JPWO2008096403A1 - ポリビニルアセタール樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを反応させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法において、前記ポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量がアルカリ金属換算で300ppm以下であり、炭酸触媒の存在下、40〜200℃で反応させることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法とする。これによって、金属塩や酸などの不純物の残存が極めて少ない高品質のポリビニルアセタール樹脂の効率的な製造方法が提供される。

Description

本発明は、ポリビニルアセタール樹脂の製造方法、特にポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを炭酸触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、強靭で耐薬品性に優れたポリマーであり、種々の材料の表面に対して強い接着性を示す。このような特性のために、ポリビニルアセタール樹脂はコーティング用材料として有効であり、安全ガラス用中間膜としても使用される。ポリビニルアセタール樹脂の用途は広く、塗料、接着剤、バインダー、成形体など、さまざまな用途に使用されている。
ポリビニルアルコールとカルボニル化合物の反応によるポリビニルアセタールの合成方法は、公知である。(例えば、非特許文献1参照)。現在工業的に採用されている、代表的なポリビニルアセタール樹脂の製造方法は以下のとおりである。すなわち、水溶液中において、ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを酸の存在下で反応させ、生成するポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリーを得て、これをアルカリで中和し、脱水、洗浄した後に乾燥して、ポリビニルアセタール樹脂の粒状物を得るという方法である。
このとき、触媒として使用される酸は、通常、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの強酸であり、アセタール反応の終了後には中和処理が必要である。当該中和処理には水酸化ナトリウムなどのアルカリ化合物が用いられるが、これは酸触媒と反応して金属塩を生成する。このようにして生成する金属塩や、未反応の酸触媒や、未反応のアルカリ化合物は、ポリビニルアセタール樹脂の粒子中に取り込まれ、また当該樹脂粒子の表面に付着する。こうした成分は水洗を繰り返すことによりある程度除去できるが、樹脂粒子の内部に取り込まれた成分を除去するのは困難である。
このようにポリビニルアセタール樹脂中に残存する不純物によって以下のような問題が発生している。例えば、アルカリ金属は、ポリビニルアセタール樹脂の電気絶縁性、透明性、熱安定性などを損なわせる。また、酸成分の残留は脱水反応などを引き起こし、熱安定性を損なわせる。また、電子部品用途などに使用する場合には、金属元素やハロゲン元素などの混入が強く忌避される。
酸触媒やアルカリ化合物の残存に起因する上記問題を解決するために、さまざまな製造方法の提案がなされてきた。例えば、特許文献1には、所定の撹拌動力を投入して撹拌しながらアセタール化反応を行い、高撹拌混合下でアセタール化反応を進行させ、ポリビニルアセタール樹脂粒子を析出させる方法が記載されている。この方法によれば、精製工程において、洗浄性の良好な樹脂粒子を得ることができるとされている。また、特許文献2には、酸触媒を含むアセタール化反応物のスラリーを超音波によって振動させながらアルカリで中和する方法が記載されている。この方法によれば、樹脂粒子の内部に残存する酸触媒が拡散しやすくなり、中和反応が速やかに進行するとされている。また、特許文献3には、酸触媒を用いたアセタール化反応後に平均粒径が5μm以下の粒子を析出、沈殿させ、得られたスラリーをアルカリで中和し、水洗した後、電気透析によって精製する方法が記載されている。この方法によれば、金属成分の含有量が極めて少ないポリビニルアセタール樹脂が得られるとされている。しかしながらこれらの方法は、洗浄操作が煩雑であったり、工業的規模での実施が困難であったりした。
これに対し、特許文献4には、ポリビニルアルコール樹脂とカルボニル化合物とを含有する溶液又は懸濁液を加圧して、酸触媒を使用せずにアセタール化反応を進行させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法が記載されている。この方法によれば、酸触媒を中和したり、得られた樹脂を洗浄したりするという煩雑な工程を省くことが可能であるとされている。特許文献4には、原料の酸価に関する詳細な記載がないが、本発明者らの実験によれば、酸価が低くコントロールされたアルデヒドを用いた場合の、窒素加圧下での無触媒反応はきわめて遅く、工業的に現実的な反応速度を得ることは難しい。必要な反応速度を得るためには、使用する原料であるアルデヒド又はポリビニルアルコール中に不純物としてのカルボン酸の存在が必要であると考えられる。しかし、不純物であるカルボン酸の存在は未反応のアルデヒドの回収性を低下させる。また、ブタン酸のように水溶性の低いカルボン酸が存在する場合には、ポリビニルアルコールがエステル化されるという問題も生じる。また、ヘキサン酸のように沸点の高いカルボン酸が存在する場合には、ポリビニルアセタールからの除去が困難なため、残留したカルボン酸により、例えば、電子部品に用いられた場合、電極などの腐食を引き起こすことが懸念される。ところで、特許文献4において、加圧に用いられる気体としては、窒素、酸素、窒素酸化物、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、水及び空気が例示されているが、ここでは、単に加圧のための媒体として汎用ガスが例示されているだけであり、実施例では窒素ガスが使用されている。
また、特許文献5には、高分子化合物を超臨界流体又は高温高圧流体中で化学的に変性する変性高分子化合物の製造方法が記載されており、その具体例として、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて、ポリビニルアセタールを製造する例が記載されている。このときの超臨界流体又は高温高圧流体は、水、有機溶媒及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1つの流体であるとされている。また、このときの超臨界流体又は高温高圧流体は、温度100℃以上、圧力0.5MPa以上に加熱加圧されている流体であるとされている。特許文献5によれば、高温・高圧の水を用いる場合には、水のイオン積が常温に比べて数百〜千倍程度まで上昇するため、水から容易にプロトンが供給され、酸塩基反応を容易に進行させることができるとされている。しかしながら、水のイオン積が常温の数百倍になるためには、上記温度及び圧力の下限値(100℃、0.5MPa)程度では全く不十分である。そのため、特許文献5の実施例では温度300〜400℃、圧力9〜25MPaの条件でアセタール化反応を進行させている。また、水と二酸化炭素との混合流体を用いることによってpHを小さくすることができると記載されていて、実施例12ではそのような流体中でアセタール化反応を行っている。しかしながら、これらの実施例で採用されているような高温においてアセタール化反応させるのは、エネルギー的に不利である上に、反応装置も特殊なものが要求され、工業的に実用的な方法とは言いがたい。しかも、高温下で反応させるために副反応が進行しやすくなり、得られるポリビニルアセタールの純度が低下するおそれもある。実際、発明者らがポリビニルアルコール水溶液を1MPaの二酸化炭素で加圧した後250℃で30分間加熱したところ、分子量が半分程度にまで低下することを確認している。
特許文献6には、超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で、芳香環又はシクロオレフィン環を有するカルボニル化合物とポリビニルアルコールを反応させて、ポリビニルアセタール(変性ポリビニルアルコール)を製造する方法が記載されている。それによれば、超臨界状態又は亜臨界状態の流体中で反応させた場合には、嵩高いカルボニル化合物とポリビニルアルコールとを、効率よく反応させることができるとされている。そして、前記流体は、水やアルコール等の常温常圧における液体であってもよいし、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の常温常圧における気体であってもよいとされていて、超臨界状態又は亜臨界状態が形成できさえすれば、その流体の種類は限定されないという立場である。その実施例では、100℃、8MPaの超臨界条件の二酸化炭素中で、特に酸触媒を加えることなく、嵩高いカルボニル化合物とポリビニルアルコールを反応させて、ポリビニルアセタールが得られている。しかしながら、このような高圧下で反応させる場合には、設備コストが高くなるだけでなく、超臨界状態の発生ならびに大量の二酸化炭素の回収にかかるエネルギーが莫大になることが避けられない。
特開平11−349629号公報 特開平5−97919号公報 特開2000−38456号公報 特開2005−2285号公報 WO2003/033548号公報 特開2006−22160号公報 C.A.フィンチ(C.A.Finch)編「ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)」英国、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons Ltd.)刊、1973年、p.391−411
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属塩や酸などの不純物の残存が極めて少ない高品質のポリビニルアセタール樹脂の効率的な製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを反応させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法において、前記ポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量がアルカリ金属換算で300ppm以下であり、炭酸触媒の存在下、40〜200℃で反応させることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法を提供することによって解決される。
このとき、前記ポリビニルアルコールの平均重合度が200〜4000であり、ケン化度が80モル%以上であることが好ましい。また、前記カルボニル化合物がアルデヒドであることが好ましく、当該アルデヒドの酸価が20KOHmg/g以下であることがより好ましい。
前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とを、水を溶媒として含有し、炭酸が溶解した溶液中で反応させることが、本発明の好適な実施態様である。このとき、仕込み時のポリビニルアルコールの含有量が、反応液全体の重量に対して1〜80重量%であることが好ましい。反応装置内に二酸化炭素を導入して該反応装置内の二酸化炭素分圧を0.1〜3.5MPaとし、前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とを反応させることが好適な実施態様である。反応槽の中で液体を撹拌しながら反応させることも好適である。また、混練装置の中で加圧混練しながら反応させることも好適である。
以上のような方法によって、アセタール化度が1モル%以上の前記ポリビニルアセタール樹脂を得ることが好適である。また、アルカリ金属元素含有量が50ppm以下である前記ポリビニルアセタール樹脂を得ることも好適である。
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法によれば、金属塩や酸などの不純物の残存が極めて少ない高品質のポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。したがって、煩雑な洗浄操作を省く、あるいは簡略化することも可能となり、製造工程の合理化が可能となるとともに、排水の量を削減することもできる。また、アセタール化反応に用いる装置のコストが高くならず、温和な条件下で迅速に反応を進行させることも可能である。
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法は、ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを炭酸触媒の存在下で反応させることを特徴とするものである。従来、アセタール化のための酸触媒としては、塩酸や硫酸などの無機の強酸が広く使用され、反応後に当該酸触媒を強アルカリを用いて中和することが多かった。このような製造方法においては、用いられた酸、アルカリ及び生成した塩がポリビニルアセタール樹脂中に大量に残存することが避けられず、煩雑な洗浄操作を必要としていた。また、アセタール化度の低いポリビニルアセタール樹脂は水溶性を有するので、当該ポリビニルアセタール樹脂中の酸、アルカリ及び生成した塩を洗浄により除去することが困難となる。したがって、酸、アルカリ及び生成した塩の含有率の低いポリビニルアセタール樹脂を得るためには、透析など、非常に煩雑な操作が必要であった。これに対し、酸触媒として炭酸を使用することによって、アセタール化反応の後に気化させるだけで酸触媒を除去することができるし、中和操作も不要になる。
本発明の製造方法で原料として用いられるポリビニルアルコールは、一般的にポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムなどの塩基でケン化することにより製造されており、酢酸塩や未反応の塩基が残存している。しかしながら、このような酢酸塩や塩基の混入は、酸触媒として用いられる炭酸を中和するだけでなく、反応系内で緩衝作用を引き起こし、プロトン濃度を低下させる。すなわち、炭酸は弱酸であるために緩衝作用の影響を受けやすく、反応系内に弱酸の共役塩基が存在すると、緩衝作用によって酸触媒としての性能が大きく低下してしまう。これにより、アセタール化反応速度の低下を招き、効率的にポリビニルアセタール樹脂を製造することが困難になるおそれがあった。さらに、原料のポリビニルアルコールの金属塩含有量を低下させることが、得られるポリビニルアセタール樹脂の金属塩含有量を低下させるためにも重要である。特に、アセタール化反応後にポリビニルアセタール樹脂を洗浄しない場合には、この点は重要である。
したがって、本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法においては、原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量をアルカリ金属換算で300ppm以下とする。これによって、アルカリ金属塩の含有量が極めて少ないポリビニルアセタール樹脂を、反応速度を低下させることなく、煩雑な洗浄操作や透析操作を行うことなく、効率的に製造することが可能となった。すなわち、本発明は、アセタール化反応の酸触媒として炭酸を用い、さらに原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量をアルカリ金属換算で300ppm以下とすることによって、金属塩や酸などの不純物の残存が極めて少ない高品質のポリビニルアセタール樹脂を生産性よく製造する方法を見出したものである。
以下、本発明の製造方法について、より詳細に説明する。
本発明で使用される原料のポリビニルアルコールは、特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。原料のポリビニルアルコールの平均重合度は、200〜4000であることが好ましい。平均重合度が200未満の場合には得られるポリビニルアセタール樹脂の強度が低下するおそれがあり、より好適には1000以上であり、さらに好適には1500以上である。一方、平均重合度が4000を超える場合には、水溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になったり、製造コストが上昇したりするおそれがある。原料のポリビニルアルコールのケン化度は、水への溶解度を考慮すれば、80モル%以上であることが好ましい。ケン化度は、より好適には90モル%以上であり、さらに好適には99モル%以上である。また、エチレンなど、他のモノマーで変性されたポリビニルアルコールを使用することも可能である。その場合、ポリビニルアルコールの特性を阻害しない範囲での変性が好ましく、他のモノマーの含有量は20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量は、アルカリ金属換算で300ppm以下であることが重要である。前述のように、アルカリ金属塩の含有量を少なくすることによって、アセタール化反応の速度の低下を抑制することができるとともに、不純物の残存が極めて少ない高品質のポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。アルカリ金属塩の含有量は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
一般的な用途に用いられるポリビニルアルコールは、通常1000ppmを超えるアルカリ金属塩を含んでいるので、これを洗浄してアルカリ金属塩の含有量をアルカリ金属換算で300ppm以下にまで減少させてから、アセタール化反応に供することが好ましい。洗浄に用いる洗浄液は特に限定されないが、通常、水又は水溶液が用いられる。ポリビニルアルコール粒子の内部のアルカリ金属塩を効率的に抽出するためには、水/アルコール混合液、特に、水/メタノール混合液を用いて抽出することが好ましい。また、洗浄液に酸、例えば酢酸を添加して酸性にすることも、アルカリ金属塩を効率的に抽出するためには好ましい。
本発明で使用されるカルボニル化合物は、ポリビニルアルコールと反応してアセタールを形成することが可能なものであれば特に限定されない。通常、アルデヒド又はケトンが用いられるが、反応性の点からはアルデヒドが好適に用いられる。本発明で使用されるアルデヒドとしては、特に制限されるものではない。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、tert−ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;シクロヘキサンカルボアルデヒド、シクロオクタンカルボアルデヒド、ノルボルナンカルボアルデヒドなどの脂環族アルデヒド;ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ハロゲン置換ベンズアルデヒド、フェニル置換アルキルアルデヒド、フルフラールなどの芳香族アルデヒドなどが例示される。これらの中で、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボアルデヒドが好ましく用いられる。なかでもブチルアルデヒド、特にn−ブチルアルデヒドが、工業的に重要である。一方、本発明で使用されるケトンとしては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、アセトフェノンなどが例示される。これらのカルボニル化合物は単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
工業的に入手できるアルデヒドには、カルボン酸が混入している場合がほとんどである。これは、製造工程中に副生したものであったり、ハンドリング中に空気中で酸化されたりしたものである。このようなカルボン酸は、不純物としてポリビニルアセタール樹脂に混入したり、未反応アルデヒドを回収する際に当該アルデヒドに混入したり、アセタール化反応中にエステル化反応などの副反応を起こしたりするおそれがある。したがって、品質の良好なポリビニルアセタール樹脂を得るためには、前記アルデヒドの酸価が20KOHmg/g以下であることが好ましく、5KOHmg/g以下であることがより好ましく、1KOHmg/g以下であることがさらに好ましい。ここで、上記酸価は、1グラムのアルデヒド中に含まれる酸成分を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数のことであり、JIS K0070に従って測定される値である。
本発明において使用されるカルボニル化合物の量は、目的とするアセタール化度などによって適宜調整される。ポリビニルアルコールの全水酸基がアセタール化される量(すなわち、当該水酸基の半分のモル数)を理論量とするのであれば、当該理論量の0.01〜10倍のモル数のカルボニル化合物を用いるのが好適である。カルボニル化合物の使用量の下限値はより好適には前記理論量の0.1倍以上であり、さらに好適には0.4倍以上である。一方、上限値はより好適には前記理論量の5倍以下であり、さらに好適には2倍以下である。ここで、アセタール化度(モル%)は、以下の式によって表されるものである。
アセタール化度(モル%)=[(アセタール化された水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とは、水を溶媒として含有し、炭酸が溶解した溶液中で反応させることが好ましい。通常、ポリビニルアルコールの溶液を調製し、二酸化炭素の存在下でカルボニル化合物と撹拌する。カルボニル化合物がポリビニルアルコール溶液中に溶解する場合には均一相で反応が進行するし、カルボニル化合物がポリビニルアルコール溶液に溶解しない場合には、懸濁された状態で反応が進行することになる。反応が進行するに従ってポリビニルアセタール樹脂が析出する場合が多い。
なかでも、水又は水/アルコール混合物を溶媒として用い、炭酸が溶解した溶液中で反応させることが好ましい。ここで使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが例示される。これらのアルコールは、二種以上併用してもよい。水とアルコールの混合溶媒を使用するのであれば、水の含有量が50重量%以上であることが好ましい。また、二酸化炭素の溶解性、ポリビニルアルコールとカルボニル化合物の反応性、溶媒の回収の必要性などを考慮すれば、実質的に水のみを使用することが好ましい。
反応液中のポリビニルアルコールの濃度は特に限定されず、ポリビニルアルコールの溶解度や反応容積効率などを考慮して調整される。仕込み時のポリビニルアルコールの含有量が、反応液全体の重量に対して1〜80重量%であることが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が少なすぎる場合には、生産性が低下するおそれがあり、より好ましくは2重量%以上、さらに好適には5重量%以上である。酸触媒として炭酸を使用する本発明の製造方法においては、塩酸や硫酸などの強酸を使用する従来法に比べて、より高い反応温度が設定されることが多い。反応温度を高くすることによって反応液の粘度が低くなるので、より高濃度のものであっても撹拌や混練が容易である。例えば、後に説明するように混練装置を用いて混練するような方法も好適に採用され、そのような場合であれば、ポリビニルアルコールの含有量が20重量%以上であっても混練が可能であり、生産効率が改善される。一方、ポリビニルアルコールの含有量が多すぎる場合には、撹拌や混練が困難になるおそれがあり、特に撹拌翼を用いた撹拌が困難になりやすい。したがって、ポリビニルアルコールの含有量は、より好ましくは50重量%以下、さらに好適には30重量%以下である。本発明において、例えば、反応槽の中で液体を撹拌しながら反応させるような場合であれば、ポリビニルアルコールの含有量が1〜20重量%であることが好適な実施態様である。また、混練装置の中で加圧混練しながら反応させるような場合であれば、ポリビニルアルコールの含有量が20〜80重量%であることが好適な実施態様である。
本発明の製造方法では、炭酸触媒の存在下でポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを反応させることが最大の特徴である。炭酸触媒を存在させる方法は特に限定されないが、密封可能な反応装置において二酸化炭素を溶媒に溶解させることが好ましい。
本発明の製造方法では、反応装置内に二酸化炭素を導入して該反応装置内の二酸化炭素分圧を0.1〜10MPaとし、前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とを反応させることが好ましい。二酸化炭素分圧は0.12MPa以上であることが好ましく、0.15MPa以上であることがより好ましく、0.2MPa以上であることがさらに好ましい。二酸化炭素分圧を高くすることによって反応性が向上する。一方、二酸化炭素分圧が10MPaを超える場合には、もはや反応性の向上は見込めないうえに設備コストが増加する。当該圧力は、より好適には3.5MPa以下であり、さらに好適には2MPa以下であり、特に好適には1MPa以下である。圧力を低くすることによって、反応装置のコストを低減することができるし、エネルギー面からも有利である。ここでいう二酸化炭素分圧とは、アセタール化反応中の最高の二酸化炭素分圧のことをいい、反応装置内の圧力から溶媒の蒸気圧が引かれたものである。ここでは、二酸化炭素以外のガス成分の分圧や、アルデヒドなどの少量成分に由来する蒸気圧は無視できるものとする。
ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを反応させるときの反応温度は40〜200℃である。反応温度が40℃未満である場合には、ポリビニルアルコールの溶解度及び分子の運動性が低下し、アセタール化反応の進行が遅くなる。反応温度は、好適には60℃以上、より好適には80℃以上、さらに好適には100℃以上である。高温にすることによって反応液の粘度が低下するので、ポリビニルアルコール濃度の高い反応液を用いることが容易になるという利点もある。一方、反応温度が200℃を超えるとアセタール生成効率が低下する。これは、反応温度の上昇に伴って反応液への二酸化炭素の溶解性が低下するために、もはや炭酸触媒としての機能をほとんど発揮しなくなるためと考えられる。また、反応温度が200℃を超えると副反応が進行するおそれもある。ここでの副反応としては、ポリビニルアルコールやポリビニルアセタールの主鎖の断裂反応やカルボニル化合物同士の縮合反応などが考えられる。また、200℃を超える高温での反応は、反応装置のコストや必要エネルギーの面からも好ましくない。反応温度は、好適には180℃以下であり、より好適には170℃以下であり、さらに好適には160℃以下である。
好適な反応温度は、得ようとするポリビニルアセタールのアセタール化度によっても異なってくる。例えば、1〜30モル%のアセタール化度のポリビニルアセタールを製造するのであれば、反応温度は低い方がよい。このときの反応温度は40℃以上、好適には60℃以上である。またこのときの反応温度は、160℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましい。また、30〜90モル%のアセタール化度のポリビニルアセタールを製造するのであれば、反応温度は高い方がよい。このときの反応温度は80℃以上であることが好ましく、より好適には100℃以上、さらに好適には120℃以上である。また、このときの反応温度は、200℃以下であり、好適には180℃以下であり、より好適には170℃以下であり、さらに好適には160℃以下である。
本発明のアセタール化反応は、バッチ式、連続式いずれの装置を用いて製造しても構わない。いずれの場合にも、二酸化炭素が漏れないように密封可能な装置で反応させることが好ましい。また、均一に反応を進行させるためには、撹拌又は混練のための手段を備えていることが好ましい。
反応装置は、主に、反応液中のポリビニルアルコールの濃度に基づいて選択される。仕込み時のポリビニルアルコールの含有量が、反応液全体の重量に対して20重量%以下である場合には、反応槽の中で液体を撹拌しながら反応させることが好ましい。このときの撹拌手段は、通常撹拌翼である。反応の進行はバッチ式であっても、連続式であっても構わないが、アセタール化度の高いポリビニルアセタールを得るためには、バッチ式である方が好ましい場合が多い。一方、仕込み時のポリビニルアルコールの含有量が、反応液全体の重量に対して20重量%以上である場合には、粘度が高くなって撹拌翼による撹拌が困難になるので、混練装置を用いることが好ましい。この場合に用いられる混練装置は、内部を加圧することのできるものであれば特に限定されない。混練装置としては、ニーダーあるいは押出機を使用することが好ましい。ニーダーあるいは押出機は、内部を加圧できるようにシール構造を有していて、二酸化炭素で加圧するためのポートを有していることが好ましい。このような混練装置を用いる場合には、原料を混練装置に連続的に投入し、その中で加圧混練しながら反応させることも好ましい。
アセタール化反応の終了後、生成したポリビニルアセタール樹脂を得る方法は特に限定されない。反応器を冷却してポリビニルアセタール樹脂を析出させてから取り出すことも可能であるし、スラリー状あるいはペースト状のままで取り出すことも可能である。また、ポリビニルアセタールを溶解する溶媒に溶解させてから取り出し、溶媒を留去する方法を採用することもできる。反応装置として混練装置を用いる場合には、吐出されたストランドをそのまま冷却、切断してペレット化することも可能である。
得られたポリビニルアセタールから、未反応のアルデヒドや溶媒が除去され、それらは必要に応じて回収再使用される。その後、ポリビニルアセタールは必要に応じて洗浄され、乾燥される。本発明の製造方法によれば、アルカリ金属塩の含有量が少ないポリビニルアルコールを原料として用い、アセタール化反応に際して、揮発の困難な触媒を使用せず、中和剤も使用しないので、洗浄操作を施さなくても、不純物の含有量の少ないポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。しかしながら、不純物の含有量をさらに低減させるためには、洗浄操作を施すことが好ましい場合がある。
本発明の方法によって製造されたポリビニルアセタールのアセタール化度は1モル%以上であることが好ましい。アセタール化度はより好適には10モル%以上である。一方、アセタール化度は通常90モル%以下である。ここで、アセタール化度とは以下の式によって示されるものである。
アセタール化度(モル%)=[(アセタール化された水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
合わせガラス中間膜やセラミック成形用バインダー、感光性材料、インキ用分散剤などの用途に用いる場合には、耐水性、低極性の溶媒への溶解性、低極性のポリマーとの相容性などの性能を満足するために、アセタール化度が高いことが好ましい。具体的には、アセタール化度が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。一方、アセタール化度が低い場合には、ポリビニルアセタール樹脂が水溶性になる場合があり、樹脂中の不純物を洗浄除去することが困難になるので、本発明の製造方法を採用する利益が大きい。したがって、アセタール化度が30モル%以下である場合、特にアセタール化度が20モル%以下である場合にも、本発明の製造方法を採用する利益が大きい。
得られたポリビニルアセタール樹脂のハロゲン元素含有量が100ppm以下であることが好ましい。樹脂中に含有されるハロゲン元素は、脱水反応などを引き起こし、樹脂の熱安定性を損なわせる。また、電子部品用途などでは、ハロゲン元素の含有量を特に低くすることが望まれる。ハロゲン元素含有量は、より好適には10ppm以下である。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアルカリ金属元素含有量が50ppm以下であることが好ましい。樹脂中に含有されるアルカリ金属元素は、ポリビニルアセタール樹脂の電気絶縁性、透明性、熱安定性などを損なわせる。また、電子部品用途などでは、アルカリ金属元素の含有量を特に低くすることが望まれる。アルカリ金属元素含有量は、より好適には30ppm以下、さらに好適には20ppm以下である。
こうして得られたポリビニルアセタール樹脂は、安全ガラス用中間膜、塗料、接着剤、バインダー及び成形体など、さまざまな用途に使用される。特に、不純物の残存が忌避される電子部品用途などに好適に使用される。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。まず、本実施例で使用したポリビニルアルコールの調製方法について説明する。
ポリビニルアルコールの調製
2L三口フラスコに、株式会社クラレ製ポリビニルアルコール(重合度:1700、ケン化度:99モル%、アルカリ金属元素(ナトリウム)含有量:5000ppm)400g、メタノール1000ml、蒸留水600ml、酢酸10mlを添加し、室温で2時間攪拌した。このスラリー状混合物をろ過して得られた固形分を、50℃で12時間減圧乾燥することにより、アルカリ金属元素(ナトリウム)含有量が80ppmのポリビニルアルコール398gを得た。こうして洗浄されたポリビニルアルコールに、洗浄前のポリビニルアルコールを混合することにより、アルカリ金属元素(ナトリウム)含有量が、270ppm、420ppm及び750ppmのポリビニルアルコールを得た。これらの4種類のアルカリ金属塩濃度の異なるポリビニルアルコールを原料として、下記実施例においてアセタール化反応を行った。
実施例1
300mLステンレス製オートクレイブに、上記方法によって調製されたポリビニルアルコール(アルカリ金属元素(ナトリウム)含有量:80ppm)10重量%の水溶液100gを投入し、窒素下で140℃に加熱した。当該ポリビニルアルコール10g中には、0.225モルの水酸基が含まれている。この時、反応器内の圧力は約0.4MPa(ゲージ圧)に上昇していた。そこに、酸価が0.6KOHmg/gのn−ブチルアルデヒド12.98g(0.180モル)を、0.9MPa(ゲージ圧)に加圧した二酸化炭素により反応器内に圧送し、容器内の圧力を0.9MPa(ゲージ圧)とした。このときの圧力の上昇分0.5MPaが、二酸化炭素分圧に相当する。このときのアルデヒドの使用量は、ポリビニルアルコールの全水酸基をアセタール化する理論量の1.6倍である。引き続き、140℃にて0.5時間加熱攪拌した後、内温が40℃以下になるまで冷却し、二酸化炭素を放圧した。析出したポリビニルアセタールを、減圧乾燥した後、H−NMRにて分析したところ、アセタール化反応した水酸基が72.2モル%、残存する水酸基が27.1モル%、未ケン化のアセチル基が0.7モル%含まれていた。したがって、アセタール化度は72.2モル%であった。また、ポリビニルアセタール中の全塩素含有量は検出限界(10ppm)以下(酸素フラスコ燃焼法にて処理後、陰イオンクロマトにより分析)、アルカリ金属含有量は15ppm(ICP発光分析により測定)であった。
実施例2
内容積1500mlのステンレス製二軸式加圧型ニーダーに、上記方法によって調製されたポリビニルアルコール(アルカリ金属元素(ナトリウム)含有量:80ppm)300gと水450gを投入し、系内を窒素ガスで置換した後、軸を30rpmの速度で回転させながら内温100℃にて30分加熱混錬し、140℃まで昇温させた。これに酸価が0.6KOHmg/gのn−ブチルアルデヒド392.56g(5.44モル)を、0.9MPaに加圧した二酸化炭素により反応器内に圧送し、ニーダー内の全圧を0.9MPaとした。このときの圧力の上昇分0.5MPaが、二酸化炭素分圧に相当する。このときのアルデヒドの使用量は、ポリビニルアルコールの全水酸基をアセタール化する理論量の1.6倍である。引き続き、140℃にて0.5時間加熱混練した後、内温が40℃以下になるまで冷却し、二酸化炭素を放圧した。析出したポリビニルアセタールを、減圧乾燥した後、1H−NMRにて分析したところ、アセタール化反応した水酸基が68.3モル%、残存する水酸基が31.0モル%、未ケン化のアセチル基が0.7モル%含まれていた。したがって、アセタール化度は68.3モル%であった。また、ポリビニルアセタール中の全塩素含有量は検出限界(10ppm)以下(酸素フラスコ燃焼法にて処理後、陰イオンクロマトにより分析)、アルカリ金属含有量は5ppm(ICP発光分析により測定)であった。
実施例3
原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属元素(ナトリウム)含有量を270ppmとした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
実施例4
反応容器内の圧力を3.4MPa(二酸化炭素分圧:3MPa)とした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
実施例5
反応溶媒を水/イソプロパノール(IPA)=8:2(体積比)とした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
実施例6
反応溶媒を水/イソプロパノール(IPA)=8:2(体積比)とし、反応容器内の圧力を3.4MPa(二酸化炭素分圧:3MPa)とした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
実施例7
反応容器内の圧力を8.2MPa(二酸化炭素分圧:7.8MPa)とした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例1
原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属元素(ナトリウム)含有量を420ppmとした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例2
原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属元素(ナトリウム)含有量を750ppmとした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例3
原料のポリビニルアルコールのアルカリ金属元素(ナトリウム)含有量を420ppmとした以外は、実施例2と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例4
二酸化炭素に変え、窒素で加圧した以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例5
反応温度を250℃にした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
比較例6
二酸化炭素に変えて窒素で加圧し、反応温度を250℃にした以外は、実施例1と同様にポリビニルブチラール樹脂を製造した。結果を表1にまとめて示す。
Figure 2008096403
表からわかるように、窒素で加圧してもアセタール化反応はあまり進行しない(比較例4)が、二酸化炭素で加圧することによって十分に進行する(実施例1〜7)。すなわち、二酸化炭素が、単に加圧するための媒体ではなく、酸触媒として働いていることがわかる。水とアルコールの混合溶媒でもアセタール化反応は進行するが、水のみを溶媒とした場合に比べてアセタール化度が少し低下する(実施例5、6)。
また、ポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量がアルカリ金属換算で300ppm以下である実施例1〜7では、アルカリ金属塩の含有量がアルカリ金属換算で300ppmを超える比較例1〜3に比べて、アセタール化の反応速度が高く、0.5時間という短い時間でも高いアセタール化度のポリビニルアセタール樹脂を得ることができた。また、実施例1〜7では比較例1〜3に比べて、アルカリ金属塩の含有量の極めて低いポリビニルアセタール樹脂を得ることができた。
実施例4及び7に示されるように、二酸化炭素分圧の上昇にしたがって得られるポリビニルブチラールのアセタール化度が上昇するが、圧力が一定以上になれば頭打ちになることがわかる。比較例5に示されるように250℃もの高温で反応させた場合には、アセタール化反応はほとんど進行せず、窒素で加圧した比較例6よりもアセタール化度が低くなった。このことは、このような高温条件下では、もはや二酸化炭素が触媒として働いていないことを示しているものである。また、実施例2及び比較例3に示されるように、ポリビニルアルコールの濃度が高い場合であっても、混練装置を使用することでアセタール化反応を進行させられることがわかった。

Claims (11)

  1. ポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを反応させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法において、前記ポリビニルアルコールのアルカリ金属塩の含有量がアルカリ金属換算で300ppm以下であり、炭酸触媒の存在下、40〜200℃で反応させることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  2. 前記ポリビニルアルコールの平均重合度が200〜4000であり、ケン化度が80モル%以上である請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  3. 前記カルボニル化合物がアルデヒドである請求項1又は2記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  4. 前記アルデヒドの酸価が20KOHmg/g以下である請求項3記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  5. 前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とを、水を溶媒として含有し、炭酸が溶解した溶液中で反応させる請求項1〜4のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  6. 仕込み時のポリビニルアルコールの含有量が、反応液全体の重量に対して1〜80重量%である請求項1〜5のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  7. 反応装置内に二酸化炭素を導入して該反応装置内の二酸化炭素分圧を0.1〜3.5MPaとし、前記ポリビニルアルコールと前記カルボニル化合物とを反応させる請求項1〜6のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  8. 反応槽の中で液体を撹拌しながら反応させる請求項1〜7のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  9. 混練装置の中で加圧混練しながら反応させる請求項1〜7のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  10. アセタール化度が1モル%以上の前記ポリビニルアセタール樹脂を得る請求項1〜9のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
  11. アルカリ金属元素含有量が50ppm以下である前記ポリビニルアセタール樹脂を得る請求項1〜10のいずれか記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
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