JPWO2010082426A1 - リン系難燃剤組成物およびそれを含有する難燃性樹脂組成物、成形体 - Google Patents

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Abstract

一般式(I):(式中、R1およびR2は同一または異なって低級アルキル基、R3およびR4は同一または異なって水素原子または低級アルキル基、Yは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基、kは0または1、mは0〜4の整数を示す)で表される芳香族ジホスフェートからなり、かつ不純物として一般式(II):(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物の含有量がゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定で1面積%以下であることを特徴とするリン系難燃剤組成物。

Description

本発明は、樹脂用のリン系難燃剤組成物、それを含有する樹脂組成物およびそれからなる成形体に関する。
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に難燃性を付与するためには、樹脂成形品の調製時に難燃剤を添加する方法が採用されている。難燃剤としては無機化合物、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物などがある。これらの化合物の中で、有機ハロゲン化合物およびハロゲン含有有機リン化合物は優れた難燃効果を発揮する。しかし、これらのハロゲンを含有する化合物は、樹脂成形時に熱分解によりハロゲン化水素を発生して金型を腐食させ、樹脂自身を劣化させ、着色を起こし、作業環境を悪化させるという問題がある。また、火災や焼却などに際して、人体に有害なハロゲン化水素などの有毒ガスが発生するという問題もある。
そこで、ハロゲンを含まない難燃剤が望まれている。
このような難燃剤としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの無機系化合物、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェートやメラミンポリホスフェートなどの窒素系化合物がある。しかし、これらの無機系化合物や窒素系化合物は難燃効果が著しく低く、充分な効果を得るためには多量に添加する必要があり、それによって樹脂本来の物性が損なわれるという問題がある。
ハロゲンを含まず、比較的良好な難燃効果が得られる難燃剤として、有機リン化合物が挙げられ、その中でも有機リン酸エステル類が汎用されている。代表的な有機リン酸エステルとしてトリフェニルホスフェート(TPP)がよく知られている。しかし、TPPは耐熱性に劣り、揮発性が高いという性質がある。
したがって、近年、開発が進んでいるエンジアリングプラスチック、さらにはスーパーエンジニアリングプラスチックなどの高機能プラスチックでは、成形加工などに300℃前後の高い温度が必要とされ、TPPはこのような高温には耐えられない。
そこで、低揮発性で熱安定性を有する難燃剤として、本発明の一般式(I)で表される芳香族ジホスフェートに着目し、高純度で成形加工性がよく、しかも取扱い、包装や運搬に有利な粉末状のものが研究されてきた(特開平5−1079号公報(特許文献1)および特開平9−87290号公報(特許文献2)参照)。
特許文献1に記載の製造方法では、反応後の精製工程において溶剤を用いて再結晶や晶析により高純度の芳香族ジホスフェートを得ている。この場合、固液分離、乾燥、溶剤のリサイクル工程が必要となり、また溶剤への溶解ロスによる収率低下も加わるため、とりわけ規模の大きい工業スケールを想定した場合には工程面やコスト面からは必ずしも有利とはいえない。
そこで、特許文献2では、得られた芳香族ジホスフェートを特別な精製処理に付することなく固化させ粉末化する方法が提案された。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、特別な精製処理に付さないために、副生成物として一般式(II)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物が芳香族ジホスフェート中に存在する。
この副生成物を含む芳香族ジホスフェートを難燃剤としてポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂に添加した場合、成形加工中にエステル交換反応を起こす、熱分解した樹脂の分子の末端と反応を起こす、樹脂成形品の長期間の使用中に徐々に悪影響を与えるなどして樹脂の分子量を低下させ、その結果、樹脂成形品の耐久性、物性、耐水性、耐加水分解性、耐熱性が低下するという問題がある。
また、この副生成物は、成形加工などの高温条件において、主成分である芳香族ジホスフェートとエステル交換を起こし、さらなる副生成物の増加を引き起こし、主成分の純度が低下するという問題もある。
特開2003−160712号公報(特許文献3)には、本発明の一般式(II)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物を主成分とした難燃剤組成物が記載されている。特許文献3では、一般式(II)の化合物が有する官能基(ヒドロキシフェニル基)を利用して、このリン化合物をエポキシ樹脂の反応型難燃剤として使用することを検討している。
しかしながら、本発明の一般式(I)で表される芳香族ジホスフェートを主成分とする添加型難燃剤では、本発明の一般式(II)で表されるヒドロキシフェニル基を有する化合物は、上記のような問題を引き起こす原因となり好ましくない。
特開平5−1079号公報 特開平9−87290号公報 特開2003−160712号公報
本発明は、熱可塑性樹脂の成形時や成形品の長期間の使用時においても機械的物性の低下を最小限に抑え、かつ優れた耐久性、難燃性を樹脂組成物に付与し得るリン系難燃剤組成物、それを含有する難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形体を提供することを課題とする。
かくして、本発明によれば、一般式(I):
Figure 2010082426
(式中、R1およびR2は同一または異なって低級アルキル基、R3およびR4は同一または異なって水素原子または低級アルキル基、Yは結合手、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基、kは0または1、mは0〜4の整数を示す)
で表される芳香族ジホスフェート化合物からなり、かつ不純物として一般式(II):
Figure 2010082426
(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物の含有量がゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定で1面積%以下であることを特徴とするリン系難燃剤組成物が提供される。
本発明によれば、熱可塑性樹脂の成形時や成形品の長期間の使用時においても機械的物性の低下を最小限に抑え、かつ優れた耐久性、難燃性を樹脂組成物に付与し得るリン系難燃剤組成物、それを含有する難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形体を提供することができる。ここで、耐久性とは、特に温度、湿度や紫外線などに対する耐性を意味する。
本発明のリン系難燃剤組成物は、一般式(I)で表される芳香族ジホスフェート化合物(以下、「芳香族ジホスフェート化合物(I)」ともいう)からなり、かつ不純物として一般式(II)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(以下、「ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)」ともいう)の含有量がGPC測定で1面積%以下であることを特徴とする。
ここで、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量がGPC測定で「1面積%以下である」とは、その含有量が「0面積%を超えかつ1面積%以下である」ことを意味する。ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量における下限は、好ましくは0.01面積%、より好ましくは0.001面積%、さらに好ましくは0.0001面積%であり、その上限は好ましくは0.9面積%、より好ましくは0.8面積%、さらに好ましくは0.7面積%である。
芳香族ジホスフェート化合物(I)は、GPC測定で95面積%以上含まれるのが好ましい。
本発明のリン系難燃剤組成物は、例えば、特開平5−1079号公報(前記特許文献1)に記載の製造方法により合成することができる。
すなわち、第1工程として、一般式(III):
Figure 2010082426
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
で表されるオルト位に立体障害基を有する芳香族モノヒドロキシ化合物(以下、「芳香族モノヒドロキシ化合物(III)」ともいう)とオキシハロゲン化リンとをルイス酸触媒の存在下で反応させて、次いで必要に応じて減圧により有機溶剤や未反応の芳香族モノヒドロキシ化合物(III)およびオキシハロゲン化リンを除去し、一般式(IV):
Figure 2010082426
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義であり、Xはハロゲンを示す)
で表されるジアリールホスホロハリデート(以下、「ジアリールホスホロハリデート(IV)」ともいう)を得る。
次に、第2工程として、第1工程で得られたジアリールホスホロハリデート(IV)と一般式(V):
Figure 2010082426
(式中、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(以下、「芳香族ジヒドロキシ化合物(V)」ともいう)とをルイス酸触媒の存在下、有機溶剤中で反応させ、得られた反応混合物から有機溶剤および触媒を除去して、主成分として芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む油状物を得る。
次に、第2工程で得られた油状物を、例えば、特開平9−87290号公報(前記特許文献2)に記載の方法により粉末にすることができる。
すなわち、温度制御可能なニーダー中、芳香族ジホスフェート化合物(I)の融点より5〜100℃低い温度で応力付加を行って固化粉末化することにより、主成分として芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む、固体または結晶性粉末状のリン系難燃剤組成物が得られる。
反応図式に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。
1.第1工程
Figure 2010082426
前記式中、R1およびR2は同一または異なって低級アルキル基、R3は水素原子または低級アルキル基を示す。
1、R2およびR3の「低級アルキル基」とは、直鎖または分枝状の炭素数1〜5のアルキル基であって、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo-ペンチルなどが挙げられ、これらの中でもメチル基が特に好ましい。
すなわち、オルト位に立体障害基を有する芳香族モノヒドロキシ化合物(III)の具体例としては、2,6−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノールなどが挙げられ、2,6−キシレノールが特に好ましい。
また、オキシハロゲン化リンとしては、オキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンが挙げられ、オキシ塩化リンが特に好ましい。
第1工程の反応に用いられるルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化亜鉛、塩化スズなどが挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウムが特に好ましい。また、これらの化合物を2種以上混合して使用してもよい。
第1工程の触媒の使用量は、オキシハロゲン化リンに対して0.1重量%以上、好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲である。
オキシハロゲン化リンは、芳香族モノヒドロキシ化合物(III)1モルに対して、基本的に通常0.5モル当量の割合で用いられる。オキシハロゲン化リンが過剰であると、アリールホスホロジハリデートの副生割合が高くなり、第2工程において芳香族ジヒドロキシ化合物(V)との間で高次の縮合物が副生する。オキシハロゲン化リンが過少であると、トリアリールホスフェートの副生割合が高くなり、いずれの場合にも主成分の純度が低下する。
しかしながら、反応により副生するハロゲン化水素と共に、オキシハロゲン化リンや芳香族モノヒドロキシ化合物(III)が飛散し易く、両者のモル比が崩れる傾向があり、とりわけ工業スケールの場合には顕著になる。したがって、製造スケールに合わせてオキシハロゲン化リンと芳香族モノヒドロキシ化合物(III)とのモル比を適宜調節するのが好ましい。
反応温度は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃である。反応により副生するハロゲン化水素を反応系外に除去し反応を促進させる目的で、反応系内を減圧にしてもよい。
第1工程においては、必ずしも反応溶剤を必要としないが、任意に用いることができる。その溶剤としては、例えばキシレン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの有機溶剤が挙げられる。
反応終了後、30kPa以下の減圧により有機溶剤や未反応の芳香族モノヒドロキシ化合物(III)およびオキシハロゲン化リンを除去する。減圧は低沸分の除去を目的とするため、好ましくは20kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下である。
第1工程においては、反応生成物中のジアリールホスホロハリデート(IV)は通常99%以上の高純度であり、精製工程を経ずに第2工程に用いることができる。
2.第2工程
Figure 2010082426
前記式中、R4は水素原子または低級アルキル基を示す。
4の「低級アルキル基」とは、直鎖または分枝状の炭素数1〜5のアルキル基であって、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo-ペンチルなどが挙げられる。
すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ピロカテコール、4,4'−ビフェノール、2,2',6,6'−テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−チオジフェノールなどが挙げられ、これらの中でも、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノールが特に好ましい。
第2工程の反応に用いられるルイス酸触媒としては、第1工程のルイス酸触媒が挙げられ、第1工程の反応後に除去することなしに、第1工程で用いたルイス酸触媒を第2工程の反応にそのまま使用してもよいが、さらに添加してもよい。添加するルイス酸触媒としては、塩化アルミニウムが特に好ましい。また、ルイス酸触媒の代わりに、もしくは併用触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどアミンを用いてもよい。
第2工程の触媒の使用量は、第1工程で使用されたオキシハロゲン化リンに対して0.1重量%以上、好ましくは0.5〜5.0重量%の範囲である。
芳香族ジヒドロキシ化合物(V)は、ジアリールホスホロハリデート(IV)に対して、0.5モル当量の割合で使用される。
反応温度は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃である。反応により副生するハロゲン化水素を反応系外に除去し反応を促進させる目的で、反応系内を減圧にしてもよい。
反応終了後、反応物中の触媒などの不純物を公知の方法により洗浄除去する。例えば、反応物を塩酸などの酸水溶液と接触させ、これらの不純物を水溶液側に抽出する。
この時、芳香族ジホスフェート(I)が固体化することを防止するために、有機溶剤を添加してもよい。
有機溶剤としては、高温での芳香族ジホスフェート(I)の溶解度が高く、低温で低いものが好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、処理温度は、室温から前記水溶液の沸点以下までであり、有機溶剤の使用量は処理温度において、少なくとも芳香族ジホスフェート(I)の析出が起こらない量であればよい。
上記の製造工程を工業スケールで実施する場合には、第1工程においてジアリールホスホロハリデート(IV)を製造する際に副生するハロゲン化水素と共に、オキシハロゲン化リンや芳香族モノヒドロキシ化合物(III)が飛散し易く、芳香族モノヒドロキシ化合物(III)2モルから正確にジアリールホスホロハリデート(IV)1モルが生成し難い。すなわち、芳香族モノヒドロキシ化合物(III)の飛散により、ジアリールホスホロハリデート(IV)の生成モル数は、第1工程における化合物(III)の原料モル数の1/2モル当量より少なくなる。そして、このような現象は工業スケールが大きくなるほど、また第1工程において副生するハロゲン化水素の単位時間当たりの発生量が多くなるほど顕著になる。
工業スケールでは、通常、第1工程と第2工程を続けて同じ反応容器で実施するので、第2工程は第1工程の反応の影響を受けることになる。すなわち、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の量は、理論的には芳香族モノヒドロキシ化合物(III)の量の1/4モル等量になるが、実際には4分の1モル等量より少ないモル等量になっている。それゆえ、第2工程において芳香族ジヒドロキシ化合物(III)が完全に消費されずに未反応のまま残る。つまり、反応系中に芳香族ジヒドロキシ化合物(III)の一部のヒドロキシ基が残ってしまう。その結果、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が芳香族ジホスフェート(I)中に含有される。
ここで、「工業スケール」とは、芳香族ジヒドロキシ化合物(III)とジアリールホスホロハリデート(IV)とを反応させる際の合計量が通常の工業生産における規模であることをいう。その規模は、具体的には、好ましくは5リットル以上、より好ましくは30リットル以上、さらに好ましくは100リットル以上、特に好ましくは300リットル以上である。
また、それらの原料の合計量は、反応装置の制約などから、具体的には、好ましくは20000リットル以下、より好ましくは10000リットル以下である。
芳香族ジホスフェート化合物(I)からなり、好ましくはGPC測定で95面積%以上含み、かつ不純物としてヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量がGPC測定で1面積%以下である、本発明のリン系難燃化合物を得るための最も有効な方法は、第1工程において生成されたジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステル、すなわち芳香族ジホスフェート化合物(I)とするのに必要な理論量、すなわちジアリールホスホロハリデート(IV)に対して化学量論的に等量の芳香族ジヒドロキシ化合物(III)を第2工程において使用することである。
ジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量は、ジアリールホスホロハリデート(IV)に含まれるハロゲン原子を全てアリールエステル基に置換するのに必要な量であり、例えば、ジアリールホスホロハリデート(IV)2モルに対して、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)1モルである。
このような理論量は、具体的には、第1工程後の反応混合物の量およびそのハロゲン濃度から算出することができる。
上記のように、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(III)の使用量を調整することにより、本発明のリン系難燃化合物を得ることができる。
芳香族ジホスフェート化合物とヒドロキシフェニル基を有するリン化合物は、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート、またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4'−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4'−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートの組み合わせであるのが好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートの組み合わせであるのが特に好ましい。
本発明のリン系難燃化合物は、主成分の芳香族ジホスフェート化合物(I)および不純物としてヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)以外に、一般式(VI):
Figure 2010082426
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
で表される芳香族モノホスフェート(以下、「芳香族モノホスフェート(VI)」ともいう)および、一般式(VII):
Figure 2010082426
(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表される芳香族トリホスフェート(以下、「芳香族トリホスフェート(VII)」ともいう)も同時に生成する。
しかしながら、これらの芳香族モノホスフェート(VI)および芳香族トリホスフェート(VII)はヒドロキシフェニル基を有さないので、樹脂には前述のような悪影響を何ら及ぼさない。
3.粉末化工程
第2工程において得られた油状物を、芳香族ジホスフェート化合物(I)の融点より5〜100℃低い温度で、一般にプラスチック材料の混練に使用されるニーダーを用いて応力付加を行って粉末化することができる。
「混練」とは、プラスチック材料に数種の添加剤を混ぜ合わせる場合、材料と添加剤に同時に剪断力を与え、添加剤を材料内部に均一に分散させることをいう。
また、「応力付加」とは、ニーダーに供給される材料の温度を均一にすると同時に、材料に剪断力、すなわち応力を付与する点で「混練」と同義である。
一般にニーダーは、ミキシングロール、Σ羽根型混練機、インテンシブミキサなどの回分式、および高速二軸連続ミキサ、押出機型混練機などの連続式に分類される。固化目的でこれらの混練機を用いる場合、生成した固化物を同時に圧搾することができる連続式ニーダーが好ましい。また連続式はその処理能力が高く、工業的利用面からも有利である。
特に好適なニーダーとして、押出機型混練機の一種であり強力な剪断力をもち、混練効果が高く、連続的な固化粉末化が可能であるという特徴をもつコニーダー型混練機が挙げられるが、同様の効果がある機種であれば特にこれに限定されるものではない。
また、ニーダーは電気抵抗型バンドヒーター、アルミニウム鋳込みヒーターまたは誘電加熱方式などの加熱機構、およびシリンダに設けたジャケット部やスクリュー内に設けたパイプに水または油を流通させるなどの加熱または冷却機構を備え、ニーダー内部の温度を制御することができる。
ニーダー内部を適当な温度範囲に制御する必要があるが、その最適な温度範囲は、固化させる油状物の熱的物性の他、特に混練時の粘度、流動性、摩擦熱、また使用する装置の特性により変動する。その温度は、一般的には芳香族ジホスフェート類の融点より、5〜100℃低い温度、好ましくは10〜70℃低い温度、より好ましくは10〜50℃低い温度である。温度がこの範囲であれば、ニーダー内の化合物に適当な応力が付加され、完全固化および固化時間の短縮が達成できる。この方法は粉末化において溶剤を使用しないので粉末の乾燥工程が無く、また溶剤の精製や再使用を考慮しなくてもよいため、工業生産の場合には有利である。
第2工程において得られた油状物を粉末化する他の方法としては、有機溶剤を使用した再結晶法、分別蒸留法などの精製処理が挙げられる。
再結晶法で使用する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブトルケトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、一般的に溶剤として用いられる有機化合物が挙げられる。
この再結晶法では、ニーダーを用いた粉末化よりもさらに、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量を少なくすることができる。
本発明のリン系難燃剤組成物は、高品質であり、各種の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の難燃剤として使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)系樹脂、耐衝撃性スチレン系樹脂、SAN(スチレン−アクリロニトリル)系樹脂、ACS樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、液晶ポリマー、複合化プラスチックなどが挙げられ、これらは1種を単独で、2種以上を混合して用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で、2種以上を混合して用いることができる。
上記の樹脂の中でも、本発明のリン系難燃剤組成物がその機能を充分に発揮し得る樹脂として、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)系樹脂、耐衝撃性スチレン系樹脂、SAN(スチレン−アクリロニトリル)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、液晶ポリマー、複合化プラスチック、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの高機能でかつ成形加工温度や耐熱温度が高いエンジアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられ、これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、またはエポキシ樹脂が特に好ましい。
したがって、本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびエポキシ系樹脂から選択される1種以上の樹脂と、本発明のリン系難燃剤組成物とを含有することを特徴とする。
本発明のリン系難燃剤組成物は、通常、上記の樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは3〜30重量部の割合で用いられる。
本発明の難燃性組成物は、必要に応じて、通常樹脂に添加されるその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。このような成分として、例えば他の難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤、改質剤、香料、抗菌剤、顔料、染料、耐熱剤、耐候剤、帯電肪止剤、紫外線吸収剤、安定剤、強化剤、アンチブロッキング剤、木粉、でんぷんなどが挙げられる。
本発明のリン系難燃剤組成物を樹脂に添加する方法は、特に限定されず、例えば、各成分を単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキサー、ロールなどの汎用の混練装置を用いて溶融混練するなどの公知の方法が挙げられる。
成形温度が高い樹脂、例えば、1つの実施態様では、160℃以上で成形される樹脂、より好ましい実施態様では180℃以上で成形される樹脂、特に好ましい実施態様では、200℃以上で成形される樹脂において、本発明のリン系難燃剤組成物が有利に使用され得る。
本発明のリン系難燃剤組成物は、難燃剤として樹脂に添加して成形機で加工する際に、その高い処理温度でガスを発生することなく、耐熱性、耐着色性に優れた高品質な成形品を提供することができる。
本発明のリン系難燃剤組成物は、樹脂に添加され、成形されて、所望の成形品を提供することができる。
したがって、本発明の成形体は、本発明の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明の難燃性樹脂組成物を成形する方法は、特に限定されず、例えば、射出成形機、押出成形機、ブロー成形機、インフレーション成形機などの成形機を用いて所望の形状に成形するなどの公知の方法が挙げられる。
本発明を以下の実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
以下の実施例および比較例では、得られた組成物中の各成分の割合を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した各成分の面積の百分率(面積%)で表す。GPCの装置および測定条件を以下に示す。
分析装置:東ソー株式会社製、型式:HLC−8020
カラム:東ソー株式会社製、型式:TSKGEL G1000HXL(30cm)2本
カラム槽温度:40℃
溶剤:テトラヒドロフラン(工業用)
溶剤流量:0.8ml/分
検出器:RI(本体内蔵、偏光型示差屈折計)
レンジ:16
試料溶液注入量:100μl(ループ管)
試料溶液:試料約0.05gをテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液
データ処理装置:東ソー株式会社製、型式:SC−8010
データ処理条件:START TIME 10.0min
STOP TIME 25.0min
WIDTH 10
SENSITIVITY 0.8
DRIFT 0.1
MINIMUM AREA 0.0
MINIMUM HEIGHT 0.0
(実施例1)
1.第1工程
攪拌機、温度計、滴下装置(ロート)および塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた1リットルの4つ口フラスコに、芳香族モノヒドロキシ化合物(III)として2,6−キシレノール244g、溶剤としてキシレン20gおよび触媒として塩化マグネシウム1.5gを充填した。得られた混合溶液を攪拌しながら加熱し、混合溶液の温度が120℃に達した時点で、オキシ塩化リン153gを約2時間かけて滴下により添加した。添加終了後、混合溶液の温度を180℃まで2時間かけて徐々に加熱昇温し、反応させて、発生する塩化水素(塩酸ガス)68gを水スクラバーから回収した。その後、同温度(180℃)でフラスコ内の圧力を徐々に20kPaまで減圧し、1時間かけてキシレンや未反応のオキシ塩化リンおよび2,6−キシレノールを除去し、ジアリールホスホロハリデート(IV)としてジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートを含む反応混合物322g(収率99.2%)を得た。また、反応混合物の塩素含有率は10.7重量%であった。
2.第2工程
次に、第1工程で得られた反応混合物に、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)としてレゾルシノール53.5g(ジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートに対して化学量論的に等量である量)、追加触媒として塩化アルミニウム4.2gを加えた。得られた混合溶液を攪拌しながら加熱し、混合溶液の温度を180℃まで2時間かけて徐々に加熱昇温し、脱塩酸反応を行なった。同温度(180℃)で2時間反応させ、フラスコ内の圧力を徐々に20kPaまで減圧し、その減圧下でさらに2時間反応させ、芳香族ジホスフェート化合物(I)の粗製物を得た。
3.精製工程
得られた粗製物を85℃に加熱し、キシレン90g、35%塩酸水9gおよび水140gを加え、同温度(85℃)で1時間撹拌し、静置後に水相を分離した。
得られた粗製物と溶剤(キシレン)との混合物(粗製物濃度は約80重量%)に、28%水酸化ナトリウム水溶液5gおよび水130gを加えた。得られた混合溶液を85℃で1時間攪拌し、静置後に水相を分離した。
次いで、得られた混合溶液の油相を、液温85℃において水130gで洗浄し、油相430g(芳香族ジホスフェート(I)の濃度は約80重量%)を得た。得られた油相から減圧下でキシレンを除去し、その後温度140℃、圧力6kPaで減圧水蒸気蒸留を行い、芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む油状物330gを得た。
4.粉末化工程
回転数表示機能付き撹拌機(新東科学株式会社製、型式:HEIDON TYPE3000H型)および温度計を備えた1リットルの4つ口フラスコに、芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む油状物320gを充填し、低回転(回転数100rpm程度)で攪拌しながら温度60℃まで放冷し、湯浴を用いて同温度(60℃)に保持した。
次いで、結晶核として結晶状の芳香族ジホスフェート化合物(I)を固化対象物(油状物)に対して0.1重量%を添加し、回転数200rpmで攪拌したところ、所要時間8分で油状物が完全に固化した。
得られた固化物320gは白色粉末で、融点98〜101℃であった。
また、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、その組成を測定したところ、化合物(1)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.6面積%、化合物(2)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.7面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.1面積%、および化合物(8)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.6面積%であった(下記構造式参照)。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
Figure 2010082426
(実施例2)
反応容器として20リットルの4つ口フラスコを用い、芳香族モノヒドロキシ化合物(III)として2,6−キシレノール5856g、溶剤としてキシレン480g、触媒として塩化マグネシウム36gおよびオキシ塩化リン3672gを用いたこと以外は実施例1の第1工程と同様にして、ジアリールホスホロハリデート(IV)としてジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートを含む反応混合物7741g(収率99.4%)を得た。また、反応混合物の塩素含有率は10.6重量%であった。
また、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)としてレゾルシノール1273gおよび追加触媒として塩化アルミニウム101gを用いたこと以外は実施例1の第2工程と同様にして、芳香族ジホスフェート化合物(I)の粗製物8200gを得た。
得られた粗製物に、キシレン2160g、35%塩酸水216g、水3360g、28%水酸化ナトリウム水溶液120gおよび水3120gを加えたこと、および洗浄水3120gを用いたこと以外は実施例1と同様にして精製処理を行い、芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む油状物7960gを得た。
また、20リットルの4つ口フラスコを用いたこと、および芳香族ジホスフェート化合物(I)を含む油状物7920gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粉末化工程を行い、白色粉末7920gを得た。
得られた白色粉末は、融点98〜101℃であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(1)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.2面積%、化合物(2)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.8面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.3面積%および化合物(8)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.7面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(実施例3)
レゾルシノールの代わりにハイドロキノンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末320gを得た。
得られた白色粉末は、融点171〜173℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.6重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(3)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.6面積%、化合物(4)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.7面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.1面積%および化合物(9)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.6面積%であった(下記構造式参照)。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
Figure 2010082426
(実施例4)
レゾルシノールの代わりにハイドロキノンを用いたこと以外は実施例2と同様にして、白色粉末7920gを得た。
得られた白色粉末は、融点171〜173℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.6重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(3)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.4面積%、化合物(4)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.7面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.2面積%および化合物(9)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.7面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(実施例5)
レゾルシノールの代わりに4,4’−ビフェノール90gを用い、キシレンの代わりにジクロロベンゼンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末354gを得た。
得られた白色粉末は、融点187〜189℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.4重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(5)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.6面積%、化合物(6)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.7面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.1面積%および化合物(10)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.6面積%であった(下記構造式参照)。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
Figure 2010082426
(実施例6)
レゾルシノールの代わりに4,4’−ビフェノール2150gを用い、キシレンの代わりにジクロロベンゼンを用いたこと以外は実施例2と同様にして、白色粉末8800gを得た。
得られた白色粉末は、融点187〜189℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.4重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(5)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.2面積%、化合物(6)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が0.7面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.4面積%および化合物(10)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.7面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(比較例1)
芳香族ジヒドロキシ化合物(V)としてレゾルシノール55g(芳香族モノヒドロキシ化合物(III)としての2,6−キシレノールのモル数に対して4分の1モル量)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末322gを得た。
得られた白色粉末は、融点98〜101℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.7重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(1)で表される芳香族ジホスフェート(I)が96.6面積%、化合物(2)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が1.2面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が1.8面積%および化合物(8)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.4面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(比較例2)
芳香族ジヒドロキシ化合物(V)としてレゾルシノール1320g(芳香族モノヒドロキシ化合物(III)としての2,6−キシレノールのモル数に対して4分の1モル量)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、白色粉末8000gを得た。
得られた白色粉末は、融点98〜101℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.6重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(1)で表される芳香族ジホスフェート(I)が95.5面積%、化合物(2)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が2.5面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.0面積%および化合物(8)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.5面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(比較例3)
芳香族ジヒドロキシ化合物(V)としてハイドロキノン55g(芳香族モノヒドロキシ化合物(III)としての2,6−キシレノールのモル数に対して4分の1モル量)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、白色粉末8005gを得た。
得られた白色粉末は、融点171〜173℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.6重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(3)で表される芳芳香族ジホスフェート(I)が96.3面積%、化合物(4)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が1.5面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が1.8面積%および化合物(9)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.4面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
(比較例4)
芳香族ジヒドロキシ化合物(V)として4,4’−ビフェノール93g(芳香族モノヒドロキシ化合物(III)としての2,6−キシレノールのモル数に対して4分の1モル量)を用いたこと以外は実施例5と同様にして、白色粉末357gを得た。
得られた白色粉末は、融点187〜189℃であった。
なお、第1工程の反応混合物の塩素含有率は10.4重量%であった。
GPCにより、得られた白色粉末の組成を測定したところ、化合物(5)で表される芳芳香族ジホスフェート(I)が96.4面積%、化合物(6)で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が1.2面積%、化合物(7)で表される芳香族モノホスフェート(VI)が2.0面積%および化合物(10)で表される芳香族トリホスフェート(VII)が0.4面積%であった。
得られた結果を使用した原料と共に表1に示す。
Figure 2010082426
表1の結果から、第1工程において生成されたジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステル、すなわち芳香族ジホスフェート化合物(I)とするのに必要な理論量、すなわちジアリールホスホロハリデート(IV)に対して化学量論的に等量の芳香族ジヒドロキシ化合物(III)を第2工程において使用することにより、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成を抑制できることがわかる。
また、反応スケールを大きくした場合でも、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(III)の使用量を調整することにより、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成を抑制できることがわかる(例えば、実施例1と2との対比)。
一方、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(III)の使用量を調整しない場合には、反応スケールを大きくすると、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成量が増加する傾向にあることがわかる(例えば、比較例1と2との対比)。
(実施例7〜15)
樹脂として、変性PPE樹脂(日本ジーイープラスチックス社製、商品名:ノリル731)、PC/ABSアロイ樹脂(ダイセルポリマー株式会社製、商品名:ノバロイS−1500)およびABS樹脂(ダイセルポリマー株式会社製、商品名:セビアンV−500)、添加剤にドリップ防止剤としてフッ素樹脂(三井デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名:テフロン(登録商標)6−J)を用いた。
表2〜4に示す配合をミキサーで混合後、250〜300℃に保持した押出機を通してコンパウンディングペレットを得た。得られたペレットを射出成形機にいれ、250〜300℃で成形し、試験片を得た。
下記の方法で、得られた試験片について、難燃性、アイゾット衝撃強度、樹脂流れ性(メルトフローレート)、荷重たわみ温度および引張強さを測定した。
また、下記の耐久性試験として、恒温恒湿器または耐候光試験機で処理した後の試験片について、アイゾット衝撃強度およびメルトフローレートを測定した。
得られた結果を樹脂組成物の配合と共に表2〜4に示す。
(1)難燃性(垂直燃焼性)
試験方法:UL−94に準拠(5検体の平均消炎時間)
試験片:厚さ1.6mm
評価:規定によるランク V−0、V−1およびV−2
(2)アイゾット衝撃強度
試験方法:ASTM D−256に準拠
試験片:厚さ3.2mm
単位:J/m
(3)メルトフローレート(樹脂流れ性)
試験方法:JIS K7210、操作Aに準拠
温度:変性PPE樹脂275℃、PC/ABSアロイ樹脂230℃、ABS樹脂 200℃
荷重:変性PPE樹脂2.16kg、PC/ABSアロイ樹脂5kg、ABS樹脂5kg
単位:g/10分(min)
熱と荷重により、樹脂や難燃剤の分子結合が切れて分子量が低下すると、樹脂組成物の流動性が大きくなるので、これを測定することにより、樹脂組成物の安定性の目安とすることができる。
(4)荷重たわみ温度
試験方法:ASTM D−648に準拠
試験片:厚さ6.4mm
荷重:曲げ応力1.8MPa
単位:℃
(5)曲げ強さ
試験方法:ASTM D−790に準拠
試験片:厚さ6.4mm
単位:MPa
耐久性試験は次の試験機を用いて行った。
(6)恒温恒湿器
試験機:タバイエスペック株式会社製、商品名:プラチナスレインボーPR−1G
試験槽温度:80℃
試験槽湿度:80%RH
6時間および24時間処理した試験片について、それぞれアイゾット衝撃強度およびメルトフローレートを測定した。表2〜4中、それぞれレインボー6HR処理後およびレインボー24HR処理後と記載記載し、初期値に対する割合を維持率(%)として付記する。
(7)耐候光試験機
試験機:スガ試験機株式会社製、商品名:デューパネルウェザーメーターDPWL−5
試験槽温度:60℃
照射波長:ピーク波長313nm(紫外線蛍光ランプ)
照射強度:2.0mW/cm2
100時間処理した試験片について、アイゾット衝撃強度を測定した。表2〜4中、デューパネル100HR処理後と記載し、初期値に対する割合を維持率(%)として付記する。
(比較例5〜13)
表2〜4に示した配合を用いて、実施例7〜15と同様にして試験片を得、物性を測定した。
得られた結果を表2〜4に示す。
Figure 2010082426
Figure 2010082426
Figure 2010082426
表2〜4の結果から、本発明のリン系難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物の成形体(実施例7〜15)とそれを含有しない難燃性樹脂組成物の成形体(比較例5〜13)とは、難燃性、荷重たわみ温度および曲げ強さの大差はなく、メルトフローレートの初期値の大差はなく、差はあっても微差であることがわかる。しかしながら、アイゾット衝撃強度の初期値は、前者の方が大きいことがわかる。
一方、耐久性試験後のアイゾット衝撃強度およびメルトフローレートについては、両者の差は非常に大きく、その差は歴然としており、前者が耐久性試験前の物性の低下を抑制し、優れていることがわかる。
いる。
すなわち、本発明のリン系難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物の成形体は、アイゾット衝撃強度およびメルトフローレートに優れ、特に温度および湿度への耐久性に優れることがわかる。
2.第2工程
Figure 2010082426
工業スケールでは、通常、第1工程と第2工程を続けて同じ反応容器で実施するので、第2工程は第1工程の反応の影響を受けることになる。すなわち、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の量は、理論的には芳香族モノヒドロキシ化合物(III)の量の1/4モル等量になるが、実際には4分の1モル等量より少ないモル等量になっている。それゆえ、第2工程において芳香族ジヒドロキシ化合物(V)が完全に消費されずに未反応のまま残る。つまり、反応系中に芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の一部のヒドロキシ基が残ってしまう。その結果、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)が芳香族ジホスフェート(I)中に含有される。
ここで、「工業スケール」とは、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)とジアリールホスホロハリデート(IV)とを反応させる際の合計量が通常の工業生産における規模であることをいう。その規模は、具体的には、好ましくは5リットル以上、より好ましくは30リットル以上、さらに好ましくは100リットル以上、特に好ましくは300リットル以上である。
また、それらの原料の合計量は、反応装置の制約などから、具体的には、好ましくは20000リットル以下、より好ましくは10000リットル以下である。
芳香族ジホスフェート化合物(I)からなり、好ましくはGPC測定で95面積%以上含み、かつ不純物としてヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量がGPC測定で1面積%以下である、本発明のリン系難燃化合物を得るための最も有効な方法は、第1工程において生成されたジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステル、すなわち芳香族ジホスフェート化合物(I)とするのに必要な理論量、すなわちジアリールホスホロハリデート(IV)に対して化学量論的に等量の芳香族ジヒドロキシ化合物(V)を第2工程において使用することである。
ジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量は、ジアリールホスホロハリデート(IV)に含まれるハロゲン原子を全てアリールエステル基に置換するのに必要な量であり、例えば、ジアリールホスホロハリデート(IV)2モルに対して、芳香族ジヒドロキシ化合物(V)1モルである。
このような理論量は、具体的には、第1工程後の反応混合物の量およびそのハロゲン濃度から算出することができる。
上記のように、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の使用量を調整することにより、本発明のリン系難燃化合物を得ることができる。
第2工程において得られた油状物を粉末化する他の方法としては、有機溶剤を使用した再結晶法、分別蒸留法などの精製処理が挙げられる。
再結晶法で使用する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブルケトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、一般的に溶剤として用いられる有機化合物が挙げられる。
この再結晶法では、ニーダーを用いた粉末化よりもさらに、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の含有量を少なくすることができる。
本発明の難燃性組成物は、必要に応じて、通常樹脂に添加されるその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。このような成分として、例えば他の難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤、改質剤、香料、抗菌剤、顔料、染料、耐熱剤、耐候剤、帯電止剤、紫外線吸収剤、安定剤、強化剤、アンチブロッキング剤、木粉、でんぷんなどが挙げられる。
表1の結果から、第1工程において生成されたジアリールホスホロハリデート(IV)のすべてを縮合型燐酸エステル、すなわち芳香族ジホスフェート化合物(I)とするのに必要な理論量、すなわちジアリールホスホロハリデート(IV)に対して化学量論的に等量の芳香族ジヒドロキシ化合物(V)を第2工程において使用することにより、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成を抑制できることがわかる。
また、反応スケールを大きくした場合でも、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の使用量を調整することにより、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成を抑制できることがわかる(例えば、実施例1と2との対比)。
一方、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(V)の使用量を調整しない場合には、反応スケールを大きくすると、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(II)の生成量が増加する傾向にあることがわかる(例えば、比較例1と2との対比)。
耐久性試験は次の試験機を用いて行った。
(6)恒温恒湿器
試験機:タバイエスペック株式会社製、商品名:プラチナスレインボーPR−1G
試験槽温度:80℃
試験槽湿度:80%RH
6時間および24時間処理した試験片について、それぞれアイゾット衝撃強度およびメルトフローレートを測定した。表2〜4中、それぞれレインボー6HR処理後およびレインボー24HR処理後と記載し、初期値に対する割合を維持率(%)として付記する。
表2〜4の結果から、本発明のリン系難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物の成形体(実施例7〜15)とそれを含有しない難燃性樹脂組成物の成形体(比較例5〜13)とは、難燃性、荷重たわみ温度および曲げ強さの大差はなく、メルトフローレートの初期値の大差はなく、差はあっても微差であることがわかる。しかしながら、アイゾット衝撃強度の初期値は、前者の方が大きいことがわかる。
一方、耐久性試験後のアイゾット衝撃強度およびメルトフローレートについては、両者の差は非常に大きく、その差は歴然としており、前者が耐久性試験前の物性の低下を抑制し、優れていることがわかる
すなわち、本発明のリン系難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物の成形体は、アイゾット衝撃強度およびメルトフローレートに優れ、特に温度および湿度への耐久性に優れることがわかる。

Claims (8)

  1. 一般式(I):
    Figure 2010082426
    (式中、R1およびR2は同一または異なって低級アルキル基、R3およびR4は同一または異なって水素原子または低級アルキル基、Yは結合手、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基、kは0または1、mは0〜4の整数を示す)
    で表される芳香族ジホスフェート化合物からなり、かつ不純物として一般式(II):
    Figure 2010082426
    (式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
    で表されるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物の含有量がゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定で1面積%以下であることを特徴とするリン系難燃剤組成物。
  2. 前記芳香族ジホスフェート化合物が、GPC測定で95面積%以上含まれる請求項1に記載のリン系難燃剤組成物。
  3. 前記芳香族ジホスフェート化合物が、GPC測定で0.01面積%以上0.9面積%以下の前記ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物を含有する請求項1に記載のリン系難燃剤組成物。
  4. 前記芳香族ジホスフェート化合物と前記ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物が、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート、またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4'−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4'−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートの組み合わせである請求項1に記載のリン系難燃剤組成物。
  5. 前記芳香族ジホスフェート化合物と前記ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物が、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレン−ビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートである請求項4に記載のリン系難燃剤組成物。
  6. ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびエポキシ系樹脂から選択される1種以上の樹脂と、請求項1に記載のリン系難燃剤組成物とを含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  7. 前記難燃性樹脂組成物が、前記樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部の割合で前記リン系難燃剤組成物を含有する請求項6に記載の難燃性樹脂組成物。
  8. 請求項6に記載の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
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