曰月 糸田 β
Ζ ηθ系化合物半導体発光素子およびその製法 技術分野
本発明は Ζ ηθ系化合物半導体を用い、 高い記憶密度を有する光ディ スクメモリや、 レーザビームプリン夕の高精細化に必要とされる青色領 域で発光可能な半導体レーザや発光ダイォ一ドなどの半導体発光素子お よびその製法、 SAWデバイス、 焦電素子、 圧電素子、 ガスセンサなど の Z ηθ系化合物半導体を用いた素子、 およびそれらの素子を製造する ための Z ηθ系化合物半導体層の結晶成長方法に関する。 さらに詳しく は、 電極をチップの上下両面から取り出せると共に劈開をすることがで きるようにしたり、 Z ηθ系化合物半導体層を結晶性よく成長し、 発光 効率などの素子特性を向上することができる Z ηθ系化合物半導体を用 いた素子、 およびそれらの素子を製造するための Z n 0系化合物半導体 層の結晶成長方法に関する。 背景技術
フルカラーディスプレーや、信号灯などの光源に用いられる青色系(紫 外から黄色の波長領域を意味する、 以下同じ) の発光ダイォード (以下、 L EDという) や、 室温で連続発振する次世代の高精細 DVD光源用な どの青色系半導体レーザ (以下、 LDという) は、 最近サファイア基板 の C面上に G a N系化合物半導体を積層することにより得られるように なり脚光を浴びている。
この構造は、 図 1 4に L Dチップの斜視説明図が示されるように、 サ ファイア基板 2 1上に III 族チッ化物化合物半導体が有機金属化学気相
成長法 (Metal Organic Chemical Vapor Deposition 以下、 MO CV Dという) により順次積層されるもので、 0 & 1^緩衝層2 2、 n形 G a N層 2 3、 A l。.12 G a。.88Nからなる n形クラッ ド層 2 4、 G a N からなる n形光ガイ ド層 2 5、 I nGaN系化合物半導体の多重量子井 戸構造からなる活性層 2 6、 p形 G aNからなる p形光ガイ ド層 2 7、 p形 A 1 Q.2 G a Nからなる p形第 1クラッ ド層 2 8 a、 A l。.1 2 G a。.88Nからなる p形第 2クラッ ド層 2 8 b、 p形 G a Nからなる コンタク ト層 2 9が順次積層され、 積層された半導体層の一部が図 1 4 に示されるようにドライエッチングなどによりエッチングされて n形 G aN層 2 3を露出させ、 その表面に n側電極 3 1、 前述のコン夕ク ト層 2 9上に p側電極 30がそれそれ形成されることにより構成されている。 一方、 Z ηθ系化合物半導体もワイ ドギャップエネルギー半導体で、 C dを混晶させることによりバン ドギヤップエネルギーのナロー化がな され、 同様に青色系の発光をさせ得ること、 S A Wデバイスゃ焦電素子、 圧電素子などに用いられることなどのため、 種々の研究がなされ始めて いる。 そして、 この Z ηθ系化合物半導体も G aN系化合物半導体ゃサ ファイアと同様にへキサゴナル (hexagonal)結晶であり、 格子定数もこ れらと近いため、 G a N系化合物半導体のェビタキシャル成長用基板と して工業的に広く用いられている主面が C面の ( 000 1 ) サファイア が、 基板として考えられている。
この ( 0 00 1 ) サフアイァ基板上への Z n 0系化合物半導体の成長 は、 たとえば 「ルーム一テンパラチヤー ウル トラバイオレッ ト レー ザ ェミ ッショ ン フロム セルフアッセンブル ド Z nO マイ クロ ク リス夕ライ 卜 シン フ イノレムズ ( Room-temperature ultraviolet laser emission from self-assembled ZnO microcrystal 1 ite thin films)j (アブライ ドフ ィ ジックスレ夕一 (Applied Physics Letters)
第 7 2卷 2 5号、 1 9 9 8年 6月 2 2日号、 3 2 70〜 3 2 7 2頁) に も記載されている。
前述のように、 従来の青色系の半導体発光素子では、 基板として C面 を主面とする ( 000 1 ) サフアイァ基板が用いられているため、 基板 に導電性がなく、 積層体の上面と下面に電極が形成される垂直型の素子 (チップの表面と裏面に電極が形成された構造を意味する、 以下同じ) を構成できない。 そのため、 両方の電極を、 積層した半導体層の表面と その一部をエッチングして露出させた下層の半導体層に設けなければな らず、 製造工程が複雑であると共に、 チップのボンディ ングも複雑にな るという問題がある。 しかも、 サファイア基板は非常に硬いため、 劈開 をすることが困難であり、 半導体レーザの光共振器の鏡面として必要な 平坦な端面を形成できないという問題がある。 すなわち、 サファイア基 板は、 良好な単結晶半導体層が得られるのと引き換えに、 製造プロセス 上で素子製作の際に、 加工性や電極形成に難点があることを強いられて レ、る。
さらに、 サファイアの c軸長 c sは 1.2 9 9 1 nmで a軸長 a sが 0. 4754 nmであるのに対して、 Z 11〇の 0軸長0∑は0.5 2 1 3 nm で a軸長 azは 0.3 2 5 nmであるため、 格子不整合度《£は、 ε = (a z— as) /as= - 3 1.6 %と非常に大きくなる。 この場合、 図 1 5に 示されるように、 Z n 0の結晶が 3 0 ° 回転して成長する場合があるが、 その場合でも、 格子不整合度 £は、 ε = ( 2/31/2■ az- as) /as二 — 2 1.1 %と非常に大きい。 そのため、 とくに結晶成長時の基板温度 や、 Z nおよび 0元素の供給量、 基板の表面処理方法や、 傾斜角度など の種々のパラメ一夕が複雑に作用し、 結晶成長面の平坦性の再現性に乏 しいという問題がある。
また、 サファイアと Z n〇とで格子定数が整合しないため、 前述のよ
うに、 Z n 0が 3 0 ° 回転して成長する場合があり、 回転しない結晶と 3 0 ° 回転する結晶とが混在して、 一層結晶成長面の平坦性の再現性が 乏しいという問題がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、 本発明の 第 1の目的は、 Z η θ系化合物半導体を用い、 チップの表裏両面から電 極を取り出すことができる垂直型で、 かつ、 半導体層の結晶性が優れて 発光効率が高いと共に、 基板にサファイア基板を用いないで製造プロセ スおよび使用面で便利な構造となる L E Dや L Dなどの半導体発光素子 を提供することにある。
本発明の第 2の目的は、 シリコン基板上に Z n 0系化合物半導体を結 晶性よく成長するためにとくに適したシリコン基板の表面処理を含む半 導体発光素子の製法を提供することにある。
本発明の第 3の目的は、 サファイア基板を用いても、 結晶性の優れた Z η θ系化合物結晶層が得られ、 素子の特性を向上させた半導体発光素 子などの Z η θ系化合物を用いる素子を提供することにある。
本発明の第 4の目的は、 サファイア基板を用いながら結晶性の優れた Z η θ系化合物結晶層を得ることができる Z n 0系化合物の結晶成長方 法を提供することにある。
本発明の第 5の目的は、 サファイア基板を用いながら結晶性の優れた Z η θ系化合物半導体を用い、 発光特性の優れた L E Dや L Dなどの半 導体発光素子を提供することにある。 発明の開示
本発明者らは、 前述のようにサフアイァ基板上に Z η θ系化合物半導 体を成長することの不便さを解消し、 第 1および第 2の目的を達成する ため、 大口径で取り扱いやすいシリコン基板を用いて Z η θ系化合物半
導体を成長すべく鋭意検討を重ねた。 その結果、 シリコン基板上に直接 Z η θ系化合物半導体を成長しょうとしても、 Z η θ系化合物がァモル ファス化してしまって結晶性のよい半導体層を得ることができない理由 が、 Z η θ系化合物を成長するために導入するラジカル酸素により、 Z η θ系化合物半導体が成長する前に、 まずシリコン基板の表面が強烈に 酸化されてァモルファス化することにあり、 シリコン基板の表面にチヅ 化処理を施して薄いチヅ化膜を形成しておくことにより、 シリコン基板 表面の酸化が防止されて、 結晶性の優れた Z n 0系化合物半導体層を成 長することができ、 発光特性の優れた半導体発光素子が得られることを 見出した。
第 1の目的を達成するための本発明による半導体発光素子は、 シリコ ン基板と、 該シリコン基板の表面に設けられるシリコンチッ化膜と、 該 シリコンチッ化膜上に設けられ、 Z η θ系化合物半導体からなる n形層 および P形層を少なく とも有し、 発光層を形成すべく積層される半導体 積層部とを含んでいる。
ここに Z n O系化合物半導体とは、 Z nを含む酸化物、 具体例として は Z η θの他 I I A族元素と Z nまたは I I B族元素と Z nまたは I I A族元 素および I I B族元素と Z nのそれそれの酸化物であることを意味する。 以下の発明においても同じである。
この構造にすることにより、 シリコン基板の表面にシリコンチッ化膜 が形成されているため、 Z η θ系化合物半導体層を成長するためのラジ カル酸素が導入されても、 シリコン基板の表面が酸化して荒らされるこ とがなく、 その表面に成長する Z n 0系化合物半導体層も結晶性よく成 長する。 その結果、 結晶性のよい半導体積層部が得られ、 優れた発光特 性を有する半導体発光素子が得られる。
前記シリコンチッ化膜の表面がァモルファス化しないで平坦面に形成
されていることが、 その上に成長される Z n〇系化合物半導体層の結晶 性が一層良好になるため好ましい。
ここにシリコンチッ化膜の表面が平坦面に形成されるとは、 表面がァ モルファス化して凹凸が激しくならないで、 格子配列が認識し得る程度 の表面状態をいい、 たとえば反射高エネルギー電子回折法 (R H E E D 法; 1 0 ~ 5 0 kVで加速された電子ビームを基板表面に浅い角度 ( 1 〜2 ° 以下) で入射させ、 表面原子によって反射回折された電子ビーム を蛍光スクリーンに投影して結晶の表面状態を調べる方法) により、 ス トリークの状態から点状(spotty)の像が現れる程度の状態を意味する。 前記シリコンチッ化膜が、 1 0 nm以下の厚さに形成されていること が、 シリコンチッ化膜の表面が多結晶化しないで、 平坦な面になりやす いため好ましい。
前記半導体積層部が、 C d x Z ri i -χ Ο ( 0 ≤x < 1 ) からなる活性 層を、 M g y Z n y O ( 0 ≤ y < 1 ) からなり前記活性層よりバン ド ギヤップエネルギーの大きいクラッ ド層により挟持するダブルへテロ構 造を有することにより、 Z η θ系化合物半導体を用い、 発光特性の優れ た L E Dや L Dが得られるため好ましい。
第 2の目的を達成するための本発明による半導体発光素子の製法は、 シリコン基板をチッ素が存在する雰囲気下で熱処理することによりシリ コン基板の表面にシリコンチヅ化膜を形成し、 該シリコンチッ化膜上に Z η θ系化合物半導体からなり発光層を形成する半導体積層部を成長す ることを特徴とする。
この方法を用いることにより、 シリコン基板の表面に酸化を防止する チッ化膜が形成されながら、 表面が多結晶化しないで、 シリ コン基板の 結晶面を維持することができ、 その表面に結晶性の優れた Z η θ系化合 物半導体を成長することができると共に、 シリコンチッ化膜が非常に薄
く形成され、 シリコン基板と半導体積層部との間の導電性が分断されな い。
前記シリコンチッ化膜を形成する処理を、 形成されるシリコンチッ化 膜の表面がシリコン基板の平坦面を維持できるように該処理の温度また は時間を制御しながら行うことが、 多結晶化を防止することができて好 ましい。 すなわち、 たとえば 6 5 0 °Cでチッ化処理を行う場合、 5〜 1 0分程度、 さらに好ましくは 7分程度でチッ化処理を行うと優れた結晶 性の Z n O系化合物半導体層が得られるが、 1 5分程度行うと表面が多 結晶化し、 その上に成長される Z n O系化合物半導体も多結晶化して結 晶性のよい Z n O系化合物半導体層が得られない。また、 8 0 0 °Cでチッ 化処理を行う場合、 3分程度の処理時間でも、 優れた結晶性の Z n O系 化合物半導体層が得られ、 逆にチッ化処理の温度を低くすると、 処理時 間を長くするほうが好ましい。 これらの条件は、 たとえば前述の R H E E D法によりシリコンチッ化膜の表面状態を検査することにより、 シリ コンチッ化膜の表面が平坦面になるように、 条件設定をすることができ る。
さらに第 3ないし第 5の目的を達成するため、 本発明者らは、 サファ ィァ基板上に Z n O系化合物結晶層を成長するのに、 格子欠陥が少なく 結晶性のよい Z n O系化合物層を成長すべく鋭意検討を重ねた。 その結 果、 サファイアの A面など、 C面と直交する面を主面とする基板表面に Z n 0系化合物層を成長することにより、 非常に結晶性に優れ、 発光特 性など素子特性の優れた素子が得られることを見出した。
第 3の目的を達成するための本発明による Z n O系化合物層を有する 素子は、 サファイア基板の C面と直交する面を主面とするサフアイァ基 板と、 該サファイア基板の前記主面上にェピタキシャル成長された Z n 0系化合物層とを有している。
ここにサファイア基板の C面と直交する面とは、 サファイアの A面の 他にその A面が C面内で回転する面のように、 C面と直角に交わる面を 意味し、 直交 (直角) には、 通常の基板製作仕様上許容される ± 0 . 5 ° 以内のものを含む意味である。
この構造にすることにより、 サファイア基板の c軸方向と直角方向に Z n 0系化合物層が成長するため、 サファイアの c軸に沿って Z n Oの a軸が並んで成長する。 その結果、 c軸長 ( 1 . 2 9 9 1 n m ) に沿つ て Z η θ系化合物 4個分の結晶の a軸長 ( 0 . 3 2 5 n m ) が並び、 結 晶の整合度が 0 . 0 7 %程度と非常によくなり、 優れた結晶面が得られ るものと考えられる。
前記サフアイァ基板の主面が A面であれば、 サフアイァ基板が容易に 得られやすいため好ましい。
第 4の目的を達成するための本発明による Z η θ系化合物層の結晶成 長方法は、 サフアイァ基板の c軸と前記 Z n 0系化合物層の c軸とが直 交するように前記 Z n 0系化合物層をェビタキシャル成長するものであ る。
第 5の目的を達成するための本発明による半導体発光素子は、 サファ ィァ基板の C面と直交する面を主面とするサファイア基板と、 該サファ ィァ基板の前記主面上にェビタキシャル成長された Z n 0系化合物半導 体からなる n形層および p形層を少なく とも有し、 発光層を形成すべく 積層される半導体積層部とを含んでいる。 前記 C面と直交するサフアイ ァ基板の主面としては、 たとえば A面を用いることができる。
前記半導体積層部が、 C d x Z n 1 -x 0 ( 0≤x < 1 ) からなる活性 層を、 M g y Z n 1 -y 〇 ( 0≤y < 1 ) からなり前記活性層よ りバン ド ギヤップエネルギーの大きいクラッ ド層により挟持するダブルへテロ構 造を有することにより、 Z n 0系化合物半導体を用い、 発光特性の優れ
た L E Dや L Dが得られるため好ましい。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明による半導体発光素子の一実施形態である L E Dチッ プの斜視説明図である。
図 2は、 シリコン基板表面のチッ化処理の温度と時間による好ましい 条件の関係を示す図である。
図 3は、 R H E E D法による基板表面の検査方法の説明図および観察 される基板表面の回折像の説明図である。
図 4は、 本発明による半導体発光素子の他の実施形態を示す断面説明 図である。
図 5は、 本発明による半導体発光素子のさらに他の実施形態を示す断 面説明図である。
図 6は、 本発明のさらに他の実施形態である A面サファイア基板上に Z η θ層を成長した状態の断面説明図である。
図 7は、 サファイア単結晶の代表的な面方位の説明図である。
図 8 ( a ) は、 本発明による A面を主面とするサファイア基板上に成 長した Z η θ層の X線の反射像によるポールフィギュア図、 図 8 ( b ) は、 C面を主面とするサファイア基板上に成長した同様の図である。 図 9は、 本発明による A面を主面とするサファイア基板上に成長した Z n O層のフォ トルミネヅセン トスペク トル (A ) を、 C面を主面とす るサファイア基板上に成長したもの (C ) と対比して示した図である。 図 1 0は、 本発明によりサファイアの A面上に Z n◦を成長させたと きの、 Z n 0結晶の配向状態の説明図である。
図 1 1は、 A面サファイア基板を用いた本発明による半導体発光素子 の一例である L E Dチップの説明図である。
図 1 2は、 A面サフアイァ基板を用いた本発明による半導体発光素子 の他の例である L Dチップの説明図である。
図 1 3は、 A面サフアイァ基板を用いた本発明による半導体発光素子 のさらに他の例である L Dチップの説明図である。
図 1 4は、 従来の G a N系化合物半導体を用いた L Dチップの一例の 斜視説明図である。
図 1 5は、 サフアイァの C面上に C面が平行になるように Z n 0を成 長したときの結晶配向の説明図である。 発明を実施するための最良の形態
つぎに、 図面を参照しながら本発明のシリコン基板を用いる半導体発 光素子およびその製法について説明をする。
シリコン基板を用いる本発明の半導体発光素子は、 図 1にその一実施 形態である L E Dチップの斜視説明図が示されるように、 シリコン基板 1の表面にシリコンチッ化膜 2が設けられており、 そのシリコンチヅ化 膜 2上に Z n 0系化合物半導体からなる n形層 3、 4および p形層 6、 7を少なく とも有し、 発光層を形成するように半導体積層部 1 1が積層 されている。
前述のように、 本発明者らは、 シリコン基板上に Z η θ系化合物半導 体を結晶性よく成長するために鋭意検討を重ねた結果、 シリコン基板上 に直接 Z η θ系化合物半導体を成長しょうとすると、 Z n O系化合物半 導体の材料であるラジカル酸素が、 最初にシリコンと激しく反応して、 表面がアモルファス状になり凹凸が形成され、 それが原因で結晶性のよ い Z η θ系化合物半導体層が得られないことを見出した。 そして、 シリ コン基板の表面をまずチッ化処理して、 基板表面のダングリングボン ド の S iと Nとを化合させ、 シリコンチッ化膜を表面に薄く形成すること
により、 結晶性の優れた Z n 0系化合物半導体をその上に成長すること ができることを見出した。
このシリコンチッ化膜は、チッ素ガスまたはアンモニアガスなどのチッ 素が存在する雰囲気下で熱処理をし、 シリコン基板の表面にチッ化膜を 形成することにより好ましい結果が得られたが、 チッ化処理をし過ぎる とかえつてその上の Z η θ系化合物半導体が多結晶化して結晶性の優れ た Z η θ系化合物半導体を得ることができなかった。
すなわち、 シリコン基板 1 を洗浄処理して M B E ( Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシー) 結晶成長装置に入れ、 たとえば ^^ 113 ガ スを R F電源にてプラズマ励起した状態で、 M B E結晶成長装置に導入 し、 シリコンチッ化膜 2を形成する処理温度と処理時間を種々変化させ たときの、 その上に成長される Z n 0系化合物半導体層の膜質の状態を 調べた。 その検査結果が表 1に示されるように、 6 5 0 °Cの熱処理を 7 分間行うと非常に膜質がよく (二重丸) 、 5分から 1 0分行った場合は、 良好な Z η θ系化合物半導体層の膜質が得られる (白丸) が、 同じ温度 で 1 5分間熱処理を行うと Z n 0系化合物半導体層がアモルファス化し て好ましくなかった ( X印) 。 また、 8 0 0 °Cで 3分間のチヅ化処理を 行った結果、 同様に Z η θ系化合物半導体層の良好な膜質が得られた。
表 1 チッ化処理の温度と時間に対する膜質の状態
この関係を図 2に示すと、 良好な膜質が得られる範囲としては、 当然 低い温度では処理速度が遅いため、長い処理時間で同様の膜質が得られ、 図 2の実線で囲まれる範囲 Pの条件で処理を行うことにより、 良好な膜
質のシリコンチッ化膜が得られ、 その上に成長される Z n 0系化合物半 導体層も良好な膜質が得られることが想定される。
この膜質の検査は、 図 3 ( a ) に示されるように、 一般に M B E装置 に装備されている反射高エネルギー電子回折法 (R H E E D法) と呼ば れる方法、 すなわち電子銃 5 1により 1 0〜 5 0 k Vで加速された電子 ビーム 5 2を基板 5 3表面に浅い角度 ( 1〜 2 ° 以下) 0で入射させ、 表面原子によって反射回折された電子ビーム 5 4を蛍光スク リーン 5 5 に投影して結晶の表面状態を調べる方法を用い、 電子の加速電圧を 2 0 k Vで行った。 この方法により行うことにより、 電子ビームの入射、 反 射、 回折ビームの計測が浅い角度で行われるため、 ほぼ基板 5 3に垂直 な方向から行われる分子線の供給に影響を与えないで、 成膜しながら測 定することができる。
この回折像としては、 基板表面が結晶構造であると直線または帯状の 明暗 (ス トリーク状の像) が現れるが、 基板表面に凹凸が現れてアイラ ンドが形成されると、 これらのアイラン ドを透過回折した電子ビームの 寄与が大きくなり、 ス ト リーク状の像は消失して点状 (spotty) の像が 現れる。 さらに表面が多結晶体になると、 スポッ トが消失してリング状 の回折像が得られる。 これは微結晶の方位がランダムに分布しているこ とによって生じる。 さらに表面がアモルファスになると、 原子配列の周 期性がなくなり、 したがって回折条件は満たされなくなり、 R H E E D 線は一様な強度の帯状 (ハロー) になる。 したがって、 この測定により シリコンチッ化膜 2の表面状態を観察しながら、 その上に成長される Z n 0系化合物半導体の膜質を同様に調べることにより、 両者の間の相関 性が得られる。
この表面状態の測定を行いながら、 シリ コン基板 1の表面のチッ化処 理をまず行うと、 最初はシリコン基板の表面に酸化膜が形成されている
ため、 表面の平坦性はなく、 図 3 ( c ) に示されるようなリ ング状の回 折像が得られる。 この状態で、 前述の NH3ガスを R F電源にてプラズ マ励起した状態で MB E装置のチャンバ一内に導入し、 ホルダー(基板) を 6 5 0 °C程度に昇温すると、 シリコン基板 1の表面の酸化した酸素が 還元されて除去され、 表面状態は図 3 (b) に示されるように、 点状の 像が現れる。 この状態で保持すると、 表面の酸素が除去されてダングリ ングボンドになった S iと Nとが化合してシリコンチッ化物が形成され、 チッ化処理が続くが、 1 0 nm程度以下のチッ化膜 2の厚さでは、 回折 像は前述の点状の像が維持される。 しかし、 1 0分より長くチッ化処理 を続けると、 点状の像がぼやけ、 1 5分程度行うと、 再度図 3 ( c ) に 示されるようなリング状の像になる。
すなわち、 前述の良好な膜質が得られるのは、 図 3 (b) に示される ようなスポッ ト状の回折像が得られる状態からやや点状の像がぼやける 状態の平坦性のあるチッ化膜の状態に Z n 0系化合物半導体が成長され る場合で、 図 3 ( c ) に示されるようなリング状の回折像になると、 チッ 化処理のし過ぎで、 表面状態の凸凹が顕著となり、 その状態では、 その 上に成長される Z ηθ系化合物半導体の結晶性が低下する。 従って、 表 面がアモルファス化して凹凸が激しくならないように、 平坦性を維持す るチッ化処理を行うことにより、 良好な Z ηθ系化合物半導体の膜質が 得られる。
シリコン基板 1は、 通常の I Cなどに用いられる、 たとえばリン ( P ) ドープの n形シリコン基板 ( 1 1 1 ) を用いることができる。 しかし、 ボロン (B) などを ド一プした p形基板や面方位が ( 1 00 ) のもので もよい。 このシリコン基板 1は、 予め、 アセ トン、 メタノールおよび純 粋による超音波洗浄などの有機洗浄と、 希釈フッ酸による表面酸化膜の ライ トエッチングからなる基板洗浄が行われる。
シリコンチヅ化膜 2は、 前述のように、 チッ素が存在する雰囲気下で 熱処理をすることにより形成することが、 シリコン基板 1の表面が多結 Bやアモルファス状態にならない状態で形成しやすいため好ましい。 のチッ化処理は、 前述のように MB E装置である必要はないが、 その表 面状態を観察しながら処理を行う場合は、 MB E装置であれば、 前述の ように R H E E D法により観察をしながら処理をすることができるため 好ましい。 また、 チッ素が存在する雰囲気にするのに、 前述の例では、 アンモニアガスをプラズマ励起して使用したが、 N2ガスをプラズマ励 起することもでき、 また N 02を使用することもできる。 このシリコン チッ化膜 2は、 前述のように多結晶状態にならず、 平坦面が得られる状 態になるように処理される。 すなわち、 厚さで 1 0 nm以下、 さらに好 ましくは 5 nm以下の厚さになるように形成される。そのための条件は、 処理温度と処理時間で調整され、 温度が高ければ短時間で、 低い温度で あれば比較的長い時間の処理により得られる。
半導体積層部 1 1は、 図 1に示される例では、 G aを ドープした n形 Z nOからなるコンタク ト層 3が 1 m程度、 同じく G aを ド一プした Mgy Z nx_yO ( 0≤y < 1 , たとえば y= 0.1 5 ) からなる n形ク ラッ ド層 4力 s 0.2 m程度、 C d x Z nい xO ( 0≤x < 1、かつクラッ ド層よりバンドギヤップエネルギーが小さくなる組成、たとえば X = 0. 08 ) からなる活性層 5が 0. 1〃m程度、 G aおよび Nを同時ドープ した MgyZ r^— yO ( 0≤y< 1 , たとえば y= 0.1 5 ) からなる p 形クラッ ド層 6が 0.2〃m程度、 G aおよび Nを同時 ド一プした Z n 0からなる p形コンタク ト層 7が 1 m程度、 それそれ積層されること により、 ダブルへテロ構造の発光層形成部を有する半導体積層部 1 1に なっている。 これらの半導体層は、 前述の MB E装置でチッ化処理に引 き続き成長される。 なお、 活性層 5は、 非発光再結合中心の形成を避け
るため、 ノン ドープであることが好ましい。また、 n形および p形クラッ ド層 4、 6は、 活性層 5よりバン ドギャップが大きく、 キャ リアを活性 層 5内に有効に閉じ込める効果を有するように形成されている。
半導体積層部 1 1上には、 電流を拡散させるための、 たとえば I T O 膜からなる透明電極 8が 0.2 //m程度成膜されており、 その表面の一 部に N i/A 1または N i /Auなどの積層体からなる p側電極 1 0が リフ トオフ法などにより、 また、 シリコン基板 1の裏面には、 T i/A 1または T i/A uなどの積層体からなる n側電極 9が真空蒸着などに より全面に形成されている。
つぎに、 この L EDの製法について説明をする。 たとえば MB E装置 内にシリコン基板 1をセッティングし、 基板 1の温度を 6 5 0 °C程度に し、 N H 3ガスを流量 0.6 s c c mで導入し、 出力 3 0 0 W程度の高 周波電源にてプラズマ励起した状態でチヤンバー内に導入する。 この程 度の流量にすることが、 プラズマ励起光が強く得られるため好ましい。 そして、 7分程度チッ化処理を行う。
つぎに、 基板 1の温度を 3 00 ~ 4 5 0 °C程度にし、 プラズマ酸素の 照射条件下において、 Z nのソース源 (セル) のシャッターを開け、 Z nを照射すると共に、 n形ドーパン 卜の G aのシャッ夕一も開けて n形 の Z nOからなる n形コンタク ト層 3を 1〃m程度成長させる。ついで、 さらに M gのソース源 (セル) のシャッターも開け、 M g。 . i 5 Z n。 .85 0からなる n形クラッ ド層 4を 0.2〃m程度成長する。
つぎに、 活性層 5を成長するため、 M gセルおよびドーパントの G a セルを閉め、 C dソースメタルのセルのシャッターを開いて C dを照射 し、 C d。.08 Z n。.y 20を 0. 1 m程度成長する。 ついで、 C dのセ ルのシャツ夕一を閉め、 再度 M gのセルおよび G aのセルを開け、 さら に p形ドーパン トとしてのプラズマ励起 を導入する。 G aは n形ドー
パン 卜であるが、 プラズマ励起 N 2と同時ドービングをすることにより、 効果的に p形化できるため、 同時に ドーピングしている。 そして、 M g 0. 1 5 Z n。.8 5 0からなる p形クラッ ド層 6を 0 . 2〃m程度成長し、 同 様に同時ドーピングをして P形 Z n〇からなる p形コンタク ト層 7を 1 / m程度成長することにより半導体積層部 1 1を成長する。
その後、 M B E装置よりェビタキシャル成長がされたウェハを取り出 し、 たとえばスパッ夕装置に入れて I T 0膜を成膜し、透明電極 8を 0 . 2〃m程度の厚さに設ける。 その後、 基板 1の裏面を研磨し、 1 0 0〃 m程度の厚さとし、 真空蒸着などにより基板 1の裏面に T i /A 1など からなる n側電極 9を全面に、 I T 0膜 8上の一部に T i / A 1などか らなる P側電極 1 0をたとえばリフ トオフ法などにより、 それそれ 0 . 2 m程度づっ形成する。 その後ウェハからチップ化することにより、 図 1に示される L E Dチップが得られる。
本発明のシリコン基板を用いた半導体発光素子によれば、 シリコン基 板の表面にチッ化シリ コン膜が設けられ、 その上に Z n◦系化合物半導 体層が積層されているため、 Z n 0系化合物半導体層が結晶性よく成長 されており、 シリコン基板を用いた青色系の半導体発光素子が、 サファ ィァ基板上に成長するのと同様の高い発光効率で得られる。 すなわち、 従来はシリコン基板上に Z n 0系化合物半導体を成長しても、 膜質が悪 く、 非発光再結合中心が多いため、 発光効率が非常に悪かったが、 本発 明により、 シリコン基板を用いた青色系の半導体発光素子が得られた。 一方、 チッ化シリコン膜は 1 0 n m以下と非常に薄い層であり、 上下 の導電性半導体層に挟まれることにより、 殆ど電圧降下をすることなく 導通性を有する。 その結果、 チップの上下から p側電極および n側電極 をそれそれ取り出すことができる垂直型の発光素子となり、 電極形成の ための積層された半導体層の一部をエッチングする必要がなくなり、 非
常に製造工程が簡略化すると共に、 発光素子をマウン 卜する場合に両電 極をワイヤボンディングしないで、 一方はダイボンディ ングにより直接 電極を接続することができてワイヤボンディ ングを減らすことができ、 使用面でも非常に便利になる。
さらに、 後述するような LDを形成する場合に、 光共振器の端面を鏡 面にすることが好ましいが、 シリコン基板上に立方晶の半導体層が積層 されることにより、基板から半導体積層部が立方晶により整列するため、 サファイア基板と比べて、 劈開をすることが容易であり、 光共振器の端 面を劈開面で形成することができる。 その結果、 発振特性の優れた青色 系の半導体レーザを得ることができる。
前述の例は、 L EDの例であつたが、 L Dであっても同様である。 こ の場合、 半導体積層部 1 1が若干異なり、 たとえば図 4に断面説明図が 示されるように、 活性層 1 5はノン ド一プの C d。.03 Z n。.97O/C d。.2 Z n。.80からなるバリア層とゥエル層とをそれぞれ 5 nmおよ び 4 nmづっ交互に 2〜 5層づっ積層した多重量子井戸構造により形成 することが好ましい。 また、 活性層 1 5が薄く充分に光を活性層 1 5内 に閉じ込められない場合には、たとえば Z ηθからなる光ガイ ド層 14、 1 6が活性層 1 5の両側に設けられる。
また、 図 4に示される例では、 電流狭窄層 1 7を埋め込む SAS型構 造の L Dチップの例で、 p形 Mg。.15 Z n。.8 5〇からなる p形第 1ク ラッ ド層 6 aの上に、 たとえば n形 M g 0.2 Z n。 .80からなる電流狭 窄層 1 7が 0.4〃m程度設けられ、 一旦結晶成長装置からウェハを取 り出し、 表面にレジス ト膜を設けてス 卜ライプ状にパ夕一ニングをし、 NaOHなどのアル力リ溶液により電流狭窄層 1 7をストライプ状にエツ チングして、 ス トライプ潢 1 8が形成され、 再度 MB E装置にウェハを 戻し、 p形 M g。 . , 5 Z n。 .850からなる p形第 2クラッ ド層 6 bおよ
び p形 Z n Oからなる p形コンタク ト層 7が前述の例と同様に成長され ることにより形成されている。 この場合は、 I T Oからなる透明電極は 不要で、 p形コンタク ト層 7上にもほぼ全面に p側電極 1 0が形成され ている。 なお、 図示されていないが、 p形第 1 クラッ ド層 6 aと電流狭 窄層 1 7との間に p形 G a Nからなるエッチングス トップ層が設けられ ることが好ましい。
Z η θ系化合物半導体は、 ゥエツ トエッチングによりエッチング処理 をすることができるため、 G a N系化合物半導体では難しい電流狭窄層 を埋め込む S A S型構造の L Dチップを形成することができ、 活性層の 近くに電流狭窄層を形成することができ、 高特性の半導体レーザが得ら れる。 しかし、 L Dチップの構造は、 S A S型構造に限らず、 p側電極 をス トライブ状にしただけの電極ス トライプ構造や、 ス トライプ状電極 の両側の半導体層を P形クラッ ド層の上部までをメサ型形状にエツチン グするメサス トライブ構造や、 プロ トンなどを打ち込んだプロ トン打込 み型にすることもできる。 電極ス トライプ構造の L Dチップの例を図 5 に示す。 この構造は p側電極 1 0がス トライプ状にパ夕一ニングされて いることと、 電流狭窄層が設けられていない点で図 4の構造と異なるだ けで、 他の構造は図 4と殆ど同じで、 同じ部分には同じ符号を付して、 その説明を省略する。 なお、 6は p形クラッ ド層である。
このような構造にしても、 基板にシリコンが用いられているため、 上 下両面から両電極を取り出すことができ、 製造面および使用面の両方か ら非常に便利であると共に、 光共振器の端面を劈開による劈開面で形成 することができるため、 高特性の半導体レーザが得られる。
前述の例では、 L E Dとして、 ダブルへテロ構造の例であつたが、 i 純な p n接合や M I S (金屈—絶縁層一半導体層) 構造など他の構造に することもできる。 また、 L Dチップの構造も、 光ガイ ド層がなく他の
層が設けられたり、前述の積層構造に限定されるものではない。さらに、 シリコン基板のチッ化処理やその後の Z n◦系化合物半導体の成長に M B E装置を用いて行ったが、 M〇 C V D装置などを用いてチッ化処理お よびその後の半導体層の成長を行っても、 その条件さえ設定されれば、 一々表面状態を観察しながら行う必要はなく、 同様の表面状態を形成す ることができ、 他の方法で製造することもできる。
シリコン基板を用いる本発明によれば、 シリコン基板上に Z n〇系化 合物半導体を成長することができ、 上下両面に電極を設ける垂直型の青 色系の半導体発光素子が得られる。 そのため、 製造工程が簡単でコス ト ダウンを行うことができると共に、 使用段階でもワイヤボンディングを 減らすことができ、 使用しやすい半導体発光素子が安価に得られる。 さらに、 劈開することができるため、 優れた端面を有するレーザ共振 器が得られ、 高い記憶密度を有する光ディスクや、 レーザビームプリン 夕の高精細化に利用できる短波長の高性能の半導体レーザが得られる。 つぎに、 C面と直交する面を主面とするサファイア基板を用いた本発 明による Z η θ系化合物層を用いた素子、 およびそれらの素子を製造す るための Z n 0系化合物層の結晶成長方法について説明をする。
C面と直交する面を主面とするサファイア基板を用いた本発明による Z n 0系化合物層を有する素子は、 図 6にその一実施形態である A面を 主面とするサファイア基板 1 a上に Z n◦化合物層を成長した断面説明 図が示されるように、 サファイア基板 1 aの C面と直交する面、 たとえ ば A面 ( 1 1— 2 0 ) を主面とするサフアイァ基板 1 aの前記主面 (A 面) 上に Z η θ系化合物層 2がェピタキシャル成長されている。 この Z η θ系化合物層の成長は、 目的とする素子により必要な組成 (M gや C dなどを混晶したり、 ドーパン トを ドービングしたりする) にしたり、 必要な厚さに成長される。たとえば半導体発光素子を構成する場合には、
後述するように、 たとえば Z n 0系化合物半導体層からなる n形クラッ ド層と P形クラッ ド層とで、 クラッ ド層よりバン ドギヤップの小さい活 性層を挟持する発光層形成部を構成するように順次積層される。
サファイアの A面は、 図 7 ( a) にサファイア単結晶の代表的な面方 位が、 図 7 ( b ) に単結晶の C面の正面図が示されるように、 C面の格 子で 1つおきの格子を結ぶ線分の C面と垂直な面で、 サファイア単結晶 の ( 1 1— 20 ) の面方位で示される面である。 この面方位は 6回対称 で、 図 7 (b) に示されるように、 1つの六角柱にて形成される結晶で 6ケ所ある。 この A面であれば、 後述するようにサファイアの c軸長に Z ηθの a軸長が 4個分に対応して、 優れた結晶構造が得られると考え られるが、 この考えに基づく と、 必ずしも A面である必要はなく、 図 7 (b) の Xで示されるように、 A面が C面内で回転するような面でも C 面に対して直角になり、 このように C面に直交する面であればよい。 な お、 この C面に対して直角 (直交) というのは、 ほぼ直角という程度の もので、 通常の面方位の誤差である ± 0.5 ° 程度の範囲は結晶軸長の ズレには影響しない。
このサファイア基板 1 a上に Z ηθ化合物層を成長するには、 まず A 面を主面とするサファイアのウェハ 1 aを、 アセ トン、 エタノールを用 いて、脱脂洗浄をし、 最後に純粋洗浄をする。その後、洗浄ウェハをロー ドロック (Load Lock) 室に入れ、 1 3 3 x 1 0— 6 P a程度以下の真空 度中で、 400 °C程度で 1時間程度の予備加熱をし、 余分な水分を飛ば す。
予備加熱終了後、 1 3 3 X 1 0 _9〜 1 3 3 X 1 0— 1 ()P a程度の真 空度に保たれた MB E (Molecular Beam Epitaxy) 装置に搬入する。 そ して、 8 00 °C程度で 3 0分程度のサーマルク リーニングをした後に 6 5 0 °C程度にする。 そして、 02ラジカルを 1 3.5 6 MH zの R Fに
よりプラズマ化することによって供給し、 Z nのセルのシャツ夕一を開 けることにより Z n 0層 2がェビタキシャル成長する。 なお、 M g C dなどを混晶したり、 ド一パン トを ド一ビングする場合には、 それらの 元素のセルを開けることにより所望の Z n 0系化合物層を得ることがで きる。 なお、 この例では、 洗浄後のサーマルク リーニングを 8 0 0 °C程 度で 3 0分程度行ったが、 1 0 0 0 °C程度で 1時間程度のァニール処理 を行うと成長する Z n 0層の結晶性の再現性が非常に向上することが確 認された。
このように、 A面を主面とするサフアイァ基板の表面にェビ夕キシャ ル成長した Z η θ膜の結晶状態を調べるため、 数百 n m程度の厚さにェ ピ夕キシャル成長した Z n 0膜の表面に X線を照射して、 その反射強度 分布により得られる面の法線方向の位置をその面方位と共に図 8に示す。 図 8 ( a ) が本発明の A面を主面とするサファイア基板上に成長した膜 における面の法線方向の位置を示す図で、 図 8 ( b ) が C面を主面とす るサファイア基板上に成長した Z n 0膜における面の法線方向の位置を 示す図である。
Z η θは a軸方向で 6回対称であるため、本来なら 6点しか回折パター ン (面の法線方向の位置) が現れないはずであるが、 図 8 ( b ) に示さ れる C面上に成長した Z n 0膜では、 Z n 0の a軸とサファイアの a軸 とが平行なところの他に、 Z n Oの a軸がサファイアの a軸に対して 3 0 ° 回転したパターンが入り混じり、 1 2点のパターンが親察されてい る (実際には、 3 0 ° 回転の位置のパターンは強度が薄く、 その割合が 少ないことを示していた) 。 これに対して、 図 8 ( a ) に示されるよう に、 本発明の A面上に成長させた Z n 0膜は、 Z n Oの A面とサフアイ ァの C面とが平行になり、 Z n 0は一定の結晶方向でサファイアの c軸 方向に成長し、 6回対称の回折パターンのみが観察されている。 すなわ
ち 30 ° 回転した結晶成長はしていないことが分る。
また、 MB E法により 1分程度成長した状態 (数十 nm程度の厚さ) で、 R H E E D法 (反射高エネルギー電子回折法 ; 電子銃により 1 0〜 5 0 kVで加速された電子ビームを基板表面に浅い角度( 1〜 2° 以下) で入射させ、表面原子によって反射回折された電子ビームを蛍光スクリ一 ンに投影して結晶の表面状態を調べる方法) により調べた結果、 サファ ィァの C面上に成長した膜では、本来の Z ηθパターンの間に薄いパター ンが現れたが、 本発明の A面上に成長した Z n 0膜では、 面内配向の乱 れがなく本来の Z ηθのパターンのみが観察された。
図 9は、 Z ηθ膜の結晶状態をさらに別の方法で調べたもので、 この Z n 0のバンドギヤップエネルギーより大きい 4 e V程度の光を照射し てフォトルミネッセン ト発光をさせたものの波長に対する発光強度を示 した図である。 図 9の Aで示される特性が、 本発明の A面を主面とする サフアイァ基板上に成長した Z n 0膜の特性で、 Cで示される特性が C 面を主面とするサファイア基板上に成長した Z n 0の特性である。 図 9 からも明らかなように、 本発明の Z nO膜では、 C面上に成長した Z n 0膜より約 30倍の強度の発光が得られ、 その半値幅も C面上に成長し たものが 3 0 me Vであるのに対して、 本発明の A面に成長したものは 0.7 me Vと小さく、 明らかに良好な結晶が得られていることを示し ている。
本発明によれば、 C面と直交する A面を主面とするサファイア基板上 に Z ηθ系化合物を成長しているため、 前述のように、 結晶性の優れた Z n〇系化合物層が得られた。 この理由はっきのように考えられる。 す なわち、 サファイアの c軸長 csは、 前述のように、 1.2 9 9 1 nmで あり、 ∑ 1 0の &蚰長 &2は、 0.3 2 5 n mであるため、 csがほぼ 4 a,となる。 そのため、 図 1 0に A面を主面とするサファイア基板上に
成長する Z nOの結晶状態 ( C面) の平面図が示されるように、 サファ ィァの c軸長 csに 2個分の Z ηθ結晶 ( a軸が 4個分の結晶) が配列 されて、 非常に面内配向が安定し、 常に一定の面内配向で成長すると考 えられる。 このときの格子整合度どは、 ε = ( 4 X az- cs) / cs= 0. 07 %となり、 非常に整合度が高くなつている。 その結果、 高い結晶性 を保持して成長することができる。
この観点からは、 A面でなくても、 前述の図 7に示される X面のよう に、 A面が C面内で回転した面、 すなわち C面と直交する面であれば、 前述の図 1 0に示されるように、 サファイアの c軸長に、 Z nOの a軸 長 4個分が対応するように Z n〇系化合物結晶が配列され、 同様に結晶 性のよい Z ηθ系化合物結晶層が得られることが推察される。
つぎに、 この A面 ( 1 1— 2 0 ) を主面とするサフアイァ基板を用い て、 Z ηθ系化合物半導体層を成長した青色系の半導体発光素子の構成 例について説明をする。
C面と直交する面を主面とするサファイア基板を用いた本発明の半導 体発光素子は、 図 1 1に L E Dチップの斜視説明図が示されるように、 A面を主面とするサファイア基板 1 aの表面に Z n 0系化合物半導体か らなる n形層 3、 4および p形層 6、 7を少なく とも有し、 発光層を形 成するように半導体積層部 1 1が積層されている。
半導体積層部 1 1は、 図 1 1に示される例では、 G aを ド一プした n 形 Z nOからなるコンタク ト層 3が l /m程度、 同じく G aを ドープし た M g y Z n1-y O ( 0≤ y < K たとえば y = 0.1 5 ) からなる n形 クラッ ド層 4が 0.2〃m程度、 C dx Z rii— xO ( 0≤xく 1、 かつク ラッ ド層よりバン ドギヤップエネルギーが小さくなる組成、 たとえば X = 0.08 )からなる活性層 5が 0.1〃 m程度、 G aおよび Nを同時ド一 プした M g y Z η , y〇 ( 0≤ y < 1 , たとえば y = 0.1 5 ) からなる
p形クラッ ド層 6が 0.2〃 m程度、 G aおよび Nを同時ドープした Z ηθからなる p形コンタク 卜層 7力 s 1〃m程度、 それそれ積層されるこ とにより、 ダブルへテロ構造の発光層形成部を有する半導体積層部 1 1 になっている。 これらの半導体層は、 前述の MB E装置で連続的に成長 される。 なお、 活性層 5は、 非発光再結合中心の形成を避けるため、 ノ ン ドープであることが好ましい。 また、 n形および p形クラッ ド層 4、 6は、 活性層 5よりバン ドギャップが大きく、 キャリアを活性層 5内に 有効に閉じ込める効果を有するように形成されている。
半導体積層部 1 1上には、 電流を拡散させるための、 たとえば I T 0 膜からなる透明電極 8が 0.2〃m程度成膜されており、 その表面の一 部に N i/A 1または N i /A uなどの積層体からなる p側電極 1 0が リフ トオフ法などにより、 また、 半導体積層部 1 1の一部がエッチング により除去され、 露出する n形コンタク ト層 3上に、 T iZA lまたは T i/Auなどの積層体からなる n側電極 9が真空蒸着などにより形成 されている。
つぎに、 この L E Dの製法について説明をする。 前述のように、 A面 を主面とするサファイア基板 1をァセ トンなどにより脱脂洗浄をし、 Load Lock室で予備加熱、 MB E装置内でのサーマルクリーニングをした後、 6 5 0 °C程度にして酸素ラジカルを供給すると共に、 Z n、 Mg、 C d、 Gaなどの、 所望材料のセルのシャツ夕一を開けることにより、 前述の 組成の Z ηθ系化合物半導体層をそれそれ前述の厚さになるように、 順 次ェビタキシャル成長して、 半導体積層部 1 1を形成する。 なお、 n形 層を形成する場合はド一パン トとして G aを ドーピングし、 p形層を形 成する場合は、 ド一パン ト として N2プラズマと G aを同時に ドーピン グした。
その後、 MB E装置よりェピタキシャル成長がされたウェハを取り出
し、 反応性ィオンエッチング ( R I E ) などの ドライエッチング法によ り、 半導体積層部の一部をエッチングして、 n形コンタク ト層 3を露出 させる。このェヅチングは、硫酸系ェツチヤ ン トなどによるゥエツ トエツ チングにより行うこともできる。 その後、 たとえばスパッ夕装置に入れ て、 p形コンタク ト層 7上に I T 0を成膜し、 透明電極 8を 0 . 2 m 程度の厚さに設ける。 その後、 リフ トオフ法などにより n形コンタク ト 層 3上に T i / A 1などからなる n側電極 9を、 I T O膜 8上の一部に T i / A 1などからなる p側電極 1 0を、 それそれ 0 . 2 m程度づっ 形成する。 その後ゥヱハからチッブ化することにより、 図 1 1に示され る L E Dチップが得られる。
サファイア基板を用いる本発明の半導体発光素子によれば、 A面を主 面とするサファイア基板の表面に Z n 0化合物半導体層がェビ夕キシャ ル成長されているため、 サファイアの c軸長と Z n O化合物の 4個の a 軸長とが整合して配列され、 結晶性のよい Z n 0化合物半導体層が成長 する。 その上に成長される Z n O系化合物半導体層も Z n Oと同種の化 合物であり、 Z n O層の結晶に沿って整合された結晶層が成長する。 そ の結果、膜質の悪い場合のように非発光再結合中心が発生することなく、 内部量子効率が大幅に向上し、 Z n O系化合物の有する高いエキシトン と相俟って、 非常に高い発光効率の半導体発光素子が得られる。 なお、 A面を主面とするサファイア基板上に成長する化合物半導体層は、 Z n 0でなくても、 Z nの一部が M gや C dなどと置換された Z n〇系化合 物半導体でも格子定数に殆ど変化はなく、 同様に結晶性よく成長するこ とができる。
前述の例は、 L E Dの例であつたが、 L Dであっても同様である。 こ の場合、 半導体積層部 1 1が若干異なり、 たとえば図 1 2に斜視説明図 が示されるように、 活性層 1 5はノ ン ドープの C d。 . 0 3 Z n。 . 9 7 0 /
C d Q.2 Z n0.8Oからなるバリア層とゥエル層とをそれそれ 5 nmお よび 4 nmづっ交互に 2〜 5層づっ積層した多重量子井戸構造により形 成することが好ましい。 また、 活性層 1 5が薄く充分に光を活性層 1 5 内に閉じ込められない場合には、 たとえば Z n〇からなる光ガイ ド層 1 4、 1 6が活性層 1 5の両側に設けられる。 なお、 半導体積層部 1 1の 一部がエッチングされて、 露出する n形コン夕ク ト層 3に n側電極 9が 形成されるのは、 前述の L E Dの場合と同様である。
また、 図 1 2に示される例では、 電流狭窄層 1 7を埋め込む S A S型 構造の L Dチップの例で、 p形 M g。. i 5 Z n。.850からなる p形第 1 クラッ ド層 6 aの上に、 たとえば n形 M g Q .2 Z n。 .80からなる電流 狭窄層 1 7が 0.4 /m程度設けられ、 一旦結晶成長装置からウェハを 取り出し、表面にレジス ト膜を設けてス トライプ状にパターニングをし、 硫酸系溶液などにより電流狭窄層 1 7をス トライブ状にエッチングして、 2 ~ 3〃m幅のス トライプ溝 1 8が形成され、 再度 MB E装置にウェハ を戻し、 p形 M g。.1 5 Z n。.850からなる p形第 2クラッ ド層 6 bお よび p形 Z n 0からなる p形コンタク ト層 7が前述の例と同様に成長さ れることにより形成されている。 この場合は、 I T Oからなる透明電極 は不要で、 p形コンタク ト層 7上にもほぼ全面に p側電極 1 0が形成さ れている。 なお、 図示されていないが、 p形第 1クラッ ド層 6 aと電流 狭窄層 1 7との間に p形 G a Nからなるエッチングス トツプ層が設けら れることが好ましい。
Z n 0系化合物半導体は、 ゥエツ トエッチングによりエツチング処理 をすることができるため、 G a N系化合物半導体では難しい電流狭窄層 を埋め込む S A S型構造の L Dチップを形成することができ、 活性層の 近くに電流狭窄層を形成することができ、 高特性の半導体レーザが得ら れる。 しかし、 LDチップの構造は、 S A S型構造に限らず、 p側電極
をス トライプ状にしただけの電極ス トライプ構造や、 ス トライプ状電極 の両側の半導体層を P形クラッ ド層の上部までをメサ型形状にエツチン グするメサス 卜ライプ構造や、 プロ トンなどを打ち込んだプロ 卜ン打込 み型にすることもできる。 電極ス トライプ構造の L Dチップの例を図 1 3に示す。 この構造は p側電極 1 0がス トライプ状にパ夕一ニングされ ていることと、 電流狭窄層が設けられていない点で図 1 2の構造と異な るだけで、 他の構造は図 1 2と殆ど同じで、 同じ部分には同じ符号を付 して、 その説明を省略する。 なお、 6は p形クラッ ド層である。
前述の例では、 L E Dとして、 ダブルへテロ構造の例であつたが、 単 純な p n接合や M I S (金属—絶縁層—半導体層) 構造など他の構造に することもできる。 また、 LDチップの構造も、 光ガイ ド層がなく他の 層が設けられてもよく、 前述の積層構造に限定されるものではない。 さらに、 前述の各例では、 Z n'O系化合物層の成長をするのに、 MB E装置を用いて行ったが、 MO CVD装置などを用いて行うこともでき る。 この場合、 反応ガスとしては、 Z nとしてジェチル亜鉛 ( Z n ( C 2 H 5 ) 2 ) 、 0としてテ 卜ラヒ ドロフラ ン ( C4 H80 ) 、 M gとして シクロべン夕ジェチルマグネシウム ( C p2M g) 、 C dとしてジェチ ルカ ドミウム ( Cd ( C2H5) 2) 、 ド一パン トの G aとして ト リェチ ルガリウム (T E G) 、 N2としてプラズマ N2を供給することにより気 相反応をさせることができる。
なお、 前述の例では、 Z ηθ系化合物半導体を用いた素子の例が半導 体発光素子のみであるが、 SAWデバイス、 圧電素子、 焦電素子などで、 結晶性の優れた Z n 0系化合物層を必要とする場合は、 同様に C面と直 交する面を主面とするサフアイァ基板を用いて成長させることにより、 結晶性の優れた Z n 0系化合物半導体層を有する素子を得ることができ る。
本発明によれば、 非常に結晶性の優れた Z n 0系化合物層を成長する ことができるため、その上に積層する Z n 0系化合物層の結晶性も優れ、 優れた特性の Z n 0系化合物層を有する素子が得られる。
また、 本発明の半導体発光素子によれば、 積層される Z n O系化合物 半導体層の結晶性が非常に優れているため、 非常に内部量子効率の優れ た青色系の半導体発光素子を、 ゥエツ ト処理をすることができる材料に より得ることができる。 産業上の利用性
本発明によれば、 結晶性の非常に優れた Z n 0系化合物半導体層をシ リコン基板またはサファイア基板上に形成することができ、 青色系の L E Dや L Dなどの発光素子、 S A Wデバイス、 圧電素子、 焦電素子など を髙特性で安価に得ることができる。 高特性の青色系 L E Dや L Dが安 価に得られることにより、フルカラーディスプレーや信号灯などの光源、 次世代の高記憶密度の D V D、 レーザビームプリン夕などの光源として 利用することができる。