JP2011148974A - シリコンインゴットスライス用水溶性切削液 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明はシリコンインゴットの切削工程において、従来品より加工装置のワイヤの金属部分に対する耐腐食性が良好であるため、切削加工効率を向上させることができ、また、水とシリコンの反応による引火性の水素発生が抑制されるため、安全性に優れる水溶性切削液を提供する。
【解決手段】
水混和性溶媒(A)、下記数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3である多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分とし、水(W)を5〜90重量%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とするシリコンインゴットスライス用水溶性切削液。
ΔpKa = (pKa2) − (pKa1) (1)
ただし、n塩基酸HnAである多価カルボン酸(B)がHn−1A + H+となる解離段を1としたときの酸解離定数をpKa1;Hn−2A + H+となる解離段を2としたときの酸解離定数をpKa2と表す。
【選択図】 なし
【解決手段】
水混和性溶媒(A)、下記数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3である多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分とし、水(W)を5〜90重量%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とするシリコンインゴットスライス用水溶性切削液。
ΔpKa = (pKa2) − (pKa1) (1)
ただし、n塩基酸HnAである多価カルボン酸(B)がHn−1A + H+となる解離段を1としたときの酸解離定数をpKa1;Hn−2A + H+となる解離段を2としたときの酸解離定数をpKa2と表す。
【選択図】 なし
Description
本発明は、シリコンインゴットを切削するときに使用する含水の水溶性切削液に関する。さらに詳しくは、たとえ一定量以上の水を含有していても、水とシリコンとの反応を抑制することができる水溶性切削液に関する。
従来より、シリコンのワイヤーによる切断加工は、非水溶性の切削液を用いて行われてきた(例えば特許文献1)。
近年は、引火の危険性を減らして作業性を改善した水溶性の切削液が開発されている(例えば特許文献2や特許文献3)。
水溶性の切削液は、比熱の高い水を混和することができるため、切断時に生じる摩擦熱の冷却性に優れる。
しかしその反面、水の含有量が高い場合には、切断加工中や切断加工後に水とシリコン(ウエハ表面や切粉)の反応により水素が発生し、引火爆発の問題があるために、水の含有量に制限がある。
近年は、引火の危険性を減らして作業性を改善した水溶性の切削液が開発されている(例えば特許文献2や特許文献3)。
水溶性の切削液は、比熱の高い水を混和することができるため、切断時に生じる摩擦熱の冷却性に優れる。
しかしその反面、水の含有量が高い場合には、切断加工中や切断加工後に水とシリコン(ウエハ表面や切粉)の反応により水素が発生し、引火爆発の問題があるために、水の含有量に制限がある。
一方で、水とシリコンの反応における水素ガスを抑制する目的で、切削時に発生するシリコン微粉末を酸化するための酸化剤を配合した水溶性の切削液が開発されている(例えば特許文献4)。しかし、水とシリコンの反応性は抑えられるものの、加工装置やワイヤーを腐食するという問題があった。
そこで本発明の水溶性切削液は、水を含んでいるが、加工装置のワイヤーの金属部分に対する耐腐食性が良好かつ、水とシリコンとの反応による水素発生が抑制できる、シリコンインゴットスライス用水溶性切削液を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、水混和性溶媒(A)、第1解離段の酸解離定数と第2解離段の酸解離定数の差ΔpKaが特定の範囲にある多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分とし、水(W)を5〜90重量%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とするシリコンインゴットスライス用水溶性切削液;このシリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いて固定砥粒ワイヤーによりシリコンインゴットを切断する工程を含むシリコンインゴットをスライスする製造方法:シリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いてシリコンインゴットを切断して製造されたシリコンウエハ;並びにこのシリコンウエハを用いて製造された電子材料である。
すなわち、本発明は、水混和性溶媒(A)、第1解離段の酸解離定数と第2解離段の酸解離定数の差ΔpKaが特定の範囲にある多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分とし、水(W)を5〜90重量%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とするシリコンインゴットスライス用水溶性切削液;このシリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いて固定砥粒ワイヤーによりシリコンインゴットを切断する工程を含むシリコンインゴットをスライスする製造方法:シリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いてシリコンインゴットを切断して製造されたシリコンウエハ;並びにこのシリコンウエハを用いて製造された電子材料である。
本発明の水を含む水溶性切削液は、シリコンインゴットの切削工程において、加工装置やワイヤーに対する耐腐食性、および水とシリコンとの反応による水素発生が抑制されるという効果を奏する。
本発明の水溶性切削液は、水混和性溶媒(A)、多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分として含有する。
さらに、多価カルボン酸(B)のΔpKaが特定の範囲にあり、水溶性切削液のpHが4.0〜7.0である。
さらに、多価カルボン酸(B)のΔpKaが特定の範囲にあり、水溶性切削液のpHが4.0〜7.0である。
本発明の水溶性切削液の水溶性とは、水と任意の割合で混和して分離しないことを意味する。
そして、本発明の水溶性切削液は、使用前にさらに水、あるいは水と任意の割合で混和しえる水混和性有機溶媒で希釈して使用してもよい。
そして、本発明の水溶性切削液は、使用前にさらに水、あるいは水と任意の割合で混和しえる水混和性有機溶媒で希釈して使用してもよい。
本発明の水溶性切削液の必須成分である水混和性溶媒(A)は、任意の割合で水に溶解する溶媒であれば差しつかえなく、例えばメタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、グリセリン、ポリオキシアルキレン付加物(A1)などが挙げられ、不揮発性の観点からポリオキシアルキレン付加物(A1)が好ましい。
また、水混和性溶媒(A)は1種類でもよく2種類以上の混合物であってもよい。
また、水混和性溶媒(A)は1種類でもよく2種類以上の混合物であってもよい。
本発明の水混和性溶媒(A)として好ましいポリオキシアルキレン付加物(A1)は、下記化学式(2)で表される。
R1O−(AO)n−R2 (2)
[式(2)中、R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基;AOは、1種または2種以上の炭素数が2〜4のオキシアルキル基を表す。(AO)nは1種または2種以上のアルキレンオキサイドの付加形式を表し、2種の場合の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。nはAOの平均付加モル数を表し、1〜10の数である。]
[式(2)中、R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基;AOは、1種または2種以上の炭素数が2〜4のオキシアルキル基を表す。(AO)nは1種または2種以上のアルキレンオキサイドの付加形式を表し、2種の場合の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。nはAOの平均付加モル数を表し、1〜10の数である。]
式(2)中のR1とR2は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。
アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
R1とR2として好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基である。R1とR2共に水素原子も好ましい。
アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
R1とR2として好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基である。R1とR2共に水素原子も好ましい。
式(2)中のAOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられ、これらの2種以上を併用してもよく、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
水溶性の点でオキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基単独、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の併用がさらに好ましい。
水溶性の点でオキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基単独、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の併用がさらに好ましい。
nはAOの平均付加モル数を表し、通常1〜10の数である。好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。10を超えると粘度が高くなり過ぎ、使用時に泡立ちが起こる。
(AO)nは1種のアルキレンオキサイドまたは2種以上のアルキレンオキサイドの付加形式を表し、2種以上の場合の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。
(AO)nは1種のアルキレンオキサイドまたは2種以上のアルキレンオキサイドの付加形式を表し、2種以上の場合の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。
ポリオキシアルキレン付加物(A1)の具体例として、アルキレングリコール(A11)、ポリアルキレングリコール(A12)等の水溶性グリコール;これらのアルキルエーテル等の水溶性エーテル等が挙げられる。
アルキレングリコール(A11)としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールなどが挙げられる。
ポリアルキレングリコール(A12)としては、ポリエチレングリコール(ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールなど)、ポリ1,2−プロピレングリコール(ジ1,2−プロピレングリコールなど)、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−ブチレングリコール、ポリ1,3−ブチレングリコール、ポリ1,4−ブチレングリコールなどが挙げられる。
アルキレングリコール(A11)のモノもしくはジアルキルエーテル(A13)としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、1,2−プロピレングリコールモノメチルエーテル及び1,2−プロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
ポリアルキレングリコール(A12)のモノもしくはジアルキルエーテル(A14)としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル[ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルなど]、ポリエチレングリコールジメチルエーテル[ジエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルなど]及びポリ1,2−プロピレングリコールモノメチルエーテル[ジ1,2−プロピレングリコールモノメチルエーテルなど]などが挙げられる。
ポリオキシアルキレン付加物(A1)のうち好ましいのは、スラリー粘度の観点から、アルキレングリコール(A11)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(A13)、およびポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(A14)である。
さらに好ましくは、オキシアルキレン基の炭素数が2〜3であるアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテルである。
さらに好ましくは、オキシアルキレン基の炭素数が2〜3であるアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテルである。
本発明における水溶性切削液の第2の必須成分である多価カルボン酸(B)は、第1解離段の酸解離定数と第2解離段の酸解離定数の差ΔpKaが特定の範囲にある多価の多価カルボン酸である。
すなわち、本発明の多価の多価カルボン酸(B)は、下記数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3である。
すなわち、本発明の多価の多価カルボン酸(B)は、下記数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3である。
ΔpKa = (pKa2) − (pKa1) (1)
ここで、n塩基酸である多価カルボン酸(B)をHnAと表したときに、Hn−1A + H+となる第1解離段の酸解離定数をpKa1とし、Hn−2A + H+となる第2解離段の酸解離定数をpKa2と表す。その差がΔpKaである。
なお、ここでの酸解離定数pKa1、pKa2は、水溶液中の化合物の解離定数の逆数の対数値を表し、pKaは、例えば「化学便覧基礎編II改訂4版」〔平成5年、丸善(株)〕317〜321頁の表に記載されている。ΔpKaは、この表の値を用いて算出できる。
数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3の多価カルボン酸(B)は、その価数については特に限定されず、2価あるいは3価以上で差しつかえない。
また、多価カルボン酸(B)は、対応する酸無水物、酸クロライド、エステル化物の加水分解により生成させてもよいし、カルボキシル基以外の官能基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基など)については特に限定されない。
また、多価カルボン酸(B)は、対応する酸無水物、酸クロライド、エステル化物の加水分解により生成させてもよいし、カルボキシル基以外の官能基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基など)については特に限定されない。
多価カルボン酸(B)のΔpKaは通常0.9〜2.3、好ましくは1.4〜2.2である。
0.9未満では水とシリコンの反応による水素発生の抑制が不十分であり、2.3を超えると金属に対する耐腐食性が低下する。
0.9未満では水とシリコンの反応による水素発生の抑制が不十分であり、2.3を超えると金属に対する耐腐食性が低下する。
多価カルボン酸(B)としては、脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。
多価カルボン酸(B)自体を含有させる代わりに、対応する酸無水物、酸クロライド、エステル化物を含有させた後に系中の 加水分解により多価カルボン酸(B)を生成させてもよい。
多価カルボン酸(B)としては、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基をカルボキシル基と共に有していてもよく、例えば水酸基を有するヒドロキシカルボン酸も好ましい。
多価カルボン酸(B)自体を含有させる代わりに、対応する酸無水物、酸クロライド、エステル化物を含有させた後に系中の 加水分解により多価カルボン酸(B)を生成させてもよい。
多価カルボン酸(B)としては、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基をカルボキシル基と共に有していてもよく、例えば水酸基を有するヒドロキシカルボン酸も好ましい。
多価カルボン酸(B)の具体例として、フマル酸(pKa1=2.85、pKa2=4.10、ΔpKa=1.25)、フタル酸(pKa1=2.75、pKa2=4.93、ΔpKa=2.18)、イソフタル酸(pKa1=3.50、pKa2=4.50、ΔpKa=1.00)、テレフタル酸(pKa1=3.54、pKa2=4.46、ΔpKa=0.92)、リンゴ酸(pKa1=3.24、pKa2=4.71、ΔpKa=1.47)、アスパラギン酸(pKa1=1.93、pKa2=3.70、ΔpKa=1.77)、m−アミノ安息香酸(pKa1=3.12、pKa2=4.72、ΔpKa=1.60)、クエン酸(pKa1=2.90、pKa2=4.34、ΔpKa=1.44)、コハク酸(pKa1=4.00、pKa2=5.20、ΔpKa=1.20)などが挙げられる。
多価カルボン酸(B)は、水とシリコンの反応による水素発生の反応抑制性の観点から、好ましくはフタル酸、リンゴ酸、クエン酸である。
本発明の切削液には、特定のΔpKaを有する多価カルボン酸(B)の代わりに、この多価カルボン酸(B)の塩(BS)を使用してもよい。これは、その多価カルボン酸(B)が特定のΔpKaを有していればその塩(BS)も使用できるということであって、本発明では多価カルボン酸塩(BS)自体のpKaと規定しているのではない。
多価カルボン酸(B)の塩(BS)としては、多価カルボン酸(B)のアンモニウム塩(BS1)、多価カルボン酸(B)の脂肪族アミン塩(BS2)、多価カルボン酸(B)の含窒素複素環式化合物の塩(BS3)、多価カルボン酸(B)の無機アルカリ塩(BS4)、多価カルボン酸(B)のアルカノールアミン塩(BS5)およびこれらの混合物が挙げられる。
多価カルボン酸(B)の脂肪族アミン塩(BS2)としては、多価カルボン酸(B)のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、ブチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの塩が挙げられる。
多価カルボン酸(B)の含窒素複素環式化合物の塩(BS3)としては、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)などの塩が挙げられる。
多価カルボン酸(B)の無機アルカリ塩(BS4)としては、多価カルボン酸(B)のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどの塩が挙げられる。
多価カルボン酸(B)のアルカノールアミン塩(BS5)としては、多価カルボン酸(B)のモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、エチレンジアミンのエチレンオキサイド付加物(付加モル数10)及びヒドロキシルアミンなどの塩が挙げられる。
多価カルボン酸(B)の代わりに、その塩(BS)を使用してもいいし、多価カルボン酸(B)とその塩(BS)を併用してもよい。また、含有させた多価カルボン(B)の一部または全部が別途配合した塩基性化合物と系内で塩を形成してもよい。
本発明の多価カルボン(B)は水とシリコンの反応による水素発生の抑制性を向上させる目的で含有させる。
使用前に必要により水(W)や水混和性溶媒(A)で切削液を希釈する場合もあるが、使用時時の多価カルボン酸(B)の合計の含有量は、水混和性溶媒(A)と水(W)の合計量に対して通常0.1〜3重量%で、好ましくは0.1〜1.5重量%である。
0.1重量%未満では水とシリコンの反応による水素発生の抑制が不十分であり、2.3重量%を超えると金属に対する耐腐食性が低下する。
使用前に必要により水(W)や水混和性溶媒(A)で切削液を希釈する場合もあるが、使用時時の多価カルボン酸(B)の合計の含有量は、水混和性溶媒(A)と水(W)の合計量に対して通常0.1〜3重量%で、好ましくは0.1〜1.5重量%である。
0.1重量%未満では水とシリコンの反応による水素発生の抑制が不十分であり、2.3重量%を超えると金属に対する耐腐食性が低下する。
なお、水混和性溶媒(A)に対する多価カルボン酸(B)の含有量は、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%である。
本発明の水溶性切削液の必須成分である水(W)の使用時の含有量は、シリコンと水との反応抑制およびスラリー粘度の観点から、切削液の重量に基づいて、通常5〜90重量%で、好ましくは7〜50重量%である。
5重量%未満では、スラリーの粘度が高くなり、90重量%を超えるとシリコンと水との反応が起こりやすくなる。
5重量%未満では、スラリーの粘度が高くなり、90重量%を超えるとシリコンと水との反応が起こりやすくなる。
本発明の水溶性切削液のpHは、シリコンと水との反応抑制の観点から通常4.0〜7.0であり、好ましくは4.7〜6.3である。4.0未満では、金属に対する耐腐食性が低下し、7.0を超えると水とシリコンの反応による水素発生の抑制が不十分になる。
本発明の水溶性切削液は、シリコンと水との反応抑制性を損なわない範囲において、さらにpH調整剤(C)、防錆剤(D)、分散剤(E)などを含有してもよい。
pH調整剤(C)としては、金属水酸化物、脂肪族アミン、アルカノールアミン等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン等が挙げられる。
含窒素複素環式化合物としては、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)などが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン等が挙げられる。
含窒素複素環式化合物としては、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)などが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
分散剤(D)としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物および/またはその塩、ポリカルボン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコール硫酸エステル塩、ポリビニルアルコールリン酸エステル塩、メラミンスルホン酸塩およびリグニンスルホン酸塩などが挙げられる。
本発明の水溶性切削液は、ワイヤーによりシリコンインゴットをスライジング加工する際に好適に使用できる。
シリコンインゴットを加工する方法として、遊離砥粒及び固定砥粒ワイヤーソーを用いる方法が挙げられる。本発明の水溶性切削液は固定砥粒ワイヤーソーを用いたシリコンインゴットのスライジング加工に特に適している。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
実施例1〜6および 比較例1〜5
表1記載の配合比(重量部)で各成分を配合し、実施例1〜6及び比較例1〜5の水溶性切削液を調製した。
表1記載の配合比(重量部)で各成分を配合し、実施例1〜6及び比較例1〜5の水溶性切削液を調製した。
得られた水溶性切削液について、反応抑制性と耐腐食性の性能評価を行った。またpHメータでpHを測定した。その結果を表1に示す。
<反応抑制性>
水とシリコンの反応による水素発生の抑制性の評価は以下に示す方法で行った。
(1)ガラスサンプル瓶に水溶性切削液18gとシリコン粉末(高純度化学研究所製、純度99%、平均粒径1μm)を2g加え、38kHzの超音波洗浄機を用いて超音波を2分間照射して、シリコン粉末を分散してスラリーを得た。
(2)上記のスラリーが入ったガラスサンプル瓶の口に、ガラス管を通したゴム栓でそのサンプル瓶の封をし、水を満たして逆さに水槽に伏せたメスシリンダーにそのガラス管の他端を導入し、発生した水素ガスをメスシリンダー内部の水と置換させるようにセットした。
(3)これらの水槽、メスシリンダー、ガラス菅およびスラリーの入ったサンプル瓶の一連のセットを、60℃の恒温高温槽に2時間静置し、その間に発生する水素を水上置換法にてメスシリンダーに回収して水素発生量を測定した。
水とシリコンの反応による水素発生の抑制性の評価は以下に示す方法で行った。
(1)ガラスサンプル瓶に水溶性切削液18gとシリコン粉末(高純度化学研究所製、純度99%、平均粒径1μm)を2g加え、38kHzの超音波洗浄機を用いて超音波を2分間照射して、シリコン粉末を分散してスラリーを得た。
(2)上記のスラリーが入ったガラスサンプル瓶の口に、ガラス管を通したゴム栓でそのサンプル瓶の封をし、水を満たして逆さに水槽に伏せたメスシリンダーにそのガラス管の他端を導入し、発生した水素ガスをメスシリンダー内部の水と置換させるようにセットした。
(3)これらの水槽、メスシリンダー、ガラス菅およびスラリーの入ったサンプル瓶の一連のセットを、60℃の恒温高温槽に2時間静置し、その間に発生する水素を水上置換法にてメスシリンダーに回収して水素発生量を測定した。
反応抑制性の評価は以下の判断基準に従って行った。
○:水素ガス発生量が10ml未満
△:水素ガス発生量が10〜20ml
×:水素ガス発生量が20ml以上
○:水素ガス発生量が10ml未満
△:水素ガス発生量が10〜20ml
×:水素ガス発生量が20ml以上
<耐腐食性>
耐腐食性の評価は以下に示す方法で行った。
(1)被めっき物の調製
縦2.0cm×横0.8cm×厚さ0.6mmのSUS316板の表面に平均粒径1μmのアルミナ砥粒(商品名:A−32、日本軽金属社製)をまぶし、それを#1000のサンドペーパーを用いて研磨した後、イオン交換水中で38kHzの超音波洗浄機で5分間、引き続いて200kHzの超音波洗浄機で5分間浸漬洗浄を行った後、窒素気流で乾燥させて、被めっき物を作成した。
耐腐食性の評価は以下に示す方法で行った。
(1)被めっき物の調製
縦2.0cm×横0.8cm×厚さ0.6mmのSUS316板の表面に平均粒径1μmのアルミナ砥粒(商品名:A−32、日本軽金属社製)をまぶし、それを#1000のサンドペーパーを用いて研磨した後、イオン交換水中で38kHzの超音波洗浄機で5分間、引き続いて200kHzの超音波洗浄機で5分間浸漬洗浄を行った後、窒素気流で乾燥させて、被めっき物を作成した。
(2)金属めっきの作成
硫酸ニッケル六水和物18重量部、塩化ニッケル六水和物3.5重量部、ホウ酸2重量部及びイオン交換水76.5重量部の配合部数で作成した金属めっき液50gを50mlのビーカーに秤量し、上記の被めっき物を浸漬させ、陰極電流密度0.44A/dm3×10分間の条件で、電解めっきを行うことにより、テストピース用の金属めっき物を作成した。
硫酸ニッケル六水和物18重量部、塩化ニッケル六水和物3.5重量部、ホウ酸2重量部及びイオン交換水76.5重量部の配合部数で作成した金属めっき液50gを50mlのビーカーに秤量し、上記の被めっき物を浸漬させ、陰極電流密度0.44A/dm3×10分間の条件で、電解めっきを行うことにより、テストピース用の金属めっき物を作成した。
(3)めっき後の耐腐食性の評価
金属めっき物を恒温恒湿機を用い、50℃の条件下で各水溶性切削液50gに48時間浸漬させた試験片の耐腐食性を、微細欠陥可視化検査装置(機器名:Micro−Max(VMX−4100Napier、VISION PSYTEC社製)で観察し、目視にて評価し、下記の判断基準で判定した。
金属めっき物を恒温恒湿機を用い、50℃の条件下で各水溶性切削液50gに48時間浸漬させた試験片の耐腐食性を、微細欠陥可視化検査装置(機器名:Micro−Max(VMX−4100Napier、VISION PSYTEC社製)で観察し、目視にて評価し、下記の判断基準で判定した。
○:めっき表面の変化が全く認められない
△:一部に変化が認められる
×:全面が変化したと認められる
△:一部に変化が認められる
×:全面が変化したと認められる
表1の結果から明らかなように、実施例1〜6の本発明の水溶性切削液はいずれも、反応抑制性、耐腐食性ともに優れている。なお実施例4ではフタル酸のDBU塩を用いたのに対して実施例3ではフタル酸とDBUを配合したものを用いた。
一方、ΔpKaが本発明の範囲外の0.8であるアジピン酸を用いた比較例1、および4.1であるマレイン酸を用いた比較例2は反応抑制性が不十分である。
pHが本発明の範囲外の3.0である比較例3では、耐腐食性が不十分である。
また、pHが本発明の範囲外の9.3である比較例4では水素ガス発生量が多く反応抑制性が極めて悪い。
一方で、水とシリコンの反応を抑制する目的で、シリコン微粉末を酸化するための過酸化水素水を配合した比較例5では、反応抑制性に優れるものの、ニッケルメッキ部分が完全に溶出し、耐腐食性が極めて低い。
一方、ΔpKaが本発明の範囲外の0.8であるアジピン酸を用いた比較例1、および4.1であるマレイン酸を用いた比較例2は反応抑制性が不十分である。
pHが本発明の範囲外の3.0である比較例3では、耐腐食性が不十分である。
また、pHが本発明の範囲外の9.3である比較例4では水素ガス発生量が多く反応抑制性が極めて悪い。
一方で、水とシリコンの反応を抑制する目的で、シリコン微粉末を酸化するための過酸化水素水を配合した比較例5では、反応抑制性に優れるものの、ニッケルメッキ部分が完全に溶出し、耐腐食性が極めて低い。
本発明の本発明の水溶性切削液は、水とシリコンとの反応抑制性および加工装置やワイヤーに対する耐腐食性を兼ね備えているため、シリコンインゴットを切断するときに使用する水溶性切削液して有用である。
本発明の水溶性切削液を用いてシリコンインゴットを切削加工して製造されたシリコンウエハは、例えばメモリー素子、発振素子、増幅素子、トランジスタ、ダイオード、太陽電池、LSIの電子材料として利用でき、これらの電子材料は、パソコン、携帯電話、ディスプレー、オーディオ等に使用することができる。
また、本発明の水溶性切削液は、耐腐食性に優れるので、シリコンインゴッド以外に、水晶、炭化ケイ素、サファイヤ等の硬質な材料を切削するときに使用する切削液としても有用である。
本発明の水溶性切削液を用いてシリコンインゴットを切削加工して製造されたシリコンウエハは、例えばメモリー素子、発振素子、増幅素子、トランジスタ、ダイオード、太陽電池、LSIの電子材料として利用でき、これらの電子材料は、パソコン、携帯電話、ディスプレー、オーディオ等に使用することができる。
また、本発明の水溶性切削液は、耐腐食性に優れるので、シリコンインゴッド以外に、水晶、炭化ケイ素、サファイヤ等の硬質な材料を切削するときに使用する切削液としても有用である。
Claims (8)
- 水混和性溶媒(A)、下記数式(1)で表されるΔpKaが0.9〜2.3である多価カルボン酸(B)、および水(W)を必須成分とし、水(W)を5〜90重量%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とするシリコンインゴットスライス用水溶性切削液。
ΔpKa = (pKa2) − (pKa1) (1)
ただし、n塩基酸HnAである多価カルボン酸(B)がHn−1A + H+となる解離段を1としたときの酸解離定数をpKa1;Hn−2A + H+となる解離段を2としたときの酸解離定数をpKa2と表す。 - 該多価カルボン酸(B)がクエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびリンゴ酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の水溶性切削液。
- 該多価カルボン酸(B)の含有量が、水混和性溶媒(A)と水(W)の合計量に対して0.1〜3重量%である請求項1または2記載の水溶性切削液。
- 該水混和性溶媒(A)に対する多価カルボン酸(B)の含有量が0.01〜10重量%である請求項1〜3いずれか記載の水溶性切削液。
- 該水混和性溶媒(A)が下記化学式(2)で表されるポリオキシアルキレン付加物(A1)である請求項1〜4のいずれか記載の水溶性切削液。
R1O−(AO)n−R2 (2)
[式(2)中、R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基;AOは、1種または2種以上の炭素数が2〜4のオキシアルキル基を表す。(AO)nは1種または2種以上のアルキレンオキサイドの付加形式を表し、2種の場合の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。nはAOの平均付加モル数を表し、1〜10の数である。] - 請求項1〜5のいずれか記載のシリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いて固定砥粒によりシリコンインゴットを切断する工程を含むシリコンインゴットをスライスする製造方法。
- 請求項1〜5いずれか記載のシリコンインゴットスライス用水溶性切削液を用いてシリコンインゴットをスライスして製造されたシリコンウエハ。
- 請求項7に記載のシリコンウエハを用いて製造された電子材料。
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