以下に、本発明に係るバッテリー端子の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
[第一実施形態]
図1〜6を参照して第一実施形態を説明する。まず図1〜4を参照して、第一実施形態に係るバッテリー端子1の構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1中のL1矢視図であり、図3は、図1に示すバッテリー端子の分解斜視図であり、図4は、図1に示すバッテリー端子をバッテリーに取り付けた状態を示す斜視図である。
本実施形態に係るバッテリー端子1は、図4に示すように、バッテリー50のバッテリーポスト51に組み付けられるものである。バッテリー端子1は、バッテリーポスト51に取り付けられることにより、バッテリー50と、このバッテリー50が搭載される車両等の本体側の電線の末端に設けられた金具等とを電気的に接続するための部品である。
なお、以下の説明では、バッテリーポスト51の中心軸線Xに沿った方向を「軸方向」という。またここでは、以下の説明を分かり易くするために、便宜的に当該軸方向と直交する2方向のうち一方を長辺方向(幅方向)、他方を短辺方向という。これら軸方向、長辺方向、及び、短辺方向は互いに直交する。
ここで、このバッテリー端子1が適用されるバッテリー50は、例えば、車両等に蓄電装置として搭載されるものである。バッテリー50は、図4に示すように、バッテリー液や当該バッテリー50を構成する種々の部品を収容するバッテリー筐体152、当該バッテリー筐体152に設けられた上述のバッテリーポスト51等を含んで構成される。バッテリー筐体152は、いずれか1つの面が開放された略矩形箱状の筐体本体153と、上記開放された面を閉塞させる蓋部材154とを含んで構成され、全体として略直方体形状に形成される。ここでは、バッテリー筐体152は、長辺方向に沿った方向が長辺、短辺方向に沿った方向が短辺となるがこれに限らない。バッテリーポスト51は、鉛等により構成され、蓋部材154のポスト立設面155に立設される。ポスト立設面155は、バッテリー筐体152においてバッテリーポスト51が立設される面である。ここでは、当該ポスト立設面155は、例えば、バッテリー50が車両等に搭載された状態で、蓋部材154の鉛直方向上側の上面である。バッテリーポスト51は、略円柱形状であり、中心軸線Xがポスト立設面155と直交するような位置関係で当該ポスト立設面155上に突出するようにして立設される。より詳細には、本実施形態のバッテリーポスト51は、ポスト立設面155の角位置近傍に形成された凹部156内に立設される。当該凹部156は、ポスト立設面155の角位置近傍において略矩形状に陥没した部分である。つまり、バッテリーポスト51は、バッテリー筐体152の上面であるポスト立設面155に形成された凹部156の底面に立設されている。バッテリーポスト51は、典型的には、軸方向の先端側に進むにつれて径が小さくなるようテーパが付けられている。つまり、バッテリーポスト51は、先端の外径が基端の外径より小さいテーパ形状となる。なお、以下の説明では、バッテリー50が車両等に搭載された状態で、バッテリーポスト51の軸方向が鉛直方向に沿った方向となり、上述の長辺方向、短辺方向が水平方向に沿った方向となる場合を説明する。バッテリー端子1は、上記のように構成されるバッテリーポスト51に締結される。
本実施形態のバッテリー端子1は、バッテリーポスト51に締結する場合に、締結部材(後述の締結ボルト27)を鉛直方向上側から締め付けていく形式の端子である。そして、本実施形態のバッテリー端子1は、軸方向に沿った方向に発生する締結部材による締付力を、軸方向と交差する締め付け方向(幅方向)の押圧力に変換し、当該押圧力によってバッテリー端子1においてバッテリーポスト51が挿入される部分を押圧することで、バッテリーポスト51に締結されるものである。このとき、本実施形態のバッテリー端子1は、締結部材を鉛直方向上側から締め付ける構成とすることで、締結部材を締め付けるための工具の作業スペースをバッテリー50の上方として、バッテリー50の側方の作業スペースの低減を図ったものである。
具体的には、本実施形態のバッテリー端子1は、図1,2に示すように、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部23とを備える。なお、以下の説明では、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で軸方向、長辺方向、短辺方向となる方向を、それぞれ単に「軸方向」、「長辺方向」、「短辺方向」という場合がある。
図1〜3に示すように、本実施形態の本体部21は、上側分割体24と下側分割体25との二層分割構造となっている。ここでは、本体部21は、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、上側分割体24が鉛直方向上側、下側分割体25が鉛直方向下側となって軸方向(鉛直方向)に対向し積層された状態となる。上側分割体24と下側分割体25との積層方向は、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、バッテリーポスト51の軸方向に沿った方向であり、ここでは後述のスタッドボルト22の軸部22aが突出する側を積層方向上側、反対側を積層方向下側とする。また、積層方向上側とは、バッテリーポスト51の先端側に相当し、積層方向下側とは、バッテリーポスト51の基端側に相当する。つまり、本体部21は、上側分割体24が積層方向上側、下側分割体25が積層方向下側となる。
上側分割体24、下側分割体25は、例えば、導電性を有する金属板のプレス折り曲げ加工により、それぞれ、環状部24a,25a、ボルト保持部24b,25b等が一体で形成される。本実施形態の本体部21は、上側分割体24と下側分割体25との二層分割構造とすることで、例えば、より小型なプレス機によって簡易に製造することができる。
一対の環状部24a,25aは、略円環形状に形成され、それぞれバッテリーポスト51が挿入される略円形状のポスト挿入孔24c,25c、及び、ポスト挿入孔24c、25cと連続するスリット(間隙)24d,25dが形成される。
ポスト挿入孔24cとポスト挿入孔25cとは、上側分割体24と下側分割体25とが上下に積層されてバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、積層方向に対向する位置関係となるように、それぞれ環状部24a,25aに形成される。ポスト挿入孔24c,25cは、板金が同一の方向、ここでは上側に折り返されることでそれぞれ内周壁面が形成される。ポスト挿入孔24c,25cは、それぞれの内周壁面に上述したバッテリーポスト51のテーパに対応したテーパを有している。ここでは、ポスト挿入孔24cとポスト挿入孔25cとのうち後述するスタッドボルト22の軸部22aが突出する側、すなわち、ポスト挿入孔24c側の内径が最小となり、反対側のポスト挿入孔25c側の内径が最大となる。ポスト挿入孔24c,25cは、バッテリーポスト51が挿入された状態で、各内周面がバッテリーポスト51と接触する。
スリット24dとスリット25dとは、上側分割体24と下側分割体25とが上下に積層されてバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、積層方向に対向する位置関係となるように、それぞれ環状部24a,25aに形成される。ここでは、スリット24d,25dは、ポスト挿入孔24c,25cから環状部24a,25aの一部を分断するように形成される。また、環状部24a,25aは、スリット24d,25dが形成されている側の端部に、後述の締付部23によって保持されて締め付けられる板状突出部24e,25eを有している。板状突出部24eは、当該環状部24aにおいてポスト挿入孔24cが形成されている部分と段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。同様に、板状突出部25eも、当該環状部25aにおいてポスト挿入孔25cが形成されている部分と段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。スリット24dは、ポスト挿入孔24cから板状突出部24eを貫通している。スリット25dは、ポスト挿入孔25cから、板状突出部25eを貫通している。
図3に示すように、板状突出部24eは、長辺方向の両端がそれぞれ下側に折り曲げられており、その下側に折り曲げられた縁端部24hには、後述する貫通板26(保持部材)を貫通させるための孔部24iがそれぞれ設けられている。一方、板状突出部25eは、長辺方向の両端がそれぞれ上側に折り曲げられており、その上側に折り曲げられた縁端部25hにも、後述する貫通板26を貫通させるための孔部25iが設けられている。上側分割体24の縁端部24hと、下側分割体25の縁端部25hとは、上側分割体24及び下側分割体25が組み合わされた状態で相互に重畳し、それぞれに設けられた孔部24iと、孔部25iとが長辺方向で貫通するよう形成されている。
すなわち、スリット24dにより分断される板状突出部24eと、それぞれに接続されている縁端部24hとは、環状部24cの一端部及び他端部とも表現することができる。同様に、スリット25dにより分断される板状突出部25eと、それぞれに接続されている縁端部25hとは、環状部25cの一端部及び他端部とも表現することができる。
図3に示すように、一対のボルト保持部24b,25bは、略矩形状に形成される。ボルト保持部24bは、環状部24aのスリット24dが形成される側、すなわち、板状突出部24eが形成された側とは反対側に段付部24f等を介して連続するようにして一体で形成される。ボルト保持部25bは、環状部25aのスリット25dが形成される側、すなわち、板状突出部25eが形成された側とは反対側に段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。ボルト保持部24bは、スタッドボルト22が挿入される略円形状のボルト挿入孔24gが形成される。ボルト保持部25bは、上側分割体24と下側分割体25とを組み付ける際にスタッドボルト22がスライドするスライド孔25gが形成される。
ここで、ボルト保持部24b,25bが保持するスタッドボルト22は、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとの間に保持された状態で、スライド孔25g、及び、ボルト挿入孔24gから軸部22aが突出するようにして露出する。スタッドボルト22は、ボルト挿入孔24gから露出した当該軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。ボルト保持部24b,25bは、スタッドボルト22の軸部22aが立設される矩形板状の台座部分を保持できるように所定の折り返し部が形成されている。
本体部21は、組み立ての際には、まず、矩形板状の台座部分に軸部22aが立設されたスタッドボルト22が上側分割体24に組み付けられる。このとき、スタッドボルト22は、ボルト挿入孔24gに軸部22aが挿入され、当該軸部22aが当該ボルト挿入孔24gから露出した状態で、かつ、矩形板状の台座部分がボルト保持部24bの折り返し部内に保持された状態となる。そして、上側分割体24のボルト保持部24bにスタッドボルト22が保持された状態で、下側分割体25は、ボルト保持部24bの段付部24f側から、上側分割体24に組み付けられる。より詳細には、スライド孔25gが形成されたボルト保持部25bの上板部分が、ボルト保持部24bの上板部分と、スタッドボルト22の台座部分との間に挿入されるようにして、上側分割体24に組み付けられる。このとき、ボルト保持部25bに形成されたスライド孔25gが、スタッドボルト22の軸部22aの周囲をスライドしていく。
そして、本体部21は、上側分割体24の環状部24a及びボルト保持部24bと、下側分割体25の環状部25a及びボルト保持部25bとが上下に対向するような位置関係で積層された状態となる。本体部21は、このように上側分割体24と下側分割体25とが積層された状態で、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとによってスタッドボルト22が保持される。そして、本体部21は、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとによってスタッドボルト22が保持された状態で、後述の締付部23によって保持され、一体化される。
また、本実施形態の本体部21は、上側分割体24と下側分割体25との二層分割構造としているが、これに限らず、例えば、屈曲連結部等を介して上側分割体24と下側分割体25とが一体で形成され、曲げ加工されるものであってもよい。この場合、一対のボルト保持部24b,25bは、例えば、折り曲げ加工の前に事前にボルト挿入孔24gにスタッドボルト22が挿入された状態で折り曲げ加工されることで、屈曲連結部を介して上下に積層された状態で当該スタッドボルト22を保持する。
締付部23は、ポスト挿入孔24c,25c内にバッテリーポスト51が挿入された状態で、一対の環状部24a,25aを当該バッテリーポスト51に締結するものである。本実施形態の締付部23は、貫通板26と、締結ボルト27(締結部材)と、スペーサ28(押圧力変換部材)とを備える。
貫通板26は、長辺方向に沿って、スリット24d,25dと、板状突出部24e,25eと、を貫通して配置される板状部材である。言い換えると、貫通板26は、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部までを貫通する。貫通板26は、上側分割体24の縁端部24hに設けられた孔部24iと、下側分割体25の縁端部25hに設けられた孔部25iとを貫通させることで、スリット24d,25dを横断するように、長辺方向に沿って本体部21に取り付けられる。
貫通板26は、その一端部に抜け止め部26a(環状部保持部)を有する。抜け止め部26aは、貫通板26が環状部24a,25aの両端を貫通した状態、すなわち、貫通板26が孔部24i,25iを貫通して本体部21に取り付けられた状態において、この抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部側へ貫通板26が本体部21から抜け出すのを防止する。具体的には、抜け止め部26aは、短辺方向において、孔部24i,25iの内径より長い寸法で形成されており、貫通板26が孔部24i,25iを通って他端部側に所定量入ると縁端部24h,25hに突き当たるように構成されている。
また、貫通板26は、抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部に、軸方向に貫通して螺合孔26b(締結部材支持部、被締結部材)が設けられている。螺合孔26bは、締結ボルト27を軸方向の所定位置で支持する機能も有する。
なお、貫通板26は、長辺方向に沿って、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部まで延在して配置される保持部材としても機能するものである。また、抜け止め部26aは、保持部材としての貫通板26の一端部に設けられ、環状部24a,25aを保持する環状部保持部としても機能するものである。
締結ボルト27(以降では単に「ボルト」とも表記する)は、螺合溝が形成された軸部27aと、軸部27aの一端部に一体形成される頭部27bとを有する。軸部27aは、貫通板26の螺合孔26bと螺合する部分である。頭部27bは、締結ボルト27を軸部27a周りに回転させるために工具等によって把持される部分である。締結ボルト27は、軸方向に沿った所定の位置で、貫通板26の螺合孔26bに軸方向周りに回転可能に支持されると共に、軸部27aがこの螺合孔26bに軸方向に沿って螺合する。さらに、締結ボルト27は、頭部27bの座面に、軸方向周りの全周に亘ってボルト側テーパ面27c(テーパ面)が形成されている。ボルト側テーパ面27cは、締結ボルト27が螺合孔26bに螺合している状態において、後述するスペーサ28のスペーサ側テーパ面28dと接触状態を維持するように形成されている。
本実施形態の締結ボルト27は、図4等に示すように、バッテリーポスト51がポスト挿入孔24c,25cに挿入され、かつ、貫通板26の螺合孔26bに支持された状態で、少なくとも一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体152の上面(ポスト立設面155)から突出した位置に支持される。
スペーサ28は、螺合孔26bに螺合された状態の締結ボルト27と、本体部21の縁端部25hとの間に配置され、両者の相対位置を調整する。スペーサ28は、略直方体形状の部材である。スペーサ28には、長辺方向で対向して配置される一端面28bと他端面28cとの間を貫通する貫通孔28aが設けられている。貫通孔28aは、孔部24i,25iと略同等の大きさであり、この貫通孔28aに貫通板26が貫通している。これにより、スペーサ28は貫通板26に対して長辺方向に相対移動可能となっている。スペーサ28の長辺方向の一端面28bは、貫通板26の螺合孔26bが設けられた端部(他端部)側から、環状部24aの縁端部24hと当接している。スペーサ28の長辺方向の他端面28cには、軸方向に沿って締結ボルト27の軸部27aの少なくとも一部を嵌合する嵌合溝28eが設けられると共に、この嵌合溝28eの軸方向の上端にスペーサ側テーパ面28d(テーパ面)が形成されている。スペーサ側テーパ面28dは、締結ボルト27が螺合孔26bに螺合している状態において、締結ボルト27のボルト側テーパ面27cと接触状態を維持するように形成されている。
ここで、締結ボルト27に設けられるボルト側テーパ面27cと、スペーサ28に設けられるスペーサ側テーパ面28dとは、締結ボルト27が軸方向周りの回転に伴って螺合孔26b側に接近した際に、締結ボルト27と貫通板26との間に発生する締付力によって締結ボルト27がスペーサ28を押圧する軸方向の押圧力F1(図6参照)を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ28が環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力F2(図6参照)に変換する方向に傾斜を有するように形成されている。本実施形態では、締結ボルト27に設けられたボルト側テーパ面27cは、軸方向下側の水平方向の断面積が上側より小さい円錐台の側面であり、締結ボルト27の軸心を中心として、軸方向上側に進むほど軸心周りの長さが広がるような傾斜を有している。一方、スペーサ28に設けられたスペーサ側テーパ面28dは、軸方向下側の水平方向の断面積が上側より小さい逆円錐台形状の側面であり、締結ボルト27の軸心を中心として、軸方向上側に進むほど軸心周りの長さが広がるような傾斜を有している。
つまり、スペーサ28は、締結ボルト27と、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの間にて、両者と当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、ボルト側テーパ面27c及びスペーサ側テーパ面28dを介して、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する押圧力変換部材として機能する。
次に、図5,6を参照して、本実施形態に係るバッテリー端子1の動作について説明する。図5は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結する前の状態を示す模式図であり、図6は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結した後の状態を示す模式図である。
図5に示すように、バッテリー端子1は、貫通板26が、板状突出部24eの縁端部24hに設けられた孔部24iと、板状突出部25eの縁端部25hに設けられた孔部25iを貫通するよう挿入されることで、本体部21の板状突出部24e及び板状突出部25eが一体化される。この状態で、貫通板26の抜け止め部26aと反対側の端部に、スペーサ28の貫通孔28aが嵌合されて、スペーサ28が本体部21の長辺方向外側にて、貫通板26に沿って移動可能に取り付けられる。スペーサ28の本体部21側の一端面28bを、板状突出部24eの縁端部24hと接触するまで貫通板26の奥に入れ込んで、貫通板26上の螺合孔26bの全体を露出させる。そして、鉛直方向上方から締結ボルト27が螺合孔26bに螺合されることで、バッテリー端子1は一体的に組み立てられる。図5に示す状態は、締結ボルト27のボルト側テーパ面27cの下端領域が、スペーサ28のスペーサ側テーパ面28dの上端領域と接している状態を示しており、締結ボルト27をさらに下方まで進出可能な状態である。このとき、環状部24a,25aのスリット24d,25dは最大幅に広がっており、ポスト挿入孔24c,25cの内径は、バッテリーポスト51の外径より大きい。この状態が、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する前の状態である。
バッテリー端子1は、図5に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1は、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト27が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、図6に示すように、締結ボルト27の頭部27bが工具等によって軸方向(軸部27a)周りに回転されることで、締結ボルト27が軸方向に沿って螺合孔26b(貫通板26)側に接近すると、締結ボルト27と貫通板26との間に軸方向の締付力F1(「押圧力F1」とも表記する)が発生する。この軸方向の締付力F1によって、締結ボルト27は、ボルト側テーパ面27cを介して、スペーサ28のスペーサ側テーパ面28dを軸方向に押圧する。この軸方向の押圧力F1(締結力F1)は、ボルト側テーパ面27c及びスペーサ側テーパ面28dによって、長辺方向の押圧力F2に変換されて、スペーサ28に伝達される。スペーサ28は、伝達された長辺方向の押圧力F2により、環状部24a,25aの縁端部24h,25hを、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する。スペーサ28は、スリット24d,25dの間隔が狭まるのに応じて、貫通板26上を反対側端部の抜け止め部26aの方向に移動できるので、締結ボルト27から押圧力F1を受ける間、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの接触を維持して、押圧力F2を付加し続けることができる。このとき、環状部24a,25aが押圧力F2を受ける側と反対側では、貫通板26の抜け止め部26aによって、環状部24a,25aが押圧力F2に対して長辺方向に逃げるのを規制されている。この結果、バッテリー端子1は、スペーサ28による押圧力F2によって、環状部24aの板状突出部24eと共に環状部25aの板状突出部25eが貫通板26の抜け止め部26a側に押圧されることで、スリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1は、締結ボルト27の回転に伴い、ボルト側テーパ面27c及びスペーサ側テーパ面28dにより発生する長辺方向の押圧力F2によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1は、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
ここでは、締結ボルト27は、図4で説明したように、締め付け作業が行われる状態で、少なくとも頭部27bを含む一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体152の上面(ポスト立設面155)から突出した位置に支持され、締め付けが行われてもこの位置が維持される。この結果、このバッテリー端子1は、少なくとも締結ボルト27の頭部27bを含む一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体152の上面から突出した状態で、締結ボルト27の締め付け作業を完結することができる。
一方、バッテリー端子1は、締結ボルト27が逆回転に回転されることで、ボルト側テーパ面27c及びスペーサ側テーパ面28dにより発生する長辺方向の押圧力F2が弱まり、スリット24d,25dの間隔が広がり、ポスト挿入孔24c,25cの径が拡大され、バッテリーポスト51から取り外し可能な状態となる。
次に、本実施形態に係るバッテリー端子1の効果を説明する。
本実施形態のバッテリー端子1は、バッテリーポスト51が挿入されるポスト挿入孔24c,25c、及び、このポスト挿入孔24c,25cと連続するスリット24d,25dが形成された環状部24a,25aと、バッテリーポスト51の軸方向と交差する方向であって、スリット24d,25dを横断する方向である長辺方向に沿って、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部までを貫通して配置される貫通板26と、貫通板26の一端部に設けられ、貫通板26の環状部24a,25aからの抜け出しを防止する抜け止め部26aと、貫通板26の他端部に設けられる締結部材支持部としての螺合孔26bと、螺合孔26bに軸方向に回転可能に支持される締結部材としての締結ボルト27と、を備える。螺合孔26bは、締結ボルト27と螺合する被締結部材としても機能する。バッテリー端子1は、さらに、貫通板26の螺合孔26bが設けられる端部側から環状部24a,25aの縁端部24h,25hと当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って締結ボルト27と螺合孔26bとの間に発生する軸方向の締付力F1を、長辺方向(幅方向)のうち環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する押圧力変換部材としてのスペーサ28と、を備える。
この構成により、押圧力変換部材としてのスペーサ28の作用によって、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。つまり、締結ボルト27をバッテリーポスト51の軸方向周り、すなわち鉛直方向周りに回転操作することで、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結することができる。これにより、従来のように、締結ボルト27を回転させるための工具をバッテリーポスト51の側方、すなわちバッテリー50の側方からセットして回転操作するための作業スペースを確保する必要がなくなり、例えば、比較的作業スペースを取りやすいバッテリー50の鉛直方向上方から操作することが可能となる。このように、本実施形態のバッテリー端子1によれば、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する際に必要なバッテリー50の周囲の作業スペースを低減できる。
また、本実施形態のバッテリー端子1によれば、スペーサ28と当接する締結ボルト27の頭部27bの座面には、ボルト側テーパ面27cが形成される。スペーサ28は、貫通板26に対して長辺方向に相対移動可能に配置され、長辺方向の一端面28bにて環状部24a,25aの縁端部24h,25hと当接し、長辺方向の他端面28cにて締結ボルト27の頭部27bと当接する。締結ボルト27と当接するスペーサ28の他端面28cには、締結ボルト27のボルト側テーパ面27cと当接するスペーサ側テーパ面28dが形成されている。締結ボルト27に設けられるボルト側テーパ面27c、及び、スペーサ28に設けられるスペーサ側テーパ面28dは、締結ボルト27が軸方向周りの回転に伴って螺合孔26b側に接近した際に、締結ボルト27と貫通板26との間に発生する締付力によって締結ボルト27がスペーサ28を押圧する軸方向の押圧力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ28が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する方向に傾斜を有する。
この構成により、締結ボルト27に設けられるボルト側テーパ面27c、及び、スペーサ28に設けられるスペーサ側テーパ面28dの作用によって、締結ボルト27の螺合孔26bへの締付操作、すなわち軸方向周りの回転運動から、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に効率よく変換することができる。これにより、締付ボルト27の回転軸を、環状部24a,25aの締結方向と同一にする必要がなく、締結ボルト27の締付操作を行いやすい鉛直方向とすることができるので、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
さらに、以上で説明したバッテリー端子1によれば、締結ボルト27は、バッテリーポスト51がポスト挿入孔24c,25cに挿入され、かつ、貫通板26の螺合孔26bに支持された状態で、少なくとも一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体152の上面から突出した位置に支持される。したがって、バッテリー端子1は、少なくとも締結ボルト27の一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体152の上面から突出した状態で、締結ボルト27の締め付け作業を完結することができるので、例えば、工具等が他の部位に干渉することを抑制し、当該工具等を使った締結ボルト27の締め込みを行いやすくすることができる。
なお、上記実施形態では、締結ボルト27にボルト側テーパ面27cを設け、スペーサ28にスペーサ側テーパ面28dを設け、ボルト側テーパ面27c及びスペーサ側テーパ面28dを介して締結ボルト27からスペーサ28に押圧力を伝達する構成を例示したが、締結ボルト27とスペーサ28との接触状態を維持できれば、ボルト側テーパ面27cまたはスペーサ側テーパ面28dのいずれか一方を設ける構成でもよい。
なお、上記実施形態では、締結ボルト27と螺合する被締結部材を、貫通板26上の螺合孔26bとし、締結ボルト27と貫通板26との間で軸方向の締付力F1を発生させる構成を例示したが、被締結部材として別体のナットを有する構成としてもよい。つまり、螺合孔26bをネジ溝の無い単なる孔部に置き換え、軸方向に対して貫通板26を挟んで締結ボルト27と反対側(鉛直方向下側)に、締結ボルト27と螺合するナットを配置し、締結ボルト27とナットとの間に発生する軸方向の締付力F1を長辺方向の押圧力F2に変換する構成としてもよい。
[第二実施形態]
図7〜10を参照して第二実施形態を説明する。まず図7,8を参照して、第二実施形態に係るバッテリー端子1aの構成について説明する。図7は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図であり、図8は、図7に示すバッテリー端子の分解斜視図である。
図7,8に示すように、第二実施形態のバッテリー端子1aは、締付部33の構成が第一実施形態のバッテリー端子1と異なるものである。
本実施形態のバッテリー端子1aは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部33とを備える。締付部33は、貫通板36と、締結ボルト37(締結部材)と、テーパナット38(被締結部材、押圧力変換部材)とを備える。なお、本体部21及びスタッドボルト22については、図7,8に示すように、ポスト挿入孔24c,25cが、板金を下側に折り返されることでそれぞれ内周壁面を形成している点が、第一実施形態のバッテリー端子1と相違する。なお、以降では、テーパナット38を単に「ナット」とも表記する場合がある。
貫通板36は、第一実施形態の貫通板26と同様に、その一端部に抜け止め部26aを有する一方、抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部には、第一実施形態の螺合孔26bの代わりに、図8に示すように、その内周にネジ溝を持たず、長辺方向に沿った長穴形状の孔部36b(締結部材支持部)を有する。さらに、貫通板36には、孔部36bが設けられる端部側にて、短辺方向の両縁端に、後述するテーパナット38の直立部38bと係合する係合溝36cが形成されている。係合溝36cは、貫通板36の短辺方向の端面から貫通板36の中央方向へ端面と平行に掘り下げられて形成されている。
締結ボルト37は、第一実施形態の締結ボルト27と同様に軸部27aを有する一方、ボルト側テーパ面27cを有していない。また、頭部37bは、第一実施形態と比べて軸方向寸法が長い。
テーパナット38は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト37と対向して配置され、締結ボルト37と螺合されている。テーパナット38は、締結ボルト37の軸部27aと螺合する螺合孔を有する方形状の基部38aと、この基部38aの4辺のうち対向する2辺から鉛直方向上側へ延在する一対の直立部38bとを有する。一対の直立部38bは、例えば基部38aを含んで板金で平面形状を形成し、基部38aから同一方向に略直角に折り曲げることで形成することができる。基部38aは、図7,8に示すように、直立部38bを有する2辺が長辺方向に延在している。テーパナット38の直立部38bは、長辺方向の一端面38cにて環状部24aの縁端部24hと当接している。テーパナット38は、一対の直立部38bの一端面38cがそれぞれ環状部24aの縁端部24hと当接していることにより、軸方向周りの回転が規制されている。つまり、本実施形態では、テーパナット38が、締結ボルト37(締結部材)と螺合する被締結部材として機能するものである。
また、テーパナット38の直立部38bには、一端面38cと長辺方向の反対側にテーパ面38dが形成されている。テーパ面38dは、テーパナット38が貫通板36を挟んで締結ボルト37と螺合している状態において、貫通板36の係合溝36cと接触状態を維持するように形成されている。より詳細には、テーパ面38dは、貫通板36の係合溝36cにおいて、長辺方向で対向する一対の端面のうち、貫通板36の端部に近い方の端面36d(図8参照)と接触する。なお、この端面36dに、テーパ面38dと同一方向に傾斜をつけ、テーパ面38dとの接触面積を増やすよう構成してもよい。
ここで、テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37側に接近した際に、締結ボルト37とテーパナット38との間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にテーパナット38が環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有するよう形成されている。本実施形態では、テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向に沿って締結ボルト37の頭部37b側から離間するにしたがって、直立部38bの長辺方向の幅が徐々に広がるような傾斜を有している。
つまり、テーパナット38は、締結ボルト37と、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの間にて、両者と当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、テーパ面38dを介して、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する押圧力変換部材として機能する。
次に、図9,10を参照して、本実施形態に係るバッテリー端子1aの動作について説明する。図9は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結する前の状態を示す模式図であり、図10は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結した後の状態を示す模式図である。
図9に示すように、バッテリー端子1aは、貫通板36が、板状突出部24eの縁端部24hに設けられた孔部24iと、板状突出部25eの縁端部25hに設けられた孔部25iを貫通するよう挿入されることで、本体部21の板状突出部24e及び板状突出部25eが一体化される。この状態で、貫通板36の抜け止め部26aと反対側の端部の一対の係合溝36cに、鉛直方向下方から一対の直立部38bがそれぞれ嵌合されて、テーパナット38が貫通板36の下方に配置され、貫通板36の孔部36bに鉛直方向上方から締結ボルト37が挿入され、テーパナット38の基部38aの螺合孔に螺合されることで、バッテリー端子1aは一体的に組み立てられる。図9に示す状態は、テーパナット38のテーパ面38dの上端領域が、貫通板36の係合溝36cの端面36dと接している状態を示しており、テーパナット38をさらに上方まで進出可能な状態である。このとき、環状部24a,25aのスリット24d,25dは最大幅に広がっており、ポスト挿入孔24c,25cの内径は、バッテリーポスト51の外径より大きい。また、締結ボルト37の軸部27aは、貫通板36の長穴形状の孔部36bのうち、貫通板36の端部に近い方(図9では右側)に位置している。この状態が、バッテリー端子1aがバッテリーポスト51に締結する前の状態である。
バッテリー端子1aは、図9に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1aは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト37が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、図10に示すように、締結ボルト37の頭部37bが工具等によって軸方向(軸部27a)周りに回転されることで、締結ボルト37の軸方向の位置はそのままで、テーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37の頭部37b側に接近すると、締結ボルト37とテーパナット38との間に軸方向の締付力F1が発生する。この軸方向の締付力F1によって、テーパナット38は、テーパ面38dを介して、貫通板36の係合溝36cの端面36dを軸方向に押圧する。これにより、テーパナット38は、この端面36dと接触しているテーパ面38dから、この軸方向の押圧力F1(締結力F1)に対する反力を受け、より詳細には、押圧力F1から長辺方向に変換された押圧力F2を、貫通板36の端面36dからテーパ面38dに受ける。テーパナット38は、貫通板36の端面36dから受けた長辺方向の押圧力F2により、環状部24a,25aの縁端部24h,25hを、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する。テーパナット38と、このテーパナット38に螺合している締結ボルト37は、スリット24d,25dの間隔が狭まるのに応じて、貫通板36上の長穴形状の孔部36bに沿って抜け止め部26aの方向に一体的に移動できるので、締結ボルト37との締結力F1を発生している間、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの接触を維持して、押圧力F2を付加し続けることができる。このとき、環状部24a,25aが押圧力F2を受ける側と反対側では、貫通板36の抜け止め部26aによって、環状部24a,25aが押圧力F2に対して長辺方向に逃げるのを規制されている。この結果、バッテリー端子1aは、テーパナット38による押圧力F2によって、環状部24aの板状突出部24eと共に環状部25aの板状突出部25eが貫通板36の抜け止め部26a側に押圧されることで、スリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1aは、締結ボルト37の回転に伴い、テーパナット38のテーパ面38dにより発生する長辺方向の押圧力F2によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1aは、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
以上のように、本実施形態のバッテリー端子1aによれば、貫通板36の抜け止め部26aが設けられる一端部とは反対側の他端部には、長辺方向に沿った長穴形状の孔部36bが、締結部材支持部として設けられる。締結部材としての締結ボルト37は、貫通板36の孔部36bに軸方向周りに回転可能に支持される。被締結部材としてのテーパナット38は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト37と対向し該締結ボルト37と螺合する。また、テーパナット38は押圧力変換部材としても機能し、軸方向周りの回転が規制され、長辺方向の一端に貫通板36と当接するテーパ面38dが形成され、長辺方向の他端の一端面38cにて環状部24a,25aと当接する。テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37側に接近した際に、締結ボルト37とテーパナット38との間に発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にテーパナット38が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する方向に傾斜を有する。
この構成により、テーパナット38に設けられるテーパ面38dの作用によって、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴って発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、バッテリー端子1aは、バッテリーポスト51に締結される際に、締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が締結ボルト37側に接近する一方、締結ボルト37自体は軸方向の位置が固定されたまま変化しない。この結果、このバッテリー端子1aは、締結ボルト37を軸方向上側から締め付ける構成とした上で、当該締結ボルト37を締め付けていく際に当該締結ボルト37の軸方向の相対位置が変化しないようにすることができる。したがって、このバッテリー端子1aは、バッテリーポスト51に締結する際に、軸方向上側から締結ボルト37を締め付けていっても当該締結ボルト37の締め付け高さの変化が抑制されるので、当該締結ボルト37の締め付け作業を行いやすい位置関係を維持することができ、バッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
なお、上記実施形態では、締結ボルト37と螺合する被締結部材を、テーパ面38dを備えるテーパナット38とし、締結ボルト37とテーパナット38との間で軸方向の締付力F1を発生させる構成を例示したが、被締結部材として別体のナットを有する構成としてもよい。つまり、テーパナット38の基部38aの螺合孔をネジ溝の無い単なる孔部に置き換え、テーパナット38よりさらに鉛直方向下側に締結ボルト37と螺合するナットを配置し、締結ボルト37とナットとの間に発生する軸方向の締付力F1を長辺方向の押圧力F2に変換する構成としてもよい。
[第三実施形態]
図11〜14を参照して第三実施形態を説明する。まず図11,12を参照して、第三実施形態に係るバッテリー端子1bの構成について説明する。図11は、本発明の第三実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図であり、図12は、図11に示すバッテリー端子の分解斜視図である。
図11,12に示すように、第三実施形態のバッテリー端子1bは、締付部43の構成が第一実施形態のバッテリー端子1と異なるものである。
本実施形態のバッテリー端子1bは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部43とを備える。締付部43は、貫通板36と、締結ボルト47(締結部材)と、スペーサ48(押圧力変換部材)と、ナット49(被締結部材)とを備える。なお、本体部21及びスタッドボルト22については、図11,12に示すように、ポスト挿入孔24c,25cは、板金が下側に折り返されることでそれぞれ内周壁面を形成している点が、第一実施形態のバッテリー端子1と相違する。また、貫通板36は、第二実施形態の貫通板36と同様の構成である。
締結ボルト47は、第一実施形態の締結ボルト27と同様に軸部27aと頭部27bを有する一方、ボルト側テーパ面27cを有していない。
ナット49は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト47と対向し、締結ボルト47と螺合する。ナット49は、軸方向周りの回転が規制されている。
スペーサ48は、締結ボルト47と貫通板36との間にて締結ボルト47に貫通されて配置される。スペーサ48は、締結ボルト47の軸部27aが貫通する孔部を有する方形状の基部48aと、この基部48aの4辺のうち対向する2辺から鉛直方向下側へ延在する一対の直立部48bとを有する。基部48aは、図11,12に示すように、直立部48bを有する2辺が長辺方向に延在している。スペーサ48の直立部48bは、長辺方向の一端面48cにて環状部24aの縁端部24hと当接している。スペーサ48は、一対の直立部48bの一端面48cがそれぞれ環状部24aの縁端部24hと当接していることにより、軸方向周りの回転が規制されている。
また、スペーサ48の直立部48bには、一端面48cと長辺方向の反対側にテーパ面48dが形成されている。テーパ面48dは、スペーサ48が締結ボルト47により貫通されて貫通板36との間に配置されている状態において、貫通板36の係合溝36cと接触状態を維持するように形成されている。より詳細には、テーパ面48dは、貫通板36の係合溝36cにおいて、長辺方向で対向する一対の端面のうち、貫通板36の端部に近い方の端面36d(図12参照)と接触する。なお、この端面36dに、テーパ面48dと同一方向に傾斜をつけ、テーパ面48dとの接触面積を増やすよう構成してもよい。
ここで、スペーサ48に設けられるテーパ面48dは、締結ボルト47が、軸方向周りの回転に伴って軸方向に沿ってナット49側に接近した際に、締結ボルト47とナット49との間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ48が環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有するよう形成されている。本実施形態では、スペーサ48に設けられるテーパ面48dは、軸方向に沿って締結ボルト47の頭部27b側から離間するにしたがって、直立部48bの長辺方向の幅が徐々に小さくなるような傾斜を有している。
つまり、スペーサ48は、締結ボルト47と、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの間にて、両者と当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト47の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、テーパ面48dを介して、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する押圧力変換部材として機能する。なお、第三実施形態のスペーサ48は、第二実施形態のテーパナット38を鉛直方向の上下逆に配置し、基部38aの螺合孔からネジ溝を無くしたものと同等である。
次に、図13,14を参照して、本実施形態に係るバッテリー端子1bの動作について説明する。図13は、本発明の第三実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結する前の状態を示す模式図であり、図14は、本発明の第三実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結した後の状態を示す模式図である。
図13に示すように、バッテリー端子1bは、貫通板36が、板状突出部24eの縁端部24hに設けられた孔部24iと、板状突出部25eの縁端部25hに設けられた孔部25iを貫通するよう挿入されることで、本体部21の板状突出部24e及び板状突出部25eが一体化される。この状態で、貫通板36の抜け止め部26aと反対側の端部の一対の係合溝36cに、鉛直方向上方から一対の直立部48bがそれぞれ嵌合されて、スペーサ48が貫通板36の上方に配置される。スペーサ48の鉛直方向上方から、基部48aの孔部に締結ボルト47が挿入され、締結ボルト47はさらに、スペーサ48の下方にある貫通板36の孔部36bに挿入される。そして、貫通板36の鉛直方向下方に配置されているナット49に締結ボルト47が螺合されることで、バッテリー端子1bは一体的に組み立てられる。図13に示す状態は、スペーサ48のテーパ面48dの下端領域が、貫通板36の係合溝36cの端面36dと接している状態を示しており、スペーサ48をさらに下方まで進出可能な状態である。このとき、環状部24a,25aのスリット24d,25dは最大幅に広がっており、ポスト挿入孔24c,25cの内径は、バッテリーポスト51の外径より大きい。また、締結ボルト47の軸部27aは、貫通板36の長穴形状の孔部36bのうち、貫通板36の端部に近い方(図13では右側)に位置している。この状態が、バッテリー端子1bがバッテリーポスト51に締結する前の状態である。
バッテリー端子1bは、図13に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1bは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト47が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、図14に示すように、締結ボルト47の頭部27bが工具等によって軸方向(軸部27a)周りに回転されることで、締結ボルト47が軸方向に沿ってナット49側に接近すると、締結ボルト47とナット49との間に軸方向の締付力F1が発生する。この軸方向の締付力F1によって、スペーサ48は、締結ボルト47の座面により鉛直方向下側に押圧され、テーパ面48dを介して、貫通板36の係合溝36cの端面36dを軸方向に押圧する。これにより、スペーサ48は、この端面36dと接触しているテーパ面48dから、この軸方向の押圧力(締結力F1)に対する反力を受け、より詳細には、押圧力F1から長辺方向に変換された押圧力F2を、貫通板36の端面36dからテーパ面48dに受ける。スペーサ48は、貫通板36の端面36dから受けた長辺方向の押圧力F2により、環状部24a,25aの縁端部24h,25hを、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する。スペーサ48と、このスペーサ48を貫通している締結ボルト47と、締結ボルト47に螺合されているナット49は、スリット24d,25dの間隔が狭まるのに応じて、貫通板36上の長穴形状の孔部36bに沿って抜け止め部26aの方向に一体的に移動できるので、締結ボルト47とナット49との間で締結力F1が発生している間、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの接触を維持して、押圧力F2を付加し続けることができる。このとき、環状部24a,25aが押圧力F2を受ける側と反対側では、貫通板36の抜け止め部26aによって、環状部24a,25aが押圧力F2に対して長辺方向に逃げるのを規制されている。この結果、バッテリー端子1bは、スペーサ48による押圧力F2によって、環状部24aの板状突出部24eと共に環状部25aの板状突出部25eが貫通板36の抜け止め部26a側に押圧されることで、スリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1bは、締結ボルト47の回転に伴い、スペーサ48のテーパ面48dにより発生する長辺方向の押圧力F2によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1bは、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
以上のように、本実施形態のバッテリー端子1bによれば、貫通板36の抜け止め部26aが設けられる一端部とは反対側の他端部には、長辺方向に沿った長穴形状の孔部36bが、締結部材支持部として設けられる。締結部材としての締結ボルト47は、貫通板36の孔部36bに軸方向周りに回転可能に支持される。被締結部材としてのナット49は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト47と対向し該締結ボルト47と螺合する。押圧力変換部材としてのスペーサ48は、締結ボルト47と貫通板36との間にて締結ボルト47に貫通されて配置され、軸方向周りの回転が規制され、長辺方向の一端に貫通板36と当接するテーパ面48dが形成され、長辺方向の他端の一端面48cにて環状部24a,25aと当接する。スペーサ48に設けられるテーパ面48dは、締結ボルト47が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿ってナット49側に接近した際に、締結ボルト47とナット49との間に発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ48が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する方向に傾斜を有する。
この構成により、スペーサ48に設けられるテーパ面48dの作用によって、軸方向周りの締結ボルト47の回転に伴って発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、テーパ面48dの作用によって、締結ボルト47のナット49への締付操作、すなわち軸方向周りの回転運動から、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に効率よく変換することができる。これにより、締付ボルト47の回転軸を、環状部24a,25aの締結方向と同一にする必要がなく、締結ボルト47の締付操作を行いやすい鉛直方向とすることができるので、バッテリー端子1bをバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
[第四実施形態]
図15〜18を参照して第四実施形態を説明する。図15は、本発明の第四実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図16は、図15中のL2矢視図である。図17は、図15中のL3矢視図である。図18は、図15中のL4矢視図であり、図15に示す第四実施形態のバッテリー端子をバッテリーに取り付けた状態を示す側面図である。
図15〜18に示すように、第四実施形態のバッテリー端子1cは、締付部53の構成が第一〜第三実施形態のバッテリー端子1,1a,1bと異なるものである。
図15〜18に示すように、第四実施形態のバッテリー端子1cは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部53とを備える。締付部53は、保持部材56と、締結ボルト57(締結部材)と、スペーサ58(押圧力変換部材)と、ナット59(被締結部材)とを備える。なお、本体部21及びスタッドボルト22の主要な構成については、第一〜第三実施形態のバッテリー端子1,1a,1bと形状は多少異なるが、実質的にほぼ同様の機能であるので説明を省略する。
保持部材56は、長辺方向に沿って、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部まで延在して配置されるものである。保持部材56の主な部分(基部)は、長辺方向に沿って延在する板状部材であり、軸方向に対して板状突出部25eを基準として板状突出部24eの反対側、すなわち、鉛直方向(軸方向)下側に位置する。
保持部材56は、その一端部に環状部保持部56aを有する。環状部保持部56aは、保持部材56の一端部に設けられ、環状部24a,25aを保持する部分である。環状部保持部56aは、図15,17に示すように、板状突出部25eの軸方向下側に配置される保持部材56の基部の一方の端部が延長され、板状突出部24e側、すなわち鉛直方向(軸方向)上側にU字型に折り返されることで形成される。環状部保持部56aは、軸方向に対して、U字型の空間部に環状部24a,25aの板状突出部24e,25eを挟み込んで保持することで、当該環状部24a,25aを一体化して保持する。
保持部材56には、環状部保持部56aが設けられる一端部と反対側の他端部に、軸方向に貫通して孔部56b(締結部材支持部)が設けられている。孔部56bは、図16,17に示すように、その内周にネジ溝を持たず、長辺方向に沿って長穴形状に形成されている。
さらに、保持部材56には、孔部56bが設けられる端部側の縁端に、縁端突設部56cが軸方向に突設されて設けられている。図15,17,18に示すように、縁端突設部56cは、長辺方向に延在する保持部材56の板状の基部の他方の端部が延長され、軸方向の締結ボルト57が配置される側、すなわち鉛直方向(軸方向)上側にL字型(例えば直角)に折り曲げられて形成されている。
締結ボルト57は、保持部材56の孔部56bに軸方向周りに回転可能に支持される。締結ボルト57は、第一実施形態の締結ボルト27の軸部27a及び頭部27bと同様の構成である軸部57a及び頭部57bを有する一方、ボルト側テーパ面27cに対応する要素を有していない。
ナット59は、軸方向に対して保持部材56を挟んで締結ボルト57と対向し、締結ボルト57と螺合する。ナット59は、軸方向周りの回転が規制されている。
スペーサ58は、締結ボルト57と保持部材56との間にて締結ボルト57に貫通されて配置される部材である。スペーサ58は、例えば矩形筒状に形成される。図15,17に示すように、スペーサ58には、環状部24a,25aの長辺方向の端部であって保持部材56の環状部保持部56aによって保持された端部とは反対側の端部に当接する第1テーパ面58aが形成される。つまり、第1テーパ面58aは、スペーサ58において、環状部24a,25aの長辺方向の端部であって保持部材56の孔部56bや締結ボルト57等が設けられる側の端部と、長辺方向に対向する面に形成される。本実施形態の第1テーパ面58aは、環状部24a,25aの一部、ここでは、環状部24aの板状突出部24eに当接可能な位置に形成される。
また、図15,17,18に示すように、スペーサ58には、長辺方向に対して第1テーパ面58aの背面側に第2テーパ面58bが設けられる。第2テーパ面58bは、保持部材56の縁端突設部56cと当接可能な位置に形成される。このように長辺方向に沿って対向して配置されるスペーサ58の第1テーパ面58a及び第2テーパ面58bが、それぞれ環状部24a,25a及び縁端突設部56cと当接することで、スペーサ58の軸方向周りの回転が規制されている。
そして、スペーサ58に設けられる第1テーパ面58aは、締結ボルト57が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿ってナット59側に接近した際に、締結ボルト57とナット59との間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向、すなわち、長辺方向の環状部保持部56a側に、スペーサ58が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、第1テーパ面58aは、軸方向に沿って締結ボルト57の頭部57b側から離間するにしたがって、スペーサ58の長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。
また、スペーサ58に設けられる第2テーパ面58bは、締結ボルト57が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿ってナット59側に接近した際に、締結ボルト57とナット59との間に発生する軸方向の締付力を、第2テーパ面58bと当接する縁端突設部56cを介して保持部材56の環状部保持部56aを長辺方向の締結部材支持部(孔部56b)側に引き付ける引付力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、第2テーパ面58bは、軸方向に沿って締結ボルト57の頭部57b側から離間するにしたがって、スペーサ58の長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。
つまり、本実施形態のスペーサ58は、図15,17に示すように、軸方向及び長辺方向と直交する方向から視て、第1テーパ面58aと第2テーパ面58bとによって、軸方向に沿って締結ボルト57の頭部57b側から離間するにしたがって長辺方向の幅が徐々に狭まるような台形状に形成される。
第四実施形態のバッテリー端子1cは、図18に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1cは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト57が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、締結ボルト57の頭部57bが工具等によって軸方向(軸部57a)周りに回転されることで、締結ボルト57が軸方向に沿ってナット59側に接近すると、締結ボルト57とナット59との間に軸方向の締付力が発生する。この軸方向の締付力によって、スペーサ58は、締結ボルト57の座面により鉛直方向下側に押圧される。この軸方向の締結力は、第1テーパ面58aによって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する押圧力に変換される。このとき、環状部保持部56aは、当該第1テーパ面58aによる押圧力の反力を受ける反力部材として機能する。この結果、バッテリー端子1cは、第1テーパ面58aによる押圧力によって、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eが環状部保持部56a側に押圧されることでスリット24d,25dの間隔が狭まる。
またこのとき、締結ボルト57とナット59との間に発生する軸方向の締付力は、第2テーパ面58bによって、この第2テーパ面58bと当接する保持部材56の縁端突設部56cを介して、保持部材56の環状部保持部56aを長辺方向の締結部材支持部(孔部56b)側に引き付ける引付力に変換される。これにより、バッテリー端子1cは、当該第2テーパ面58bによる引付力によって環状部保持部56aが長辺方向の環状部24a,25a側に引き付けられる。このとき、保持部材56と締結ボルト57とは、長辺方向に沿って相対移動するが、締結ボルト57が当該保持部材56に形成された長穴形状の孔部56bに挿入されているので、この長辺方向に沿った相対移動が妨げられることはない。この結果、バッテリー端子1cは、第2テーパ面58bによる引付力によっても、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eに形成されたスリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1cは、締結ボルト57の回転に伴って第1テーパ面58aによる押圧力、及び、第2テーパ面58bによる引付力によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1cは、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
以上のように、第四実施形態のバッテリー端子1cによれば、軸方向周りの締結ボルト57の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、スペーサ58に設けられる第1テーパ面58aの作用によって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、スペーサ58の第1テーパ面58aの作用によって、締結ボルト57のナット59への締付操作、すなわち軸方向周りの回転運動から、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に効率よく変換することができる。これにより、締付ボルト57の回転軸を、環状部24a,25aの締結方向と同一にする必要がなく、締結ボルト57の締付操作を行いやすい鉛直方向とすることができるので、バッテリー端子1cをバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
また、第四実施形態のバッテリー端子1cによれば、軸方向周りの締結ボルト57の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、スペーサ58に設けられる第2テーパ面58bの作用によって、保持部材56の環状部保持部56aを長辺方向の締結部材支持部(孔部56b)側に引き付ける引付力に変換することができる。上記の押圧力に加えて、この引付力が付加されることによって、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eに形成されたスリット24d,25dの間隔が狭まるのをさらに促進できるので、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に簡易に締結させることができ、バッテリー端子1cをバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
[第五実施形態]
図19〜22を参照して第五実施形態を説明する。図19は、本発明の第五実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図20は、図19に示すバッテリー端子の分解斜視図である。図21は、図19中のL5矢視図である。図22は、図19中のL6矢視図である。
図19〜22に示すように、第五実施形態のバッテリー端子1dは、締付部63の構成が第一〜第四実施形態のバッテリー端子1,1a,1b,1cと異なるものである。
図19〜22に示すように、第五実施形態のバッテリー端子1dは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部63とを備える。本実施形態の本体部21は、上側分割体24と下側分割体25とが、板状突出部24e,25eの短辺方向側の端部にて屈曲連結部101により連結されている。本体部21は、例えば、屈曲連結部101を介して上側分割体24と下側分割体25とが一体で形成され、曲げ加工されることで、図19,図20等に示す構造とすることができる。なお、本実施形態の本体部21は、第一〜第四実施形態のバッテリー端子1,1a,1b,1cと同様に、上側分割体24と下側分割体25との分割構造としてもよい。
また、本実施形態の本体部21には、第一〜第三実施形態の縁端部24h,25hが設けられていない。すなわち、本体部21は、図20に示すように、上側分割体24と下側分割体25とが相互に組み付けられた状態で、スリット24d,25dの長辺方向両側の側面が、長辺方向に沿ってそれぞれスリット24d,25へ向かって切り欠かれて開口されている。これらの長辺方向の両側の一対の開口において、板状突出部24e,25e及び、屈曲連結部101の端面が、長辺方向に直交する略コの字状の被押圧面102a,102bを形成している。被押圧面102a,102bは、後述する第2スペーサ62及び抜け止め部材64と面接触する部分であり、両者からスリット24d,25dを縮小する方向の押圧力を受ける部分である。図19に示すバッテリー端子1dが組み立てられた状態において、被押圧面102aは、貫通板66の孔部66b(締結部材支持部)が位置する側の端面であり、被押圧面102bは、貫通板66の切欠き部66a(抜け止め部)が位置する側の端面である。
なお、本体部21及びスタッドボルト22のその他の主要な構成については、第一〜第三実施形態のバッテリー端子1,1a,1bと形状は多少異なるが、実質的にほぼ同様の機能であるので説明を省略する。
締付部63は、貫通板66と、締結ボルト67(締結部材)と、ナット69(被締結部材)と、第1スペーサ61(押圧力変換部材)と、第2スペーサ62(押圧力変換部材)と、抜け止め部材64と、を備える。
貫通板66は、長辺方向に沿って、スリット24d,25dと、板状突出部24e,25eと、を貫通して配置される板状部材である。貫通板66は、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部までを貫通する。
貫通板66は、その長辺方向の一端部66dにて、短辺方向の両縁端に抜け止め部材64と係合する一対の切欠き部66aが形成されている。切欠き部66aは、貫通板66の短辺方向の端面から貫通板66の中央方向へ端面と平行に掘り下げられて形成されている。また、貫通板66は、切欠き部66aが設けられる一端部66dと反対側の他端部66eには、その内周にネジ溝を持たず、長辺方向に沿った長穴形状の孔部66bを有する。さらに、貫通板66には、孔部66bが設けられる他端部66e側にて、第1スペーサ61と当接する凸部66cが短辺方向の両縁端に突設されている。
締結ボルト67は、貫通板66の孔部66bに軸方向周りに回転可能に支持される。締結ボルト67は、第一実施形態の締結ボルト27の軸部27a及び頭部27bと同様の構成である軸部67a及び頭部67bを有する一方、ボルト側テーパ面27cに対応する要素を有していない。
ナット69は、軸方向に対して貫通板66を挟んで締結ボルト67と対向し、締結ボルト67と螺合する。ナット69は、軸方向周りの回転が規制されている。
第1スペーサ61は、締結ボルト67と貫通板66との間にて締結ボルト67に貫通されて配置される。第1スペーサ61は、締結ボルト67の軸部67aが貫通する孔部を有する方形状の基部61aと、この基部61aの4辺のうち対向する2辺から鉛直方向下側へ延在する一対の直立部61bとを有する。基部61aは、図19,20等に示すように、直立部61bを有する2辺が長辺方向に延在している。第1スペーサ61の一対の直立部61bは、図19等に示すように、組み付け時に短辺方向の両側から貫通板66を挟持するよう配置され、これにより第1スペーサ61は軸方向周りの回転が規制されている。
第1スペーサ61の一対の直立部61bには、長辺方向の板状突出部24e,25e側の一端に押圧用テーパ面61c(第1テーパ面)が形成される。押圧用テーパ面61cは、後述する第2スペーサ62のテーパ面62dと当接可能な位置に形成される。また、第1スペーサ61の一対の直立部61bには、長辺方向に対して押圧用テーパ面61cの背面側に引付用テーパ面61d(第3テーパ面)が設けられる。引付用テーパ面61dは、貫通板66の凸部66cと当接可能な位置に形成されている。
第2スペーサ62は、貫通板66に対して長辺方向に相対移動可能に配置され、長辺方向の一端が、環状部24a,25aと当接し、長辺方向の他端が第1スペーサ61と当接する。第2スペーサ62には、長辺方向に貫通する貫通孔62aが設けられており、この貫通孔62aに貫通板66を挿通させることで、第2スペーサ62は貫通板66に対して長辺方向に相対移動可能となっている。
第2スペーサ62の長辺方向の一端側の端面62bは、貫通板66の孔部66bが設けられた端部(他端部)側から、環状部24a,25aの被押圧面102aと当接している。また、この端面62bの中央部には、環状部24a,25a側に突出する突出部62cが設けられている。第2スペーサ62は、端面62bを被押圧面102aと接触させ、突出部62cを環状部24a,25aの被押圧面102aより中央側の開口に嵌合させることで、本体部21に対する短辺方向及び軸方向への相対移動が規制される。第2スペーサ62の長辺方向の他端側には、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cと当接するテーパ面62d(第2テーパ面)が形成されている。
抜け止め部材64は、貫通板66の一対の切欠き部66aに嵌合することで、貫通板66の一端部にて、貫通板66と直交配置される板状部材である。抜け止め部材64は、一対の平板部64aと、係止部64bとを有する。一対の平板部64aは、抜け止め部材64の軸方向の移動によって、貫通板66の一対の切欠き部66aにスライド嵌合するように、短辺方向に沿って並列配置されている。また、一対の平板部64aは、一対の切欠き部66aと嵌合した状態において、環状部24a,25aの被押圧面102bと当接可能に対向配置される当接面64cを有する。係止部64bは、一対の平板部64aの軸方向の端部に連結され、短辺方向に延在する。係止部64bは、一対の平板部64aに対して、環状部24a,25a側に略直角に屈曲されている。
そして、第1スペーサ61に設けられる押圧用テーパ面61cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dは、締結ボルト67が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿ってナット69側に接近した際に、締結ボルト67とナット69との間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向、すなわち、長辺方向の貫通板66の切欠き部66a側に、第2スペーサ62が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cは、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって、第1スペーサ61の直立部61bの長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。一方、第2スペーサ62のテーパ面62dは、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって、第2スペーサ62の長辺方向の幅が徐々に広がるような傾斜を有している。また、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cと、第2スペーサ62のテーパ面62dとは、互いに正対して配置されている。
また、第1スペーサ61に設けられる引付用テーパ面61dは、締結ボルト67が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿ってナット69側に接近した際に、締結ボルト67とナット69との間に発生する軸方向の締付力を、引付用テーパ面61dと当接する貫通板66の凸部66cを介して、切欠き部66aに嵌合された抜け止め部材64を、長辺方向の孔部66b側に引き付ける引付力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、引付用テーパ面61dは、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって、第1スペーサ61の直立部61bの長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。
つまり、本実施形態の第1スペーサ61の直立部61bは、短辺方向から視て、押圧用テーパ面61cと引付用テーパ面61dとによって、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって長辺方向の幅が徐々に狭まるような逆三角形状に形成される。
なお、貫通板66の凸部66cにおいて、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dと当接する位置に引付用テーパ面61dと同一方向に傾斜をつけ、引付用テーパ面61dとの接触面積を増やすよう構成してもよい。
本実施形態において、締付部63を本体部21に組み付ける際には、まず、第2スペーサ62の端面62bと、本体部21の被押圧面102aが当接するように、第2スペーサ62が本体部21に嵌合される。次に、第2スペーサ62の貫通孔62aから、貫通板66の一端部66dが挿入され、本体部21のスリット24d,25dを横断するように、板状突出部24e,25eを貫通することで、一端部66dの切欠き部66aが、本体部21の被押圧面102bより長辺方向の外側に進出される。この切欠き部66aに対して、軸方向上方から抜け止め部材64が嵌合される。これにより、貫通板66は、本体部21の被押圧面102a側に抜けるのが防止される。つまり、本実施形態では、貫通板66の切欠き部66aと、この切欠き部66aに嵌合される抜け止め部材64とが、第一実施形態の抜け止め部26aと同様に機能する。
次に、第2スペーサ62のテーパ面62dに、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cが当接するように、かつ、第1スペーサ61の孔部が貫通板66の孔部66bと軸方向に重畳するように、第1スペーサ61が第2スペーサ62及び貫通板66に組み合わせられる。貫通板66の孔部66bの軸方向下方にナット69が配置され、軸方向上方から締結ボルト67が、第1スペーサ61の孔部、貫通板66の孔部66bに挿通されて、ナット69に螺合される。このようにして、締付部63が本体部21に組み付けられる。
第五実施形態のバッテリー端子1dは、図22に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1dは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト67が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、締結ボルト67の頭部67bが工具等によって軸方向(軸部67a)周りに回転されることで、締結ボルト67が軸方向に沿ってナット69側に接近すると、締結ボルト67とナット69との間に軸方向の締付力が発生する。この軸方向の締付力によって、第1スペーサ61は、締結ボルト67の座面により鉛直方向下側に押圧される。この軸方向の締結力は、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cと、この押圧用テーパ面61cと当接する第2スペーサ62のテーパ面62dによって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する押圧力に変換される。この押圧力によって、第2スペーサ62の端面62bが、環状部24a,25aの被押圧面102aを押圧する。このとき、貫通板66の切欠き部66aに嵌合される抜け止め部材64は、第2スペーサ62により環状部24a,25aに付加された押圧力の反力を受ける反力部材として機能する。この結果、バッテリー端子1dは、第2スペーサ62による押圧力によって、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eが抜け止め部材64側に押圧されることでスリット24d,25dの間隔が狭まる。
またこのとき、締結ボルト67とナット69との間に発生する軸方向の締付力は、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dによって、この引付用テーパ面61dと当接する貫通板66の凸部66cを介して、凸部66cと反対側の貫通板66の一端部66dに取り付けられた抜け止め部材64を長辺方向の孔部66b側に引き付ける引付力に変換される。この引付力によって、抜け止め部材64の当接面64cが環状部24a,25aの被押圧面102bに引き付けられる。このとき、貫通板66と締結ボルト67とは、長辺方向に沿って相対移動するが、締結ボルト67が貫通板66に形成された長孔形状の孔部66bに挿入されているので、この長辺方向に沿った相対移動が妨げられることはない。この結果、バッテリー端子1dは、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dによる引付力によっても、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eに形成されたスリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1dは、締結ボルト67の回転に伴って第1スペーサ61の押圧用テーパ面61c及び第2スペーサ62のテーパ面62dにより発生する押圧力、及び、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dにより発生する引付力によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1dは、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
以上のように、第五実施形態のバッテリー端子1dによれば、軸方向周りの締結ボルト67の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第1スペーサ61に設けられる押圧用テーパ面61cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dとの作用によって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、第1スペーサ61に設けられる押圧用テーパ面61cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dとの作用によって、締結ボルト67のナット69への締付操作、すなわち軸方向周りの回転運動から、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に効率よく変換することができる。これにより、締付ボルト67の回転軸を、環状部24a,25aの締結方向と同一にする必要がなく、締結ボルト67の締付操作を行いやすい鉛直方向とすることができるので、バッテリー端子1dをバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
また、第五実施形態のバッテリー端子1dによれば、軸方向周りの締結ボルト67の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第1スペーサ61に設けられる引付用テーパ面61dの作用によって、貫通板66に取り付けられた抜け止め部材64を長辺方向の締結部材支持部(孔部66b)側に引き付ける引付力に変換することができる。上記の押圧力に加えて、この引付力が付加されることによって、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eに形成されたスリット24d,25dの間隔が狭まるのをさらに促進できるので、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に簡易に締結させることができ、バッテリー端子1dをバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
従って、第五実施形態のバッテリー端子1dは、上記の第一〜第四実施形態のバッテリー端子1,1a,1b,1cと同様の効果を奏することができる。また、第五実施形態のバッテリー端子1dでは、第2スペーサ62の端面62bと、抜け止め部材64の当接面64cとが、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eの長辺方向の両側の被押圧面102a,102bとそれぞれ面接触されている。これにより、締結ボルト67の回転に伴って発生した押圧力及び引付力を、スリット24d,25dの間隔を狭める方向である長辺方向に沿って、環状部24a,25aに効率よく付加することができるので、バッテリー端子1dをバッテリーポスト51に迅速に締結させることができる。
[第六実施形態]
図23〜26を参照して第六実施形態を説明する。図23は、本発明の第六実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図24は、図23に示すバッテリー端子の分解斜視図である。図25は、図23中のL7矢視図である。図26は、図23中のL8矢視図である。
図23〜26に示すように、第六実施形態のバッテリー端子1eは、締付部73の構成が第五実施形態のバッテリー端子1dと異なるものである。
第六実施形態のバッテリー端子1eは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部73とを備える。締付部73は、貫通板76と、締結ボルト67(締結部材)と、第1スペーサ71(押圧力変換部材)と、第2スペーサ62(押圧力変換部材)と、を備える。なお、本体部21及びスタッドボルト22の構成については、第五実施形態のバッテリー端子1dと同様であるので説明を省略する。
貫通板76は、その長辺方向の一端部76dに抜け止め部76a(板状部材、環状部保持部)を有する。抜け止め部76aは、第一実施形態の抜け止め部26aと同様に、貫通板76が環状部24a,25aの両端を貫通した状態において、この抜け止め部76aが設けられる一端部76dと反対側の他端部76e側へ貫通板76が本体部21から抜け出すのを防止する。具体的には、抜け止め部76aは、貫通板76の長辺方向の一端部76dにおいて、短辺方向の両側、及び、軸方向の両側に突出して形成されている。つまり、抜け止め部76aは、貫通板76の一端部76dにおいて、貫通板76と一体的に設けられている。抜け止め部76aは、図24に示すように、環状部24a,25aの被押圧面102bと当接可能に対向配置される当接面76fを有する。また、貫通板76には、この抜け止め部76aに隣接して、当接面76fから他端部76e側に突出する突出部76cが設けられている。貫通板76は、抜け止め部76aの当接面76fを環状部24a,25aの被押圧面102bと接触させ、突出部76cを被押圧面102bより中央側の開口に嵌合させることで、本体部21の被押圧面102a側に抜けるのが防止される。
また、貫通板76は、抜け止め部76aが設けられる一端部76dと反対側の他端部76eに、軸方向に貫通して螺合孔76b(締結部材支持部、被締結部材)が設けられている。螺合孔76bは、締結ボルト67を軸方向の所定位置で支持する機能も有する。
第1スペーサ71は、締結ボルト67と貫通板76との間にて締結ボルト67に貫通されて配置される。第1スペーサ71は、締結ボルト67の軸部67aが貫通する孔部を有する方形状の基部71aと、この基部71aの4辺のうち対向する2辺から鉛直方向下側へ延在する一対の直立部71bとを有する。基部71aは、図23,24等に示すように、直立部71bを有する2辺が長辺方向に延在している。第1スペーサ71の一対の直立部71bは、図24等に示すように、組み付け時に短辺方向の両側から貫通板76を挟持するよう配置され、これにより第1スペーサ71は軸方向周りの回転が規制されている。
第1スペーサ71の一対の直立部71bには、長辺方向の板状突出部24e,25e側の一端にテーパ面71c(第1テーパ面)が形成される。テーパ面71cは、第2スペーサ62のテーパ面62d(第2テーパ面)と当接可能な位置に形成される。なお、第2スペーサ62、締結ボルト67の構成は、第五実施形態と同様であるので説明を省略する。
第1スペーサ71に設けられるテーパ面71cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dは、締結ボルト67が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿って螺合孔76b側に接近した際に、締結ボルト67と螺合孔76bとの間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向、すなわち、長辺方向の貫通板76の抜け止め部76a側に、第2スペーサ62が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、第1スペーサ71のテーパ面71cは、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって、第1スペーサ71の直立部71bの長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。第1スペーサ71のテーパ面71cと、第2スペーサ62のテーパ面62dとは、互いに正対して配置されている。
本実施形態において、締付部73を本体部21に組み付ける際には、まず、第2スペーサ62の端面62bと、本体部21の被押圧面102aが当接するように、第2スペーサ62が本体部21に嵌合される。次に、本体部21の被押圧面102b側の開口から、貫通板76の他端部76eが挿入される。貫通板76は、抜け止め部76aの当接面76fが本体部21の被押圧面102bと当接するまで挿入される。これにより、貫通板76は、本体部21のスリット24d,25dを横断するように、板状突出部24e,25eを貫通し、貫通板76の他端部76e側が第2スペーサ62の貫通孔62aから長辺方向の外側に進出される。
次に、第2スペーサ62のテーパ面62dに、第1スペーサ71のテーパ面71cが当接するように、かつ、第1スペーサ71の孔部が貫通板76の螺合孔76bと軸方向に重畳するように、第1スペーサ71が第2スペーサ62及び貫通板76に組み合わせられる。軸方向上方から締結ボルト67が、第1スペーサ71の孔部に挿通されて、貫通板76の螺合孔76bに螺合される。このようにして、締付部73が本体部21に組み付けられる。
第六実施形態のバッテリー端子1eは、図26に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1eは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト67が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、締結ボルト67の頭部67bが工具等によって軸方向(軸部67a)周りに回転されることで、締結ボルト67が軸方向に沿って貫通板76の螺合孔76b側に接近すると、締結ボルト67と螺合孔76bとの間に軸方向の締付力が発生する。この軸方向の締付力によって、第1スペーサ71は、締結ボルト67の座面により鉛直方向下側に押圧される。この軸方向の締結力は、第1スペーサ71のテーパ面71cと、このテーパ面71cと当接する第2スペーサ62のテーパ面62dによって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する押圧力に変換される。この押圧力によって、第2スペーサ62の端面62bが、環状部24a,25aの被押圧面102aを押圧する。このとき、貫通板76の一端側76dの抜け止め部76aは、第2スペーサ62により環状部24a,25aに付加された押圧力の反力を受ける反力部材として機能する。この結果、バッテリー端子1eは、第2スペーサ62による押圧力によって、環状部24a,25aの板状突出部24e,25eが抜け止め部76a側に押圧されることでスリット24d,25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1eは、締結ボルト67の回転に伴って第1スペーサ71のテーパ面71c及び第2スペーサ62のテーパ面62dにより発生する押圧力によって、スリット24d,25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c,25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。
以上のように、第六実施形態のバッテリー端子1eによれば、軸方向周りの締結ボルト67の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第1スペーサ71に設けられるテーパ面71cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dとの作用によって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。したがって、第六実施形態のバッテリー端子1eは、上記の第一〜第五実施形態のバッテリー端子1,1a,1b,1c,1dと同様の効果を奏することができる。
なお、第六実施形態では、締結ボルト67と螺合する被締結部材を、貫通板76上の螺合孔76bとし、締結ボルト67と貫通板76との間で軸方向の締付力を発生させる構成を例示したが、被締結部材として別体のナットを有する構成としてもよい。
[第七実施形態]
図27〜30を参照して第七実施形態を説明する。図27は、本発明の第七実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図28は、図27に示すバッテリー端子の分解斜視図である。図29は、図27中のL9矢視図である。図30は、図27中のL10矢視図である。
図27〜30に示すように、第七実施形態のバッテリー端子1fは、締付部83の構成のうち、貫通板86の抜け止め機能に関する構成が、第六実施形態のバッテリー端子1eと異なるものである。具体的には、第七実施形態のバッテリー端子1fでは、第六実施形態のバッテリー端子1eにおいて、貫通板76の一端部76dに一体的に設けられていた抜け止め部76aの代わりに、第五実施形態の抜け止め部材64が適用されている。
第七実施形態のバッテリー端子1fは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部83とを備える。締付部83は、貫通板86と、締結ボルト67(締結部材)と、第1スペーサ71(押圧力変換部材)と、第2スペーサ62(押圧力変換部材)と、抜け止め部材64と、を備える。なお、本体部21、スタッドボルト22、締結ボルト67、第1スペーサ71、第2スペーサ62の構成については、第六実施形態のバッテリー端子1eと同様であり、また、抜け止め部材64は第五実施形態のバッテリー端子1dと同様であるので、具体的な説明を省略する。
図28に示すように、貫通板86は、その長辺方向の一端部86dにて、短辺方向の両縁端に抜け止め部材64と係合する一対の切欠き部86aが形成されている。切欠き部86aは、第五実施形態の切欠き部66aと同等の形状である。つまり、本実施形態では、貫通板86の切欠き部86aと、この切欠き部86aに嵌合される抜け止め部材64とが、第一実施形態の抜け止め部26aと同様に機能する。また、貫通板86は、切欠き部86aが設けられる一端部86dと反対側の他端部86eに、第六実施形態の螺合孔76bと同等の構成の螺合孔86bを有する。貫通板86の一端部86dの、切欠き部86aよりも縁端の部分は、短辺方向の両側に突出して形成されており、切欠き部86aに抜け止め部材64が嵌合されたときに、抜け止め部材64の短辺方向の長さと同等となるように構成されている。
本実施形態において、締付部83を本体部21に組み付ける際には、まず、第2スペーサ62の端面62bと、本体部21の被押圧面102aが当接するように、第2スペーサ62が本体部21に嵌合される。次に、貫通板86の切欠き部86aに対して、軸方向上方から抜け止め部材64が嵌合され、本体部21の被押圧面102b側の開口から、貫通板86の他端部86eが挿入される。貫通板86は、抜け止め部材64の当接面64cが本体部21の被押圧面102bと当接するまで挿入される。これにより、貫通板86は、本体部21のスリット24d,25dを横断するように、板状突出部24e,25eを貫通し、貫通板86の他端部86e側が第2スペーサ62の貫通孔62aから長辺方向の外側に進出される。以降の工程は第六実施形態と同様であるので説明を省略する。
第七実施形態のバッテリー端子1fは、第六実施形態のバッテリー端子1eと同様に、第1スペーサ71に設けられるテーパ面71cと、第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dとを備える構成であるので、これらのテーパ面71c及びテーパ面62dの作用によって、第六実施形態のバッテリー端子1eと同様の効果を奏することができる。
[第八実施形態]
図31〜34を参照して第八実施形態を説明する。図31は、本発明の第八実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図32は、図31に示すバッテリー端子の分解斜視図である。図33は、図31中のL11矢視図である。図34は、図31中のL12矢視図である。
図31〜34に示すように、第八実施形態のバッテリー端子1gは、締付部93の構成が第五実施形態のバッテリー端子1dと異なるものである。本実施形態の締付部93の構成は、第五実施形態のバッテリー端子1dの締付部63と比較して、部品点数を低減し、かつ、同等の作用効果を奏するものである。
第八実施形態のバッテリー端子1gは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部93とを備える。締付部93は、貫通板96と、締結ボルト67(締結部材)と、ナット99(被締結部材)と、第1スペーサ61(スペーサ、押圧力変換部材)と、を備える。本実施形態の締付部93は、第2スペーサ62を備えない点で、第五実施形態の締付部63と異なる。なお、スタッドボルト22及び締結ボルト67の構成については、第五実施形態のバッテリー端子1dと同様であるので説明を省略する。
貫通板96は、軸方向に所定の間隙を取って対向配置される2つの平板部96a,96bと、これらの2つの平板部96a,96bを連結する連結部96cと、を有する。平板部96a,96bは、第五実施形態の貫通板66と同様に長辺方向に延在する板状部材である。一方の平板部96aは、他方の平板部96bの鉛直方向(軸方向)上側に配置されている。連結部96cは、長辺方向の一端部96hにて、2つの平板部96a,96bを連結する。つまり、貫通板96は、短辺方向視において倒U字状となるように形成されている。
貫通板96は、連結部96cが設けられる一端部96h側に、長辺方向に沿った長穴形状の孔部96eを有する。孔部96eは、2つの平板部96a,96bの両方に形成され、軸方向に重畳するよう設けられている。
貫通板96は、連結部96cと反対側の長辺方向の他端部96gに抜け止め部96dを有する。抜け止め部96dは、2つの平板部96a,96bの自由端のそれぞれに設けられている。鉛直方向上側に位置する平板部96aでは、抜け止め部96dは、長辺方向の他端部96gを鉛直方向上側にL字型(例えば直角)に折り曲げられて形成されている。一方、鉛直方向下側に位置する平板部96bでは、抜け止め部96dは、長辺方向の他端部96gを鉛直方向下側にL字型(例えば直角)に折り曲げられて形成されている。つまり、抜け止め部96dは、長辺方向の他端部96gにおいて、2つの平板部96a,96bから軸方向の両側に突出して形成されている。
このように、貫通板96は、短辺方向視において倒U字状となるように形成されており、長辺方向に沿って平行配置される2つの平板部96a,96bの自由端に抜け止め部96dが設けられている。したがって、貫通板96に対して鉛直方向(軸方向)の上側及び下側から平板部96a,96bが押圧されると、平板部96a,96bの他端部96g側が相互に接近するように弾性変形し、抜け止め部96dの軸方向寸法を縮小することができる。
さらに、貫通板96の一端部96hには、第1スペーサ61の引付用テーパ面61d(第2テーパ面)と当接する凸部96iが短辺方向の両縁端に突設されている。また、この凸部96iには、引付用テーパ面61dと正対して配置されるように、テーパ面96fが形成されている。
ナット99は、基本的な機能は第五実施形態のナット69と同様であるが、貫通板96の2つの平板部96a,96bの間に配置され、鉛直方向上側の平板部96aに設けられた孔部96eを介して、締結ボルト67と螺合するよう構成されている。つまり、ナット99の高さは、2つの平板部96a,96bの間の間隙より小さく設定されている。
第1スペーサ61は、その構成については第五実施形態の第1スペーサ61と同様であるが、本実施形態では第2スペーサ62が構成要素として含まれないため、押圧用テーパ面61c(第1テーパ面)が環状部24a,25aと当接可能な位置に形成されている。なお、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dは、第五実施形態と同様に、貫通板96の凸部96iと当接可能な位置に形成されている。
また、本実施形態では、本体部21の環状部24a,25aの長辺方向の端部であって第1スペーサ61と当接する端部、すなわち、板状突出部24e,25eの被押圧面102a側の端部に、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cと当接するテーパ面103,104(第3テーパ面)が形成されている。テーパ面103は、屈曲連結部101の端面に形成されており、テーパ面104は、テーパ面103から短辺方向に所定距離(第1スペーサ61の一対の直立部61bの間の距離)をとって、テーパ面103と同一の仮想平面上に位置するように形成されている。つまり、テーパ面103,104には、第1スペーサ61の一対の直立部61bのそれぞれに設けられる押圧用テーパ面61cが正対して配置される。
また、板状突出部24e,25eの被押圧面102a側の端部には、貫通板96の孔部96eと軸方向で重畳する部分に、孔部96eの形状に沿って切欠き部105が形成されている。
本実施形態において、締付部93を本体部21に組み付ける際には、まず、貫通板96の2つの平板部96a,96bの間の孔部96eの位置にナット99が挿入される。次に、締付部93の他端部96g側が軸方向両側から押圧されて、平板部96a,96bが弾性変形して、抜け止め部96dの軸方向寸法が縮小される。この状態で、貫通板96の他端部96gが、本体部21の被押圧面102a側の開口に挿入され、本体部21のスリット24d,25dを横断するように、板状突出部24e,25eを貫通することで、他端部96gの抜け止め部96dが、本体部21の被押圧面102bより長辺方向の外側に進出される。このとき、弾性変形していた貫通板96の他端部96gは、抜け止め部96dの軸方向寸法が拡大するように弾性回復する。これにより、抜け止め部96dが本体部21の被押圧面102bに係止され、貫通板96が本体部21の被押圧面102a側に抜けるのが防止される。
次に、本体部21の環状部24a,25aのテーパ面103,104に、第1スペーサ61の押圧用テーパ面61cが当接するように、かつ、貫通板96の凸部96iのテーパ面96fに、第1スペーサ61の引付用テーパ面61dが当接するように、第1スペーサ61が環状部24a,25a及び貫通板96に組み合わせられる。軸方向上方から締結ボルト67が、第1スペーサ61の孔部、貫通板96の上側の平板部96aに設けられた孔部96eに挿通されて、貫通板96の2つの平板部96a,96bの間に配置されたナット99に螺合される。このようにして、締付部93が本体部21に組み付けられる。
第八実施形態のバッテリー端子1gによれば、軸方向周りの締結ボルト67の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第1スペーサ61に設けられる押圧用テーパ面61cと、本体部21の環状部24a,25aのテーパ面103,104との作用によって、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、軸方向周りの締結ボルト67の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第1スペーサ61に設けられる引付用テーパ面61dの作用によって、貫通板96の抜け止め部96dを長辺方向の孔部96e側に引き付ける引付力に変換することができる。つまり、第八実施形態のバッテリー端子1gは、第五実施形態のバッテリー端子1dと同様に、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力及び引付力を生成することができるので、第五実施形態のバッテリー端子1dと同様の効果を奏することができる。
[第九実施形態]
図35,36を参照して第九実施形態を説明する。図35は、本発明の第九実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図である。図36は、図35に示すバッテリー端子の分解斜視図である。
図35,36に示すように、第九実施形態のバッテリー端子1hは、締付部113の構成のうち、押圧力変換部材に係る構成が、第七実施形態のバッテリー端子1fと異なるものである。本実施形態の締付部113の構成は、第七実施形態のバッテリー端子1fの締付部83と比較して、部品点数を低減し、かつ、同等の作用効果を奏するものである。
第九実施形態のバッテリー端子1hは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部113とを備える。締付部113は、貫通板86と、締結ボルト67(締結部材)と、第1スペーサ71(スペーサ、押圧力変換部材)と、テーパ状部112(押圧力変換部材)と、抜け止め部材64と、を備える。なお、本体部21、スタッドボルト22、貫通板86、締結ボルト67、第1スペーサ71、抜け止め部材64の構成については、第七実施形態のバッテリー端子1fと同様であるので具体的な説明を省略する。つまり、本実施形態の締付部113は、第2スペーサ62の代わりにテーパ状部112を備える点で、第七実施形態の締付部83と異なる。
図35,36に示すように、テーパ状部112は、本体部21の環状部24a,25aの長辺方向の端部であって、第1スペーサ71が取り付けられる側の端部(板状突出部24e,25eの被押圧面102bと反対側の端部)において、環状部24a,25aと一体的に形成されている。テーパ状部112は、板状突出部25eと同一部材であり、板状突出部25eから長辺方向の端部に突設されている。テーパ状部112は、板状突出部25eと同一平面上に配置される底板部112aと、この底板部112aから板状突出部24e側に屈曲する板状の屈曲板部112bとを有する。屈曲板部112bは、基端部にて底板部112aと連設し、底板部112aに対して短辺方向に沿った軸まわりで屈曲して、先端部にて板状突出部24eと当接している。底板部112aと屈曲板部112bとのなす角は鋭角である。テーパ状部112の外形は、短辺方向から視たときに略三角形状となっている。
テーパ状部112は、貫通板86に対して長辺方向に相対移動可能に設けられ、第1スペーサ71と当接する。テーパ状部112の屈曲板部112bの中央部には開口部112cが形成されている。開口部112cの形状は、長辺方向に沿って貫通板86を挿通可能に形成されている。これにより、テーパ状部112は、この開口部112cに貫通板86を挿通させることで、貫通板86に対して本体部21と共に長辺方向に相対移動可能となっている。テーパ状部112の屈曲板部112bの外表面(板状突出部24eとの当接面の反対側の面)は、第1スペーサ71(スペーサ)のテーパ面71c(第1テーパ面)と当接するテーパ面112d(第2テーパ面)が形成されている。テーパ面112dは、屈曲板部112bの先端側(軸方向の板状突出部24e側)では本体部21との長辺方向の間隙が小さく、屈曲板部112bの基端側(軸方向の板状突出部25e側)に進むにつれて本体部21との長辺方向の間隙が徐々に大きくなるような傾斜を有している。
また、開口部112cは、屈曲板部112bの基端側では底板部112aとの境界まで到達しており、ここでは屈曲板部112bと連設していない底板部112aの端部が露出している。底板部112aの端部には、貫通板86の螺合孔86bと軸方向で重畳する部分に、螺合孔86bの形状に沿って切欠き部112eが形成されている。
第1スペーサ71に設けられるテーパ面71cと、テーパ状部112に設けられるテーパ面112dは、締結ボルト67が軸方向周りの回転に伴って、軸方向に沿って螺合孔86b側に接近した際に、締結ボルト67と螺合孔86bとの間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向、すなわち、長辺方向の貫通板86の抜け止め部(切欠き部86aに嵌合されている抜け止め部材64)側に、第1スペーサ71がテーパ状部112を押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有する。本実施形態では、第1スペーサ71のテーパ面71cは、軸方向に沿って締結ボルト67の頭部67b側から離間するにしたがって、第1スペーサ71の直立部71bの長辺方向の幅が徐々に縮小するような傾斜を有している。第1スペーサ71のテーパ面71cと、テーパ状部112のテーパ面112dとは、互いに正対して配置されている。
本実施形態において、締付部113を本体部21に組み付ける際には、まず、貫通板86の切欠き部86aに対して、軸方向上方から抜け止め部材64が嵌合され、本体部21の被押圧面102b側の開口から、貫通板86の他端部86eが挿入される。貫通板86は、抜け止め部材64の当接面64cが本体部21の被押圧面102bと当接するまで挿入される。これにより、貫通板86は、本体部21のスリット24d,25dを横断するように、板状突出部24e,25eを貫通し、貫通板86の他端部86e側がテーパ状部112の開口部112cから長辺方向の外側に進出される。
次に、テーパ状部112のテーパ面112dに、第1スペーサ71のテーパ面71cが当接するように、かつ、第1スペーサ71の孔部が貫通板86の螺合孔86bと軸方向に重畳するように、第1スペーサ71がテーパ状部112及び貫通板86に組み合わせられる。軸方向上方から締結ボルト67が、第1スペーサ71の孔部に挿通されて、貫通板86の螺合孔86bに螺合される。このようにして、締付部113が本体部21に組み付けられる。
第九実施形態のバッテリー端子1hにおいて、テーパ状部112に設けられるテーパ面112dは、第七実施形態のバッテリー端子1fにおける第2スペーサ62に設けられるテーパ面62dを代用するものであるので、これらのテーパ面112d及びテーパ面62dの機能は同様である。したがって、第九実施形態のバッテリー端子1hは、第1スペーサ71に設けられるテーパ面71cと、テーパ状部112に設けられるテーパ面112dとを備える構成であるので、これらのテーパ面71c及びテーパ面112dの作用によって、第七実施形態のバッテリー端子1fと同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。