JP5956816B2 - ポリビニルアセタール系樹脂の製造方法 - Google Patents
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以下に本発明を詳述する。
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、完全けん化されていてもよいが、少なくとも主鎖の1カ所にメソ、ラセミ位に対して2連の水酸基を有するユニットが最低1ユニットあれば完全けん化されている必要はなく、部分けん化ポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体も用いることができる。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
上記混合液の水素イオン濃度が1×10−2mol/Lを超えると、原料であるポリビニルアルコール系樹脂の脱水反応が起こり、分子内に共役二重結合を有する構造が発生して得られるポリアセタール樹脂に着色が生じたり、樹脂の劣化が発生して重合度が低下して目的の重合度を有するアセタール系樹脂が得られなかったり、加熱成型する際の樹脂の着色や長期の使用における樹脂劣化の原因となったりする。
上記混合液の水素イオン濃度の好ましい下限は1×10−3mol/L、好ましい上限は9×10−3mol/Lであり、より好ましい下限は2×10−3mol/L、より好ましい上限は8×10−3mol/Lである。
なお、本明細書において、室温とは0〜40℃の範囲の温度を意味し、大気圧とは0.09〜0.11MPaの範囲の圧力を意味する。
通常のポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化反応では、反応の進行に伴い、樹脂が不溶化、不均質化して析出することがある。このように析出した樹脂では、アセタール化反応すべき水酸基が樹脂の内部に閉じこめられることから、アセタール化反応の進行が阻害され、40モル%程度のアセタール化度までしか達成できない。しかしながら、本発明のポリビニルアセタール系樹脂の製造方法では、高温高圧条件下でアセタール化反応させることにより、析出した樹脂の内部にまでアルデヒドが浸入できるようになることから、常圧では達成できなかった高アセタール化度を達成できる。
上記混合液を高温高圧条件下で攪拌する機構は、反応部内に配置することが可能であり、かつ、混合液を攪拌することが可能な部品であれば特に限定されず、例えば、撹拌羽根やスクリューを用いた動的な撹拌機構、スタティックミキサー等の静置的な撹拌機構、温度勾配をつけることによって対流を起こすような撹拌機構等が挙げられる。特に、高粘度の混合液を撹拌できることから、撹拌羽根やスクリューを用いた動的な撹拌機構が好適に用いられる。
上記ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度の上限は特に限定されないが、実質的には80モル%程度を超えたアセタール化度のポリビニルアセタール系樹脂を得ることは困難であろう。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド0.7g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.85)を添加して充分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−3mol/Lに調整した。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で140℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.7MPaとなった。そのまま140℃で90分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液にブチルアルデヒド0.7g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.85)を添加して十分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−4mol/Lに調整した。得られた溶液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で180℃まで昇温した。このとき系内の圧力は2.4MPaとなった。そのまま180℃で150分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液にブチルアルデヒド0.6g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.73)を添加して十分に撹拌を行った後、硝酸を添加して水素イオン濃度を1×10−2mol/Lに調整した。得られた溶液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で110℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.3MPaとなった。そのまま110℃で60分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液にブチルアルデヒド0.9g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比1.1)を添加して十分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−3mol/Lに調整した。得られた溶液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で140℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.7MPaとなった。そのまま140℃で90分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド0.7g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.85)を添加して充分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−3mol/Lに調整した。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で100℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.1MPaとなった。そのまま100℃で120分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド0.7g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.85)を添加して充分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−4mol/Lに調整した。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で200℃まで昇温した。このとき系内の圧力は3MPaとなった。そのまま200℃で90分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド1g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比1.2)を添加して充分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−3mol/Lに調整した。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で140℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.7MPaとなった。そのまま140℃で90分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド0.5g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.6)を添加して充分に撹拌を行った後、塩酸を添加して水素イオン濃度を5×10−3mol/Lに調整した。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で140℃まで昇温した。このとき系内の圧力は0.7MPaとなった。そのまま140℃で90分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
反応温度を80℃とした以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。また、このときの系内の圧力は0.07MPaであった。
反応温度を260℃とした以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。また、このときの系内の圧力は7MPaであった。
水素イオン濃度を1×10−4mol/Lに調整した以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
水素イオン濃度を3×10−2mol/Lに調整した以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
ブチルアルデヒドの量を1.5g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比1.83)とした以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
ブチルアルデヒドの量を0.3g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比0.37)とした以外は実施例1と同様の操作で反応を行い、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
スクリュー管にポリビニルアルコール(鹸化度99%、重合度1700)1g、水を9g添加し、加熱攪拌した後室温まで冷却し10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。次いで得られた10重量%のポリビニルアルコール水溶液に、ブチルアルデヒド2.5g(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドのモル比3)を添加して充分に撹拌を行った。なお、ここでは塩酸添加は行わずに水素イオン濃度調整は行わなかった。
得られた混合液を圧力計を備えた内容積15mLの耐圧性の回分式反応装置に投入し、反応装置を昇温速度20℃/分の速度で300℃まで昇温した。このとき系内の圧力は10MPaとなった。そのまま300℃で20分間反応を行った後、反応装置を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
実施例及び比較例で得られたポリビニルブチラール樹脂について、以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
得られたポリビニルブチラール樹脂を乾燥した後、ジメチルスルホキシドに溶解し、水への沈殿を3回行ってから再度充分に乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに再溶解し、1H−NMR測定によりブチラール化度を測定した。
得られたポリビニルブチラール樹脂の着色を目視にて評価した。白色である場合を「○」、ごくわずかに黄変が見られた場合を「△」、黄又は茶色に着色している場合を「×」として評価した。
得られたポリビニルブチラール樹脂を乾燥した後、テトラヒドロフランに溶解し、0.2重量%の溶液を調製した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製、LC−10AT)を用いて、1mL/minの流量で測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。得られた数平均分子量、重量平均分子量と、1H−NMR測定により求めたブチラール化度から、得られたポリビニルブチラール樹脂の重合度を計算した。
反応に用いたアルデヒドの量(ポリビニルアルコールに対するアルデヒドの配合モル比)と、アセタール化によってポリビニルアルコールに結合したアルデヒドの量(ブチラール化度の値)から、アルデヒドの反応効率を下記式にて計算した。
アルデヒドの反応効率=A/(B×100)
ここで、式中のAは上記で測定したブチラール化度の値であり、Bは反応に用いたアルデヒドのポリビニルアルコールに対する配合モル比を意味している。
Claims (3)
- ポリビニルアルコール系樹脂、アルデヒド及び水系媒体を含有する混合液を、温度100〜200℃、圧力0.1〜3MPaの高温高圧条件下でアセタール化反応させる工程を有するポリビニルアセタール系樹脂の製造方法であって、
前記混合液は、室温大気圧環境下における水素イオン濃度が5×10−4〜1×10−2mol/Lに調整されたものであり、ポリビニルアルコール系樹脂に対するアルデヒドの含有量がモル比で0.6〜1.2倍量であり、
混合液は、塩酸及び/又は硝酸により水素イオン濃度が調整されている
ことを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂の製造方法。 - 水系媒体は、水、アルコール又は水とアルコールとの混合媒体であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂の製造方法。
- 水系媒体は、水であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂の製造方法。
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