレス法で得られたシート状成形物を、バッチ式延伸装置で一軸或いは二軸延伸する方法などがある。これらの延伸操作は、延伸温度は延伸に供する成形物のガラス転移温度〜(冷結晶化温度+30℃)の温度範囲、延伸速度は10〜200000%/分の範囲、延伸倍率は少なくとも一軸方向に面積倍率で2〜50倍の範囲から適宜選ばれる延伸条件で行なわれることが望ましい。
【0055】
この様にして得られた延伸成形体は、例えば可塑剤を比較的多量添加し引張弾性率が4.0GPa未満である軟質から中質の延伸成形体の場合は、ピロー包装、シュリンク包装、ストレッチ包装、ケーシング、家庭用ラップ等の包装材用途に好適である。熱収縮させながら包装するなどのシュリンク包装用途に利用する場合には、そのまま使用しても良いし、或いは熱収縮具合を調整する目的で熱処理やエージング処理を施しても良い。又、電子レンジなどで加熱され耐熱性が要求される包装材に利用する場合には、発熱した内容物からの熱による変形や溶融穿孔を防ぐ目的で熱処理を施すことが望ましい。更に、経時寸法安定性や物性安定性を向上させる目的で、エージング処理などを施すことが望ましい。熱処理は、通常は60〜160℃の温度範囲から適宜選ばれる温度で1秒〜3時間行われることが望ましく、エージング処理は、通常は25〜60℃の温度範囲から適宜選ばれる温度で3時間〜10日間程度行われることが望ましい。
【0056】
成形体の透明性は、内容物の視認性に優れる透明性を要求される用途に使用される場合には、使用する成形体をサンプルとしてJIS K7105に準拠して測定したヘーズが10%以下であることが望ましく、より望ましくは5%以下である。
得られた成形体は、そのまま家庭用ラップ等の包装材などとして使用しても良いが、必要に応じて帯電防止剤や防曇性を向上させる目的でコーティングやコロナ処理等の各種表面処理を施しても良いし、シール適性、防湿性、ガスバリア性、印刷適性などを向上させる目的でラミネート加工やコーティング加工、或いはアルミニウムなどの真空蒸着を施しても良い。更に、二次加工により、用途に応じた形状に成形して使用しても良い。二次加工品としては、例えば延伸フィルムの場合はピロー包装用途やウェルドタイプのケーシング包装用途などの包装材とするシール加工品があり、延伸シートの場合はプラグアシスト成形法やエアークッション成形法などの真空成形加工、圧空成形加工、雄雌型成形加工を施してトレイやカップなどの容器、又はブリスターパッケージングシートなどがある。
【0057】
また、成形材料に着色剤を適宜混合したり、延伸成形体自体に印刷を施したりして、他シートや発泡体などにラミネートする用途に使用しても良い。この様な用途では、ラミネートした他シートや発泡体を成形して得られるトレイやカップなどの容器のデザイン性を高め、ディスプレイ効果により商品価値を高めることが狙いであるが、ラミネートする延伸成形体の透明性が優れることにより、容器表面のツヤ出しやデザイン印刷が鮮明になるという利点がある。
その他に、ブロー成形法により得られた成形体は、飲料品、或いは洗剤やシャンプーなどの生活衛生用品などのボトルなどに好適である。
【0058】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、これらの具体例は本発明の範囲を限定するものではない。また、物性測定方法と評価方法を下記に示すが、サンプルは特に断りのない限り測定サンプル作製後に温度(23±2)℃、相対湿度(50±5)%の雰囲気下に1〜2日間保管したものを物性測定や評価に供した。
【0059】
[物性測定方法]
(1)示差走査熱量測定(DSC)
融点Tm、結晶化熱ΔHc、融解熱ΔHmは、測定装置にセイコー電子工業(株)製DSC6200を使用し、JIS K7121、及びK7122に準拠して測定した。サンプルは、加熱プレス機(テスター産業(株)製圧縮成形機SA−301)を用いて、原料として用いる重合体の小片をそのまま示差走査熱量測定した際の融解ピーク終了時より約20℃高い温度に設定し、該重合体を5分間約12MPa加圧した後、冷却し厚み約200μmの非晶シートを得て、該非晶シートを150℃に設定した熱風循環恒温槽中で100分間加熱結晶化させて作製した。サンプル量は約7.5mgとして、先ず−20℃で3分間保持した後、加熱速度10℃/分で260℃まで加熱し1回目の昇温過程での融点Tmを測定した。該温度で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−20℃まで冷却し、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHcを測定した。次いで、−20℃で1分間保持した後、再び加熱速度10℃/分で260℃まで加熱し2回目の昇温過程での融解熱ΔHmを測定した。尚、温度と熱量の校正は、標準物質としてインジウムを用いて行った。尚、本発明でいう非晶シートとは、上記手順で作製したシートをサンプルとして、広角X線回折法により回折強度曲線を測定し、該回折強度曲線に結晶に起因する回折ピークが存在しないものを指す。
【0060】
(2)対数粘度数
純溶媒1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(以下HFIPと略記する。)と、グリコール酸系重合体の濃度cが1.0kg/mとなるよう溶解したHFIP溶液をサンプルとして、キャピラリーNo.0aのウベローデ型毛管粘度計(柴山科学器械製作所製 毛細管式自動粘度測定装置SS−170−L1)を使用し20℃で毛管中を流下する時間を測定し、式(4)により対数粘度数[η]を求めた。
[η]={ln(t/to)}/c (6)
(式中、tは毛管粘度計で測定される高分子溶液の流下時間(秒)を、toは毛管粘度計で測定される溶媒の流下時間(秒)、cは溶質高分子の濃度(kg/m)を表す。)
【0061】
[評価方法]
(1)耐熱性
耐熱性は、厚み100μmのシート状成形体をサンプルとして、耐荷重切断試験を行い評価した。耐荷重切断試験は、短冊状試験片に荷重100gをかけた状態で、一定温度に設定した熱風循環恒温槽中で1時間加熱し試験片の切断の有無を調べ、試験片が切断しない最高温度を測定した。サンプルは、加熱プレス機(テスター産業(株)製 圧縮成形機SA−301)を用いて、材料として用いる組成物の小片をそのまま示差走査熱量測定した際の融解ピーク終了時より約20℃高い温度に設定し、該組成物を5分間約12MPa加圧した後、冷却し厚み約100μmの非晶シートを得て、該非晶シートを140℃に設定した熱風循環恒温槽中で1分間熱処理して作製した。サンプルを縦140mm、横30mmの短冊状に切り出した。短冊状試験片の上下端20mmづつの部分に固定治具と荷重治具を各々取り付け、一定温度に設定した熱風循環恒温槽中で1時間加熱し試験片の切断の有無を調べた。短冊状試験片が切断しない場合は、新しい試験片で設定温度を5℃上げて前記手順を繰返し試験した。短冊状試験片が切断しない最高温度の測定結果は、この試験を各サンプルにつき5回づつ行い最頻値で示した。
【0062】
(2)透明性
透明性は、厚み100μmのシート状成形体をサンプルとして、ヘーズを測定し評価した。ヘーズの測定は、測定装置に(株)村上色彩技術研究所製 ヘーズ計HR−100を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。上記耐熱性の評価方法で作製したシート状成形体を、一辺50mmの正方形に切り出し、これをホルダーにセットしサンプルのヘーズを測定した。ヘーズの測定結果は、サンプル数5個づつ測定し、その平均値で示した。
【0063】
[実施例1]
<グリコール酸系共重合体(A)の調製>
グリコリド430gとラクチド270g、及び触媒として2−エチルヘキサン酸すず0.2gとラウリルアルコール0.05gを、内面をガラスライニングしたジャケット付反応機に仕込み、窒素を吹き込みながら約1時間室温で乾燥した。次いで、窒素を吹き込みながら130℃に昇温し、40時間撹拌して重合を行った。重合操作の終了後、ジャケットに冷却水を通水して冷却し、反応機から取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕した。この粉砕物を、テトラヒドロフランを用いて60時間ソックスレー抽出した後、ヘキサフルオロイソプロパノール3kgに50℃で溶解し、次いで7kgのメタノールで再沈殿させた。この再沈殿物を、130℃に設定した真空乾燥機内で60時間真空乾燥を行い、グリコール酸系共重合体(A)550gを得た。得られた該共重合体(A)を樹脂記号PA1とする。
【0064】
得られた共重合体(A)PA1は、該重合体70mgをトリフルオロ酢酸−D1mlに溶解してH−NMRにより共重合成分割合を解析したところ、グリコール酸の成分割合が80mol%と乳酸の成分割合が20mol%であった。前述した物性測定方法に従って対数粘度数を測定したところ、該重合体の対数粘度数[η]は4.2(m/kg)であった。前述した物性測定方法に従って示差走査熱量測定を行なったところ、該重合体の1回目の昇温過程での融点Tm1は188℃、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc1は0J/g、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm1は0J/gであった。
【0065】
<グリコール酸系共重合体(B)の調製>
グリコリド300g、ポリカプロラクトン(ダイセル社製 プラクセルH4)60g、及び触媒として2−エチルヘキサン酸すず0.1gを、内面をガラスライニングしたジャケット付反応機に仕込み、窒素を吹き込みながら約1時間室温で乾燥した。次いで、窒素を吹き込みながら130℃に昇温し、15時間撹拌して重合を行った。重合操作の終了後、ジャケットに冷却水を通水して冷却し、反応機から取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕した。この粉砕物を、テトラヒドロフランを用いて60時間ソックスレー抽出した後、ヘキサフルオロイソプロパノール2kgに50℃で溶解し、次いで4kgのメタノールで再沈殿させた。この再沈殿物を、130℃に設定した真空乾燥機内で60時間真空乾燥を行い、グリコール酸系共重合体(B)280gを得た。得られた該共重合体(B)を樹脂記号PB1とする。
【0066】
得られた共重合体(B)PB1は、該重合体70mgをトリフルオロ酢酸−D1mlに溶解してH−NMRにより共重合成分割合を解析したところ、グリコール酸の成分割合が93mol%とカプロラクトンの成分割合が7mol%であった。前述した物性測定方法に従って示差走査熱量測定を行なったところ、該重合体の1回目の昇温過程での融点Tm2は225℃、融解熱ΔHm2は98J/gであった。
【0067】
<グリコール酸系共重合体(C)の調製>
アジピン酸100g、1,6−ヘキサンジオール80gを、内面をガラスライニングしたジャケット付反応機に仕込み、窒素を吹き込みながら約1時間で150℃に昇温した。その後、窒素気流下で撹拌し、生成する水分を留去しながら1時間に10℃づつ220℃まで昇温し、更に約2時間撹拌した。触媒としてチタンテトラブトキシド0.34gを添加し、0.1kPaまで減圧して約10時間撹拌して重合を行った。重合操作の終了後、ジャケットに冷却水を通水して冷却し、反応機から取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕してジカルボン酸−ジオール単位が繰り返される脂肪族ポリエステルを得た。
【0068】
この得られたポリエステル粉砕物90g、グリコリド300g、及び触媒として2−エチルヘキサン酸すず0.1gを、内面をガラスライニングしたジャケット付反応機に仕込み、窒素を吹き込みながら約1時間室温で乾燥した。次いで、窒素を吹き込みながら130℃に昇温し、15時間撹拌して重合を行った。重合操作の終了後、ジャケットに冷却水を通水して冷却し、反応機から取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕した。この粉砕物を、テトラヒドロフランを用いて60時間ソックスレー抽出した後、ヘキサフルオロイソプロパノール2kgに50℃で溶解し、次いで4kgのメタノールで再沈殿させた。この再沈殿物を、130℃に設定した真空乾燥機内で60時間真空乾燥を行い、グリコール酸系共重合体(C)360gを得た。得られた該共重合体(C)を樹脂記号PC1とする。
【0069】
<溶融混合、シート状成形体の作製、及び評価>
上記重合体の調製で得られたグリコール酸系共重合体(A)PA1を136g、グリコール酸系共重合体(B)PB1を17g、グリコール酸系共重合体(C)PC1を17g各々量り取り、130℃に設定した熱風循環恒温槽中で、含有水分量が200ppm以下になるまで約2時間放置して乾燥操作を行った。この乾燥させたグリコール酸系重合体(A)PA1、(B)PB1、(C)PC1を220℃に設定したニーダー(入江商会社製卓上型ニーダーPBV−0.3型)に供給し、流量10L/分の乾燥窒素を吹き込みながら変速ハンドル目盛りを7に設定(ローター平均回転数38rpm、平均せん断速度約100/秒)して15分間溶融混合した。その後、ニーダーから溶融混合物を直ちに取り出し、冷却プレスにて冷却固化させ板状のグリコール酸系共重合体の組成物を得た。
【0070】
該板状物を、40℃に設定した真空乾燥機中で含有水分量が200ppm以下になるまで約24時間放置して乾燥操作を行った後、前述の耐熱性評価方法に従って熱処理したシート状成形体を作製した。得られた該成形体をサンプルとして、前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は180℃、ヘーズは3%であった。
【0071】
[実施例2、及び比較例1〜3]
次いで、グリコール酸系共重合体(C)PC1を使用せず、グリコール酸系共重合体(A)PA1を153g、グリコール酸系共重合体(B)PB1を17gとすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は190℃、ヘーズは2%であった(実施例2)。
【0072】
ステアリン酸ナトリウム(東京化成工業)を核剤記号N1とする。該核剤N1を0.85g量り取り、40℃に設定した真空乾燥機中で、含有水分量が200ppm以下になるまで約48時間放置して乾燥操作を行った。グリコール酸系共重合体(B)PB1とグリコール酸系共重合体(C)PC1を使用せず、グリコール酸系共重合体(A)PA1を170gとし、乾燥操作を行なった核剤N1とともにニーダーに供給することの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は130℃、ヘーズは3%であった。該成形体は茶褐色への変色が著しく、N1はグリコール酸系共重合体を分解した(比較例1)。
【0073】
m−キシリレンビスステアリン酸アミド(日本化成製スリパックスPXS)を核剤記号N2とする。該核剤N2を0.85g量り取り、40℃に設定した真空乾燥機中で、含有水分量が200ppm以下になるまで約48時間放置して乾燥操作を行った。グリコール酸系共重合体(B)PB1とグリコール酸系共重合体(C)PC1を使用せず、グリコール酸系共重合体(A)PA1を170gとし、乾燥操作を行なった核剤N2とともにニーダーに供給することの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は120℃、ヘーズは20%であった。該成形体は白濁が著しく、N2はグリコール酸系共重合体との相溶性が著しく悪かった(比較例2)。
【0074】
グリコール酸ホモポリマー(三井化学製)を核剤記号N3とする。該核剤N3を17g量り取り、130℃に設定した熱風循環恒温槽中で、含有水分量が200ppm以下になるまで約2時間放置して乾燥操作を行った。グリコール酸系共重合体(B)PB1とグリコール酸系共重合体(C)PC1を使用せず、グリコール酸系共重合体(A)PA1を153gとし、乾燥操作を行なった核剤N3とともにニーダーに供給することの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は120℃、ヘーズは2%であった。N3は、グリコール酸系共重合体(A)PA1と相溶性が良過ぎて、結晶核剤作用を示さなかった(比較例3)。
【0075】
これら実施例1〜2、及び比較例1〜3の評価結果を表1にまとめる。表1によると、グリコール酸系共重合体では、結晶核剤として特定の高分子核剤を用いる場合に限って核剤作用が現れ、得られた成形体の耐熱性と透明性を著しく高めることができる。
【0076】
【表1】
Figure 2004315610
【0077】
[実施例3〜4、及び比較例4]
グリコール酸系共重合体(A)の調製でラウリルアルコールを0.1g、重合時間を15時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体(A)を樹脂記号PA2とする。該共重合体PA2は、共重合成分割合がグリコール酸成分割合80mol%と乳酸成分割合20mol%、対数粘度数[η]が0.17(m/kg)、示差走査熱量測定で融点Tmが189℃、結晶化熱ΔHcが0J/g、融解熱ΔHmが0J/gであった。該共重合体PA2を用いることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は190℃、ヘーズは2%であった(実施例3)。
【0078】
グリコール酸系共重合体(A)の調製でグリコリドを490g、ラクチドを200g、重合時間を30時間とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたグリコール酸系共重合体(A)を樹脂記号PA3とする。該共重合体PA3は、共重合成分割合がグリコール酸成分割合88mol%と乳酸成分割合12mol%、対数粘度数[η]が0.39(m/kg)、示差走査熱量測定で融点Tmが202℃、結晶化熱ΔHcが0J/g、融解熱ΔHmが9J/gであった。該共重合体PA3を用い、ニーダー設定温度を230℃とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は200℃、ヘーズは2%であった(実施例4)。
【0079】
ポリ乳酸(島津製作所製LACTY9400)を樹脂記号PA4とし、グリコール酸系共重合体(A)PA1の代わりにPA4を用い、ニーダー設定温度を200℃とすることの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は135℃、ヘーズは13%であった。該成形体は白濁しており、グリコール酸系共重合体(B)PB1はポリ乳酸との相溶性が悪かった(比較例4)。
【0080】
これら実施例2、3〜4、及び比較例4の評価結果を表2にまとめる。表2によると、グリコール酸系重合体の対数粘度数が大きく、分子量が高い場合には、得られるシート状成形体は機械的特性が優れるものである。
【0081】
【表2】
Figure 2004315610
【0082】
[実施例5〜6]
窒化ホウ素成分割合が98%である平均粒径0.8μmの窒化ホウ素系粒子(電気化学工業社製デンカボロンナイトライドSP−2)を核剤記号N4とする。該粒子N4を0.17g量り取り、40℃に設定した真空乾燥機中で、含有水分量が200ppm以下になるまで約48時間放置して乾燥操作を行った。グリコール酸系共重合体(C)PC1を使用せず、グリコール酸系共重合体(A)PA1を153g、グリコール酸系共重合体(B)PB1を17gとし、乾燥操作を行なった核剤N4とともにニーダーに供給することの他は上記実施例1と同じ実験を繰返し、得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は190℃、ヘーズは2%であった(実施例5)。
【0083】
実施例1と同様に乾燥させたグリコール酸系共重合体(A)PA1(153g)とグリコール酸系共重合体(B)PB1(17g)を220℃に設定したニーダーに供給して、乾燥窒素を通気できるバルブ付き密閉蓋で閉じ、混練しながらニーダー槽内を乾燥窒素で十分置換した。可塑剤としてアセチルくえん酸トリエチル(東京化成工業)を20g量り取り、ニーダー槽内の乾燥窒素通気を止めた後、バルブからシリンジを用いて可塑剤を注入した。実施例1と同様に、15分間溶融混合からシート状成形体の作製操作までを行なった。得られたシート状成形体をサンプルとして前述の耐熱性と透明性の評価を行なったところ、試験片が切断しない最高温度は190℃、ヘーズは2%であった(実施例6)。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、生分解性樹脂のなかでも融点が比較的高いグリコール酸系共重合体に特定の透明化高分子結晶核剤を含有せしめることによって、成形性が優れる成形材料組成物を提供することができ、また該組成物を用いることによって、生分解性を有し、且つ耐熱性や透明性が優れた包装用資材、農業用資材、土木建築用資材、機械装置部品など様々な分野、特に包装用資材用途に好適な成形体を提供することができる。

Claims (5)

  1. 下記グリコール酸系共重合体(A)と、下記グリコール酸系共重合体(B)およびグリコール酸系共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体とからなる組成物であって、これらのグリコール酸系共重合体の組成割合が、グリコール酸系共重合体(A)98重量%以下60重量%以上、グリコール酸系共重合体(B)とグリコール酸系共重合体(C)の合計量が40重量%以下2重量%以上であることを特徴とするグリコール酸系共重合体の組成物。
    グリコール酸系共重合体(A):グリコール酸由来の繰返し単位と炭素数が3〜5の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位からなる共重合体であって、該共重合体からなる非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JISK7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm1(℃)、1回目の冷却過程での結晶化熱ΔHc1(J/g)、2回目の昇温過程での融解熱ΔHm1(J/g)が式(1)〜(3)を満たす。
    175≦Tm1≦205 (1)
    ΔHc1=0 (2)
    0≦ΔHm1<20 (3)
    グリコール酸系共重合体(B):グリコール酸由来の繰返し単位と炭素数が6〜10の脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰返し単位からなる共重合体。
    グリコール酸系共重合体(C):グリコール酸由来の繰返し単位からなるポリグリコール酸セグメントと、炭素数が4〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位および炭素数が2〜12の脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位からなるポリエステルセグメントとからなるブロック共重合体であって、且つ該ポリエステルセグメントを構成する脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位および脂肪族ジカルボン酸由来の繰返し単位の炭素数の合計が8〜20である。
  2. グリコール酸系共重合体(B)およびグリコール酸系共重合体(C)の群から選ばれる少なくとも1種のグリコール酸系共重合体が、グリコール酸系共重合体(B)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のグリコール酸系共重合体の組成物。
  3. グリコール酸系共重合体(A)がグリコール酸由来の繰返し単位と乳酸由来の繰返し単位からなる共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のグリコール酸系共重合体。
  4. グリコール酸系共重合体(B)が、グリコール酸由来の繰返し単位とカプロラクトン由来の繰返し単位からなる共重合体であって、該共重合体からなる非晶シートを150℃で100分間熱処理した試験片を用い、加熱速度および冷却速度が10℃/分で測定した示差走査熱量測定(JIS K7121、及びK7122準拠)において、1回目の昇温過程での融点Tm2(℃)と融解熱ΔHm2(J/g)が式(4)〜(5)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリコール酸系共重合体の組成物。
    210≦Tm2≦230 (4)
    40≦ΔHm2≦120 (5)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のグリコール酸系共重合体の組成物を主体とする成形材料を用いて成形してなる成形体。
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