JP4749995B2 - 車両用操舵制御装置 - Google Patents

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この発明は、運転者により操舵されるハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角を可変制御する角度重畳手段と、運転者の操舵トルクを補助する電動パワーアシスト手段とを備えた車両用操舵制御装置に関するものである。
従来から、ハンドルの操舵角に対する車輪の転舵角を可変制御する角度重畳手段と、運転者の操舵トルクを補助する電動パワーアシスト手段とを備えた車両操舵制御装置はよく知られている。また、この種の車両用操舵制御装置において、角度重畳手段が、運転者の操舵とは無関係に車輪の転舵角を転舵した場合には、車両が走行する路面から車輪を介してハンドルの回転方向に作用する路面反力トルクが変動して、操舵フィーリングが悪化することも知られている。
そこで、電動パワーアシスト手段で変動する路面反力トルクを補償するために、反力トルク補償制御機能を備えた車両用操舵制御装置が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、横風外乱などに対する補助反力トルク(以下、単に「補償トルク」という)に上限を定める車両用操舵装置も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
一般に、路面反力トルク変動を運転者に伝えないためには、電動パワーアシスト手段において、角度重畳手段の転舵による路面反力トルク変動を打ち消すための補償トルクを発生する必要がある。また、上記特許文献1、2に記載の従来装置のように、反力トルク補償制御を行うためには、角度重畳手段が転舵したことによって発生すると予測される路面反力トルクの変動分を正確に知る必要がある。
ここで、車輪の転舵角と路面反力トルクとの関係について説明する。
周知のように、車輪の横すべり角が小さい領域では、転舵角と路面反力トルクとの関係は、ほぼ比例関係(正の1次関数に対応)にあり、車速が大きくなると、転舵角に対する路面反力トルクの特性(1次関数)の傾きは大きくなる。よって、転舵角に対する路面反力トルクの傾きをマップデータとして取得しておき、角度重畳手段による転舵角に対して変動すると予測される路面反力トルクを演算することができる。
しかし、路面反力トルクの特性は、走行路面の状態の違いによって大きく影響を受け、路面摩擦係数が小さい(滑りやすい)路面では、発生する路面反力トルクが小さくなり、また、車輪の横すべり角が大きくなると、路面反力トルクが飽和および減少する。
したがって、特許文献1、2に記載の従来装置においては、実際に発生する路面反力トルクと補償トルクの演算値との間に誤差が生じ、特に、補償トルクの演算値が実際の路面反力トルクよりも過大である場合には、操舵フィーリングが悪化する可能性がある。
また、路面摩擦係数の推定値を用いて、変動すると予測される路面反力トルクを演算する手法や、車輪の転舵角に対する路面反力トルクの特性傾きの演算値を用いて、変動すると予測される路面反力トルクを演算する手法も知られているが、路面摩擦係数が小さい路面での転舵角と路面反力トルクとの関係は非線形性が強く、実際に転舵した場合の特性傾きが変化するので、特性傾きの演算値と異なる。また、急な路面摩擦係数の変化などにより、補償トルクの演算値と実際に変動する路面反力トルクとの間に誤差が生じる可能性がある。
特開2004−256008号公報(図2) 特開2005−153779号公報(図38) 特開平11−147474号公報(図6)
従来の車両用操舵制御装置では、運転者の操舵とは無関係に角度重畳手段が車輪の転舵角を転舵したことによる路面反力トルクの変動に対し、たとえば上記特許文献1、2のように、電動パワーアシスト手段で路面反力トルク変動を補償しているので、実際に発生する路面反力トルクよりも補償トルクの演算値が過大である場合には、運転者の操舵フィーリングが悪化するという課題があった。
また、上記特許文献3のように、補償トルクの演算値に上限を設定する場合にも、路面反力トルクが走行路面の状態によって大きく変動することから、実際には適切な上限値を設定することが困難であるという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、路面反力トルクに応じて補償トルクの演算値に制限をかける補償トルク制限手段を設け、補償トルクの演算値が実際の路面反力トルクよりも過大になることを防ぐことにより、運転者の操舵フィーリングを改善して、良好な操舵フィーリングを実現した車両用操舵制御装置を得ることを目的とする。
この発明による車両用操舵制御装置は、車両を操舵するために操作されるハンドルと、ハンドルに印加される操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサと、操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するパワーアシスト用電動アクチュエータを有する電動パワーアシスト手段と、操舵角に制御角度を重畳する角度重畳用電動アクチュエータを有し、操舵角に対する車両の車輪の転舵角を可変制御する角度重畳手段と、操舵角に対する制御角度の重畳によって変動する操舵トルクを補償するための補償トルクを演算する補償トルク演算手段と、を備え、補償トルクに応じてアシストトルクを補正する車両用操舵制御装置において、補償トルクを所定の制限値に制限する補償トルク制限手段と、車両が走行する路面から車輪を介してハンドルの回転方向に作用する路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出手段とをさらに備え、補償トルク制限手段は、路面反力トルクに応じて補償トルクに対する制限値を設定するものである。
この発明によれば、路面反力トルクに応じて補償トルクに制限を掛けるので、補償トルクが実際の路面反力トルクよりも過大になることが回避されて、運転者の操舵フィーリングを改善することができる。
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用操舵制御装置を概略的に示すブロック構成図である。
図1において、車両用操舵制御装置は、車両の運転者(図示せず)により操舵トルクTsensが印加されるハンドル1と、ハンドル1に印加される操舵トルクTsensを検出するトルクセンサ14と、操舵トルクTsens(検出値)に基づいて操舵トルクTsensを補助するためのアシストトルクを発生する電動パワーアシスト手段(後述する)と、を備えている。
また、この発明の実施の形態1に係る車両用操舵制御装置は、ハンドル1の操舵角θhを検出する操舵角センサ15と、車両状態信号18を出力する車両状態センサ1800(図2とともに後述する車速センサ1801、ヨーレートセンサ1802、横加速度センサ1803など)と、操舵角θhおよび車両状態信号18に基づき、操舵角θhに対する各車輪7a、7bの転舵角を可変制御するための制御角度を重畳する角度重畳手段(後述する)と、を備えている。
ここでは、煩雑さを回避するために、代表的に4輪車両の左右前輪車輪7a、7bのみに注目して説明するが、左右後輪に関しても同様である。
角度重畳手段は、操舵角センサ15および車両状態センサ1800と関連した目標重畳角生成手段17と、重畳角制御手段19と、角度重畳用電動アクチュエータ11と、第1の遊星ギア機構2と、第2の遊星ギア機構3とにより構成されている。
電動パワーアシスト手段は、トルクセンサ14、電流センサ1804、目標重畳角生成手段17および車両状態センサ1800内の車速センサ1801と関連した目標アシスト電流生成手段20と、アシスト電流制御手段21と、パワーアシスト用電動アクチュエータ9とにより構成されている。
第1の遊星ギア機構2は、ハンドル1のステアリング軸13を入力軸として、シャフト4を出力軸としている。第2の遊星ギア機構3は、第1の遊星ギア機構2の出力軸となるシャフト4を入力軸として、ピニオン軸8を出力軸としている。
操舵角センサ15はステアリング軸13に設けられ、トルクセンサ14およびパワーアシスト用電動アクチュエータ9はピニオン軸8に設けられている。これにより、ハンドル1の操舵角は、ステアリング軸13に配置された操舵角センサ15により検出され、操舵トルクTsensは、ピニオン軸8に配置されたトルクセンサ14により検出される。
電流センサ1804は、パワーアシスト用電動アクチュエータ9の駆動電流iepsを検出して目標アシスト電流生成手段20に入力する。
ピニオン軸8の出力端には、ラックアンドピニオン式ステアリングギア5およびナックルアーム6a、6bを介して、左前輪車輪7aおよび右前輪車輪7bに連結されている。
電動パワーアシスト手段において、目標アシスト電流生成手段20は、電流センサ1804からの駆動電流iepsと、トルクセンサ14からの操舵トルクTsensと、車速センサ1801からの出力信号(車速V)と、目標重畳角生成手段17の出力信号とに基づいて、パワーアシスト用電動アクチュエータ9に対する目標アシスト電流2001を生成する。アシスト電流制御手段21は、目標アシスト電流2001に応じてパワーアシスト用電動アクチュエータ9を駆動し、パワーアシスト用電動アクチュエータ9は、操舵トルクTsensを補助するためのアシストトルクを発生する。
パワーアシスト用電動アクチュエータ9の出力軸は、ウオーム10aと連結しており、ウオーム10aは、ピニオン軸8に連結されたウオームホイール10bと噛み合っている。
角度重畳手段において、目標重畳角生成手段17は、操舵角θhおよび車両状態信号18に基づいて角度重畳用電動アクチュエータ11の目標重畳角1701を生成し、重畳角制御手段19は、角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmtをフィードバックしながら目標重畳角1701に応じて角度重畳用電動アクチュエータ11を駆動する。これにより、角度重畳用電動アクチュエータ11は、操舵角θhに制御角度を重畳し、操舵角θhに対する車両の車輪の転舵角を可変制御する。
角度重畳用電動アクチュエータ11の出力軸は、ウオーム12aと連結しており、ウオーム12aは、第1の遊星ギア機構2に連結されたウオームホイール12bと噛み合っている。
角度重畳用電動アクチュエータ11には、モータ角度センサ16が設けられており、角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmtは、モータ角度センサ16により検出されて重畳角制御手段19に入力される。
第1の遊星ギア機構2は、ステアリング軸13に接続されたキャリア203と、キャリア203により支持されるプラネタリギア202a、202bと、プラネタリギア202a、202bに噛み合うサンギア201と、リングギア204と、リングギア204を回転させるためのウオームホイール12bとにより構成されている。
第2の遊星ギア機構3は、サンギア301と、キャリア303により支持されるプラネタリギア302a、302bと、固定されたリングギア304とにより構成されている。
第1の遊星ギア機構2のサンギア201と、第2の遊星ギア機構3のサンギア301とは、シャフト4により接続されている。
ラックアンドピニオン式ステアリングギア5は、ピニオン軸8に接続されたピニオン501と、ピニオン501に噛み合うラック502とにより構成されている。
ラック502は、ナックルアーム6a、6bを介して車輪7a、7bに接続され、ピニオン501は、ピニオン軸8を介して、第2の遊星ギア機構3のキャリア303に接続されている。
ここで、重畳角制御手段19、目標重畳角生成手段17、角度重畳用電動アクチュエータ11、第1の遊星ギア機構2および第2の遊星ギア機構3を有する角度重畳手段について、さらに具体的に説明する。
目標重畳角生成手段17は、操舵角センサ15により検出されるハンドル1の操舵角θh(運転者による操舵角)と、車両状態センサ1800(後述する車速センサ1801、ヨーレートセンサ1802、横加速度センサ1803など)の車両状態信号18から、角度重畳用電動アクチュエータ11の目標重畳角1701を生成する。
重畳角制御手段19は、モータ角度センサ16により検出される角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmtが目標重畳角生成手段17からの目標重畳角1701と等しくなるように、角度重畳用電動アクチュエータ11を駆動する。
このとき、第1の遊星ギア機構2から出力されるシャフト4の回転角θsは、運転者が操舵した操舵角θhと、角度重畳用電動アクチュエータ11による重畳角とから、第1の遊星ギア機構2の差動特性に応じて決定される。これにより、運転者が操舵した操舵角θhに対して、各車輪7a、7bの転舵角を可変制御することができる。
以下、第1の遊星ギア機構2内において、サンギア201からキャリア203までの減速比G1sと、リングギア204からキャリア203までの減速比G1rと、角度重畳用電動アクチュエータ11からリングギア204までの減速比(すなわち、ウオーム12aおよびウオームホイール12bによる減速機構の減速比)Gmtと、サンギア301からキャリア303までの減速比G2sとを用いて説明する。また、ピニオン軸8から各車輪7a、7bまでの減速比がラックアンドピニオン式ステアリングギア5によって決まることから、各車輪7a、7bの転舵角の代わりに、ピニオン軸8の転舵角θpを用いて説明する。
まず、ハンドル1の操舵角θh、角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmt、シャフト4の回転角θsおよびピニオン軸8の転舵角θpを用いて、以下の式(1)、式(2)の角度関係が成立する。
θs=G1s・θh+G1s・θmt/(G1r・Gmt) ・・・(1)
θs=G2s・θp ・・・(2)
式(1)、式(2)から、角度関係を表す以下の式(3)が求められる。
θp=G1s・θh/G2s+G1s・θmt/(G2s・G1r・Gmt) ・・・(3)
次に、遊星ギア機構1のサンギア201からキャリア203までの減速比G1sと、遊星ギア機構3のサンギア301からキャリア303までの減速比G2sを、以下の式(4)のように設定する。
G1s=G2s ・・・(4)
これにより、式(3)の角度関係式は、以下の式(5)の表される。
θp=θh+θmt/(G1r・Gmt) ・・・(5)
式(5)から明らかなように、運転者によるハンドル1の操舵角θhに対して、角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmtを制御することにより、ピニオン軸8の転舵角θpを可変制御することができる。すなわち、ハンドル1の操舵角θhに対する各車輪7a、7bの転舵角を可変制御することができる。
次に、目標アシスト電流生成手段20、アシスト電流制御手段21およびパワーアシスト用電動アクチュエータ9を有する電動パワーアシスト手段について説明する。
目標アシスト電流生成手段20は、トルクセンサ14により検出される操舵トルクTsensと、車速センサ1801から出力される車速Vとから、パワーアシスト用電動アクチュエータ9の目標アシスト電流2001を生成する。アシスト電流制御手段21は、パワーアシスト用電動アクチュエータ9の駆動電流iepsが目標アシスト電流2001と等しくなるようにパワーアシスト用電動アクチュエータ9を制御する。パワーアシスト用電動アクチュエータ9は、駆動電流iepsに対応するアシストトルクを出力し、運転者の操舵トルクTsensをアシストする。
図2は目標重畳角生成手段17および目標アシスト電流生成手段20の主要構成を示す機能ブロック図である。
図2において、車両の車速Vを検出する車速センサ1801と、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ1802と、車両の横加速度を検出する横加速度センサ1803とは、図1内の車両状態センサ1800に含まれている。
目標重畳角生成手段17は、角度重畳用電動アクチュエータ11のステアリングギア比可変用目標重畳角(以下、「第1の目標重畳角」という)θmt_ref1を演算するステアリングギア比可変用目標重畳角演算手段1711と、車両挙動安定化用目標重畳角(以下、「第2の目標重畳角」という)θmt_ref2を演算する車両挙動安定化用目標重畳角演算手段1712と、第1および第2の目標重畳角θmt_ref1、θmt_ref2を加算して最終的な目標重畳角1701を生成する加算器1713とを備えている。
目標アシスト電流生成手段20は、基本アシストトルクTcomp1を演算して基本アシストトルクTcomp1に対応した第1の目標アシスト電流ieps_ref1を出力する基本アシストトルク演算手段2011と、補償トルク(後述する目標補償トルク)Tcompを演算する補償トルク演算手段2012と、補償トルクTcompを制限後の補償トルクTcomp2に変換して補償トルクTcomp2に対応した第2の目標アシスト電流ieps_ref2を出力する補償トルク制限手段2013と、第1および第2の目標アシスト電流ieps_ref1、ieps_ref2を加算して目標アシスト電流2001を生成する加算器2015と、を備えている。
補償トルク演算手段2012は、操舵角θhに対する制御角度の重畳によって変動する操舵トルクTsensを補償するための補償トルクTcompを演算し、補償トルクTcompに応じてパワーアシスト用電動アクチュエータ9からのアシストトルクを補正可能にする。
補償トルク制限手段2013は、車両が走行する路面から各車輪7a、7bを介してハンドル1の回転方向に作用する路面反力トルク(たとえば、推定演算値Test)を検出する路面反力トルク検出手段2014を含み、路面反力トルクTestに応じて補償トルクTcompに対する所定の制限値を設定し、制限値に制限された補償トルクTcomp2に対応した第2の目標アシスト電流ieps_ref2を出力する。
路面反力トルク検出手段2014は、パワーアシスト用電動アクチュエータ9に供給される駆動電流iepsと、トルクセンサ14により検出された操舵トルクTsensとを用いて、後述する推定演算により路面反力トルクTestを検出する。
なお、図2において、路面反力トルク検出手段2014は、補償トルク制限手段2013内に含まれているが、補償トルク制限手段2013とは別に設けられてもよい。
次に、図3を参照しながら、図1、図2内の目標重畳角生成手段17について、具体的に説明する。
目標重畳角生成手段17において、ステアリングギア比可変用目標重畳角演算手段1711は、操舵角θh、車速Vを取り込み、運転者が操舵するハンドル1の操舵角θhに対する各車輪7a、7bの転舵角の比が、車速Vに応じて可変となるように、角度重畳用電動アクチュエータ11の第1の目標重畳角θmt_ref1を演算する。
第1の目標重畳角θmt_ref1は、ハンドル1の操舵角θhに対するピニオン軸8の転舵角θpの比R1を用いて、前述の式(5)から、以下の式(6)のように演算される。
θmt_ref1=G1r・Gmt・(R1−1)・θh ・・・(6)
一方、車両挙動安定化用目標重畳角演算手段1712は、ステアリングギア比可変用目標重畳角演算手段1711と同様に車両状態信号18を取り込み、車両挙動に応じて、角度重畳用電動アクチュエータ11が重畳する第2の目標重畳角θmt_ref2を演算する。
第2の目標重畳角θmt_ref2は、車両の目標ヨーレートγrefと、ヨーレートセンサ1802により計測されたヨーレートγとを用いて、以下の式(7)のように演算される。
θmt_ref2=Kp・(γref−γ) ・・・(7)
式(7)において、Kpは適切に設定された比例ゲインであり、車速Vに対して可変設定されてもよい。
また、たとえばハンドル1の操舵角θhが「0」であって車両が直進走行中の場合に、横風外乱などにより車両に外乱ヨーレートΔγが発生すると、第2の目標重畳角θmt_ref2は、以下の式(8)のように表される。
θmt_ref2=−Kp1・Δγ ・・・(8)
この場合、外乱ヨーレートΔγを低減する方向に各車輪7a、7bが転舵される。
また、各車輪7a、7bの制動力および駆動力の大きさから、車両に作用するモーメントトルクを推定し、モーメントトルクの推定値を打ち消すモーメントトルクを各車輪7a、7bの転舵で発生するように、第2の目標重畳角θmt_ref2を演算してもよい。
図3は車両制動時の状態を示す説明図であり、各車輪に作用する制動力および車両に作用する外乱モーメントの一例を模式的に示している。
図3においては、左右前輪車輪7a、7bの各制動力Ffl、Ffrと、左右後輪車輪22a、22bの各制動力Frl、Frrと、各制動力Ffl、Ffr、Frl、Frrによって車両重心に作用するモーメントトルクMdとが、それぞれ矢印で示されている。
素3において、各制動力Ffl、Ffr、Frl、Frrは、各車輪7a、7b、22a、22bのブレーキ圧から推定演算される。
ここで、各制動力によって車両重心に作用するモーメントトルクMdは、左右前輪車輪7a、7b間の距離Lf、左右後輪車輪22a、22b間の距離Lrを用いて、以下の式(9)のように表される。
Md=Ffl・Lf/2+Ffl・Lr/2−Ffr・Lf/2−Frr・Lr/2 ・・・(9)
よって、車両挙動安定化用目標重畳角生成手段1712は、式(9)から求まるモーメントトルクMdを打ち消すように、各前輪車輪7a、7bを転舵させる第2の目標重畳角θmt_ref2を、以下の式(10)のように設定する。
θmt_ref2=−Kp2・Md ・・・(10)
式(10)において、Kp2は適切に設定された比例ゲインであり、車速Vに対して可変設定されてもよい。
最終的な目標重畳角1701は、第1の目標重畳角θmt_ref1と、第2の目標重畳角θmt_ref2との和として、加算器1703から生成される。
以下、前述のように、重畳角制御手段19は、モータ角度センサ16により検出された角度重畳用電動アクチュエータ11の回転角θmtが、目標重畳角生成手段17から生成された目標重畳角1701と等しくなるように、角度重畳用電動アクチュエータ11を駆動する。
次に、図4〜図9を参照しながら、図1、図2内の目標アシスト電流生成手段20について、具体的に説明する。
図4および図5は車輪転舵角(横軸)と路面反力トルク(縦軸)との一般的関係を示す説明図である。
図4においては、路面摩擦係数が大きい路面(乾燥アスファルト路面など)における車輪転舵角に対する路面反力トルクの特性例を示しており、破線曲線は車速Vが小さい場合の特性を示し、実線曲線は車速Vが大きい場合の特性を示している。前述のように、車速Vが大きくなると、車輪転舵角に対する路面反力トルクの特性の傾きは大きくなる。
一方、図5においては、路面摩擦係数が変化した場合の車輪転舵角に対する路面反力トルクの特性例を示しており、破線曲線は路面摩擦係数が小さい場合の特性を示し、実線曲線は路面摩擦係数が大きい場合の特性を示している。前述のように、路面摩擦係数が小さく滑りやすい路面では、発生する路面反力トルクが小さくなる。
図6は操舵トルクTsensの検出値(横軸)と基本アシストトルクに対応した第1の目標アシスト電流ieps_ref1(縦軸)との関係(マップ例)を示す説明図であり、破線曲線は車速Vが小さい場合の特性を示し、実線曲線は車速Vが大きい場合の特性を示している。
図7は補償トルク演算手段2012および補償トルク制限手段2013の処理手順を示すフローチャートである。
図8は車速V(横軸)と転舵角に対する路面反力トルクの傾きKalign(縦軸)との関係(マップ例)を示す説明図であり、図9はハンドル角速度の絶対値|dθh|(横軸)と補正係数λ1(縦軸)との関係(マップ例)を示す説明図である。
目標アシスト電流生成手段20において、基本アシストトルク演算手段2011は、前述のように、運転者による操舵トルクTsensを補助するためのアシストトルクに対応した目標アシスト電流2001を演算する。
すなわち、基本アシストトルク演算手段2011は、たとえば、トルクセンサ14により検出された操舵トルクTsensと、車両状態センサ18に含まれる車速センサ1801により検出された車速Vとに基づき、図6に示すマップを用いて、第1の目標アシスト電流ieps_ref1に対応した基本アシストトルクを演算する。
ここで、車輪転舵角としてピニオン軸8の転舵角θpを用い、転舵角θpに対する路面反力トルクの特性について説明する。路面反力トルクは、路面から各車輪7a、7bに作用する力により、ピニオン軸8に作用するトルクである。
図4において、路面反力トルクは、転舵角θpに対してほぼ線形に比例し(正の1次関数を示し)、転舵角θpに対する路面反力トルクの傾きは、車速Vが高くなると大きくなる。
通常、角度重畳用電動アクチュエータ11が回転して転舵角θpが変化すると、これに対応して路面反力トルクが変動し、操舵トルクTsensが変化するので、運転者は違和感を受ける。特に、第2の目標重畳角θmt_ref2は、運転者の操舵とは無関係に介入するので、路面反力トルクの変動が運転者の操舵フィーリングに与える影響が大きい。
そこで、補償トルク演算手段2012は、角度重畳手段による各車輪7a、7bの転舵に起因した路面反力トルク変動によって運転者の操舵トルクTsensが変動し違和感を受けることを抑制するために、補償トルクTcompを演算する。補償トルクTcompは、路面反力トルクTestの変動を打ち消すために、パワーアシスト用電動アクチュエータ9から発生させるべきトルクである。
次に、図1〜図6、図8、図9とともに、図7のフローチャートを参照しながら、補償トルク演算手段2012および補償トルク制限手段2013による具体的な処理動作について説明する。図7において、ステップS1〜S7は、補償トルク演算手段2012による処理であり、ステップS7〜S9は、補償トルク制限手段2013による処理である。
まず、補償トルク演算手段2012は、車両挙動安定化用目標重畳角演算手段1712から出力される第2の目標重畳角θmt_ref2を参照して、角度重畳手段が第2の目標重畳角θmt_ref2による車両挙動安定化制御を実行しているか否かを判定し(ステップS1)、車両挙動安定化制御が実行されていない(すなわち、NO)と判定されれば、補償トルク制御が実行されることはないので、補償トルクTcompを「0」に設定して(ステップS2)、補償トルク制限手段2013内のステップS9に進む。
一方、ステップS1において、車両挙動安定化制御が実行されている(すなわち、YES)と判定されれば、補償トルク演算手段2012は、補償トルク制御を実行するために、車速Vに基づき転舵角θpに対する路面反力トルクの傾きKalignを設定し(ステップS3)、補償トルク(目標補償トルク)Tcompを演算する(ステップS4)。
このとき、ステップS3においては、転舵角θpに対する路面反力トルクの傾きKalignの設定方法として、たとえば図8のように、車速Vと転舵角θpに対する路面反力トルクの傾きKalignとの関係を、マップ値としてあらかじめ用意して、車速Vに対応する傾きKalignを設定する。なお、図8のマップ値は、路面摩擦係数が高い乾燥アスファルト路面を走行したときの走行データから求める。
また、ステップS4においては、路面反力トルクの傾きKalignと、第2の目標重畳角θmt_ref2と、リングギア204からキャリア203までの減速比G1rと、角度重畳用電動アクチュエータ11からリングギア204までの減速比Gmtとを用いて、角度重畳手段が第2の目標重畳角θmt_ref2に基づき各車輪7a、7bを転舵した時点で発生すると予測される路面反力トルクの変動分を、電動パワーアシスト手段の目標補償トルクTcompとして、以下の式(11)のように演算する。
Tcomp=Kalign・θmt_ref2/(G1r・Gmt)・・・(11)
また、路面反力トルクの変動が運転者に与える影響は、ハンドル角速度dθh(=dθh/dt)が小さい場合(ハンドル1の保舵時など)に大きくなるので、ハンドル角速度dθhに応じて変化する補正係数λ1(図9参照)を用いて、以下の式(12)のように、目標補償トルクTcompを補正演算してもよい。
Tcomp=λ1・Kalign・θmt_ref2/(G1r・Gmt)・・・(12)
ただし、式(11)または式(12)で求められる目標補償トルクTcompは、路面摩擦係数の変化によっては、角度重畳手段の車輪転舵によって実際に発生する路面反力トルクに対して誤差が生じる可能性があるので、補償トルク制限手段2013は、以下のように目標補償トルクTcompを制限する。
まず、補償トルク制限手段2013内の路面反力トルク検出手段2014は、ピニオン軸8に作用している路面反力トルクTestを、推定演算により検出する(ステップS5)。
ここで推定演算される路面反力トルクTestは、角度重畳手段の車輪転舵よって実際に発生する路面反力トルクの変動ではなく、ピニオン軸8に実際に作用している路面反力トルクの推定値である。路面反力トルクTest(推定値)は、トルクセンサ14により検出される操舵トルクTsensと、電流センサ1804により検出されるパワーアシスト用電動アクチュエータ9の駆動電流iepsとから、以下の式(13)のように求められる。
Test=Tsens+Kteps・ieps ・・・(13)
式(13)において、Ktepsはパワーアシスト用電動アクチュエータ9のトルク定数であり、ウオーム10aとウオームホイール10bとの減速比も考慮した値に設定されている。
ここで、実際に各車輪7a、7bが路面から受ける反力によって発生する路面反力トルクTalignと、ラックアンドピニオン式ステアリングギア5内のピニオン501とラック502との間などに存在する摩擦トルクTfricと、パワーアシスト用電動アクチュエータ9などによる慣性モーメントトルクJp・ddθpとを用いれば、推定演算される路面反力トルクTestは、以下の式(14)のように表される。
Test=Jp・ddθp+Talign+Tfric ・・・(14)
式(14)において、Jpはピニオン軸8で換算した慣性モーメント、ddθp(=dθp/dt)はピニオン軸8の角加速度である。
すなわち、路面反力トルクTest(推定値)は、運転者の意図通りにピニオン軸8を回転(または、保舵)するために必要とするトルクなので、式(12)で演算した目標補償トルクTcompを、路面反力トルクTest以下に制限すれば、補償トルクが実際の路面反力トルクよりも過大となることに起因した操舵フィーリング悪化を防ぐことができる。
したがって、補償トルク制限手段2013は、路面反力トルクTestの推定演算(ステップS5)に続いて、補償トルク演算手段2012で演算された目標補償トルクTcomp(絶対値)が推定路面反力トルクTest(絶対値)よりも大きいか否かを判定し(ステップS6)、|Tcomp|>|Test|(すなわち、YES)と判定されれば、目標補償トルクTcompを推定路面反力トルクTestで制限して、制限後の目標補償トルクTcomp2(=Test)を設定する(ステップS7)。
一方、ステップS6において、|Tcomp|≦|Test|(すなわち、NO)と判定されれば、目標補償トルクTcompに制限をかける必要がないので、そのまま制限後の目標補償トルクTcomp2(=Tcomp)として設定する(ステップS8)。
最後に、補償トルク制限手段2013は、制限後の目標補償トルクTcomp2を、パワーアシスト用電動アクチュエータ9のトルク定数Ktepsで除算して、パワーアシスト用電動アクチュエータ9が制限後の補償トルクTcomp2を発生させるために必要な第2の目標アシスト電流ieps_ref2(=Tcomp2/Kteps)を演算し(ステップS9)、図7の処理ルーチンを抜け出る。
以下、目標アシスト電流生成手段20内の加算器2015は、基本アシストトルク演算手段2011で演算された第1の目標アシスト電流ieps_ref1と、補償トルク制限手段2013で演算された第2の目標電流ieps_ref2との和を、最終的な目標アシスト電流2001として生成し、アシスト電流制御手段21に入力する。
アシスト電流制御手段21は、パワーアシスト用電動アクチュエータ9の駆動電流iepsが最終的な目標アシスト電流2001と等しくなるように、パワーアシスト用電動アクチュエータ9を制御する。
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、目標アシスト電流生成手段20内に補償トルク制限手段2013および路面反力トルク検出手段2014を設けたので、実際に発生する路面反力トルクに対して、補償トルクTcomp2(第2の目標アシスト電流ieps_ref2)が過大になることを防ぐことができ、運転者の操舵フィーリングを向上させることができる。
ここで、図10〜図12のタイミングチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1による効果について説明する。
図10〜図12は、運転者がハンドル1を保舵した状態で、角度重畳手段が運転者の操舵とは無関係に車輪の転舵角を転舵しているときに、それぞれ、補償トルクTcompの設定を変更した場合での、ハンドル1の操舵角θh、ピニオン軸8の転舵角θp、操舵トルクTsensおよび補償トルクTcompの各シミュレーション結果を示している。
すなわち、図10は補償トルクTcompが「0」(補償トルク制御なし)の場合の挙動結果を示し、図11は補償トルクTcompに対して路面反力トルクに応じた制限をかけない場合の挙動結果を示し、図12は路面反力トルクTestに応じて制限した補償トルクTcomp2を適用した場合の挙動結果を示しており、図12のみがこの発明の実施の形態1による動作に対応する。
図10(Tcomp=0)の場合には、角度重畳手段による車輪の転舵によって、操舵トルクTsens(トルクセンサ14の検出値)が大きく変動し、操舵フィーリングが悪化することが分かる。
また、図11(Tcompの制限なし)の場合には、補償トルクTcompに対して路面反力トルクTest(破線参照)に応じた制限をかけていないので、補償トルクTcompが実際の路面反力トルクの変動よりも過大となり、操舵トルクTsensが各車輪7a、7bの転舵方向に変動して操舵フィーリングが悪化することが分かる。
これに対し、図12においては、補償トルクTcomp(破線参照)が実際の路面反力トルク変動よりも過大であった場合に、路面反力トルクTestに応じて制限した補償トルクTcomp2を適用しているので、補償トルクTcomp2が過大になることを防ぐことができる。したがって、操舵トルクTsensの変動が小さく、操舵フィーリングが著しく改善することが分かる。また、実際の車両試験においても、同様の効果が得ることを確認することができた。
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、車両を操舵するために操作されるハンドル1と、ハンドル1に印加される操舵トルクTsensを検出するトルクセンサ14と、ハンドル1の操舵角θhを検出する操舵角センサ15と、操舵トルクTsensを補助するためのアシストトルクを発生するパワーアシスト用電動アクチュエータ9を有する電動パワーアシスト手段と、操舵角θhに制御角度を重畳する角度重畳用電動アクチュエータ11を有し、操舵角θhに対する車両の車輪7a、7bの転舵角(ピニオン軸8の転舵角θp)を可変制御する角度重畳手段と、操舵角θhに対する制御角度の重畳によって変動する操舵トルクTsensを補償するための補償トルクTcompを演算する補償トルク演算手段2012とを備え、補償トルクTcompに応じてアシストトルクを補正する車両用操舵制御装置において、補償トルクTcompを所定の制限値に制限する補償トルク制限手段2013と、車両が走行する路面から車輪7a、7bを介してハンドル1の回転方向に作用する路面反力トルクTestを検出する路面反力トルク検出手段2014をさらに備え、補償トルク制限手段2013は、路面反力トルクTestに応じて補償トルクTcompに対する制限値を設定するので、操舵トルクTsensの変動を抑制して運転者の操舵フィーリングを改善することができる。
また、路面反力トルク検出手段2014は、パワーアシスト用電動アクチュエータ9に供給される駆動電流iepsと、トルクセンサ14により検出される操舵トルクTsensとを用いて、推定演算により路面反力トルクTestを検出しているので、ステアリング軸13の反力トルクを検出するセンサが不要となり、コストダウンを実現することもできる。
なお、上記実施の形態1においては、路面反力トルク検出手段2014により、前述の式(13)を用いて路面反力トルクTestを推定演算したが、ピニオン軸8、または、ピニオン軸8よりも車輪側の機構に取り付けられたトルクセンサ(または、力センサ)を用いて路面反力トルクを直接計測してもよい。
また、路面反力トルク検出手段2014で推定した路面反力トルクTestに対して、公知(たとえば、特開2001−122146号公報参照)のフィルタ処理をさらに施し、ピニオン501とラック502との間などに存在する摩擦トルクTfricの影響を除去した路面反力トルクTalignを推定演算してもよい。
また、補償トルク演算手段2012において、前述の式(12)を用いて目標補償トルクTcompを設定したが、目標補償トルクTcompに対して、角度重畳手段が車輪を転舵したことによって発生するピニオン501とラック502との間などに存在する摩擦トルクTfricおよび慣性モーメントトルクJp・ddθpの変動を抑制する補償も加え、これらの変動補償後の目標補償トルクを路面反力トルクTest(推定値)で制限してもよい。
また、路面反力トルクTestは、前述の式(14)に示すように、ピニオン501とラック502との間などに存在する摩擦トルクTfricと、パワーアシスト用電動アクチュエータ9などによる慣性モーメントトルクJp・ddθpとの影響も考慮して推定演算されるので、角度重畳手段が車輪を転舵したことによって発生する摩擦トルクTfricの変動や慣性モーメントトルクJp・ddθpの変動に対し、補償トルクTcomp2が過大になることを防ぐことができる。
実施の形態2.
さらに、上記実施の形態1では、路面反力トルクTestのみを考慮して補償トルクTcomp2を制限したが、さらに各種パラメータを考慮して補償トルクTcomp2に対する制限値を変更設定してもよい。
以下、図1および図2とともに、図13のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態2に係る車両用操舵制御装置による補償トルク制限手段2013Aの処理動作について説明する。
図13において、前述(図7参照)と同様の処理(ステップS1〜S9)については、前述と同一符号を付して詳述を省略する。また、この発明の実施の形態2に係る車両用操舵制御装置の構成は、図1および図2に示した通りであり、補償トルク制限手段2013Aの一部機能が異なるのみである。
この場合、補償トルク制限手段2013Aは、補償トルク演算手段2012から補償トルクTcompが出力されている経過時間と、操舵角θhに基づくハンドル角速度dθh(=dθh/dt)と、操舵角θhに基づくハンドル角加速度ddθh(=dθh/dt)と、路面反力トルクと、のうちの少なくとも1つのパラメータに応じて、補償トルクに対する制限値を変更する。
図13において、まず、補償トルク演算手段2012は、前述と同様に目標補償トルクTcompを演算し(ステップS1〜S4)、補償トルク制限手段2013A内の路面反力トルク検出手段2014は、路面反力トルクTestを推定演算する(ステップS5)。
続いて、補償トルク演算手段2013Aは、路面反力トルク検出手段2014から出力される路面反力トルクTestから、ハンドル1の回転運動に作用しているトルク分を除去する(ステップS10)。
すなわち、ハンドル慣性Jh、ハンドル角加速度ddθh、ハンドル1の減衰係数Ch、ハンドル角速度dθhを用いて、以下の式(15)のように、ピニオン軸8に作用している路面反力トルクTestを補正演算する。
Test=Tsens+Kteps・ieps−Jh・ddθh−Ch・dθh・・・(15)
路面反力トルク変動の運転者への影響は、ハンドル角速度dθhが小さい場合(ハンドル1の保舵時など)には大きく、逆に、ハンドル角速度dθhが大きい場合(運転者が急な操舵をした場合)には小さく、補償トルクTcompが小さくてもよいので、路面反力トルクTest(推定値)を上記式(15)のように設定する。これにより、運転者の操舵に応じて、補償トルクTcompの制限値、すなわち路面反力トルクTest(推定値)を補正することができる。
また、路面反力トルクTestにさらに補正係数λ2を乗算して、補償トルクTcompの制限値として設定してもよい。このように、補正係数λ2をハンドル角速度dθhに応じて可変設定することにより、運転者の操舵に応じた補償トルクTcompの制限値を設定することができる。補正係数λ2は、たとえば前述(図9参照)の補正係数λ1と同様に、ハンドル角速度dθhが大きい領域では、小さい値となるように設定される。
また、車両の直進走行時にハンドル1をセンタ位置で保舵している状況などにおいては、車輪に路面反力トルクが作用せず、路面反力トルクTest(推定値)が小さいので、路面反力トルクTestが小さい領域に対応して、補償トルクTcompの制限値を別に設定してもよい。これにより、操舵トルクTsensの変動をさらに抑制することができる。
次に、補償トルク制限手段2013Aは、上記ハンドル回転運動に作用するトルク分の除去処理(ステップS10)に続いて、ハンドル角速度dθhの絶対値が閾値αよりも小さいか否かを判定し(ステップS11)、|dθh|≧α(すなわち、NO)と判定されれば、前述のステップS6に進み、ステップS6〜S9により第2の目標アシスト電流ieps_ref2を演算する。
一方、ステップS11において、|dθh|<α(すなわち、YES)と判定されれば、ハンドル1が保舵状態にあるものと見なし、続いて、路面反力トルクTest(推定値)の絶対値が閾値βよりも小さいか否かを判定し(ステップS12)、|Test|≧β(すなわち、NO)と判定されれば、前述のステップS6に進む。
一方、ステップS12において、|Test|<β(すなわち、YES)と判定されれば、新たな補償トルク制限値を設定するために、補償トルクTcompの符号sign(Tcomp)と、所定の設定値Test2とを用いて、以下の式(16)のように、路面反力トルクTest(推定値)を修正する(ステップS13)。
Test=sign(Tcomp)・Test2・・・(16)
式(16)において、設定値Test2は、たとえば実際の車両試験に基づいて調整された値である。以下、ステップS6に進み前述と同様に、路面反力トルクTest(制限値)を用いて制限された補償トルクTcomp2を設定する。
これにより、ハンドル1が保舵状態であって路面反力トルクTest(推定値)が小さい領域においても、適切な補償トルクTcomp2を発生可能な第2の目標アシスト電流ieps_ref2を演算して、操舵トルクTsensの変動を抑制することができる。
また、路面反力トルクTest(推定値)やハンドル角速度dθhが発生した場合には、路面反力トルクTestで適切に制限した補償トルクTcomp2を設定することができる。
さらに、補償トルク演算手段2012内のステップS1とステップS3との間に遅延処理を挿入し、ステップS1での「YES」判定に続いて、車両挙動安定化用重畳角制御中であると判定するフラグ信号を一定時間遅らせてからステップS3に移行してもよい。
これにより、車両挙動安定化用目標重畳角演算手段1712による転舵角θpへの介入制御の初期においては、補償トルクTcomp2の制限処理よりも、操舵トルクTsensの変動抑制処理を優先することができ、さらに操舵フィーリングを向上させることができる。
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、補償トルク制限手段2013Aは、補償トルク演算手段2012から補償トルクTcompが出力されている経過時間と、操舵角θhに基づくハンドル角速度dθhと、操舵角θhに基づくハンドル角加速度ddθhと、路面反力トルクTestと、のうちの少なくとも1つのパラメータに応じて、補償トルク制限値を変更するので、運転者の操舵に応じて、適切に調整された制限値を用いて補償トルクTcompを制限することができ、さらに操舵フィーリングを向上することができる。
この発明の実施の形態1に係る車両用操舵制御装置を概略的に示すブロック構成図である。 この発明の実施の形態1による目標重畳角生成手段および目標アシスト電流生成手段の主要構成を示す機能ブロック図である。 この発明の実施の形態1において車輪に作用する制動力の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1による路面摩擦係数が大きい路面(乾燥アスファルト路面など)における転舵角に対する路面反力トルクの関係の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1による路面摩擦係数が変化した場合の転舵角に対する路面反力トルクの関係の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるトルクセンサの検出値と目標アシスト電流との関係の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1による補償トルク演算手段および補償トルク制限手段の処理手順を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1による車速と転舵角に対する路面反力トルクの傾きとの関係のマップ例を示す説明図である。 ハンドル角速度に応じて変化する補正係数λ1の例である。 この発明の実施の形態1による効果を説明するためのタイミングチャートであり、運転者がハンドルを保舵した状態で、角度重畳手段が運転者の操舵とは無関係に車輪の転舵角を転舵した場合の、補償トルクが0の場合の挙動結果を示している。 この発明の実施の形態1による効果を説明するためのタイミングチャートであり、運転者がハンドルを保舵した状態で、角度重畳手段が運転者の操舵とは無関係に車輪の転舵角を転舵したときの、路面反力に応じた補償トルクの制限がない場合での挙動結果を示している。 この発明の実施の形態1による効果を説明するためのタイミングチャートであり、運転者がハンドルを保舵した状態で、角度重畳手段が運転者の操舵とは無関係に車輪の転舵角を転舵したときの、路面反力に応じた補償トルクの制限を適用した場合の挙動結果を示している。 この発明の実施の形態2による補償トルク演算手段および補償トルク制限手段の処理手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 ハンドル、2 第1の遊星ギア機構、3 第2の遊星ギア機構、5 ラックアンドピニオン式ステアリングギア、7a 左前輪車輪、7b 右前輪車輪、8 ピニオン軸、9 パワーアシスト用電動アクチュエータ、11 角度重畳用電動アクチュエータ、13 ステアリング軸、14 トルクセンサ、15 操舵角センサ、16 モータ角度センサ、17 目標重畳角生成手段、1701 目標重畳角、18 車両状態信号、1801 車速センサ、1804 電流センサ、19 重畳角制御手段、20 目標アシスト電流生成手段、2001 目標アシスト電流、2011 基本アシストトルク演算手段、2012 補償トルク演算手段、2013、2013A 補償トルク制限手段、2014 路面反力トルク検出手段、21 アシスト電流制御手段、22a 左後輪車輪、22b 右後輪車輪、ieps パワーアシスト用電動アクチュエータの駆動電流、Test 路面反力トルク(推定値)、Tsens 操舵トルク(検出値)、Tcomp 補償トルク(目標補償トルク)、Tcomp2 制限後の目標補償トルク、V 車速、θh 操舵角(検出値)、θp 転舵角。

Claims (3)

  1. 車両を操舵するために操作されるハンドルと、
    前記ハンドルに印加される操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    前記ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサと、
    前記操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するパワーアシスト用電動アクチュエータを有する電動パワーアシスト手段と、
    前記操舵角に制御角度を重畳する角度重畳用電動アクチュエータを有し、前記操舵角に対する前記車両の車輪の転舵角を可変制御する角度重畳手段と、
    前記操舵角に対する前記制御角度の重畳によって変動する前記操舵トルクを補償するための補償トルクを演算する補償トルク演算手段と、
    を備え、前記補償トルクに応じて前記アシストトルクを補正する車両用操舵制御装置において、
    前記補償トルクを所定の制限値に制限する補償トルク制限手段と、
    前記車両が走行する路面から前記車輪を介して前記ハンドルの回転方向に作用する路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出手段と、をさらに備え、
    前記補償トルク制限手段は、前記路面反力トルクに応じて前記補償トルクに対する制限値を設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
  2. 前記路面反力トルク検出手段は、前記パワーアシスト用電動アクチュエータに供給される駆動電流と、前記トルクセンサにより検出される操舵トルクとを用いて、推定演算により前記路面反力トルクを検出することを特徴とする請求項1記載の車両用操舵制御装置。
  3. 前記補償トルク制限手段は、前記補償トルク演算手段から前記補償トルクが出力されている経過時間と、前記操舵角に基づくハンドル角速度と、前記操舵角に基づくハンドル角加速度と、前記路面反力トルクと、のうちの少なくとも1つのパラメータに応じて、前記補償トルクに対する制限値を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用操舵制御装置。
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