JP2001226386A - リン酸エステルの精製方法 - Google Patents

リン酸エステルの精製方法

Info

Publication number
JP2001226386A
JP2001226386A JP2000037294A JP2000037294A JP2001226386A JP 2001226386 A JP2001226386 A JP 2001226386A JP 2000037294 A JP2000037294 A JP 2000037294A JP 2000037294 A JP2000037294 A JP 2000037294A JP 2001226386 A JP2001226386 A JP 2001226386A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phosphate
resin
phosphate ester
weight
crude
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000037294A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshimitsu Noda
利光 野田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daihachi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Daihachi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP2000037294A priority Critical patent/JP2001226386A/ja
Publication of JP2001226386A publication Critical patent/JP2001226386A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Fireproofing Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 可塑剤や難燃剤などの樹脂添加剤や化粧料、
外用剤等に有用な高品質のリン酸エステルを製造する方
法を提供すること。 【解決手段】 以下の一般式(I)のリン酸エステルを
主成分とする粗リン酸エステルを、アルカリ性無機塩の
存在下において、水蒸気蒸留に付することによって上記
課題を解決することができる。 (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは1〜
3の整数である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は特定のリン酸エステ
ルの精製方法に関する。詳しくは、粗リン酸エステルに
含まれる不純物を効率的かつ効果的に除去することので
きるリン酸エステルの精製方法および樹脂添加剤、化粧
料、外用剤等として有用な高品質なリン酸エステルに関
する。
【0002】
【従来の技術】リン酸エステルは、可塑剤や難燃剤など
の樹脂添加剤や化粧料、外用剤等の用途に幅広く用いら
れている化合物である。
【0003】通常、リン酸エステルはオキシハロゲン化
リンとヒドロキシ化合物とを反応させることにより製造
される。しかし、この合成方法において100%完全に
エステル化反応を行うことは難しい。このため、合成後
に得られるリン酸エステル製品は、未反応原料であるヒ
ドロキシ化合物を幾分か含有する。
【0004】このような、ヒドロキシ化合物が残存した
リン酸エステル製品を樹脂添加剤として使用した場合、
樹脂成形時の作業性を悪化させたり、成形品の品質(耐
熱性、可塑性)を低下させるといった問題が起こる。
【0005】このようにリン酸エステル製品中に残存す
るヒドロキシ化合物を除去する方法としては単蒸留、減
圧蒸留、水蒸気蒸留などが考えられる。しかし、ヒドロ
キシ化合物が下記式(II)で表される化合物である場
合、単蒸留または減圧蒸留による精製を行うためには大
掛りな装置が必要になるという欠点があり、また、得ら
れるリン酸エステルの熱安定性の低さのためにリン酸エ
ステルが熱分解してしまいやすいという欠点がある。他
方、水蒸気蒸留による精製を行うと該リン酸エステルが
加水分解を起こしやすく、得られる製品が酸性不純物を
有する、酸価の高い製品になりやすいという欠点があ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明が解決
しようとする課題は上記問題点を解決することである。
すなわち、本発明は、式(II): R1−O−R2−OH (II) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。)で表されるヒドロキシ化合物を原料
として用いたリン酸エステルの製造において、原料のヒ
ドロキシ化合物の残存量が少なく、かつ低酸価のリン酸
エステルを得る方法を提供するための精製方法を提供
し、そして樹脂添加剤として有用なリン酸エステルを提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を
重ねた結果、上記式(II)で表されるヒドロキシ化合
物を原料成分として用いるリン酸エステルを製造する際
に、合成反応後の、ヒドロキシ化合物が残存する粗リン
酸エステルを、アルカリ性無機塩の存在下において、水
蒸気蒸留に付することにより、該リン酸エステルの加水
分解を抑制しつつ効率的に該ヒドロキシ化合物を除去で
きることを見出した。
【0008】また、上記式(II)で表されるヒドロキ
シ化合物を原料成分として用いるリン酸エステルにおい
て、当該ヒドロキシ化合物の含有量が2重量%以下であ
り、かつ酸価が1mgKOH/g以下である該ヒドロキ
シ化合物を原料成分として用いるリン酸エステルが樹脂
添加剤として有用であることを見出した。
【0009】具体的には、本発明の方法は、リン酸エス
テルを精製する方法であって、不純物を含む粗リン酸エ
ステルをアルカリ性無機塩の存在下において水蒸気蒸留
する工程を包含し、ここで、該リン酸エステルは、以下
の一般式(I) (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは1〜
3の整数である。)で表されるリン酸エステルである。
【0010】1つの実施態様では、前記アルカリ性無機
塩が、前記粗リン酸エステル100重量部に対して0.
001重量部以上存在する条件下で、前記水蒸気蒸留が
行われる。
【0011】1つの実施態様では、前記アルカリ性無機
塩がアルカリ金属炭酸塩である。
【0012】1つの実施態様では、前記アルカリ金属炭
酸塩が炭酸ナトリウムである。
【0013】1つの実施態様では、前記リン酸エステル
の一般式(I)中のnが3である。
【0014】1つの実施態様では、前記リン酸エステル
がリン酸トリ(ブトキシエチル)である。
【0015】本発明の樹脂添加剤は、以下の一般式
(I)を有するリン酸エステルからなる樹脂添加剤であ
って: (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは1〜
3の整数である。) ここで、一般式(II)で表されるヒドロキシ化合物:
1−O−R2−OH (II) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。)の含有量が2重量%以下であり、か
つ酸価が1mgKOH/g以下である。
【0016】本発明によればまた、樹脂と、上記樹脂添
加剤とを含有する、難燃性樹脂組成物が提供される。
【0017】本発明によればまた、熱可塑性樹脂と、上
記樹脂添加剤とを含有する、熱溶融成形用可塑性樹脂組
成物が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の態様を詳細
に説明していくが本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0019】<粗リン酸エステル>本発明において粗リ
ン酸エステルとは、下記式(I)で表されるリン酸エス
テルであって、完全には精製されていないために不純物
を含む製品を指す。
【0020】 (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) 式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキ
ル基である。R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖の
アルキレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは
1〜3の整数である。好ましくは、nは3である。
【0021】ここで、R3の好ましい例としては、例え
ば、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル基で
あり、より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であ
り、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。
【0022】上記リン酸エステルの具体例としては、例
えば、リン酸トリ(ブトキシエチル)、リン酸トリ(ブ
トキシメチル)、リン酸トリ(エトキシエチル)、リン
酸トリ(エトキシメチル)などが挙げられる。その中で
もリン酸トリ(ブトキシエチル)は加水分解性が高いと
いう性質をもつことから本発明を適用するには好適であ
る。
【0023】本発明の方法は、以下の一般式(II) R1−O−R2−OH (II) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。)で示されるヒドロキシ化合物を不純
物として含む粗リン酸エステルの精製に有用である。こ
のようなヒドロキシ化合物は、多くの場合、原料の未反
応物として粗リン酸エステル中に存在する。しかし、本
発明の方法は、他の不純物を含む粗リン酸エステルを精
製する場合にも有用である。
【0024】本発明の方法は、上記式(II)のヒドロ
キシ化合物を2重量%以上含む粗リン酸エステルを精製
するのに有用である。また、上記式(II)のヒドロキ
シ化合物を3重量%以上含む粗リン酸エステルを精製す
るのにも有用である。さらに、上記式(II)のヒドロ
キシ化合物を5重量%以上含む粗リン酸エステルを精製
するのにも有用である。粗リン酸エステル中の上記式
(II)のヒドロキシ化合物の含有量の上限は特に限定
されないが、良好な処理速度が得られる点で、20%以
下であることが好ましく、より好ましくは10%以下で
ある。
【0025】粗リン酸エステルの酸価は特に限定されな
いが、後述する中和工程などにより、好ましくは1mg
KOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g
以下、さらに好ましくは0.05mgKOH/g以下に
調製しておけば、高品質の製品が得られる点で好まし
い。
【0026】<粗リン酸エステルの製造>本発明に用い
られる粗リン酸エステルは、公知の任意の方法で製造さ
れ得る。粗リン酸エステルは、そのいずれの方法で製造
されても構わないが、以下に、1つの好ましい実施態様
を説明する。
【0027】本発明に用いられる粗リン酸エステルは、
例えば触媒の存在下または不存在下における下記一般式
(II): R1−O−R2−OH (II) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
キレン基を示す。)とオキシハロゲン化リンとの反応、
あるいは、オキシハロゲン化リンとアルカリ金属アルコ
キシドとの反応などにより得られた反応生成物を、必要
に応じて中和、水洗いなどの工程を付することにより製
造され得る。
【0028】本発明で用いられるオキシハロゲン化リン
としては、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン等が挙げら
れ、特にオキシ塩化リンが好ましい。
【0029】本発明で用いられる式(II)で表される
ヒドロキシ化合物としては、メトキシエタノール、エト
キシエタノール、n−プロポキシエタノール、イソプロ
ポキシエタノール、n-ブトキシエタノール、sec−
ブトキシエタノール、tert−ブトキシエタノール、
メトキシメタノール、エトキシメタノール、n−プロポ
キシメタノール、イソプロポキシメタノール、n-ブト
キシメタノール、sec−ブトキシメタノール、ter
t−ブトキシメタノール、メトキシプロパノール、エト
キシプロパノール、n−プロポキシプロパノール、イソ
プロポキシプロパノール、n-ブトキシプロパノール、
sec−ブトキシプロパノール、tert−ブトキシプ
ロパノールなどが挙げられる。これらのヒドロキシ化合
物は1種類を単独で使用してもよく、または2種類以上
を混合して使用してもよい。
【0030】オキシハロゲン化リンとヒドロキシ化合物
との反応においては、必要に応じて、触媒が使用され得
る。使用され得る触媒としては、塩化アルミニウム、塩
化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二錫、
四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、および四臭化チタ
ンなどのルイス酸、硫酸およびp-トルエンスルホン酸な
どのブレンステッド酸、トリエチルアミン、トリブチル
アミンなどが挙げられる。
【0031】前記の粗リン酸エステルを製造する方法の
なかでも、商業的には、触媒の存在下におけるオキシハ
ロゲン化リンと化合物(II)との反応による方法が好ま
しく用いられる。
【0032】上記合成反応において副生するハロゲン化
水素は、スクラバーなどを経由して反応系外に除去する
ことが好ましい。その方法としては、乾燥ガスを接触さ
せる方法、減圧下でハロゲン化水素を系外に追い出す方
法あるいはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。
ここで用いられる乾燥ガスとしては、オキシハロゲン化
リンに対して不活性な乾燥ガスであれば何でもよく、窒
素、アルゴン、空気等が挙げられる。窒素が好ましい。
また、減圧下で副生するハロゲン化水素を系外に追い出
す場合、減圧度は低い程よく、300mmHg以下が好
ましく、100mmHg以下がより好ましく、特に50
mmHg以下が好ましい。
【0033】反応の初期段階では反応温度を10℃以下
とすることが好ましい。好ましくは、反応の進行に合わ
せて80℃程度まで昇温して、好ましくは、60〜10
0℃、より好ましくは70〜90℃の温度で反応を完結
させる。反応完了後、未反応のヒドロキシ化合物を除去
・回収することにより粗リン酸エステルを得ることがで
きる。反応時間は特に限定されず、製造スケールに合わ
せて適宜調整され得る。ただし、必要以上に反応を長引
かせることは製品化の際の着色の原因となりやすい。こ
のため出来るだけ短時間で反応を完結することが好まし
い。好ましくは、10時間以下で反応を終了させる。た
だし、反応時間が短すぎる場合には、収率が低下しやす
いので、1時間以上とすることが好ましい。
【0034】また、必要に応じて、有機溶媒中で反応を
行っても差し支えない。しかし、通常は釜効率を下げる
という理由から、有機溶媒を使用しないことが好まし
い。使用され得る有機溶媒としては反応に対して不活性
な有機溶媒であれば特に限定されない。例えば、ヘキサ
ン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソドデカ
ン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0035】<中和工程>前記のように製造された粗リ
ン酸エステルは、式(II)のヒドロキシ化合物の他に部
分エステル化反応物や触媒残分などの酸性を示す物質ま
たはその前駆体を不純物として含有するため中和工程に
付することが望ましい。なお、本明細書中では、このよ
うな酸性物質およびその前駆体を酸性不純物という。
【0036】本明細書中において中和とは、このような
酸性不純物を中性塩に変化させることを意味する。中和
の方式は、水の存在下で中和剤を使用する湿式中和と水
の不存在下で中和剤を使用する乾式中和に大別される。
中和反応を効率的に進めることができる点から湿式中和
が好ましい。
【0037】中和に用いる中和剤としては、水中でアル
カリ性を示す化合物であれば特に限定されない。例え
ば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化
リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水
素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、ナトリウムメ
トキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシ
ド、およびカリウムエトキシドなどのアルコキシド、金
属ナトリウム、金属カリウム、および金属リチウムなど
の金属単体などが挙げられる。酸性物質を充分に中和す
る能力が高いことからアルカリ金属水酸化物が好まし
い。
【0038】中和剤の使用量は、粗リン酸エステルの酸
価に対して1モル当量以上用いることが好ましい。1.
2〜2モル当量の範囲内であることがより好ましい。さ
らに好ましくは、1.4〜1.8モル当量である。使用
量が少なすぎる場合には充分に中和することが困難であ
る。使用量が多すぎる場合にはそれ以上の効果が期待で
きない。また使用量が多すぎる場合には、より多くの金
属分が粗リン酸エステル中に残存しやすく、その場合、
次の水洗い工程が困難になる傾向があるため好ましくな
い。
【0039】なお、本明細書中で、粗リン酸エステルの
酸価に対するモル当量とは、粗リン酸エステルの酸価か
ら計算される酸性基のモル数に対する中和剤のアルカリ
性基のモル比をいう。すなわち、1モル当量の中和剤と
は、存在する酸を過不足なく中和するために必要な中和
剤の理論量に相当する。
【0040】なお、本明細書中で、金属分とは金属を含
有する化合物を意味し、具体的には触媒残分や中和剤残
分、中和工程で発生する塩(例えば、リン酸モノエステ
ルやリン酸ジエステルなどの部分エステルと金属との
塩)などが挙げられる。これらの不純物を含有するリン
酸エステルは受熱により着色しやすい。このため、これ
らの不純物を含有するリン酸エステルを、例えば樹脂添
加剤として使用した場合には成型時の温度により着色が
促進され樹脂成型品の外観をも悪化させやすい。また本
明細書中において金属分の含有率については、リン酸エ
ステルの製品中に含まれる不純物のうちの金属の合計重
量を、当該リン酸エステルの製品の重量に対する割合と
して表す。同様にアルカリ金属分の含有率については、
リン酸エステルの製品中に含まれる不純物のうちのアル
カリ金属の合計重量を、当該リン酸エステルの製品の重
量に対する割合として表す。さらにNa金属分の含有率
については、リン酸エステルの製品中に含まれる不純物
のうちのNaの合計重量を、当該リン酸エステルの製品
の重量に対する割合として表す。
【0041】中和を行う温度は、乾式中和および湿式中
和のいずれにおいても50〜80℃が好ましい。より好
ましくは、55〜75℃である。温度が低すぎる場合に
は中和が不充分になりやすい。また温度が高すぎる場合
には製品が着色しやすい。また、高すぎる温度で湿式中
和を行う場合には、リン酸エステルの加水分解を促進さ
せてしまいやすい。
【0042】中和工程は、酸価が所望のレベルに低減さ
れるまで行われる。1mgKOH/g以下の酸価が得ら
れるまで行うことが、良好な品質のリン酸エステルを得
るために好ましく、0.1mgKOH/g以下の酸価が
得られるまで行うことがより好ましく、0.01mgK
OH/g以下の酸価が得られるまで行うことが特に好ま
しい。具体的には、例えば、2〜10mgKOH/gの
酸価を有する粗リン酸エステルを中和して、0.000
1〜0.5mgKOH/gの酸価のリン酸エステルを得
ることが、リン酸エステルの製造プロセス全体の効率と
リン酸エステル製品の品質とのバランス上好ましい。酸
価が完全に0になるまで中和を行うと、中和工程が必要
以上に長くなる場合がある。
【0043】中和工程の時間は特に限定されず、製造ス
ケールに合わせて調整され得る。好ましくは、5分間〜
3時間の中和工程が行われる。通常、30分間〜1時間
程度で中和を完了できるように温度や中和剤の使用量な
どの条件を設定する。
【0044】<水洗い工程>中和工程で得られる粗リン
酸エステルは、中和により生成した含金属不純物を含有
する。このため、中和工程の生成物を水洗い工程に付し
て該不純物を除去することが望ましい。
【0045】ここで、含金属不純物とは金属を含有する
化合物を意味し、具体的には触媒残分や中和剤残分、中
和工程で発生する塩(例えば、リン酸モノエステルやリ
ン酸ジエステルなどの部分エステルと金属との塩)など
が挙げられる。これらの不純物を含有するリン酸エステ
ルは受熱により着色しやすく、色相を悪化させやすい。
このため、これらの不純物を含有するリン酸エステル
を、例えば樹脂添加剤として使用した場合には成型時の
温度により着色が促進され樹脂成型品の外観をも悪化さ
せやすい。
【0046】水洗い工程は、好ましくは、無機塩類の存
在下で行われる。無機塩類の存在下で水洗いを行うこと
により、有機相と水相との分離をスムーズにすることが
できる。具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水素カリウム
などのアルカリ性無機塩、塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カル
シウムなどの中性無機塩などの無機塩類の存在下で行う
ことができる。
【0047】特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭
酸水素ナトリウム、および炭酸水素カリウムなどのアル
カリ金属炭酸塩が好ましく使用され得る。アルカリ金属
炭酸塩を使用すると、リン酸エステルの加水分解が抑制
されるだけでなく、有機溶媒を使用せずに、有機相と水
相との分離性を向上させ得る点で非常に好ましい。
【0048】アルカリ金属炭酸塩の水溶液とリン酸エス
テルを含む有機相との接触温度は、効率的に不純物を除
去できる点で、55〜75℃であることが好ましい。6
0〜70℃であることがより好ましい。
【0049】無機塩類の使用量は、水と無機塩類との合
計のうちの1重量%以上とすることが好ましい。従っ
て、無機塩類を水溶液として用いる場合には、水溶液の
濃度として1重量%以上であることが効率的に不純物を
除去できる点で好ましい。該濃度の上限は特には定めら
れないが、好ましくは5重量%以下であり、特に好まし
くは2重量%以下である。高すぎる場合には効果が飽和
してしまいやすい。高すぎる場合には、製品の品質に悪
影響を及ぼすことはないが経済的な理由から好ましくな
い。
【0050】リン酸エステルがリン酸トリ(ブトキシエ
チル)である場合、リン酸トリ(ブトキシエチル)の比
重は1.019(20℃)であって水よりも重いので、
有機溶媒による希釈なしで水洗いを行う場合には、有機
相(すなわち、リン酸トリ(ブトキシエチル)を含む製
品相)が下相となり、廃水相が上相となってしまう。こ
のため、廃水の抜き出しが困難となり作業効率が悪化す
る。そこで前記条件を組み合わせて、例えば、中和後の
粗リン酸トリ(ブトキシエチル)と濃度が0.1重量%
以上のアルカリ金属炭酸塩水溶液とを55〜75℃の範
囲内で接触させる実施態様が非常に好ましい。この好ま
しい実施態様によれば、不純物の除去効果を最大にする
ことができ、また、有機溶媒を使用しないでも水相を下
相とすることができるため廃水の抜き出しが容易とな
り、さらに、釜効率を低下させることもないので、工業
生産においては非常に大きな利点となる。
【0051】釜効率を下げるという理由から、水洗い工
程では有機溶媒を使用しないことが好ましいが、有機相
と水相との分離性に影響を与えない範囲であれば、上述
したような有機溶媒を併用しても差し支えない。
【0052】無機塩類は、水洗い工程中の任意のタイミ
ングで添加され得る。例えば、粗リン酸エステルにあら
かじめ無機塩類を添加した後に水洗い工程を行ってもよ
く、無機塩類を水に溶かして水溶液とした後に粗リン酸
エステルに添加して水洗い工程を行ってもよく、粗リン
酸エステルにあらかじめ水を添加しておき水洗いをしな
がら無機塩類を添加してもよい。
【0053】水洗い工程における水の使用量は、特には
限定されない。好ましくは、リン酸エステルを含む有機
相100重量部に対して10〜50重量部程度である。
【0054】水洗いを行う時間は特に限定されない。1
〜20分程度の範囲内で行うことが好ましい。長すぎる
場合には、リン酸エステルが加水分解してしまいやす
い。短すぎる場合には充分な洗浄効果が得られにくい。
【0055】好ましい実施態様では、このように水洗い
して得られたリン酸エステルを50℃以下まで、より好
ましくは45℃以下まで冷却した後に濾過する工程をさ
らに設ける。この低温濾過工程を行えば、金属分をさら
に低減することができる。なお、この低温ろ過工程は、
以下に説明する水蒸気蒸留工程の後に行ってもよい。
【0056】<水蒸気蒸留>本発明の方法では、前記の
ような手順により得られた粗リン酸エステルをアルカリ
性無機塩の存在下で水蒸気蒸留に付することによりリン
酸エステルの分解を抑制しつつ不純物(例えば、式(I
I)で表されるヒドロキシ化合物)を除去することが可
能となる。
【0057】水蒸気蒸留の際に用いられ得るアルカリ性
無機塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、お
よび炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、ナト
リウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなどのア
ルコキシド、金属ナトリウム、金属カリウム、および金
属リチウムなどの金属単体などが挙げられる。リン酸エ
ステルの加水分解を充分に抑制し、酸価の上昇を抑制で
きる点からアルカリ金属炭酸塩が好ましく、その中でも
水蒸気蒸留中に発泡などの不都合がないことから炭酸ナ
トリウムが好ましい。
【0058】該アルカリ性無機塩の使用量は粗リン酸エ
ステル100重量部に対して0.001重量部以上、好
ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重
量部以上であることが効率的に不純物を除去できる点で
好ましい。該濃度の上限は特には定められないが、好ま
しくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下、
さらに好ましくは3重量部以下である。使用量が多すぎ
る場合には、それ以上の効果は期待できない。使用量が
多すぎても製品の品質に悪影響を及ぼさないが、経済的
な理由からは、好ましくない。
【0059】該アルカリ性無機塩の添加方法および添加
時期については水蒸気蒸留中あるいは水蒸気蒸留前であ
るならば特に限定されない。水蒸気蒸留直前であること
が好ましい。
【0060】水蒸気蒸留は、化学工学辞典(丸善出版、
化学工学協会編、改訂3版、423〜425頁)に記載
されているように、水に不溶性の有機化合物に水蒸気を
吹き込むことにより、水蒸気と共に溜出してくる揮発性
成分を分離する方法である。
【0061】水蒸気蒸留においては、目的とするリン酸
エステルの種類や反応粗生成物中のヒドロキシ化合物
(II)の残存量などに合わせて、水蒸気の吹き込み量、
吹き込み速度、真空度などの条件が適宜設定される。例
えば、目的とするリン酸エステルがリン酸トリ(ブトキ
シエチル)である場合には、温度を160℃以下、好ま
しくは140℃以下とする。水蒸気の吹き込み量は水蒸
気ドレン量に対して10〜80重量%とすることが好ま
しく、より好ましくは20〜50重量%とする。水蒸気
の吹き込み速度は、ドレン速度に対して1〜50%とす
ることが好ましく、より好ましくは5〜20%である。
真空度は、好ましくは5〜760mmHgであり、より
好ましくは10〜40mmHgである。
【0062】水蒸気蒸留を行う容器は、リン酸エステル
を合成する反応缶をそのまま用いてもよい。また、反応
缶とは別の処理缶に移動して水蒸気蒸留を行ってもよ
い。別の処理缶で水蒸気蒸留を行う場合、リン酸エステ
ルの製造を連続的に行うことができるという利点があ
る。
【0063】水蒸気蒸留を行う前の工程、即ち合成反応
工程や中和工程などにおいて有機溶媒を使用した場合に
は、水蒸気蒸留工程に先だって常圧蒸留、減圧蒸留、晶
析などの方法により、有機溶媒を粗リン酸エステルから
除去しておくことが好ましい。
【0064】さらに本発明の方法では、水蒸気蒸留後
に、目的とするリン酸エステルの品質に悪影響を及ぼさ
ない範囲において、必要に応じて減圧蒸留、クロマトグ
ラフィー、膜分離などの公知の精製方法を利用しても差
し支えない。
【0065】<高品質リン酸エステル>前記した方法に
より式(II)で表されるヒドロキシ化合物の含有量が
低減されたリン酸エステルが得られる。上述した各種条
件を適宜調整することにより、さらに、必要に応じて上
記の各処理工程(例えば、中和工程、水洗い工程、およ
び低温ろ過工程)のいずれか、またはそれらの組合せを
行うことにより、好ましい実施態様においては2重量%
以下、より好ましい実施態様においては1.5重量%以
下、特に好ましい実施態様においては1.3重量%以下
までヒドロキシ化合物の含有量が低減されたリン酸エス
テルが得られる。
【0066】また同様に上述した各種条件を適宜調整す
ることにより、容易に、酸価が低減されたリン酸エステ
ルが得られる。好ましい実施態様においては、酸価が1
mgKOH/g以下、より好ましい実施態様においては
酸価が0.1mgKOH/g以下、さらに好ましい実施
態様においては0.05mgKOH/g以下、特に好ま
しい実施態様においては0.03mgKOH/g以下ま
で酸価が低減されたリン酸エステルが容易に得られる。
【0067】本発明の方法で得られるリン酸エステルは
ヒドロキシ化合物の含有量が低く、低酸価でかつ着色が
少ない。このため、可塑剤や難燃剤として各種の樹脂に
添加され得る。リン酸エステルが添加され得る樹脂は、
天然樹脂であってもよく、合成樹脂であってもよい。好
ましくは合成樹脂である。樹脂はまた、熱可塑性樹脂で
あってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。熱可
塑性樹脂としては、例えば、以下の例が挙げられる:ポ
リエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジ
エン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエー
テル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、
耐衝撃性スチレン系樹脂、SAN系樹脂、ポリアミド系
樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド
系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂など。熱硬
化性樹脂としては、例えば、以下の例が挙げられる:エ
ポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹
脂、フェノール系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリエーテ
ルイミド系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂など。
【0068】本発明の方法で得られるリン酸エステルが
難燃剤として用いられる場合には、上述した任意の樹脂
に使用され得る。
【0069】可塑剤として用いられる場合には、特に熱
可塑性樹脂に好ましく使用され得る。特に、熱溶融成形
される熱可塑性樹脂に好ましく使用される。熱溶融成形
とは、熱可塑性樹脂を加熱溶融させて流動させることに
より所望の形状に成形する成形方法を言い、具体的に
は、射出成形、押出し成形、およびプレス成形などがあ
る。
【0070】リン酸エステルの配合量は、前記樹脂10
0重量部に対して、5〜35重量部の範囲内であること
が好ましく、特に好ましくは10〜25重量部である。
該リン酸エステルの配合量が少なすぎる場合には充分な
可塑性または難燃性が得られにくい。他方、配合量が多
すぎる場合には、得られる成型品の機械的特性が低下し
やすく、実用性に乏しくなりやすいため好ましくない。
【0071】さらに本発明の樹脂組成物には、必要に応
じて樹脂組成物の物性を損なわない範囲内で、公知の各
種添加剤、例えば加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収
剤、光安定剤、充填剤、顔料、帯電防止剤等の1種また
は2種類以上を添加しても差し支えない。
【0072】前記加工助剤としては、例えば、重量平均
分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アル
キルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤
などが挙げられ、例えば、n−ブチルアクリレート/メ
チルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアク
リレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレー
ト共重合体等が挙げられる。
【0073】前記酸化防止剤としては、例えば、フェノ
ール系抗酸化剤等が挙げられる。前記光安定剤として
は、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン
系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の
紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げ
られる。
【0074】前記充填剤としては、例えば、酸化チタ
ン、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、アルミナ等が挙
げられる。前記顔料としては、例えば、アゾ系、フタロ
シアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸
化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物
系、フェロシアン化物系等の無機顔料などが挙げられ
る。帯電防止剤としてはカチオン系活性剤や非イオン系
活性剤などが挙げられる。
【0075】また、本発明の樹脂組成物には本発明の方
法で得られるリン酸エステル以外の樹脂添加剤を併用す
ることも可能である。例えば、成形時の加工性を向上さ
せる目的で、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキ
シルフタレート、ジメチルアジペート、ジ−2−エチル
ヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケー
ト等の可塑剤を用いてもよい。また、成型品の難燃性を
向上させる目的でリン酸トリメチル、リン酸トリエチ
ル、リン酸トリクレジル、メラミン、ポリリン酸アンモ
ニウム等の難燃剤を用いてもよい。
【0076】前記樹脂が塩化ビニル系樹脂である際に
は、通常、安定剤および/または滑剤が添加される。前
記安定剤としては、熱安定剤、熱安定化助剤等が挙げら
れる。前記熱安定剤としては、例えば、ジブチル錫メル
カプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプ
ト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマ
ー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリ
マー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポ
リマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性
亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム
−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;バリウム−
カドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で
用いてもよく、または2種類以上を併用しても差し支え
ない。
【0077】前記熱安定化助剤としては、例えば、エポ
キシ化大豆油、リン酸エステル等が挙げられる。これら
は単独で用いてもよく、または2種類以上を併用しても
差し支えない。
【0078】前記安定剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂
100重量部に対して、0.2〜7重量部が好ましく、
より好ましくは0.4〜5重量部である。少な過ぎる場
合には成形加工が困難となり、さらに成形体の熱安定性
が低下しやすい。逆に多すぎる場合には、耐衝撃性およ
び耐熱性が低下しやすい。
【0079】前記滑剤としては、外部滑剤および内部滑
剤が挙げられる。前記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹
脂と金属面との滑り効果を向上する目的で使用され、例
えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、
エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられ
る。これらは単独で用いてもよく、または2種類以上を
併用しても差し支えない。
【0080】前記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の
ゲル化を促進し、流動粘度を下げて、摩擦発熱を防止す
る目的で使用される。例えば、ブチルステアレート、ラ
ウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大
豆油、モノグリセリド、ステアリン酸、ビスアミド等が
挙げられる。これらは単独で用いてもよく、または2種
類以上を併用しても差し支えない。
【0081】前記滑剤の配合量は、多くなると成形加工
が困難となり、少なくなると成形加工が困難となると共
に熱安定性が低下するので、塩化ビニル系樹脂100重
量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、より好ま
しくは0.3〜4重量部である。
【0082】各樹脂製品の成型方法は、特に限定されな
い。例えば、各成分を単軸押出機、2軸押出機、バンバ
リーミキサー、ニーダー、ミキサー、およびロール等の
汎用の混練装置を用いて溶融混練し、板状、シート状や
フィルム状などの所望の形状に成型加工することにより
成型品が得られる。
【0083】
【実施例】次に実施例により本発明を更に詳細に説明す
るが、本発明はこれらによって限定されない。
【0084】以下、実施例において「%」は重量%を意
味する。リン酸エステルおよびヒドロキシ化合物の純度
はガスクロマトグラフィー(装置名:(株)島津製作所
製GC−14A)により測定された。色相測定(Hz)
は、溶剤による希釈なしでハーゼン色数法により測定さ
れた。また、酸価測定はJIS規格K−0070に準拠
して行われた。
【0085】<調製例> <粗リン酸トリ(ブトキシエチル)の合成>攪拌機、温
度計、および滴下装置を備えた1リットル四ツ口フラス
コに、ブチルセロソルブ(n-ブトキシエタノール)7
75g(6.57mol)と四塩化チタン0.7gとを
入れ、そこへ、オキシ塩化リン210g(1.37mo
l)を、反応液の温度を10℃以下に保ちながら1時間
かけて滴下し、その後、攪拌しながら10℃で30分間
熟成した。そして、真空装置を使用して系内を20mm
Hgに保ちながら反応液の温度を6時間かけて70℃ま
で昇温し反応を完結した。この間に発生した塩化水素は
系外に除去された。その後、系内を15mmHgにまで
減圧し、1.5時間かけて140℃まで昇温し未反応の
ブチルセルソルブを回収し、酸価が4.6mgKOH/
gの粗反応生成物539gを得た。
【0086】攪拌機、温度計、および滴下装置を備えた
1リットル四ツ口フラスコに、該粗反応生成物539g
を入れ、そこへ30%水酸化ナトリウム水溶液10.5
g(該粗反応生成物の酸価の1.75倍モル当量)を添
加した。60℃〜70℃の範囲内で30分間攪拌しなが
ら接触させて中和を行い、反応生成物529gを得た。
【0087】前記反応生成物500gに1.3%の炭酸
ナトリウム水溶液を121g添加し、60℃〜70℃の
範囲内で10分間攪拌しながら接触させた後、分液ロー
トへ移して10分間静置し、有機相と水相とを分離し粗
リン酸トリ(ブトキシエチル)(以下、製品Aと記
す。)499gを得た。得られた粗リン酸トリ(ブトキ
シエチル)(製品A)のブチルセロソルブ含有量
(%)、酸価(mgKOH/g)、純度(%)、色相
(Hz)を表1に示した。
【0088】<実施例1>前記粗リン酸トリ(ブトキシ
エチル)500gに炭酸ナトリウム1.0g(粗リン酸
トリ(ブトキシエチル)100重量部に対して0.2重
量部)を添加し、2時間かけて120℃/20mmH
g、100g/hで水蒸気を吹き込んだ後、水蒸気の吹
き込みを停止した。同条件(120℃/mmHg)で1
5分間空引きを行い50℃まで冷却した。その結果、得
られたリン酸トリ(ブトキシエチル)(以下、製品Bと
記す。)のブチルセロソルブ含有量(%)、酸価(mg
KOH/g)、純度(%)、色相(Hz)を表1に示し
た。
【0089】<実施例2>炭酸ナトリウムの使用量を
2.5g(粗リン酸トリ(ブトキシエチル)100重量
部に対して0.5重量部)にした以外は実施例1と同様
の操作を行った。その結果、得られたリン酸トリ(ブト
キシエチル)(以下、製品Cと記す。)のブチルセロソ
ルブ含有量(%)、酸価(mgKOH/g)、純度
(%)、色相(Hz)を表1に示した。
【0090】<比較例1>水蒸気蒸留工程において炭酸
ナトリウムを使用しなかった以外は前記実施例1と同様
の操作を行った。その結果、得られたリン酸トリ(ブト
キシエチル)(以下、製品Dと記す。)のブチルセロソ
ルブ含有量(%)、酸価(mgKOH/g)、純度
(%)、色相(Hz)を表1に示した。
【0091】また、前記参考例で得られた粗リン酸トリ
(ブトキシエチル)、実施例1および2、ならびに比較
例で得られたリン酸トリ(ブトキシエチル)の耐熱性評
価結果を表1に示した。なお、耐熱性については、試料
を試験管に取り、封をせずに250℃に設定した電気オ
ーブンにて3時間加熱した後の酸価(耐熱酸価)および
色相(耐熱色相)を測定および評価した。
【0092】
【表1】
【0093】表1から本発明の方法で得られるリン酸エ
ステルは低酸価であり、ブチルセロソルブ(ヒドロキシ
化合物)の含有量が少なく、耐熱性に優れることがわか
る。
【0094】<成形テスト>前記参考例で得られた粗リ
ン酸トリ(ブトキシエチル)、実施例1および2、なら
びに比較例で得られたリン酸トリ(ブトキシエチル)各
30部と塩化ビニル樹脂100部との割合で配合し、次
いでヘンシェル型ミキサー(株式会社カワタ製、商品
名:スーパーミキサーSMV−20)によって混合し
た。さらにベント付二軸押出機(東芝機械株式会社製、
商品名:TEM−37BS)を用いて溶融混練し、ペレ
ット化して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射
出成形機(山城精機株式会社製、商品名:SAV−60
−52)にて成形し、可塑性測定試料をそれぞれ作製し
た。得られた樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0095】得られた樹脂組成物について、スケールア
ップして製造する場合の作業性・効率性に重大に影響す
る性能を評価した。臭気の発生(極少、少、中、多で表
示)、発煙の発生(極少、少、中、多で表示)、着色状
況(観察された色で表示)および可塑性(目視により
○、△、×で表示)、金型汚染性(射出成型の1000
ショット後の金型表面上の付着物の量を目視により極
少、少、中、多で表示)の5項目の評価結果を表2に示
す。ここで、上記評価項目における「可塑性」とは成型
品の表面へのリン酸エステルのしみ出しを目視にて確認
した。しみ出しが少ないものが、可塑剤としての効果が
良好であったと判断した。可塑剤と樹脂との相性が悪か
ったり、可塑剤が分解したりすると成形品の表面に染み
出しが起こり易い。しみ出しが多い場合には、成形材料
の樹脂組成物中の可塑剤量が減少し、可塑性が低下して
しまう。従って、表面へのしみ出しが少なれば、樹脂内
部で有効に可塑剤として機能すると考えられるので、し
み出しの評価により、可塑性を判断した。
【0096】表中「○」は、しみ出しが少なく、実質的
に無視できるレベルであったことを表す。表中「△」
は、しみ出しが存在したが、実際に大量生産を行う際に
問題となるほどの可塑性の低下は予想されないと考えら
れるレベルであったことを表す。表中「×」は、しみ出
しが多く、可塑性の顕著な低下が予想されるレベルであ
ったことを表す。
【0097】上記評価試験のための溶融混練条件は以下
の通りである。
【0098】 (1)混練温度:150℃ (2)混練時間:15分 (3)スクリュー回転数:50rpm
【0099】
【表2】
【0100】表2から、本発明の樹脂組成物は樹脂成型
時において臭気や発煙の発生が少ないことがわかる。ま
た、射出成型のショット数が多くても金型の洗浄が少な
くて済むことがわかる。さらに、得られる成型品の品質
も良好であることがわかる。
【0101】
【発明の効果】本発明によれば、原料成分であるヒドロ
キシ化合物の含有量が少なく、低酸価のリン酸エステル
を効率的に製造することができる。また、本発明で得ら
れたリン酸エステルは樹脂へ添加した際、従来品に比較
して樹脂成型時の有害ガスなどの発生が少なく、また金
型汚染が少ないため金型清掃をせずに成形できるショッ
ト数が増加する点などにおいて樹脂成型時の作業性が優
れる。また、成形用熱可塑性樹脂の可塑性をも向上させ
ることができる。従って、可塑剤や難燃剤などの樹脂添
加剤として熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂
へ配合したときには特にその性能を発揮する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H028 AA35 AA42 BA06 4H050 AB50 AB80 AC40 AD14 BA02 BA32 BB11 BC31 BC40 WA15 WA23 4J002 BB021 BB111 BC021 BC031 BC061 BG001 BG101 BL011 BN022 BN062 BN142 CD001 CD041 CD181 CF001 CG001 CH071 CK011 CK021 CL001 CM041 CN011 EW046 FD026 FD136

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸エステルを精製する方法であっ
    て、 不純物を含む粗リン酸エステルをアルカリ性無機塩の存
    在下において水蒸気蒸留する工程を包含し、 ここで、該リン酸エステルは、以下の一般式(I) (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
    キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
    キレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは1〜
    3の整数である。)で表されるリン酸エステルである、
    方法。
  2. 【請求項2】 前記アルカリ性無機塩が、前記粗リン酸
    エステル100重量部に対して0.001重量部以上存
    在する条件下で、前記水蒸気蒸留が行われる、請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記アルカリ性無機塩がアルカリ金属炭
    酸塩である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウ
    ムである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記リン酸エステルの一般式(I)中の
    nが3である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記リン酸エステルがリン酸トリ(ブト
    キシエチル)である、請求項1〜5のいずれかに記載の
    方法。
  7. 【請求項7】 以下の一般式(I)を有するリン酸エス
    テルからなる樹脂添加剤であって: (R1−O−R2−O−)nP(=O)(−O−R33-n (I) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
    キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
    キレン基を示す。R3は任意の有機基を表す。nは1〜
    3の整数である。) ここで、一般式(II)で表されるヒドロキシ化合物: R1−O−R2−OH (II) (式中、R1は炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアル
    キル基、R2は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアル
    キレン基を示す。)の含有量が2重量%以下であり、か
    つ酸価が1mgKOH/g以下である、樹脂添加剤。
  8. 【請求項8】 樹脂と、請求項7に記載の樹脂添加剤と
    を含有する、難燃性樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 熱可塑性樹脂と、請求項7に記載の樹脂
    添加剤とを含有する、熱溶融成形用可塑性樹脂組成物。
JP2000037294A 2000-02-15 2000-02-15 リン酸エステルの精製方法 Withdrawn JP2001226386A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000037294A JP2001226386A (ja) 2000-02-15 2000-02-15 リン酸エステルの精製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000037294A JP2001226386A (ja) 2000-02-15 2000-02-15 リン酸エステルの精製方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001226386A true JP2001226386A (ja) 2001-08-21

Family

ID=18561205

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000037294A Withdrawn JP2001226386A (ja) 2000-02-15 2000-02-15 リン酸エステルの精製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001226386A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1262485A1 (en) * 2001-05-31 2002-12-04 Kao Corporation Process for preparing phosphoric ester
JP2004018585A (ja) * 2002-06-13 2004-01-22 Teijin Chem Ltd 難燃性樹脂成形物およびそれからの成形品
WO2010082426A1 (ja) * 2009-01-19 2010-07-22 大八化学工業株式会社 リン系難燃剤組成物およびそれを含有する難燃性樹脂組成物、成形体
KR101935239B1 (ko) 2017-05-29 2019-01-04 한국과학기술연구원 에스터-알코올 혼합물로부터 에스터 화합물의 분리방법

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1262485A1 (en) * 2001-05-31 2002-12-04 Kao Corporation Process for preparing phosphoric ester
US6710199B2 (en) 2001-05-31 2004-03-23 Kao Corporation Process for preparing phosphoric ester
EP1435358A2 (en) * 2001-05-31 2004-07-07 Kao Corporation Process for preparing phosphoric ester
EP1435358A3 (en) * 2001-05-31 2004-08-11 Kao Corporation Process for preparing phosphoric ester
JP2004018585A (ja) * 2002-06-13 2004-01-22 Teijin Chem Ltd 難燃性樹脂成形物およびそれからの成形品
WO2010082426A1 (ja) * 2009-01-19 2010-07-22 大八化学工業株式会社 リン系難燃剤組成物およびそれを含有する難燃性樹脂組成物、成形体
CN102282236A (zh) * 2009-01-19 2011-12-14 大八化学工业株式会社 磷系阻燃剂组合物及含有其的阻燃性树脂组合物、成型体
JP5700789B2 (ja) * 2009-01-19 2015-04-15 大八化学工業株式会社 リン系難燃剤組成物およびそれを含有する難燃性樹脂組成物、成形体
KR101935239B1 (ko) 2017-05-29 2019-01-04 한국과학기술연구원 에스터-알코올 혼합물로부터 에스터 화합물의 분리방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI359806B (en) Polyglycerin monoether and method for producing th
TWI618789B (zh) 含有縮合型膦酸酯之阻燃劑及阻燃性樹脂組成物
JP2009132633A (ja) ビスフェノールモノエステル化合物、該化合物を有効成分とする安定剤及び該安定剤を含有する熱可塑性ポリマー組成物
JP2924357B2 (ja) 亜リン酸エステル化合物、その製法および用途
EP3292169A1 (en) Plastic modifiers
JP2001226386A (ja) リン酸エステルの精製方法
CA1336194C (en) Siliconic stabilizer compounds for organic polymers, and process for their preparation
JP5013120B2 (ja) ビスフェノールモノエステル系樹脂用安定化剤組成物、熱可塑性ポリマー組成物およびその製造方法、熱可塑性ポリマー成形物、ならびにビスフェノールモノエステル系樹脂用安定化剤組成物の使用
US8278375B2 (en) Mixed phosphonate flame-retardants
TWI448470B (zh) 基於水互溶性溶劑的方法
JP2642059B2 (ja) Pvc加工用熱安定剤としての亜鉛メルカプト酸のポリオールエステル
EP0813572B1 (en) Alkyl-thio-glycolate pvc stabilizers with added aromatic ether alcohol to prevent precipitation
JP3815810B2 (ja) ビス−2,6−ジメチルフェニルヒドロゲンホスフェート類の金属塩
EP0414916B1 (en) Phosphite compound and application thereof
JP2001226387A (ja) リン酸トリ(ブトキシエチル)の精製方法
JP2001226385A (ja) リン酸エステルの製造方法
JP2004035470A (ja) 環状ホスホネートの製造方法
JPS63234054A (ja) ポリ塩化ビニルに基づく重合体の安定化剤として使用しうるα−メルカプトエステル官能基を有するジ有機ポリシロキサン
JP2003206350A (ja) 含リンポリカーボネート、その製造方法及び樹脂組成物
FR2763952A1 (fr) Diphosphate de bis[2,4-bis(1,1-dimethylethyl)phenyl-2-6- dimethylphenyl] aryle, procede de preparation et compositions de resine le contenant
WO1992016537A1 (en) Alkyl-aromatic diphosphites
JP4152011B2 (ja) リン酸エステル化合物
US6403820B1 (en) Process for preparing low-acid-value phosphoric esters
TW201500427A (zh) 阻燃劑組成物以及含有其之阻燃性樹脂組成物及成形體
JPH08165373A (ja) 難燃性熱可塑性樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20070501