本発明は、誘導加熱調理器に関するものであり、特に、加熱調理時において鍋などの加熱容器の焦げ付きを検知する機能を備えた誘導加熱調理器に関するものである。
従来、この種の誘導加熱調理器は、加熱開始後沸騰検知動作を行い、沸騰を検知した時の温度及び入力電力、並びに沸騰に至るまでの温度の変化パターンにより調理容器(例えば、鍋)内部に存在する調理物の粘度、容量を測定して沸騰後の加熱に必要な電力を決定している。従来の誘導加熱調理器は、加熱されている調理容器においてだし汁がなくなり、調理容器の底面(鍋底)の温度が急上昇して所定値以上に上昇した場合、鍋底に調理物が焦げ付いたと判定する焦げ付き検知を行う煮込みモードを有する構成となっていた(例えば、特開平10−149875号公報(以下、特許文献1と略称)参照)。また、従来の誘導加熱調理器においては、加熱されている調理容器の検出温度が急激に上昇したとき、焦げ付き発生と判定する構成が提案されている(例えば、特開2007−115515号公報(以下、特許文献2と略称)参照)。
図9は従来の誘導加熱調理器のブロック図であり、図10は図9に示した従来の誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図9において、トッププレート101は当該誘導加熱調理器の上面に設けられた結晶化セラミック製の板であり、加熱コイル103はトッププレート101の下方に設けられている。調理容器としての鍋102を加熱するとき、鍋102は加熱コイル103に鍋底が対向するようにトッププレート101上に載置される。インバータ回路108aは、スイッチング素子及び共振コンデンサを含み、加熱コイル103とともにインバータを構成しており、加熱コイル103に高周波電流を供給する。制御部107はインバータ回路108aのスイッチング素子のオンオフ制御を行って、加熱出力を制御する。調理容器である鍋102の底面温度を検知するため、鍋102が載置されるトッププレート101の裏面には感熱素子であるサーミスタ104が接するように設けられており、トッププレート101の裏面温度が測定されている。サーミスタ104は、トッププレート101の裏面温度に対応した検知信号を制御部107に出力する。使用者が操作する操作部110には、出力設定部110a、加熱動作を開始するための加熱開始キー110b、動作モードを選択するための制御モード選択キー110cが設けられている。出力設定部110aには、加熱モードで動作中において押すごとに出力設定値を1段階減少させるダウンキー110aaと、押すごとに出力設定値を1段階増加するためのアップキー110abが設けられている。
次に、上記のように構成された従来の誘導加熱調理器の動作について、図10を参照して説明する。電源スイッチ106がオン状態となると(S301)、制御部107は待機モードとなる。制御部107は待機モードであるとき加熱動作を停止しており、操作部110の制御モード選択キー110cを操作することにより、加熱モード及び煮込みモードを含む複数の動作モードの中からひとつの動作モードを選択することが可能な状態となっている。待機モードにおいて動作モードが選択され(S302)、加熱開始キー110bが押されると(S303)、選択された動作モードで加熱動作が開始される。例えば、煮込みモードが選択されて加熱動作が開始されると(S304でYES)、制御部107は出力設定部110aにおいて出力設定値の変更を禁止し、特許文献1に記載されているように、沸騰検知動作を行った後、加熱出力を自動制御する。もし、サーミスタ104からの検知信号により鍋102の温度が異常に上昇したことを検知した場合には、焦げ付きを検知する焦げ付き検知機能が動作する(S306)。煮込みモードでない、例えば加熱モードが選択されて加熱動作が開始されると(S304でNO)、制御部107は焦げ付き検知機能の動作を禁止(S305)する。このとき、出力設定部110aにおける出力設定値の変更は可能となる。
特開平10−149875号公報
特開2007−115515号公報
しかしながら、前記のように構成された従来の誘導加熱調理器においては、焦げ付き検知機能が働く調理モードは煮込みモードに限定されており、また煮込みモードにおいては出力設定部110aでの出力設定値の変更が禁止されている。すなわち、使用者は、出力設定部110aにおいて出力設定値の変更を行うことができる加熱モードでは、焦げ付き検知機能を働かせることができなかった。したがって、使用者が、誘導加熱調理器において焦げ付き検知機能を働かせるためには、煮込みモードを選択しなければならなかった。煮込みモードであれば、煮込み中の調理容器の温度において焦げ付きがなければ、急激な温度上昇はなく、もし急激な温度上昇が発生したときは焦げ付きが発生した場合である。このため、煮込みモードであれば急激な温度上昇を検知して、焦げ付き検知を行うことが可能である。しかし、他の動作モード、例えば加熱モードにおいては加熱調理の種類により調理容器の温度がどのように変化するかが一定ではなく、例えば炒めもの調理のように急激に高温度となる場合もあるため、加熱出力を抑制することが必要と想定される焦げ付きの発生を正確に検知することは困難であった。
また、特許文献2に記載されているように、従来の誘導加熱調理器においては、調理容器の検出温度が急激に上昇したときを焦げ付きと判定する構成では、炒めもの調理をしている場合に調理鍋容器に焦げ付きが発生したと判定する可能性が高く、不要に加熱動作を停止して炒めもの調理が終了するまで必要な加熱出力で加熱動作を継続できないおそれがあり、使い勝手の良い誘導加熱調理器ではなかった。
本発明は、前記のように構成された従来の誘導加熱調理器における課題を解決するものであり、加熱出力を使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付きを検知すると加熱出力の抑制動作を行う焦げ付き検知機能が必要と想定される場合には焦げ付き検知機能を動作させることができるとともに、不必要に焦げ付き検知機能が動作して調理動作に悪影響を与える可能性がある場合には焦げ付き検知機能を禁止することができる誘導加熱調理器の提供を目的としている。すなわち、本発明は、加熱モードで行う通常の調理動作のひとつである炒めもの調理において焦げ付き検知機能が与える悪影響を抑制しつつ、加熱モードで行う他の通常の調理動作である煮込み調理において焦げ付きの程度が悪化するのを防止して、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
本発明の誘導加熱調理器は、前述の従来の誘導加熱調理器における課題を解決するものであり、調理容器を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ前記調理容器を加熱する加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ前記調理容器から放射され、前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報を出力する赤外線センサと、前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の異なる出力設定値の中から、1つの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部と、を具備し、
前記制御部は、前記赤外線検知情報を温度に変換する検知温度算出部と、前記インバータの加熱動作を開始してからの時間を計時する第1計時部とを備え、前記第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間以上である場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うように構成されている。
上記のように構成された本発明の誘導加熱調理器は、使用者が選択した加熱出力で加熱する加熱モードで調理しているときに、焦げ付いたことを検知し、焦げ付き状態がひどくならないようにするとともに、湯沸しや炒めものなどの比較的短時間で加熱動作が終了し、焦げつき検知機能を必要としないような調理をしている時には、焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が予め決められた期間禁止されるので、焦げつき検知機能が動作して不必要に加熱動作が停止したり加熱出力が低下したりすることを避けることができる。このように、本発明の誘導加熱調理器においては、使用者が、違和感なく調理を継続することが出来るとともに、使い勝手の向上が図られている。
以下に説明する本発明における課題を解決するための手段においては、後述する実施の形態における具体的な構成要素名、信号名などを括弧内に記載して関連を示しているが、本発明の構成を実施の形態に記載したものに限定することを示すものではない。
本発明に係る第1の態様の誘導加熱調理器は、
調理容器(2)を載置するトッププレート(1)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱コイル(3)を含むインバータ(3、8)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器の底面から放射されて前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報(A)を出力する赤外線センサ(4)と、
前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値(第2設定温度:Temp2)以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報(B)を出力する焦げ付き検知部(50)と、
複数の異なる出力設定値の中から、1つの出力設定値を選択するための出力設定部(14)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部(15)と、を具備し、
前記制御部は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記インバータの加熱動作を開始してからの調理時間(Tp)を計時する第1計時部(31)とを備え、
前記第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間(T1)以上である場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第1の態様の誘導加熱調理器は、加熱モードにおいて、煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるとともに、煮込み調理と比較して調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理においては焦げ付きを検知情報に基づく加熱出力抑制動作を禁止して短時間で不要に焦げ付き検知が働かないので、使い勝手を向上させることができる。
本発明に係る第2の態様の誘導加熱調理器は、
調理容器(2)を載置するトッププレート(1)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱コイル(3)を含むインバータ(3、8)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器の底面から放射されて前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報(A)を出力する赤外線センサ(4)と、
前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値(第2設定温度:Temp2)以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報(B)を出力する焦げ付き検知部(50)と、
複数の異なる出力設定値の中から、1つの出力設定値を選択するための出力設定部(14)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部(15)と、を具備し、
前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値に達してからの調理継続時間(Tq)を計時する第2計時部(32)とを備え、前記第2計時部で計時した計測調理継続時間が第2経過設定時間(T2)以上である場合に、前記焦げ付き検知情報(B)に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第2の態様の誘導加熱調理器は、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを軽減することができる。
本発明に係る第3の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第1の態様における前記焦げ付き検知部(50)が前記焦げ付き検知情報(B)を出力したとき、前記制御部(15)は、前記第1計時部(31)の計測調理時間(Tp)が第1経過設定時間(T1)以下の場合は、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値(第2設定温度:Temp2)と前記第2設定値以下である第3の設定値(第3設定温度:Temp3)との間の温度となるように、前記インバータの加熱動作を制御するよう構成されている。このように構成された第3の態様の誘導加熱調理器は、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理においては短時間で不要に焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が働いて加熱出力が大きく低下したり加熱動作が停止したりすることがなく、且つ、焦げつき始めている場合でも、焦げつきの進行を極力抑えることができる。
本発明に係る第4の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第1または第3の態様における前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記赤外線検出情報が示す温度が第2設定値(Temp2)に達してからの調理継続時間(Tq)を計時する第2計時部(32)とを備え、前記第1計時部の計測調理時間(Tp)が前記第1経過設定時間(T1)以上であり、且つ、前記第2計時部の計測調理継続時間(Tq)が前記第2経過設定時間(T2)以上の場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第4の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるようにしつつ、調理容器底面を高温にする、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを更に軽減することができる。
本発明に係る第5の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第2の態様における前記焦げ付き検知部50が焦げ付き検知情報(B)を出力したとき、前記制御部(15)は、前記第2計時部(32)で計時した計測調理継続時間(Tq)が第2経過設定時間(T2)以下の場合は、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値と前記第2設定値以下である第3の設定値との間の温度となるように、前記インバータの加熱動作を継続するよう構成されている。このように構成された第5の態様の誘導加熱調理器は、焦げつき始めている場合でも、焦げつきの進行を極力抑えながら(緩和しながら)、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が働いて加熱出力が大きく低下したり加熱動作が停止したりするリスクを軽減することができる。
本発明に係る第6の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第5の態様における制御部(15)は、前記赤外線検出情報(A)を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記インバータの加熱動作を開始してからの調理時間(Tp)を計時する第1計時部(31)とを備え、前記第1計時部の計測調理時間(Tp)が前記第1経過設定時間(T1)以上であり、且つ、第2計時部の計測調理継続時間(Tq)が前記第2経過設定時間(T2)以上の場合に、前記焦げ付き検知部(50)が前記焦げ付き検知を確定するよう構成されている。このように構成された第6の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるようにしつつ、調理容器底面を高温にする、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを更に軽減することができる。
本発明に係る第7の態様の誘導加熱調理器において、前記の第1または第2の態様における前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報の示す温度に基づき煮込み調理を行っていると判別した場合にのみ、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第7の態様の誘導加熱調理器は、加熱モードにおいて、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)に対応して、焦げ付き検知機能を選択的に動作させることが可能である。これにより、煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすると共に、第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間(T1)以上である場合でも、炒めもの調理を継続することができる。
本発明に係る第8の態様の誘導加熱調理器において、前記の第7の態様における前記制御部(15)は、前記第1計時部で計時した計測調理時間が初期経過設定時間となったときの前記赤外線検出情報の示す温度が前記第2設定値より低い第1設定値以下となる場合に、煮込み調理を行っていると判別するよう構成されている。このように構成された第7の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)を判別することができる。
本発明に係る第9の態様の誘導加熱調理器の誘導加熱調理器において、前記の第7の態様における前記制御部(15)は、加熱開始から前記赤外線検出情報の示す温度が前記第2設定値より低い第1設定値に達するまで前記第1計時部で計時した計測調理時間が初期経過設定時間以上である場合に、煮込み調理を行っていると判別するよう構成されている。このように構成された第9の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)を判別することができる。
本発明の誘導加熱調理器においては、使用者が加熱出力を選択して、煮込みモードとは異なる、加熱調理を行う加熱モードを選択して煮込み調理を行った場合でも、焦げ付きを検知して自動的に加熱動作を停止する、若しくは加熱出力を弱めて焦げ付きの状態が悪化しないように動作するとともに、炒めもの調理等のように比較的加熱出力が大きく調理容器底面を高温にするような調理を行った場合には短時間で不必要に焦げ付き検知機能が動作しないように設定されており、使い勝手の向上が図られている。
本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図
実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている赤外線センサの概略構成を示す回路図
実施の形態1の誘導加熱調理器における赤外線センサの出力特性を示すグラフ
実施の形態1の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間との関係を示す図
実施の形態1の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値Wと経過時間との関係を示す図
本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値と経過時間との関係を示す図
本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図
実施の形態3の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値と経過時間との関係を示す図
従来の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図
従来の誘導加熱調理器の動作を示すフローチャート
以下、本発明の誘導加熱調理器に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に記載した具体的な構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成されるものを含む。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器は、当該誘導加熱調理器の上面に設けられたセラミック製のトッププレート1と、高周波磁界を発生させることによって、トッププレート1上の調理容器2を誘導加熱する加熱コイル3(外コイル3aおよび内コイル3b)とを備える。トッププレート1は、結晶化セラミックなどの赤外線を透過する電気絶縁物からなる。誘導加熱用のコイルである加熱コイル3は、トッププレート1の下方に設けられている。加熱コイル3は、同心円状に2分割されており、互いに電気的に接続された外コイル3aと内コイル3bで構成されている。外コイル3aの内側と内コイル3bの外側との間には、隙間が形成されている。トッププレート1上に載置された調理容器2は、加熱コイル3の高周波磁界により底面に発生した渦電流によって発熱する。
トッププレート1において、加熱コイル3より使用者側の領域には、加熱動作の開始/停止、および設定などの各種操作を使用者が実行するための操作部14が設けられている。また、操作部14と調理容器2が載置される領域との間には表示部(図示せず)が設けられている。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、調理容器温度検知器である赤外線センサ4が外コイル3aと内コイル3bとの間の隙間の下方に設けられている。なお、本発明の誘導加熱調理器において、赤外線センサの設置位置は、実施の形態1の構成に限定されるものではなく、調理容器2の底面温度検出が可能な位置であればよい。調理容器2の底面から放射された、調理容器2の底面温度に基づきその大きさが変わる赤外線は、トッププレート1を通り、外コイル3aと内コイル3bとの間の隙間を通って、赤外線センサ4に入射され受光される。また、加熱コイル3は外コイル3aと内コイル3bされたものに限定されるものではない。加熱コイル3が分割されていない場合、例えば、赤外線センサは加熱コイル3の巻線の内側、すなわち加熱コイル中心またはその近傍を通過する赤外線を検知するように設けることができる。赤外線センサ4は、受光した赤外線を検出し、検出した赤外線量に基づいた赤外線検出情報である赤外線検出信号Aを出力する。
加熱コイル3の下方には、商用電源6から供給される交流電圧を直流電圧に変換し高周波電源を構成する整流平滑部7と、整流平滑部7から直流電圧が供給されて高周波電流を生成し、生成した高周波電流を加熱コイル3に出力するインバータ回路8とが設けられる。また、商用電源6と整流平滑部7との間には、商用電源6から整流平滑部7に流れる入力電流を検出するための入力電流検出部9(カレントトランス)が設けられている。
整流平滑部7は、ブリッジダイオードで構成される全波整流器10と、全波整流器10の出力端子間に接続された、チョークコイル16及び平滑コンデンサ17で構成されるローパスフィルタと、を有する。インバータ回路8は、スイッチング素子11(実施の形態1においては半導体スイッチング素子としてIGBTを用いるがこれに限定されるものではない)と、スイッチング素子11と逆並列に接続されたダイオード12と、加熱コイル3に並列に接続された共振コンデンサ13と、を有する。インバータ回路8のスイッチング素子11がオン/オフ動作を行うことによって、高周波電流が発生する。インバータ回路8と加熱コイル3は、高周波インバータ(以下、単にインバータとも言う)を構成する。なお、実施の形態1ではインバータを1つのスイッチング素子で構成した1石式としているがこれに限定されない。例えば、インバータを、ハーフブリッジ式のように2つのスイッチング素子で構成した2石式としてもよいし、フルブリッジ式のように4つのスイッチング素子で構成した4石式としてもよい。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、さらに、インバータ回路8のスイッチング素子11のオン/オフ動作を制御することによって、インバータ回路8から加熱コイル3に供給される高周波電流の状態を制御する制御部15を有する。制御部15は、操作部14からの動作モード設定信号、加熱条件設定信号、並びに赤外線センサ4が検出した赤外線検出信号Aなどに基づいて加熱コイル3の高周波電流の状態を制御し、調理容器2に対する加熱電力の大きさの制御、及び加熱動作の開始及び停止の制御を行っている。
制御部15は、操作部14から送信される動作モード設定信号、加熱条件設定信号及び赤外線センサ4からの赤外線検出信号Aなどに基づいて、スイッチング素子11のオン/オフ動作を制御するインバータ制御部40と、赤外線センサ4の赤外線検出信号A(電圧信号)を温度に換算して検知温度信号を出力する検知温度算出部30と、加熱開始からの調理時間を計時する第1計時部31と、を備えている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器には、焦げ付き検知部50が設けられている。焦げ付き検知部50は、制御部15の第1計時部31で計時した計測調理時間信号と検知温度算出部30で形成した検知温度信号が入力され、これらの計測調理時間信号と検知温度信号から調理物が、焦げ付いた状態にあることを検知すると共に、使用者が誤って調理中に放置して鍋などに焦げ付くことを防止する必要性のある調理である煮込み調理か、または使用者が調理物の近くにいて鍋などを高温にして行う調理であり、焦げ付いたことを検知して加熱出力を低減したり加熱動作を停止したりする必要性の低い調理(例えば、炒めものなどの調理)か、を判別する。もし、焦げ付き検知部50が、調理容器2の底部が予め決められた温度(第2設定値Temp2)以上の高温となり焦げ付いていることを検知すると、焦げ付き検知部50は焦げ付き検知信号Bを制御部15のインバータ制御部40に出力する。
前述のように、操作部14はトッププレート1の手前側(使用者側)の領域に設けられており、動作モードおよび動作状態などを表示する表示部は、トッププレート1における操作部14と載置された調理容器2との間の領域に設けられている。操作部14は、複数の静電容量式のスイッチ14a〜14cを含んで構成されている。スイッチ14a〜14cは、ひとつの加熱コイル3の調理に関する指示を入力するための一組のスイッチであって、加熱コイル3の数が複数ある場合は、各加熱コイル3に対応して複数組みのスイッチが設けられている。なお、本発明における操作部14のスイッチは、静電容量式に限定されるものではなく、タクトスイッチのような押しボタン式など、各種の切替手段を用いることが可能である。
各スイッチ14a〜14cには、それぞれ特定の機能が割り当てられている。例えば、切/入スイッチ14aは、調理(加熱動作)の開始及び終了を制御する機能が割り当てられている。操作部14には、出力設定部14b、動作モードを選択するための動作モード選択キー(メニューキー)14cが設けられている。出力設定部14bには、出力設定値を1段階減少させるためのダウンキー14b2と1段階増加するためのアップキー14b1が設けられている。これらの出力設定部14bのキー操作を行うことにより複数の出力設定値(例えば、設定1=100W、設定2=300W、設定3=700W、設定4=1000W、設定5=2000W、設定6=3000Wの6段階)の中からひとつの出力設定値を選択して設定することができる。
制御部15のインバータ制御部40は、操作部14のスイッチ14a〜14cが押圧(接触)されたことを検知すると、押圧されたスイッチに基づいて、インバータ回路8を駆動制御して、加熱コイル3に供給する高周波電流の状態を制御する。
先ず始めに電源スイッチ(図示せず)がオフ状態からオン状態となると、制御部15の動作モードは、加熱が停止した状態である待機モードとなる。待機モードでは、加熱動作時の動作を制御するための動作モードが選択できる。待機モードにおいて動作モード選択キー14cを操作することにより、複数の動作モード(加熱モード、煮込みモード、など)の中からひとつの動作モードを選択できる。
待機モードにおいて、加熱モードが選択されて、切/入スイッチ14aが押圧されると(操作されると)加熱動作が開始され、制御部15は出力設定値を自動的に「設定4=1000W」として加熱モードに移行する。ここで、加熱モードとは、インバータ回路8の加熱出力が、出力設定部14bにより使用者が選択した出力設定値となるように加熱する動作モードである。制御部15が加熱モードで動作するときは、出力設定部14bを操作することにより、出力設定値を所望の設定(設定1から設定6)に変更することができる。出力設定部14bにおいて出力設定値が変更されると、出力設定部14bは制御部15に出力設定値が変更されたことを示す出力設定信号を出力する。制御部15は、インバータ回路8の入力電流を、入力電流検出部9の出力信号をモニタして、インバータ回路8からの加熱出力(赤外線検出信号A)が出力設定値となるようにスイッチング素子11を駆動制御する。このように、スイッチング素子11を駆動制御することにより、出力設定値に対応した高周波電流が加熱コイル3に供給される。
図2は実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている調理容器温度検知器である赤外線センサの概略構成を示す回路図である。図2に示すように、赤外線センサ4は、フォトダイオード21と、オペアンプ22と、2つの抵抗23,24とを有して構成されている。抵抗23,24の一端はフォトダイオード21のカソードに接続されている。抵抗23の他端はオペアンプ22の出力端子に接続されており、抵抗24の他端はオペアンプ22の反転出力端子(−)に接続されている。フォトダイオード21は、調理容器2からトッププレート1を透過するおよそ3ミクロン以下の波長の赤外線が照射されると電流が流れ、入射する赤外線のエネルギー量が多くなればなるほど、流れる電流の大きさ及び増加率が大きくなるInGaAs等で形成された受光素子である。フォトダイオード21により発生した電流は、オペアンプ22によって増幅され、調理容器2の温度を示す赤外線検出信号A(電圧値V0に相当)として、制御部15に出力される。実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている赤外線センサ4は、調理容器2から放射される赤外線を受光する構成であるため、トッププレート1を介して温度を検出するサーミスタと比較して、調理容器2の底面温度の変化に対する優れた熱応答性を有しており、精度の高い調理容器2の底面温度の制御が可能となる。
図3は赤外線センサ4の出力特性を示すグラフである。図3において、横軸は鍋などの調理容器2の底面温度(鍋底温度)であり、縦軸は赤外線センサ4が出力する赤外線検出信号Aの電圧値(V0)を示す。トッププレート1を透過するおよそ3ミクロン以下の波長の赤外線を、赤外線センサ4のフォトダイオード21が入射すると、フォトダイオード21には電流が流れる。例えば、調理容器2の底面温度について、120℃以上200℃未満を低温域、200℃以上250℃未満を中温域、250℃以上330℃未満を高温域と定義すると、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が低温域から高温域に移行するにつれ、すなわち入射する赤外線のエネルギー量(検出値)が多くなればなるほど、抵抗23と抵抗24で決定される増幅率を、低温域→中温域→高温域のように温度領域が高温となるほど小さくなるように切り替えている。
実施の形態1の誘導加熱調理器において、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が約120以上200℃未満のときに赤外線検出信号ALを出力し、底面温度が約200℃以上250℃未満のときに赤外線検出信号AMを出力し、底面温度が約250℃以上330℃未満のときに赤外線検出信号AHを出力するようにその増幅率が切り替えられる。また、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が約120℃未満のときには赤外線検出信号Aを出力しないよう構成されている。この場合の「赤外線検出信号Aを出力しない」とは、赤外線センサ4が赤外線検出信号Aを全く出力しない状態を含むとともに、僅かの赤外線検出信号Aしか出力しないような赤外線検出信号Aを実質的に出力しない状態を含む。すなわち、「赤外線検出信号Aを出力しない」とは、制御部15が赤外線検出信号Aの大きさの変化に基づいて調理容器2の底面の温度変化を実質的に読み取れない程の微弱な信号を出力することを含む。図3のグラフに示すように、赤外線検出信号Aの出力値は、調理容器2の温度が約120℃以上になると、べき乗関数(V=aTb:Vは出力電圧、Tは鍋温度、a及びbは正の実数、bは例えば5〜10)的に増加する。
なお、赤外線センサ4における温度センサとしては、フォトダイオードに限定するものではなく、例えばサーモパイルなどの温度センサを含む。
次に、実施の形態1の誘導加熱調理器における焦げ付き検知部50の構成とその焦げ付き検知動作について、図4および図5を用いて説明する。図4は煮込み調理と、短時間で高温に達する調理(例えば、炒めもの調理)のいずれであるかを判定する方法を説明するために検知温度算出部30の検知温度Tnを例示的に示した図である。図4においては、加熱開始後の赤外線センサ4の検知温度Tnと経過時間との関係の一例を示している。図5の(a)は加熱開始後の赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフであり、図5の(b)は出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである。
以下、説明を簡単にするため、出力設定は、「設定4=1000W」で変更されないものとし、実際の出力電力値[W]も1000Wであるものとする。制御部15は、赤外線センサ4が出力し調理容器2の温度を示す赤外線検出情報である赤外線検出信号A、すなわち赤外線センサ4の出力電圧[V0]を入力して、その出力電圧[V0]の大きさを測定し、その測定結果を検知温度算出部30で換算して赤外線検出情報が示す温度を焦げ付き検知部50に送出する。なお、焦げ付き検知部50に対しては、制御部15を介在することなく赤外線センサ4からの赤外線検出信号Aを、直接、入力してもよい。この場合には、焦げ付き検知部50は、第1出力電圧値V1およびこの第1出力電圧値V1より大きい値の第2出力電圧値V2(V2>V1)を予め記憶する温度記憶部を備えている(図示せず)。
図4において、摂氏温度で表記されている検知温度Tnの値は、赤外線センサ4が出力する赤外線検出情報が検知温度算出部30によって温度換算された値であり、赤外線検出情報の示す温度である。例えば、調理容器2の検知温度Tnが「Temp1(第1設定温度)」[℃]とは、赤外線センサ4から第1出力電圧値V1が出力されるとき赤外線検出情報が示す温度(例えば、約130℃)を表示している。
同様に、調理容器2の検知温度Tnが「Temp2(第2設定温度)」[℃]とは、赤外線センサ4から第2出力電圧値V2が出力されるとき赤外線検出情報が示す温度(例えば、約240℃)を表示している。以降、赤外線センサ4からの出力電圧は温度換算し、赤外線センサ4の検知温度Tnとして摂氏温度で記す。
図4において、設定4(1000W)で加熱されている調理容器2の底面温度が上昇すると、赤外線センサ4で検知している温度も上昇し始める。そして、先ず、制御部15は、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpが、あらかじめ設定されている初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnにより、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別する。煮込み調理であれば、例えば炒めもの調理と比較して水分が多く、通常、調理容器2の中の調理物の温度は100℃前後で推移して、水分が蒸発してなくなり調理物が焦げ始めると調理容器2の温度も上昇をし始める。一方、炒めもの調理の場合には、一般的に加熱を継続すると、温度は上昇し続ける場合が多い。この違いから水分の多い調理物と水分の少ない調理物との判別を行うものである。制御部15は、計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1[℃]よりも高ければ、炒めもの調理のような水分量の少ない、煮込み調理以外の調理と判別する。一方、このときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1[℃]以下であれば煮込み調理と判別する。なお、上記のように、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpが、あらかじめ設定されている所定時間、例えば、初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnの高、低により、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別することに代えて、検知温度Tnが所定温度に達するまでの計測調理時間Tpの長、短により焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か、焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)か、判別してもよい。例えば、第1設定温度Temp1[℃]に達するまでの計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0以上の場合は煮込み調理と判別し、初期経過設定時間T0に満たない場合は焦げ付き検知機能を必要としない煮込み調理以外の調理と判別しても良い。
次に、図5に示すように、加熱開始からの計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1以下で煮込み調理と判定された後において、加熱を継続していくと調理物の水分が減少していく。最終的には調理物の水分がなくなり、焦げ付きが始まる。焦げ付きの進行に伴い、検知温度Tnが上昇を始めるため、検知温度Tnが第2設定温度Temp2[℃]に到達すると、焦げ付き検知部50にて、焦げ付きが発生したと判定し、焦げ付き検知信号Bを出力する。
煮込み調理であれば、この時点で制御部15にてインバータ回路8を駆動制御し、加熱コイル3から調理容器2への加熱動作を停止することが望ましい。しかし、炒めもの調理では焦げ付き検知部50が焦げ付きと判定してしまうと、焦げ付きの悪化を防止するため調理途中で加熱を止めたり加熱出力を低減させたりしてしまうことになってしまう。
そこで、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、たとえ焦げ付き検知部50から焦げ付き検知信号Bが出力されても、炒めもの調理である可能性がゼロではない。このため、図5の(b)に示すように、制御部15は、焦げ付き検知部50から焦げ付き検知信号Bが出力されても、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していないときは、炒めもの調理であると判別して加熱動作を引き続き継続する。そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達した後において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2以上である場合には、制御部15は焦げ付き検知を確定し、制御部15は、インバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を停止するか、または加熱出力を抑制して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う。なお、「焦げ付き検知を確定する」とは、焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を実行することを意味する(以下同じ)。誘導加熱調理器に表示部や報知部が設けられていれば、焦げ付き発生を確定したとき、加熱動作の停止を表示し報知して使用者に知らせるよう構成とすることも可能である。
実施の形態1の誘導加熱調理器において、第1経過設定時間T1まで加熱動作を継続させる、すなわち、第1経過設定時間T1までは実質的に炒めものと判別するのは、一般的に煮込み調理が長時間に及ぶことが多く、その他の調理(例えば炒めもの調理)では、煮込み調理と比較して短時間で終わることが多いため、加熱動作を継続することにより、炒めもの調理などで誤って煮込み調理と判別されないようにして、調理完了前に加熱動作を停止する可能性を減らすことができるためである。
前述の点から分かるように、第1経過設定時間T1は、長くすればするほど、煮込み調理以外の調理での調理完了前の加熱動作の停止を防ぐことができるが、あまりに長い時間に設定すると、実際に煮込み調理で焦げ付いている場合には焦げ付きが進行してしまうという問題ある。このため、煮込み調理以外の調理において、一般的に調理完了すると推定される時間よりも長い時間であり、且つ、出来る限り短い時間に設定することが望ましい。
以上のことから、実施の形態1の誘導加熱調理器によれば、制御部15の焦げ付き検知部50において、煮込み調理にて検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。また、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していない場合には、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)は加熱出力に作用を及ぼさず、焦げ付き検知情報が出力されかつ、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になった場合には、加熱コイル3による調理容器2への加熱を停止する。これにより、第1経過設定時間T1経過するまでは、炒めもの調理をしていて煮込み調理と誤って判別しないようにして、調理完了まで加熱を継続することが可能となる。
また、制御部15が、前述したように(図4参照)、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、鍋などに焦げ付くことを検知して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う必要性のある煮込み調理か、若しくは焦げ付くことを検知して加熱出力抑制動作を行う必用性の低いその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別しておき、煮込み調理と判別した場合にのみ焦げ付き検知を確定することにより、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になった場合でも、炒めもの調理をより精度良く継続することができる。このような効果を期待しない場合には、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能は省略してもよい。なお、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能を有する場合、調理物の種類や量によっては、調理中に調理物から水分が出て、加熱を続けても温度が上昇しにくく、煮込み調理か炒めもの調理かの判別が困難な場合があるが、この場合でも第1経過設定時間T1だけは少なくとも炒めもの調理を行うことができる。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpがあらかじめ設定されている初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnに基づいて、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か、焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別する構成について説明した。しかし、本発明はこのような判別方法に限定されるものではなく、例えば加熱開始からの検知温度Tnの推移状態などに基づいて判別するなどの方法が可能である。要するに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2[℃]に到達する前に測定した検知温度Tnの上昇温度が、所定値未満の場合には煮込み調理と判別し、所定値以上の場合には炒めもの調理と判別することができる。
実施の形態1の誘導加熱調理器では、検知温度算出部30にて赤外線センサ4の出力電圧を温度換算する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、赤外線センサ4の出力電圧に基づいて直接制御する構成としても同様の効果が得られる。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、出力設定値を設定4(1000W)の場合について説明したが、他の設定値でも同様の制御が行われる。さらに、出力設定値毎に、初期経過設定時間T0、第1経過設定時間T1、赤外線センサ4の検知温度Tnの閾値である第1設定温度Temp1および第2設定温度Temp2の、それぞれが最適な値に設定されることにより、更に精度の高い制御を行うことができる。
また、インバータ回路8からの情報(例えば、スイッチング素子11のオン時間、加熱コイル3に流れる電流、スイッチング素子11を制御する周波数、インバータ回路8に供給される電流などの情報)から判別することができる調理容器2の金属材料の種類に応じて、初期経過設定時間T0、第1経過設定時間T1、赤外線センサの検知温度Tnの閾値である第1設定温度Temp1および第2設定温度Temp2をそれぞれ最適な値に設定することにより、更に精度の高い判別が可能となる。これは、調理容器2の大きさだけでなく、金属材料の種類によって熱伝導率などの諸特性が異なり、その熱伝導率などの違いにより焦げ付きの進行度合いが異なるためである。
更に、実施の形態1の誘導加熱調理器では、出力設定値の制限を設けていないが、本来、高火力になればなるほど、煮込み調理と煮込み以外の他の調理(例えば、炒めもの調理)との判別が赤外線センサ4の検知温度だけでは判定が困難になる。このため、出力設定値が所定以下のときのみ、煮込み調理の焦げ付き検知機能が働く構成とすることが望ましい。その方法は、操作部14の出力設定部14bで設定した値が所定値より高い場合には焦げ付き検知機能が働かないように制御部15にて制御することにより実現可能である。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器では、焦げ付き検知が確定した場合に加熱動作を停止する構成について説明したが、このような構成に限るものではない。焦げ付き検知が確定した場合は、焦げ付きの進行が抑えられる構成であればよく、例えば、焦げ付き検知が確定した場合には、加熱の出力が100Wから200W程度のいわゆる保温する際の火力に相当するような出力で加熱動作を継続する構成としてもよい。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器によれば、調理容器2の底面温度を赤外線センサ4で検知しているため、サーミスタなどの感温素子を使用する場合に比べて底面温度を応答性よく検出できる。この結果、実施の形態1の誘導加熱調理器は、焦げ付きを精度高く検出することができる構成を有する。
(実施の形態2)
次に、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器について、前述の図1〜4、および図6を参照しながら説明する。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器において説明したものと同じ、機能、構成を有するものには同一符号を用いて、その説明を省略する。
図6は、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器において、加熱開始後における赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフ(図6の(a))、並びに出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである(図6の(b))。
図6において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知部50にて焦げ付き検知信号Bを出力する。しかし、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していないため、制御部15によるインバータ回路8への制御動作は停止しない。しかし、そのままの出力電力値(実施の形態2においては1000W)で加熱を継続すると、調理容器2の温度が上昇し続け、煮込み調理で焦げ付いている場合には、その焦げ付き度合いが進行し悪化し続けることになる。
そのような状況を避けるため、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると調理容器2への加熱動作を一時オフ状態とする。その結果、検知温度Tnが低下して第2設定温度Temp2の温度以下である第3設定温度Temp3(実施の形態2では、第3設定温度Temp3は第2設定温度Temp2より5℃低い値とする)に達すると再び加熱動作をオン状態とする。すなわち、検知温度Tnが第2設定温度Temp2を超えないように断続的にオンオフを繰り返し温調制御が行われる。そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達して、且つ検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、煮込み調理にて焦げ付いたことを確定させて、制御部15によるインバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を継続的に停止する。なお、第2設定温度Temp2の温度と第3設定温度Temp3の温度は同一でも良い。
以上のように、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、制御部15の焦げ付き検知部50にて、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1未満である場合には、この第2設定温度Temp2を超えないように温調制御し、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。そして、実施の形態2の誘導加熱調理器は、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になったとき、加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行う(例えば、加熱動作を停止する)よう構成されている。また、実施の形態2の誘導加熱調理器は、上記のように構成されているため、炒めもの調理をしている場合に、焦げ付き検知情報が出力された場合でも、調理完了まで加熱を継続することができるとともに、煮込み調理時の焦げ付きの進行を抑えることができる。
なお、制御部15は、煮込み調理か、若しくはその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別するとともに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達しており、かつ第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上である場合であっても、煮込み調理である場合にのみ加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行うようにしても良い。これにより炒めもの調理の場合に加熱時間をさらに長くすることができる。このような効果を期待しない場合には、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能は省略してもよい。
なお、実施の形態2の誘導加熱調理器では、計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達する前に、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知情報を出力し、温調制御を行う動作としたが、すでに検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達した後では温調制御を行っているので、例えば、計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達した時点で焦げ付き検知を確定する動作(例えば、焦げ付きを表示する動作)を行ってもよい。
また、実施の形態2の誘導加熱調理器では、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達後、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達するまで、第2設定温度Temp2を超えないように温調制御するよう構成したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、焦げ付きの状態が進行する程度を緩和できるように構成されていればよい。例えば、検知温度Tnの温度変化の傾きや絶対値に応じて加熱動作の出力を可変して温度が略一定となるように制御(例えば、ファジイ制御)する構成としても同様の効果が得られる。さらに、温調制御を加熱動作のオンオフ制御に行う構成で説明したが、例えば、加熱動作をオフ状態とせず、加熱出力を可変することによる温調制御を行ってもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器について、前述の図1〜4、および図7と図8を参照しながら説明する。なお、実施の形態1および実施の形態2の誘導加熱調理器において説明したものと同じ、機能、構成を有するものには同一符号を用いて、その説明を省略する。
図7は、本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。図7に示すように、実施の形態3の誘導加熱調理器においては、制御部15には第2計時部32が設けられており、この第2計時部32は検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してからの経過時間を計時するものである。
図8は、実施の形態3の誘導加熱調理器において、加熱開始後における赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフ(図8の(a))、並びに出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである(図8の(b))。
図8の(a)に示すグラフにおいては、赤外線センサ4の検知温度Tnが、加熱開始から初期経過設定時間T0を経過しても、第1設定温度Temp1以下であるため、焦げ付き検知部50ではこの時点で煮込み調理であると判定する。その後、加熱動作を継続して調理容器2内の調理物の水分が蒸発した後においては、調理物が除々に焦げ付き始める。そして、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知部50にて焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力するとともに、制御部15の第2計時部32が経過時間の計時を開始する。このとき計時された経過時間を計測調理継続時間Tqとする。また、制御部15は、赤外線検出情報が示す温度が第2設定値Temp2と第2設定値Temp2以下である第3の設定値Temp3との間の温度となるように、すなわち検知温度Tnが第2設定温度Temp2を超えないように温調制御を行う。なお、第2設定温度Temp2の温度と第3設定温度Temp3の温度は同一でも良い。
そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達しても、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過設定時間T2に達していない間は、制御部15による温調制御を継続する。その後、計測調理継続時間Tqが第2経過設定時間T2に達した後、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知を確定させて、制御部15によるインバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を継続的に停止する。
なお、第2経過設定時間T2は、予め設定された時間であり、当然ながら、加熱開始からの経過時間である第1経過設定時間T1より短く設定するべきである。
以上のように構成された実施の形態3の誘導加熱調理器は、焦げ付き検知部50において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。そして、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1未満である場合、または、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2未満である場合には、第2設定温度Temp2を超えないように温調制御を行う。第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上であり、且つ、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2以上になった場合には、加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行う(例えば、加熱動作を停止する)ことにより、煮込み調理時の焦げ付きの進行を抑えることができる。また、実施の形態3の誘導加熱調理器は、上記のように構成されているため、炒めもの調理をしている場合に、焦げ付き検知情報が出力された場合でも、第2設定温度Temp2での高温調理の時間が確保されており、調理完了前に焦げ付き検知を確定して、加熱動作が停止されるという、不具合を防止することができる。
なお、制御部15は、煮込み調理か、若しくはその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別するとともに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達しており、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上であり、且つ、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2以上ある場合であっても、煮込み調理である場合にのみ加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行うようにしても良い。これにより炒めもの調理の場合に加熱時間をさらに長くすることができる。
なお、実施の形態3の誘導加熱調理器では、第1経過設定時間T1と第2経過設定時間T2のどちらの設定時間も満たした場合に、焦げ付き検知が確定する構成としたが、このような構成に限定されるものではない。例えば、本発明においては、第2経過設定時間T2のみを満たした場合に焦げ付き検知を確定する構成としても、高温での持続時間が確約され、炒めもの調理で煮込み調理と誤検知した場合でも、十分火通りをよくし、調理完了前に加熱動作が停止するという不具合を防ぐことが可能である。
また、実施の形態3の誘導加熱調理器では、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してから第2計時部32の計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2に達するまでの間、制御部15により温調制御するよう構成したが、本発明はこのような構成に限るものではない。例えば、本発明においては、出力設定値の火力での加熱動作を継続する構成とすることも可能であるし、出力設定値を下げた火力での加熱動作を継続する構成としてもよい。
上記のように、本発明の誘導加熱調理器は、加熱出力を使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が必要と想定される場合に焦げ付き検知機能を動作させることができるとともに、不必要に焦げ付き検知機能が動作して、調理動作に悪影響を与える可能性がある場合には焦げ付き検知機能を禁止することができる構成である。このため、本発明によれば、加熱モードで行う通常の調理動作における悪影響を抑制しつつ、焦げ付きの程度が悪化するのを防止することができる、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することができる。
本発明の誘導加熱調理器は、使用者が選択した出力設定で加熱する動作モードにおいて、焦げ付きを検知して焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるとともに、炒めもの調理のような調理においては、焦げ付き検知が不必要に動作して加熱出力が抑制されるようなことがなく、継続して調理を行うことが出来るため、組み込み式、テーブルの上で使用する卓上型、又は置き台の上で使用する据え置き型等において、家庭用又は業務用として広範囲に適用できる。
1 トッププレート
2 調理容器
3 加熱コイル(インバータ)
4 赤外線センサ
8 インバータ回路(インバータ)
14 操作部
15 制御部
30 検知温度算出部
31 第1計時部
32 第2計時部
40 インバータ部
50 焦げ付き検知部
本発明は、誘導加熱調理器に関するものであり、特に、加熱調理時において鍋などの加熱容器の焦げ付きを検知する機能を備えた誘導加熱調理器に関するものである。
従来、この種の誘導加熱調理器は、加熱開始後沸騰検知動作を行い、沸騰を検知した時の温度及び入力電力、並びに沸騰に至るまでの温度の変化パターンにより調理容器(例えば、鍋)内部に存在する調理物の粘度、容量を測定して沸騰後の加熱に必要な電力を決定している。従来の誘導加熱調理器は、加熱されている調理容器においてだし汁がなくなり、調理容器の底面(鍋底)の温度が急上昇して所定値以上に上昇した場合、鍋底に調理物が焦げ付いたと判定する焦げ付き検知を行う煮込みモードを有する構成となっていた(例えば、特開平10−149875号公報(以下、特許文献1と略称)参照)。また、従来の誘導加熱調理器においては、加熱されている調理容器の検出温度が急激に上昇したとき、焦げ付き発生と判定する構成が提案されている(例えば、特開2007−115515号公報(以下、特許文献2と略称)参照)。
図9は従来の誘導加熱調理器のブロック図であり、図10は図9に示した従来の誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図9において、トッププレート101は当該誘導加熱調理器の上面に設けられた結晶化セラミック製の板であり、加熱コイル103はトッププレート101の下方に設けられている。調理容器としての鍋102を加熱するとき、鍋102は加熱コイル103に鍋底が対向するようにトッププレート101上に載置される。インバータ回路108aは、スイッチング素子及び共振コンデンサを含み、加熱コイル103とともにインバータを構成しており、加熱コイル103に高周波電流を供給する。制御部107はインバータ回路108aのスイッチング素子のオンオフ制御を行って、加熱出力を制御する。調理容器である鍋102の底面温度を検知するため、鍋102が載置されるトッププレート101の裏面には感熱素子であるサーミスタ104が接するように設けられており、トッププレート101の裏面温度が測定されている。サーミスタ104は、トッププレート101の裏面温度に対応した検知信号を制御部107に出力する。使用者が操作する操作部110には、出力設定部110a、加熱動作を開始するための加熱開始キー110b、動作モードを選択するための制御モード選択キー110cが設けられている。出力設定部110aには、加熱モードで動作中において押すごとに出力設定値を1段階減少させるダウンキー110aaと、押すごとに出力設定値を1段階増加するためのアップキー110abが設けられている。
次に、上記のように構成された従来の誘導加熱調理器の動作について、図10を参照して説明する。電源スイッチ106がオン状態となると(S301)、制御部107は待機モードとなる。制御部107は待機モードであるとき加熱動作を停止しており、操作部110の制御モード選択キー110cを操作することにより、加熱モード及び煮込みモードを含む複数の動作モードの中からひとつの動作モードを選択することが可能な状態となっている。待機モードにおいて動作モードが選択され(S302)、加熱開始キー110bが押されると(S303)、選択された動作モードで加熱動作が開始される。例えば、煮込みモードが選択されて加熱動作が開始されると(S304でYES)、制御部107は出力設定部110aにおいて出力設定値の変更を禁止し、特許文献1に記載されているように、沸騰検知動作を行った後、加熱出力を自動制御する。もし、サーミスタ104からの検知信号により鍋102の温度が異常に上昇したことを検知した場合には、焦げ付きを検知する焦げ付き検知機能が動作する(S306)。煮込みモードでない、例えば加熱モードが選択されて加熱動作が開始されると(S304でNO)、制御部107は焦げ付き検知機能の動作を禁止(S305)する。このとき、出力設定部110aにおける出力設定値の変更は可能となる。
特開平10−149875号公報
特開2007−115515号公報
しかしながら、前記のように構成された従来の誘導加熱調理器においては、焦げ付き検知機能が働く調理モードは煮込みモードに限定されており、また煮込みモードにおいては出力設定部110aでの出力設定値の変更が禁止されている。すなわち、使用者は、出力設定部110aにおいて出力設定値の変更を行うことができる加熱モードでは、焦げ付き検知機能を働かせることができなかった。したがって、使用者が、誘導加熱調理器において焦げ付き検知機能を働かせるためには、煮込みモードを選択しなければならなかった。煮込みモードであれば、煮込み中の調理容器の温度において焦げ付きがなければ、急激な温度上昇はなく、もし急激な温度上昇が発生したときは焦げ付きが発生した場合である。このため、煮込みモードであれば急激な温度上昇を検知して、焦げ付き検知を行うことが可能である。しかし、他の動作モード、例えば加熱モードにおいては加熱調理の種類により調理容器の温度がどのように変化するかが一定ではなく、例えば炒めもの調理のように急激に高温度となる場合もあるため、加熱出力を抑制することが必要と想定される焦げ付きの発生を正確に検知することは困難であった。
また、特許文献2に記載されているように、従来の誘導加熱調理器においては、調理容器の検出温度が急激に上昇したときを焦げ付きと判定する構成では、炒めもの調理をしている場合に調理鍋容器に焦げ付きが発生したと判定する可能性が高く、不要に加熱動作を停止して炒めもの調理が終了するまで必要な加熱出力で加熱動作を継続できないおそれがあり、使い勝手の良い誘導加熱調理器ではなかった。
本発明は、前記のように構成された従来の誘導加熱調理器における課題を解決するものであり、加熱出力を使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付きを検知すると加熱出力の抑制動作を行う焦げ付き検知機能が必要と想定される場合には焦げ付き検知機能を動作させることができるとともに、不必要に焦げ付き検知機能が動作して調理動作に悪影響を与える可能性がある場合には焦げ付き検知機能を禁止することができる誘導加熱調理器の提供を目的としている。すなわち、本発明は、加熱モードで行う通常の調理動作のひとつである炒めもの調理において焦げ付き検知機能が与える悪影響を抑制しつつ、加熱モードで行う他の通常の調理動作である煮込み調理において焦げ付きの程度が悪化するのを防止して、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
本発明の誘導加熱調理器は、前述の従来の誘導加熱調理器における課題を解決するものであり、調理容器を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ前記調理容器を加熱する加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ前記調理容器から放射され、前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報を出力する赤外線センサと、前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の異なる出力設定値の中から、1つの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部と、を具備し、
前記制御部は、前記赤外線検知情報を温度に変換する検知温度算出部と、前記インバータの加熱動作を開始してからの時間を計時する第1計時部とを備え、前記第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間以上である場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うように構成されている。
上記のように構成された本発明の誘導加熱調理器は、使用者が選択した加熱出力で加熱する加熱モードで調理しているときに、焦げ付いたことを検知し、焦げ付き状態がひどくならないようにするとともに、湯沸しや炒めものなどの比較的短時間で加熱動作が終了し、焦げつき検知機能を必要としないような調理をしている時には、焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が予め決められた期間禁止されるので、焦げつき検知機能が動作して不必要に加熱動作が停止したり加熱出力が低下したりすることを避けることができる。このように、本発明の誘導加熱調理器においては、使用者が、違和感なく調理を継続することが出来るとともに、使い勝手の向上が図られている。
以下に説明する本発明における課題を解決するための手段においては、後述する実施の形態における具体的な構成要素名、信号名などを括弧内に記載して関連を示しているが、本発明の構成を実施の形態に記載したものに限定することを示すものではない。
本発明に係る第1の態様の誘導加熱調理器は、
調理容器(2)を載置するトッププレート(1)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱コイル(3)を含むインバータ(3、8)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器の底面から放射されて前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報(A)を出力する赤外線センサ(4)と、
前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値(第2設定温度:Temp2)以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報(B)を出力する焦げ付き検知部(50)と、
複数の異なる出力設定値の中から、1つの出力設定値を選択するための出力設定部(14)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部(15)と、を具備し、
前記制御部は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記インバータの加熱動作を開始してからの調理時間(Tp)を計時する第1計時部(31)とを備え、
前記第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間(T1)以上である場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第1の態様の誘導加熱調理器は、加熱モードにおいて、煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるとともに、煮込み調理と比較して調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理においては焦げ付きを検知情報に基づく加熱出力抑制動作を禁止して短時間で不要に焦げ付き検知が働かないので、使い勝手を向上させることができる。
本発明に係る第2の態様の誘導加熱調理器は、
調理容器(2)を載置するトッププレート(1)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱コイル(3)を含むインバータ(3、8)と、
前記トッププレートの下に設けられ、前記調理容器の底面から放射されて前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記調理容器の温度を示す赤外線検出情報(A)を出力する赤外線センサ(4)と、
前記赤外線検出情報の示す温度が第2設定値(第2設定温度:Temp2)以上に増加したことを検知すると、前記調理容器に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き検知情報(B)を出力する焦げ付き検知部(50)と、
複数の異なる出力設定値の中から、1つの出力設定値を選択するための出力設定部(14)と、
前記加熱コイルに高周波電流を供給し、加熱出力が前記出力設定部により選択された出力設定値となるように前記インバータの加熱動作を制御すると共に、前記焦げ付き検知情報に基づき前記加熱出力を抑制するか又は前記インバータの加熱動作を停止して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う制御部(15)と、を具備し、
前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値に達してからの調理継続時間(Tq)を計時する第2計時部(32)とを備え、前記第2計時部で計時した計測調理継続時間が第2経過設定時間(T2)以上である場合に、前記焦げ付き検知情報(B)に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第2の態様の誘導加熱調理器は、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを軽減することができる。
本発明に係る第3の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第1の態様における前記焦げ付き検知部(50)が前記焦げ付き検知情報(B)を出力したとき、前記制御部(15)は、前記第1計時部(31)の計測調理時間(Tp)が第1経過設定時間(T1)以下の場合は、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値(第2設定温度:Temp2)と前記第2設定値以下である第3の設定値(第3設定温度:Temp3)との間の温度となるように、前記インバータの加熱動作を制御するよう構成されている。このように構成された第3の態様の誘導加熱調理器は、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理においては短時間で不要に焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が働いて加熱出力が大きく低下したり加熱動作が停止したりすることがなく、且つ、焦げつき始めている場合でも、焦げつきの進行を極力抑えることができる。
本発明に係る第4の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第1または第3の態様における前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記赤外線検出情報が示す温度が第2設定値(Temp2)に達してからの調理継続時間(Tq)を計時する第2計時部(32)とを備え、前記第1計時部の計測調理時間(Tp)が前記第1経過設定時間(T1)以上であり、且つ、前記第2計時部の計測調理継続時間(Tq)が前記第2経過設定時間(T2)以上の場合に、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第4の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるようにしつつ、調理容器底面を高温にする、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを更に軽減することができる。
本発明に係る第5の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第2の態様における前記焦げ付き検知部50が焦げ付き検知情報(B)を出力したとき、前記制御部(15)は、前記第2計時部(32)で計時した計測調理継続時間(Tq)が第2経過設定時間(T2)以下の場合は、前記赤外線検出情報(A)が示す温度が前記第2設定値と前記第2設定値以下である第3の設定値との間の温度となるように、前記インバータの加熱動作を継続するよう構成されている。このように構成された第5の態様の誘導加熱調理器は、焦げつき始めている場合でも、焦げつきの進行を極力抑えながら(緩和しながら)、調理容器底面を高温にする調理、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作が働いて加熱出力が大きく低下したり加熱動作が停止したりするリスクを軽減することができる。
本発明に係る第6の態様の誘導加熱調理器においては、前記の第5の態様における制御部(15)は、前記赤外線検出情報(A)を温度に変換する検知温度算出部(30)と、前記インバータの加熱動作を開始してからの調理時間(Tp)を計時する第1計時部(31)とを備え、前記第1計時部の計測調理時間(Tp)が前記第1経過設定時間(T1)以上であり、且つ、第2計時部の計測調理継続時間(Tq)が前記第2経過設定時間(T2)以上の場合に、前記焦げ付き検知部(50)が前記焦げ付き検知を確定するよう構成されている。このように構成された第6の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるようにしつつ、調理容器底面を高温にする、例えば炒めもの調理において短時間で不要に焦げ付き検知が働くリスクを更に軽減することができる。
本発明に係る第7の態様の誘導加熱調理器において、前記の第1または第2の態様における前記制御部(15)は、前記赤外線検出情報の示す温度に基づき煮込み調理を行っていると判別した場合にのみ、前記焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を行うよう構成されている。このように構成された第7の態様の誘導加熱調理器は、加熱モードにおいて、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)に対応して、焦げ付き検知機能を選択的に動作させることが可能である。これにより、煮込み調理の場合には焦げ付き検知情報に基づき焦げ付きを検知して加熱出力抑制動作を行い焦げ付きの状態が悪化しないようにすると共に、第1計時部で計時した計測調理時間が第1経過設定時間(T1)以上である場合でも、炒めもの調理を継続することができる。
本発明に係る第8の態様の誘導加熱調理器において、前記の第7の態様における前記制御部(15)は、前記第1計時部で計時した計測調理時間が初期経過設定時間となったときの前記赤外線検出情報の示す温度が前記第2設定値より低い第1設定値以下となる場合に、煮込み調理を行っていると判別するよう構成されている。このように構成された第7の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)を判別することができる。
本発明に係る第9の態様の誘導加熱調理器の誘導加熱調理器において、前記の第7の態様における前記制御部(15)は、加熱開始から前記赤外線検出情報の示す温度が前記第2設定値より低い第1設定値に達するまで前記第1計時部で計時した計測調理時間が初期経過設定時間以上である場合に、煮込み調理を行っていると判別するよう構成されている。このように構成された第9の態様の誘導加熱調理器は、水分の多い煮込み調理と大きな加熱出力で加熱し短時間で調理容器が高温になる調理(例えば、炒めもの調理)を判別することができる。
本発明の誘導加熱調理器においては、使用者が加熱出力を選択して、煮込みモードとは異なる、加熱調理を行う加熱モードを選択して煮込み調理を行った場合でも、焦げ付きを検知して自動的に加熱動作を停止する、若しくは加熱出力を弱めて焦げ付きの状態が悪化しないように動作するとともに、炒めもの調理等のように比較的加熱出力が大きく調理容器底面を高温にするような調理を行った場合には短時間で不必要に焦げ付き検知機能が動作しないように設定されており、使い勝手の向上が図られている。
本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図
実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている赤外線センサの概略構成を示す回路図
実施の形態1の誘導加熱調理器における赤外線センサの出力特性を示すグラフ
実施の形態1の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間との関係を示す図
実施の形態1の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値Wと経過時間との関係を示す図
本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値と経過時間との関係を示す図
本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図
実施の形態3の誘導加熱調理器の加熱開始後の赤外線センサの検知温度と経過時間、および出力電力値と経過時間との関係を示す図
従来の誘導加熱調理器の構成を示すブロック図
従来の誘導加熱調理器の動作を示すフローチャート
以下、本発明の誘導加熱調理器に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に記載した具体的な構成に限定されるものではなく、実施の形態において説明する技術的思想と同様の技術的思想及び当技術分野における技術常識に基づいて構成されるものを含む。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器は、当該誘導加熱調理器の上面に設けられたセラミック製のトッププレート1と、高周波磁界を発生させることによって、トッププレート1上の調理容器2を誘導加熱する加熱コイル3(外コイル3aおよび内コイル3b)とを備える。トッププレート1は、結晶化セラミックなどの赤外線を透過する電気絶縁物からなる。誘導加熱用のコイルである加熱コイル3は、トッププレート1の下方に設けられている。加熱コイル3は、同心円状に2分割されており、互いに電気的に接続された外コイル3aと内コイル3bで構成されている。外コイル3aの内側と内コイル3bの外側との間には、隙間が形成されている。トッププレート1上に載置された調理容器2は、加熱コイル3の高周波磁界により底面に発生した渦電流によって発熱する。
トッププレート1において、加熱コイル3より使用者側の領域には、加熱動作の開始/停止、および設定などの各種操作を使用者が実行するための操作部14が設けられている。また、操作部14と調理容器2が載置される領域との間には表示部(図示せず)が設けられている。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、調理容器温度検知器である赤外線センサ4が外コイル3aと内コイル3bとの間の隙間の下方に設けられている。なお、本発明の誘導加熱調理器において、赤外線センサの設置位置は、実施の形態1の構成に限定されるものではなく、調理容器2の底面温度検出が可能な位置であればよい。調理容器2の底面から放射された、調理容器2の底面温度に基づきその大きさが変わる赤外線は、トッププレート1を通り、外コイル3aと内コイル3bとの間の隙間を通って、赤外線センサ4に入射され受光される。また、加熱コイル3は外コイル3aと内コイル3bされたものに限定されるものではない。加熱コイル3が分割されていない場合、例えば、赤外線センサは加熱コイル3の巻線の内側、すなわち加熱コイル中心またはその近傍を通過する赤外線を検知するように設けることができる。赤外線センサ4は、受光した赤外線を検出し、検出した赤外線量に基づいた赤外線検出情報である赤外線検出信号Aを出力する。
加熱コイル3の下方には、商用電源6から供給される交流電圧を直流電圧に変換し高周波電源を構成する整流平滑部7と、整流平滑部7から直流電圧が供給されて高周波電流を生成し、生成した高周波電流を加熱コイル3に出力するインバータ回路8とが設けられる。また、商用電源6と整流平滑部7との間には、商用電源6から整流平滑部7に流れる入力電流を検出するための入力電流検出部9(カレントトランス)が設けられている。
整流平滑部7は、ブリッジダイオードで構成される全波整流器10と、全波整流器10の出力端子間に接続された、チョークコイル16及び平滑コンデンサ17で構成されるローパスフィルタと、を有する。インバータ回路8は、スイッチング素子11(実施の形態1においては半導体スイッチング素子としてIGBTを用いるがこれに限定されるものではない)と、スイッチング素子11と逆並列に接続されたダイオード12と、加熱コイル3に並列に接続された共振コンデンサ13と、を有する。インバータ回路8のスイッチング素子11がオン/オフ動作を行うことによって、高周波電流が発生する。インバータ回路8と加熱コイル3は、高周波インバータ(以下、単にインバータとも言う)を構成する。なお、実施の形態1ではインバータを1つのスイッチング素子で構成した1石式としているがこれに限定されない。例えば、インバータを、ハーフブリッジ式のように2つのスイッチング素子で構成した2石式としてもよいし、フルブリッジ式のように4つのスイッチング素子で構成した4石式としてもよい。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、さらに、インバータ回路8のスイッチング素子11のオン/オフ動作を制御することによって、インバータ回路8から加熱コイル3に供給される高周波電流の状態を制御する制御部15を有する。制御部15は、操作部14からの動作モード設定信号、加熱条件設定信号、並びに赤外線センサ4が検出した赤外線検出信号Aなどに基づいて加熱コイル3の高周波電流の状態を制御し、調理容器2に対する加熱電力の大きさの制御、及び加熱動作の開始及び停止の制御を行っている。
制御部15は、操作部14から送信される動作モード設定信号、加熱条件設定信号及び赤外線センサ4からの赤外線検出信号Aなどに基づいて、スイッチング素子11のオン/オフ動作を制御するインバータ制御部40と、赤外線センサ4の赤外線検出信号A(電圧信号)を温度に換算して検知温度信号を出力する検知温度算出部30と、加熱開始からの調理時間を計時する第1計時部31と、を備えている。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器には、焦げ付き検知部50が設けられている。焦げ付き検知部50は、制御部15の第1計時部31で計時した計測調理時間信号と検知温度算出部30で形成した検知温度信号が入力され、これらの計測調理時間信号と検知温度信号から調理物が、焦げ付いた状態にあることを検知すると共に、使用者が誤って調理中に放置して鍋などに焦げ付くことを防止する必要性のある調理である煮込み調理か、または使用者が調理物の近くにいて鍋などを高温にして行う調理であり、焦げ付いたことを検知して加熱出力を低減したり加熱動作を停止したりする必要性の低い調理(例えば、炒めものなどの調理)か、を判別する。もし、焦げ付き検知部50が、調理容器2の底部が予め決められた温度(第2設定値Temp2)以上の高温となり焦げ付いていることを検知すると、焦げ付き検知部50は焦げ付き検知信号Bを制御部15のインバータ制御部40に出力する。
前述のように、操作部14はトッププレート1の手前側(使用者側)の領域に設けられており、動作モードおよび動作状態などを表示する表示部は、トッププレート1における操作部14と載置された調理容器2との間の領域に設けられている。操作部14は、複数の静電容量式のスイッチ14a〜14cを含んで構成されている。スイッチ14a〜14cは、ひとつの加熱コイル3の調理に関する指示を入力するための一組のスイッチであって、加熱コイル3の数が複数ある場合は、各加熱コイル3に対応して複数組みのスイッチが設けられている。なお、本発明における操作部14のスイッチは、静電容量式に限定されるものではなく、タクトスイッチのような押しボタン式など、各種の切替手段を用いることが可能である。
各スイッチ14a〜14cには、それぞれ特定の機能が割り当てられている。例えば、切/入スイッチ14aは、調理(加熱動作)の開始及び終了を制御する機能が割り当てられている。操作部14には、出力設定部14b、動作モードを選択するための動作モード選択キー(メニューキー)14cが設けられている。出力設定部14bには、出力設定値を1段階減少させるためのダウンキー14b2と1段階増加するためのアップキー14b1が設けられている。これらの出力設定部14bのキー操作を行うことにより複数の出力設定値(例えば、設定1=100W、設定2=300W、設定3=700W、設定4=1000W、設定5=2000W、設定6=3000Wの6段階)の中からひとつの出力設定値を選択して設定することができる。
制御部15のインバータ制御部40は、操作部14のスイッチ14a〜14cが押圧(接触)されたことを検知すると、押圧されたスイッチに基づいて、インバータ回路8を駆動制御して、加熱コイル3に供給する高周波電流の状態を制御する。
先ず始めに電源スイッチ(図示せず)がオフ状態からオン状態となると、制御部15の動作モードは、加熱が停止した状態である待機モードとなる。待機モードでは、加熱動作時の動作を制御するための動作モードが選択できる。待機モードにおいて動作モード選択キー14cを操作することにより、複数の動作モード(加熱モード、煮込みモード、など)の中からひとつの動作モードを選択できる。
待機モードにおいて、加熱モードが選択されて、切/入スイッチ14aが押圧されると(操作されると)加熱動作が開始され、制御部15は出力設定値を自動的に「設定4=1000W」として加熱モードに移行する。ここで、加熱モードとは、インバータ回路8の加熱出力が、出力設定部14bにより使用者が選択した出力設定値となるように加熱する動作モードである。制御部15が加熱モードで動作するときは、出力設定部14bを操作することにより、出力設定値を所望の設定(設定1から設定6)に変更することができる。出力設定部14bにおいて出力設定値が変更されると、出力設定部14bは制御部15に出力設定値が変更されたことを示す出力設定信号を出力する。制御部15は、インバータ回路8の入力電流を、入力電流検出部9の出力信号をモニタして、インバータ回路8からの加熱出力(赤外線検出信号A)が出力設定値となるようにスイッチング素子11を駆動制御する。このように、スイッチング素子11を駆動制御することにより、出力設定値に対応した高周波電流が加熱コイル3に供給される。
図2は実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている調理容器温度検知器である赤外線センサの概略構成を示す回路図である。図2に示すように、赤外線センサ4は、フォトダイオード21と、オペアンプ22と、2つの抵抗23,24とを有して構成されている。抵抗23,24の一端はフォトダイオード21のカソードに接続されている。抵抗23の他端はオペアンプ22の出力端子に接続されており、抵抗24の他端はオペアンプ22の反転出力端子(−)に接続されている。フォトダイオード21は、調理容器2からトッププレート1を透過するおよそ3ミクロン以下の波長の赤外線が照射されると電流が流れ、入射する赤外線のエネルギー量が多くなればなるほど、流れる電流の大きさ及び増加率が大きくなるInGaAs等で形成された受光素子である。フォトダイオード21により発生した電流は、オペアンプ22によって増幅され、調理容器2の温度を示す赤外線検出信号A(電圧値V0に相当)として、制御部15に出力される。実施の形態1の誘導加熱調理器に用いられている赤外線センサ4は、調理容器2から放射される赤外線を受光する構成であるため、トッププレート1を介して温度を検出するサーミスタと比較して、調理容器2の底面温度の変化に対する優れた熱応答性を有しており、精度の高い調理容器2の底面温度の制御が可能となる。
図3は赤外線センサ4の出力特性を示すグラフである。図3において、横軸は鍋などの調理容器2の底面温度(鍋底温度)であり、縦軸は赤外線センサ4が出力する赤外線検出信号Aの電圧値(V0)を示す。トッププレート1を透過するおよそ3ミクロン以下の波長の赤外線を、赤外線センサ4のフォトダイオード21が入射すると、フォトダイオード21には電流が流れる。例えば、調理容器2の底面温度について、120℃以上200℃未満を低温域、200℃以上250℃未満を中温域、250℃以上330℃未満を高温域と定義すると、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が低温域から高温域に移行するにつれ、すなわち入射する赤外線のエネルギー量(検出値)が多くなればなるほど、抵抗23と抵抗24で決定される増幅率を、低温域→中温域→高温域のように温度領域が高温となるほど小さくなるように切り替えている。
実施の形態1の誘導加熱調理器において、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が約120以上200℃未満のときに赤外線検出信号ALを出力し、底面温度が約200℃以上250℃未満のときに赤外線検出信号AMを出力し、底面温度が約250℃以上330℃未満のときに赤外線検出信号AHを出力するようにその増幅率が切り替えられる。また、赤外線センサ4は、調理容器2の底面温度が約120℃未満のときには赤外線検出信号Aを出力しないよう構成されている。この場合の「赤外線検出信号Aを出力しない」とは、赤外線センサ4が赤外線検出信号Aを全く出力しない状態を含むとともに、僅かの赤外線検出信号Aしか出力しないような赤外線検出信号Aを実質的に出力しない状態を含む。すなわち、「赤外線検出信号Aを出力しない」とは、制御部15が赤外線検出信号Aの大きさの変化に基づいて調理容器2の底面の温度変化を実質的に読み取れない程の微弱な信号を出力することを含む。図3のグラフに示すように、赤外線検出信号Aの出力値は、調理容器2の温度が約120℃以上になると、べき乗関数(V=aTb:Vは出力電圧、Tは鍋温度、a及びbは正の実数、bは例えば5〜10)的に増加する。
なお、赤外線センサ4における温度センサとしては、フォトダイオードに限定するものではなく、例えばサーモパイルなどの温度センサを含む。
次に、実施の形態1の誘導加熱調理器における焦げ付き検知部50の構成とその焦げ付き検知動作について、図4および図5を用いて説明する。図4は煮込み調理と、短時間で高温に達する調理(例えば、炒めもの調理)のいずれであるかを判定する方法を説明するために検知温度算出部30の検知温度Tnを例示的に示した図である。図4においては、加熱開始後の赤外線センサ4の検知温度Tnと経過時間との関係の一例を示している。図5の(a)は加熱開始後の赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフであり、図5の(b)は出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである。
以下、説明を簡単にするため、出力設定は、「設定4=1000W」で変更されないものとし、実際の出力電力値[W]も1000Wであるものとする。制御部15は、赤外線センサ4が出力し調理容器2の温度を示す赤外線検出情報である赤外線検出信号A、すなわち赤外線センサ4の出力電圧[V0]を入力して、その出力電圧[V0]の大きさを測定し、その測定結果を検知温度算出部30で換算して赤外線検出情報が示す温度を焦げ付き検知部50に送出する。なお、焦げ付き検知部50に対しては、制御部15を介在することなく赤外線センサ4からの赤外線検出信号Aを、直接、入力してもよい。この場合には、焦げ付き検知部50は、第1出力電圧値V1およびこの第1出力電圧値V1より大きい値の第2出力電圧値V2(V2>V1)を予め記憶する温度記憶部を備えている(図示せず)。
図4において、摂氏温度で表記されている検知温度Tnの値は、赤外線センサ4が出力する赤外線検出情報が検知温度算出部30によって温度換算された値であり、赤外線検出情報の示す温度である。例えば、調理容器2の検知温度Tnが「Temp1(第1設定温度)」[℃]とは、赤外線センサ4から第1出力電圧値V1が出力されるとき赤外線検出情報が示す温度(例えば、約130℃)を表示している。
同様に、調理容器2の検知温度Tnが「Temp2(第2設定温度)」[℃]とは、赤外線センサ4から第2出力電圧値V2が出力されるとき赤外線検出情報が示す温度(例えば、約240℃)を表示している。以降、赤外線センサ4からの出力電圧は温度換算し、赤外線センサ4の検知温度Tnとして摂氏温度で記す。
図4において、設定4(1000W)で加熱されている調理容器2の底面温度が上昇すると、赤外線センサ4で検知している温度も上昇し始める。そして、先ず、制御部15は、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpが、あらかじめ設定されている初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnにより、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別する。煮込み調理であれば、例えば炒めもの調理と比較して水分が多く、通常、調理容器2の中の調理物の温度は100℃前後で推移して、水分が蒸発してなくなり調理物が焦げ始めると調理容器2の温度も上昇をし始める。一方、炒めもの調理の場合には、一般的に加熱を継続すると、温度は上昇し続ける場合が多い。この違いから水分の多い調理物と水分の少ない調理物との判別を行うものである。制御部15は、計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1[℃]よりも高ければ、炒めもの調理のような水分量の少ない、煮込み調理以外の調理と判別する。一方、このときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1[℃]以下であれば煮込み調理と判別する。なお、上記のように、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpが、あらかじめ設定されている所定時間、例えば、初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnの高、低により、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別することに代えて、検知温度Tnが所定温度に達するまでの計測調理時間Tpの長、短により焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か、焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)か、判別してもよい。例えば、第1設定温度Temp1[℃]に達するまでの計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0以上の場合は煮込み調理と判別し、初期経過設定時間T0に満たない場合は焦げ付き検知機能を必要としない煮込み調理以外の調理と判別しても良い。
次に、図5に示すように、加熱開始からの計測調理時間Tpが初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnが第1設定温度Temp1以下で煮込み調理と判定された後において、加熱を継続していくと調理物の水分が減少していく。最終的には調理物の水分がなくなり、焦げ付きが始まる。焦げ付きの進行に伴い、検知温度Tnが上昇を始めるため、検知温度Tnが第2設定温度Temp2[℃]に到達すると、焦げ付き検知部50にて、焦げ付きが発生したと判定し、焦げ付き検知信号Bを出力する。
煮込み調理であれば、この時点で制御部15にてインバータ回路8を駆動制御し、加熱コイル3から調理容器2への加熱動作を停止することが望ましい。しかし、炒めもの調理では焦げ付き検知部50が焦げ付きと判定してしまうと、焦げ付きの悪化を防止するため調理途中で加熱を止めたり加熱出力を低減させたりしてしまうことになってしまう。
そこで、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、たとえ焦げ付き検知部50から焦げ付き検知信号Bが出力されても、炒めもの調理である可能性がゼロではない。このため、図5の(b)に示すように、制御部15は、焦げ付き検知部50から焦げ付き検知信号Bが出力されても、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していないときは、炒めもの調理であると判別して加熱動作を引き続き継続する。そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達した後において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2以上である場合には、制御部15は焦げ付き検知を確定し、制御部15は、インバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を停止するか、または加熱出力を抑制して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う。なお、「焦げ付き検知を確定する」とは、焦げ付き検知情報に基づく加熱出力抑制動作を実行することを意味する(以下同じ)。誘導加熱調理器に表示部や報知部が設けられていれば、焦げ付き発生を確定したとき、加熱動作の停止を表示し報知して使用者に知らせるよう構成とすることも可能である。
実施の形態1の誘導加熱調理器において、第1経過設定時間T1まで加熱動作を継続させる、すなわち、第1経過設定時間T1までは実質的に炒めものと判別するのは、一般的に煮込み調理が長時間に及ぶことが多く、その他の調理(例えば炒めもの調理)では、煮込み調理と比較して短時間で終わることが多いため、加熱動作を継続することにより、炒めもの調理などで誤って煮込み調理と判別されないようにして、調理完了前に加熱動作を停止する可能性を減らすことができるためである。
前述の点から分かるように、第1経過設定時間T1は、長くすればするほど、煮込み調理以外の調理での調理完了前の加熱動作の停止を防ぐことができるが、あまりに長い時間に設定すると、実際に煮込み調理で焦げ付いている場合には焦げ付きが進行してしまうという問題ある。このため、煮込み調理以外の調理において、一般的に調理完了すると推定される時間よりも長い時間であり、且つ、出来る限り短い時間に設定することが望ましい。
以上のことから、実施の形態1の誘導加熱調理器によれば、制御部15の焦げ付き検知部50において、煮込み調理にて検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。また、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していない場合には、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)は加熱出力に作用を及ぼさず、焦げ付き検知情報が出力されかつ、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になった場合には、加熱コイル3による調理容器2への加熱を停止する。これにより、第1経過設定時間T1経過するまでは、炒めもの調理をしていて煮込み調理と誤って判別しないようにして、調理完了まで加熱を継続することが可能となる。
また、制御部15が、前述したように(図4参照)、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、鍋などに焦げ付くことを検知して焦げ付きの状態が悪化しないようにする加熱出力抑制動作を行う必要性のある煮込み調理か、若しくは焦げ付くことを検知して加熱出力抑制動作を行う必用性の低いその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別しておき、煮込み調理と判別した場合にのみ焦げ付き検知を確定することにより、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になった場合でも、炒めもの調理をより精度良く継続することができる。このような効果を期待しない場合には、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能は省略してもよい。なお、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能を有する場合、調理物の種類や量によっては、調理中に調理物から水分が出て、加熱を続けても温度が上昇しにくく、煮込み調理か炒めもの調理かの判別が困難な場合があるが、この場合でも第1経過設定時間T1だけは少なくとも炒めもの調理を行うことができる。
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、第1計時部31で計時している加熱開始からの計測調理時間Tpがあらかじめ設定されている初期経過設定時間T0に到達したときの検知温度Tnに基づいて、焦げ付き検知機能を必要とする煮込み調理か、焦げ付き検知機能を必要としない調理(例えば、炒めもの調理)かを判別する構成について説明した。しかし、本発明はこのような判別方法に限定されるものではなく、例えば加熱開始からの検知温度Tnの推移状態などに基づいて判別するなどの方法が可能である。要するに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2[℃]に到達する前に測定した検知温度Tnの上昇温度が、所定値未満の場合には煮込み調理と判別し、所定値以上の場合には炒めもの調理と判別することができる。
実施の形態1の誘導加熱調理器では、検知温度算出部30にて赤外線センサ4の出力電圧を温度換算する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、赤外線センサ4の出力電圧に基づいて直接制御する構成としても同様の効果が得られる。
実施の形態1の誘導加熱調理器においては、出力設定値を設定4(1000W)の場合について説明したが、他の設定値でも同様の制御が行われる。さらに、出力設定値毎に、初期経過設定時間T0、第1経過設定時間T1、赤外線センサ4の検知温度Tnの閾値である第1設定温度Temp1および第2設定温度Temp2の、それぞれが最適な値に設定されることにより、更に精度の高い制御を行うことができる。
また、インバータ回路8からの情報(例えば、スイッチング素子11のオン時間、加熱コイル3に流れる電流、スイッチング素子11を制御する周波数、インバータ回路8に供給される電流などの情報)から判別することができる調理容器2の金属材料の種類に応じて、初期経過設定時間T0、第1経過設定時間T1、赤外線センサの検知温度Tnの閾値である第1設定温度Temp1および第2設定温度Temp2をそれぞれ最適な値に設定することにより、更に精度の高い判別が可能となる。これは、調理容器2の大きさだけでなく、金属材料の種類によって熱伝導率などの諸特性が異なり、その熱伝導率などの違いにより焦げ付きの進行度合いが異なるためである。
更に、実施の形態1の誘導加熱調理器では、出力設定値の制限を設けていないが、本来、高火力になればなるほど、煮込み調理と煮込み以外の他の調理(例えば、炒めもの調理)との判別が赤外線センサ4の検知温度だけでは判定が困難になる。このため、出力設定値が所定以下のときのみ、煮込み調理の焦げ付き検知機能が働く構成とすることが望ましい。その方法は、操作部14の出力設定部14bで設定した値が所定値より高い場合には焦げ付き検知機能が働かないように制御部15にて制御することにより実現可能である。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器では、焦げ付き検知が確定した場合に加熱動作を停止する構成について説明したが、このような構成に限るものではない。焦げ付き検知が確定した場合は、焦げ付きの進行が抑えられる構成であればよく、例えば、焦げ付き検知が確定した場合には、加熱の出力が100Wから200W程度のいわゆる保温する際の火力に相当するような出力で加熱動作を継続する構成としてもよい。
また、実施の形態1の誘導加熱調理器によれば、調理容器2の底面温度を赤外線センサ4で検知しているため、サーミスタなどの感温素子を使用する場合に比べて底面温度を応答性よく検出できる。この結果、実施の形態1の誘導加熱調理器は、焦げ付きを精度高く検出することができる構成を有する。
(実施の形態2)
次に、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器について、前述の図1〜4、および図6を参照しながら説明する。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器において説明したものと同じ、機能、構成を有するものには同一符号を用いて、その説明を省略する。
図6は、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器において、加熱開始後における赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフ(図6の(a))、並びに出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである(図6の(b))。
図6において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知部50にて焦げ付き検知信号Bを出力する。しかし、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達していないため、制御部15によるインバータ回路8への制御動作は停止しない。しかし、そのままの出力電力値(実施の形態2においては1000W)で加熱を継続すると、調理容器2の温度が上昇し続け、煮込み調理で焦げ付いている場合には、その焦げ付き度合いが進行し悪化し続けることになる。
そのような状況を避けるため、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると調理容器2への加熱動作を一時オフ状態とする。その結果、検知温度Tnが低下して第2設定温度Temp2の温度以下である第3設定温度Temp3(実施の形態2では、第3設定温度Temp3は第2設定温度Temp2より5℃低い値とする)に達すると再び加熱動作をオン状態とする。すなわち、検知温度Tnが第2設定温度Temp2を超えないように断続的にオンオフを繰り返し温調制御が行われる。そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達して、且つ検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、煮込み調理にて焦げ付いたことを確定させて、制御部15によるインバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を継続的に停止する。なお、第2設定温度Temp2の温度と第3設定温度Temp3の温度は同一でも良い。
以上のように、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、制御部15の焦げ付き検知部50にて、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1未満である場合には、この第2設定温度Temp2を超えないように温調制御し、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。そして、実施の形態2の誘導加熱調理器は、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上になったとき、加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行う(例えば、加熱動作を停止する)よう構成されている。また、実施の形態2の誘導加熱調理器は、上記のように構成されているため、炒めもの調理をしている場合に、焦げ付き検知情報が出力された場合でも、調理完了まで加熱を継続することができるとともに、煮込み調理時の焦げ付きの進行を抑えることができる。
なお、制御部15は、煮込み調理か、若しくはその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別するとともに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達しており、かつ第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上である場合であっても、煮込み調理である場合にのみ加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行うようにしても良い。これにより炒めもの調理の場合に加熱時間をさらに長くすることができる。このような効果を期待しない場合には、調理容器2の温度が焦げ付きの発生する温度に達していない段階で、煮込み調理か炒めもの調理かを判別しておく機能は省略してもよい。
なお、実施の形態2の誘導加熱調理器では、計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達する前に、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知情報を出力し、温調制御を行う動作としたが、すでに検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達した後では温調制御を行っているので、例えば、計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達した時点で焦げ付き検知を確定する動作(例えば、焦げ付きを表示する動作)を行ってもよい。
また、実施の形態2の誘導加熱調理器では、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達後、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達するまで、第2設定温度Temp2を超えないように温調制御するよう構成したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、焦げ付きの状態が進行する程度を緩和できるように構成されていればよい。例えば、検知温度Tnの温度変化の傾きや絶対値に応じて加熱動作の出力を可変して温度が略一定となるように制御(例えば、ファジイ制御)する構成としても同様の効果が得られる。さらに、温調制御を加熱動作のオンオフ制御に行う構成で説明したが、例えば、加熱動作をオフ状態とせず、加熱出力を可変することによる温調制御を行ってもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器について、前述の図1〜4、および図7と図8を参照しながら説明する。なお、実施の形態1および実施の形態2の誘導加熱調理器において説明したものと同じ、機能、構成を有するものには同一符号を用いて、その説明を省略する。
図7は、本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。図7に示すように、実施の形態3の誘導加熱調理器においては、制御部15には第2計時部32が設けられており、この第2計時部32は検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してからの経過時間を計時するものである。
図8は、実施の形態3の誘導加熱調理器において、加熱開始後における赤外線センサ4の検知温度Tn[℃]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフ(図8の(a))、並びに出力電力値[W]と経過時間[秒]との関係の一例を示すグラフである(図8の(b))。
図8の(a)に示すグラフにおいては、赤外線センサ4の検知温度Tnが、加熱開始から初期経過設定時間T0を経過しても、第1設定温度Temp1以下であるため、焦げ付き検知部50ではこの時点で煮込み調理であると判定する。その後、加熱動作を継続して調理容器2内の調理物の水分が蒸発した後においては、調理物が除々に焦げ付き始める。そして、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知部50にて焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力するとともに、制御部15の第2計時部32が経過時間の計時を開始する。このとき計時された経過時間を計測調理継続時間Tqとする。また、制御部15は、赤外線検出情報が示す温度が第2設定値Temp2と第2設定値Temp2以下である第3の設定値Temp3との間の温度となるように、すなわち検知温度Tnが第2設定温度Temp2を超えないように温調制御を行う。なお、第2設定温度Temp2の温度と第3設定温度Temp3の温度は同一でも良い。
そして、加熱開始からの計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1に達しても、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過設定時間T2に達していない間は、制御部15による温調制御を継続する。その後、計測調理継続時間Tqが第2経過設定時間T2に達した後、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達すると、焦げ付き検知を確定させて、制御部15によるインバータ回路8への制御動作を止めて、調理容器2への加熱動作を継続的に停止する。
なお、第2経過設定時間T2は、予め設定された時間であり、当然ながら、加熱開始からの経過時間である第1経過設定時間T1より短く設定するべきである。
以上のように構成された実施の形態3の誘導加熱調理器は、焦げ付き検知部50において、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達すると、焦げ付き検知情報(焦げ付き検知信号B)を出力する。そして、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1未満である場合、または、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2未満である場合には、第2設定温度Temp2を超えないように温調制御を行う。第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上であり、且つ、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2以上になった場合には、加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行う(例えば、加熱動作を停止する)ことにより、煮込み調理時の焦げ付きの進行を抑えることができる。また、実施の形態3の誘導加熱調理器は、上記のように構成されているため、炒めもの調理をしている場合に、焦げ付き検知情報が出力された場合でも、第2設定温度Temp2での高温調理の時間が確保されており、調理完了前に焦げ付き検知を確定して、加熱動作が停止されるという、不具合を防止することができる。
なお、制御部15は、煮込み調理か、若しくはその他の調理(例えば、炒めもの調理)かを判別するとともに、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達しており、第1計時部31にて計時した計測調理時間Tpが第1経過設定時間T1以上であり、且つ、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に達してからの計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2以上ある場合であっても、煮込み調理である場合にのみ加熱コイル3による調理容器2への加熱出力抑制動作を行うようにしても良い。これにより炒めもの調理の場合に加熱時間をさらに長くすることができる。
なお、実施の形態3の誘導加熱調理器では、第1経過設定時間T1と第2経過設定時間T2のどちらの設定時間も満たした場合に、焦げ付き検知が確定する構成としたが、このような構成に限定されるものではない。例えば、本発明においては、第2経過設定時間T2のみを満たした場合に焦げ付き検知を確定する構成としても、高温での持続時間が確約され、炒めもの調理で煮込み調理と誤検知した場合でも、十分火通りをよくし、調理完了前に加熱動作が停止するという不具合を防ぐことが可能である。
また、実施の形態3の誘導加熱調理器では、検知温度Tnが第2設定温度Temp2に到達してから第2計時部32の計測調理継続時間Tqが第2経過時間T2に達するまでの間、制御部15により温調制御するよう構成したが、本発明はこのような構成に限るものではない。例えば、本発明においては、出力設定値の火力での加熱動作を継続する構成とすることも可能であるし、出力設定値を下げた火力での加熱動作を継続する構成としてもよい。
上記のように、本発明の誘導加熱調理器は、加熱出力を使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が必要と想定される場合に焦げ付き検知機能を動作させることができるとともに、不必要に焦げ付き検知機能が動作して、調理動作に悪影響を与える可能性がある場合には焦げ付き検知機能を禁止することができる構成である。このため、本発明によれば、加熱モードで行う通常の調理動作における悪影響を抑制しつつ、焦げ付きの程度が悪化するのを防止することができる、使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することができる。
本発明の誘導加熱調理器は、使用者が選択した出力設定で加熱する動作モードにおいて、焦げ付きを検知して焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができるとともに、炒めもの調理のような調理においては、焦げ付き検知が不必要に動作して加熱出力が抑制されるようなことがなく、継続して調理を行うことが出来るため、組み込み式、テーブルの上で使用する卓上型、又は置き台の上で使用する据え置き型等において、家庭用又は業務用として広範囲に適用できる。
1 トッププレート
2 調理容器
3 加熱コイル(インバータ)
4 赤外線センサ
8 インバータ回路(インバータ)
14 操作部
15 制御部
30 検知温度算出部
31 第1計時部
32 第2計時部
40 インバータ部
50 焦げ付き検知部