JPWO2011161777A1 - 車両走行制御装置 - Google Patents

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Abstract

車両走行制御装置(1)は、操舵入力軸(12)の回転角である操舵角と、操舵輪(FL、FR)の回転角である舵角との関係を変化させることが可能な舵角可変手段(200、300)と、車両の軌跡を該車両の目標走行路に近づけるように、制御量を決定して舵角可変手段を制御する軌跡制御手段(100)とを、少なくとも備える。該車両走行制御手段は、更に、車両の運転者により操舵部材(11)を介して操舵入力軸に入力される操舵入力の操舵方向と、軌跡制御手段により決定された制御量の舵角制御方向とが一致するか否かに応じて、(i)操舵入力の操舵量に対する舵角の変化割合、又は(ii)決定された制御量、を補正する補正手段(100)を備える。

Description

本発明は、例えばEPS(Electronic controlled Power Steering:電子制御式パワーステアリング装置)、VGRS(Variable Gear Ratio Steering:可変ギア比ステアリング装置)等の各種操舵機構を備えた車両において、例えばLKA(Lane Keeping Assist:レーンキープアシスト)等を行う車両走行制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、例えば、車両のレーンキープモード時には、目標舵角を達成するために電動式パワーステアリング及び各車輪の制動圧を制御すると共に、走行路に対する車両の横方向位置のずれやヨー角のずれを低減するためにステアリングギア比可変装置を制御する装置が提案されている(特許文献1参照)。
或いは、車両の後輪の舵角を制御することにより該車両の操舵制御を行っている際に、運転者の意識的なハンドル操作が検出された場合は、ハンドル操作状態及びハンドル操作方向に応じて操舵制御の制御量を減少補正する装置が提案されている(特許文献2参照)。
或いは、車両が走行レーンをキープして走行するように、電動パワーステアリング装置により操舵トルクが制御されている際に、目標制御トルクの操舵方向と運転やの操舵トルクの操舵方向とが異なり、制御干渉が発生している場合、目標制御トルクの目標制御量を低減する装置が提案されている(特許文献3参照)。
或いは、舵角が目標舵角に等しくなるようにモータ電流を制御し操舵モータを回転制御することにより操舵する装置が提案されている(特許文献4参照)。ここでは特に、トルクセンサが検出した舵輪の操舵トルク値が示す方向と目標舵角の方向とが同方向であるときは、操舵トルク値の増加に応じてモータ電流を減少させ、操舵トルク値が示す方向と目標舵角の方向とが逆方向のときは、操舵トルク値の増加に応じてモータ電流を増加させることが開示されている。
特開2007−160998号公報 特開平11−245832号公報 特開2009−190464号公報 特開平11−078934号公報
しかしながら、上述の特許文献1乃至4に記載の技術では、車両を目標の軌道に追従させる事はできるものの、運転者に対するフィーリングに改善の余地がある。
本発明は例えば上記点に鑑みてなされたものであり、車両の応答性に起因して運転者が違和感を覚えることを抑制することができる車両走行制御装置を提案することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両走行制御装置は、操舵入力軸の回転角である操舵角と、操舵輪の回転角である舵角との関係を変化させることが可能な舵角可変手段と、車両の軌跡を前記車両の目標走行路に近づけるように、制御量を決定して前記舵角可変手段を制御する軌跡制御手段とを備える車両走行制御装置であって、前記車両の運転者により操舵部材を介して前記操舵入力軸に入力される操舵入力の操舵方向と、前記軌跡制御手段により決定された制御量の舵角制御方向とが一致するか否かに応じて、(i)前記操舵入力の操舵量に対する前記舵角の変化割合、又は(ii)前記決定された制御量、を補正する補正手段を備える。
本発明の車両走行制御装置によれば、当該車両走行制御装置は、舵角可変手段と軌跡制御手段とを少なくとも備えて構成される。舵角可変手段は、操舵入力軸の回転角である操舵角と、操舵輪の回転角である舵角との関係を変化させることが可能である。舵角可変手段は、操舵角と舵角との関係を、段階的に又は連続的に可変とし得る、物理的、機械的、電気的又は磁気的な各種装置を包含する概念である。舵角可変手段によれば、操舵角と舵角との関係が一義的に規定されず、例えば操舵角と舵角との比を変化させることが可能となる、或いは、操舵角に無関係に舵角を変化させることが可能となる。
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる軌跡制御手段は、車両の軌跡を該車両の目標走行路に近づけるように、制御量を決定して舵角可変手段を制御する。ここで、「制御量」は、舵角可変手段に対応する制御量(例えば、舵角の制御量)であって、車両の軌跡を該車両の目標走行路に近づけるための制御量である。この制御量の決定に際しては、既存の各種アルゴリズム等を適用可能である。具体的には例えば、車載カメラ等により撮像された目標走行路の画像に基づいて、目標走行路の曲率、目標走行路を規定する白線等と車両との位置偏差及びヨー角偏差等が算出又は推定され、それらに基づいて目標走行路に対して車両の軌跡を近づけるための目標横加速度が算出又は推定される等した後に、これら算出又は推定された目標横加速度に基づいて、例えば舵角可変手段により舵角が変更されることに起因して該目標横加速度が得られるように、制御量が決定される。
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、軌跡制御手段を備える車両では、運転者が操舵部材を介して操舵入力軸に入力される人為的な操舵入力があった場合(所謂、オーバーライド時)には、運転者による操舵と、軌跡制御手段による制御とが互いに干渉し、運転者が違和感を覚える可能性がある。特に、運転者による操舵と軌跡制御手段による制御とは非連動であり、車両の挙動が過剰又は不足するため、運転者が車両の挙動を予測することが困難となり違和感を覚える可能性がある。
具体的には例えば、運転者が操舵を開始した時点よりも所定時間遅れて軌跡制御手段による制御が開始されるため、運転者が操舵を開始した時点から軌跡制御手段による制御が開始されるまでは車両の応答が比較的速くなる、他方で、軌跡制御手段による制御が開始された後の車両の応答は比較的遅くなるので、運転者が違和感を覚える可能性がある。
尚、オーバーライド時には、軌跡制御手段による制御を停止する方法も考えられるが、軌跡制御手段による制御の停止時又は再開時に、不連続な車両挙動となってしまい、運転者が違和感を覚える可能性がある。
そこで本発明では、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる補正手段により、車両の運転者により操舵部材を介して操舵入力軸に入力される操舵入力の操舵方向と、軌跡制御手段により決定された制御量の舵角制御方向とが一致するか否かに応じて、(i)操舵入力の操舵量に対する舵角の変化割合、又は(ii)決定された制御量、が補正される。
具体的には例えば、操舵方向と舵角制御方向が一致する場合(例えば車線の中央等である目標走行路に近づけるように、運転者が操舵した場合)、軌跡制御手段による制御に起因して車両の軌跡が目標走行路に近づくような舵角が予め与えられているので、補正手段は、(i)操舵量に対する舵角の変化割合を低減して、又は(ii)決定された制御量を低減して(即ち、軌跡制御手段による制御に起因して付与される舵角を小さくして)、車両の応答が過剰になることを抑制する。
他方、操舵方向と舵角制御方向が不一致となる場合(例えば、障害物等を回避するために車線の端に車両を寄せる場合)、軌跡制御手段による制御に起因して車両の軌跡が目標走行路に近づくような舵角(即ち、操舵方向とは反対の舵角)が与えられるので、補正手段は、(i)操舵量に対する舵角の変化割合を増加して、又は(ii)決定された制御量を低減して、車両の応答が不足することを抑制する。
このため、運転者が操舵を開始した時点から軌跡制御手段による制御が開始されるまでの車両の応答性と、軌跡制御手段による制御が開始された後の車両の応答性との差を低減又は無くすことができるので、運転者が車両の応答性に起因して違和感を覚えることを抑制することができる。
尚、操舵方向と舵角制御方向が一致するか否かは、例えば、操舵角及び舵角の一の方向への変化を正の値で示し、該一の方向とは反対方向への変化を負の値で示し、操舵角の値の正負と、舵角の値の正負とが一致しているか否かに基づいて、判定すればよい。或いは、運転者が操舵入力を行った後の、例えば車両のヨー角偏差等に基づいて、操舵方向と舵角制御方向が一致するか否かを判定すればよい。
本発明の車両走行制御装置の一態様では、前記補正手段は、前記車両の走行状態に応じて前記変化割合を補正する。
この態様によれば、運転者の操作意思がより反映され、運転者が車両の応答性に起因して違和感を覚えることをより抑制することができる。
「車両の走行状態」とは、例えば、車両の実際の軌跡と該車両の目標走行路との差(所謂、“レーン追従誤差”)等を意味する。
本願発明者の研究によれば、一般に、レーン追従誤差が大きいほど、車両の軌跡を目標走行路に近づけようとして、軌跡制御手段による制御の制御量が大きくなり、運転者の操作意思が反映されにくくなることが判明している。
しかるに本発明では、補正手段により、車両の走行状態に応じて変化割合が補正されるので、運転者の操作意思が比較的反映されやすくなる。具体的には例えば、補正手段は、レーン追従誤差が大きいほど、変化割合が大きくなるように補正する。
本発明の車両走行制御装置の他の態様では、前記補正手段は、前記操舵方向と前記舵角制御方向とが異なる場合は、前記操舵方向と前記舵角制御方向とが一致する場合に比べて、前記変化割合が大きくなるように補正する。
この態様によれば、操舵方向と舵角制御方向とが一致する場合と、異なる場合とで、車両の応答性に差が生じることを抑制することができ、実用上非常に有利である。
本発明の車両走行制御装置の他の態様では、前記補正手段は、前記目標走行路と前記車両の実際の位置との関係に応じて、前記決定された制御量を補正する。
この態様によれば、運転者の操作意思を適切に反映することができ、実用上非常に有利である。
例えば、車線の端等、車両が目標走行路から離れた位置を走行している場合、運転者が何らかの意図(例えば右折、左折、車線変更等)を持っていると考察される。そこで、本発明では、補正手段により、目標走行路と車両の実際の位置との関係に応じて、軌跡制御手段により決定された制御量が補正される。具体的には例えば、補正手段は、車両の実際の位置が目標走行路から離れるほど、軌跡制御手段により決定された制御量が小さくなるように補正する。
尚、補正手段は、車両の実際の位置が目標走行路に近づくほど、軌跡制御手段により決定された制御量が大きくなるように補正する。このように構成すれば、比較的容易にして、車両が目標走行路を維持することができ、実用上非常に有利である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
第1実施形態に係る車両の構成を概念的に示す概略構成図である。 第1実施形態に係るECUが実行する車両走行制御処理を示す制御概要図である。 VGRSに係る補正マップの概念を示す概念図である。 LKAに係る補正マップの概念を示す概念図である。 比較例に係るステア配分ゲインマップの一例である。 比較例に係るLKA配分ゲインマップの一例である。 比較例に係る車両のハンドル角度、ピニオン角度及びLKA目標角度各々の時間変化を示すタイムチャートの一例である。 第2実施形態に係るECUが実行する車両走行制御処理を示す制御概要図である。
以下、本発明に係る車両走行制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明に係る車両走行制御装置の第1実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
先ず、本実施形態に係る車両走行制御装置が搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を概念的に示す概略構成図である。
図1において、車両10は、操舵輪として左右一対の前輪FL及びFRを備え、これら前輪が転舵することにより所望の方向に進行可能に構成されている。車両10は、ECU(Electronic Control Unit)100、VGRSアクチュエータ200、VGRS駆動装置300、EPSアクチュエータ400及びEPS駆動装置500を備える。
ECU100は、夫々不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作全体を制御可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、LKA制御、EPS制御及びVGRS制御を夫々実行可能に構成されている。ここで、LKA制御は、車両10を目標走行路(レーン)に追従させる制御である。尚、ECU100は、本発明に係る「軌跡制御手段」の一例である。
車両10では、ステアリングホイル11(一般的に、“ハンドル”とも称される)を介して運転者より与えられる操舵入力が、ステアリングホイル11と同軸回転可能に連結され、ステアリングホイル11と同一方向に回転可能な軸体たるアッパーステアリングシャフト12に伝達される。本実施形態に係る「ステアリングホイル11」及び「アッパーステアリングシャフト12」は、夫々、本発明に係る「操舵部材」及び「操舵入力軸」の一例である。アッパーステアリングシャフト12は、その下流側の端部においてVGRSアクチュエータ200に連結されている。
VGRSアクチュエータ200は、ハウジング201、VGRSモータ202及び減速機構203を備えた、本発明に係る「舵角可変手段」の一例である。
ハウジング201は、VGRSモータ202及び減速機構203を収容してなるVGRSアクチュエータ200の筐体である。ハウジング201には、前述したアッパーステアリングシャフト12の下流側の端部が固定されており、ハウジング201は、アッパーステアリングシャフト12と一体に回転可能となっている。
VGRSモータ202は、回転子たるロータ202a、固定子たるステータ202b及び駆動力の出力軸たる回転軸202cを有するDCブラシレスモータである。ステータ202bは、ハウジング201内部に固定されており、ロータ202aは、ハウジング201内部で回転可能に保持されている。回転軸202cは、ロータ202aと同軸回転可能に固定されており、その下流側の端部が減速機構203に連結されている。
減速機構203は、差動回転可能な複数の回転要素(サンギア、キャリア及びリングギア)を有する遊星歯車機構である。この複数の回転要素のうち、サンギアは、VGRSモータ202の回転軸202cに連結されており、また、キャリアは、ハウジング201に連結されている。そしてリングギアが、ロアステアリングシャフト13に連結されている。
このような構成を有する減速機構203によれば、ステアリングホイル11の操作量に応じたアッパーステアリングシャフト12の回転速度(即ち、キャリアに連結されたハウジング201の回転速度)と、VGRSモータ202の回転速度(即ち、サンギアに連結された回転軸202cの回転速度)とにより、残余の一回転要素たるリングギアに連結されたロアステアリングシャフト13の回転速度が一義的に決定される。この際、回転要素相互間の差動作用により、VGRSモータ202の回転速度を増減制御することによって、ロアステアリングシャフト13の回転速度を増減制御することが可能となる。即ち、VGRSモータ202及び減速機構203の作用により、アッパーステアリングシャフト12とロアステアリングシャフト13とは相対回転可能である。また、減速機構203における各回転要素の構成上、VGRSモータ202の回転速度は、各回転要素相互間のギア比に応じて定まる所定の減速比に従って減速された状態でロアステアリングシャフト13に伝達される。
このように、車両10では、アッパーステアリングシャフト12とロアステアリングシャフト13とが相対回転可能であることによって、アッパーステアリングシャフト12の回転量たる操舵角MAと、ロアステアリングシャフト13の回転量に応じて一義的に定まる(後述するラックアンドピニオン機構のギア比も関係する)操舵輪たる前輪の舵角θstとの比たる操舵伝達比が、予め定められた範囲で連続的に可変となる。
尚、減速機構204は、ここに例示した遊星歯車機構のみならず、他の態様(例えば、アッパーステアリングシャフト12及びロアステアリングシャフト13に夫々歯数の異なるギアを連結し、各ギアと一部分で接する可撓性のギアを設置すると共に、係る可撓性ギアを、波動発生器を介して伝達されるモータトルクにより回転させることによって、アッパーステアリングシャフト12とロアステアリングシャフト13とを相対回転させる態様等)を有していてもよいし、遊星歯車機構であれ上記と異なる物理的、機械的、又は機構的態様を有していてよい。
VGRS駆動装置300は、VGRSモータ202のステータ202bに対し通電可能に構成された、PWM回路、トランジスタ回路及びインバータ等を含む電気駆動回路である。VGRS駆動装置300は、図示せぬバッテリと電気的に接続されており、当該バッテリから供給される電力によりVGRSモータ202に駆動電圧を供給することが可能に構成されている。また、VGRS駆動装置300は、ECU100と電気的に接続されており、その動作はECU100により制御される構成となっている。尚、VGRS駆動装置300は、VGRSアクチュエータ200と共に、本発明に係る「舵角可変手段」の一例を構成している。
ロアステアリングシャフト13の回転は、ラックアンドピニオン機構に伝達される。ラックアンドピニオン機構は、ロアステアリングシャフト13の下流側端部に接続されたピニオンギア14及び当該ピニオンギアのギア歯と噛合するギア歯が形成されたラックバー15を含む操舵力伝達機構であり、ピニオンギア14の回転がラックバー15の図中左右方向の運動に変換されることにより、ラックバー15の両端部に連結されたタイロッド及びナックル(符号省略)を介して操舵力が各操舵輪に伝達される構成となっている。即ち、車両10では所謂ラックアンドピニオン式の操舵方式が実現されている。
EPSアクチュエータ400は、永久磁石が付設されてなる回転子たる不図示のロータと、当該ロータを取り囲む固定子であるステータとを含むDCブラシレスモータとしてのEPSモータを備える。このEPSモータは、EPS駆動装置500を介した当該ステータへの通電によりEPSモータ内に形成される回転磁界の作用によってロータが回転することにより、その回転方向にアシストトルクTAを発生可能に構成されている。
一方、EPSモータの回転軸たるモータ軸には、不図示の減速ギアが固定されており、この減速ギアはまた、ピニオンギア14と噛合している。このため、EPSモータから発せられるアシストトルクTAは、ピニオンギア14の回転をアシストするアシストトルクとして機能する。ピニオンギア14は、先に述べたようにロアステアリングシャフト13に連結されており、ロアステアリングシャフト13は、VGRSアクチュエータ200を介してアッパーステアリングシャフト12に連結されている。従って、アッパーステアリングシャフト12に加えられる運転者操舵トルクMTは、アシストトルクTAにより適宜アシストされた形でラックバー15に伝達され、運転者の操舵負担が軽減される構成となっている。
EPS駆動装置500は、EPSモータのステータに対し通電可能に構成された、PWM回路、トランジスタ回路及びインバータ等を含む電気駆動回路である。EPS駆動装置500は、図示せぬバッテリと電気的に接続されており、当該バッテリから供給される電力によりEPSモータに駆動電圧を供給することが可能に構成されている。また、EPS駆動装置500は、ECU100と電気的に接続されており、その動作はECU100により制御される構成となっている。
一方、車両10には、操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17及び回転センサ18を含む各種センサが備わっている。
操舵トルクセンサ16は、運転者からステアリングホイル11を介して与えられる運転者操舵トルクMTを検出可能に構成されたセンサである。より具体的に説明すると、アッパーステアリングシャフト12は、上流部と下流部とに分割されており、図示せぬトーションバーにより相互に連結された構成を有している。係るトーションバーの上流側及び下流側の両端部には、回転位相差検出用のリングが固定されている。このトーションバーは、車両10の運転者がステアリングホイル11を操作した際にアッパーステアリングシャフト12の上流部を介して伝達される操舵トルク(即ち、運転者操舵トルクMT)に応じてその回転方向に捩れる構成となっており、係る捩れを生じさせつつ下流部に操舵トルクを伝達可能に構成されている。従って、操舵トルクの伝達に際して、先に述べた回転位相差検出用のリング相互間には回転位相差が発生する。操舵トルクセンサ16は、係る回転位相差を検出すると共に、係る回転位相差を操舵トルクに換算して操舵トルクMTに対応する電気信号として出力可能に構成されている。また、操舵トルクセンサ16は、ECU100と電気的に接続されており、検出された操舵トルクMTは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
操舵角センサ17は、アッパーステアリングシャフト12の回転量を表す操舵角MAを検出可能に構成された角度センサである。操舵角センサ17は、ECU100と電気的に接続されており、検出された操舵角MAは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
回転センサ18は、VGRSアクチュエータ200におけるハウジング201(即ち、回転角で言うならばアッパーステアリングシャフト12と同等である)とロアステアリングシャフト13との回転位相差Δθを検出可能に構成されたロータリーエンコーダである。回転センサ18は、ECU100と電気的に接続されており、検出された回転位相差Δθは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ19は、車両10の速度たる車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ19は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車載カメラ20は、車両10のフロントノーズに設置され、車両10の前方における所定領域を撮像可能に構成された撮像装置である。車載カメラ20は、ECU100と電気的に接続されており、撮像された前方領域は、画像データとしてECU100に一定又は不定の周期で送出される構成となっている。ECU100は、この画像データを解析し、LKA制御に必要な各種データを取得することが可能である。
本実施形態に係る車両走行制御手段1は、車両10の運転者によりステアリングホイル11を介してアッパーステアリングシャフト12に入力される操舵入力の操舵方向と、ECU100により決定されたVGRS駆動装置300に係る制御量の舵角制御方向とが一致するか否かに応じて、(i)操舵入力の操舵量に対する舵角の変化割合、又は(ii)該決定された制御量、を補正する、本発明に係る「補正手段」の一例としての、ECU100を備えて構成されている。
本実施形態では、車両10の各種電子制御用のECU100の一部を、車両走行制御装置1の一部として用いている。尚、本発明に係る「補正手段」等の物理的、機械的及び電気的な構成は、上述した構成に限定されるものではなく、例えば、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
次に、車両走行制御装置1の一部としてのECU100が実行する車両走行制御処理について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係るECUが実行する車両走行制御処理を示す制御概要図である。本実施形態では、車両10の車室内に予め設置されたLKA制御発動用の操作ボタンが運転者により操作される等した結果としてLKAモードが選択されているものとする。
ECU100は、車両10に備わる各種センサに係るセンサ信号等を含む各種信号を読み込む。ECU100は、読み込まれた信号等に基づいて、例えばヨー角(又はヨー角偏差)、オフセット(即ち、LKAの目標走行路を規定する白線と車両10との横方向への偏差)等を算出又は推定する。
図2において、ECU100は、ヨー角及びオフセットに基づいて、本発明に係る「制御量」の一例としての、LKA基本目標角をマップ等から決定する。続いて、ECU100は、図2の(2)において、ヨー角、オフセット及び車速、並びに例えば図4に示すような補正マップに基づいて、決定されたLKA基本目標角を補正して、補正されたLKA基本目標角であるLKA補正目標角を算出する。
図4は、LKAに係る補正マップの概念を示す概念図である。図4において、横軸は、オフセット又はヨー角偏差であり、縦軸は、LKA許容速度又はLKA配分ゲインである。尚、横軸の原点(即ち、“0”)は、目標走行路に一致している。
本実施形態では特に、車両10の軌跡が目標走行路から逸脱する方向へ変化している場合、目標走行路から逸脱するほど、LKA許容速度又はLKA配分ゲインが小さくなる(図4における、第1象限及び第3象限参照)。他方、車両10の軌跡が目標走行路へ近づく方向へ変化している場合、目標走行路へ近づくほど、LKA許容速度又はLKA配分ゲインが小さくなる(図4における、第2象限及び第4象限参照)。
また、LKA許容速度又はLKA配分ゲインは、運転者によるステアリングホイル11の操舵速度に応じても変化する。具体的には、図4において実線で示したLKA許容速度又はLKA配分ゲインに対応する操舵速度よりも速い場合、LKA許容速度又はLKA配分ゲインは、例えば図4において破線で示すように、絶対値が小さくなる方向へ変化する。
再び図2に戻り、運転者によりステアリングホイル11が操舵されない場合(即ち、オーバーライドがない場合)、算出されたLKA補正目標角が、前輪FL及びFRの目標角(即ち、VGRS最終目標角)となる。
他方、運転者によりステアリングホイル11が操舵された場合(即ち、オーバーライドがある場合)、ECU100は、上述したLKA補正目標角の算出と並行して、操舵角MA、及び操舵角MAの時間微分である操舵角速度に基づいて、アッパーステアリングシャフト12の回転角である操舵角MAに対するロアステアリングシャフト13の相対回転角の基本値であるVGRS基本目標角をマップ等から決定する。尚、VGRS基本目標角は、本発明に係る「変化割合」の一例である。
続いて、ECU100は、図2の(1)において、ヨー角及びオフセット、並びに例えば図3に示すような補正マップに基づいて、決定されたVGRS基本目標角を補正して、補正されたVGRS基本目標角であるVGRS補正目標角を算出する。
図3は、VGRSに係る補正マップの概念を示す概念図である。図3において、横軸は、オフセット又はヨー角偏差であり、縦軸は、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインである。尚、横軸の原点(即ち、“0”)は、目標走行路に一致している。
本実施形態では特に、車両10を目標走行路から逸脱させる方向へ操舵する(即ち、切り込む)場合、目標走行路から逸脱するほど、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインが大きくなる(図3における、第1象限及び第3象限参照)。他方、車両10を目標走行路へ近づける方向へ操舵する(即ち、戻す)場合、目標走行路へ近づくほど、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインが大きくなる(図3における、第2象限及び第4象限参照)。
また、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインは、運転者によるステアリングホイル11の操舵速度に応じても変化する。具体的には、図3において実線で示したVGRS許容速度又はVGRS配分ゲインに対応する操舵速度よりも速い場合、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインは、例えば図3において破線で示すように、絶対値が大きくなる方向へ変化する。
再び図2に戻り、オーバーライドがある場合、ECU100は、算出されたLKA補正目標角と算出されたVGRS補正目標角との加算値を、前輪FL及びFRの目標角とする。
前輪FL及びFRの目標角が算出されると、ECU100は、該算出された前輪FL及びFRの目標角に基づいて、VGRS駆動装置300(図1参照)を制御し、VGRSアクチュエータ200のVGRSモータ202を、該算出された前輪FL及びFRの目標角に対応する分回転させる。
ここで、車両走行制御装置1の比較例について、図5乃至図7を参照して説明する。尚、比較例に係る車両走行制御装置が搭載される車両の構成は、上述した車両10の構成と同様である。
比較例に係る車両走行制御装置が実行する車両走行制御処理の制御概要は、使用されるマップが一部異なる以外は、図2に示した制御概要と同様である。具体的には、図2の(1)において、決定されたVGRS基本目標角を補正する際に、図5に示すような補正マップが使用される。また、図2の(2)において、決定されたLKA基本目標角を補正する際に、図6に示すような補正マップが使用される。
図5は、比較例に係るステア配分ゲインマップの一例である。図5において、横軸は、オフセット又はヨー角偏差である。尚、横軸の原点(即ち、“0”)は、目標走行路に一致している。図5に示すように、比較例に係るステア配分ゲインマップは、車両の軌跡が目標走行路から外れるほど、運転者の入力が低減されるように構成されている。
図6は、比較例に係るLKA配分ゲインマップの一例である。図6において、横軸は、オフセット又はヨー角偏差である。尚、横軸の原点(即ち、“0”)は、目標走行路に一致している。図6に示すように、比較例に係るLKA配分ゲインマップは、車両の軌跡が目標走行路から外れるほど、LKAの修正が許容される。
即ち、比較例に係る車両走行制御処理では、車両の軌跡が目標走行路から逸脱するほど、運転者の操舵入力よりもLKAに係る制御が優先される。逆に言えば、比較例に係る車両走行制御処理では、車両の軌跡が目標走行路に近づくほど、LKAに係る制御よりも運転者の操舵入力が優先される。加えて、LKAに係る制御は、運転者の操舵入力よりも所定時間遅れて開始される。このため、車両の挙動が、運転者が意図していた挙動よりも過剰又は不足する可能性があり、運転者が違和感を覚える可能性がある。
具体的に、図7のタイムチャートを参照して説明する。図7において、「ハンドル角度」、「LKA角度」及び「ピニオン角度」とは、夫々、「操舵角」、「LKA制御に係る目標角」及び「車両の最終舵角」を意味する。
LKAモードが選択されている際に、図7の時刻t1において、運転者が、車両の軌跡が目標走行路から逸脱するようにステアリングホイル11を操舵したとする。図7の時刻t2までは、LKAに係る制御が開始されず、また、上述の如く、車両の軌跡が目標走行路に近いほど運転者の操舵入力が優先されるため、時刻t1から時刻t2までの期間は、運転者の意図したとおりに車両が反応する。
他方で、時刻t2以降は、LKAに係る制御に起因して、運転者の操舵入力(即ち、ハンドル角度)とは反対方向にLKA角度が設定され、また、上述の如く、車両の軌跡が目標走行路から外れるほどLKAに係る制御が優先されるので、車両が運転者の意図したとおりに旋回しないおそれがある(図7のピニオン角度参照)。即ち、車両の応答が比較的遅くなる又は車両が応答しなくなる。
従って、時刻t1から時刻t2までの期間における車両の応答性と、時刻t2以降の車両の応答性との違いに起因して、運転者が違和感を覚える可能性がある。
また、図7の時刻t3において、運転者が車両の軌跡が目標走行路に近づけるようにステアリングホイル11を操舵したとする。図7の時刻t4までは、LKAに係る制御が開始されず、また、車両の軌跡が目標走行路に近づくようにLKA角度が設定されているため、時刻t3から時刻t4までの期間は、車両の挙動が過剰になるおそれがある。
他方、時刻t4以降は、LKAに係る制御に起因して、運転者の操舵入力とは反対方向にLKA角度が設定されるので、車両が運転者の意図している方向に旋回しないおそれがある。
従って、時刻t3から時刻t4までの期間における車両の応答性と、時刻t4以降の車両の応答性との違いに起因して、運転者が違和感を覚える可能性がある。
しかるに車両走行制御装置1に係る車両走行制御処理では、上述の如く、車両10の軌跡が目標走行路から逸脱する方向へ、運転者がステアリングホイル11を操舵した場合(即ち、操舵方向とLKAに係る制御に起因する舵角制御方向とが不一致となる場合)、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインが大きくなるように構成されているため(図3参照)、及び/又はLKA許容速度又はLKA配分ゲインが小さくなるように構成されているため(図4参照)、運転者の操舵入力がLKAに係る制御よりも優先される。この結果、運転者の意図したとおりに車両10が反応する。
また、車両10の軌跡が目標走行路に近づく方向へ、運転者がステアリングホイル11を操舵した場合(即ち、操舵方向とLKAに係る制御に起因する舵角制御方向とが一致する場合)、VGRS許容速度又はVGRS配分ゲインが小さくなるように構成されているため(図3参照)、及び/又はLKA許容速度又はLKA配分ゲインが小さくなるように構成されているため(図4参照)、運転者の操舵に起因して車両の挙動が過剰になることを抑制することができる。
<第2実施形態>
本発明の車両走行制御装置に係る第2実施形態を、図8を参照して説明する。第2実施形態では、車両が4WS(4 Wheel Steering)車両であり、車両走行制御処理が4WS用に一部異なっている以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図8を参照して説明する。
本実施形態に係る車両走行制御装置1の一部としてのECU100が実行する車両走行制御処理について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係るECUが実行する車両走行制御処理を示す制御概要図である。
ECU100は、車両10に備わる各種センサに係るセンサ信号等を含む各種信号を読み込む。ECU100は、読み込まれた信号等に基づいて、例えば、カーブ半径(又は、目標走行路の曲率)、ヨー角(又はヨー角偏差)、横偏差(即ち、オフセット)等を算出又は推定する。
図8において、ECU100は、カーブ半径、ヨー角及び横偏差に基づいて、反力補償トルク、目標前輪舵角及び目標後輪舵角を算出する。尚、本実施形態に係る「目標前輪舵角」及び「目標後輪舵角」は、本発明に係る「制御量」の他の例である。続いて、ECU100は、図8の(2)及び(4)の各々において、ヨー角、オフセット及び車速、並びに例えば図4に示すような補正マップに基づいて、算出された目標前輪舵角及び目標後輪舵角を夫々補正して、補正された目標前輪舵角である補正目標前輪舵角、及び補正された目標後輪舵角である補正目標後輪舵角を算出する。
運転者によりステアリングホイル11が操舵されない場合(即ち、オーバーライドがない場合)、算出された補正目標前輪舵角及び補正目標後輪舵角が、夫々、前輪の最終目標角及び後輪の最終目標角となる。尚、前輪の最終目標角はVGRS最終目標角である。他方、後輪の最終目標角は、後輪の舵角を制御するアクチュエータ(図示せず)に係る制御量である。
他方、運転者によりステアリングホイル11が操舵された場合(即ち、オーバーライドがある場合)、ECU100は、上述した補正目標前輪舵角及び補正目標後輪舵角の算出と並行して、操舵角MA、及び操舵角MAの時間微分である操舵角速度に基づいて、アッパーステアリングシャフト12の回転角である操舵角MAに対する前輪FL及びFR各々の相対的な舵角である基本前輪目標角、及び操舵角MAに対する後輪(図示せず)の相対的な舵角である基本後輪目標角をマップ等から決定する。尚、本実施形態に係る「基本前輪目標角」及び「基本後輪目標角」は、本発明に係る「変化割合」の他の例である。
続いて、ECU100は、図8の(1)及び(3)の各々において、ヨー角及びオフセット、並びに例えば図3に示すような補正マップに基づいて、決定された基本前輪目標角及び基本後輪目標角を夫々補正して、補正された基本前輪目標角である補正前輪目標角、及び補正された基本後輪目標角である補正後輪目標角を算出する。
次に、ECU100は、算出された補正目標前輪舵角と算出された補正前輪目標角との加算値とを前輪の最終目標角とし、算出された補正目標後輪舵角と算出された補正後輪目標角との加算値とを後輪の最終目標角とする。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両走行制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…車両走行制御装置、10…車両、11…ステアリングホイル、12…アッパーステアリングシャフト、100…ECU、200…VGRSアクチュエータ、300…VGRS駆動装置

Claims (4)

  1. 操舵入力軸の回転角である操舵角と、操舵輪の回転角である舵角との関係を変化させることが可能な舵角可変手段と、車両の軌跡を前記車両の目標走行路に近づけるように、制御量を決定して前記舵角可変手段を制御する軌跡制御手段とを備える車両走行制御装置であって、
    前記車両の運転者により操舵部材を介して前記操舵入力軸に入力される操舵入力の操舵方向と、前記軌跡制御手段により決定された制御量の舵角制御方向とが一致するか否かに応じて、(i)前記操舵入力の操舵量に対する前記舵角の変化割合、又は(ii)前記決定された制御量、を補正する補正手段を備えることを特徴とする車両走行制御装置。
  2. 前記補正手段は、前記車両の走行状態に応じて前記変化割合を補正することを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
  3. 前記補正手段は、前記操舵方向と前記舵角制御方向とが異なる場合は、前記操舵方向と前記舵角制御方向とが一致する場合に比べて、前記変化割合が大きくなるように補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両走行制御装置。
  4. 前記補正手段は、前記目標走行路と前記車両の実際の位置との関係に応じて、前記決定された制御量を補正することを特徴とする請求項3に記載の車両走行制御装置。
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