JP3861504B2 - 芳香族リン酸エステル化合物および該化合物よりなる難燃剤および難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、特定構造の芳香族リン酸エステル化合物、該化合物からなる難燃剤、およびこれを含有する難燃性樹脂組成物に関する。本発明の化合物は、従来用いられてきたノンハロゲン系の有機難燃剤に比べ、少ない量で高い難燃化効果を発現するため、本来樹脂が保有している優れた物性を損なうことなく各種の合成樹脂を難燃化することができる。
【0002】
【従来の技術】
多くの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂に高い難燃性を付与するために、樹脂製造時または樹脂成形品製造時などに難燃剤を添加する方法が広く採用されている。難燃剤としては、金属水酸化物、ホウ酸塩、リン酸塩、赤リン、有機ハロゲン化物、有機リン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物、有機窒素化合物、など多くのものが使われている。これらのうち特に有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物などが優れた難燃効果を発揮する。
【0003】
しかし、これらのハロゲン含有化合物は樹脂成形時に熱分解してハロゲン化水素を発生し、金属を腐蝕させたり、樹脂自身を劣化させ、着色を起こしたりする。また、作業環境を悪化させるという問題もある。さらに火災の際に、人体に有害なハロゲン化水素を発生したりする、などの問題がある。そこで、ハロゲンを含まない難燃剤が求められており、環境問題からその重要性が近年急速に増大している。
【0004】
従来からハロゲンを含まない難燃剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤が用いられている。しかしこれらの無機化合物は難燃効果が低く、大量に添加しないと十分な効果を発現できないという問題があり、大量に添加すると樹脂本来の物性が損なわれたり、樹脂が激しく分解してしまう、などの問題点が生じ、その使用範囲には限界があった。
一方、ハロゲンを含まず、比較的良好な難燃効果が得られる難燃剤として、特定の有機リン化合物、特定の有機窒素化合物、特定の有機珪素化合物などがあり、これらもしばしば実用に供されている。
【0005】
メラミンに代表される有機窒素化合物は、特にポリアミドに対して比較的高い難燃化効果を示し、かつ多くの樹脂系で、有機リン化合物との相乗効果を示すため、しばしば用いられている。しかし、単独で効果を有する樹脂が限定されており、使用範囲が限定される。
また、ジフェニルシロキサン類に代表される有機珪素化合物も、有機リン化合物との相乗効果を示す場合があり、用いられることがある。しかし、単独で効果を有する樹脂が限定されており、やはり使用範囲が限定される問題がある。
【0006】
また、従来の有機リン酸エステル系難燃剤においては、リン酸(リン原子)部分が難燃効果の主体であり、難燃剤分子中のリン原子比率が高いことが重視されている。代表するものとしてトリフェニルホスフェート(これを以下「TPP」という)があるが、この化合物は耐熱性が低くかつ揮発性が高いため、高温で成形する樹脂には適さず、特に成形時金型汚染の問題が深刻で、使用範囲が限定される。
このような問題を解決するために、様々な検討がなされており水酸基を含有する有機リン酸エステル類が低揮発性で、かつ熱変形温度(HDT)低下を抑える新規な難燃剤として、米国特許5278212号や特開平8−165373号などに記載されている。しかし、水酸基を有するため、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなど、水酸基により樹脂の物性が大幅に低下するおそれのある樹脂に適用するには問題がある。
【0007】
その他に有機リンを低揮発化し、難燃剤として使用するものとして、特公昭51−19858号、特開昭59−202240号、米国特許4134876号などに記載されている縮合リン酸エステルがある。
これらのものはTPPより耐熱性や低揮発性には優れるものの、リン含量あたりでの難燃化効果はTPPを越えるものではなく、大量に添加する必要がある。そのため樹脂の可塑剤としての効果のため熱変形温度を大幅に低下させるなど、多くの問題が未解決のままである。
【0008】
その他に、本発明の芳香族リン酸エステル化合物に類似する縮合リン酸エステルに関するものとして、特開平5−1079号、特開平8−277344号、特開平7−216100号などがあるが、これ等も満足できる性能を有するものではない。
さらに、米国特許4134876号では、テトラメチルビフェノールのようなアルキル置換された芳香族ジオールから誘導される縮合リン酸エステルが、レゾルシンのようなアルキル置換されていない芳香族ジオールから誘導されたリン酸エステルに比較し、ポリエステルの難燃剤として使用した場合、熱安定性に優れており、好ましくない副反応を避けることができると記載されている。しかし、後者に比べ前者は難燃性向上効果は劣ることが記載されている。このことは、アルキル置換した芳香族ジオールから誘導したリン酸エステルは、一般的には難燃性向上効果は小さいことを示唆している。本来アルキル基は易燃焼性であることを考慮すれば、次の理由から当然予想される帰結である。
【0009】
従来有機リン酸エステル系難燃剤の作用機構上、リン酸(リン原子)部分と有機基部分について次のように考えられて来た。
すなわち、従来の有機リン酸エステル系難燃剤においてはリン酸(リン原子)部分が難燃効果の主体であり、難燃剤分子中におけるリン原子比率が高いことが重視されてきた。従って、トリフェニルフォスフェート(TPP)は耐加水分解性や耐熱分解性の乏しさに基づく品質劣化、低分子量であることが原因のブリードアウト(難燃剤の様な添加剤が合成樹脂の表面に滲み出てくること)に起因する成形時障害や合成樹脂製品の表面汚損等重大な欠陥を持つが、リン原子比率が高いため、難燃化技術者はTPPを使いこなす技術開発に腐心してきている。また、リン原子比率低下を最小限にとどめつつ、TPPの欠点を改良すべく研究が進められている。
【0010】
有機基部分の役割は主として、合成樹脂への親和性賦与、ブリードアウトを避けうる分子量賦与、耐加水分解性賦与、成形やリサイクルに耐えうる耐熱分解性賦与であり、本質的に易燃焼性である炭化水素を主体とする有機基部分には難燃化効果を期待すべくも無いというのが従来の考え方である。また、飽和脂肪族構造は芳香族構造に比して燃焼熱が大きいので、芳香族構造の比率が高い方がリンの難燃化効果を活かしやすく、芳香環構造上に飽和脂肪族基を置換するのは難燃化効果阻害因子になると考えるのが一般的である。これはビスフェノールAを原料とする標準的ポリカーボネート(BFA−PC)とビスフェノールの芳香環上に4個の飽和脂肪族基であるメチル基を置換基として有する4,4,4′,4′−テトラメチルビスフェノールFを原料とするポリカーボネート(TMBF−PC)の燃焼性予測結果からも支持される。燃焼性を予測するには、過去に測定された膨大な各種構造の合成樹脂の燃焼性データを統計的に解析し、部分分子構造の合成樹脂燃焼性への寄与を評価し、寄与度表を作成する。燃焼性未知の合成樹脂の燃焼性を予測するには、合成樹脂の部分構造の寄与度を一定の法則に従って集計する。この方法の代表的な物にファン・クレベレン法が有る。予測燃焼性はそのなりたちを反映し過去の知見、常識を反映する。ファン・クレベレン法を使い、上記2種のポリカーボネートの燃焼特性をLOI(燃焼を継続するのに必要な最低酸素濃度の指標であり、数値が小さいほど燃焼し易いことを示す)で予測すると、BFA−PCは27、TMBF−PCは23である。これは、脂肪族基であるメチル基による芳香環置換が燃焼性を向上させる(換言すれば難燃性を低下させる)という考え方が常識的であることを示す。
【0011】
しかるに本発明者等が詳細に検討した結果、次の考え方をすべきであることが判明した。
すなわち、常識的には易燃性であり難燃化効果を期待すべくも無いと考えられている有機基部分が難燃化効果を発現する化学構造を案出することによって、リン酸(リン原子)部分との共働効果により、特異的に高い難燃化効果を発揮する難燃剤を創出し得るとするものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲンを含まず、かつ従来の非ハロゲン系難燃剤が抱えている問題を解決しうる新規芳香族リン酸エステル化合物、難燃剤すなわち低添加量で効果発現し、他の物性を損なわない難燃剤および難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は難燃剤の性能向上のため、有機基部分の構造に関し、合成樹脂が燃焼する時、合成樹脂の架橋・炭化を促進し、合成樹脂を難燃化する構造とすることを想定し、合成樹脂の架橋・炭化の促進は燃焼時に難燃剤から生成するラジカルによること、ラジカルとして安定で寿命が長いベンジルラジカルに着目した。
また、ベンジルラジカル生成構造として
(1)1級または2級の脂肪族炭化水素基で特定部位を置換した2個の芳香環基、
(2)上記芳香環に結合する置換または未置換の1級または2級のアルキレン基、
を有する構造が効果的であることを見出し、本発明を達成したもので、かかる構造とすることにより、ビスフェノールAやビフェノールから誘導されるジリン酸エステル等従来使用している難燃剤に比し、常識的には、脂肪族基置換によって難燃化効果が低下すると考えられるにも拘わらず、特異的に高い難燃化効果を発揮することを確認して本発明はなされたもので、具体的には、
▲1▼下記式(I)で表わされる芳香族リン酸エステル化合物、
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R1 は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数5から12のシクロアルキル基または炭素数7から20のアラルキル基を表す。また、式中R2a、R3a、R2b、R3bは互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1から4の1級または2級アルキル基を表す。また、式中、R4a、R5a、R4b、R5bは互いに同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1から4のアルキル基を表す。また式中、R6a、R7a、R6bおよびR7bは互いに同一であっても異なっていてもよい、炭素数1から4のアルキル基を示す。また、m、n、pおよびqは0から4である。)
【0016】
▲2▼上記▲1▼記載の芳香族リン酸エステル化合物を主成分とする難燃剤、および
▲3▼上記▲2▼記載の難燃剤と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有する難燃性樹脂組成物、を提供するものである。
本発明は、上記のとおり特定位置(式(I)のR2a、R3a、R2b、R3bが結合する位置)を特定構造のアルキル基で置換した2個のフェノールを特定構造(式(I)のR1 が結合する炭素原子上に水素原子を有する構造)のアルキレン基で結合した特定構造のビスフェノールを中間体として誘導される芳香族リン酸エステル化合物に特異な難燃化効果を発揮させる、従来にない難燃化機構を案出し、量子化学的考察により理論的可能性を確認した上で、化合物を合成、難燃化効果を確認して成し遂げられたものである。
【0017】
無機リン化合物、あるいは、有機リン酸エステルに代表される有機リン化合物が難燃剤として有効であることは知られているが、本発明の化合物においてはリン酸基を特定構造の有機基構造であるビスフェノール骨格が相乗的に機能して優れた難燃化効果を発揮するものと想定され、特に少ない添加量で実用的に優れた難燃化効果を発揮する点に既存技術との大きな相違がある。
想定される難燃化機構は樹脂組成物燃焼時の特異的炭化促進に関連していると考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明芳香族リン酸エステル化合物は式(I)で表わされる。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R1 は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数5から12のシクロアルキル基または炭素数7から20のアラルキル基を表す。また、式中R2a、R3a、R2b、R3bは互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1から4の1級または2級アルキル基を表す。また、式中、R4a、R5a、R4b、R5bは互いに同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1から4のアルキル基を表す。また式中、R6a、R7a、R6bおよびR7bは互いに同一であっても異なっていてもよい、炭素数1から4のアルキル基を示す。また、m、n、pおよびqは0から4である。)
【0021】
本発明の上記式(I)で表される芳香族リン酸エステル化合物において、R1 は水素原子;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、第三ペンチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、2−メチルシクロペンチル、3−メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシル、2,3−ジメチルシクロペンチル、シクロオクチル等の炭素数5〜12のシクロアルキル基;またはベンジル、p−メチルベンジル、o−メチルベンジル、p−エチルベンジル、o−エチルベンジル、o,p−ジメチルベンジル、p−イソブチルベンジル、p−第三ブチルベンジル、p−フェニルベンジル等の炭素数7〜20のアラルキル基を示すが、これらの中で、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基が好ましく、中でも水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0022】
R2a、R3a、R2bおよびR3bはそれぞれ独立にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル等の炭素数1〜4の1級または2級のアルキル基を示すが、それ等の中でメチル基およびエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。またR2a、R3a、R2bおよびR3bは同時に同一の基であることが好ましい。
R4a、R5a、R4bおよびR5bは水素原子またはそれぞれ独立にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を示すが、これらの中で、水素原子、メチル基およびエチル基が好ましく、中でも水素原子およびメチル基が最も好ましい。また、R4a、R5a、R4bおよびR5bは同時に同一の基であることが好ましい。
【0023】
R6a、R7a、R6bおよびR7bはそれぞれ独立にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を示すが、これらの中で、メチル基およびエチル基が好ましく、中でもメチル基が最も好ましい。また、R6a、R7a、R6bおよびR7bは同時に同一の基であることが好ましい。また、m、n、pおよびqは0から4である。好ましくは同時に0〜4から選ばれる同一の数である。m、n、pおよびqが同時に1の場合、4位または6位でアルキル化されていることが好ましく、またm、n、pおよびqが同時に2の場合、4,6−位または3,5−位でアルキル化されていることが好ましい。このようなR6a、R7a、R6bおよびR7b基を含むフェニル基として好ましい例としては、トルイル(2−メチルフェニル)、キシリル(2,6−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニルなど)、トリメチルフェニル(2,4,6−トリメチルフェニル、2,3,5−トリメチルフェニルなど)などである。特に、2−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニルなどが、性能、入手容易さから好ましい。
【0024】
上記式(I)で表される化合物の中で、好ましいものとしては、R1 が水素原子またはメチル基であり、少なくともR2a、R3a、R2bおよびR3bが同時に炭素数1〜4の1級または2級アルキル基から選ばれる同一の置換基である化合物が挙げられる。この場合、R2a、R3a、R2bおよびR3bが同時にメチル基またはエチル基である化合物がより好ましく、同時にメチル基である化合物が最も好ましい。
本発明の式(I)で表わされる化合物は、下記の反応式に示す方法に従って製造することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0025】
【化4】
【0026】
(反応式中、Xは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、R1 、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R2b、R3b、R4b、R5b、mおよびpは式(I)の定義と同じものを意味し、式(Ia)は式(I)においてR6a=R6b、R7a=R7b、m=nおよびp=qの場合を表わす。)
上記反応式において、式(Ia)で表される化合物は、式(II)のジアリールリン酸ハライドと式(III)の芳香族ジオールとをルイス酸触媒または金属単体触媒の存在下に、無溶媒または適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0027】
反応に用いられる式(II)の化合物としては、ビス(2−メチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,4−ジメチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,3,5−トリメチルフェニル)リン酸クロリドなどが挙げられる。ビス(2−メチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)リン酸クロリド、などが好ましい。
【0028】
また、式(III)の芳香族ジオールの代表例として、2,2′,6,6′−テトラメチルビスフェノールF(TMBPF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−シクロヘキシル−メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フェニル−メタン、2,2′,3,3′,6,6′−ヘキサメチルビスフェノールF、2,2′,3,3′,5,5′,6,6′−オクタメチルビスフェノールFなどを挙げることができる。
【0029】
ルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化亜鉛、塩化スズなどがあげられる。また金属単体触媒としてはAl、Fe、Snなどがあげられる。反応活性および結晶性固体として得るのに重要な反応の選択性などを考慮すると塩化マグネシウムやAlが好ましい。
なお、これらを2種以上混合してもよいし、さらに反応制御のために3級アミンなどのルイス塩基を共存させて反応してもよい。
これらの触媒の使用量は、式(III)の芳香族ジオール1モルに対し、0.001〜0.1モル、好ましくは、0.01〜0.05モルの範囲である。0.001モル以下では反応活性が低下し、また0.1モル以上では反応活性は高いものの、結晶化を阻害するような、好ましくない副生成物の生成量が増える傾向がある。
【0030】
式(III)の芳香族ジオールに対する式(II)のジアリールリン酸ハライドの使用量は、モル比で、2.2以上、好ましくは2.4以上である。
反応は、無溶媒で遂行してもよいが、式(II)のアリールリン酸ハライドと式(III)の芳香族ジオールの共通溶媒で、かつ溶媒自身がこれらの化合物や触媒と反応するおそれがない溶媒で希釈して実施してもよい。このような溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、特にトルエンやキシレンなどのアルキルベンゼン類が好ましい。
反応は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃で実施する必要がある。反応によって生成するハロゲン化水素を反応系外に除去し、反応を促進するために減圧にしてもよい。
【0031】
反応終了後、溶媒を使用した場合には、一旦溶媒を留去し、次いで残存するジアリールリン酸クロリドを抽出除去し、水で処理して、残存するハロゲン化水素を完全に除去した後、乾燥することにより、式(I)の芳香族リン酸エステル化合物が得られる。式(II)のジアリールリン酸ハライドを抽出除去するには、ヘキサンやヘプタンのような低級アルカン類を用いることが望ましい。また、結晶化しにくい場合は、少量の結晶化核剤(別途精製し、結晶化させた高純度の式(I)化合物が好ましい)を加え、物理的刺激を与える(撹拌など)ことにより結晶化させることができる。但し純度(HPLCやTLCなどの公知の方法で容易に確認できる)が95%未満であると結晶化しにくい。
【0032】
このようにして得られた式(I)の芳香族リン酸エステル化合物は、単独では、室温(20℃)で結晶性固体になる化合物であり、樹脂に配合する場合の取り扱いが容易である。しかも、実質的にフェノール性OHを含まないため、フェノール性OHの残存による着色や熱安定性の低下が避けられる上、特定の樹脂すなわちフェノール性OHと反応しうる構造を有する樹脂、例えばポリエステル、ポリカーボネートなどの難燃化に応用した場合の効果が高くなる。その尺度として、KOH価、ここでは塩化メチレン中、KOHのエタノール溶液で、フェノールフタレインを指示薬として中和滴定して算出したKOH価を1mg−KOH/g−式(I)化合物以下、特に、好ましくは0.5mg−KOH/g−式(I)化合物以下のものが特に効果が高い。
【0033】
このように得られた式(I)のリン酸エステルは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂等の合成樹脂に対し、少ない添加量でも難燃剤、酸化防止剤、可塑剤として効果を発揮するため、難燃性、熱安定性を付与し、および/または成形加工時安定性を向上させることが可能である。また樹脂物性の低下が少ない。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、液晶ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、耐熱PMMA、ポリオキシメチレン、これらの一種以上を含有するポリマー複合物などが挙げられる。特に変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル類、ポリカーボネート類、液晶ポリマーのように分子中に酸素原子を含む樹脂の難燃化に効果的である。とりわけポリフェニレンエーテルまたはポリカーボネートを含有する樹脂の難燃化に効果的である。
【0034】
熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、ポリ尿素、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
上記樹脂は1種または2種以上が混合されていてもよい。また必要に応じて各種添加剤、例えば、他の難燃剤、フッ素樹脂、たとえばポリテトラフルオロエチレンのような燃焼時の液滴の落下(ドリップ)防止剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤、滑剤、結晶化核剤、帯電防止剤などを含有していてもよい。
【0035】
式(I)の芳香族リン酸エステル化合物の添加量は使用される樹脂、必要とされる難燃性の度合いに応じ、適宜変更しうる。通常は樹脂100重量部に対し0.1〜100重量部、好ましくは1〜30重量部の割合で用いられる。上記樹脂、式(I)の芳香族リン酸エステル化合物を含む樹脂成形体は、公知の各種方法により配合、成形することにより得られる。
かくして得られる本発明の難燃性樹脂組成物としては後述するUL94垂直燃焼試験法で評価した場合の燃焼性が、V−2、V−1またはV−0であることが好ましく、より好ましくはV−1またはV−0、特に好ましくはV−0である。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて更に詳細に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。また、発明のポイントである燃焼性を判断する手法としては、UL(Underwriters Laboratories)94の垂直燃焼試験法に準じて行った。この方法は、ガスバーナーの炎を火源として、難燃剤を含有する合成樹脂試験片下部に一定時間接触させて着火し、火源を取り去った後、試験片の有炎燃焼時間、燃焼距離、燃焼中の有炎溶融高分子の滴下による下部設置脱脂綿への類焼等を観察・記録するものである。
【0037】
難燃性の判定は、V−0、V−1、V−2に分ける。V−0が最も難燃性に優れ(燃焼性が低い)、離炎後速やかに自己消火し、脱脂綿への類焼性がない。V−1は離炎後自己消火までV−0よりもやや時間を要するが、脱脂綿への類焼性がない。V−2はV−1と同様の自己消火性で脱脂綿への類焼性が有っても良い。即ち、難燃性はV−0が最も優れ、次いでV−1、次いでV−2である。V−0、V−1の高分子素材は火源がなければ燃焼継続できず、周辺の可燃材への類焼の危険が小さいので、OA機器・家電製品・自動車部品・建築材等に、防災上極めて有用である。
【0038】
難燃性評価基準の詳細は表1に示す。評価結果を示す表中の「可燃」という表記は離炎後も燃焼継続し、難燃性がV−2より低いか自己消火性が無いことを示す。
樹脂組成物の物性測定評価は下記の方法に準じて実施した。
(1)熱変形温度(HDT):ASTM D648、荷重:18.5kg
(2)引っ張り強度:ASTM D638
(3)曲げ弾性率:ASTM D790
(4)アイゾット衝撃値:ASTM D256
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1
TMBPF0.5モル、キシレン500ml、ビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリド1.2モル、アルミ箔0.1モルからなる混合物を、窒素雰囲気下、165〜175℃で24時間加熱した。反応に伴い生成する塩化水素は、窒素気流で系外に導き、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。
【0041】
反応進行はシリカゲルの薄層クロマトグラフィー(塩化メチレンを展開溶媒として使用)で追跡した。24時間反応を継続した時点で、TMBPFおよび片末端OHの化合物は完全に消失した。さらに2時間反応を継続し、熟成の後、キシレンを留去した。次いで室温に戻した後、ヘキサン200mlで、残存するビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリドを抽出除去した。次に、塩化メチレン500mlで希釈し、固形物を濾別して除いた後、その溶液を水200mlで10回で洗浄し、残存する酸成分を除去した。溶液を無水硫酸ナトリウムで脱水の後、濾過し、ついでシリカゲル60(粉末)の200gを加え、30分撹拌処理した。その後、濾過、さらに濾別され残存したシリカゲルを塩化メチレン(200mlで3回)で洗浄し、その洗液も濾液と合一した。濾液をHPLC(カラム:東京化成工業製 Kaseisorb LC ODS SUPER 4.6mm ID×150mm、溶媒;アセトニトリル、flow=1ml/分、検出器:UV(254nm))で分析したところ、98%以上の純度で、TMBPFのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルが得られていた。この液から塩化メチレンを完全に留去し、TMBPFのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルを345g(収率83%)、白色の結晶性固体として得た(これをFR1と呼ぶ)。
【0042】
この化合物の融点は166℃(Yanaco MP−500 使用による目視融点)であり、IR分析(日本分光製:FT/IR−230を使用)により構造確認(図1参照)の後、KOH価を測定したところ、0.38mg−KOH/g化合物、またイオンクロマトグラフィー法によりハロゲン含量を測定したところ、5ppm以下であった。
【0043】
実施例2
TMBPF1モル、キシレン500ml、ビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリド2.4モル、塩化マグネシウム0.2モルからなる混合物を、窒素雰囲気下、165〜175℃で12時間加熱した。反応に伴い生成する塩化水素は、窒素気流で系外に導き、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。
【0044】
反応進行はシリカゲルの薄層クロマトグラフィー(塩化メチレンを展開溶媒)で追跡した。12時間反応を継続した時点で、TMBPFおよび片末端OHの化合物は完全に消失した。さらに2時間反応を継続し、熟成の後、キシレンを留去した。次いで室温に戻した後、ヘキサン200mlで、残存するビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリドを抽出除去した。次に、塩化メチレン500mlで希釈し、固形物を濾別して除いた後、その溶液を水200mlで10回洗浄し、残存する酸成分を除去した。溶液を無水硫酸ナトリウムで脱水の後、濾過し、ついでシリカゲル60(粉末)の400gを加え、30分撹拌処理した。その後、濾過、さらに濾別され残存したシリカゲルを塩化メチレン(200mlで3回)で洗浄し、その洗液も濾液と合一した。濾液を分析したところ、99%以上の純度で、TMBPFのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルが得られていた。この液から塩化メチレンを完全に留去し、TMBPFのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルを749g(収率90%)、白色の結晶性固体として得た(これをFR2と呼ぶ)。
【0045】
この化合物の融点は165℃、IR分析により構造確認の後、KOH価を測定したところ、0.39mg−KOH/g化合物、イオンクロマトグラフィー法によりハロゲン含量を測定したところ、5ppm以下であった。
【0046】
比較例1
TMBPFをビスフェノールFに変更した以外は実施例2と同様の方法で反応を実施した。最終的に白色の結晶性固体570gが得られた(これをFR3と呼ぶ)。分析したところ、98%以上の純度で、BPFのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルが得られていた。IR分析により構造確認の後、KOH価を測定したところ、0.33mg−KOH/g化合物、またハロゲン含量は10ppmであった。
【0047】
比較例2
TMBPFを4,4′−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニル(TMBPL)に変更した以外は実施例2と同様の方法で反応を実施した。最終的に、白色の結晶性固体650gが得られた(これをFR4と呼ぶ)。分析したところ、98%以上の純度で、TMBPLのビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルが得られていた。
この化合物の融点は188℃、IR分析により構造確認の後、KOH価を測定したところ、0.30mg−KOH/g化合物、またハロゲン含量は5ppm以下であった。
【0048】
比較例3
TMBPFをビスフェノールAに変更する以外は実施例1と同様の方法で反応を実施しIR分析で構造確認した。KOH価は0.30mg−KOH/g化合物である(これをFR5と呼ぶ)。
【0049】
実施例3および4、比較例4〜10 ABS/PCアロイ系での難燃性評価
本発明の難燃性と、既存のリン酸エステル系難燃剤の効果の差異を明らかにするため、市販の合成樹脂の難燃化効果を確認した。合成樹脂としては、PC(ポリカーボネート)とABS樹脂との組成物を選んだ。また、難燃剤としては、上記実施例2、比較例1、2および3で合成したFR2、FR3、FR4およびFR5、市販の代表的難燃剤として下記に示すTPP、PX200、CR733Sを用いた。
【0050】
【化5】
【0051】
先ず、PC(三菱エンジニアリングプラスチックス社製:7022J)75部、ABS樹脂(テクノポリマー社製:DP611)25部およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂(三井=デュポンフルオロケミカル製6C)0.3部と、上記した難燃剤0〜15部のそれぞれとを、ラボプラストミル(東洋精機社製)を用い、240℃で予熱1分(30rpm)、100rpmで3分間混合し、樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物を、110℃で4時間乾燥した後、プレス成形機を用い、230℃で圧縮成形し、厚さ3mmの試験片を作成した。この試験片からUL94試験片に準じて幅10mm、長さ125mm、厚さ3mmの直方体の試験片を切り出し、UL94の垂直燃焼試験の試験法に従い、燃焼試験を実施し燃焼性を評価した。
【0052】
その結果を表2に示す。なお、表2中、難燃剤のリン含量は、FR2:7.4%、FR3:8.0%、FR4:7.6%、FR5:7.7%、TPP:9.5%、PX200:9.0%であり、樹脂組成物中のリン含量は表2に記載したとおりである。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例5〜8および比較例11〜16
先ず、PC(三菱エンジニアリングプラスチックス社製:7022J)100部およびPTFE樹脂(三井=デュポンフルオロケミカル製6C)0.3部と、前記難燃剤0〜15部のそれぞれとを、ラボプラストミル(東洋精機製)を用い、240℃で予熱1分(30rpm)、100rpmで3分間混合し、樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物を、110℃で4時間乾燥した後、プレス成形機を用い、260℃で圧縮成形し、厚さ3mmの試験片を作成した。この試験片からUL94試験片に準じて幅10mm、長さ125mm、厚さ3mmの直方体の試験片を切り出し、UL94の垂直燃焼試験の試験法に従い、燃焼試験を実施し、燃焼性を評価した。その結果を表3に示す。
また、上記実施例7〜8および比較例11〜16と同じ組成の配合で、280℃で射出成形を行い成形試験片を作成した。この試験片を用い機械特性および熱的特性を評価した。その結果を表4に示す。なお、表中、HDTは熱安定性の指標となる熱変形温度を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3から、本発明による優れた難燃剤を使用すると、従来の難燃剤より少ない添加量で、従来の難燃剤以上の難燃効果を有することが明らかである。さらに、表4からは、難燃剤量を減らすことにより基本となる比較例11(難燃剤無添加)物性低下が少なくなっていることがわかる。加うるに難燃剤添加量が減ればコスト的に有利になる。これらのことは実用上大きな意味を有するものである。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例9および比較例17〜20
PPE(ポリフェニレンエーテル)(三菱エンプラ社製:YPX100L)60部およびHIPS(三菱化学社製:ダイヤレックスHT76)40部と、前記難燃剤とを、上記実施例および比較例と同様にラブプラストシルを用いて混合し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を用いて試験片を作成し、同様に難燃性の評価を行った。その結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
実施例10〜13
TMBPFの代わりに、2,2′,3,3′,5,5′,6,6′−オクタメチルビスフェノールFまたは1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタンを用いる他は、実施例2と同様の方法で芳香族リン酸エステル化合物を合成した(これらの化合物をそれぞれFR6およびFR7と呼ぶ)。これらの化合物のKOH価はそれぞれ0.34mg−KOH/g化合物および0.27mg−KOH/g化合物であった。また、ビス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸クロリドの代わりにビス(2−メチルフェニル)リン酸クロリドまたはビス(2,4−ジメチルフェニル)リン酸クロリドを用いる他は、実施例1と同様の方法で芳香族リン酸エステル化合物を合成した(これらの化合物をそれぞれFR8およびFR9と呼ぶ)。これらの化合物のKOH価はそれぞれ0.38g−KOH/g化合物および0.37g−KOH/g化合物であった。
これらの化合物を、前記実施例および比較例と同様にそれぞれPCに配合して樹脂組成物を調整し、難燃性を評価した。その結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
上記実施例3〜9、比較例4〜20の結果(表2〜6)から明らかなとおり、本発明の難燃剤は、少ない添加量でもV−1レベルの高い難燃性を発揮し、樹脂の熱安定性や機械的強度等の他の物性を損うことがなく、かつ、成形時のガス発生による金型汚染がないこと、合成樹脂成形品使用時の難燃剤のブリードアウトによる外観劣化、ベトツキ等がないこと等の優れた性能を有するものである。
【0063】
一般に、難燃剤の難燃化性能は難燃剤に含まれるリン含量に依存するといわれている(例えば、高分子論文集Vol.53,No.7,pp.406−414、特開平7−300561号)が、本発明の難燃剤は、従来の知見と異なり、既存の難燃化剤であるTPPやPX200に比較しリン含量が少ないにも拘わらず高い難燃化性能を発現し得るものである。
この結果は従来の知見からは全く予測し得ないものである。
【0064】
【発明の効果】
本発明の芳香族リン酸エステル化合物は、少ない添加量で合成樹脂に高い難燃性を付与しうるものである。また本発明の化合物を配合した樹脂組成物は、高い難燃性を有し、機械的特性や熱的特性等の他の物性を損うことがなく、成形時のガス発生による金型汚染がないこと、合成樹脂製品使用時の難燃剤のブリードアウトによる外観劣化、ベトツキ等がないこと等の実用的に優れた性能を有するものである。従って、本発明の芳香族リン酸エステル化合物は、合成樹脂の難燃剤として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた難燃剤の赤外分光分析スペクトル図。
Claims (7)
- R1 が水素原子またはメチル基であり、R2a、R3a、R2bおよびR3bが同時に炭素数1〜4の1級または2級アルキル基から選ばれる同一の置換基である請求項1に記載の芳香族リン酸エステル化合物。
- 純度が95%以上であり、室温(20℃)で固体である請求項1または2に記載の芳香族リン酸エステル化合物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族リン酸エステル化合物を主成分とする難燃剤。
- 請求項4に記載の難燃剤と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有する難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートまたはポリフェニレンエーテルを含む熱可塑性樹脂である請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
- 難燃性がUL94垂直燃焼試験法で評価したとき、V−0またはV−1レベルである請求項5または6記載の難燃性樹脂組成物。
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