JPWO2010092815A1 - 非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

正極11、負極12、セパレータ14、正極リード15、負極リード16、ガスケット17及び外装ケース18を含み、負極12の負極活物質層12bが合金系活物質を含有する非水電解質二次電池1において、負極活物質層12b表面に樹脂層13を形成する。樹脂層13は、リチウムイオン伝導性の樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する。これにより、充放電回数が増加しても、電池性能が高水準に維持され、電池の膨れが抑制されて、安全性の高い非水電解質二次電池1が提供される。

Description

本発明は、非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池に関する。より詳しくは、本発明は主に、合金系活物質を含有する非水電解質二次電池用負極の改良に関する。
非水電解質二次電池は、容量及びエネルギー密度が高く、小型化及び軽量化が容易なことから、電子機器、電気機器、輸送機器、工作機器、電力貯蔵機器等の電源として広く使用されている。代表的な非水電解質二次電池として、リチウムコバルト複合酸化物を含有する正極、黒鉛を含有する負極及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池が挙げられる。
また、黒鉛以外の負極活物質として、珪素、錫、これらの酸化物や合金等からなる合金系活物質が知られている。合金系活物質は、リチウムと合金化することによりリチウムを吸蔵し、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出する。合金系活物質は、高い放電容量を有している。例えば、珪素の理論放電容量は、黒鉛の理論放電容量の約11倍である。したがって、負極活物質として合金系活物質を用いた非水電解質二次電池は、高容量である。
負極活物質として合金系活物質を用いた非水電解質二次電池(以下「合金系二次電池」とすることがある)は、使用初期には高性能を発揮する。しかし、充放電回数が増加するに伴い、電極の劣化や電池の変形等が発生することにより、電池性能が経時的に低下するという問題があった。このような問題を解決するために、次のような方法が提案されている。
特許文献1は、リチウム合金粒子を含有する負極活物質層の表面に、高分子支持体と架橋性モノマーとから形成された高分子フィルム層が設けられた非水電解質二次電池用負極を開示する。
特許文献2は、集電体表面に支持されて珪素又は錫を含有する負極活物質粒子の表面の電解質と接する領域に、珪素、ゲルマニウム及び錫から選ばれる金属の酸化物からなる酸化物膜を形成した非水電解質二次電池用負極を開示する。
特開2005−197258号公報 特開2008−004534号公報
本発明の目的は、合金系活物質を含有する非水電解質二次電池用負極、及び前記非水電解質二次電池用負極を備え、寿命特性に優れた非水電解質二次電池を提供することである。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と前記負極集電体表面に支持されてリチウムイオンを吸蔵及び放出する合金系活物質を含む負極活物質層とを備え、さらに、負極活物質層の表面に、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する樹脂層を備えることを特徴とする。
また、本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出する負極と、正極と負極との間に介在するように配置されたリチウムイオン透過性絶縁層と、リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備え、負極として前記負極を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、合金系活物質を含有する負極を備え、寿命特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成及び内容の両方に関し、本願の他の目的及び特徴と併せ、図面を参照した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池の構成を模式的に示す縦断面図である。 図1に示すのとは異なる形態の負極集電体の構成を模式的に示す上面図である。 図1に示すのとは異なる形態の非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 図3に示す非水電解質二次電池用負極に含まれる柱状体の構成を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池に備わる非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池に備わる非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 電子ビーム式真空蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。 図7に示すのとは異なる形態の電子ビーム式真空蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。
本発明者らは、合金系二次電池において、電池性能が経時的に低下する原因について検討した。その結果、次のような知見を得た。
合金系活物質は、リチウムの吸蔵及び放出に伴って膨張及び収縮し、比較的大きな応力を発生させる。このため、充放電回数が増加すると、合金系活物質からなる負極活物質層の表面及びその内部にクラックが発生する。クラックが発生した場合、もともと非水電解質に直接触れていなかった面(以下「新生面」とする)が現れる。
そして、新生面と非水電解質とが接触した場合、新生面でガスの発生を伴う副反応が起こって副生物とガスとが生成する。この副生物は電極を劣化させる。また、発生したガスは、電池を膨張させる。また、新生面で非水電解質が副反応により消費されることにより、電池内の非水電解質の量が不足して、その結果、サイクル特性が低下する。
これらの知見から、集電体表面に支持されて合金系活物質を含む負極活物質層の表面に、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質に添加される添加剤とを含有する樹脂層(以下単に「樹脂層」とする)を形成した負極に想到するに至った。
新生面の大部分は負極活物質層の表面に露出するために、負極活物質層の表面に樹脂層を形成することにより、新生面と非水電解質とが接触することが抑制される。
また、非水電解質二次電池に用いられる非水電解質には、一般に、支持塩及び非水溶媒と共に、電池性能を高めるための非水電解質用添加剤(以下単に「添加剤」とすることがある)が配合されている。このような添加剤は、電池の充放電サイクルを繰り返すことにより、正極活物質層又は負極活物質層の表面等で分解され、その濃度が徐々に低下する。従って、添加剤は電池の使用初期にはその効果を十分に発揮するが、充放電サイクルを繰り返すにつれて添加剤が分解され、その効果が低減していく。
本発明に係る負極においては、負極活物質層の表面に形成される樹脂層に添加剤を含有させる。添加剤を樹脂層に保持させることにより、非水電解質中の添加剤が分解されてその濃度が低下した場合には、樹脂層から添加剤が徐々に放出される。そのために、充放電サイクルを繰り返しても、添加剤の効果が持続する。
なお、樹脂層に添加剤を含有させる場合には、非水電解質に添加剤を含有させる場合に比べて、添加剤を高濃度で保持させることができる。非水電解質に添加剤を高濃度で含有させた場合には、非水電解質のセパレータに対する濡れ性が低下したり、リチウムイオン伝導性が低下したり、副反応が起こりやすくなったりする。従って、非水電解質に添加剤を高濃度で保持することは困難である。これに対し、樹脂層に高濃度で添加剤を保持させた場合には、樹脂層から添加剤が非水電解質に徐々に供給されるために、非水電解質に前記のような問題を起こさない。
以下に、第1実施形態の非水電解質二次電池用負極(以下単に「負極」とする)、及びその負極を用いた非水電解質二次電池について、詳しく説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池1の構成を模式的に示す縦断面図である。非水電解質二次電池1は、正極11と負極12とを両者の間にセパレータ14を介在させて積層した積層型電極群と、正極11に接続された正極リード15と、負極12に接続された負極リード16と、外装ケース18の開口18a、18bを封口するガスケット17と、前記積層型電極群及び非水電解質(不図示)を収容する外装ケース18と、を備えた扁平型電池である。
正極リード15は、一端が正極集電体11aに接続され、他端が外装ケース18の開口18aから非水電解質二次電池1の外部に導出されている。負極リード16は、一端が負極集電体12aに接続され、他端が外装ケース18の開口18bから非水電解質二次電池1の外部に導出されている。正極リード15及び負極リード16には、リチウムイオン二次電池の分野で常用されるものを使用できる。例えば、正極リード15にはアルミニウム製リード、負極リード16にはニッケル製リードをそれぞれ使用できる。
外装ケース18の開口18a、18bはガスケット17により封止されている。ガスケット17には、各種樹脂材料からなるものを使用できる。外装ケース18の材料には、金属材料、合成樹脂、ラミネートフィルム等がある。ガスケット17を使用せずに、外装ケース18の開口18a、18bを溶着等によって直接封止してもよい。
非水電解質二次電池1は、次のようにして作製される。正極リード15の一端を電極群の正極集電体11aに接続する。負極リード16の一端を電極群の負極集電体12aに接続する。電極群を外装ケース18内に挿入し、非水電解質を注液し、正極リード15及び負極リード16の他端を外装ケース18の外部に導出する。次に、外装ケース18の内部を真空減圧しながら開口18a、18bを、ガスケット17を介して溶着して封口することにより、非水電解質二次電池1が得られる。
はじめに、負極12について詳しく説明する。図1に示すように、負極12は、負極集電体12aと負極集電体12aの表面に支持された負極活物質層12bと、負極活物質層12bの表面に形成された樹脂層13とを含む。
負極集電体12aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、又は銅合金等の金属材料が挙げられる。導電性基板の形態としては、金属箔、金属シート、又は金属フィルム等が挙げられる。導電性基板の厚さは特に限定されないが、例えば、1〜500μmであり、さらには5〜50μmであることが好ましい。
負極活物質層12bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する合金系活物質を含み、負極集電体12aの片面又は両面に形成される。合金系活物質は、以下の利点を有する。すなわち、合金系活物質は、黒鉛よりも遥かに大きい容量を有するために、厚さが1μm〜数十μm程度であっても、負極活物質層12bは充分な容量を有する。そして、厚さ1μm〜数十μm程度の負極活物質層12bでは、新生面が生成しても、その大部分が負極活物質層12bの表面に露出する。従って、負極活物質層12bの表面を樹脂層13で保護することにより、新生面を充分に保護することができる。
合金系活物質は、リチウムを吸蔵することによりリチウムと合金化し、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出する非晶質又は低結晶性の活物質であることが好ましい。合金系活物質としては、珪素系活物質、錫系活物質等が挙げられる。合金系活物質は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
珪素系活物質としては、珪素、珪素化合物、部分置換体、前記した珪素化合物や部分置換体の固溶体等が挙げられる。
珪素化合物としては、式SiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物、式SiCb(0<b<1)で表される珪素炭化物,式SiNc(0<c<4/3)で表される珪素窒化物,珪素と異種元素(A)との合金等が挙げられる。異種元素(A)としては、Fe,Co,Sb,Bi,Pb,Ni,Cu,Zn,Ge,In,Sn,又はTi等が挙げられる。また、部分置換体は、珪素及び珪素化合物に含まれる珪素原子の一部が、異種元素(B)で置換された化合物である。異種元素(B)の具体例としては、B,Mg,Ni,Ti,Mo,Co,Ca,Cr,Cu,Fe,Mn,Nb,Ta,V,W,Zn,C,N,又はSn等が挙げられる。これらの中では、珪素及び珪素化合物が好ましく、珪素酸化物が更に好ましい。
錫系活物質としては、錫、錫化合物、式SnOd(0<d<2)で表される錫酸化物、二酸化錫(SnO2)、錫窒化物、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金等の錫合金、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Sn等の錫化合物、これらの固溶体等が挙げられる。錫系活物質の中では、錫酸化物、錫合金、錫化合物等が好ましい。
負極集電体12aに支持される負極活物質層12bの形態としては、負極集電体12aの表面に合金系活物質と導電材と結着剤とを含有する合剤ペーストを塗布して得られる負極合剤層からなる負極活物質層や、負極集電体12aの表面に気相法により形成された薄膜状の合金系活物質からなる負極活物質層や、負極集電体12aの表面に気相法により形成された複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層が挙げられる。これらの中では、気相法により形成された負極活物質層が好ましく、気相法により形成された、複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層が特に好ましい。
気相法の具体例としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法、プラズマ化学気相成長法、溶射法等が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が好ましい。なお、気相法による合金系活物質からなる負極活物質層の製造方法については、後に詳しく説明する。
また、負極活物質層12bのうち、気相法により形成された負極活物質層は、その表面が凹凸又はクラックの存在による高い表面粗度を有することが好ましい。前記負極活物質層の表面が高い表面粗度を有する場合には、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が高く、合金系活物質の体積変化が起っても、樹脂層13の剥離が抑制される。
特に、負極集電体の表面に支持された複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層は、柱状体間に空隙を有する。このような表面の粗さや空隙が樹脂層13に対してアンカー効果を発揮することにより、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が向上する。そして、充放電に伴い合金系活物質が膨張及び収縮を繰り返しても、樹脂層13の負極活物質層12bからの剥離が抑制される。その結果、樹脂層13により新生面を保護する効果が持続する。
また、気相法により負極活物質層を形成した後に、その表面の少なくとも一部に予め凹凸やクラックを形成させておいた場合には、充放電の繰返しによって新たなクラックが発生して新生面が生成しにくくなる。その結果、新生面と非水電解質との接触による副反応が起こり難くなる。
気相法により形成された負極活物質層の表面に予め設けられる、凹凸の凹部及びクラックの寸法は特に制限されないが、長さ0.1〜20μm、幅0.1〜5μm及び深さ0.1〜20μmであることが好ましい。長さ、幅及び深さの少なくとも1つが前記範囲にあれば、アンカー効果が発生し、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が確実に向上する。また、充放電に伴うクラックの発生及び新生面の生成が減少する。
気相法により形成された負極活物質層の表面に凹凸又はクラックを形成するには、堆積法、表面調整法等を利用できる。堆積法では、負極集電体の表面に、後述するように合金系活物質の薄膜を複数回に分けて形成する。
また、表面調整法では、まず、負極集電体の表面粗度を高める。その方法には、機械的研削、化学的エッチング、電気化学的エッチング、研磨材による研磨、めっき等がある。負極集電体の表面粗度を高めた後に、気相法により負極活物質層を形成すると、負極集電体表面の微細な凹凸又はクラックが、負極活物質層の表面に精確に再現される。これにより、負極活物質層表面に凹凸又はクラックが形成される。
負極活物質層の厚さは特に限定されないが、具体的には、例えば、1〜数十μmであり、さらには1〜20μmであることが好ましい。負極活物質層の厚さがこのような範囲である場合には、新生面の大部分が負極活物質層の表面近傍に現れる。その結果、新生面が樹脂層13に充分保護されることにより、新生面と非水電解質との接触が抑制される。これにより、新生面と非水電解質との副反応が抑制される。
なお、負極活物質層12bの表面に樹脂層13を形成する前に、負極活物質層12bには不可逆容量に相当する量のリチウムを蒸着させてもよい。不可逆容量とは、初回充放電時に負極活物質層12bに蓄えられ、その後負極活物質層12bから放出されないリチウムの量である。
次に、負極活物質層12bの表面に形成された樹脂層13について説明する。
樹脂層13は、負極活物質の膨張及び収縮に伴って生じる新生面と非水電解質との接触を抑制する。また、樹脂層13は、非水電解質用添加剤を含有する。樹脂層13に含有される非水電解質用添加剤は、非水電解質に徐々に放出される。これにより、充放電サイクルを繰り返すことにより非水電解質中の非水電解質用添加剤の濃度が低減しても、非水電解質中に樹脂層13から非水電解質用添加剤が供給される。それにより、合金系活物質を含有する負極12を備えた非水電解質二次電池1において、寿命特性を向上させることができる。
樹脂層13は、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する。
リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分は、リチウムイオンを伝導させることが可能な樹脂成分であれば特に限定されない。リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分の具体例としては、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示すようになる樹脂成分、支持塩を配合することによりリチウムイオン伝導性が付与された樹脂成分等が挙げられる。支持塩を配合する樹脂成分は、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分でもよく、有しない樹脂成分でも良い。
このような樹脂成分の具体例としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、フッ素樹脂が負極活物質層12bとの密着性や、機械的強度、非水電解質用添加剤との相溶性等に優れる点から好ましい。
フッ素樹脂の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとを共重合させる場合、重合比率を適宜選択することにより、得られる共重合体の特性を変更できる。オレフィン系モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン等が挙げられる。これらの中では、PVDF、フッ化ビニリデン(VDF)とHFPとの共重合体が好ましく、VDFとHFPとの共重合体がさらに好ましい。VDFとHFPとの共重合割合は特に制限されないが、好ましくは、VDF:HFP=70〜99.9質量%:0.01〜30質量%であり、さらに好ましくは、VDF:HFP=80〜95質量%:5〜20質量%である。
非水電解質用添加剤としては、従来から非水電解質に添加されている各種添加剤が特に限定なく用いられうる。その具体例としては、例えば、カーボネート化合物、含硫黄環状化合物、酸無水物、ニトリル化合物等が挙げられる。
カーボネート化合物は、負極表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成して副反応を抑制することにより、電池の寿命特性を向上させる添加剤である。カーボネート化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びジビニルエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
含硫黄環状化合物は、正極に被膜を形成して、高温環境下で電池内部でのガス発生を抑制する添加剤である。含硫黄環状化合物としては、その分子中に基=SO2及び前記基=SO2に含有される酸素原子以外の酸素原子を含有する環状化合物が好ましい。その具体例としては、例えば、エチレンサルファイト、スルトン類等が挙げられる。また、スルトン類の具体例としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸無水物は、負極にリチウムイオン伝導性被膜を形成して、非水溶媒の還元分解を抑制する添加剤である。酸無水物の具体例としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトリル化合物は、正極表面に吸着し、高温環境下で電池内部でのガス発生を抑制する添加剤である。ニトリル化合物の具体例としては、例えば、スクシノニトリル(NC−CH2−CH2−CN)、グルタロニトリル(NC−CH2−CH2−CH2−CN)、アジポニトリル(NC−CH2−CH2−CH2−CH2−CN)等の、炭素数2〜4の直鎖状アルキレン基の両端にシアノ基が結合したニトリル化合物等が挙げられる。
樹脂層13中に含まれる非水電解質用添加剤の含有割合は、非水電解質用添加剤の種類に応じて適宜選択されるが、樹脂層13全量中、通常0.1〜50質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。
非水電解質用添加剤の含有割合が少なすぎる場合には、非水電解質用添加剤の効果が長期的に持続しない傾向がある。一方、非水電解質用添加剤の含有割合が多すぎる場合には、樹脂層13の機械的強度及び負極活物質層12bとの密着性が低下することにより、樹脂層13が負極活物質層12bから剥離し易くなる傾向がある。
樹脂層13のリチウムイオン伝導性を向上させるために、支持塩としてリチウム塩を樹脂層13に含有させてもよい。リチウム塩としては、非水電解質二次電池の支持塩として用いられているものが特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiPF6,LiAlCl4,LiSbF6,LiSCN,LiCF3SO3,LiCF3CO2,LiAsF6,LiB10Cl10,低級脂肪族カルボン酸リチウム,LiCl,LiBr,LiI,LiBCl4,ホウ酸塩類,イミド塩類等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、リチウム塩を添加しなくても、リチウムイオン伝導性を有する樹脂層13は得られる。すなわち、樹脂層13が非水電解質により膨潤することにより、リチウムイオン伝導性を有する樹脂層13が得られる。
樹脂層13の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜20μmであり、好ましくは1〜10μmである。樹脂層13の厚みが薄すぎる場合には、新生面と非水電解質との接触を充分に抑制できない傾向がある。また、樹脂層13中の非水電解質用添加剤の放出を制御することが困難になる傾向がある。一方、樹脂層13の厚みが厚すぎる場合には、樹脂層13のリチウムイオン伝導性が低下することにより、電池の出力特性、サイクル特性、保存特性等が低下するおそれがある。
樹脂層13は、例えば、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する樹脂溶液を負極活物質層12bの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより得られる。このような樹脂溶液は、例えば、樹脂成分、非水電解質用添加剤及び必要に応じて配合されるリチウム塩を有機溶媒に溶解又は分散させることにより調製できる。有機溶媒としては、ジメチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のカーボネート類,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類,ジメチルアミン,アセトン,シクロヘキサノン等が挙げられる。
樹脂溶液中の樹脂成分の濃度は特に限定されないが、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。樹脂成分の濃度がこのような範囲の場合には、負極活物質層12bの表面との密着性が良好で、均一な厚みの樹脂層13が形成される。また、負極活物質層12bが空隙やクラックを有する場合には、空隙やクラックに樹脂成分が充分に侵入する。これにより、アンカー効果が発揮されて、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が充分に向上する。
樹脂溶液の粘度は、好ましくは0.1〜10cpsである。粘度は、粘度粘弾性測定装置(商品名:レオストレス600、英弘精機(株)製)を用いて70℃で測定される値である。樹脂溶液の粘度を前記範囲に調整することにより、負極活物質層12bが隙間やクラックを有する場合には、隙間やクラックに樹脂成分が充分に侵入する。
なお、負極活物質層12bが、気相法により形成された、負極集電体の表面に支持された複数の柱状体の合金系活物質の集合体からなる場合には、上記粘度範囲を有する樹脂溶液を用いることが特に好ましい。複数の柱状体の合金系活物質の集合体は、隣り合う柱状体間に空隙を有する。上記粘度範囲の樹脂溶液を用いることにより、この空隙に樹脂溶液を円滑に進入させることができる。その結果、複数の柱状体間に形成される空隙により、高いアンカー効果が得られる。
樹脂溶液は、公知の塗布方法により、負極活物質層12bの表面に塗布される。塗布方法には、スクリーン印刷、ダイコート、コンマコート、ロールコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、エアーナイフコート、リバースコート、ディップスクイズコート等がある。樹脂層13の厚さは、例えば、樹脂溶液の塗布量、樹脂溶液の合成樹脂含有割合、樹脂溶液の粘度等を変更することにより調整できる。
次に、正極11について詳しく説明する。正極11は、正極集電体11aと正極集電体11aの表面に支持された正極活物質層11bとを含む。
正極集電体11aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料、導電性樹脂等が挙げられる。導電性基板としては、平板や多孔板等が用いられる。多孔板の具体例としては、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布等が挙げられる。平板としては、箔、シート、フィルム等が挙げられる。導電性基板の厚さは特に限定されないが、例えば、通常1〜500μmであり、好ましくは1〜50μmである。
正極活物質層11bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含み、正極集電体11aの片面又は両面に形成される。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる各種正極活物質を用いることができる。その具体例としては、リチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸リチウムが挙げられる。
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物、又は前記金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素により置換された金属酸化物である。
遷移金属元素としては、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr等が挙げられる。遷移金属元素の中では、Mn、Co、Ni等が好ましい。
また、異種元素としては、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、B等が挙げられる。異種元素の中では、Mg、Al等が好ましい。遷移金属元素及び異種元素は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム含有複合酸化物の具体例としては、例えば、Li1CoO2、LilNiO2、LilMnO2、LilComNi1-m2、LilCom1-mn、LilNi1-mmn、LilMn24、LilMn2-mm4(前記各式中、MはSc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。0<l≦1.2、0≦m≦0.9、2.0≦n≦2.3)等が挙げられる。これらの中では、LilCom1-mnが好ましい。
オリビン型リン酸リチウムの具体例としては、LiXPO4、Li2XPO4F(前記各式中、XはCo、Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す)等が挙げられる。
なお、リチウム含有複合酸化物及びオリビン型リン酸リチウムを示す前記各式においては、リチウムのモル数は正極活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。また、正極活物質はそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層11bは、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を有機溶媒に分散させてなる正極合剤スラリーを正極集電体11aの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延することにより形成される。
結着剤の具体例としては、ポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,アラミド樹脂,ポリアミド,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリアクリロニトリル,ポリアクリル酸,ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ヘキシル,ポリメタクリル酸,ポリメタクリル酸メチル,ポリメタクリル酸エチル,ポリメタクリル酸ヘキシル,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルピロリドン,ポリエーテル,ポリエーテルサルホン,ポリヘキサフルオロプロピレン等の樹脂材料;スチレンブタジエンゴム,変性アクリルゴム等のゴム材料;カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子材料等が挙げられる。
また、樹脂材料として、2種類以上のモノマー化合物を含有する共重合体を使用できる。モノマー化合物には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等がある。
結着剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層11bには、必要に応じて導電剤が含まれてもよい。導電剤の具体例としては、例えば、天然黒鉛,人造黒鉛等のグラファイト類;アセチレンブラック,ケッチェンブラック,チャンネルブラック,ファーネスブラック,ランプブラック,サーマルブラック等のカーボンブラック類;炭素繊維,金属繊維等の導電性繊維類;アルミニウム等の金属粉末類;酸化亜鉛,チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類;酸化チタン等の導電性金属酸化物;フェニレン誘導体等の有機導電性材料;フッ化カーボン等が挙げられる。導電剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン,ジメチルアミン,アセトン,シクロヘキサノン等が挙げられる。
次にセパレータ14について詳しく説明する。
セパレータ14は、正極11と負極12との間に介在するように配置されるリチウムイオン透過性の絶縁層である。セパレータ14は、負極12側ではその表面の少なくとも一部が樹脂層13の表面と接触していてもよい。
セパレータ14には、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持ち、細孔を有する多孔質シートを使用できる。多孔質シートには、微多孔膜、織布、不織布等がある。微多孔膜は単層膜及び多層膜のいずれでもよい。単層膜は1種の材料からなる。多層膜は複数の単層膜の積層体である。多層膜には、同じ材料からなる複数の単層膜の積層体、2種以上の異なる材料からなる単層膜の積層体等がある。また、微多孔膜、織布、不織布等を2層以上積層してもよい。
セパレータ14の材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ14の厚さは、通常10〜300μm、好ましくは10〜30μmである。セパレータ14の空孔率は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜60%である。空孔率は、セパレータ14の体積に対する、セパレータ14が有する細孔の総容積の百分率である。
セパレータ14には、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質が含浸される。非水電解質には、液状非水電解質、ゲル状非水電解質等がある。
液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。
溶質には、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等がある。
ホウ酸塩類には、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等がある。
イミド塩類には、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO2)(C49SO2)NLi)、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)等がある。
溶質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非水溶媒1リットルにおける溶質の濃度は、好ましくは0.5〜2モルである。
非水溶媒の具体例としては、例えば、環状炭酸エステル,鎖状炭酸エステル,環状カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジメチルカーボネート等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤には、上記した非水電解質用添加剤、電池を不活性化させる添加剤(以下「不活性化剤」とする)等がある。不活性化剤には、フェニル基と、フェニル基に隣接する環状化合物基とを含むベンゼン化合物がある。環状化合物基には、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基等がある。ベンゼン化合物には、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等がある。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と樹脂材料とを含有する。樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリアクリロニトリル,ポリエチレンオキサイド,ポリ塩化ビニル,ポリアクリレート等が挙げられる。
ゲル状非水電解質に、非水電解質用添加剤を添加した場合、ゲル状非水電解質を樹脂層13としても使用できる。例えば、非水電解質用添加剤を含有するゲル状非水電解質を調製し、このゲル状非水電解質を負極活物質層12b表面に塗布し、ゲル状非水電解質中の非水溶媒の適量を加熱により除去すればよい。これにより、樹脂層13を兼ねるゲル状非水電解質が、負極活物質層12b表面に形成される。
また、負極活物質層12b表面に樹脂層13が形成された負極12を用いて電極群を作製し、この電極群を電池ケースに収容し、電池ケース内に液状非水電解質を注液してもよい。これにより、負極活物質層12b表面の樹脂層13がゲル化し、樹脂層13を兼ねるゲル状非水電解質層が形成される。
本実施形態では、リチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ14を使用するが、それに限定されず、無機酸化物粒子層を用いてもよい。また、セパレータ14と無機酸化物粒子層とを併用してもよい。無機酸化物粒子層は、リチウムイオン透過性絶縁層として機能するとともに、短絡発生時における電池の安全性を向上させる。また、無機酸化物粒子層とセパレータ14とを併用すると、セパレータ14の耐用性が顕著に向上する。無機酸化物粒子層は正極活物質層11b及び負極活物質層12bの少なくとも一方の表面に形成できるが、正極活物質層11bの表面に形成するのが好ましい。
無機酸化物粒子層は、無機酸化物粒子及び結着剤を含有する。無機酸化物には、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、カルシア等がある。結着剤には、正極活物質層の形成に用いるものと同様の結着剤を使用できる。無機酸化物粒子及び結着剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機酸化物粒子層における無機酸化物粒子の含有量は、好ましくは無機酸化物粒子層全量の90〜99.5質量%、さらに好ましくは95〜99質量%であり、残部が結着剤である。
無機酸化物粒子層は、正極活物質層11bと同様にして形成できる。例えば、無機酸化物及び結着剤を有機溶媒に溶解又は分散させてスラリーを調製し、このスラリーを正極活物質層11b又は負極活物質層12bの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより、無機酸化物粒子層を形成できる。有機溶媒には、正極合剤スラリーに含有されるのと同じ有機溶媒を使用できる。無機酸化物粒子層の厚さは、好ましくは1〜10μmである。
また、本実施形態ではリチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ14を使用するが、セパレータ14に代えて固体電解質層を用いても良い。固体電解質層を用いる場合は、通常非水電解質は用いる必要はないが、電池内でのリチウムイオン伝導性をさらに向上させるために、非水電解質と固体電解質とを併用してもよい。固体電解質層は、固体電解質を含有する。固体電解質には、無機固体電解質及び有機固体電解質がある。
無機固体電解質には、硫化物系無機固体電解質、酸化物系無機固体電解質、硫化物系及び酸化物系以外の無機固体電解質等がある。無機固体電解質からなる固体電解質層は、蒸着、スパッタリング、レーザアブレーション、ガスデポジション、エアロゾルデポジション等により形成できる。
有機固体電解質には、イオン伝導性ポリマー類、ポリマー電解質等がある。イオン伝導性ポリマー類には、相転移温度の低いポリエーテル、無定形フッ化ビニリデンコポリマー、異種ポリマーのブレンド物等がある。ポリマー電解質は、マトリックスポリマーとリチウム塩とを含む。マトリックスポリマーには、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリカーボネート等がある。リチウム塩には、液状非水電解質に含有されるのと同じリチウム塩を使用できる。
以下、負極12に代えて用いられる、負極集電体21の表面に、気相法により複数の柱状体24の合金系活物質の集合体からなる負極活物質層23を形成して得られた負極20の形成方法の一例について詳しく説明する。
図2は、負極集電体21の構成を模式的に示す上面図である。図3は、負極集電体21の表面に合金系活物質からなる柱状体24が支持されてなる負極20の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、負極20に含まれる柱状体24の構成を模式的に示す縦断面図である。図7は、電子ビーム式蒸着装置30の構成を模式的に示す側面図である。
負極20は、負極集電体21と、複数の柱状体24を含む負極活物質層23とからなる。負極活物質層23は、複数の柱状体24の集合体である。
図2及び図3に示すように、負極集電体21の表面には複数の凸部22が設けられている。
凸部22は、負極集電体21の表面21a(以下単に「表面21a」とする)から、外方に向けて延びる突起である。本実施形態では、複数の凸部22は、図2に示すように、表面21aに千鳥配置されているが、それに限定されず、最密充填配置、格子配置等でもよい。
凸部22の高さは、平均高さとして好ましくは3〜10μmである。凸部22の高さは、負極集電体21の厚さ方向の断面において定義される。負極集電体21の断面は、凸部22の延びる方向における最先端点を含む断面とする。負極集電体21の断面において、前記最先端点から表面21aに降ろした垂線の長さが、凸部22の高さである。凸部22の平均高さは、例えば、負極集電体21の断面を走査型電子顕微鏡で観察して100個の凸部22の高さを測定し、得られる測定値の平均値として求められる。
凸部22の幅は、好ましくは1〜50μmである。凸部22の幅は、前記した負極集電体21の断面において、表面21aに平行な方向における凸部22の最大長さである。凸部22の幅も、凸部22の高さと同様に、100個の凸部22の幅を測定し、測定値の平均値として求められる。なお、複数の凸部22を全て同じ高さ及び/又は同じ幅に形成する必要はない。
凸部22の形状は、本実施形態では菱形であるが、それに限定されず、円形、多角形、楕円形、平行四辺形、台形等でもよい。凸部22の形状は、表面21aを水平面に一致させた状態での、凸部22の鉛直方向上方からの正投影図における形状である。
凸部22は、本実施形態では頂部(凸部22の成長方向の先端部)が平面であり、この平面は表面21aにほぼ平行である。この平面には、ミクロンサイズ又はナノサイズの凹凸があってもよい。凸部22の頂部が平面であることにより、凸部22と柱状体24との接合強度が高まる。この平面が表面21aにほぼ平行であることにより、前記接合強度がさらに高まる。
凸部22の個数及び凸部22の軸線間距離は、凸部22の寸法(高さ、幅等)、凸部22表面に形成される柱状体24の寸法等に応じて選択される。凸部22の個数は、好ましくは1万個/cm2〜1000万個/cm2である。凸部22の軸線間距離は、好ましくは2μm〜100μmである。
凸部22の軸線は、凸部の形状が円形である場合は、その円形を内包する最も小さな真円の中心を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部22の形状が楕円形である場合、凸部22の軸線は、前記楕円形の長軸と短軸との交点を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部22の形状が菱形、多角形、平行四辺形、台形等の対角線を有する形状である場合、凸部22の軸線は、前記形状の対角線の交点を通り、表面21aに垂直に延びる仮想線である。
凸部22は、その表面(頂部及び側面)に少なくとも1つの突起を有していてもよい。これにより、凸部22と柱状体24との接合強度がさらに高まり、柱状体24の凸部22からの剥離が一層顕著に抑制される。突起は、凸部22表面から外方に延び、凸部22よりも寸法が小さい。突起の立体形状には、円筒状、角柱状、円錐状、角錐状、針状、襞状(一方向に延びる山脈状)等がある。凸部22の側面に形成される襞状の突起は、凸部22の周方向及び成長方向のいずれに延びていてもよい。
負極集電体21は、金属板に凹凸を形成する技術を利用して製造できる。金属板には、金属箔、金属シート、金属フィルム等を使用できる。金属板の材質は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料である。金属板に凹凸を形成する技術には、ローラ加工法がある。
ローラ加工法では、複数の凹部が表面に形成されたローラ(以下「凸部用ローラ」とする)を用いて、金属板を機械的にプレス加工する。これにより、金属板の表面に、凹部の寸法、その内部空間の形状、個数及び配置に対応する凸部22が形成された負極集電体21が得られる。
2つの凸部用ローラをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚さ方向の両方の表面に凸部22が形成された負極集電体21が得られる。凸部用ローラと表面が平滑なローラとをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚さ方向の片方の表面に凸部22が形成された負極集電体21が得られる。ローラの圧接圧は、金属板の材質及び厚さ、凸部22の形状及び寸法、負極集電体21の厚さの設定値等に応じて適宜選択される。
凸部用ローラは、表面に凹部が形成されたセラミックローラである。セラミックローラは、芯用ローラ及び溶射層を含む。芯用ローラには、鉄製ローラ、ステンレス鋼製ローラ等を使用できる。溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を芯用ローラ表面に均一に溶射することにより形成できる。溶射層に凹部が形成される。凹部の形成には、セラミック材料等の成形加工に用いられるレーザを使用できる。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ、下地層及び溶射層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。下地層は芯用ローラ表面に形成される樹脂層である。下地層表面に凹部が形成される。下地層は、樹脂シートの一方の表面に凹部を形成した後、この樹脂シートの凹部が形成されていない面と芯用ローラ表面とが接触するように、この樹脂シートを芯用ローラに巻きつけて接着することにより形成される。
下地層の材料としては、機械的強度の高い合成樹脂を使用する。このような合成樹脂の具体例としては、例えば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を下地層表面の凹凸に沿うように溶射することにより形成される。したがって、下地層に形成される凹部は、凸部22の設計寸法よりも溶射層の層厚分だけ大きめに形成するのが好ましい。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ及び超硬合金層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。超硬合金層は芯用ローラの表面に形成され、炭化タングステン等の超硬合金を含む。超硬合金層は、焼き嵌め及び冷やし嵌めにより形成できる。焼き嵌めは、円筒状の超硬合金を暖めて膨張させ、芯用ローラに嵌めることである。冷やし嵌めは、芯用ローラを冷却して収縮させ、超硬合金の円筒に挿入することである。超硬合金層の表面には、例えば、レーザ加工によって凹部が形成される。
別形態の凸部用ローラは、硬質鉄系ローラの表面に凹部が形成されたものである。硬質鉄系ローラは、少なくとも表層部がハイス鋼、鍛鋼等からなるローラである。ハイス鋼は、鉄にモリブデン、タングステン、バナジウム等の金属を添加し、熱処理して硬度を高めた鉄系材料である。鍛鋼は、鋼塊又は鋼片を加熱し、鍛造又は圧延及び鍛造して鍛錬成形し、さらに熱処理することにより製造される鉄系材料である。鋼塊は、溶鋼を鋳型に鋳込むことにより製造される。鋼片は、鋼塊から製造される。鍛造は、プレス及びハンマーにより行われる。凹部は、レーザ加工により形成される。
負極活物質層23は、図3に示すように、複数の柱状体24を含む。柱状体24は、凸部22表面から負極集電体21の外方に延びる。柱状体24は、表面21aに垂直な方向又は前記垂直な方向に対して傾斜した方向に延びる。また、互いに隣り合う一対の柱状体24間には、空隙が存在する。この空隙が、合金系活物質の体積変化による応力を緩和する。その結果、柱状体24の凸部22からの剥離、負極集電体21及び負極20の変形等が抑制される。
柱状体24は、図4に示すように、8個の柱状塊24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24hの積層体であることが好ましい。柱状体24は、より具体的には、次のようにして形成される。まず、凸部22の頂部及びそれに続く側面の一部を被覆するように柱状塊24aを形成する。次に、凸部22の残りの側面及び柱状塊24aの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊24bを形成する。すなわち、図4において、柱状塊24aは凸部22の頂部を含む一方の端部に形成される。一方、柱状塊24bは部分的には柱状塊24aに重なるが、柱状塊24aに重ならない部分は凸部22の他方の端部に形成される。
さらに、柱状塊24aの頂部表面の残り及び柱状塊24bの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊24cを形成する。すなわち、主に柱状塊24aに接するように、柱状塊24cを形成する。さらに、主に柱状塊24bに接するように、柱状塊24dを形成する。以下同様にして、柱状塊24e、24f、24g、24hを交互に積層することによって、柱状体24が形成される。なお、柱状塊の積層数は8個に限定されず、2個以上の任意の個数の柱状塊を積層できる。
柱状体24は、図7に示す電子ビーム式真空蒸着装置30(以下単に「蒸着装置30」とする)によって形成できる。図7では、蒸着装置30内部の各部材も実線で示す。蒸着装置30は、チャンバ31、第1配管32、固定台33、ノズル34、ターゲット35、図示しない電子ビーム発生装置、電源36及び図示しない第2配管を含む。
チャンバ31は耐圧性容器であり、その内部空間に第1配管32、固定台33、ノズル34、ターゲット35及び電子ビーム発生装置を収容する。
第1配管32は、一端がノズル34に接続され、他端がチャンバ31の外方に延びて図示しないマスフローコントローラを介して図示しない原料ガスボンベ又は原料ガス製造装置に接続される。第1配管32は、ノズル34に原料ガスを供給する。原料ガスには、酸素、窒素等がある。
固定台33は、回転自在に支持される板状部材であり、その厚さ方向の一方の表面に負極集電体21を固定できる。固定台33は、図7における実線で示す位置と一点鎖線で示す位置との間を回転する。実線で示す位置では、固定台33と水平線とが成す角の角度がα°である。一点鎖線で示す位置では、固定台33と水平線とが成す角の角度が(180−α)°である。角度α°は、柱状体24の寸法及び形状、柱状塊の積層数などに応じて適宜選択できる。
ノズル34は、固定台33とターゲット35との間に設けられ、第1配管32の一端が接続され、原料ガスを放出する。ターゲット35は合金系活物質の原料を収容する。電子ビーム発生装置は、ターゲット35に収容される合金系活物質の原料に電子ビームを照射して加熱する。これにより、合金系活物質の原料の蒸気が発生する。この蒸気は負極集電体21に向けて上昇し、ノズル34から放出されるガスと混合される。
電源36はチャンバ31の外部に設けられ、電子ビーム発生装置に電圧を印加する。第2配管は、チャンバ31内の雰囲気になるガスを導入する。なお、蒸着装置30と同じ構成を有する電子ビーム式真空蒸着装置が、例えば、アルバック(株)から市販されている。
蒸着装置30によれば、まず、負極集電体21を固定台33に固定し、チャンバ31内部に酸素ガスを導入する。次に、ターゲット35に電子ビームを照射し、合金系活物質原料の蒸気を発生させる。本実施形態では、合金系活物質原料は珪素である。蒸気は鉛直方向上方に上昇し、ノズル34周辺で原料ガスと混合される。蒸気と原料ガスとの混合物はさらに上昇し、固定台33に固定された負極集電体21の表面に供給される。これにより、図示しない凸部22表面に、珪素と酸素とを含む層が形成される。
このとき、固定台33を実線の位置に配置することにより、凸部表面に図4に示す柱状塊25aを形成する。次に、固定台33を一点鎖線の位置に回転させ、図4に示す柱状塊25bを形成する。このように固定台33の位置を交互に回転させることにより、図4に示す8つの柱状塊24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24hの積層体である柱状体24が、複数の凸部22の表面に同時に形成され、負極活物質層23が得られる。
ノズル34から原料ガスを供給しない場合は、合金系活物質の原料のみからなる柱状体24が形成される。また、負極集電体21に代えて負極集電体12aを用い、かつ固定台33を回転させず、水平方向に固定させると、負極活物質層12bを形成できる。
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池に備わる、リチウムイオン伝導性樹脂層28(以下「樹脂層28」とする)が形成された負極25の構成を模式的に示す縦断面図である。説明の都合上、図5の紙面において、負極集電体21側を最下部、樹脂層28側を最上部とする。負極25は第1実施形態の負極23に類似し、同じ構成部材には負極23と同一の参照符号を付して、説明を省略する。負極25は、負極集電体21、負極活物質層26、及び負極活物質層26の表面に形成される樹脂層28を含む。負極25は、2つの大きな特徴を有し、それ以外の構成は負極23と同じである。
1つ目の特徴は、負極活物質層26が、合金系活物質を含有する、複数の紡錘状の柱状体27を含むことである。負極活物質層26の表面には、柱状体27が存在する部分と存在しない部分とが交互に現れる。これが、見掛け上の凹凸になる。また、隣り合う一対の柱状体27間には、空隙が存在する。この凹凸及び空隙が顕著なアンカー効果を発現し、負極活物質層26と樹脂層28との密着性をさらに向上させる。
互いに隣り合う一対の柱状体27間の軸線間距離は、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは60〜100μmである。これにより、柱状体27間の空隙に樹脂溶液が円滑に流入し、樹脂層28を柱状体27間に容易に形成できる。柱状体27の軸線は、柱状体27の凸部22表面との接触面の中心を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。接触面の中心とは、接触面を内包できる最も小さい円の中心である。
柱状体27の形状を紡錘状にすると、凸部22の周囲には比較的大きな空間ができる。この空間が、柱状体27に含有される合金系活物質の膨張及び収縮を吸収する。このため、柱状体27では、充放電回数が増加してもクラックが生成し難い。したがって、新生面と非水電解質との接触による副生物及びガスの生成、非水電解質の無駄な消費等が抑制され、各種電池性能を低下させることがない。
柱状体27間の軸線間距離が小さすぎると、柱状体27間の空隙に樹脂溶液が流入し難くなるおそれがある。また、合金系活物質の体積膨張を十分に緩和又は吸収出来なくなる可能性がある。軸線間距離が大きすぎると、柱状体27の個数が少なくなり、負極25の容量が低下するおそれがある。紡錘状の柱状体27は、柱状体24と同様に、図7に示す電子ビーム式蒸着装置30において回転台33の回転角度及び柱状塊の積層数を調整することにより作製できる。
2つ目の特徴は、樹脂層28が、負極活物質層26の表面だけでなく、互いに隣り合う一対の柱状体27間の空隙に入り込んでいることである。樹脂層28は、柱状体27間の上部のみに存在し、負極集電体21の表面21aまで達していない。これにより、柱状体27間の空隙のアンカー効果が十分に発揮される。その結果、負極活物質層26と樹脂層28との密着性がさらに向上する。さらに、電池のサイクル特性、出力特性等の低下が顕著に抑制される。樹脂層28は、樹脂層13と同じ構成を有している。
また、非水電解質用添加剤を含有する樹脂層28が、柱状体27の頂部表面のほぼ全域に形成される。柱状体27の表面積の合計は、合金系活物質からなる薄膜状の負極活物質層の表面積よりも大きくなっている。したがって、樹脂層28の柱状体27と接触する面積も大きくなり、サイクル特性等の電池性能を向上させる効果が一層顕著になる。
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池に備わる、負極29の構成を模式的に示す縦断面図である。説明の都合上、図6の紙面において、負極集電体21側を最下部、リチウムイオン伝導性樹脂層28a(以下「樹脂層28a」とする)側を最上部とする。負極29は負極25に類似し、負極25と同じ構成部材には負極25と同一の参照符号を付して、説明を省略する。
負極29では、樹脂層28aが、互いに隣り合う一対の柱状体27間の空隙に入り込み、負極集電体21の表面21aにまで達している。すなわち、柱状体27間の空隙は、樹脂層28aで埋められている。樹脂層28aは、樹脂層13、28と同じ構成を有している。これにより、負極25と同じ効果が得られる。さらに、柱状体27間の空隙が樹脂層28aで埋められているので、負極活物質層26と樹脂層28aとの密着性がさらに高まる。
また、樹脂層28aは柔軟性を有しているので、合金系活物質の体積変化に追従可能である。したがって、樹脂層28aは、合金系活物質の体積変化に伴う不都合の発生を抑制するのに有効である。不都合とは、柱状体27の凸部22からの剥離、負極集電体21の変形、新生面の生成、負極集電体表面21aへのリチウムの析出等である。
したがって、本実施形態により、新生面と非水電解質との接触の抑制と、合金系活物質の体積変化の緩和又は吸収とを、高水準で両立できる。また、図5に示す負極25と同様に、非水電解質添加剤を含有する樹脂層28aと柱状体27との接触面積がさらに大きくなるので、非水電解質添加剤の効果が一層顕著に発揮される。
本実施形態では、柱状体27間の空隙を埋めるように樹脂層28aが形成されているが、それに限定されず、例えば、柱状体27の表面のみに樹脂層を形成してもよい。この場合、樹脂層の層厚を小さくすることにより、柱状体27間に空隙が存在するように構成するのが好ましい。
前述の各実施形態では、積層型電極群を含む非水電解質二次電池1を例に挙げて説明したが、それに限定されず、本発明の非水電解質二次電池は捲回型電極群又は扁平型電極群を含んでいてもよい。捲回型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを捲回した電極群である。扁平型電極群は、例えば、捲回型電極群を扁平状に成形した電極群である。扁平型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを板に巻き付けることによっても作製できる。
本発明の非水電解質二次電池の形状には、円筒型、角型、扁平型、コイン型、ラミネートフィルム製パック型等がある。
以下に実施例及び比較例ならびに試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO4水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)になるように硫酸コバルトを加えて金属イオン濃度2mol/Lの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)2で示される組成を有する二元系の沈殿物を生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。
この複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱し、Ni0.85Co0.152で示される組成を有する複合酸化物を得た。次に、Ni及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等しくなるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱することより、LiNi0.85Co0.152で示される組成を有し、二次粒子の体積平均粒径が10μmであるリチウムニッケル含有複合酸化物である正極活物質を得た。
(2)正極の作製
前記で得られた正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを充分に混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延し、厚さ120μmの正極活物質層を形成した。
(3)負極の作製
図8は、電子ビーム式真空蒸着装置40(以下単に「蒸着装置40」とする)の構成を模式的に示す側面図である。蒸着装置40は、チャンバ41、搬送手段42、ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51及び不図示の電子ビーム発生装置を含む。
チャンバ41は耐圧性容器であり、搬送手段42、ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51及び電子ビーム発生装置を収容する。
搬送手段42は、巻き出しローラ43、キャン44、巻き取りローラ45及び搬送ローラ46、47を含む。巻き出しローラ43、キャン44及び搬送ローラ46、47は、それぞれ軸心回りに回転自在に設けられる。巻き出しローラ43には長尺状の負極集電体12aが巻き付けられる。キャン44は、その内部に不図示の冷却手段を備える。キャン44表面を搬送される際に負極集電体12aが冷却され、負極集電体12aの表面に合金系活物質が析出し、合金系活物質を含む薄膜状負極活物質層が形成される。
巻き取りローラ45は図示しない駆動手段により軸心回りに回転駆動可能に設けられている。巻き取りローラ45には負極集電体12aの一端が固定され、巻き取りローラ45が回転することにより、負極集電体12aが巻き出しローラ43から搬送ローラ46、キャン44及び搬送ローラ47を経由して搬送される。そして、負極集電体12aの表面に薄膜状負極活物質層が形成された負極12が巻き取りローラ45に巻き取られる。
ガス供給手段48は、酸素、窒素等の原料ガスをチャンバ41内に供給する。プラズマ化手段49は、ガス供給手段48から供給される原料ガスをプラズマ化する。シリコンターゲット50a、50bは、珪素を含有する薄膜状負極活物質層を形成する場合に用いられる。遮蔽板51は、キャン44とシリコンターゲット50a、50bとの間において、水平方向に移動可能に設けられる。遮蔽板51は、薄膜状負極活物質層の形成状況に応じて、水平方向の位置が調整される。電子ビーム発生装置は、シリコンターゲット50a、50bに電子ビームを照射し、珪素の蒸気を発生させる。
蒸着装置40を用いて、下記の条件で、負極集電体12a表面に、厚さ6μmの薄膜状負極活物質層(シリコン薄膜、ベタ膜)を形成し、負極12を作製した。
チャンバ41内の圧力:8.0×10-5Torr
負極集電体12a:長さ50m、幅10cm、厚さ35μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)
負極集電体12aの巻き取り速度:2cm/分
原料ガス:供給せず。
ターゲット50a、50b:純度99.9999%のシリコン単結晶(信越化学工業(株)製)
電子ビームの加速電圧:−8kV
電子ビームのエミッション:300mA
得られた負極12を35mm×35mmに裁断し、負極板を作製した。この負極板の薄膜状負極活物質層にリチウム金属を蒸着し、初回充放電時に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。リチウム金属の蒸着は、抵抗加熱蒸着装置((株)アルバック製)を用いて行った。抵抗加熱蒸着装置内のタンタル製ボートにリチウム金属を装填し、薄膜状負極活物質層がタンタル製ボートに面するように負極板を固定し、アルゴン雰囲気内にて、タンタル製ボートに50Aの電流を通電して10分間蒸着した。
(4)リチウムイオン伝導性樹脂層の形成
VDFとHFPとの共重合体(VDF:HFP=88質量%:12質量%)であるフッ素樹脂をジメチルカーボネートに溶解し、得られた溶液にビニレンカーボネート(以下「VC」とする)を添加し、80℃に加熱して樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を用いて形成される樹脂層は、後工程で非水電解質と接触することにより、リチウムイオン伝導性樹脂層になる。樹脂溶液中のフッ素樹脂及びVCの濃度は、リチウムイオン伝導性樹脂層におけるフッ素樹脂及びVCの含有割合がそれぞれ5質量%及び2質量%になるように調整した。
樹脂溶液(80℃、粘度70cps)中に、リチウム金属を蒸着させた負極板を1分間浸漬した。その後、負極板を樹脂溶液から取り出してガラス板に載せ、80℃で10分間の温風乾燥を施した。得られた負極板をレーザ顕微鏡で観察したところ、負極板の表面には、厚さ約2μmの樹脂層が形成されていた。また、樹脂層の付着量は0.34mg/cm2であった。この樹脂層は、前記したように、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性樹脂層になる。
(5)積層型電池の作製
前記で得られた正極板及び負極板を、それぞれ、1.5cm×1.5cmの大きさに裁断した。その後、正極板と負極板とを、両者の間に厚さ20μmのポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、旭化成(株)製)を介在させて積層し、電極群を作製した。アルミニウムリードの一端を正極集電体に溶接し、ニッケルリードの一端を負極集電体に溶接した。
この電極群をラミネートフィルム製外装ケース(大きさ2cm×2cm)に挿入した。次いで、液状非水電解質0.5mlを外装ケース内に注液した。これにより、負極板表面の樹脂層は液状非水電解質で含浸された。液状非水電解質には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水電解質を用いた。
次に、アルミニウムリード及びニッケルリードの他端をそれぞれ外装ケース両端の開口から外部に導出した。さらに、外装ケース内部の真空減圧下に、外装ケースの開口を溶着させて、非水電解質二次電池を作製した。
(実施例2)
次のようにして作製した負極を使用する以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
[負極の作製]
径50mmの鉄製ローラ表面に酸化クロムを溶射して厚さ100μmのセラミック層を形成した。このセラミック層の表面に、レーザ加工により、直径12μm、深さ8μmの円形の凹部を形成し、凸部用ローラを作製した。凹部は千鳥配置とし、互いに隣り合う一対の凹部の軸線間距離を20μmとした。この凹部の底部は中央がほぼ平面状であり、底部周縁部と側面との境界部分は丸みを帯びていた。
0.03質量%のジルコニウムを含有する合金銅箔(商品名:HCL−02Z、厚さ20μm、日立電線(株)製)を、アルゴンガス雰囲気中、600℃で30分間加熱し、焼き鈍しを行った。この合金銅箔を、前記で得られた凸部用ローラと表面が平滑な径50mmの鉄製ローラとを圧接させて形成した圧接部に、線圧2t/cmで通過させて加圧成形した。これにより、厚さ方向の一方の表面に複数の凸部が形成された負極集電体を作製した。
得られた負極集電体の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、負極集電体の表面には凸部が形成されていた。凸部の平均高さは約6μmであった。更に、凸部の表面に電解めっきを施し、複数の粒径約2μmの銅粒子を凸部表面に付着させた。最終的に得られた負極集電体の凸部の平均高さは、銅粒子の付着により、約8μmであった。凸部表面に銅粒子を付着させることにより、後記する柱状体と凸部との接合強度が向上した。この負極集電体を20mm×100mmに裁断した。
図7に示す電子ビーム式蒸着装置30と同じ構造を有する市販の蒸着装置((株)アルバック製)を用い、前記で得られた負極集電体の凸部表面に柱状体を形成した。これにより複数の柱状体を含む薄膜状負極活物質層を形成した。蒸着条件は、下記の通りである。なお、負極集電体を固定した固定台が、水平線に対する角度α=60°の位置(図7に示す実線の位置)と、角度(180−α)=120°の位置(図7に示す一点鎖線の位置)との間を回転するように設定した。これにより、図3又は図4に示すような柱状塊が8層積層された複数の柱状体を形成した。各柱状体は凸部の頂部及び頂部近傍の側面から、負極集電体の外方に延びるように成長していた。
負極活物質原料(蒸発源):珪素、純度99.9999%、(株)高純度化学研究所製
ノズルから放出される酸素:純度99.7%、日本酸素(株)製、
ノズルからの酸素放出流量:80sccm
角度α:60°
電子ビームの加速電圧:−8kV
エミッション:500mA
蒸着時間:3分
得られた負極の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、10個の柱状体の高さ(凸部頂点から柱状体頂点までの長さ)を測定し、平均値を求めた。この平均値は、薄膜状負極活物質層の厚さであり、22μmであった。また、薄膜状負極活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量したところ、柱状体の組成がSiO0.5であることが判った。
薄膜状負極活物質層の表面に実施例1と同様にしてリチウム金属を蒸着し、初回充放電時に薄膜状負極活物質層に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。
(比較例1)
リチウムイオン伝導性樹脂層を形成しない以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
(試験例1)
実施例1〜2及び比較例1の各非水電解質二次電池を、次の評価試験に供した。
[サイクル特性]
実施例1〜2及び比較例1の各電池について、20℃環境下で、下記の条件で定電流充電、定電圧充電及び定電流放電を行い、1サイクル目の充放電を実施した。この時の放電容量を、初回放電容量とした。1Cとは、全電池容量を1時間で使い切ることができる電流値である。
定電流充電:電流0.7C、充電終止電圧4.2V
定電圧充電:充電終止電流0.05C、電圧4.2V
定電流放電:電流0.2C、放電終止電圧2.5V
その後、定電流放電時の電流を0.2Cから1Cに変更する以外は、前記と同様にして、充放電を98サイクル実施した。100サイクル目の充放電は、1サイクル目の充放電と同じ条件で実施した。このときの放電容量を100サイクル後放電容量とした。
そして、初回放電容量に対する100サイクル後放電容量の百分率を容量維持率(%)として求めた。結果を表1に示す。
[電池の膨れ]
100サイクル後の電極群の厚さT及びサイクル特性の評価前の電極群の厚さT0を測定し、下記式から電池の膨れ(%)を求めた。結果を表1に示す。
電池の膨れ(%)=[(T−T0)/T0]×100
Figure 2010092815
表1から、実施例1及び2の電池は、100サイクル経過後でも、サイクル特性が高い水準に維持され、且つ電池の膨れが抑制されていることが判る。これは、薄膜状負極活物質層の表面にリチウムイオン伝導性樹脂層を形成することにより、合金系活物質にクラックが発生し、新生面が生成しても、リチウムイオン伝導性樹脂層が新生面と非水電解質との接触を抑制するためであると推測される。
また、実施例1と実施例2との比較から、薄膜状負極活物質層が、べた膜ではなく、複数の柱状体からなる場合は、サイクル特性がさらに高水準に維持され、電池の膨れがさらに抑制されることが判る。これは、薄膜状負極活物質層が複数の柱状体を含むことから、薄膜状負極活物質層とリチウムイオン伝導性樹脂層との密着性がさらに向上するためであると推測される。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
本発明の非水電解質二次電池は、従来の非水電解質二次電池と同様の用途に使用でき、特に、電子機器、電気機器、工作機器、輸送機器、電力貯蔵機器等の主電源又は補助電源として有用である。電子機器には、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末、携帯用ゲーム機器等がある。電気機器には、掃除機、ビデオカメラ等がある。工作機器には、電動工具、ロボット等がある。輸送機器には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインHEV、燃料電池自動車等がある。電力貯蔵機器には、無停電電源等がある。
本発明は、非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池に関する。より詳しくは、本発明は主に、合金系活物質を含有する非水電解質二次電池用負極の改良に関する。
非水電解質二次電池は、容量及びエネルギー密度が高く、小型化及び軽量化が容易なことから、電子機器、電気機器、輸送機器、工作機器、電力貯蔵機器等の電源として広く使用されている。代表的な非水電解質二次電池として、リチウムコバルト複合酸化物を含有する正極、黒鉛を含有する負極及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池が挙げられる。
また、黒鉛以外の負極活物質として、珪素、錫、これらの酸化物や合金等からなる合金系活物質が知られている。合金系活物質は、リチウムと合金化することによりリチウムを吸蔵し、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出する。合金系活物質は、高い放電容量を有している。例えば、珪素の理論放電容量は、黒鉛の理論放電容量の約11倍である。したがって、負極活物質として合金系活物質を用いた非水電解質二次電池は、高容量である。
負極活物質として合金系活物質を用いた非水電解質二次電池(以下「合金系二次電池」とすることがある)は、使用初期には高性能を発揮する。しかし、充放電回数が増加するに伴い、電極の劣化や電池の変形等が発生することにより、電池性能が経時的に低下するという問題があった。このような問題を解決するために、次のような方法が提案されている。
特許文献1は、リチウム合金粒子を含有する負極活物質層の表面に、高分子支持体と架橋性モノマーとから形成された高分子フィルム層が設けられた非水電解質二次電池用負極を開示する。
特許文献2は、集電体表面に支持されて珪素又は錫を含有する負極活物質粒子の表面の電解質と接する領域に、珪素、ゲルマニウム及び錫から選ばれる金属の酸化物からなる酸化物膜を形成した非水電解質二次電池用負極を開示する。
特開2005−197258号公報 特開2008−004534号公報
本発明の目的は、合金系活物質を含有する非水電解質二次電池用負極、及び前記非水電解質二次電池用負極を備え、寿命特性に優れた非水電解質二次電池を提供することである。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と前記負極集電体表面に支持されてリチウムイオンを吸蔵及び放出する合金系活物質を含む負極活物質層とを備え、さらに、負極活物質層の表面に、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する樹脂層を備えることを特徴とする。
また、本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出する負極と、正極と負極との間に介在するように配置されたリチウムイオン透過性絶縁層と、リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備え、負極として前記負極を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、合金系活物質を含有する負極を備え、寿命特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成及び内容の両方に関し、本願の他の目的及び特徴と併せ、図面を参照した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池の構成を模式的に示す縦断面図である。 図1に示すのとは異なる形態の負極集電体の構成を模式的に示す上面図である。 図1に示すのとは異なる形態の非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 図3に示す非水電解質二次電池用負極に含まれる柱状体の構成を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池に備わる非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池に備わる非水電解質二次電池用負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 電子ビーム式真空蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。 図7に示すのとは異なる形態の電子ビーム式真空蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。
本発明者らは、合金系二次電池において、電池性能が経時的に低下する原因について検討した。その結果、次のような知見を得た。
合金系活物質は、リチウムの吸蔵及び放出に伴って膨張及び収縮し、比較的大きな応力を発生させる。このため、充放電回数が増加すると、合金系活物質からなる負極活物質層の表面及びその内部にクラックが発生する。クラックが発生した場合、もともと非水電解質に直接触れていなかった面(以下「新生面」とする)が現れる。
そして、新生面と非水電解質とが接触した場合、新生面でガスの発生を伴う副反応が起こって副生物とガスとが生成する。この副生物は電極を劣化させる。また、発生したガスは、電池を膨張させる。また、新生面で非水電解質が副反応により消費されることにより、電池内の非水電解質の量が不足して、その結果、サイクル特性が低下する。
これらの知見から、集電体表面に支持されて合金系活物質を含む負極活物質層の表面に、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質に添加される添加剤とを含有する樹脂層(以下単に「樹脂層」とする)を形成した負極に想到するに至った。
新生面の大部分は負極活物質層の表面に露出するために、負極活物質層の表面に樹脂層を形成することにより、新生面と非水電解質とが接触することが抑制される。
また、非水電解質二次電池に用いられる非水電解質には、一般に、支持塩及び非水溶媒と共に、電池性能を高めるための非水電解質用添加剤(以下単に「添加剤」とすることがある)が配合されている。このような添加剤は、電池の充放電サイクルを繰り返すことにより、正極活物質層又は負極活物質層の表面等で分解され、その濃度が徐々に低下する。従って、添加剤は電池の使用初期にはその効果を十分に発揮するが、充放電サイクルを繰り返すにつれて添加剤が分解され、その効果が低減していく。
本発明に係る負極においては、負極活物質層の表面に形成される樹脂層に添加剤を含有させる。添加剤を樹脂層に保持させることにより、非水電解質中の添加剤が分解されてその濃度が低下した場合には、樹脂層から添加剤が徐々に放出される。そのために、充放電サイクルを繰り返しても、添加剤の効果が持続する。
なお、樹脂層に添加剤を含有させる場合には、非水電解質に添加剤を含有させる場合に比べて、添加剤を高濃度で保持させることができる。非水電解質に添加剤を高濃度で含有させた場合には、非水電解質のセパレータに対する濡れ性が低下したり、リチウムイオン伝導性が低下したり、副反応が起こりやすくなったりする。従って、非水電解質に添加剤を高濃度で保持することは困難である。これに対し、樹脂層に高濃度で添加剤を保持させた場合には、樹脂層から添加剤が非水電解質に徐々に供給されるために、非水電解質に前記のような問題を起こさない。
以下に、第1実施形態の非水電解質二次電池用負極(以下単に「負極」とする)、及びその負極を用いた非水電解質二次電池について、詳しく説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池1の構成を模式的に示す縦断面図である。非水電解質二次電池1は、正極11と負極12とを両者の間にセパレータ14を介在させて積層した積層型電極群と、正極11に接続された正極リード15と、負極12に接続された負極リード16と、外装ケース18の開口18a、18bを封口するガスケット17と、前記積層型電極群及び非水電解質(不図示)を収容する外装ケース18と、を備えた扁平型電池である。
正極リード15は、一端が正極集電体11aに接続され、他端が外装ケース18の開口18aから非水電解質二次電池1の外部に導出されている。負極リード16は、一端が負極集電体12aに接続され、他端が外装ケース18の開口18bから非水電解質二次電池1の外部に導出されている。正極リード15及び負極リード16には、リチウムイオン二次電池の分野で常用されるものを使用できる。例えば、正極リード15にはアルミニウム製リード、負極リード16にはニッケル製リードをそれぞれ使用できる。
外装ケース18の開口18a、18bはガスケット17により封止されている。ガスケット17には、各種樹脂材料からなるものを使用できる。外装ケース18の材料には、金属材料、合成樹脂、ラミネートフィルム等がある。ガスケット17を使用せずに、外装ケース18の開口18a、18bを溶着等によって直接封止してもよい。
非水電解質二次電池1は、次のようにして作製される。正極リード15の一端を電極群の正極集電体11aに接続する。負極リード16の一端を電極群の負極集電体12aに接続する。電極群を外装ケース18内に挿入し、非水電解質を注液し、正極リード15及び負極リード16の他端を外装ケース18の外部に導出する。次に、外装ケース18の内部を真空減圧しながら開口18a、18bを、ガスケット17を介して溶着して封口することにより、非水電解質二次電池1が得られる。
はじめに、負極12について詳しく説明する。図1に示すように、負極12は、負極集電体12aと負極集電体12aの表面に支持された負極活物質層12bと、負極活物質層12bの表面に形成された樹脂層13とを含む。
負極集電体12aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、又は銅合金等の金属材料が挙げられる。導電性基板の形態としては、金属箔、金属シート、又は金属フィルム等が挙げられる。導電性基板の厚さは特に限定されないが、例えば、1〜500μmであり、さらには5〜50μmであることが好ましい。
負極活物質層12bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する合金系活物質を含み、負極集電体12aの片面又は両面に形成される。合金系活物質は、以下の利点を有する。すなわち、合金系活物質は、黒鉛よりも遥かに大きい容量を有するために、厚さが1μm〜数十μm程度であっても、負極活物質層12bは充分な容量を有する。そして、厚さ1μm〜数十μm程度の負極活物質層12bでは、新生面が生成しても、その大部分が負極活物質層12bの表面に露出する。従って、負極活物質層12bの表面を樹脂層13で保護することにより、新生面を充分に保護することができる。
合金系活物質は、リチウムを吸蔵することによりリチウムと合金化し、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出する非晶質又は低結晶性の活物質であることが好ましい。合金系活物質としては、珪素系活物質、錫系活物質等が挙げられる。合金系活物質は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
珪素系活物質としては、珪素、珪素化合物、部分置換体、前記した珪素化合物や部分置換体の固溶体等が挙げられる。
珪素化合物としては、式SiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物、式SiCb(0<b<1)で表される珪素炭化物,式SiNc(0<c<4/3)で表される珪素窒化物,珪素と異種元素(A)との合金等が挙げられる。異種元素(A)としては、Fe,Co,Sb,Bi,Pb,Ni,Cu,Zn,Ge,In,Sn,又はTi等が挙げられる。また、部分置換体は、珪素及び珪素化合物に含まれる珪素原子の一部が、異種元素(B)で置換された化合物である。異種元素(B)の具体例としては、B,Mg,Ni,Ti,Mo,Co,Ca,Cr,Cu,Fe,Mn,Nb,Ta,V,W,Zn,C,N,又はSn等が挙げられる。これらの中では、珪素及び珪素化合物が好ましく、珪素酸化物が更に好ましい。
錫系活物質としては、錫、錫化合物、式SnOd(0<d<2)で表される錫酸化物、二酸化錫(SnO2)、錫窒化物、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金等の錫合金、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Sn等の錫化合物、これらの固溶体等が挙げられる。錫系活物質の中では、錫酸化物、錫合金、錫化合物等が好ましい。
負極集電体12aに支持される負極活物質層12bの形態としては、負極集電体12aの表面に合金系活物質と導電材と結着剤とを含有する合剤ペーストを塗布して得られる負極合剤層からなる負極活物質層や、負極集電体12aの表面に気相法により形成された薄膜状の合金系活物質からなる負極活物質層や、負極集電体12aの表面に気相法により形成された複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層が挙げられる。これらの中では、気相法により形成された負極活物質層が好ましく、気相法により形成された、複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層が特に好ましい。
気相法の具体例としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法、プラズマ化学気相成長法、溶射法等が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が好ましい。なお、気相法による合金系活物質からなる負極活物質層の製造方法については、後に詳しく説明する。
また、負極活物質層12bのうち、気相法により形成された負極活物質層は、その表面が凹凸又はクラックの存在による高い表面粗度を有することが好ましい。前記負極活物質層の表面が高い表面粗度を有する場合には、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が高く、合金系活物質の体積変化が起っても、樹脂層13の剥離が抑制される。
特に、負極集電体の表面に支持された複数の柱状体の合金系活物質の集合体等からなる負極活物質層は、柱状体間に空隙を有する。このような表面の粗さや空隙が樹脂層13に対してアンカー効果を発揮することにより、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が向上する。そして、充放電に伴い合金系活物質が膨張及び収縮を繰り返しても、樹脂層13の負極活物質層12bからの剥離が抑制される。その結果、樹脂層13により新生面を保護する効果が持続する。
また、気相法により負極活物質層を形成した後に、その表面の少なくとも一部に予め凹凸やクラックを形成させておいた場合には、充放電の繰返しによって新たなクラックが発生して新生面が生成しにくくなる。その結果、新生面と非水電解質との接触による副反応が起こり難くなる。
気相法により形成された負極活物質層の表面に予め設けられる、凹凸の凹部及びクラックの寸法は特に制限されないが、長さ0.1〜20μm、幅0.1〜5μm及び深さ0.1〜20μmであることが好ましい。長さ、幅及び深さの少なくとも1つが前記範囲にあれば、アンカー効果が発生し、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が確実に向上する。また、充放電に伴うクラックの発生及び新生面の生成が減少する。
気相法により形成された負極活物質層の表面に凹凸又はクラックを形成するには、堆積法、表面調整法等を利用できる。堆積法では、負極集電体の表面に、後述するように合金系活物質の薄膜を複数回に分けて形成する。
また、表面調整法では、まず、負極集電体の表面粗度を高める。その方法には、機械的研削、化学的エッチング、電気化学的エッチング、研磨材による研磨、めっき等がある。負極集電体の表面粗度を高めた後に、気相法により負極活物質層を形成すると、負極集電体表面の微細な凹凸又はクラックが、負極活物質層の表面に精確に再現される。これにより、負極活物質層表面に凹凸又はクラックが形成される。
負極活物質層の厚さは特に限定されないが、具体的には、例えば、1〜数十μmであり、さらには1〜20μmであることが好ましい。負極活物質層の厚さがこのような範囲である場合には、新生面の大部分が負極活物質層の表面近傍に現れる。その結果、新生面が樹脂層13に充分保護されることにより、新生面と非水電解質との接触が抑制される。これにより、新生面と非水電解質との副反応が抑制される。
なお、負極活物質層12bの表面に樹脂層13を形成する前に、負極活物質層12bには不可逆容量に相当する量のリチウムを蒸着させてもよい。不可逆容量とは、初回充放電時に負極活物質層12bに蓄えられ、その後負極活物質層12bから放出されないリチウムの量である。
次に、負極活物質層12bの表面に形成された樹脂層13について説明する。
樹脂層13は、負極活物質の膨張及び収縮に伴って生じる新生面と非水電解質との接触を抑制する。また、樹脂層13は、非水電解質用添加剤を含有する。樹脂層13に含有される非水電解質用添加剤は、非水電解質に徐々に放出される。これにより、充放電サイクルを繰り返すことにより非水電解質中の非水電解質用添加剤の濃度が低減しても、非水電解質中に樹脂層13から非水電解質用添加剤が供給される。それにより、合金系活物質を含有する負極12を備えた非水電解質二次電池1において、寿命特性を向上させることができる。
樹脂層13は、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する。
リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分は、リチウムイオンを伝導させることが可能な樹脂成分であれば特に限定されない。リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分の具体例としては、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示すようになる樹脂成分、支持塩を配合することによりリチウムイオン伝導性が付与された樹脂成分等が挙げられる。支持塩を配合する樹脂成分は、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分でもよく、有しない樹脂成分でも良い。
このような樹脂成分の具体例としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、フッ素樹脂が負極活物質層12bとの密着性や、機械的強度、非水電解質用添加剤との相溶性等に優れる点から好ましい。
フッ素樹脂の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとを共重合させる場合、重合比率を適宜選択することにより、得られる共重合体の特性を変更できる。オレフィン系モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン等が挙げられる。これらの中では、PVDF、フッ化ビニリデン(VDF)とHFPとの共重合体が好ましく、VDFとHFPとの共重合体がさらに好ましい。VDFとHFPとの共重合割合は特に制限されないが、好ましくは、VDF:HFP=70〜99.9質量%:0.01〜30質量%であり、さらに好ましくは、VDF:HFP=80〜95質量%:5〜20質量%である。
非水電解質用添加剤としては、従来から非水電解質に添加されている各種添加剤が特に限定なく用いられうる。その具体例としては、例えば、カーボネート化合物、含硫黄環状化合物、酸無水物、ニトリル化合物等が挙げられる。
カーボネート化合物は、負極表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成して副反応を抑制することにより、電池の寿命特性を向上させる添加剤である。カーボネート化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びジビニルエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
含硫黄環状化合物は、正極に被膜を形成して、高温環境下で電池内部でのガス発生を抑制する添加剤である。含硫黄環状化合物としては、その分子中に基=SO2及び前記基=SO2に含有される酸素原子以外の酸素原子を含有する環状化合物が好ましい。その具体例としては、例えば、エチレンサルファイト、スルトン類等が挙げられる。また、スルトン類の具体例としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸無水物は、負極にリチウムイオン伝導性被膜を形成して、非水溶媒の還元分解を抑制する添加剤である。酸無水物の具体例としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトリル化合物は、正極表面に吸着し、高温環境下で電池内部でのガス発生を抑制する添加剤である。ニトリル化合物の具体例としては、例えば、スクシノニトリル(NC−CH2−CH2−CN)、グルタロニトリル(NC−CH2−CH2−CH2−CN)、アジポニトリル(NC−CH2−CH2−CH2−CH2−CN)等の、炭素数2〜4の直鎖状アルキレン基の両端にシアノ基が結合したニトリル化合物等が挙げられる。
樹脂層13中に含まれる非水電解質用添加剤の含有割合は、非水電解質用添加剤の種類に応じて適宜選択されるが、樹脂層13全量中、通常0.1〜50質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。
非水電解質用添加剤の含有割合が少なすぎる場合には、非水電解質用添加剤の効果が長期的に持続しない傾向がある。一方、非水電解質用添加剤の含有割合が多すぎる場合には、樹脂層13の機械的強度及び負極活物質層12bとの密着性が低下することにより、樹脂層13が負極活物質層12bから剥離し易くなる傾向がある。
樹脂層13のリチウムイオン伝導性を向上させるために、支持塩としてリチウム塩を樹脂層13に含有させてもよい。リチウム塩としては、非水電解質二次電池の支持塩として用いられているものが特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiPF6,LiAlCl4,LiSbF6,LiSCN,LiCF3SO3,LiCF3CO2,LiAsF6,LiB10Cl10,低級脂肪族カルボン酸リチウム,LiCl,LiBr,LiI,LiBCl4,ホウ酸塩類,イミド塩類等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、リチウム塩を添加しなくても、リチウムイオン伝導性を有する樹脂層13は得られる。すなわち、樹脂層13が非水電解質により膨潤することにより、リチウムイオン伝導性を有する樹脂層13が得られる。
樹脂層13の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜20μmであり、好ましくは1〜10μmである。樹脂層13の厚みが薄すぎる場合には、新生面と非水電解質との接触を充分に抑制できない傾向がある。また、樹脂層13中の非水電解質用添加剤の放出を制御することが困難になる傾向がある。一方、樹脂層13の厚みが厚すぎる場合には、樹脂層13のリチウムイオン伝導性が低下することにより、電池の出力特性、サイクル特性、保存特性等が低下するおそれがある。
樹脂層13は、例えば、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する樹脂溶液を負極活物質層12bの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより得られる。このような樹脂溶液は、例えば、樹脂成分、非水電解質用添加剤及び必要に応じて配合されるリチウム塩を有機溶媒に溶解又は分散させることにより調製できる。有機溶媒としては、ジメチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のカーボネート類,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類,ジメチルアミン,アセトン,シクロヘキサノン等が挙げられる。
樹脂溶液中の樹脂成分の濃度は特に限定されないが、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。樹脂成分の濃度がこのような範囲の場合には、負極活物質層12bの表面との密着性が良好で、均一な厚みの樹脂層13が形成される。また、負極活物質層12bが空隙やクラックを有する場合には、空隙やクラックに樹脂成分が充分に侵入する。これにより、アンカー効果が発揮されて、負極活物質層12bと樹脂層13との密着性が充分に向上する。
樹脂溶液の粘度は、好ましくは0.1〜10cpsである。粘度は、粘度粘弾性測定装置(商品名:レオストレス600、英弘精機(株)製)を用いて70℃で測定される値である。樹脂溶液の粘度を前記範囲に調整することにより、負極活物質層12bが隙間やクラックを有する場合には、隙間やクラックに樹脂成分が充分に侵入する。
なお、負極活物質層12bが、気相法により形成された、負極集電体の表面に支持された複数の柱状体の合金系活物質の集合体からなる場合には、上記粘度範囲を有する樹脂溶液を用いることが特に好ましい。複数の柱状体の合金系活物質の集合体は、隣り合う柱状体間に空隙を有する。上記粘度範囲の樹脂溶液を用いることにより、この空隙に樹脂溶液を円滑に進入させることができる。その結果、複数の柱状体間に形成される空隙により、高いアンカー効果が得られる。
樹脂溶液は、公知の塗布方法により、負極活物質層12bの表面に塗布される。塗布方法には、スクリーン印刷、ダイコート、コンマコート、ロールコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、エアーナイフコート、リバースコート、ディップスクイズコート等がある。樹脂層13の厚さは、例えば、樹脂溶液の塗布量、樹脂溶液の合成樹脂含有割合、樹脂溶液の粘度等を変更することにより調整できる。
次に、正極11について詳しく説明する。正極11は、正極集電体11aと正極集電体11aの表面に支持された正極活物質層11bとを含む。
正極集電体11aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料、導電性樹脂等が挙げられる。導電性基板としては、平板や多孔板等が用いられる。多孔板の具体例としては、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布等が挙げられる。平板としては、箔、シート、フィルム等が挙げられる。導電性基板の厚さは特に限定されないが、例えば、通常1〜500μmであり、好ましくは1〜50μmである。
正極活物質層11bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含み、正極集電体11aの片面又は両面に形成される。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる各種正極活物質を用いることができる。その具体例としては、リチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸リチウムが挙げられる。
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物、又は前記金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素により置換された金属酸化物である。
遷移金属元素としては、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr等が挙げられる。遷移金属元素の中では、Mn、Co、Ni等が好ましい。
また、異種元素としては、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、B等が挙げられる。異種元素の中では、Mg、Al等が好ましい。遷移金属元素及び異種元素は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム含有複合酸化物の具体例としては、例えば、Li1CoO2、LilNiO2、LilMnO2、LilComNi1-m2、LilCom1-mn、LilNi1-mmn、LilMn24、LilMn2-mm4(前記各式中、MはSc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。0<l≦1.2、0≦m≦0.9、2.0≦n≦2.3)等が挙げられる。これらの中では、LilCom1-mnが好ましい。
オリビン型リン酸リチウムの具体例としては、LiXPO4、Li2XPO4F(前記各式中、XはCo、Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す)等が挙げられる。
なお、リチウム含有複合酸化物及びオリビン型リン酸リチウムを示す前記各式においては、リチウムのモル数は正極活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。また、正極活物質はそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層11bは、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を有機溶媒に分散させてなる正極合剤スラリーを正極集電体11aの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延することにより形成される。
結着剤の具体例としては、ポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,アラミド樹脂,ポリアミド,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリアクリロニトリル,ポリアクリル酸,ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ヘキシル,ポリメタクリル酸,ポリメタクリル酸メチル,ポリメタクリル酸エチル,ポリメタクリル酸ヘキシル,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルピロリドン,ポリエーテル,ポリエーテルサルホン,ポリヘキサフルオロプロピレン等の樹脂材料;スチレンブタジエンゴム,変性アクリルゴム等のゴム材料;カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子材料等が挙げられる。
また、樹脂材料として、2種類以上のモノマー化合物を含有する共重合体を使用できる。モノマー化合物には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等がある。
結着剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層11bには、必要に応じて導電剤が含まれてもよい。導電剤の具体例としては、例えば、天然黒鉛,人造黒鉛等のグラファイト類;アセチレンブラック,ケッチェンブラック,チャンネルブラック,ファーネスブラック,ランプブラック,サーマルブラック等のカーボンブラック類;炭素繊維,金属繊維等の導電性繊維類;アルミニウム等の金属粉末類;酸化亜鉛,チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類;酸化チタン等の導電性金属酸化物;フェニレン誘導体等の有機導電性材料;フッ化カーボン等が挙げられる。導電剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルホルムアミド,N−メチル−2−ピロリドン,ジメチルアミン,アセトン,シクロヘキサノン等が挙げられる。
次にセパレータ14について詳しく説明する。
セパレータ14は、正極11と負極12との間に介在するように配置されるリチウムイオン透過性の絶縁層である。セパレータ14は、負極12側ではその表面の少なくとも一部が樹脂層13の表面と接触していてもよい。
セパレータ14には、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持ち、細孔を有する多孔質シートを使用できる。多孔質シートには、微多孔膜、織布、不織布等がある。微多孔膜は単層膜及び多層膜のいずれでもよい。単層膜は1種の材料からなる。多層膜は複数の単層膜の積層体である。多層膜には、同じ材料からなる複数の単層膜の積層体、2種以上の異なる材料からなる単層膜の積層体等がある。また、微多孔膜、織布、不織布等を2層以上積層してもよい。
セパレータ14の材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ14の厚さは、通常10〜300μm、好ましくは10〜30μmである。セパレータ14の空孔率は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜60%である。空孔率は、セパレータ14の体積に対する、セパレータ14が有する細孔の総容積の百分率である。
セパレータ14には、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質が含浸される。非水電解質には、液状非水電解質、ゲル状非水電解質等がある。
液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。
溶質には、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等がある。
ホウ酸塩類には、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等がある。
イミド塩類には、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO2)(C49SO2)NLi)、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)等がある。
溶質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非水溶媒1リットルにおける溶質の濃度は、好ましくは0.5〜2モルである。
非水溶媒の具体例としては、例えば、環状炭酸エステル,鎖状炭酸エステル,環状カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジメチルカーボネート等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤には、上記した非水電解質用添加剤、電池を不活性化させる添加剤(以下「不活性化剤」とする)等がある。不活性化剤には、フェニル基と、フェニル基に隣接する環状化合物基とを含むベンゼン化合物がある。環状化合物基には、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基等がある。ベンゼン化合物には、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等がある。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と樹脂材料とを含有する。樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン,フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリテトラフルオロエチレン,ポリアクリロニトリル,ポリエチレンオキサイド,ポリ塩化ビニル,ポリアクリレート等が挙げられる。
ゲル状非水電解質に、非水電解質用添加剤を添加した場合、ゲル状非水電解質を樹脂層13としても使用できる。例えば、非水電解質用添加剤を含有するゲル状非水電解質を調製し、このゲル状非水電解質を負極活物質層12b表面に塗布し、ゲル状非水電解質中の非水溶媒の適量を加熱により除去すればよい。これにより、樹脂層13を兼ねるゲル状非水電解質が、負極活物質層12b表面に形成される。
また、負極活物質層12b表面に樹脂層13が形成された負極12を用いて電極群を作製し、この電極群を電池ケースに収容し、電池ケース内に液状非水電解質を注液してもよい。これにより、負極活物質層12b表面の樹脂層13がゲル化し、樹脂層13を兼ねるゲル状非水電解質層が形成される。
本実施形態では、リチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ14を使用するが、それに限定されず、無機酸化物粒子層を用いてもよい。また、セパレータ14と無機酸化物粒子層とを併用してもよい。無機酸化物粒子層は、リチウムイオン透過性絶縁層として機能するとともに、短絡発生時における電池の安全性を向上させる。また、無機酸化物粒子層とセパレータ14とを併用すると、セパレータ14の耐用性が顕著に向上する。無機酸化物粒子層は正極活物質層11b及び負極活物質層12bの少なくとも一方の表面に形成できるが、正極活物質層11bの表面に形成するのが好ましい。
無機酸化物粒子層は、無機酸化物粒子及び結着剤を含有する。無機酸化物には、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、カルシア等がある。結着剤には、正極活物質層の形成に用いるものと同様の結着剤を使用できる。無機酸化物粒子及び結着剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機酸化物粒子層における無機酸化物粒子の含有量は、好ましくは無機酸化物粒子層全量の90〜99.5質量%、さらに好ましくは95〜99質量%であり、残部が結着剤である。
無機酸化物粒子層は、正極活物質層11bと同様にして形成できる。例えば、無機酸化物及び結着剤を有機溶媒に溶解又は分散させてスラリーを調製し、このスラリーを正極活物質層11b又は負極活物質層12bの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより、無機酸化物粒子層を形成できる。有機溶媒には、正極合剤スラリーに含有されるのと同じ有機溶媒を使用できる。無機酸化物粒子層の厚さは、好ましくは1〜10μmである。
また、本実施形態ではリチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ14を使用するが、セパレータ14に代えて固体電解質層を用いても良い。固体電解質層を用いる場合は、通常非水電解質は用いる必要はないが、電池内でのリチウムイオン伝導性をさらに向上させるために、非水電解質と固体電解質とを併用してもよい。固体電解質層は、固体電解質を含有する。固体電解質には、無機固体電解質及び有機固体電解質がある。
無機固体電解質には、硫化物系無機固体電解質、酸化物系無機固体電解質、硫化物系及び酸化物系以外の無機固体電解質等がある。無機固体電解質からなる固体電解質層は、蒸着、スパッタリング、レーザアブレーション、ガスデポジション、エアロゾルデポジション等により形成できる。
有機固体電解質には、イオン伝導性ポリマー類、ポリマー電解質等がある。イオン伝導性ポリマー類には、相転移温度の低いポリエーテル、無定形フッ化ビニリデンコポリマー、異種ポリマーのブレンド物等がある。ポリマー電解質は、マトリックスポリマーとリチウム塩とを含む。マトリックスポリマーには、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリカーボネート等がある。リチウム塩には、液状非水電解質に含有されるのと同じリチウム塩を使用できる。
以下、負極12に代えて用いられる、負極集電体21の表面に、気相法により複数の柱状体24の合金系活物質の集合体からなる負極活物質層23を形成して得られた負極20の形成方法の一例について詳しく説明する。
図2は、負極集電体21の構成を模式的に示す上面図である。図3は、負極集電体21の表面に合金系活物質からなる柱状体24が支持されてなる負極20の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、負極20に含まれる柱状体24の構成を模式的に示す縦断面図である。図7は、電子ビーム式蒸着装置30の構成を模式的に示す側面図である。
負極20は、負極集電体21と、複数の柱状体24を含む負極活物質層23とからなる。負極活物質層23は、複数の柱状体24の集合体である。
図2及び図3に示すように、負極集電体21の表面には複数の凸部22が設けられている。
凸部22は、負極集電体21の表面21a(以下単に「表面21a」とする)から、外方に向けて延びる突起である。本実施形態では、複数の凸部22は、図2に示すように、表面21aに千鳥配置されているが、それに限定されず、最密充填配置、格子配置等でもよい。
凸部22の高さは、平均高さとして好ましくは3〜10μmである。凸部22の高さは、負極集電体21の厚さ方向の断面において定義される。負極集電体21の断面は、凸部22の延びる方向における最先端点を含む断面とする。負極集電体21の断面において、前記最先端点から表面21aに降ろした垂線の長さが、凸部22の高さである。凸部22の平均高さは、例えば、負極集電体21の断面を走査型電子顕微鏡で観察して100個の凸部22の高さを測定し、得られる測定値の平均値として求められる。
凸部22の幅は、好ましくは1〜50μmである。凸部22の幅は、前記した負極集電体21の断面において、表面21aに平行な方向における凸部22の最大長さである。凸部22の幅も、凸部22の高さと同様に、100個の凸部22の幅を測定し、測定値の平均値として求められる。なお、複数の凸部22を全て同じ高さ及び/又は同じ幅に形成する必要はない。
凸部22の形状は、本実施形態では菱形であるが、それに限定されず、円形、多角形、楕円形、平行四辺形、台形等でもよい。凸部22の形状は、表面21aを水平面に一致させた状態での、凸部22の鉛直方向上方からの正投影図における形状である。
凸部22は、本実施形態では頂部(凸部22の成長方向の先端部)が平面であり、この平面は表面21aにほぼ平行である。この平面には、ミクロンサイズ又はナノサイズの凹凸があってもよい。凸部22の頂部が平面であることにより、凸部22と柱状体24との接合強度が高まる。この平面が表面21aにほぼ平行であることにより、前記接合強度がさらに高まる。
凸部22の個数及び凸部22の軸線間距離は、凸部22の寸法(高さ、幅等)、凸部22表面に形成される柱状体24の寸法等に応じて選択される。凸部22の個数は、好ましくは1万個/cm2〜1000万個/cm2である。凸部22の軸線間距離は、好ましくは2μm〜100μmである。
凸部22の軸線は、凸部の形状が円形である場合は、その円形を内包する最も小さな真円の中心を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部22の形状が楕円形である場合、凸部22の軸線は、前記楕円形の長軸と短軸との交点を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部22の形状が菱形、多角形、平行四辺形、台形等の対角線を有する形状である場合、凸部22の軸線は、前記形状の対角線の交点を通り、表面21aに垂直に延びる仮想線である。
凸部22は、その表面(頂部及び側面)に少なくとも1つの突起を有していてもよい。これにより、凸部22と柱状体24との接合強度がさらに高まり、柱状体24の凸部22からの剥離が一層顕著に抑制される。突起は、凸部22表面から外方に延び、凸部22よりも寸法が小さい。突起の立体形状には、円筒状、角柱状、円錐状、角錐状、針状、襞状(一方向に延びる山脈状)等がある。凸部22の側面に形成される襞状の突起は、凸部22の周方向及び成長方向のいずれに延びていてもよい。
負極集電体21は、金属板に凹凸を形成する技術を利用して製造できる。金属板には、金属箔、金属シート、金属フィルム等を使用できる。金属板の材質は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料である。金属板に凹凸を形成する技術には、ローラ加工法がある。
ローラ加工法では、複数の凹部が表面に形成されたローラ(以下「凸部用ローラ」とする)を用いて、金属板を機械的にプレス加工する。これにより、金属板の表面に、凹部の寸法、その内部空間の形状、個数及び配置に対応する凸部22が形成された負極集電体21が得られる。
2つの凸部用ローラをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚さ方向の両方の表面に凸部22が形成された負極集電体21が得られる。凸部用ローラと表面が平滑なローラとをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚さ方向の片方の表面に凸部22が形成された負極集電体21が得られる。ローラの圧接圧は、金属板の材質及び厚さ、凸部22の形状及び寸法、負極集電体21の厚さの設定値等に応じて適宜選択される。
凸部用ローラは、表面に凹部が形成されたセラミックローラである。セラミックローラは、芯用ローラ及び溶射層を含む。芯用ローラには、鉄製ローラ、ステンレス鋼製ローラ等を使用できる。溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を芯用ローラ表面に均一に溶射することにより形成できる。溶射層に凹部が形成される。凹部の形成には、セラミック材料等の成形加工に用いられるレーザを使用できる。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ、下地層及び溶射層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。下地層は芯用ローラ表面に形成される樹脂層である。下地層表面に凹部が形成される。下地層は、樹脂シートの一方の表面に凹部を形成した後、この樹脂シートの凹部が形成されていない面と芯用ローラ表面とが接触するように、この樹脂シートを芯用ローラに巻きつけて接着することにより形成される。
下地層の材料としては、機械的強度の高い合成樹脂を使用する。このような合成樹脂の具体例としては、例えば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を下地層表面の凹凸に沿うように溶射することにより形成される。したがって、下地層に形成される凹部は、凸部22の設計寸法よりも溶射層の層厚分だけ大きめに形成するのが好ましい。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ及び超硬合金層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。超硬合金層は芯用ローラの表面に形成され、炭化タングステン等の超硬合金を含む。超硬合金層は、焼き嵌め及び冷やし嵌めにより形成できる。焼き嵌めは、円筒状の超硬合金を暖めて膨張させ、芯用ローラに嵌めることである。冷やし嵌めは、芯用ローラを冷却して収縮させ、超硬合金の円筒に挿入することである。超硬合金層の表面には、例えば、レーザ加工によって凹部が形成される。
別形態の凸部用ローラは、硬質鉄系ローラの表面に凹部が形成されたものである。硬質鉄系ローラは、少なくとも表層部がハイス鋼、鍛鋼等からなるローラである。ハイス鋼は、鉄にモリブデン、タングステン、バナジウム等の金属を添加し、熱処理して硬度を高めた鉄系材料である。鍛鋼は、鋼塊又は鋼片を加熱し、鍛造又は圧延及び鍛造して鍛錬成形し、さらに熱処理することにより製造される鉄系材料である。鋼塊は、溶鋼を鋳型に鋳込むことにより製造される。鋼片は、鋼塊から製造される。鍛造は、プレス及びハンマーにより行われる。凹部は、レーザ加工により形成される。
負極活物質層23は、図3に示すように、複数の柱状体24を含む。柱状体24は、凸部22表面から負極集電体21の外方に延びる。柱状体24は、表面21aに垂直な方向又は前記垂直な方向に対して傾斜した方向に延びる。また、互いに隣り合う一対の柱状体24間には、空隙が存在する。この空隙が、合金系活物質の体積変化による応力を緩和する。その結果、柱状体24の凸部22からの剥離、負極集電体21及び負極20の変形等が抑制される。
柱状体24は、図4に示すように、8個の柱状塊24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24hの積層体であることが好ましい。柱状体24は、より具体的には、次のようにして形成される。まず、凸部22の頂部及びそれに続く側面の一部を被覆するように柱状塊24aを形成する。次に、凸部22の残りの側面及び柱状塊24aの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊24bを形成する。すなわち、図4において、柱状塊24aは凸部22の頂部を含む一方の端部に形成される。一方、柱状塊24bは部分的には柱状塊24aに重なるが、柱状塊24aに重ならない部分は凸部22の他方の端部に形成される。
さらに、柱状塊24aの頂部表面の残り及び柱状塊24bの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊24cを形成する。すなわち、主に柱状塊24aに接するように、柱状塊24cを形成する。さらに、主に柱状塊24bに接するように、柱状塊24dを形成する。以下同様にして、柱状塊24e、24f、24g、24hを交互に積層することによって、柱状体24が形成される。なお、柱状塊の積層数は8個に限定されず、2個以上の任意の個数の柱状塊を積層できる。
柱状体24は、図7に示す電子ビーム式真空蒸着装置30(以下単に「蒸着装置30」とする)によって形成できる。図7では、蒸着装置30内部の各部材も実線で示す。蒸着装置30は、チャンバ31、第1配管32、固定台33、ノズル34、ターゲット35、図示しない電子ビーム発生装置、電源36及び図示しない第2配管を含む。
チャンバ31は耐圧性容器であり、その内部空間に第1配管32、固定台33、ノズル34、ターゲット35及び電子ビーム発生装置を収容する。
第1配管32は、一端がノズル34に接続され、他端がチャンバ31の外方に延びて図示しないマスフローコントローラを介して図示しない原料ガスボンベ又は原料ガス製造装置に接続される。第1配管32は、ノズル34に原料ガスを供給する。原料ガスには、酸素、窒素等がある。
固定台33は、回転自在に支持される板状部材であり、その厚さ方向の一方の表面に負極集電体21を固定できる。固定台33は、図7における実線で示す位置と一点鎖線で示す位置との間を回転する。実線で示す位置では、固定台33と水平線とが成す角の角度がα°である。一点鎖線で示す位置では、固定台33と水平線とが成す角の角度が(180−α)°である。角度α°は、柱状体24の寸法及び形状、柱状塊の積層数などに応じて適宜選択できる。
ノズル34は、固定台33とターゲット35との間に設けられ、第1配管32の一端が接続され、原料ガスを放出する。ターゲット35は合金系活物質の原料を収容する。電子ビーム発生装置は、ターゲット35に収容される合金系活物質の原料に電子ビームを照射して加熱する。これにより、合金系活物質の原料の蒸気が発生する。この蒸気は負極集電体21に向けて上昇し、ノズル34から放出されるガスと混合される。
電源36はチャンバ31の外部に設けられ、電子ビーム発生装置に電圧を印加する。第2配管は、チャンバ31内の雰囲気になるガスを導入する。なお、蒸着装置30と同じ構成を有する電子ビーム式真空蒸着装置が、例えば、アルバック(株)から市販されている。
蒸着装置30によれば、まず、負極集電体21を固定台33に固定し、チャンバ31内部に酸素ガスを導入する。次に、ターゲット35に電子ビームを照射し、合金系活物質原料の蒸気を発生させる。本実施形態では、合金系活物質原料は珪素である。蒸気は鉛直方向上方に上昇し、ノズル34周辺で原料ガスと混合される。蒸気と原料ガスとの混合物はさらに上昇し、固定台33に固定された負極集電体21の表面に供給される。これにより、図示しない凸部22表面に、珪素と酸素とを含む層が形成される。
このとき、固定台33を実線の位置に配置することにより、凸部表面に図4に示す柱状塊25aを形成する。次に、固定台33を一点鎖線の位置に回転させ、図4に示す柱状塊25bを形成する。このように固定台33の位置を交互に回転させることにより、図4に示す8つの柱状塊24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24hの積層体である柱状体24が、複数の凸部22の表面に同時に形成され、負極活物質層23が得られる。
ノズル34から原料ガスを供給しない場合は、合金系活物質の原料のみからなる柱状体24が形成される。また、負極集電体21に代えて負極集電体12aを用い、かつ固定台33を回転させず、水平方向に固定させると、負極活物質層12bを形成できる。
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池に備わる、リチウムイオン伝導性樹脂層28(以下「樹脂層28」とする)が形成された負極25の構成を模式的に示す縦断面図である。説明の都合上、図5の紙面において、負極集電体21側を最下部、樹脂層28側を最上部とする。負極25は第1実施形態の負極23に類似し、同じ構成部材には負極23と同一の参照符号を付して、説明を省略する。負極25は、負極集電体21、負極活物質層26、及び負極活物質層26の表面に形成される樹脂層28を含む。負極25は、2つの大きな特徴を有し、それ以外の構成は負極23と同じである。
1つ目の特徴は、負極活物質層26が、合金系活物質を含有する、複数の紡錘状の柱状体27を含むことである。負極活物質層26の表面には、柱状体27が存在する部分と存在しない部分とが交互に現れる。これが、見掛け上の凹凸になる。また、隣り合う一対の柱状体27間には、空隙が存在する。この凹凸及び空隙が顕著なアンカー効果を発現し、負極活物質層26と樹脂層28との密着性をさらに向上させる。
互いに隣り合う一対の柱状体27間の軸線間距離は、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは60〜100μmである。これにより、柱状体27間の空隙に樹脂溶液が円滑に流入し、樹脂層28を柱状体27間に容易に形成できる。柱状体27の軸線は、柱状体27の凸部22表面との接触面の中心を通り、表面21aに垂直な方向に延びる仮想線である。接触面の中心とは、接触面を内包できる最も小さい円の中心である。
柱状体27の形状を紡錘状にすると、凸部22の周囲には比較的大きな空間ができる。この空間が、柱状体27に含有される合金系活物質の膨張及び収縮を吸収する。このため、柱状体27では、充放電回数が増加してもクラックが生成し難い。したがって、新生面と非水電解質との接触による副生物及びガスの生成、非水電解質の無駄な消費等が抑制され、各種電池性能を低下させることがない。
柱状体27間の軸線間距離が小さすぎると、柱状体27間の空隙に樹脂溶液が流入し難くなるおそれがある。また、合金系活物質の体積膨張を十分に緩和又は吸収出来なくなる可能性がある。軸線間距離が大きすぎると、柱状体27の個数が少なくなり、負極25の容量が低下するおそれがある。紡錘状の柱状体27は、柱状体24と同様に、図7に示す電子ビーム式蒸着装置30において回転台33の回転角度及び柱状塊の積層数を調整することにより作製できる。
2つ目の特徴は、樹脂層28が、負極活物質層26の表面だけでなく、互いに隣り合う一対の柱状体27間の空隙に入り込んでいることである。樹脂層28は、柱状体27間の上部のみに存在し、負極集電体21の表面21aまで達していない。これにより、柱状体27間の空隙のアンカー効果が十分に発揮される。その結果、負極活物質層26と樹脂層28との密着性がさらに向上する。さらに、電池のサイクル特性、出力特性等の低下が顕著に抑制される。樹脂層28は、樹脂層13と同じ構成を有している。
また、非水電解質用添加剤を含有する樹脂層28が、柱状体27の頂部表面のほぼ全域に形成される。柱状体27の表面積の合計は、合金系活物質からなる薄膜状の負極活物質層の表面積よりも大きくなっている。したがって、樹脂層28の柱状体27と接触する面積も大きくなり、サイクル特性等の電池性能を向上させる効果が一層顕著になる。
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池に備わる、負極29の構成を模式的に示す縦断面図である。説明の都合上、図6の紙面において、負極集電体21側を最下部、リチウムイオン伝導性樹脂層28a(以下「樹脂層28a」とする)側を最上部とする。負極29は負極25に類似し、負極25と同じ構成部材には負極25と同一の参照符号を付して、説明を省略する。
負極29では、樹脂層28aが、互いに隣り合う一対の柱状体27間の空隙に入り込み、負極集電体21の表面21aにまで達している。すなわち、柱状体27間の空隙は、樹脂層28aで埋められている。樹脂層28aは、樹脂層13、28と同じ構成を有している。これにより、負極25と同じ効果が得られる。さらに、柱状体27間の空隙が樹脂層28aで埋められているので、負極活物質層26と樹脂層28aとの密着性がさらに高まる。
また、樹脂層28aは柔軟性を有しているので、合金系活物質の体積変化に追従可能である。したがって、樹脂層28aは、合金系活物質の体積変化に伴う不都合の発生を抑制するのに有効である。不都合とは、柱状体27の凸部22からの剥離、負極集電体21の変形、新生面の生成、負極集電体表面21aへのリチウムの析出等である。
したがって、本実施形態により、新生面と非水電解質との接触の抑制と、合金系活物質の体積変化の緩和又は吸収とを、高水準で両立できる。また、図5に示す負極25と同様に、非水電解質添加剤を含有する樹脂層28aと柱状体27との接触面積がさらに大きくなるので、非水電解質添加剤の効果が一層顕著に発揮される。
本実施形態では、柱状体27間の空隙を埋めるように樹脂層28aが形成されているが、それに限定されず、例えば、柱状体27の表面のみに樹脂層を形成してもよい。この場合、樹脂層の層厚を小さくすることにより、柱状体27間に空隙が存在するように構成するのが好ましい。
前述の各実施形態では、積層型電極群を含む非水電解質二次電池1を例に挙げて説明したが、それに限定されず、本発明の非水電解質二次電池は捲回型電極群又は扁平型電極群を含んでいてもよい。捲回型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを捲回した電極群である。扁平型電極群は、例えば、捲回型電極群を扁平状に成形した電極群である。扁平型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを板に巻き付けることによっても作製できる。
本発明の非水電解質二次電池の形状には、円筒型、角型、扁平型、コイン型、ラミネートフィルム製パック型等がある。
以下に実施例及び比較例ならびに試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO4水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)になるように硫酸コバルトを加えて金属イオン濃度2mol/Lの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)2で示される組成を有する二元系の沈殿物を生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。
この複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱し、Ni0.85Co0.152で示される組成を有する複合酸化物を得た。次に、Ni及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等しくなるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱することより、LiNi0.85Co0.152で示される組成を有し、二次粒子の体積平均粒径が10μmであるリチウムニッケル含有複合酸化物である正極活物質を得た。
(2)正極の作製
前記で得られた正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを充分に混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延し、厚さ120μmの正極活物質層を形成した。
(3)負極の作製
図8は、電子ビーム式真空蒸着装置40(以下単に「蒸着装置40」とする)の構成を模式的に示す側面図である。蒸着装置40は、チャンバ41、搬送手段42、ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51及び不図示の電子ビーム発生装置を含む。
チャンバ41は耐圧性容器であり、搬送手段42、ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51及び電子ビーム発生装置を収容する。
搬送手段42は、巻き出しローラ43、キャン44、巻き取りローラ45及び搬送ローラ46、47を含む。巻き出しローラ43、キャン44及び搬送ローラ46、47は、それぞれ軸心回りに回転自在に設けられる。巻き出しローラ43には長尺状の負極集電体12aが巻き付けられる。キャン44は、その内部に不図示の冷却手段を備える。キャン44表面を搬送される際に負極集電体12aが冷却され、負極集電体12aの表面に合金系活物質が析出し、合金系活物質を含む薄膜状負極活物質層が形成される。
巻き取りローラ45は図示しない駆動手段により軸心回りに回転駆動可能に設けられている。巻き取りローラ45には負極集電体12aの一端が固定され、巻き取りローラ45が回転することにより、負極集電体12aが巻き出しローラ43から搬送ローラ46、キャン44及び搬送ローラ47を経由して搬送される。そして、負極集電体12aの表面に薄膜状負極活物質層が形成された負極12が巻き取りローラ45に巻き取られる。
ガス供給手段48は、酸素、窒素等の原料ガスをチャンバ41内に供給する。プラズマ化手段49は、ガス供給手段48から供給される原料ガスをプラズマ化する。シリコンターゲット50a、50bは、珪素を含有する薄膜状負極活物質層を形成する場合に用いられる。遮蔽板51は、キャン44とシリコンターゲット50a、50bとの間において、水平方向に移動可能に設けられる。遮蔽板51は、薄膜状負極活物質層の形成状況に応じて、水平方向の位置が調整される。電子ビーム発生装置は、シリコンターゲット50a、50bに電子ビームを照射し、珪素の蒸気を発生させる。
蒸着装置40を用いて、下記の条件で、負極集電体12a表面に、厚さ6μmの薄膜状負極活物質層(シリコン薄膜、ベタ膜)を形成し、負極12を作製した。
チャンバ41内の圧力:8.0×10-5Torr
負極集電体12a:長さ50m、幅10cm、厚さ35μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)
負極集電体12aの巻き取り速度:2cm/分
原料ガス:供給せず。
ターゲット50a、50b:純度99.9999%のシリコン単結晶(信越化学工業(株)製)
電子ビームの加速電圧:−8kV
電子ビームのエミッション:300mA
得られた負極12を35mm×35mmに裁断し、負極板を作製した。この負極板の薄膜状負極活物質層にリチウム金属を蒸着し、初回充放電時に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。リチウム金属の蒸着は、抵抗加熱蒸着装置((株)アルバック製)を用いて行った。抵抗加熱蒸着装置内のタンタル製ボートにリチウム金属を装填し、薄膜状負極活物質層がタンタル製ボートに面するように負極板を固定し、アルゴン雰囲気内にて、タンタル製ボートに50Aの電流を通電して10分間蒸着した。
(4)リチウムイオン伝導性樹脂層の形成
VDFとHFPとの共重合体(VDF:HFP=88質量%:12質量%)であるフッ素樹脂をジメチルカーボネートに溶解し、得られた溶液にビニレンカーボネート(以下「VC」とする)を添加し、80℃に加熱して樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を用いて形成される樹脂層は、後工程で非水電解質と接触することにより、リチウムイオン伝導性樹脂層になる。樹脂溶液中のフッ素樹脂及びVCの濃度は、リチウムイオン伝導性樹脂層におけるフッ素樹脂及びVCの含有割合がそれぞれ5質量%及び2質量%になるように調整した。
樹脂溶液(80℃、粘度70cps)中に、リチウム金属を蒸着させた負極板を1分間浸漬した。その後、負極板を樹脂溶液から取り出してガラス板に載せ、80℃で10分間の温風乾燥を施した。得られた負極板をレーザ顕微鏡で観察したところ、負極板の表面には、厚さ約2μmの樹脂層が形成されていた。また、樹脂層の付着量は0.34mg/cm2であった。この樹脂層は、前記したように、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性樹脂層になる。
(5)積層型電池の作製
前記で得られた正極板及び負極板を、それぞれ、1.5cm×1.5cmの大きさに裁断した。その後、正極板と負極板とを、両者の間に厚さ20μmのポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、旭化成(株)製)を介在させて積層し、電極群を作製した。アルミニウムリードの一端を正極集電体に溶接し、ニッケルリードの一端を負極集電体に溶接した。
この電極群をラミネートフィルム製外装ケース(大きさ2cm×2cm)に挿入した。次いで、液状非水電解質0.5mlを外装ケース内に注液した。これにより、負極板表面の樹脂層は液状非水電解質で含浸された。液状非水電解質には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水電解質を用いた。
次に、アルミニウムリード及びニッケルリードの他端をそれぞれ外装ケース両端の開口から外部に導出した。さらに、外装ケース内部の真空減圧下に、外装ケースの開口を溶着させて、非水電解質二次電池を作製した。
(実施例2)
次のようにして作製した負極を使用する以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
[負極の作製]
径50mmの鉄製ローラ表面に酸化クロムを溶射して厚さ100μmのセラミック層を形成した。このセラミック層の表面に、レーザ加工により、直径12μm、深さ8μmの円形の凹部を形成し、凸部用ローラを作製した。凹部は千鳥配置とし、互いに隣り合う一対の凹部の軸線間距離を20μmとした。この凹部の底部は中央がほぼ平面状であり、底部周縁部と側面との境界部分は丸みを帯びていた。
0.03質量%のジルコニウムを含有する合金銅箔(商品名:HCL−02Z、厚さ20μm、日立電線(株)製)を、アルゴンガス雰囲気中、600℃で30分間加熱し、焼き鈍しを行った。この合金銅箔を、前記で得られた凸部用ローラと表面が平滑な径50mmの鉄製ローラとを圧接させて形成した圧接部に、線圧2t/cmで通過させて加圧成形した。これにより、厚さ方向の一方の表面に複数の凸部が形成された負極集電体を作製した。
得られた負極集電体の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、負極集電体の表面には凸部が形成されていた。凸部の平均高さは約6μmであった。更に、凸部の表面に電解めっきを施し、複数の粒径約2μmの銅粒子を凸部表面に付着させた。最終的に得られた負極集電体の凸部の平均高さは、銅粒子の付着により、約8μmであった。凸部表面に銅粒子を付着させることにより、後記する柱状体と凸部との接合強度が向上した。この負極集電体を20mm×100mmに裁断した。
図7に示す電子ビーム式蒸着装置30と同じ構造を有する市販の蒸着装置((株)アルバック製)を用い、前記で得られた負極集電体の凸部表面に柱状体を形成した。これにより複数の柱状体を含む薄膜状負極活物質層を形成した。蒸着条件は、下記の通りである。なお、負極集電体を固定した固定台が、水平線に対する角度α=60°の位置(図7に示す実線の位置)と、角度(180−α)=120°の位置(図7に示す一点鎖線の位置)との間を回転するように設定した。これにより、図3又は図4に示すような柱状塊が8層積層された複数の柱状体を形成した。各柱状体は凸部の頂部及び頂部近傍の側面から、負極集電体の外方に延びるように成長していた。
負極活物質原料(蒸発源):珪素、純度99.9999%、(株)高純度化学研究所製
ノズルから放出される酸素:純度99.7%、日本酸素(株)製、
ノズルからの酸素放出流量:80sccm
角度α:60°
電子ビームの加速電圧:−8kV
エミッション:500mA
蒸着時間:3分
得られた負極の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、10個の柱状体の高さ(凸部頂点から柱状体頂点までの長さ)を測定し、平均値を求めた。この平均値は、薄膜状負極活物質層の厚さであり、22μmであった。また、薄膜状負極活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量したところ、柱状体の組成がSiO0.5であることが判った。
薄膜状負極活物質層の表面に実施例1と同様にしてリチウム金属を蒸着し、初回充放電時に薄膜状負極活物質層に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。
(比較例1)
リチウムイオン伝導性樹脂層を形成しない以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
(試験例1)
実施例1〜2及び比較例1の各非水電解質二次電池を、次の評価試験に供した。
[サイクル特性]
実施例1〜2及び比較例1の各電池について、20℃環境下で、下記の条件で定電流充電、定電圧充電及び定電流放電を行い、1サイクル目の充放電を実施した。この時の放電容量を、初回放電容量とした。1Cとは、全電池容量を1時間で使い切ることができる電流値である。
定電流充電:電流0.7C、充電終止電圧4.2V
定電圧充電:充電終止電流0.05C、電圧4.2V
定電流放電:電流0.2C、放電終止電圧2.5V
その後、定電流放電時の電流を0.2Cから1Cに変更する以外は、前記と同様にして、充放電を98サイクル実施した。100サイクル目の充放電は、1サイクル目の充放電と同じ条件で実施した。このときの放電容量を100サイクル後放電容量とした。
そして、初回放電容量に対する100サイクル後放電容量の百分率を容量維持率(%)として求めた。結果を表1に示す。
[電池の膨れ]
100サイクル後の電極群の厚さT及びサイクル特性の評価前の電極群の厚さT0を測定し、下記式から電池の膨れ(%)を求めた。結果を表1に示す。
電池の膨れ(%)=[(T−T0)/T0]×100
Figure 2010092815
表1から、実施例1及び2の電池は、100サイクル経過後でも、サイクル特性が高い水準に維持され、且つ電池の膨れが抑制されていることが判る。これは、薄膜状負極活物質層の表面にリチウムイオン伝導性樹脂層を形成することにより、合金系活物質にクラックが発生し、新生面が生成しても、リチウムイオン伝導性樹脂層が新生面と非水電解質との接触を抑制するためであると推測される。
また、実施例1と実施例2との比較から、薄膜状負極活物質層が、べた膜ではなく、複数の柱状体からなる場合は、サイクル特性がさらに高水準に維持され、電池の膨れがさらに抑制されることが判る。これは、薄膜状負極活物質層が複数の柱状体を含むことから、薄膜状負極活物質層とリチウムイオン伝導性樹脂層との密着性がさらに向上するためであると推測される。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
本発明の非水電解質二次電池は、従来の非水電解質二次電池と同様の用途に使用でき、特に、電子機器、電気機器、工作機器、輸送機器、電力貯蔵機器等の主電源又は補助電源として有用である。電子機器には、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末、携帯用ゲーム機器等がある。電気機器には、掃除機、ビデオカメラ等がある。工作機器には、電動工具、ロボット等がある。輸送機器には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインHEV、燃料電池自動車等がある。電力貯蔵機器には、無停電電源等がある。

Claims (17)

  1. 負極集電体と、前記負極集電体表面に支持されてリチウムイオンを吸蔵及び放出する合金系活物質を含む負極活物質層と、を備え、
    前記負極活物質層の表面に、リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分と非水電解質用添加剤とを含有する樹脂層をさらに備える、非水電解質二次電池用負極。
  2. 前記非水電解質用添加剤の含有割合が前記樹脂層全量の0.1〜50質量%である請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
  3. 前記非水電解質用添加剤がカーボネート化合物を含有する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  4. 前記カーボネート化合物が、ビニレンカーボネート、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート及びトリフルオロプロピレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極。
  5. 前記非水電解質用添加剤が含硫黄環状化合物を含有する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  6. 前記含硫黄環状化合物が、その分子中に基=SO2及び前記基=SO2に含有される酸素原子以外の酸素原子を含有する環状化合物である請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極。
  7. 前記含硫黄環状化合物が、エチレンサルファイト及びスルトン類から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極。
  8. 前記含硫黄環状化合物が、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン及び1,4−ブテンスルトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極。
  9. 前記非水電解質用添加剤が、酸無水物を含む請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  10. 前記酸無水物が、無水コハク酸及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の非水電解質二次電池用負極。
  11. 前記非水電解質用添加剤が、ニトリル化合物を含む請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  12. 前記ニトリル化合物がスクシノニトリルである請求項11に記載の非水電解質二次電池用負極。
  13. 前記リチウムイオン伝導性を有する樹脂成分が、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  14. 前記樹脂層の厚さが0.1〜10μmである請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  15. 前記負極活物質層が、前記負極集電体表面に支持された複数の柱状体の合金系活物質の集合体からなる請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  16. 前記合金系活物質が、珪素系活物質及び錫系活物質から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  17. リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出する負極と、前記正極と前記負極との間に介在するように配置されたリチウムイオン透過性絶縁層と、リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備え
    前記負極が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の負極である非水電解質二次電池。
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