JP5623856B2 - ビニルアセタール樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、塩酸等の酸触媒を用いずにビニルアルコール系樹脂とアルデヒドを反応させると、実用的には70モル%以上のアセタール化度が求められているにもかかわらず、40モル%程度のアセタール化度を有するビニルアセタール樹脂しか得ることができなかった。ここで、アセタール化反応を促進させるために高温に加熱すると、樹脂の主鎖が切断したり、昇温過程でアルデヒドによる副反応が起きたりして、生成するビニルアセタール樹脂が着色してしまうことがあった。
以下に本発明を詳述する。
上記ビニルアルコール系樹脂は、完全けん化されていてもよいが、少なくとも主鎖の1カ所にメソ、ラセミ位に対して2連の水酸基を有するユニットが最低1ユニットあれば完全けん化されている必要はなく、部分けん化ビニルアルコール系樹脂であってもよい。
上記ビニルアルコール系樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等の、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体も用いることができる。
上記酢酸ビニル系樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の、酢酸ビニルと共重合可能なモノマーと酢酸ビニルとの共重合体も用いることができる。
上記ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂とアルデヒドとのアセタール化反応では、反応の進行に伴い、樹脂が不溶化、不均質化して析出する場合がある。このように析出した樹脂では、アセタール化反応すべき水酸基が部分的に樹脂の内部に閉じこめられることから、アセタール化反応の進行が阻害され、常圧反応では40モル%程度のアセタール化度までしか達成できない。しかし、高温高圧流体中で反応を行うことにより、析出した樹脂の内部にまでアルデヒドが浸入でき、常圧では達成できなかった高アセタール化度を達成できる。なお、反応時に攪拌機を併用することにより、析出樹脂の大きさを小さくできることから、更に高いアセタール化度を達成することができる。
図1の回分式反応装置は、反応部4に対して、原料タンクA1、原料タンクB2及び原料タンクC3とが耐圧性のラインで接続されており、例えば、原料タンクA1には原料となるビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂を、原料タンクB2には原料となるアルデヒドを、原料タンクC3には水等の流体を貯留する。原料タンクA1と反応部4とを結ぶ耐圧性のライン上には、スラリーポンプ9とバルブA5とが配置されている。原料タンクB2、C3と反応部4とを結ぶ耐圧性のライン上には、高圧液送ポンプ10とバルブB6とが配置されている。原料タンクB2と反応部4とを結ぶ耐圧性のライン上には、流体加圧ヒーター7も設置されている。更に、反応部4には、液体二酸化炭素製造機14が高圧液送ポンプ15を介して接続されている。
反応部4は、反応部撹拌機12と反応部加熱ヒーター8とが設置されている。そして、反応部4の内部にはメッシュ11で画分されており、生成した樹脂と未反応のアルデヒドとを分離し、圧力調整弁13を開放することにより、未反応のアルデヒドを反応部4から排出できるようにしている。
以下、図1の回分式反応装置を用いて本発明のビニルアセタール樹脂の製造方法を詳しく説明する。
一方、原料となるアルデヒドを原料タンクB2に投入し、バルブB6を閉じた状態で高圧液送ポンプBで送液することにより、アルデヒドを所定の温度、圧力にまで加熱、加圧する。バルブB6を開いて加熱、加圧されたアルデヒドを、ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂が投入された反応部4に導き、系内の温度、圧力を所定の温度、圧力に保った状態で撹拌することにより、アセタール化反応を進める。
上記アルデヒドを反応進行に伴い段階的に追加投入する方法としては特に限定されないが、例えば、複数回に分割して断続的に投入してもよいし、連続的に投入してもよい。
なお、本発明における「理論反応量」とは、ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂中の水酸基又はアセチル基の全てをアセタール化するのに必要なアルデヒド量と定義する。
上記アルデヒドの投入量の合計の上限は特に限定されないが、好ましい上限は上記ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂の全量に対する理論反応量の30倍である。上記アルデヒドの投入量の合計が理論反応量の30倍を超えても、それ以上はアセタール化度の向上に寄与せずコストアップにつながるおそれがある。上記アルデヒドの投入量の合計のより好ましい上限は理論反応量の12倍であり、更に好ましい上限は理論反応量の3倍である。目的とするビニルアセタール樹脂の用途や求めるアセタール化度にもよるが、過剰量のアルデヒドを用いても副反応を抑えることができるのも本発明のビニルアセタール樹脂の製造方法の効果である。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
15分間攪拌しながら反応を行った後、高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に更に2.15g追加投入した。同様の操作を更に2回行い、15分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で160℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.0MPaであった。
30分間攪拌しながら反応を行った後、高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に更に2.15g追加投入した。同様の操作を更に2回行い、30分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
15分間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を100℃まで冷却し、圧力調整弁13を開放して反応部内の液体を全て排出した。圧力調整弁13を閉じ、タンクC3から水を高圧液送ポンプ10にて反応部4に63g投入した。反応部4を200℃に加熱した後、更にタンクB2から高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に8.6g投入した。15分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
7.5分間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を100℃まで冷却し、圧力調整弁13を開放して反応部内の液体を全て排出した。圧力調整弁13を閉じ、タンクC3から水を高圧液送ポンプ10にて反応部4に63g投入した。反応部4を200℃に加熱した後、更にタンクB2から高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に17.2g投入した。7.5分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
酢酸ビニル樹脂粉末(重合度2000)7g、酢酸0.63g及び水62.4gをタンクAに投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で容積100mLの耐圧性の反応部4に全量を投入した。バルブA5を閉め、反応部4を攪拌しながら200℃に加熱した。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。このまま3時間攪拌を行った。
7分間攪拌しながら反応を行った後、高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に更に1.1g追加投入した。同様の操作を更に2回行い、9分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
酢酸ビニル樹脂粉末(重合度2000)7g、酢酸0.63g及び水62.4gをタンクAに投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で容積100mLの耐圧性の反応部4に全量を投入した。バルブA5を閉め、反応部4を攪拌しながら200℃に加熱した。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。このまま3時間攪拌を行った。
15分間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を100℃まで冷却し、圧力調整弁13を開放して反応部内の液体を全て排出した。圧力調整弁13を閉じ、タンクC3から水を高圧液送ポンプ10にて反応部4に63g投入した。反応部4を200℃に加熱した後、更にタンクB2から高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に4.4g投入した。15分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)とメタノールとをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は3.5MPaであった。
15分間攪拌しながら反応を行った後、高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に更に2.15g追加投入した。同様の操作を更に6回行い、15分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で120℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
更に、高圧液送ポンプ15を用いて、液体二酸化炭素製造機14で製造した二酸化炭素を反応部4に10MPaとなるまで投入した。
15分間攪拌しながら反応を行った後、高圧液送ポンプ10を用いてn−ブチルアルデヒドを反応部4に更に2.15g追加投入した。同様の操作を更に2回行い、15分間攪拌した後、反応部4を室温まで冷却し、二酸化炭素をリークして、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液70gと、n−ブチルアルデヒド17.2gとを容積100mLの耐圧性の回分式反応装置に投入した。バルブを閉じ密閉状態としてから回分式反応装置を200℃に加熱した。回分式反応装置内の圧力は5.0MPaとなった。3時間攪拌しながら反応を行った後、反応容器を室温まで冷却し、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
1時間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
ポリビニルアルコール(重合度500)と水とをセパラブルフラスコにて加熱攪拌し得られた10重量%の水溶液をタンクA1に投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で200℃に加熱した容積100mLの耐圧性の反応部4に70g投入した後、バルブA5を閉めた。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。
1時間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
酢酸ビニル樹脂粉末(重合度2000)と水とをセパラブルフラスコにて攪拌し得られた10重量%の水溶液70gと、n−ブチルアルデヒド4.4gとを容積100mLの耐圧性の回分式反応容器に投入し、バルブを閉じて密閉状態としてから200℃に加熱した。反応容器内の温度は30分で200℃に到達し、圧力は3.0MPaとなった。3時間攪拌しながら反応を行った後、反応容器を室温まで冷却し、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
図1に示す回分式反応装置を用いてビニルアセタール樹脂を製造した。
酢酸ビニル樹脂粉末(重合度2000)7g、酢酸0.63g及び水62.4gをタンクAに投入し、バルブA5を開けて、スラリーポンプ9で容積100mLの耐圧性の反応部4に全量を投入した。バルブA5を閉め、反応部4を攪拌しながら200℃に加熱した。このとき系内の圧力は1.2MPaであった。このまま3時間攪拌を行った。
30分間攪拌しながら反応を行った後、反応部4を室温まで冷却して、ポリビニルブチラールを含有する混合液を得た。
実施例及び比較例で製造したポリビニルブチラールを含有する混合液について、以下の評価を行った。
結果を表1、2に示した。
実施例及び比較例で得られたポリビニルブチラールを含有する混合液にはポリビニルブチラールの樹脂片が数個分散していた。該樹脂片を5個採取し、それぞれをジメチルスルホキシドに溶解し、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに再溶解し、1H−NMR測定によりブチラール化度を測定した。
実施例及び比較例で得られたポリビニルブチラールを含有する混合液中のポリビニルブチラールの着色を目視にて評価した。白色であった場合を「○」、黄又は茶色に着色していた場合を「×」として評価した。
得られたポリビニルブチラールを含有する混合液から重クロロホルムにより副反応物を抽出した。得られた重クロロホルム溶液を1H−NMRにより測定し、仕込んだアルデヒド量に対する副反応物(縮合物)に変化したアルデヒド量の割合を求めた。なお、副反応物に変化したアルデヒド量は、縮合物中に存在する二重結合の量と縮合物の末端に存在するアルデヒド基の量を合計することによって計算した。
2 原料タンクB
3 原料タンクC
4 反応部
5 バルブA
6 バルブB
7 流体加熱ヒーター
8 反応部加熱ヒーター
9 スラリーポンプ
10 高圧液送ポンプ
11 メッシュ
12 反応部攪拌機
13 圧力調整弁
14 液体二酸化炭素製造機
15 高圧液送ポンプ
Claims (4)
- ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂とアルデヒドとを、100〜400℃、0.5〜100MPaの高温高圧流体中でアセタール化反応させるビニルアセタール樹脂の製造方法であって、前記アルデヒドを反応進行に伴い段階的に追加投入する工程を有することを特徴とするビニルアセタール樹脂の製造方法。
- アルデヒドを反応進行に伴い段階的に追加投入する工程において、いったんそれまでに投入したアルデヒドを反応系外に排出し、新たにアルデヒドを反応系内に投入することを特徴とする請求項1記載のビニルアセタール樹脂の製造方法。
- アルデヒドの最終的な投入量の合計が、ビニルアルコール系樹脂又は酢酸ビニル系樹脂の全量に対する理論反応量の1倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のビニルアセタール樹脂の製造方法。
- 一回のアルデヒド追加投入量が10分間当たり理論反応量の0.5倍以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のビニルアセタール樹脂の製造方法。
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