本発明は、焦げ付き検知機能を備えた誘導加熱調理器に関する。
特許文献1記載の誘導加熱調理器は、煮込み調理中に鍋底の温度が予め定めた所定値以上に上昇した場合に煮込み加熱を停止する焦げ付き検知部を備えている。従って、煮込み調理中に液体がなくなって調理物が鍋に焦げ付くことを防止できる。
特開平10−149875号公報。
特開2001−357968号公報。
しかしながら、特許文献1記載の誘導加熱調理器によれば、鍋底の温度が予め定めた所定値以上に上昇した場合に煮込み加熱を停止するので、例えば、使用者が調理物に焦げ目を付けたい場合には、使用者の意図に反して加熱が停止されてしまうという課題があった。
本発明の目的は以上の問題を解決し、必要以上に早く加熱出力が抑制されることを防止しかつ焦げ付きの程度がひどくならないようにできる従来技術に比較して使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することにある。
本発明に係る誘導加熱調理器は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられかつ前記鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記鍋の底から放射され前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値を選択する出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された加熱出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータ回路の動作を制御する制御部と、前記赤外線センサの出力電圧が所定の第1出力電圧以上であるとき、前記鍋の底に調理物が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号を発生して前記制御部に出力する焦げ付き検知部と、前記焦げ付き情報信号に応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号を前記制御部に出力する計時部とを備え、前記制御部は、前記計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、前記焦げ付き情報信号に応答して前記インバータ回路を制御することを禁止する一方、前記計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるように前記インバータ回路を制御することを特徴とする。
これによって、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能(焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御する機能である。)が利用可能である。また、焦げ目をつけたい煮物調理、あるいは鍋底の温度が所定の温度まで上昇してから所定の時間だけ煮込みを行うような調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがない。
本発明の誘導加熱調理器は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止するので、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理中に使用者の意図に反して必要以上に早いタイミングで加熱を停止しない。さらに、煮込み調理中がされる場合には焦げ付きを検知して自動的に加熱を停止し又は加熱出力を低下させて焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができ、従来技術に比較して使い勝手を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の斜視図である。
図1の誘導加熱部3の構成を示すブロック図である。
図2の整流平滑回路93及びインバータ回路8の構成を示す回路図である。
図2の制御部9によって実行される加熱処理を示すフローチャートである。
図2の焦げ付き検知部13によって実行される焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
加熱開始から加熱停止又は加熱出力の低下までの経過時間と赤外線センサ11からの出力電圧VTとの関係を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態に係る加熱処理の第1の部分を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態に係る加熱処理の第2の部分を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係る焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
本発明の第4の実施形態に係る誘導加熱部3Aの構成を示すブロック図である。
第1の発明は、鍋を載置するトッププレートと、トッププレートの下に設けられかつ鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、鍋の底から放射されトッププレートを透過する赤外線を検知して鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値を選択する出力設定部と、誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された加熱出力設定値に対応する加熱出力となるようにインバータ回路の動作を制御する制御部と、赤外線センサの出力電圧が所定の第1出力電圧以上であるとき、鍋の底に調理物が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号を発生して制御部に出力する焦げ付き検知部と、焦げ付き情報信号に応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号を制御部に出力する計時部とを備え、制御部は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止する一方、計時部により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路を制御することを特徴とする。
これによって、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値に基づいて焦げ付き待機時間を設定することを特徴とする。また、第3の発明は、特に、第2の発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値が小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように、焦げ付き待機時間を設定することを特徴とする。
従って、調理中に加熱出力設定値を変更した場合にも、例えば、焦げ目をつけたい煮物調理において適切な焦げ目をつけることが可能であり、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働き調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第4の発明は、特に、第1から第3のうちのいずれか1つの発明において、焦げ付き検知部は、選択された加熱出力設定値が大きいほど第1出力電圧が大きくなるように、第1出力電圧を設定することを特徴とする。
従って、調理中に加熱出力設定値が変更された場合にも、例えば、焦げ目をつけたい煮物調理において適切な焦げ目をつけることが可能であり、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働き調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。さらに、低火力調理等において調理物が焦げ付いても鍋底温度があまり上昇しない場合でも、焦げ付きがひどくなる前に焦げ付き検知により加熱を停止できる。
第5の発明は、特に、第1から第4のうちのいずれか1つの発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値が所定の加熱出力設定値以上であるとき、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間以上であるときに加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路を制御することを禁止することを特徴とする。
従って、特に、例えば炒め物調理時によく用いられる高い加熱出力設定値においては焦げ付き検知を行わず、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第6の発明は、特に、第1から第5のうちのいずれか1つの発明において、制御部は、焦げ付き情報信号が発生された後に、出力電圧が第1出力電圧未満である状態が所定の時間以上継続したとき、焦げ付き時間を初期化するように計時部を制御することを特徴とする。
従って、特に、始めに調理物を炒めた後又は焦げ目をつけた後に鍋12に液体物等を加えて煮込む調理の場合に、煮込み調理の前に焦げ付きを検知しないので、使用者の意図に反して調理途中に焦げ付きを検知して加熱を停止することなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第7の発明は、特に、第1から第6のうちのいずれか1つの発明において、インバータ回路に入力される入力電流及びインバータ回路の共振電圧を測定する計測部と、測定された入力電流及び共振電圧に基づいて、トッププレート上に鍋があるか否かを判別する鍋無し検知部とをさらに備え、制御部は、鍋無し検知部により、トッププレート上に鍋が無いと判別された場合、焦げ付き時間を初期化するように計時部を制御することを特徴とする。また、第8の発明は、特に、第7の発明において、鍋無し検知部は、測定された入力電流とあらかじめ設定された電流値との差、及び測定された共振電圧とあらかじめ設定された電圧値との差に基づいて、トッププレート上に鍋があるか否かを判別することを特徴とする。
従って、特に、調理を終了した後に、誘導加熱調理器の電源の入り切り動作を行わずに鍋を取り替えて次の調理を行う場合にも、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第9の発明は、特に、第1から第8のうちのいずれか1つの発明において、第1出力電圧は、鍋の底に調理物が焦げ付き始める温度に対応する出力電圧に設定されたことを特徴とする。
従って、調理物に適度な焦げ目を付けることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の構成を示す斜視図である。図1において、外郭ケース1の上部にガラスなどの電気絶縁物からなり赤外線を透過するトッププレート2が設けられている。トッププレート2には、誘導加熱により調理容器である鍋12を誘導加熱する誘導加熱部3と、輻射熱により非金属性の鍋などを加熱するラジェントヒータ部4とが設けられる。また、外郭ケース1の側面に、魚等を焼くグリル5、及び各熱源の操作及び各熱源の状態の表示のための操作表示部6が設けられている。
詳細後述するように、本実施形態に係る誘導加熱調理器は、
(a)鍋12を載置するトッププレート2と、
(b)トッププレート2の下に設けられかつ鍋12を誘導加熱する誘導加熱コイル7と、
(c)誘導加熱コイル7に高周波電流を供給するインバータ回路8と、
(d)鍋12の底から放射されトッププレート2を透過する赤外線を検知して鍋12の底面温度に対応する出力電圧VTを出力する赤外線センサ11と、
(e)複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値WHを選択する出力設定部10と、
(f)誘導加熱コイル7に高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された加熱出力設定値WHに対応する加熱出力となるようにインバータ回路8の動作を制御する制御部9と、
(g)赤外線センサ11の出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるとき、鍋12の底に調理物14が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号SBを発生して制御部9に出力する焦げ付き検知部13と、
(h)焦げ付き情報信号SBに応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号STを制御部9に出力する計時部15とを備えて構成される。
ここで、制御部9は、計時部15により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止する一方、計時部15により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御することを特徴としている。
図2は、図1の誘導加熱部3の構成を示すブロック図である。図2において、誘導加熱部3は、トッププレート2の下方に設けられた誘導加熱コイル7(以下、加熱コイル7という。)と、赤外線センサ11と、インバータ回路8と、商用交流電源91と、整流平滑回路93と、整流平滑回路93と、計時部15と、入力電流検出回路16c及び共振電圧検出回路16vを備えた計測部16と、焦げ付き検知部13と、制御部9とを備えて構成される。また、操作表示部6は、加熱開始スイッチ6sと、出力設定部10とを備えて構成される。
図2において、加熱開始スイッチ6sは、使用者が誘導加熱部3に対して加熱開始を指示するために設けられ、使用者によって操作されると加熱開始を示す信号を制御部に出力する。また、出力設定部10は、使用者が誘導加熱コイル7の加熱出力設定値を複数の加熱出力設定値の中から選択するために設けられ、使用者によって選択された加熱出力設定値WHを制御部9に出力する。
また、図2において、赤外線センサ11は、InGaAsピンフォトダイオードなどからなり、トッププレート2の下部の加熱コイル7近傍に設けられる。赤外線センサ11は、調理容器である鍋12の底から放射されトッププレート2を透過する赤外線の赤外線量を検知し、検出された赤外線量に基づいて鍋12の底面温度に対応する出力電圧VTを発生して制御部9及び焦げ付き検知部13に出力する。
さらに、図2において、焦げ付き検知部13は、赤外線センサ11からの出力電圧VTに基づいて、図5の焦げ付き検知処理を実行する。図5は、図2の焦げ付き検知部13によって実行される焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
図5のステップS60において、焦げ付き検知部13は、出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS61に進む一方、NOのときはステップS60の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS61において、焦げ付き検知部13は、鍋12が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報信号SBを制御部9及び計時部15に出力し、焦げ付き検知処理を終了する。ここで、出力電圧V1は、カレーなどの比較的高い粘性を有する調理物14を煮込んでいるときに(すなわち、調理内容が煮物であるときに)、調理物14が鍋12に焦げ付き始める温度に対応する出力電圧VTに設定される。
図2に戻り参照すると、計時部15は、制御部9からの制御に基づいて焦げ付き時間をゼロに初期化するとともに、焦げ付き検知部13からの焦げ付き情報信号13に応答して焦げ付き時間の計時を開始する。そして、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号STを制御部9に出力する。
図3は、図2の整流平滑回路93及びインバータ回路8の構成を示す回路図である。図3において、整流平滑回路93は、ダイオードブリッジ回路を含みかつ商用交流電源91からの交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する全波整流器94と、全波整流器94の第1の出力端子に接続された一端を有するチョークコイル95と、全波整流器94の第2の出力端子に接続された一端とチョークコイル95の他端に接続された他端とを有する平滑コンデンサ96とを備えて構成される。ここで、チョークコイル95と平滑コンデンサ96とはローパスフィルタを構成する。また、インバータ回路8は、チョークコイル95及び平滑コンデンサ96の各他端に接続された一端を有する共振コンデンサ81と、平滑コンデンサ96の他端と共振コンデンサ81の他端との間に接続されたスイッチング素子83と、スイッチング素子83に逆並列に接続されたダイオード82とを備えて構成される。ここで、加熱コイル7は共振コンデンサ81に並列に接続される。
また、図3において、入力電流検出回路16cは例えば変流器(CT(Current Transformer))であって、商用交流電源91と全波整流器94との間に設けられ、商用交流電源91から整流平滑回路93への入力電流を検出する。共振電圧検出回路16vは、例えば計測用変圧器(VT(Voltage Transformer))であって、インバータ回路8の共振コンデンサ81(図3参照。)の共振電圧を検出する。計測部16は、検出された入力電流と共振電圧とを示す信号を制御部9に出力する。そして、制御部9は、使用者が加熱出力設定値WHを変更可能である加熱モードにおいて、検出された入力電流と共振電圧とに基づいて、加熱出力が出力設定部10により選択された加熱出力設定値WHに対応する加熱出力となるようにスイッチング素子83をオンオフ制御する。これにより加熱コイル7に高周波電流が流れる。そして、加熱コイル7に高周波磁界が発生し、これに伴って鍋12に渦電流が発生し、鍋12が誘導加熱される。
さらに、図2において、制御部9は上述した加熱モードでの加熱動作を行うとともに、焦げ付き検知部13からの焦げ付き情報信号SBと、計時部15からの焦げ付き時間信号STを用いて図4の加熱処理を実行する。
図4は、図2の制御部9によって実行される加熱処理を示すフローチャートである。図4のステップS10において、誘導加熱調理器の電源がオンされると、制御部9は動作モードを待機モードに設定する。制御部9は、待機モードにおいて、スイッチング素子83をオンオフ制御する加熱動作を停止している。また、待機モードにおいて、使用者は加熱開始スイッチ6sの操作及び出力設定部10による加熱出力設定値WHの設定ができる。次に、ステップS11において、制御部9は加熱開始スイッチ6sが操作されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に進む一方、NOのときはステップS11の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS12において、制御部9は加熱モードでの加熱動作を開始し、鍋12の温度に対応する出力電圧VTの出力を開始するように赤外線センサ11を制御し、焦げ付き検知処理を実行するように焦げ付き検知部13を制御し、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御する。これに応答して、赤外線センサ11は鍋12の温度に対応する出力電圧VTの出力を開始する。なお、赤外線センサ11は、少なくとも加熱動作中は常に出力電圧VTを制御部9に出力している。また、焦げ付き検知部13は図5の焦げ付き検知処理を実行し、計時部15は焦げ付き時間をゼロに初期化する。
次に、ステップS13において、制御部9は計時部15からの焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が所定の焦げ付き時間以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS14に進む。一方、ステップS13においてNOのときは、ステップS16に進み、制御部9は、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止して加熱動作を継続し、ステップS13に戻る。出力電圧VTが出力電圧V1以上になると焦げ付き検知部13は焦げ付き情報信号SBを計時部15に出力する。これに応答して、計時部15は焦げ付き時間の計時を開始する。計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上になると、ステップS13における判断処理においてYESと判断され、制御部9はステップS14において、鍋12の底に調理物14が焦げ付いたことを確定する。そして、ステップS15において、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御し、加熱処理を終了する。なお、ステップS15における処理の内容は、加熱出力設定値WHに基づいて、焦げ付きによって鍋12が受けるダメージの程度により決定される。
図6は、加熱開始から加熱停止又は加熱出力の低下までの経過時間と赤外線センサ11からの出力電圧VTとの関係を示すグラフである。図6において、出力電圧V1は、誘導加熱調理器による調理内容が煮物であるときに鍋12に調理物14が焦げ付き始める温度に対応する出力電圧VTに設定されている。また、焦げ付き待機時間は、調理物14が焦げ付き始めた後、例えば調理物14に所定の度合いの焦げ目が付くまでの時間(例えば、5分である。)に設定される。タイミングT0において加熱が開始されると、出力電圧VTは一定値のまま推移した後に上昇し始める。そして、タイミングT1において出力電圧VTが出力電圧V1に達すると、鍋12に調理物14が焦げ付き始める。また、タイミングT1において、焦げ付き検知部13は焦げ付き情報信号SBを計時部15に出力し、これに応答して、計時部15は焦げ付き時間の計時を開始する。そして、タイミングT1以降も出力電圧VTは上昇する。制御部9は、タイミングT2において、計時部15によって計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間に達すると、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させる。
従って、本実施形態によれば、焦げ付き検知情報信号SBが出力されたタイミングから、焦げ付き待機時間が経過した後に加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるので、使用者の好みにより意図的に調理物14に焦げ目をつけたい場合、及び鍋12の底の温度が所定の温度まで上昇した後に所定の時間だけ煮込みを行うことがある炊飯などの煮物調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能(焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御する機能である。)により使用者の意図に反して加熱を停止することがない。また、カレーなどの比較的粘性の高い調理物14を煮込み中に使用者が許容できる程度以上の焦げ付きが発生したり、調理物14に意図的に焦げ目を付けているときに必要以上に焦げ付きが発生したりすることを防止できる。
以上説明したように、特定の調理モードや焦げ付き防止機能の選択を使用者に課することなく、加熱出力設定値WHを使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、加熱出力設定値WHの大小に関わらず、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を利用できる。
(第2の実施形態)
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態に係る加熱処理を示すフローチャートである。図7において、ステップS10〜S12における各処理は、第1の実施形態に係る加熱処理(図4参照。)のステップS10〜ステップS12における各処理と同一であるので、説明を省略する。
図7のステップS12に続いて、ステップS21において、制御部9は、加熱出力設定値WHが2000W以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS26に進む一方、NOのときはステップS22に進む。ステップS26において制御部9は、計時部15により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるときに加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御することを禁止して(すなわち、ステップS15の処理を実行することなく)、加熱動作を継続し、ステップS41に進む。ステップS41において制御部9は、加熱出力設定値WHが変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS21に戻る一方、NOのときはステップS41の処理を繰り返して実行する。
図7のステップS22において、制御部9は、焦げ付き検知部13から焦げ付き情報信号SBを入力したか否かを判断し、YESのときはステップS23に進む一方、NOのときはステップS22の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS23において制御部9は、加熱出力設定値WHに基づいて焦げ付き待機時間を決定する。具体的には、制御部9は、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように、焦げ付き待機時間を設定する。次に、図8のステップS13において、制御部9は計時部15からの焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が所定の焦げ付き時間以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS14に進む一方、NOのときはステップS16に進む。ステップS16において、制御部9は、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止して加熱動作を継続し、ステップS24に進む。さらに、ステップS24において、出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かが判断され、YESのときはステップS25に進む一方、NOのときはステップS13に戻る。そして、ステップS25において、制御部9は焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御して図7のステップS21に戻る。これに応答して、計時部15は焦げ付き時間をゼロに初期化する。
図8のステップS14において、制御部9は鍋12の底に調理物14が焦げ付いたことを確定する。そして、ステップS15において、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御し、加熱処理を終了する。
本実施形態によれば、ステップS23の処理が実行されるまでの調理中に加熱出力設定値WHが変更されても、ステップS23において、変更後の加熱出力設定値WHに基づいて焦げ付き待機時間が決定される。一般に、火力が小さいほど鍋12の温度上昇速度は小さくなるので、火力が大きいときよりも鍋12が急に焦げ付くことはない。本実施形態において、制御部9は、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定するので、比較的火力が小さい(すなわち、加熱出力設定値WHが小さい。)ときでも、例えば、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理において、調理物14に適度な焦げ目を付けることができる。また、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて加熱動作が停止し又は加熱出力が低下して調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。なお、本実施形態において、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定したが、本発明はこれに限られない。一般に、使用者は、調理物14に焦げ目を付けたい場合、加熱出力設定値WHを比較的大きく設定するので、加熱出力設定値WHが大きいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定してもよい。
また、制御部9は、出力設定部10により設定された加熱出力設定値WHが2000W以上であるとき(ステップS21でYESの場合。)は、焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であっても、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御しない。従って、高火力が必要な負荷の重たい炒め物調理のときに、誤って焦げ付きを検知し、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させて調理に影響がでることを防止できる。さらに、図7及び図8の加熱処理によれば、加熱出力設定値WHが2000W以上から2000W未満に変更されると、ステップS22以降の焦げ付き検知のための処理を実行する。従って、例えば最初に高火力で炒めた後に低火力に変更して煮込みを行う調理(例えば、肉じゃが又は筑前煮などの調理。)の場合にも、使用者に調理モードの変更や焦げ付き防止スイッチを操作させることなく、焦げ付き検知機能を利用できる。なお、図7において、加熱出力設定値WHが2000W以上であるときにステップS26に進んだが、本発明はこれに限られず、加熱出力設定値WHが所定の範囲外であるときにステップS26に進んでもよい。
さらに、焦げ付き検知部13が焦げ付き情報信号SBを出力した後に、焦げ付き待機時間経過前に出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したとき(ステップS24でYESの場合。)、制御部9は、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御する。従って、始めに調理物14を炒めた後又は煮物に焦げ目をつけた後に鍋12に液体物などを加えて煮込む調理の場合に、煮込み調理の前に焦げ付きを検知しないので、使用者の意図に反して調理途中に焦げ付きを検知して加熱を停止することなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
なお、図8のステップS24において、出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かを判断したが、本発明はこれに限られず、出力電圧VTが出力電圧V1以外の所定の出力電圧未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かを判断したか否かを判断してもよい。
以上説明したように、特定の調理モードや焦げ付き防止機能の選択を使用者に課することなく、加熱出力設定値WHを使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、加熱出力設定値WHの大小に関わらず、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を利用できる。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。本実施形態は、出力電圧V1を、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定することを特徴としている。
図9において、始めにステップS62において、焦げ付き検知部13は、出力電圧V1を、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定する。そして、ステップS60において、焦げ付き検知部13は、出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS61に進む一方、NOのときはステップS62に戻る。そして、ステップS61において、焦げ付き検知部13は、鍋12が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報信号SBを制御部9及び計時部15に出力し、焦げ付き検知処理を終了する。
一般に、加熱出力設定値WHが比較的低い低火力での調理では、調理物14が鍋12に焦げ付いたときの鍋12の温度上昇速度は、加熱出力設定値WHが高いときに比較して小さい。本実施形態によれば、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように出力電圧V1を設定するので、上述した低下力での調理時でも、長時間加熱し続けて焦げ付きの程度がひどくなる前に焦げ付きを確定して、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させることができる。また、一般に、加熱出力設定値WHに応じて調理物14の焦げ付きの進行度合いは異なるが、本実施形態によれば、加熱出力設定値WHによらずに調理物14に適切な焦げ目を付けることができる。さらに、調理物14が焦げ付き始める前に加熱出力設定値WHが変更されても、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定できる。またさらに、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る誘導加熱部3Aの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る誘導加熱部3Aは、第1の実施形態に係る誘導加熱部3に比較して、計測部16により検出された入力電流及び共振電圧に基づいてトッププレート2上に鍋12があるか否かを判別する鍋無し検知部17をさらに備え、制御部9に代えて制御部9Aを備えたことを特徴としている。ここで、制御部9Aは、鍋無し検知部17によりトッププレート2上に鍋12が無いと判別された場合、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御することを特徴としている。
図10において、計測部16は第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の計測部16と同様にインバータ回路8への入力電流及び共振電圧を検出し、検出された入力電流及び共振電圧を示す信号を制御部9及び鍋無し検知部17に出力する。鍋無し検知部17は、検出された入力電流とあらかじめ設定された電流値との間の差と、検出された共振電圧とあらかじめ設定された電圧値との差に基づいてトッププレート2上に鍋12があるか否かを検知し、当該検知結果を示す鍋無し検知信号SNを発生して制御部9Aに出力する。一般に、トッププレート2上に鍋12が無いときは、鍋12があるときに比較して、入力電流に対して共振電圧は急峻に立ち上がる特性を有する。鍋無し検知部17は、鍋12があるときと無いときの共振電圧の特性の差を利用して鍋12の有無を判断する(例えば、特許文献2参照。)。
また、図10において、制御部9は、図4の加熱処理を実行しているときに鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNを入力すると、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御し、ステップS13に進む。従って、使用者が一旦調理を終了した後に、加熱開始スイッチ6s及び誘導加熱調理器の電源スイッチの入り切りを行わずに鍋12を取り替えて次の調理を行う場合、トッププレート2上に鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNが発生され、焦げ付き検知時間がゼロに初期化される。このため、鍋12が取り替えられた後の調理時にも第1の実施形態と同様に焦げ付きを検知でき調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
なお、第2の実施形態に係る図7及び図8の加熱処理において、鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNを入力したとき、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御し、ステップS21に進んでもよい。
なお、上記各実施形態において、赤外線センサ11はInGaAsピンフォトダイオードであったが、本発明はこれに限られず、シリコンフォトダイオード又はサーモパイルなどの焦げ付きが発生する温度を含む温度範囲を赤外線を用いて検知できる素子であればよい。また、上記各実施形態において、積が線センサ11は加熱コイル7の近傍に設けられたが、本発明はこれに限られず、鍋12の温度を検知できる位置に設けられればよい。
また、上記各実施形態において、入力電流検出回路16cは変流器であったが本発明はこれに限られず、インバータ回路8への入力電流を検出できる回路であればよい。さらに、上記各実施形態において、共振電圧検出回路16vは計測用変圧器であったが本発明はこれに限られず、共振電圧を検出できる回路であればよい。
以上説明したように、本発明の誘導加熱調理器は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止するので、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理中に使用者の意図に反して必要以上に早いタイミングで加熱を停止しない。さらに、煮込み調理がされる場合には焦げ付きを検知して自動的に加熱を停止し又は加熱出力を低下させて焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができ、従来技術に比較して使い勝手を向上させることができる。
従って、本発明に係る誘導加熱調理器を、組み込み式、テーブルの上で使用する卓上型、又は置き台の上で使用する据え置き型等で、家庭用の又は業務用の、加熱出力設定値を設定できる誘導加熱調理器に適用できる。
1…外郭ケース、
2…トッププレート、
3,3A…誘導加熱部、
4…ラジェントヒータ部、
5…グリル、
6…操作表示部、
6s…加熱開始スイッチ、
7…加熱コイル(誘導加熱コイル)、
8…インバータ回路、
9,9A…制御部、
10…出力設定部、
11…赤外線センサ、
12…鍋、
13…焦げ付き検知部、
14…調理物、
15…計時部、
16…計測部、
17…鍋無し検知部。
本発明は、焦げ付き検知機能を備えた誘導加熱調理器に関する。
特許文献1記載の誘導加熱調理器は、煮込み調理中に鍋底の温度が予め定めた所定値以上に上昇した場合に煮込み加熱を停止する焦げ付き検知部を備えている。従って、煮込み調理中に液体がなくなって調理物が鍋に焦げ付くことを防止できる。
特開平10−149875号公報。
特開2001−357968号公報。
しかしながら、特許文献1記載の誘導加熱調理器によれば、鍋底の温度が予め定めた所定値以上に上昇した場合に煮込み加熱を停止するので、例えば、使用者が調理物に焦げ目を付けたい場合には、使用者の意図に反して加熱が停止されてしまうという課題があった。
本発明の目的は以上の問題を解決し、必要以上に早く加熱出力が抑制されることを防止しかつ焦げ付きの程度がひどくならないようにできる従来技術に比較して使い勝手の良い誘導加熱調理器を提供することにある。
本発明に係る誘導加熱調理器は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられかつ前記鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記鍋の底から放射され前記トッププレートを透過する赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値を選択する出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された加熱出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータ回路の動作を制御する制御部と、前記赤外線センサの出力電圧が所定の第1出力電圧以上であるとき、前記鍋の底に調理物が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号を発生して前記制御部に出力する焦げ付き検知部と、前記焦げ付き情報信号に応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号を前記制御部に出力する計時部とを備え、前記制御部は、前記計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、前記焦げ付き情報信号に応答して前記インバータ回路を制御することを禁止する一方、前記計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるように前記インバータ回路を制御することを特徴とする。
これによって、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能(焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御する機能である。)が利用可能である。また、焦げ目をつけたい煮物調理、あるいは鍋底の温度が所定の温度まで上昇してから所定の時間だけ煮込みを行うような調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがない。
本発明の誘導加熱調理器は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止するので、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理中に使用者の意図に反して必要以上に早いタイミングで加熱を停止しない。さらに、煮込み調理中がされる場合には焦げ付きを検知して自動的に加熱を停止し又は加熱出力を低下させて焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができ、従来技術に比較して使い勝手を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の斜視図である。
図1の誘導加熱部3の構成を示すブロック図である。
図2の整流平滑回路93及びインバータ回路8の構成を示す回路図である。
図2の制御部9によって実行される加熱処理を示すフローチャートである。
図2の焦げ付き検知部13によって実行される焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
加熱開始から加熱停止又は加熱出力の低下までの経過時間と赤外線センサ11からの出力電圧VTとの関係を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態に係る加熱処理の第1の部分を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態に係る加熱処理の第2の部分を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係る焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
本発明の第4の実施形態に係る誘導加熱部3Aの構成を示すブロック図である。
第1の発明は、鍋を載置するトッププレートと、トッププレートの下に設けられかつ鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、鍋の底から放射されトッププレートを透過する赤外線を検知して鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値を選択する出力設定部と、誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された加熱出力設定値に対応する加熱出力となるようにインバータ回路の動作を制御する制御部と、赤外線センサの出力電圧が所定の第1出力電圧以上であるとき、鍋の底に調理物が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号を発生して制御部に出力する焦げ付き検知部と、焦げ付き情報信号に応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号を制御部に出力する計時部とを備え、制御部は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止する一方、計時部により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路を制御することを特徴とする。
これによって、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値に基づいて焦げ付き待機時間を設定することを特徴とする。また、第3の発明は、特に、第2の発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値が小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように、焦げ付き待機時間を設定することを特徴とする。
従って、調理中に加熱出力設定値を変更した場合にも、例えば、焦げ目をつけたい煮物調理において適切な焦げ目をつけることが可能であり、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働き調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第4の発明は、特に、第1から第3のうちのいずれか1つの発明において、焦げ付き検知部は、選択された加熱出力設定値が大きいほど第1出力電圧が大きくなるように、第1出力電圧を設定することを特徴とする。
従って、調理中に加熱出力設定値が変更された場合にも、例えば、焦げ目をつけたい煮物調理において適切な焦げ目をつけることが可能であり、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働き調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。さらに、低火力調理等において調理物が焦げ付いても鍋底温度があまり上昇しない場合でも、焦げ付きがひどくなる前に焦げ付き検知により加熱を停止できる。
第5の発明は、特に、第1から第4のうちのいずれか1つの発明において、制御部は、選択された加熱出力設定値が所定の加熱出力設定値以上であるとき、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間以上であるときに加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路を制御することを禁止することを特徴とする。
従って、特に、例えば炒め物調理時によく用いられる高い加熱出力設定値においては焦げ付き検知を行わず、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第6の発明は、特に、第1から第5のうちのいずれか1つの発明において、制御部は、焦げ付き情報信号が発生された後に、出力電圧が第1出力電圧未満である状態が所定の時間以上継続したとき、焦げ付き時間を初期化するように計時部を制御することを特徴とする。
従って、特に、始めに調理物を炒めた後又は焦げ目をつけた後に鍋12に液体物等を加えて煮込む調理の場合に、煮込み調理の前に焦げ付きを検知しないので、使用者の意図に反して調理途中に焦げ付きを検知して加熱を停止することなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第7の発明は、特に、第1から第6のうちのいずれか1つの発明において、インバータ回路に入力される入力電流及びインバータ回路の共振電圧を測定する計測部と、測定された入力電流及び共振電圧に基づいて、トッププレート上に鍋があるか否かを判別する鍋無し検知部とをさらに備え、制御部は、鍋無し検知部により、トッププレート上に鍋が無いと判別された場合、焦げ付き時間を初期化するように計時部を制御することを特徴とする。また、第8の発明は、特に、第7の発明において、鍋無し検知部は、測定された入力電流とあらかじめ設定された電流値との差、及び測定された共振電圧とあらかじめ設定された電圧値との差に基づいて、トッププレート上に鍋があるか否かを判別することを特徴とする。
従って、特に、調理を終了した後に、誘導加熱調理器の電源の入り切り動作を行わずに鍋を取り替えて次の調理を行う場合にも、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
第9の発明は、特に、第1から第8のうちのいずれか1つの発明において、第1出力電圧は、鍋の底に調理物が焦げ付き始める温度に対応する出力電圧に設定されたことを特徴とする。
従って、調理物に適度な焦げ目を付けることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の構成を示す斜視図である。図1において、外郭ケース1の上部にガラスなどの電気絶縁物からなり赤外線を透過するトッププレート2が設けられている。トッププレート2には、誘導加熱により調理容器である鍋12を誘導加熱する誘導加熱部3と、輻射熱により非金属性の鍋などを加熱するラジェントヒータ部4とが設けられる。また、外郭ケース1の側面に、魚等を焼くグリル5、及び各熱源の操作及び各熱源の状態の表示のための操作表示部6が設けられている。
詳細後述するように、本実施形態に係る誘導加熱調理器は、
(a)鍋12を載置するトッププレート2と、
(b)トッププレート2の下に設けられかつ鍋12を誘導加熱する誘導加熱コイル7と、
(c)誘導加熱コイル7に高周波電流を供給するインバータ回路8と、
(d)鍋12の底から放射されトッププレート2を透過する赤外線を検知して鍋12の底面温度に対応する出力電圧VTを出力する赤外線センサ11と、
(e)複数の加熱出力設定値の中から1つの加熱出力設定値WHを選択する出力設定部10と、
(f)誘導加熱コイル7に高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された加熱出力設定値WHに対応する加熱出力となるようにインバータ回路8の動作を制御する制御部9と、
(g)赤外線センサ11の出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるとき、鍋12の底に調理物14が焦げ付き始めたことを示す焦げ付き情報信号SBを発生して制御部9に出力する焦げ付き検知部13と、
(h)焦げ付き情報信号SBに応答して焦げ付き時間の計時を開始し、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号STを制御部9に出力する計時部15とを備えて構成される。
ここで、制御部9は、計時部15により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止する一方、計時部15により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるとき、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御することを特徴としている。
図2は、図1の誘導加熱部3の構成を示すブロック図である。図2において、誘導加熱部3は、トッププレート2の下方に設けられた誘導加熱コイル7(以下、加熱コイル7という。)と、赤外線センサ11と、インバータ回路8と、商用交流電源91と、整流平滑回路93と、整流平滑回路93と、計時部15と、入力電流検出回路16c及び共振電圧検出回路16vを備えた計測部16と、焦げ付き検知部13と、制御部9とを備えて構成される。また、操作表示部6は、加熱開始スイッチ6sと、出力設定部10とを備えて構成される。
図2において、加熱開始スイッチ6sは、使用者が誘導加熱部3に対して加熱開始を指示するために設けられ、使用者によって操作されると加熱開始を示す信号を制御部に出力する。また、出力設定部10は、使用者が誘導加熱コイル7の加熱出力設定値を複数の加熱出力設定値の中から選択するために設けられ、使用者によって選択された加熱出力設定値WHを制御部9に出力する。
また、図2において、赤外線センサ11は、InGaAsピンフォトダイオードなどからなり、トッププレート2の下部の加熱コイル7近傍に設けられる。赤外線センサ11は、調理容器である鍋12の底から放射されトッププレート2を透過する赤外線の赤外線量を検知し、検出された赤外線量に基づいて鍋12の底面温度に対応する出力電圧VTを発生して制御部9及び焦げ付き検知部13に出力する。
さらに、図2において、焦げ付き検知部13は、赤外線センサ11からの出力電圧VTに基づいて、図5の焦げ付き検知処理を実行する。図5は、図2の焦げ付き検知部13によって実行される焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。
図5のステップS60において、焦げ付き検知部13は、出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS61に進む一方、NOのときはステップS60の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS61において、焦げ付き検知部13は、鍋12が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報信号SBを制御部9及び計時部15に出力し、焦げ付き検知処理を終了する。ここで、出力電圧V1は、カレーなどの比較的高い粘性を有する調理物14を煮込んでいるときに(すなわち、調理内容が煮物であるときに)、調理物14が鍋12に焦げ付き始める温度に対応する出力電圧VTに設定される。
図2に戻り参照すると、計時部15は、制御部9からの制御に基づいて焦げ付き時間をゼロに初期化するとともに、焦げ付き検知部13からの焦げ付き情報信号13に応答して焦げ付き時間の計時を開始する。そして、計時した焦げ付き時間を示す焦げ付き時間信号STを制御部9に出力する。
図3は、図2の整流平滑回路93及びインバータ回路8の構成を示す回路図である。図3において、整流平滑回路93は、ダイオードブリッジ回路を含みかつ商用交流電源91からの交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する全波整流器94と、全波整流器94の第1の出力端子に接続された一端を有するチョークコイル95と、全波整流器94の第2の出力端子に接続された一端とチョークコイル95の他端に接続された他端とを有する平滑コンデンサ96とを備えて構成される。ここで、チョークコイル95と平滑コンデンサ96とはローパスフィルタを構成する。また、インバータ回路8は、チョークコイル95及び平滑コンデンサ96の各他端に接続された一端を有する共振コンデンサ81と、平滑コンデンサ96の他端と共振コンデンサ81の他端との間に接続されたスイッチング素子83と、スイッチング素子83に逆並列に接続されたダイオード82とを備えて構成される。ここで、加熱コイル7は共振コンデンサ81に並列に接続される。
また、図3において、入力電流検出回路16cは例えば変流器(CT(Current Transformer))であって、商用交流電源91と全波整流器94との間に設けられ、商用交流電源91から整流平滑回路93への入力電流を検出する。共振電圧検出回路16vは、例えば計測用変圧器(VT(Voltage Transformer))であって、インバータ回路8の共振コンデンサ81(図3参照。)の共振電圧を検出する。計測部16は、検出された入力電流と共振電圧とを示す信号を制御部9に出力する。そして、制御部9は、使用者が加熱出力設定値WHを変更可能である加熱モードにおいて、検出された入力電流と共振電圧とに基づいて、加熱出力が出力設定部10により選択された加熱出力設定値WHに対応する加熱出力となるようにスイッチング素子83をオンオフ制御する。これにより加熱コイル7に高周波電流が流れる。そして、加熱コイル7に高周波磁界が発生し、これに伴って鍋12に渦電流が発生し、鍋12が誘導加熱される。
さらに、図2において、制御部9は上述した加熱モードでの加熱動作を行うとともに、焦げ付き検知部13からの焦げ付き情報信号SBと、計時部15からの焦げ付き時間信号STを用いて図4の加熱処理を実行する。
図4は、図2の制御部9によって実行される加熱処理を示すフローチャートである。図4のステップS10において、誘導加熱調理器の電源がオンされると、制御部9は動作モードを待機モードに設定する。制御部9は、待機モードにおいて、スイッチング素子83をオンオフ制御する加熱動作を停止している。また、待機モードにおいて、使用者は加熱開始スイッチ6sの操作及び出力設定部10による加熱出力設定値WHの設定ができる。次に、ステップS11において、制御部9は加熱開始スイッチ6sが操作されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に進む一方、NOのときはステップS11の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS12において、制御部9は加熱モードでの加熱動作を開始し、鍋12の温度に対応する出力電圧VTの出力を開始するように赤外線センサ11を制御し、焦げ付き検知処理を実行するように焦げ付き検知部13を制御し、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御する。これに応答して、赤外線センサ11は鍋12の温度に対応する出力電圧VTの出力を開始する。なお、赤外線センサ11は、少なくとも加熱動作中は常に出力電圧VTを制御部9に出力している。また、焦げ付き検知部13は図5の焦げ付き検知処理を実行し、計時部15は焦げ付き時間をゼロに初期化する。
次に、ステップS13において、制御部9は計時部15からの焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が所定の焦げ付き時間以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS14に進む。一方、ステップS13においてNOのときは、ステップS16に進み、制御部9は、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止して加熱動作を継続し、ステップS13に戻る。出力電圧VTが出力電圧V1以上になると焦げ付き検知部13は焦げ付き情報信号SBを計時部15に出力する。これに応答して、計時部15は焦げ付き時間の計時を開始する。計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上になると、ステップS13における判断処理においてYESと判断され、制御部9はステップS14において、鍋12の底に調理物14が焦げ付いたことを確定する。そして、ステップS15において、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御し、加熱処理を終了する。なお、ステップS15における処理の内容は、加熱出力設定値WHに基づいて、焦げ付きによって鍋12が受けるダメージの程度により決定される。
図6は、加熱開始から加熱停止又は加熱出力の低下までの経過時間と赤外線センサ11からの出力電圧VTとの関係を示すグラフである。図6において、出力電圧V1は、誘導加熱調理器による調理内容が煮物であるときに鍋12に調理物14が焦げ付き始める温度に対応する出力電圧VTに設定されている。また、焦げ付き待機時間は、調理物14が焦げ付き始めた後、例えば調理物14に所定の度合いの焦げ目が付くまでの時間(例えば、5分である。)に設定される。タイミングT0において加熱が開始されると、出力電圧VTは一定値のまま推移した後に上昇し始める。そして、タイミングT1において出力電圧VTが出力電圧V1に達すると、鍋12に調理物14が焦げ付き始める。また、タイミングT1において、焦げ付き検知部13は焦げ付き情報信号SBを計時部15に出力し、これに応答して、計時部15は焦げ付き時間の計時を開始する。そして、タイミングT1以降も出力電圧VTは上昇する。制御部9は、タイミングT2において、計時部15によって計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間に達すると、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させる。
従って、本実施形態によれば、焦げ付き検知情報信号SBが出力されたタイミングから、焦げ付き待機時間が経過した後に加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるので、使用者の好みにより意図的に調理物14に焦げ目をつけたい場合、及び鍋12の底の温度が所定の温度まで上昇した後に所定の時間だけ煮込みを行うことがある炊飯などの煮物調理の場合でも、調理途中に焦げ付き検知機能(焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御する機能である。)により使用者の意図に反して加熱を停止することがない。また、カレーなどの比較的粘性の高い調理物14を煮込み中に使用者が許容できる程度以上の焦げ付きが発生したり、調理物14に意図的に焦げ目を付けているときに必要以上に焦げ付きが発生したりすることを防止できる。
以上説明したように、特定の調理モードや焦げ付き防止機能の選択を使用者に課することなく、加熱出力設定値WHを使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、加熱出力設定値WHの大小に関わらず、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を利用できる。
(第2の実施形態)
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態に係る加熱処理を示すフローチャートである。図7において、ステップS10〜S12における各処理は、第1の実施形態に係る加熱処理(図4参照。)のステップS10〜ステップS12における各処理と同一であるので、説明を省略する。
図7のステップS12に続いて、ステップS21において、制御部9は、加熱出力設定値WHが2000W以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS26に進む一方、NOのときはステップS22に進む。ステップS26において制御部9は、計時部15により計時された焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であるときに加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御することを禁止して(すなわち、ステップS15の処理を実行することなく)、加熱動作を継続し、ステップS41に進む。ステップS41において制御部9は、加熱出力設定値WHが変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS21に戻る一方、NOのときはステップS41の処理を繰り返して実行する。
図7のステップS22において、制御部9は、焦げ付き検知部13から焦げ付き情報信号SBを入力したか否かを判断し、YESのときはステップS23に進む一方、NOのときはステップS22の処理を繰り返して実行する。そして、ステップS23において制御部9は、加熱出力設定値WHに基づいて焦げ付き待機時間を決定する。具体的には、制御部9は、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように、焦げ付き待機時間を設定する。次に、図8のステップS13において、制御部9は計時部15からの焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が所定の焦げ付き時間以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS14に進む一方、NOのときはステップS16に進む。ステップS16において、制御部9は、焦げ付き情報信号SBに応答してインバータ回路8を制御することを禁止して加熱動作を継続し、ステップS24に進む。さらに、ステップS24において、出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かが判断され、YESのときはステップS25に進む一方、NOのときはステップS13に戻る。そして、ステップS25において、制御部9は焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御して図7のステップS21に戻る。これに応答して、計時部15は焦げ付き時間をゼロに初期化する。
図8のステップS14において、制御部9は鍋12の底に調理物14が焦げ付いたことを確定する。そして、ステップS15において、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御し、加熱処理を終了する。
本実施形態によれば、ステップS23の処理が実行されるまでの調理中に加熱出力設定値WHが変更されても、ステップS23において、変更後の加熱出力設定値WHに基づいて焦げ付き待機時間が決定される。一般に、火力が小さいほど鍋12の温度上昇速度は小さくなるので、火力が大きいときよりも鍋12が急に焦げ付くことはない。本実施形態において、制御部9は、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定するので、比較的火力が小さい(すなわち、加熱出力設定値WHが小さい。)ときでも、例えば、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理において、調理物14に適度な焦げ目を付けることができる。また、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて加熱動作が停止し又は加熱出力が低下して調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。なお、本実施形態において、加熱出力設定値WHが小さいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定したが、本発明はこれに限られない。一般に、使用者は、調理物14に焦げ目を付けたい場合、加熱出力設定値WHを比較的大きく設定するので、加熱出力設定値WHが大きいほど焦げ付き待機時間が長くなるように焦げ付き待機時間を設定してもよい。
また、制御部9は、出力設定部10により設定された加熱出力設定値WHが2000W以上であるとき(ステップS21でYESの場合。)は、焦げ付き時間信号STに含まれる焦げ付き時間が焦げ付き待機時間以上であっても、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させるようにインバータ回路8を制御しない。従って、高火力が必要な負荷の重たい炒め物調理のときに、誤って焦げ付きを検知し、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させて調理に影響がでることを防止できる。さらに、図7及び図8の加熱処理によれば、加熱出力設定値WHが2000W以上から2000W未満に変更されると、ステップS22以降の焦げ付き検知のための処理を実行する。従って、例えば最初に高火力で炒めた後に低火力に変更して煮込みを行う調理(例えば、肉じゃが又は筑前煮などの調理。)の場合にも、使用者に調理モードの変更や焦げ付き防止スイッチを操作させることなく、焦げ付き検知機能を利用できる。なお、図7において、加熱出力設定値WHが2000W以上であるときにステップS26に進んだが、本発明はこれに限られず、加熱出力設定値WHが所定の範囲外であるときにステップS26に進んでもよい。
さらに、焦げ付き検知部13が焦げ付き情報信号SBを出力した後に、焦げ付き待機時間経過前に出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したとき(ステップS24でYESの場合。)、制御部9は、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御する。従って、始めに調理物14を炒めた後又は煮物に焦げ目をつけた後に鍋12に液体物などを加えて煮込む調理の場合に、煮込み調理の前に焦げ付きを検知しないので、使用者の意図に反して調理途中に焦げ付きを検知して加熱を停止することなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
なお、図8のステップS24において、出力電圧VTが出力電圧V1未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かを判断したが、本発明はこれに限られず、出力電圧VTが出力電圧V1以外の所定の出力電圧未満である状態が所定の時間(時間期間)以上継続したか否かを判断したか否かを判断してもよい。
以上説明したように、特定の調理モードや焦げ付き防止機能の選択を使用者に課することなく、加熱出力設定値WHを使用者の操作により自由に選択できる加熱モードで調理を行っても、焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理物14に焦げ目をつけたい煮物調理の場合でも、加熱出力設定値WHの大小に関わらず、調理途中に焦げ付き検知機能により使用者の意図に反して加熱を停止することがなく、焦げ付き検知機能を利用できる。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る焦げ付き検知処理を示すフローチャートである。本実施形態は、出力電圧V1を、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定することを特徴としている。
図9において、始めにステップS62において、焦げ付き検知部13は、出力電圧V1を、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定する。そして、ステップS60において、焦げ付き検知部13は、出力電圧VTが所定の出力電圧V1以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS61に進む一方、NOのときはステップS62に戻る。そして、ステップS61において、焦げ付き検知部13は、鍋12が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報信号SBを制御部9及び計時部15に出力し、焦げ付き検知処理を終了する。
一般に、加熱出力設定値WHが比較的低い低火力での調理では、調理物14が鍋12に焦げ付いたときの鍋12の温度上昇速度は、加熱出力設定値WHが高いときに比較して小さい。本実施形態によれば、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように出力電圧V1を設定するので、上述した低下力での調理時でも、長時間加熱し続けて焦げ付きの程度がひどくなる前に焦げ付きを確定して、加熱動作を停止し又は加熱出力を低下させることができる。また、一般に、加熱出力設定値WHに応じて調理物14の焦げ付きの進行度合いは異なるが、本実施形態によれば、加熱出力設定値WHによらずに調理物14に適切な焦げ目を付けることができる。さらに、調理物14が焦げ付き始める前に加熱出力設定値WHが変更されても、加熱出力設定値WHが大きくなるほど出力電圧V1が大きくなるように設定できる。またさらに、調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る誘導加熱部3Aの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る誘導加熱部3Aは、第1の実施形態に係る誘導加熱部3に比較して、計測部16により検出された入力電流及び共振電圧に基づいてトッププレート2上に鍋12があるか否かを判別する鍋無し検知部17をさらに備え、制御部9に代えて制御部9Aを備えたことを特徴としている。ここで、制御部9Aは、鍋無し検知部17によりトッププレート2上に鍋12が無いと判別された場合、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御することを特徴としている。
図10において、計測部16は第1の実施形態に係る誘導加熱調理器の計測部16と同様にインバータ回路8への入力電流及び共振電圧を検出し、検出された入力電流及び共振電圧を示す信号を制御部9及び鍋無し検知部17に出力する。鍋無し検知部17は、検出された入力電流とあらかじめ設定された電流値との間の差と、検出された共振電圧とあらかじめ設定された電圧値との差に基づいてトッププレート2上に鍋12があるか否かを検知し、当該検知結果を示す鍋無し検知信号SNを発生して制御部9Aに出力する。一般に、トッププレート2上に鍋12が無いときは、鍋12があるときに比較して、入力電流に対して共振電圧は急峻に立ち上がる特性を有する。鍋無し検知部17は、鍋12があるときと無いときの共振電圧の特性の差を利用して鍋12の有無を判断する(例えば、特許文献2参照。)。
また、図10において、制御部9は、図4の加熱処理を実行しているときに鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNを入力すると、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御し、ステップS13に進む。従って、使用者が一旦調理を終了した後に、加熱開始スイッチ6s及び誘導加熱調理器の電源スイッチの入り切りを行わずに鍋12を取り替えて次の調理を行う場合、トッププレート2上に鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNが発生され、焦げ付き検知時間がゼロに初期化される。このため、鍋12が取り替えられた後の調理時にも第1の実施形態と同様に焦げ付きを検知でき調理途中に使用者の意図に反して焦げ付き検知機能が働いて調理に支障をきたすということがなく、焦げ付き検知機能を正確に利用できる。
なお、第2の実施形態に係る図7及び図8の加熱処理において、鍋12が無いことを示す鍋無し検知信号SNを入力したとき、焦げ付き時間をゼロに初期化するように計時部15を制御し、ステップS21に進んでもよい。
なお、上記各実施形態において、赤外線センサ11はInGaAsピンフォトダイオードであったが、本発明はこれに限られず、シリコンフォトダイオード又はサーモパイルなどの焦げ付きが発生する温度を含む温度範囲を赤外線を用いて検知できる素子であればよい。また、上記各実施形態において、積が線センサ11は加熱コイル7の近傍に設けられたが、本発明はこれに限られず、鍋12の温度を検知できる位置に設けられればよい。
また、上記各実施形態において、入力電流検出回路16cは変流器であったが本発明はこれに限られず、インバータ回路8への入力電流を検出できる回路であればよい。さらに、上記各実施形態において、共振電圧検出回路16vは計測用変圧器であったが本発明はこれに限られず、共振電圧を検出できる回路であればよい。
以上説明したように、本発明の誘導加熱調理器は、計時部により計時された焦げ付き時間が所定の焦げ付き待機時間未満であるとき、焦げ付き情報信号に応答してインバータ回路を制御することを禁止するので、特定の調理モードの選択又は焦げ付き防止のための所定の機能の選択などの所定の操作を使用者に課すことなく、加熱出力設定値を変更可能な通常の加熱モードで調理を行っても焦げ付き検知機能が利用可能である。また、調理中に使用者の意図に反して必要以上に早いタイミングで加熱を停止しない。さらに、煮込み調理がされる場合には焦げ付きを検知して自動的に加熱を停止し又は加熱出力を低下させて焦げ付きの状態が悪化しないようにすることができ、従来技術に比較して使い勝手を向上させることができる。
従って、本発明に係る誘導加熱調理器を、組み込み式、テーブルの上で使用する卓上型、又は置き台の上で使用する据え置き型等で、家庭用の又は業務用の、加熱出力設定値を設定できる誘導加熱調理器に適用できる。
1…外郭ケース、
2…トッププレート、
3,3A…誘導加熱部、
4…ラジェントヒータ部、
5…グリル、
6…操作表示部、
6s…加熱開始スイッチ、
7…加熱コイル(誘導加熱コイル)、
8…インバータ回路、
9,9A…制御部、
10…出力設定部、
11…赤外線センサ、
12…鍋、
13…焦げ付き検知部、
14…調理物、
15…計時部、
16…計測部、
17…鍋無し検知部。