JP5167086B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の電動パワーステアリング装置に関する。
左右の車輪の摩擦係数が異なる路面(スプリットμ路)で制動したときやカーブの走行時など、車両がオーバーステア状態になって旋回すると、車両の挙動が不安定になることから、運転者は、車両の旋回方向と逆に操向ハンドルを操舵して車両を安定させる操作、いわゆる「カウンタを当てる」操作をする。
このとき運転者は、車両に備わるパワーステアリング装置(例えば電動パワーステアリング装置)が車両の転舵輪を中立位置に戻そうとする反力に抗して操向ハンドルを操舵することから、運転者が操向ハンドルを操舵するときの操舵力が大きくなる。したがって、運転者の負担が大きくなるという問題がある。
例えば特許文献1には、スプリットμ路における制動時に、電動パワーステアリング装置が補助操舵トルクを発生し、車両を安定させる方向に操向ハンドルを操舵する運転者の負担を軽減する技術が開示されている。
しかしながら、車両の電動パワーステアリング装置は、転舵輪を中立位置に戻す補助操舵トルクを発生していることから、操向ハンドルには反力が発生している。
この反力によって、車両を安定させる方向への操向ハンドルの操舵をアシストする補助操舵トルクの効果が小さくなり運転者の負担が増える。
したがって特許文献1の技術は、車両がオーバーステア状態になったときに、車両を安定させる方向に操向ハンドルを操舵する運転者の負担をさらに軽減するように改善の余地がある。
特開2006−175992号公報(段落0011参照)
そこで本発明は、オーバーステア状態の車両を安定させる方向に操向ハンドルを操舵するときに、運転者にかかる負担を効果的に軽減できる電動パワーステアリング装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、オーバーステア状態であることを判定するオーバーステア判定手段を有する車両に備わり、転舵輪の転舵角に応じた反力を転舵機構に付与する舵角応動制御部を有する電動パワーステアリング装置とする。そして、前記車両がオーバーステア状態であることを前記オーバーステア判定手段が判定したとき、前記舵角応動制御部が、前記転舵角に応じた反力のゲインを低下し、かつ前記車両のヨーレートが大きくなるに従って前記ゲインの低下量を増大することを特徴とする。
本発明によれば、車両がオーバーステア状態のとき、舵角応動制御部が転舵機構に付与する転舵角に応じた反力のゲインを低下し、転舵機構に付与する転舵角に応じた反力を小さくできる。したがって、車両を安定させる方向に転舵機構を操舵する運転者にかかる負担を軽減できる。
本発明によれば、オーバーステア状態の車両を安定させる方向に操向ハンドルを操舵するときに、運転者にかかる負担を効果的に軽減できる電動パワーステアリング装置を提供できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は、車両に備わる電動パワーステアリング装置及び車両安定化システムの構成図、図2は、EPSECUとVSAECUの機能ブロック図である。
図1に示すように、車両Vの転舵機構は、ラックアンドピニオン機構25のラック軸25aに噛合するピニオンギア(図示せず)と一体に回転動作するステアリング軸22に、操向ハンドル21が取り付けられて構成されている。
そして運転者が操向ハンドル21を操舵すると、図示しないピニオンギアがステアリング軸22と一体に回転してラック軸25aを左右方向に移動し、ラック軸25aに連結される左右の転舵輪2R,2Lが転舵する。
そして、車両Vには、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)1が備わる。
電動パワーステアリング装置1は、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの操舵力を軽減する補助操舵力(補助操舵トルク)を電動力として発生し、転舵機構に付与する電動機23を備えている。
この電動機23の出力軸は、図示しないギアを介してステアリング軸22と噛合し、運転者が操向ハンドル21を操舵したときに、電動機23の出力軸の回転によってステアリング軸22に対する補助操舵トルクを発生して操舵力を軽減する。
また、電動パワーステアリング装置1には、電動機23を駆動制御するためのEPSECU20が備わる。
EPSECU20の詳細は後記するが、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成され、例えばROMに格納されるプログラムを実行して電動機23を駆動制御する。
ステアリング軸22にはトルクセンサ16が取り付けられ、操向ハンドル21が操舵されるときの操舵トルクを検出してトルク信号Tsを出力する。トルク信号Tsは、EPSECU20に入力され、EPSECU20はステアリング軸22に発生している操舵トルクを算出できる。そしてEPSECU20は、算出した操舵トルクに基づいて、電動機23の駆動を制御し、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの操舵力をアシストする補助操舵トルクに対応する電動力を電動機23に発生させる。
また、EPSECU20には、車速センサ17、ヨーレートセンサ18、及び舵角センサ19が接続される。車速センサ17は、車速を単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号Vsを出力する。
ヨーレートセンサ18は、例えば、車両Vにヨーモーメントが発生していないときを「0」として、例えば、左方向のヨーモーメントが発生しているときに正の値、右方向のヨーモーメントが発生しているときに負の値を出力するようになっている。
そして、EPSECU20には、車速センサ17が出力する車速信号Vsとヨーレートセンサ18が出力するヨーレート信号Ysが入力され、EPSECU20は車速とヨーレート(実ヨーレート)を算出できる。
また、舵角センサ19は、転舵輪2R,2Lの転舵角を検出するためのセンサで、例えばラック軸25aの動作量を検出するラック位置センサで構成される。舵角センサ19は舵角信号θsをEPSECU20に入力し、EPSECU20は舵角信号θsに基づいて、転舵輪2R,2Lの転舵角を算出できる。
さらに車両Vには、車両安定化システム3が備わる。車両安定化システム(VSA:Vehicle Stability Assist)3は、VSAECU30、ABS(Antilock Brake System)制御部31、TCS(Traction Control System)制御部32を含んで構成され、ブレーキ制御、トラクションコントロール、横滑り制御等を組み合わせ、滑りやすい路面(低μ路)やスプリットμ路における車両挙動の安定化をアシストする。
車両安定化システム3には、転舵輪2R,2L及び図示しない左右の後輪の回転速度を車輪ごとに検出し、車輪ごとの車輪速信号Wsを出力する車輪速センサ15が接続され、車両安定化システム3は、車輪速信号Wsに基づいて、各車輪の車輪速を算出できる。車両安定化システム3の詳細は後記する。
また、車両Vには、例えば、CAN(Controller Area Network)プロトコルのネットワーク(以下、CANネットワーク)が車載LAN(Local Area Network)として構築され、VSAECU30とEPSECU20が、共にCANネットワークに接続する構成が好適である。この構成によって、VSAECU30とEPSECU20は、CANネットワークを介して互いに通信可能になる。
図2は、EPSECUと車両安定化システムの機能ブロック図である。また、図3の(a)は、転舵輪の転舵角と舵角反力制御量の関係の一例を示す図、(b)は、車両の実ヨーレートとヨーレート反力制御量の関係の一例を示す図である。
図2に示すように、EPSECU20は、EPS制御部20a、ヨーレート反力制御部20b、舵角反力制御部20c、出力制御部20d、及びネットワーク制御部20eを含んで構成される。
ネットワーク制御部20eは、車載LANであるCANネットワークにEPSECU20を接続する機能を備え、CANネットワークに接続する他の機器(例えば、VSAECU30)との通信を制御する。
トルクセンサ16、及び車速センサ17が接続されるEPS制御部20aは、電動パワーステアリング装置1(図1参照)の基本動作として、操舵トルク、車速に応じた補助操舵トルクを設定するため、トルク信号Tsに基づいて算出する操舵トルク及び車速信号Vsに基づいて算出する車速に対応した電動機23の制御量Imを算出する。
そして、EPS制御部20aが算出した、電動機23の制御量Imは加減算器20fに入力される。
操舵トルク及び車速に基づいて電動機23の制御量Imを算出する方法は公知の技術であり、その詳細な説明は省略する。
舵角反力制御部20cには、トルクセンサ16、車速センサ17、及び舵角センサ19が接続される。舵角反力制御部20cは、車速センサ17から入力される車速信号Vsに基づいて車速を算出する。
さらに舵角反力制御部20cは、舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて、転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角を算出する。
そして、舵角反力制御部20cは、算出した車速、及び転舵角に基づいて、舵角反力制御量Smを算出する。
図3の(a)に示すように、例えば、舵角反力制御量Smは、転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角が「0」のときは「0」で、転舵輪2R,2Lの転舵角の増大に伴って増加する特性を有する。このような舵角反力制御量Smと転舵角の関係は、車速ごとに実験等で設定することができ、図示しない記憶部に、車速ごとのマップデータとして記憶しておけばよい。
舵角反力制御部20cは、算出した車速及び転舵角に基づいてマップデータを参照し、舵角反力制御量Smを算出できる。
このように、舵角反力制御部20cが舵角反力制御量Smを算出する制御を、以下「反力制御」と称する場合がある。
なお、図3の(a)に示す、転舵輪の転舵角と舵角反力制御量Smの関係は一例であり、転舵輪の転舵角と舵角反力制御量Smの関係は曲線であってもよい。
EPSECU20は、舵角反力制御部20cが算出する舵角反力制御量Smに応じて、転舵輪2R,2L(図1参照)を中立位置に戻す方向の成分を有するトルク(以下、舵角反力トルクと称する)の値を算出することができ、電動機23に、舵角反力トルクを含んだ補助操舵トルクを発生させることができる。そして、舵角反力トルクを、補助操舵トルクの成分として車両V(図1参照)の転舵機構に付与し、直進安定性をアシストできる。
このような舵角反力トルクは、転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角に応じて算出されるトルクであり、請求項に記載の転舵角に応じた反力に相当する。
そして、EPSECU20は、舵角反力トルク(転舵角に応じた反力)を含んだ補助操舵トルクを電動機23に発生させ、補助操舵トルクの成分として舵角反力トルクを車両Vの転舵機構に付与できることから、請求項に記載の舵角応動制御部になる。
図2に示すように、ヨーレート反力制御部20bにはヨーレートセンサ18が接続され、ヨーレート信号Ysが入力される。ヨーレート反力制御部20bは、ヨーレート信号Ysに基づいて車両V(図1参照)の実ヨーレートを算出するとともに、車両Vの実ヨーレートに対応したヨーレート反力制御量Ymを算出し、舵角反力制御部20cが算出する舵角反力制御量Smに付加して加減算器20fに入力する。
ヨーレート反力制御量Ymは、運転者が、車両Vの実ヨーレートを低減する方向に操向ハンドル21(図1参照)を操舵するときの操舵力をアシストするトルク(以下、ヨーレート反力トルクと称する)を電動機23に発生させ、ヨーレート反力トルクを操舵機構に付与するための制御量である。
このようなヨーレート反力トルクは、車両Vの実ヨーレートに応じて算出されるトルクであり、請求項に記載の実ヨーレートに応じた反力に相当する。
そして、EPSECU20は、ヨーレート反力トルク(実ヨーレートに応じた反力)を含んだ補助操舵トルクを電動機23に発生させ、補助操舵トルクの成分としてヨーレート反力トルクを車両Vの転舵機構に付与できることから、請求項に記載のヨーレート応動制御部になる。
図3の(b)に示すように、例えば、ヨーレート反力制御量Ymは、車両V(図1参照)の実ヨーレートが小さい領域では「0」であり、実ヨーレートが大きい領域では、実ヨーレートの増大に伴って増加する特性を有する。このようなヨーレート反力制御量Ymと実ヨーレートの関係は、実験等で設定することができ、図示しない記憶部にマップデータとして記憶しておけばよい。
ヨーレート反力制御部20bは、算出した実ヨーレートに基づいてマップデータを参照し、車両Vの実ヨーレートに対応したヨーレート反力制御量Ymを算出できる。
なお、図3の(b)に示す、実ヨーレートとヨーレート反力制御量Ymの関係は一例であり、実ヨーレートとヨーレート反力制御量Ymの関係は曲線であってもよい。
加減算器20fでは、舵角反力制御量Smにヨーレート反力制御量Ymを付加した値が、EPS制御部20aから入力される電動機23の制御量Imに加算又は減算されて制御量Im’が算出され、制御量Im’は出力制御部20dに入力される。
そして、出力制御部20dでは、電動機23を駆動する駆動電流Icを、制御量Im’に基づいて算出し、電動機23に入力する。
次に、車両安定化システム3の構成を説明する。図2に示すように車両安定化システム3は、主にVSAECU30、ABS制御部31、及びTCS制御部32を含んで構成される。
ABS制御部31は、車速センサ17から入力される車速信号Vsに基づいて算出する車両V(図1参照)の車速、車輪速センサ15から入力される車輪速信号Wsに基づいて算出する車両Vの各車輪の車輪速等に基づいて、車両Vの制動時における好適なブレーキ圧制御量Bcを算出する。そして、VSA制御部30aから入力される、後記するVSA補正量Vmでブレーキ圧制御量Bcを補正し、車両Vのブレーキ圧力を調節するモジュレータ31aにブレーキ圧制御量Bcを入力する。このような構成によって、車両Vは走行状況や環境に応じた好適な制動性能を確保できる。
TCS制御部32は、車輪速センサ15から入力される車輪速信号Wsに基づいて算出する車両Vの各車輪の車輪速、舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて算出する転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角等に基づいてエンジン制御量Ecを算出し、駆動輪の空転を抑制するようにエンジンEの出力を制御する。
VSAECU30は、例えば図示しないCPU、ROM、RAMなどを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成され、ヨーレートセンサ18と舵角センサ19が接続される。
そしてVSAECU30は、例えばROMに格納されるプログラムを実行し、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysと舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて、転舵輪2R,2Lの転舵角と車両V(図1参照)の実ヨーレートを算出し、車両安定化システム3を制御する。
VSAECU30は、VSA制御部30a、ネットワーク制御部30bを含んで構成される。
ネットワーク制御部30bは、車載LANであるCANネットワークにVSAECU30を接続する機能を備え、CANネットワークに接続する他の機器(例えば、EPSECU20)との通信を制御する。
VSA制御部30aは、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysに基づいて算出する車両V(図1参照)の実ヨーレート、車速センサ17から入力される車速信号Vsに基づいて算出する車両Vの車速、及び舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて算出する転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角に基づいて、車両Vの横滑りを抑えるようにブレーキ圧制御量Bcを補正するVSA補正量Vmを算出する。
そして、算出したVSA補正量VmをABS制御部31に入力する。
さらに、VSA制御部30aは、左右の車輪の摩擦係数が異なるスプリットμ路を車両V(図1参照)が走行していることを判定する機能を有する。
VSA制御部30aは、車輪速センサ15から入力される車輪速信号Wsに基づいて各車輪の車輪速を算出する。さらに、車速センサ17から入力される車速信号Vsに基づいて車両Vの車速を算出する。そして、VSA制御部30aは、各車輪の車輪速と車両Vの車速に基づいて、各車輪のスリップ率を算出する。
このように算出される各車輪のスリップ率が、車両V(図1参照)の左側の車輪と右側の車輪で大きく異なる場合、VSA制御部30aは、スリップ率の大きな側の摩擦係数が小さいスプリットμ路を車両Vが走行していると判定する。
そして、VSA制御部30aは、車両Vがスプリットμ路を走行していると判定した場合、左右の制動力の差に起因して発生する旋回を抑制するように、VSA補正量Vmを補正する。
ABS制御部31は、VSA制御部30aから入力されるVSA補正量Vmでブレーキ圧制御量Bcを補正することにより、横滑りを好適に抑えて車両V(図1参照)を安定して制動できる。
さらに、スプリットμ路での制動時においても、車両Vの挙動を安定させることができる。
しかしながら、例えばスプリットμ路で運転者が車両V(図1参照)を制動した場合に、ABS制御部31による制御限界を超えると、車両Vがオーバーステア状態になって旋回することがある。この場合、本実施形態に係るVSA制御部30aは、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysに基づいて算出する実ヨーレートに基づいて、車両Vのオーバーステア状態を検出する。
具体的に、スプリットμ路を走行中の車両Vにおいて、舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて算出する転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角が「0」、すなわち中立位置にある場合に車両Vが旋回しているとき、VSA制御部30aは、車両Vがオーバーステア状態になってスプリットμ路で旋回していると判定する。
そして、本実施形態において、車両V(図1参照)がスプリットμ路で旋回していることをVSA制御部30aが判定した場合、VSA制御部30aは、車両Vがオーバーステア状態であることを示す信号(OS信号)を、CANネットワークを介してEPSECU20に送信する構成とする。
また、VSA制御部30aは、車両V(図1参照)の各車輪の車輪速、転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角、車両Vの車速等に基づいてヨーレート(規範ヨーレート)を算出するとともに、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysに基づいて算出する実ヨーレートと規範ヨーレートを比較して、車両Vがオーバーステアやアンダーステアの状態であると判定する。
すなわち、VSA制御部30aは、規範ヨーレートより実ヨーレートが大きいとき、車両Vがオーバーステア状態であると判定し、規範ヨーレートより実ヨーレートが小さいとき、車両Vがアンダーステア状態であると判定する。
そして、VSA制御部30aは、車両V(図1参照)がオーバーステア状態であると判定したときに、CANネットワークを介してEPSECU20にOS信号を送信する機能を有する。
このような構成によって、本実施形態に係るEPSECU20は、車両Vがオーバーステア状態であることを検知できる。
なお、本実施形態に係るVSA制御部30aは、車両Vがオーバーステア状態であることを判定できることから、請求項に記載のオーバーステア判定手段になる。
そして本実施形態に係るEPSECU20は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態であることを検知すると、舵角反力制御量Smを算出するときのゲインを低下し、舵角反力制御量Smを小さくすることを特徴とした。
一般的に、車両V(図1参照)がオーバーステア状態のとき、運転者は、車両Vが旋回する方向と逆の方向に操向ハンドル21(図1参照)を操舵してカウンタを当て、車両を安定させる。
このとき、ヨーレート反力制御部20bが算出するヨーレート反力制御量Ymによって、電動パワーステアリング装置1(図1参照)には、ヨーレート反力トルクが発生し、運転者の負担を軽減する。
一方、舵角反力制御部20cが反力制御を実行して算出する舵角反力制御量Smによって、電動機23は、転舵輪2R,2L(図1参照)を中立位置に戻す舵角反力トルクを発生する。
ヨーレート反力制御量Ymによって発生するヨーレート反力トルクと舵角反力制御量Smによって発生する舵角反力トルクは、相反する方向のトルクであることから、ヨーレート反力トルクを打ち消すように舵角反力トルクが干渉し、運転者が操向ハンドル21(図1参照)を操舵するときの操舵力が増える。したがって、運転者の負担が増大する。
そこで、本実施形態においては、車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、EPSECU20は、舵角反力制御量Smを小さくして舵角反力トルクを小さくすることで、運転者の負担を軽減する構成とした。
具体的にEPSECU20は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、ゲインを乗算して、舵角反力制御部20cが算出する舵角反力制御量Smを小さくし、舵角反力制御量Smに応じて発生する舵角反力トルクを小さくする。
図4の(a)は、舵角反力制御量を算出するときのゲインを低下する機能を有する舵角反力制御部の一構成例を示す図、(b)は、舵角反力制御量を算出するときのゲインを低下する手順を示すフローチャートである。
EPSECU20が舵角反力制御量を算出するときのゲインを低下する機能を備えるため、本実施形態に係るEPSECU20の舵角反力制御部20cは、図4の(a)に示すように、基本舵角反力算出部20cと、ゲイン設定部20cとを含んだ構成が好適である。
基本舵角反力算出部20cは、前記したように舵角反力制御量Smを算出する。
また、ゲイン設定部20cは、基本舵角反力算出部20cが算出した舵角反力制御量Smに乗算するゲイン補正値Sを設定し、舵角反力制御量Smにゲイン補正値Sを乗算した値を出力する。
ゲイン補正値Sは、例えば「1」から「0」の間の値であり、車両V(図1参照)の実ヨーレートに対応して設定される構成が好適である。
すなわち、車両Vの実ヨーレートが大きい場合、運転者による操向ハンドル21(図1参照)の操舵量が多いことから、舵角反力制御量Smを小さくするゲイン補正値Sが好ましい。一方、車両Vの実ヨーレートが小さい場合は、運転者による操向ハンドル21の操舵量が少ないことから、基本舵角反力算出部20cが算出した舵角反力制御量Smに近い値を出力することが好ましく、ゲイン補正値Sは「1」に近い値が好ましい。
このようなゲイン補正値Sは車両V(図1参照)の特性値であり、実験等によって予め求めておくことができる。そして、実ヨーレートに対応したマップデータとして、図示しない記憶部に記憶しておけばよい。舵角反力制御部20cのゲイン設定部20cは、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysに基づいて算出する車両Vの実ヨーレートに対応してマップデータを参照し、舵角反力制御量Smに乗算するゲイン補正値Sを設定できる。
そして、図4の(a)に示す舵角反力制御部20cは、基本舵角反力算出部20cが算出した舵角反力制御量Smに、ゲイン設定部20cが設定したゲイン補正値Sを乗算することで、舵角反力制御量Smを算出するときのゲインを車両V(図1参照)の実ヨーレートに対応して低下できる。
すなわち、図4の(b)に示すように、舵角反力制御部20cの基本舵角反力算出部20c(図4の(a)参照)は、前記したように車両V(図1参照)の車速、及び転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角に基づいて、舵角反力制御量Smを算出する(ステップS1)。
そして、舵角反力制御部20cのゲイン設定部20c(図4の(a)参照)は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態のとき(ステップS2→Yes)、車両Vの実ヨーレートに対応したゲイン補正値Sを設定する(ステップS3)。
一方、車両Vがオーバーステア状態でないとき(ステップS2→No)、ゲイン設定部20cは、ゲイン補正値Sに「1」を設定する(ステップS4)。
そして、ゲイン設定部20cは、舵角反力制御量Smにゲイン補正値Sを乗算して(ステップS5)、舵角反力制御量Smとゲイン補正値Sの乗算値「Sm×S」を出力する(ステップS6)。
図4の(a)に示すゲイン設定部20cは、ステップS2で車両V(図1参照)がオーバーステア状態か否か、を判定しているが、この処理は、車両安定化システム3の検出に基づいている。
前記したように、本実施形態に係る車両安定化システム3は、車両Vがオーバーステア状態であることを示すOS信号を、CANネットワークを介してEPSECU20に送信する機能を有する。
したがって、ゲイン設定部20cは、ネットワーク制御部20eを介して車両安定化システム3が送信するOS信号を受信することで、車両Vがオーバーステア状態であることを検知できる。
また、図4の(b)に示す手順は、例えばEPSECU20(図4の(a)参照)が実行するプログラムに組み込まれ、EPSECU20が補助操舵トルクを算出するタイミングに同期して実行する構成とすればよい。
車両Vの転舵輪2R,2L(図1参照)を中立位置に戻す舵角反力トルクは、舵角反力制御量Smに対応した大きさであり、舵角反力制御量Smの大きさが小さくなると、舵角反力トルクは小さくなる。このことから、車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、EPSECU20(図4の(a)参照)が算出する補助操舵トルクにおける舵角反力トルクの成分が小さくなる。
したがって、ヨーレート反力制御部20b(図2参照)が算出するヨーレート反力制御量Ymに基づいたヨーレート反力トルクと干渉するトルク(舵角反力トルク)の大きさが小さくなり、ヨーレート反力トルクと舵角反力トルクの干渉を緩和できる。そして、運転者が操向ハンドル21(図1参照)を操舵するときの負担を軽減できる。
さらに、車両V(図1参照)の実ヨーレートに応じた舵角反力トルクが適宜発生し、転舵輪2R,2L(図1参照)を中立位置に戻す方向に作用することから、車両Vの安定性を好適に維持することができる。
以上のように、本実施形態に係るEPSECU20(図1参照)は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態のとき、舵角反力制御量Smにゲイン補正値Sを乗算することで、補助操舵トルクにおける舵角反力トルクの成分を小さくできる。すなわち、舵角反力トルクのゲインを低下できる。
なお、図4の(a)、(b)に示すように、ゲイン補正値Sを乗算して基本舵角反力算出部20cが算出する舵角反力制御量Smを小さくする構成のほか、例えば、参考例として、車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、舵角反力制御部20cが反力制御を停止する構成であってもよい。
例えば、図4の(a)に示すゲイン設定部20cの代わりに、図5の(a)に示すように出力判定部20cと出力制御スイッチ20cを備える舵角反力制御部20cとする。そして、車両V(図1参照)がオーバーステア状態であることを出力判定部20cが検知した場合、出力判定部20cが出力制御スイッチ20cで内部回路を切断して舵角反力制御量Smの出力を停止することで、舵角反力制御部20cの反力制御を停止する構成とする。
図5の(a)は、反力制御を停止する機能を有する舵角反力制御部の一構成例を示す図、(b)は、反力制御を停止する手順を示すフローチャートである。
図5の(a)に示す基本舵角反力算出部20cは、前記したように舵角反力制御量Smを算出する。
また、出力判定部20cは、車両V(図1参照)がオーバーステア状態であることを検知したとき、出力制御スイッチ20cで内部回路を切断して基本舵角反力算出部20cが算出する舵角反力制御量Smの出力を停止する。このように、出力判定部20cが舵角反力制御量Smの出力を停止することで、舵角反力制御部20cの反力制御を停止する。換言すると、舵角反力制御量Smのゲインを「0」に低下する。
すなわち、図5の(b)に示すように、舵角反力制御部20cの基本舵角反力算出部20c(図5の(a)参照)は、前記したように車両V(図1参照)の実ヨーレート、車速、及び転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角に基づいて、舵角反力制御量Smを算出する(ステップS10)。
そして、舵角反力制御部20cの出力判定部20c(図5の(a)参照)は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態であるとき(ステップS11→Yes)、出力制御スイッチ20c(図5の(a)参照)で内部回路を切断して舵角反力制御量Smの出力を停止する。すなわち、舵角反力制御部20c(図5の(a)参照)は反力制御を停止し、舵角反力制御量Smを出力しない(ステップS12)。
一方、車両Vがオーバーステア状態でないとき(ステップS11→No)、出力判定部20cは出力制御スイッチ20cで内部回路を接続する。すなわち、舵角反力制御部20cは反力制御を実行し、舵角反力制御量Smを出力する(ステップS13)。
以上のように、図5の(a)に示すEPSECU20は、車両V(図1参照)がオーバーステア状態のとき、舵角反力制御部20cからの舵角反力制御量Smの出力を停止する。このように舵角反力制御量Smの出力が停止されると、EPSECU20が舵角反力制御量Smに応じて算出する舵角反力トルクが「0」になる。換言すると、EPSECU20は、舵角反力トルクのゲインを「0」に低下する。
なお、図5の(a)に示す出力判定部20cが、ステップS11で車両V(図1参照)がオーバーステア状態か否か、を判定する方法は、図4の(b)のステップS2におけるゲイン設定部20c(図4の(a)参照)の方法と同じにすればよい。
また、図5の(b)に示す手順は、例えばEPSECU20(図5の(a)参照)が実行するプログラムに組み込まれ、EPSECU20が補助操舵トルクを算出するタイミングに同期して実行する構成とすればよい。
このような構成によって、車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、図5の(a)に示す舵角反力制御部20cは反力制御を停止して舵角反力トルクを発生するための舵角反力制御量Smを出力しない。すなわち、EPSECU20は、舵角反力トルクのゲインを「0」に低下し、舵角反力トルクの成分を含まない補助操舵トルクを算出する。
したがって、ヨーレート反力制御部20b(図2参照)が算出するヨーレート反力制御量Ymに基づいたヨーレート反力トルクと干渉するトルク(舵角反力トルク)の発生を抑制することができ、ヨーレート反力トルクと舵角反力トルクの干渉をなくすことができる。そして、運転者が操向ハンドル21(図1参照)を操舵するときの負担を軽減できる。
また、図5の(a)に示す出力判定部20cは、ゲイン補正値S(図4の(a)参照)を算出する必要がなく、舵角反力制御部20cの演算負荷を軽減できる。したがって、舵角反力制御部20cの演算速度を向上することができ、例えば車両V(図1参照)がオーバーステア状態である場合、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの負担を速やかに軽減できる。
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置1のEPSECU20(図1参照)は、反力制御の実行で算出する舵角反力トルクで車両V(図1参照)の直進安定性をアシストできるとともに、車両Vがオーバーステア状態のときは舵角反力トルクのゲインを低下して、車両Vを安定させる方向に操向ハンドル21(図1参照)を操舵する運転者の負担を軽減できるという優れた効果を奏する。
車両に備わる電動パワーステアリング装置及び車両安定化システムの構成図である。 EPSECUとVSAECUの機能ブロック図である。 (a)は、転舵輪の転舵角と舵角反力制御量の関係の一例を示す図、(b)は、車両の実ヨーレートとヨーレート反力制御量の関係の一例を示す図である。 (a)は、舵角反力制御量を算出するときのゲインを低下する機能を有する舵角反力制御部の一構成例を示す図、(b)は、舵角反力制御量を算出するときのゲインを低下する手順を示すフローチャートである。 (a)は、反力制御を停止する機能を有する舵角反力制御部の一構成例を示す図、(b)は、反力制御を停止する手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置
2R,2L 転舵輪
3 車両安定化システム
20 EPSECU(舵角応動制御部、ヨーレート応動制御部)
21 操向ハンドル(転舵機構)
22 ステアリング軸(転舵機構)
25 ラックアンドピニオン機構(転舵機構)
25a ラック軸(転舵機構)
30 VSAECU
30a VSA制御部(オーバーステア判定手段)
31 ABS制御部
32 TCS制御部
V 車両

Claims (1)

  1. オーバーステア状態であることを判定するオーバーステア判定手段を有する車両に備わり、
    転舵輪の転舵角に応じた反力を転舵機構に付与する舵角応動制御部を有する電動パワーステアリング装置であって、
    前記車両がオーバーステア状態であることを前記オーバーステア判定手段が判定したとき、前記舵角応動制御部が、前記転舵角に応じた反力のゲインを低下し、かつ前記車両のヨーレートが大きくなるに従って前記ゲインの低下量を増大することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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