JP4152011B2 - リン酸エステル化合物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イソシアヌル酸骨格を有する新規なリン酸エステル化合物に関するものであり、本発明のリン酸エステル化合物は、特に、合成樹脂用難燃剤として有用なものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
合成樹脂は、その優れた化学的および物理的性質から建築資材、自動車部品、衣料品や日用雑貨および家電製品のハウジング材等の用途に幅広く利用されているが、一般に、合成樹脂は可燃性である欠点があった。この欠点を克服するため、水酸化アルミニウム等の無機化合物、ハロゲン化合物やリン化合物等の種々の難燃剤が開発され、特に、ハロゲン系難燃剤は、優れた難燃効果を示すことから広く使用されてきた。しかし、ハロゲン系難燃剤は、燃焼時に有害なガスを発生させるため、その使用が制限されつつある。
【0003】
リン酸エステル化合物は、燃焼時に有害なガスを発生しない利点があり、しかも良好な難燃性を奏することから、合成樹脂用の難燃剤として用いる例が増加している。
【0004】
これらのリン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のモノメリックホスフェート化合物が知られているが、これらの化合物は分子量が小さいため、合成樹脂に配合する場合の高温加工時に揮散したり、合成樹脂表面へブリードしたり、合成樹脂の熱変形温度を低下させる等の欠点があった。
【0005】
このような欠点を解消するために高分子量のホスフェート化合物を用いることも提案されており、例えば、特公昭51−19858号公報、特公昭54−32818号公報、特公平1−17503号公報、特公平1−57134号公報、特公平2−18336号公報、特公平2−25381号公報、特許第2552780号明細書等には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA等のジフェノール化合物を用いたジホスフェート化合物またはこれらのオリゴマーを用いることが提案されているが、これらの高分子量のリン酸エステル化合物を用いた場合にも、上記の欠点を完全に解消することはできなかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記欠点のないリン酸エステル化合物、即ち、燃焼時に有害なガスを発生せず、低揮発性で熱安定性が良好であり、合成樹脂に配合した場合に、高温加工時の揮散や合成樹脂表面へのブリードがなく、かつ合成樹脂の熱変形温度等の物性を低下させることもなく、しかも優れた難燃性を奏するリン酸エステル化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、構造中にイソシアヌル酸骨格を有するトリフェノールから誘導されるリン酸エステル化合物は化合物自体の安定性が高く、高温加工時にも分解したり揮散することがなく、また、合成樹脂に対して優れた難燃性を付与できることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記〔化2〕の一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物を提供するものである。
【0009】
【化2】
Figure 0004152011
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、上記要旨をもってなる本発明についてさらに詳細に説明する。
上記一般式(I)において、R1およびR2で示される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、オクチル、第三オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル等があげられる。また、アルキル基および/ もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基における炭素原子数1〜8のアルキル基としては上記のアルキル基があげられ、ハロゲン原子としてはクロルおよびブロムがあげられる。
【0011】
また、上記一般式(I)において、R3およびR4で表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等があげられる。
【0012】
上記一般式(I)で表される化合物のうち、R3およびR4が炭素原子数1〜4のアルキル基、特にメチル基である化合物は製造が容易であり、また、R1およびR2がフェニル基である化合物およびR1およびR2が炭素原子数1〜8のアルキル基、特にメチル基もしくはエチル基で置換されたフェニル基である化合物は環境汚染のおそれがなく、また、難燃性が良好なので好ましく、さらに、R1およびR2が炭素原子数1〜8のアルキル基である化合物は環境汚染のおそれがなく、また、合成樹脂に対する相溶性が良好なので好ましい。
【0013】
従って、上記一般式(I)で表される本発明のリン酸エステル化合物としては、例えば下記〔化3〕〜〔化8〕の化合物No.1〜6があげられる。
【0014】
【化3】
Figure 0004152011
【0015】
【化4】
Figure 0004152011
【0016】
【化5】
Figure 0004152011
【0017】
【化6】
Figure 0004152011
【0018】
【化7】
Figure 0004152011
【0019】
【化8】
Figure 0004152011
【0020】
本発明のリン酸エステル化合物は、例えば、トリス(ヒドロキシフェニル)イソシアヌル酸化合物を製造する周知の方法、即ち、フェノール化合物、イソシヌル酸およびホルムアルデヒドを反応させる方法によってトリス(ヒドロキシフェニル)イソシアヌル酸化合物を製造し、次いで、トリ有機ホスフェート化合物を製造する周知の方法、即ち、オキシ塩化リンおよびフェノール化合物またはアルコールを反応させる方法、ジアリールまたはジアルキルホスホロクロリデートを反応させる方法、トリアリールホスフェートを用いてエステル交換させる方法、対応するホスファイト化合物を製造した後、酸化してホスフェート化合物とする方法等により容易に製造することができる。これらの反応に際しては、必要に応じて各種の溶媒および触媒を用いることができ、また、再結晶等の周知の方法によって精製することもできる。
【0021】
本発明のリン酸エステル化合物は、合成樹脂用難燃剤として特に有用である。本発明のリン酸エステル化合物の配合される合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレンランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン;ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、α−メチルスチレン変成ABS樹脂、マレイミド変成ABS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリフェニレンオキサイド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンスルフィド;およびこれらの混合物があげられる。
【0022】
また、本発明のリン酸エステル化合物は、合成樹脂に用いられる汎用の添加剤と併用することができる。これらの添加剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤、有機ホスファイトまたはホスホナイト系抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系またはトリアリールトリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、金属石ケン類、造核剤、帯電防止剤、可塑剤、本発明の化合物以外の難燃剤、充填剤、顔料等があげられ、これらは必要に応じて一種または二種以上を用いることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1(化合物No.1の合成)
2,6−ジメチルフェノール569g(3.09モル)、90%パラホルムアルデヒド155g(3.09モル)、イソシアヌル酸194g(1モル)、ヘキサメチレンテトラミン15g、ジメチルホルムアミド1600gおよび水960gをとり、106℃で6時間撹拌した後室温まで冷却し、析出した粉末をろ過して集め、メタノールで洗浄した後乾燥して、720gのトリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートを得た。
【0025】
このトリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート532g(1モル)、ジフェニルホスホロクロリデート806g(3モル)、トリエチルアミン334g(3.3モル)およびトルエン1230gをとり、30℃で3時間撹拌後、60℃で1時間撹拌した。
反応混合物を十分に水洗した後トルエンを留去し、残留物を粉砕して示差熱分析による分解点430℃の白色粉末の生成物1080gを得た。この生成物は、赤外吸収スペクトル分析の結果985cm-1にP-O-Phenylの吸収があり、また、元素分析によるリン含有率は7.6%であり、目的物のリン含有率と一致したことから化合物No.1であることを確認した。得られた化合物No.1のガスクロマトグラフィーによる純度は96%であった。
【0026】
実施例2〜4(化合物No.2〜No.4の合成)
ジフェニルホスホロクロリデートに代えて、ビス(4−メチルフェニル)ホスホロクロリデート(化合物No.2)、ビス(4−エチルフェニル)ホスホロクロリデート(化合物No.3)、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロクロリデート(化合物No.4)を用いる他は実施例1と同様にして化合物No.2(リン含有率7.3%)、化合物No.3(リン含有率7.1%)および化合物No.4(リン含有率7.1%)を得た。
【0027】
実施例5(化合物No.5の合成)
実施例1と同様にして製造したトリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート532g(1モル)、ジエチルホスホロクロリデート518g(3モル)、トリエチルアミン334g(3.3モル)およびトルエン1230gをとり、30℃で3時間撹拌後、60℃で1時間撹拌した。
反応混合物を十分に水洗した後トルエンを留去し、残留物を粉砕して示差熱分析による分解点320℃の白色粉末の生成物630gを得た。この生成物は、赤外吸収スペクトル分析の結果980cm-1にP-O-Phenylの吸収があり、また、元素分析によるリン含有率は10.4%であり、目的物のリン含有率と一致したことから化合物No.5であることを確認した。得られた化合物No.5のガスクロマトグラフィーによる純度は97%であった。
【0028】
実施例6(化合物No.6の合成)
ジエチルホスホロクロリデートに代えて、ジブチルホスホロクロリデートを用いる他は実施例5と同様にして化合物No.6(リン含有率8.7%)を得た。
【0029】
実施例7
ABS樹脂(Blendex 111;宇部サイコン社製)100重量部と下記〔表1〕に記載の難燃剤10重量部とをブレンダーによってよく混合した後、230℃で射出成形して試験片を作成し、難燃性をみるために、UL−94に準じて燃焼試験を行い燃焼時間(秒)を測定した。また、60℃で100%湿度における4週間後の表面観察によりブルーム性(ブリードの発生状態)を評価した。その結果を下記〔表1〕に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004152011
【0031】
実施例8
エチレン含有量8.5重量%のエチレン−プロピレンブロック共重合体70重量部、ポリエチレン15重量部、エチレン−プロピレンゴム15重量部、ポリリン酸アンモニウム15重量部、下記〔表2〕に記載の難燃剤10重量部、フェノール系酸化防止剤(アデカスタブ AO−60;旭電化工業(株)製)0.1重量部、ジミリスチレルチオジプロピオネート0.2重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部およびハイドロタルサイト1.0重量部をとり、ヘンシェルミキサーで混合した後、200℃で押し出し加工してペレットを作成した。このペレットを200℃で射出成形して厚さ1.6mmの試験片を作成した。
この試験片を用い、UL−94に準じて難燃性を評価し、また、押し出し加工時のノズル部分からの発煙量を目視で判定した。その結果を下記〔表2〕に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0004152011
【0033】
各表に示した結果から明らかなように、従来用いられていた代表的なリン酸エステル化合物であるトリフェニルホスフェートは発煙が多いばかりでなく、難燃性能が不十分で、しかも、合成樹脂表面へブリードする欠点があり、これらの欠点は、高分子量のリン酸エステル化合物を用いることによりある程度改善できるが、従来提案されていた高分子量のリン酸エステル化合物の改善効果は実用上は満足できるものではなかった。
【0034】
これに対し、本発明のリン酸エステル化合物は、それ自身の熱安定性が良好で、合成樹脂の加工時の高温による分解あるいは揮発による発煙が殆ど認められないばかりでなく、優れた難燃性を付与し、しかも、合成樹脂に対する相溶性が良好で合成樹脂表面へのブリードも認められない。
【0035】
【発明の効果】
本発明のリン酸エステル化合物は、燃焼時に有害なガスを発生せず、低揮発性で熱安定性が良好であり、合成樹脂に配合した場合に、高温加工時の揮散や合成樹脂表面へのブリードがなく、かつ合成樹脂の熱変形温度等の物性を低下させることもなく、しかも優れた難燃性を奏するものである。

Claims (4)

  1. 下記〔化1〕の一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物。
    Figure 0004152011
  2. 上記〔化1〕の一般式(I)において、R3およびR4がメチル基である請求項1記載のリン酸エステル化合物。
  3. 上記〔化1〕の一般式(I)おいて、R1およびR2がフェニル基または炭素原子数1〜8のアルキル基で置換されたフェニル基である請求項1または2記載のリン酸エステル化合物。
  4. 上記〔化1〕の一般式(I)おいて、R1およびR2が炭素原子数1〜8のアルキル基である請求項1または2記載のリン酸エステル化合物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN101554738B (zh) * 2008-04-09 2011-04-27 沈阳奥拓福高压水射流技术有限公司 数控五轴联动超高压水切割机

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