JP6134186B2 - ポリビニルアセタール樹脂の製造方法 - Google Patents
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このような方法においては、酸触媒として塩酸等の強い酸を用いることが多い(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、強い酸を用いると、特にポリビニルアセタール樹脂を電子材料用途に用いる場合には、酸を中和する工程が必要であり、更に、ポリビニルアセタール樹脂中に残存した酸触媒のハロゲン化物イオン、中和に用いたアルカリのイオン等の不純物を洗浄して取り除く極めて煩雑な工程が必要である。
また、例えば、ポリビニルアセタール樹脂の凝集を抑制すること等を目的として、酸触媒としてクエン酸等の弱い酸を用いることも検討されている(例えば、特許文献3、4)。
特許文献5には、ポリビニルアルコールとアルデヒドとからなるポリビニルアルコール溶液又は分散液を反応管に投入し、充分にシールした後、流体の温度及び圧力を所定の超臨界域又は高温高圧領域にして縮合反応を開始させる方法が記載されている。特許文献6には、酸触媒としてカルボキシル基を有する化合物を含んだ高温高圧流体を用いることにより、ビニルエステル系樹脂を原料として中間体を取り出すことなくビニルアセタール樹脂を製造する方法が記載されている。
以下、本発明を詳述する。
一般的に、ポリビニルアルコール樹脂の着色原因としては、ポリビニルアルコール樹脂中に微量に含まれるカルボニル基が大きく関与していることが報告されている(高分子論文集,vol.37,No.8,p.521−525参照)。本発明者は、このカルボニル基に強い酸が作用することで主鎖が劣化し、得られるポリビニルアセタール樹脂に着色が生じていることを見出した。そして、酸触媒として所定範囲のpKa値を有する弱い酸(比較的pKa値が大きく、酸解離定数Kaが小さい酸)を用いることより、得られるポリビニルアセタール樹脂の着色を低減できることを見出した。
即ち、本発明者は、ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとを、酸触媒の存在下、所定の高温高圧流体中で反応させることによりポリビニルアセタール樹脂を得る工程において、酸触媒として所定範囲のpKa値及び分子量を有する酸を用いることにより、副反応を抑制しつつ短時間で均一にアセタール化を行い、着色がほとんどなくアセタール化度が高いポリビニルアセタール樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、上記ポリビニルアルコール樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体を用いることもできる。
一般的に、ポリビニルアルコール樹脂の着色原因としては、ポリビニルアルコール樹脂中に微量に含まれるカルボニル基が大きく関与していることが報告されているが(高分子論文集,vol.37,No.8,p.521−525参照)、本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法では、後述するような酸触媒を用いることにより、微量に含まれるカルボニル基が多い場合であっても、得られるポリビニルアセタール樹脂の着色を低減することができる。
上記アルデヒドとして、具体的には例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオニルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、tert−ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド等が挙げられる。また、上記アルデヒドはホルムアルデヒドを除き、1以上の水素原子がハロゲン等により置換されたものであってもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において上記理論反応量とは、全てのアルデヒドがアセタール化反応に使用されると仮定した場合に目的のアセタール化度を得るために必要なアルデヒドの量を意味する。
上記酸触媒のpKa値が0未満であると、上記酸触媒の酸強度が高いため主鎖が劣化し、得られるポリビニルアセタール樹脂に着色が生じる。上記酸触媒のpKa値が5を超えると、上記酸触媒の酸強度が低いためアセタール化の反応速度が遅くなり、反応時間が長時間化してしまう。このような着色と反応時間とのバランスの観点から、上記酸触媒のpKa値の好ましい下限は3、好ましい上限は4.5である。
なお、本明細書において上記pKa値とは、25℃の水中にて測定される酸解離定数Kaの常用対数を意味する。上記pKa値が大きいほど、弱い酸であることを意味する。
なお、上記酸触媒の分子量の上限は、特に限定されない。
上記ポリビニルアルコール樹脂と上記アルデヒドとのアセタール化反応では、反応の進行に伴い、樹脂が不溶化又は不均質化して析出する場合がある。このように析出した樹脂では、アセタール化されるべき水酸基が樹脂の内部に閉じこめられることから、アセタール化反応の進行が阻害され、常圧反応では40モル%程度のアセタール化度までしか達成できない。本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法では、上記ポリビニルアルコール樹脂と上記アルデヒドとを上記高温高圧流体中で反応させることにより、析出した樹脂の内部にまでアルデヒドが浸入することができ、常圧反応では達成できなかった高いアセタール化度を達成することができる。
上記原料混合液は、水等の溶媒を含有する溶液又は懸濁液であってもよい。なお、上記酸触媒が触媒作用を発揮するためには、使用する溶媒に溶解する必要がある。本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法では、上記原料混合液を高温高圧下とすることで溶媒の誘電率が上がり、このような誘電率の上昇は上記酸触媒の溶媒への溶解に寄与するため、アセタール化の反応速度を上げることができる。
上述したように上記ポリビニルアルコール樹脂と上記アルデヒドとのアセタール化反応では、反応の進行に伴い、樹脂が不溶化又は不均質化して析出する場合がある。このように析出した樹脂が反応部又はライン中に詰まってしまった場合、製造が中断される。また、樹脂の析出は、原料の濃度を高くすればするほど起こりやすくなり、製造効率が低下する。上記反応装置が上記原料混合液と上記高温高圧流体とを攪拌する機構を有することにより、析出した樹脂を微粒化させることができ、析出した樹脂が反応部又はライン中に詰まることを抑制することができる。
なお、本明細書においてアセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がポリビニルアルコール樹脂の2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用する。
反応容器内で粉末状のポリビニルアルコール樹脂(けん化度99%、重合度1800)0.5gに水5gを加えて加熱攪拌し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液5.5gにクエン酸0.1gを加え、n−ブチルアルデヒド0.35mLを加えた。
反応容器に二酸化炭素を注入し、容器内温度を130℃に調整し、圧力調整弁を用いて容器内圧を2.0MPaに調整した。130℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、反応部を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を含有する混合液を得た。
表2に記載した配合及び反応条件とした以外は、実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂を得た。
反応容器内で粉末状のポリビニルアルコール樹脂(けん化度99%、重合度1800)0.5gに水5gを加えて加熱攪拌し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液5.5gに塩酸0.1gを加え、n−ブチルアルデヒド0.35mLを加えた。
反応容器内の温度を130℃に調整し、圧力調整弁を用いて容器内圧を2.0MPaに調整した。130℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、反応部を室温まで冷却し、ポリビニルブチラール樹脂を含有する混合液を得た。
表3に記載した配合及び反応条件とした以外は、比較例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂を得た。
実施例、参考例及び比較例で得られたポリビニルブチラール樹脂について以下の評価を行った。結果を表2及び3に示した。
ポリビニルブチラール樹脂を乾燥した後、ジメチルスルホキシドに溶解し、水への沈殿を3回行った。その後、ポリビニルブチラール樹脂を充分乾燥し、重水素化ジメチルスルホキシドに再溶解し、1H−NMR測定によりブチラール化度、水酸基量、及び、アセチル基量を測定した。
ポリビニルブチラール樹脂を乾燥した後、ジメチルスルホキシドに溶解し、水への沈殿を3回行った。その後、ポリビニルブチラール樹脂を充分乾燥し、目視にて着色評価を行った。ポリビニルブチラール樹脂が白色であった場合を「○○」、わずかに黄変が見られた場合を「○」、黄色又は茶色に着色していた場合を「×」として評価した。
エタノールとトルエンとを1:1で混合した溶媒200mL中に、平均粒子径約300μmとなるように粉砕したポリビニルブチラール樹脂8gを投入した。40℃30分後に未溶解物が観察されなかった場合を「○○」、60℃30分後又は1時間後に未溶解物が観察されなかった場合を「○」、60℃1時間以上経っても未溶解物が観察された場合を「×」とした。
比較例3で得られたポリビニルブチラール樹脂は劣化が激しく、1H−NMR測定による分析は不可能であった。
Claims (3)
- ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとを、酸触媒の存在下、温度100〜400℃、圧力0.5〜100MPaの高温高圧流体中で反応させることによりポリビニルアセタール樹脂を得る工程を有し、
前記酸触媒は、pKa値が3〜4.5、分子量が60以上であり、
得られるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が10モル%以上である
ことを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法。 - 酸触媒は、クエン酸又は安息香酸であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
- 高温高圧流体の温度が、200℃を超えて400℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
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