JP3899569B2 - 難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特定のノンハロゲン系難燃剤を併用して難燃化された難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂の難燃化に対して、従来ハロゲン系の難燃剤が難燃性、樹脂物性、価格の面で優れているために広く用いられてきたが、発煙性、加工及び燃焼時の毒性ガスの発生が問題視されるようになり、近年ノンハロゲン系化合物により難燃化を行う方法への転換が進んでいる。
【0003】
ハロゲンを含まないリン系難燃剤としては、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミンのようなリンと窒素をともに含む化合物や、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル系化合物が知られている。
【0004】
またこの他にリン酸エステル系化合物としては、特開昭57−207641号公報、特開平7−304943号公報等に記載の低揮発性で耐熱性に優れた縮合リン酸エステルや、特開平5−92986号公報等に記載の樹脂に配合した場合樹脂が溶融滴下しないという特徴を有する下記一般式(1)
【0005】
【化2】
Figure 0003899569
【0006】
(式中、R、R’は各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で示されるようなスピロ環を有する化合物が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ハロゲンを含まないリン化合物に関しては、例えば、赤リンでは加工時又は火災時の熱で有毒なホスフィンを発生する恐れがあり、また、ポリリン酸アンモニウム又はリン酸メラミンについては単独の使用では難燃性を得難いという問題がある。
【0008】
また、リン酸エステル系化合物についても、従来使用されているトリフェニルホスフェート等は耐熱性が劣り、揮発性も高く、ポリオレフィン系樹脂と混練し難く、さらに著しいブリードが起こるという問題がある。
【0009】
一方、縮合リン酸エステルは低揮発性で耐熱性に優れており、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂に配合した場合には十分な難燃性が得られているが、ポリオレフィン系樹脂に配合した場合には十分な難燃性が得られず、さらに相溶性が悪いために配合樹脂物性の低下、ブリード等の問題がある。
【0010】
さらに、上記一般式(1)で示されるようなスピロ環を有するリン酸エステル系化合物は耐熱性に優れ、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂に配合した場合には低配合で優れた難燃性を示す。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂に対しては十分な難燃性を得ることができず多量の配合を必要とするという問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、上記一般式(1)で示されるリン酸エステル化合物とポリリン酸アンモニウムとを併用することにより難燃効果が相乗的に高まり、低配合量でポリオレフィンへの難燃化が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂に対し、下記一般式(1)
【0013】
【化3】
Figure 0003899569
【0014】
(式中、R、R’は各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で示されるリン酸エステル化合物及びポリリン酸アンモニウムを配合してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明において使用されるポリオレフィン系樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、αオレフィン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。エチレン等と共重合されるアクリル酸エステルとしてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が、またメタクリル酸エステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上組合せても良い。
【0017】
本発明において使用される上記一般式(1)で示されるリン酸エステル化合物中のR、R’は、各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、単一化合物の他、置換基、置換数の異なる混合物の状態で用いても良い。該リン酸エステル化合物は、例えば、アミン触媒の存在下、ペンタエリスリトール1モルとフェニルリン酸ジクロリド類2モルとの反応により得ることができる。
【0018】
本発明において使用されるポリリン酸アンモニウムは特に限定されるものではなく、メラミン樹脂等により表面処理したものも使用できる。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂に対する、上記一般式(1)で示されるリン酸エステル及びポリリン酸アンモニウムの配合量は、配合する樹脂の種類、目的の難燃性能により異なるが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対してそれぞれ5〜50重量部の範囲で配合する。5重量部未満では十分な難燃性を付与することができない場合がある。一方、50重量部を越えると樹脂物性を低下させるばかりでなく経済的にも好ましくない。
【0020】
上記一般式(1)で示されるリン酸エステル及びポリリン酸アンモニウムの配合比率については10:90〜90:10の範囲にあることが好ましく、20:80〜80:20の範囲にあることがより好ましい。全難燃剤配合量に対する上記一般式(1)で示されるリン酸エステルの配合量が10%未満又は90%を越える場合には、難燃性能が低下し本発明の効果を得ることが難しくなる場合がある。
【0021】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、さらに必要に応じて他の配合剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム等のような無機充填剤、ガラス繊維、カーボン繊維等のような補強剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、離型剤、耐衝撃改良剤等を配合することができる。
【0022】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の製造は特に限定はないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、上記一般式(1)で示されるリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム及び必要に応じて他の試剤を、コニカルブレンダー、タンブラミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等で溶融混練後、二軸押出機等を用いてペレット化する。こうして得られたペレットを用いて押出成形、射出成形等を行い目的とする成形品を得ることができる。
【0023】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の用途としては、電線・ケーブル、金属管等の被覆材料、家電部品、各種シート等が挙げられる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂は、ハロゲン含有化合物を用いることなく優れた難燃性を示すものである。また、成形樹脂表面への難燃剤のブリードがなく、外観上も優れた成形体を得ることができる。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
難燃性樹脂組成物としての評価は以下の方法により行った。
【0027】
(燃焼試験)
JIS−K−7201に準拠する酸素指数の測定、UL94V垂直燃焼性試験に準拠するUL燃焼試験を行った。
【0028】
(ブリード性)
成形品表面に結晶等しみ出てくるものがあるか目視で判断し、○(ブリードなし)、×(ブリードあり)の2段階で評価した。
【0029】
調製例 リン酸エステル化合物の調製
撹拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた2リットルの4つ口フラスコに、ペンタエリスリトール68.0g(0.50モル)、トリエチルアミン101.0g(0.50モル)、1,4−ジオキサン1000mlを仕込み、室温で撹拌した。滴下ロートよりフェニルリン酸ジクロリド211.0g(1.0モル)を室温下、1時間にわたり滴下した。滴下終了後、混合液を80℃に昇温し4時間反応した。反応終了後、撹拌を行いながら10℃前後まで冷却を行い結晶を析出させた。この反応混合液に水3リットルを添加し、完全に反応目的物を析出させるとともに反応中に副生するトリエチルアミンの塩酸塩を溶解除去させ、ろ過により析出物を回収し、120℃にて乾燥を行い、下記式(2)
【0030】
【化4】
Figure 0003899569
【0031】
で示される化合物(化合物Aと称する)を得た。収率は73%であり、融点は192〜194℃、5%加熱重量減少温度が337℃、元素分析値は、C 46.5%、H 4.5%、P 15.2%(理論値 C 46.6%、H 4.4%、P 15.0%)であった。
【0032】
実施例1
ポリプロピレン(東ソー製J7030B)100重量部に対し、参考例の方法により得られた化合物Aを25部、ポリリン酸アンモニウム(ヘキスト製Exolit462)25部を配合し、180℃にてロール混練を行った。次いで、ロール混練により得られた樹脂組成物を190℃、100kg/cm2で3分間プレス成形し、この成形樹脂より各種評価用試験片を作成し、測定評価を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003899569
【0034】
実施例2、実施例3
ポリプロピレン100重量部に対し、化合物A、ポリリン酸アンモニウムを表2に示すような重量部で配合した以外は実施例1と同様の方法により各種評価用試験片を作成し、測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。
【0035】
実施例4
低密度ポリエチレン(東ソー製UP202)100重量部に対し、調製例の方法により得られた化合物Aを35重量部、ポリリン酸アンモニウム(ヘキスト製Exolit462)を30重量部を配合し、150℃にてロール混練を行った。次いで、ロール混練により得られた樹脂組成物を150℃、100kg/cm2で3分間プレス成形し、この成形樹脂より各種評価用試験片を作成し、測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。
【0036】
実施例5
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー製ウルトラセン630)100重量部に対し、化合物Aを20重量部、ポリリン酸アンモニウム(ヘキスト製Exolit462)を15重量部を配合し実施例4と同様の方法で混練、成形、測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。
【0037】
比較例1
ポリプロピレン(東ソー製J7030B)100重量部に対し、化合物Aを80重量部を配合し、実施例1と同様の方法により測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。
【0038】
比較例2
比較例1において、化合物Aの代わりにポリリン酸アンモニウム(ヘキスト製Exolit462)80重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。
【0039】
比較例3
比較例1において、化合物Aの代わりに下記式(3)
【0040】
【化5】
Figure 0003899569
【0041】
で示される縮合リン酸エステル(大八化学工業製CR733S:化合物Bと称する)を80重量部用い実施例1と同様の方法により測定評価を行った。その結果を表1にあわせて示す。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン系樹脂に対し、下記一般式(1)
    Figure 0003899569
    (式中、R、R’は各々独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
    で示されるリン酸エステル化合物及びポリリン酸アンモニウムを配合してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、リン酸エステル化合物とポリリン酸アンモニウムとを、総重量として10〜100重量部配合することを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. リン酸エステル化合物とポリリン酸アンモニウムとを、90:10〜10:90の比率(重量比)で配合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
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