JPWO2007063765A1 - 負極活物質、これを用いた負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

リチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含むリチウムイオン二次電池用負極活物質において、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する、四面体の単位構造を有し、上記単位構造が不規則に配列した非晶質構造を構成しており、 上記単位構造における上記4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)として、前記単位構造をSi(n)と表記した場合に、上記ケイ素酸化物における上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(1)〜(3)を満たす、ケイ素酸化物を用いる。【数1】

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質およびこれを用いた負極ならびにリチウムイオン二次電池に関する。
昨今、リチウムイオン二次電池が用いられるPC、携帯電話、PDA等の携帯情報端末や、ビデオレコーダー、メモリーオーディオプレーヤー等のオーディオビジュアル機器の小型化および高性能化が進んでいる。
このような小型化および高性能化にともない、リチウムイオン二次電池の高容量化も望まれている。従来のリチウムイオン二次電池は、正極にコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどのリチウム含有遷移金属酸化物と、負極に黒鉛などの炭素系材料が用いられている。しかし、これら材料の組み合わせで実用化されているリチウムイオン二次電池における高容量化は、ほぼ限界に達しつつある。
これに対し、リチウムイオン二次電池の高容量化を達成するため、負極活物質の選択や設計が検討されている。高容量化のための負極活物質としては、例えば金属リチウム、リチウムと合金化するアルミニウム、ケイ素、およびスズなどが検討されている(例えば非特許文献1)。なかでも、ケイ素は大きい理論容量を有するため、ケイ素を活物質として用いたリチウムイオン二次電池が提案されている(例えば特許文献1)。
ところが、ケイ素はリチウムイオンと反応する際に大きな体積変化を伴うため、繰り返し充放電により集電性が低下し、十分なサイクル特性が得られないという問題がある。
この問題を解決するための負極活物質として、SiOx(0<x<2)が提案されている(例えば特許文献2および特許文献3)。SiOxは高容量を有し、安定したサイクル特性を発揮する。ただし、SiOxは初期充電で挿入されたLiがすべて脱離しないため、いわゆる不可逆容量が大きくなってしまう。
そこで、当初よりLiを含有するリチウムシリケート化合物を用いることが提案されている。例えばLi4SiO4、Li2SiO3、Li2Si25、Li4Si38、Li6Si411などの、LiySiOx(0<y、0<x<2)で表されるリチウムシリケート化合物が提案されている(特許文献2)。また、良好なサイクル特性を得るために、SiOxに熱処理を施し、X線回折でSi(220)面の回折ピークが発現するよう結晶化させた負極活物質も提案されている(特許文献3)。
また、充放電による体積膨張を抑制するために、酸化数が0のケイ素と酸化数が+4のケイ素を有するケイ素化合物と、酸化数が0より大きく+4未満であるケイ素を有するケイ素低級酸化物と、を含む負極活物質が提案されている(例えば特許文献4参照)。
さらに、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy: XPS)を用い、酸化数が0のケイ素と酸化数が+4のケイ素を有するケイ素化合物と、酸化数が0より大きく+4未満であるケイ素を有するケイ素低級酸化物と、を含むSiO薄膜が示されている。併せてその充放電反応機構が開示されている(例えば非特許文献2参照)。
SiOで表される化学組成を有するケイ素酸化物においては、ミクロ的に見るとSiとSiO2とが相分離して存在する。したがって、SiOは平均組成を表すものであることが知られている(例えば非特許文献3)。
ここで、ケイ素酸化物は四面体構造を単位構造として有する。SiO2以外のケイ素酸化物(以下、中間酸化物という)は、四面体の頂点の酸素数1個、2個および3個に対応して、それぞれSi2O、SiOおよびSi23と表すことができる。これら中間酸化物は、熱力学的に不安定で、単体結晶として存在することはきわめて難しい。よって、SiOは上記のように平均組成を表すものであると推定される。なお、上記のような中間酸化物をX線光電子分光(XPS)法で測定すると、SiおよびSiO2に由来する2つのピークが明確に分離して検出される。
特開2002−83594号公報 特開平6−325765号公報 特開2004−71542号公報 特開2005−183264号公報 Solid State Ionics, 57, 113-115 (1998) Journal of The Electrochemical Society, 152(10), A2089 (2005) Journal of Non-Crystalline Solids, 204(2), 202-203 (1996)
しかしながら、上記特許文献2に記載のLiySiOxは電子伝導性が極めて小さい。よって、リチウムイオンを、リチウムイオン二次電池に求められる移動速度で、LiySiOxに脱離および挿入させることは極めて困難である。
上記特許文献3に記載の負極活物質は、非酸化性雰囲気下における830℃以上の熱処理により、SiとSiO2との混合物となる。この場合、充放電に関与できるのはSiのみであり、SiO2は充放電に関与しない。そのため、ある程度の量のSiを含有している割には、充分に高い容量を得ることは比較的困難である。さらに、SiO2が電子伝導性を有しないため、負極の抵抗が高くなる。その結果、リチウムイオンを、リチウムイオン二次電池に求められる移動速度で、負極活物質に脱離および挿入させることは、極めて困難なものとなる。
特許文献4においては、ケイ素単結晶粒子とアモルファスSiO2とアモルファスSiOとの混合物を、電子ビームの照射により溶融する。そして、得られた溶融物を支持体に蒸着して薄膜を得ることが例示されている。ここで、図27に、ケイ素単結晶粒子とアモルファスSiO2とアモルファスSiOの蒸気圧曲線(真空ハンドブック、日本真空技術(株)編、オーム社、p148−149)を示す。図27からわかるように、SiO2とSiOとの蒸気圧の差は極めて大きい。さらにアモルファスSiOは、高い昇華性を有する。よって、均質な薄膜を得ることは極めて困難である。
以上のような従来技術が有する問題点に鑑み、本発明は、ケイ素を含む活物質の一般的な特徴である高い充放電容量を損なうことなく、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供し、更にこれを用いた負極およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質は、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能なケイ素酸化物を含み、
上記ケイ素酸化物が、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する、四面体の単位構造を有し、上記単位構造が不規則に配列した非晶質構造を構成していること、を特徴とする。
ここで、本発明の負極活物質を構成するケイ素酸化物においては、非晶質構造において隣接する上記四面体は、上記4つの頂点を共有している。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば共有されない頂点が存在してもよい。
本発明におけるケイ素酸化物が有する「非晶質構造」は、主として均質な非晶質構造部分で構成されている。「均質な非晶質構造」とは、複数の非晶質化合物が界面を形成せずに構成する非晶質構造、すなわち界面が存在しない状態の非晶質構造をいう(図3参照)。ただし、例えば組成が連続的に変化する傾斜部が含まれていてもよい。また、本発明における上記ケイ素酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で「不均質な非晶質部分」を含んでいてもよい。さらに、上記ケイ素酸化物は、本発明の効果を損なわない程度に結晶質部分を含んでいてもよい。なお、得られたケイ素酸化物の非晶質構造が「均質」か否か、傾斜部があるか否かは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することなどにより確認することができる。
上記のような本発明の負極活物質において、非晶質構造を有するケイ素酸化物は、それ自体が安定である。また、上記ケイ素酸化物に対するリチウムイオンの脱離および挿入の速度は充分に速い。そのため、ケイ素を含む活物質の特徴である高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質を得ることができる。
ここで、上記単位構造における上記4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)とし、上記単位構造をSi(n)と表記した場合、上記ケイ素酸化物における上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(1)〜(3)を満たす。
上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(4)〜(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
上記本発明の負極活物質を含む負極と、
上記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
リチウムイオン伝導性を有する電解質と、
を含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、先に述べた本発明の負極活物質を用いているため、高い充放電容量と、優れた充放電サイクル特性とをより確実に両立することができる。
さらに、本発明のリチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含むリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法は、
ケイ素源を溶融してケイ素溶融物を得る工程と、
上記ケイ素溶融物を、雰囲気温度よりも低い温度を有する基板上に蒸着することによって、ケイ素酸化物で構成された負極活物質を得る工程と、を含み、
上記ケイ素酸化物は、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する四面体の単位構造を有し、かつ上記単位構造が不規則に配列して非晶質構造を構成している。
上記のような方法によれば、高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を発揮する本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質をより確実に得ることができる。
本発明によれば、ケイ素を含む活物質の一般的な特徴である高い充放電容量を損なうことなく、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質、ならびにこれを用いた負極およびリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る負極活物質のミクロ構造の例を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質のX線回折パターンを示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質の透過電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質の回折リングパターンを示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を、初期と充放電後にX線光電子分光で測定したときの、O1s束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例5に用いたケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素の蒸気圧曲線を示す図である。 本発明のSiOx薄膜の充放電過程におけるSi2p束縛エネルギー変化を示す図である。 本発明のSiOx薄膜の充放電過程におけるSi2p束縛エネルギー変化をSiの架橋酸素数別にまとめた図である。 本発明の比較例6に用いた市販SiO粉末を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例6の市販SiO粉末を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の一実施の形態に係るケイ素酸化物の製造装置の概略図である。 本発明の一実施の形態に係るコイン型リチウムイオン二次電池の概略断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含む。当該ケイ素酸化物は、SiとSiO2との単純な混合物ではなく、図1に示すように、中心にケイ素が位置し、4つの頂点にケイ素または酸素が位置する四面体の単位構造を有する。上記単位構造は、隣接する単位構造間で、上記頂点を共有しながら、不規則に配列して、非晶質構造を構成している。図1は、本発明の負極活物質のミクロ構造を模式的に示す図である。
本実施の形態の負極活物質を構成するケイ素酸化物は、非晶質として構成されている。これにより、Si(Si−Si4;ただし、「−」の前の原子は四面体の中心に位置する原子を示し、「−」の後の原子は4つの頂点に位置する原子を表す。以下同様。)、Si2O(Si−Si3O)、SiO(Si−Si22)、Si23(Si−SiO3)、およびSiO2(Si−O4)の、5種類の四面体の単位構造が、任意の割合で、頂点を共有しながら、相分離を示さずに均質に存在していると考えられる。
一般に、SiOxで表される化学組成を有するケイ素酸化物の単位構造においては、四面体の中心にケイ素原子が位置し、sp3混成により形成される4つの結合手にケイ素または酸素が位置していることが知られている。
Siの場合(すなわち、SiOxにおいてx=0の場合)、すべての頂点にSiが位置する。SiO2の場合(すなわちSiOxにおいてx=2の場合)、すべての頂点にOが位置する。SiのSi2p束縛エネルギーは99±1eVであり、SiO2のSi2p束縛エネルギーは103±1eVであり、互いに異なる。
本発明の負極活物質は、種々の形状を有することができ、例えば粒子状であっても薄膜状であっても構わない。製造工程上、上記構成のケイ素酸化物をより確実に得るという観点から、本実施の形態の負極活物質は薄膜状であることが好ましい。さらには、負極活物質は、例えば粒子が粒界を有するように堆積して形成された薄膜状であってもよい。負極活物質は、均一な薄膜状はもとより、本発明の効果を損なわない程度に部分的に不均一な薄膜状であってもよい。
ここで、図28は、SiOx薄膜(x=0.6)からなる本実施形態の負極活物質の、充放電過程における、Si2p束縛エネルギー変化を示す図である。図29は、Siの架橋酸素数別に、SiOx薄膜からなる本実施形態の負極活物質の、充放電過程における、Si2p束縛エネルギー変化をまとめた図である。
図28および図29に示すように、充電反応(Liイオンの挿入)および放電反応(Liイオンの脱離)によって、それぞれのSi2p束縛エネルギーは変化する。その変動幅(初期状態からのシフト量)の大きさは、Si>Si2O>SiO>Si23>SiO2の順になる。
本発明の負極活物質におけるケイ素酸化物は、上述したような構成を有するため、中間酸化物に含まれるSiも充放電に関与し、高い充放電容量が得られると考えられる。
また、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物においては、Si2p束縛エネルギーが連続的な変化をする。そのため、上記単位構造における4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)とし、単位構造をSi(n)と表記した場合、ケイ素酸化物をXPSで測定した場合のXPSスペクトルにおいて、上記単位構造の数NSi(n)に対応したピークが観測される。
かかるピークに基づいて、常法(例えば、Applied Surface Science, 70/71, p222-225 (1993)に記載の方法)でピーク面積を求めることにより、上記単位構造の数NSi(n)を求めることができる。
そして、本発明者らは、上述したような本発明の効果をより確実に得るためには、上記ケイ素酸化物中の単位構造の数NSi(n)が、以下の関係式(1)〜(3)を満たすことが好ましいことを見出した。
ここで、Si(0)が占める割合(すなわち上記式(1)の値)が0.1以上であれば、本実施の形態の負極活物質は、実用的な容量をより確実に発揮することが可能である。
また、本発明の負極活物質を構成するケイ素酸化物には、Si(0)の膨張収縮による応力に対する耐性を高めるために、Si(4)が存在することが好ましい。そして、Si(4)が占める割合(すなわち上記式(2)の値)が0.1以下であれば、Si(4)の割合が多くなり過ぎず、反応し得るケイ素の量を確保することができ、適度な容量をより確実に保持することができる。また、Si(4)は非導電物質であるが、非導電性物質であるSi(4)が占める割合が0.1以下であれば、実使用上、分極の影響を殆ど受けない。
上記式(3)の条件は、Si(0)からSi(4)の間に(すなわち上記ケイ素酸化物の非晶質構造のなかに)、Si(1)、Si(2)およびSi(3)の単位構造が、結合されて含まれていることを示す。
これらの単位構造がケイ素酸化物の非晶質構造の中に含まれることにより、連続的に結合エネルギーが変化する。よって、Si(0)の充放電サイクルに伴う体積変化に対して、強い構造を実現することができる。なお、Si(1)、Si(2)およびSi(3)の単位構造は、リチウムを吸蔵および放出することが知られている(上記特許文献4)。
以上のように、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物に、Si(1)、Si(2)およびSi(3)を含ませるとともに、Si(4)の占める割合(すなわち上記式(2)の値)を0.1以下に抑えることにより、充放電容量の確保が可能になり、分極の問題をより確実に回避することができる。
また、上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(4)〜(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
NSi(0)/ΣNSi(n)が0.8を超えると、ケイ素酸化物の充放電に伴う体積変化が大きくなり、集電体からの負極活物質の剥離や脱落を生じる場合があり、良好な充放電サイクル特性を得にくくなる場合がある。
また、NSi(4)/ΣNSi(n)が0.1を超えると、ケイ素酸化物の電子伝導性が低下して、負極の内部抵抗が上昇する場合があり、結果として、分極が大きくなり充放電容量が低下する場合がある。
Si(1)、Si(2)およびSi(3)は、Si(0)よりも充放電による体積変化が小さく、Si(4)よりも電子伝導性が高いため、多い方が好ましい。{NSi(1)+NSi(2)+NSi(3)}/ΣNSi(n)が0.231以上であれば、ほぼ確実に良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
ここで、本実施の形態におけるケイ素酸化物は、SiOxで表すことができ、xの値は蛍光X線分析により求めることができる。当該蛍光X線分析によってxの値を求めた場合、xは0.1≦x≦1.2を満たすことが好ましい。なお、x値は後述するように平均値を示す。
xが0.1以上であれば、Si単独の場合と同様に、充放電に伴う体積膨張が大きくならず、活物質粒子間の集電性能の低下および充放電サイクル特性の低下をより確実に抑制することができる。また、xが1.2以下であれば、高率充放電特性を低下させず、適度に確保することができる。1.2以下であれば、酸素の量が多くなり過ぎず、負極の抵抗を低く抑えることができ、分極も抑制することができる。
さらには、適度な充放電サイクル特性と高率充放電特性とをより確実にバランス良く得ることができるという観点から、0.1≦x≦0.6であるのが好ましい。
さらに、本実施の形態の負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiOx)においては、酸素原子がその骨格中に存在し、Si−O−Si結合が形成されている。このことから、上記四面体の中心に位置するケイ素周辺に形成される空隙は、Si−Si結合間の距離よりも大きくなる。さらに、Si−O結合エネルギーは430kJ/molであり、Si−Si結合エネルギーの184kJ/molに比べて格段に大きい。
これらのことから、Liイオンが挿入された場合の体積変化が効果的に抑制され、その結果、優れた充放電サイクル特性を実現することができる。
上記のような本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiOx)は、例えばスパッタ法または蒸着法により形成することができる。例えば、ケイ素源を、真空チャンバー内で、例えば銅箔製の基板上にスパッタまたは蒸着することにより、膜状の負極活物質を形成することができる。ケイ素源には、例えば、ケイ素、ケイ素酸化物、または、ケイ素とケイ素酸化物との混合物などを用いることができる。
スパッタまたは蒸着を行う際には、上記真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、かつ基板の膜形成面(反応面)の温度上昇を抑制する。これにより、得られる負極活物質の結晶化を抑制する。すなわち、結晶化を抑制しつつ上記のような非晶質構造を有するケイ素酸化物からなる負極活物質を形成する。基板の膜形成面の温度上昇を抑制するためには、基板を冷却すればよい。基板の温度は、500℃以下であることが好ましく、室温〜300℃であることが特に好ましい。
以下に、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物の製造方法、および、ケイ素酸化物の評価方法の一例について説明する。
(1)負極活物質を構成するSiOx薄膜の作製
図32は、本発明の負極活物質(すなわちケイ素酸化物)の製造装置の構成を示す概略図である。図32において、真空チャンバー2内は、排気ポンプ1により排気されている。まず、真空チャンバー2に置かれたカーボン製坩堝3内に、純度99.99%以上のケイ素(粒、塊または粉末を成型して得られたタブレット)を入れる。電子銃(図示せず)によりケイ素に電子線(EB)を照射してケイ素を溶融させ、蒸発させる。そして、カーボン製坩堝3に対向して設置された、例えば銅箔製の基板5上に、蒸着法でSiOx薄膜からなる負極活物質を形成する。
真空中でケイ素を蒸着するだけでは、Si膜しか得られないため、本実施の形態では真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、反応性蒸着を行うことにより、SiOx薄膜を形成する。すなわち、ケイ素を酸素と反応させながら蒸着させる。得られるSiOx薄膜のx値は、上記真空チャンバー内に導入する酸素ガス量(すなわち雰囲気の酸素濃度)を調整することにより、調整することが可能である。
さらに、本実施の形態においては、得られるSiOx薄膜を非晶質化するために、基板5の温度を、雰囲気温度よりも低くし、好ましくは室温付近にとどめる。基板5の温度を低下させる方法としては、例えば(i)基板を保持する基板ホルダー4内に冷却水を通して基板を冷却したり、基板または基板ホルダー4に冷却板を接して配置して、当該冷却板内に冷却水を通して基板を冷却したりする方法、(ii)ペルチェ素子を上記基板または基板ホルダーに貼り合わせて冷却する方法などが考えられる。基板をより容易かつ確実に冷却するという観点からは、上記(i)の方法が好ましい。
(2)SiOxのx値の決定
SiOxのx値は、得られたSiOx薄膜の表層から数μmの深さの領域を、例えばO−Ka線を用いた蛍光X線分析でのファンダメンタルパラメータ法を用いて求めることができる。蛍光X線分析には、例えば理学電機工業(株)製RIX3000を用いることができる。蛍光X線分析の条件としては、例えばターゲットにロジウム(Rh)を用い、管電圧50kV、管電流50mAとすればよい。ここで得られるx値は、基板上の測定領域で検出されるO−Ka線の強度から算出されるため、測定領域の平均値となる。
また、他の方法として、得られたSiOx薄膜全体を燃焼させてx値を決定することも可能である。例えば、燃焼管中に設置したグラファイト製るつぼ(坩堝)にSiOx薄膜を入れ、るつぼに通電し、発熱させる。このとき温度を約3000℃とする。この燃焼管にHeガスをキャリアとして流し、発生したCO2およびCOの量を定量することで、酸素の量を測定する。そして、あらかじめ測定した重量から、SiOxのx値を求めることができる。
(3)X線回折測定
非晶質構造が得られていることは、X線回折(XRD)測定により確認することができる。XRD測定には、例えば理学電機工業(株)製のRINT−2000を用いることができる。
XRD測定は、例えばX線源にCu−Kαを用い、管電圧40kV、管電流40mAとし、測定は2θ/θで10〜80°、ステップ0.02°、および走査速度0.6°/minの条件で行うことができる。ここで、明瞭な回折ピークが認められずブロードな回折パターンが得られた場合には、SiOxはX線的に非晶質である。
(4)X線光電子分光(XPS)測定
上記関係式(1)〜(3)の値は、X線光電子分光(XPS)測定により求めることができる。XPS測定には、例えば理学電機工業(株)製のXPS−7000を用いることができる。
XPS測定は、例えばX線源にAl−Kαを用い、管電圧10kV、管電流10mAの条件で行うことができる。また、表面に形成される酸化物等の影響を除外してSiOx薄膜の状態を正確に測定するために、得られたSiOx薄膜の表面から例えば200〜300nmまで、Arガスによるエッチングを行うことが好ましい。上記製造方法によれば、得られたSiOx薄膜の表面から深さ約200〜300nm以降において、ほぼ均一な層が形成されるからである。なお、本発明の負極活物質を構成するSiOx薄膜の厚さは、所望する電池のスペックに応じて適宜調整することができる。
上記エッチングは、例えば加速電圧500V、エッチング角度90°、およびイオン電流密度160μA/cm2の条件で行うことができる。この際のエッチングレートは、SiO2換算で約5nm/minであればよい。
SiOx薄膜の状態は、Si2pを測定することにより行うことができる。また、表面に形成される酸化膜等がエッチングにより除去されたか否かは、C1sを測定することにより判断することができる。
ここで、本明細書において、本発明に係る負極活物質を構成するSiOx薄膜の測定データは、Ar2pの基準値を242.3eVとして、Arを用いて補正したものである。すなわち、測定データは、Ar2pのズレから帯電補正を行って得られたデータである。
XPSスペクトルにおけるピークの同定においては、架橋酸素数が0、1、2、3および4の5つの場合があると仮定し、それぞれの基準値を99.8eV、100.7eV、101.5eV、102.5eVおよび103.5eVとする。そして、ガウス関数を用いてピーク分離を行う。ただし、場合によってはピーク数が減少することもある。基準値とする結合エネルギーには、Applied Surface Science, 70/71, p222-225 (1993)に記載されている値を用いる。
なお、原子数比は、上記ピーク分離を行うことで得られるピーク面積比と対応する。よって、ピーク面積比を原子数比として算出することができる。
(5)コイン型リチウムイオン二次電池の作製方法
本発明に係る負極活物質を用いた本発明に係るリチウムイオン二次電池の代表例として、コイン型リチウムイオン二次電池(コイン型電池)の一例を、図33を参照しながら以下に示す。
上記のようにして銅箔製基板上に作製されたSiOx薄膜を、基板とともに例えば直径12.5mmに切り抜き、負極11を得る。この負極11と正極12とを、ポリエチレン製セパレータ13(例えば厚さ25μm、直径17mm)を介して対向させて、2016サイズのコイン型電池ケース16の中に挿入する。
ついで、リチウムイオン二次電池用電解液を上記コイン型ケースに注液する。ケース内における空間を埋めるために、ステンレス鋼製スペーサ14を負極上に配置し、その上に、周囲に樹脂製のガスケット17を有する封口板15を被せる。その後、電池ケース16の周囲を封口板15にかしめて、2016サイズのコイン型電池(例えば総高1.6mm、直径20mm)10を作製する。
リチウムイオン二次電池用電解液には、例えば炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの1:1(体積比)混合溶媒に、溶質として1MのLiPF6を溶解して得られる電解液を用いることができる。
なお、本発明に係るリチウムイオン二次電池の各構成要素としては、上記本発明の負極活物質を用いる以外は、特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを選択することが可能である。
正極には、上記金属リチウム以外にも、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn24などのリチウム含有遷移金属酸化物;LiTiS2、LiMoS2などリチウム含有遷移金属硫化物を用いることができる。
また、セパレータには、例えばポリオレフィン系多孔質フィルムを用いることができる。ポリオレフィン系多孔質フィルムとしては、例えばポリプロピレン製多孔質フィルム、ポリエチレン/ポリプロピレンの多層構造を有する多孔質フィルム等が挙げられる。
また、電解液の溶媒としては、例えば炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)に代表される環状炭酸エステル;炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)に代表される鎖状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)に代表される環状カルボン酸エステル;ジメトキシメタン(DMM)、1,3−ジメトキシプロパン(DMP)などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン(DOL)などの環状エステルなどを用いることもできる。もちろん、これらのうちの2種以上を混合溶媒として用いることも可能である。
電解液の溶質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)に代表される無機酸アニオンリチウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)などの有機酸アニオンリチウム塩などを用いることができる。もちろん、これらのうちの2種以上を混合して用いることも可能である。
(6)評価方法
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、定電流充放電法によって充放電容量を測定することにより評価することができる。
上記のようにして作製したコイン型電池の場合、2極セルとしてその充放電容量を測定する。充放電容量測定は、例えば100μAの定電流での終止電圧までの充電、および100μAの定電流での終止電圧までの放電を1サイクルとし、当該サイクルを繰り返して行う測定周囲温度は、室温(例えば25℃)とすればよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
《実施例1》
1.負極活物質の作製
本実施例においては、まず、図32に示す構造を有する製造装置を用いて、本発明の負極活物質を作製した。
あらかじめ、真空チャンバー2内に設置されたカーボン製坩堝3中に、ケイ素タブレットを入れ、真空チャンバー2内の圧力を0.005Paに設定した後、酸素ガスを70sccmの流量で導入し、真空チャンバー2内の圧力を0.13Paに設定した。
その後、電圧:−9kVおよびEB電流:400mAの条件で、電子銃から上記ケイ素タブレットに電子線を照射し、ケイ素を溶解させ、カーボン製坩堝3と対向させた厚さ50μmの銅箔(基板)5上に蒸着させた。この蒸着は、膜厚計で10μmの厚さの薄膜が形成されるまで続けた。得られた薄膜の重量は2.4mgであった。なお、銅箔(基板)5は基板ホルダー4に保持させた。
ここで、蒸着時には、上記基板5が加熱されてその温度が百数十℃にもなってしまうため、基板ホルダー4内に冷却水を通して基板ホルダー4の温度を20℃に維持した。すなわち、雰囲気温度よりも基板5の温度が低くなるような条件で、上記蒸着を行い、蒸着中、基板5に接触している冷却板の温度を20℃に維持した。その他の具体的な条件は以下のとおりとし、本実施例における負極活物質を構成するSiOx薄膜を作製した。特に、冷却水の流路を内径6mmのサーペンタイン型流路とすることにより、基板5を充分に冷やすことができた。
基板ホルダーの材質 銅
基板ホルダーの大きさ(縦、横、厚さ) 10cm×10cm×2.5cm
冷却水の温度 15℃
冷却水の流量 3L/min
基板ホルダー内の冷却水の流路 内径6mmのサーペンタイン型流路
2.負極活物質の評価
得られたSiOx薄膜について上述した条件で蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、得られたSiOx薄膜について、上述したX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンを図2に示した。なお、図2において、縦軸は強度(カウント数)を示し、横軸は回折角度2θ(°)を示す。図2に示すX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像を図3に示した。また、その際に得られた回折リングを図4に示した。
図3に示す透過型電子顕微鏡像から、2nm以上の結晶子は認められなかった。また、回折リングもハローパターンを示すことから、得られたSiOx薄膜は均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、上述したX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図5に示した。Si2p束縛エネルギーは99eVから104eVの間で、5つのピークに分離することができた。それぞれのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比は、総和を100として算出すると、50.9:15.3:17.3:9.2:7.3であった。したがって以下の関係が得られた。
3.コイン型電池の作製
上記のようにして作製したSiOx薄膜を用い、図33に示す構造を有するコイン型電池を作製した。
具体的には、上記のようにして銅箔製基板上に作製されたSiOx薄膜を、基板ごと直径12.5mmに切り抜き、負極を得た。この負極と、金属リチウム製対極(counter electrode:厚さ300μm、直径15mm)とを、ポリエチレン製セパレータ(厚さ25μm、直径17mm)を介して対向させて、2016サイズのコイン型電池ケースの中に挿入した。
ついで、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの1:1(体積比)混合溶媒に、溶質として1MのLiPF6を溶解して得られる電解液を、上記コイン型ケースに注液した。その後、ケース内における空間に、ステンレス鋼製スペーサを配置し、その上に、周囲にポリプロピレン製のガスケットを有する封口板を被せた。そして、ケースの周囲を封口板にかしめて2016サイズのコイン型電池(本発明のリチウムイオン二次電池)を作製した。
4.コイン型電池の評価
上記のようにして作製したコイン型電池について、上述した評価方法を用いて充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図6に示し、充放電サイクル特性を図7に示した。なお、図6において、縦軸は金属リチウムに対する負極の電位(V)を示し、横軸は容量(mAh)を示す。また、図7において、縦軸は容量(mAh)を示し、横軸はサイクル数(回)を示す。
図7から、本実施例のコイン型電池は、初期には約5.8mAhという高い容量を発揮した。また、200サイクル経過後も約5.7mAhと、初期の90%以上の容量を維持した。よって、本実施例のコイン型電池は、優れた充放電サイクル特性を有することがわかった。また、図6から、充電容量7.5mAh、放電容量5.8mAh、不可逆容量1.7mAhであり、充電曲線と放電曲線の電位差が小さかった。よって、本実施例のコイン型電池は、分極特性に優れており、高率充放電特性も優れることがわかった。
さらに、X線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果を図8に示した。図8において、縦軸はカウント数(単位任意)を示し、横軸は束縛(結合)エネルギー(eV)を示す。
図8から、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《実施例2》
真空チャンバー内に導入する酸素ガスの流量を45sccmとし、3mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.1であった。
また、得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像では、2nm以上の結晶子は認められず、また回折リングもハローパターンを示した。よって、得られたSiOx薄膜は、均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図9に示した。Si2p束縛エネルギーは100eVから102eVの間で3つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)およびSi(2)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、50.9:15.3:17.3:9.2:7.3であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図10に示し、充放電サイクル特性を図11に示した。
図11から、本実施例のコイン型電池は、初期には約10mAhという高い容量を発揮した。また、200サイクル経過後も約6.4mAhと、初期の60%以上の容量を維持した。よって、本実施例のコイン型電池は、優れた充放電サイクル特性を有することがわかった。また、図10から、初期充電容量10.8mAh、放電容量10mAh、不可逆容量0.8mAhと不可逆容量が小さく、充電曲線と放電曲線の電位差が小さかった。よって、本実施例のコイン型電池は、分極特性に優れており、高率充放電特性も優れることがわかった。
さらに、実施例1と同様にX線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《実施例3》
真空チャンバー内に導入する酸素ガスの流量を80sccmとし、2.2mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は1.2であった。
また、得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像では、2nm以上の結晶子は認められず、また回折リングもハローパターンを示した。よって、得られたSiOx薄膜は、均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図12に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、11.9:1.8:34.7:48.3:3.3であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図13に示し、充放電サイクル特性を図14に示した。
図14から、本実施例のコイン型電池は、初期には約2mAhという容量を発揮し、200サイクル経過後も初期の70%以上の容量を維持しており、優れた充放電サイクル特性を有することがわかった。また、図13から、初期充電容量5mAh、放電容量2mAh、不可逆容量3mAhと不可逆容量が大きく、また充電曲線と放電曲線の電位差が大きいことから、本実施例のコイン型電池は、分極特性に劣ることがわかった。これはSiOx薄膜中の酸素量が多いため、極板抵抗が高くなったためと考えられた。また、初期容量が低いのは、一定の膜厚で製膜を行ったことから、SiOx薄膜中のSi量が低下しているためである。
さらに、実施例1と同様にX線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《比較例1》
酸素ガス代えてArガスを80sccmで真空チャンバー内に導入し、3.1mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行ったところ、検出限界以下であったため、Si薄膜が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図15に示した。Si2p束縛エネルギーは99.8eVに1つのピークを有するのみであった。このピークは、Si(0)に帰属され、以下の関係が得られた。すなわち、Si(0)とSi(4)を接続する中間の結合に帰属されるエネルギーが存在しなかった。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図16に示し、充放電サイクル特性を図17に示した。
図17から、本比較例のコイン型電池は、初期には約12mAhという高い容量を発揮した。しかし、200サイクル経過後には、著しく容量が低下し、充放電サイクル特性の劣化が激しいことがわかった。
この電池を分解すると、集電体である銅箔ごと破断していることが確認された。これは、負極活物質の充放電に伴う体積の膨張に集電体が追随しなかったためと考えられた。
《比較例2》
酸素ガスの流量を90sccmとし、3.5mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は1.5であった。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図18に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、3.9:8.2:18:29:42であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図19に示し、充放電サイクル特性を図20に示した。
図20から、本比較例のコイン型電池は、初期には約2mAhという容量を発揮し、200サイクル経過後にも50%以上の容量を維持した。しかし、初期容量および容量維持率が低すぎ、ケイ素化合物の特徴である高容量が得られないことがわかった。
《比較例3》
SiO2粉末とSi粉末とをモル比3:7で混合した。得られた混合物90重量部に対して、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部を加え、N−メチルピロリドンを添加して、ペーストを得た。得られたペーストを厚さ35μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後圧延した後、200℃24時間真空乾燥を行い、塗工型電極を作製した。
得られた塗工型電極について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図21に示した。Si2p束縛エネルギーは99.5eVおよび103eVに2つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)およびSi(4)に帰属され、以下の関係が得られた。すなわち、Si(0)とSi(4)を接続する中間の結合に帰属されるエネルギーが存在しなかった。
また、上記塗工型電極を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図22に示し、充放電サイクル特性を図23に示した。
図23から、本比較例のコイン型電池は、分極が大きいため、充放電容量を大きく取ることはできないうえ、充放電サイクルを繰り返すと容量が著しく減少したことがわかる。これは、SiO2が不導体であるため、極板の抵抗が高くなったためと考えられる。更に、充放電に関与するSi粒子が、充放電サイクル中に膨張収縮を繰り返す結果、微細化し、集電不良を起こしているものと考えられた。
《比較例4》
基板と冷却板との間に厚さ5mmのポリイミド製板を配置して、上記基板の放熱を抑制した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の負極活物質を得た。
得られた塗工型電極について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、実施例1と同様にしてX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図24に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、45.2:12.4:13.3:0.8:28.3であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図25に示し、充放電サイクル特性を図26に示した。
図26から、本比較例のコイン型電池は、分極が大きいため、充放電容量を大きく取ることはできないうえ、充放電サイクルを繰り返すと容量が著しく減少したことがわかる。これは、SiO2が不導体であるため、極板の抵抗が高くなると同時に、充放電に関与するSi粒子が充放電サイクル中に膨張収縮を繰り返す結果、微細化し集電不良を起こしているものと考えられた。
《比較例5》
真空チャンバー内の圧力を0.005Paに設定し、酸素ガスを導入せずに以下のようにして、負極活物質を作製した。
あらかじめ、単結晶(100)シリコンウェハーをアルゴン中で粉砕した粉末と、アモルファスSiO粉末と、アモルファスSiO2粉末とを、それぞれ17.85g、16.25gおよび10.9gを秤量し(仕込み組成でSiO0.6)、十分混合した後、得られた混合物を加圧成型して得た。
この蒸着源を真空チャンバー内に設置されたカーボン製坩堝中に入れ、電子銃からEB電圧:−9kVおよびEB電流:400mAの条件で電子線を照射し、上記蒸着源を溶解させて銅箔上に蒸着した。
しかしながら、スプラッシュがひどく薄膜は形成されなかった。また、真空チャンバーを開放して上記カーボン製坩堝内を確認すると、金属色の塊とガラス状の塊とが散見された。SiOと推測される褐色の粉末も幾分残っていたが、当該褐色の粉末の量は、当初仕込んだ総量よりもかなり減少していた。また、基板の表面状態が非常に粗くなっており、以降の分析に用いることができなかった。
これは、シリコンウェハーを粉砕して得られた粉末、アモルファスSiO粉末およびアモルファスSiO2粉末の蒸気圧に大きな差があること、SiO2が帯電し易いこと、SiOが昇華性であること、によるものと考えられた。なお、図27は、ケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素の蒸気圧曲線を示す図である。
《比較例6》
市販のSiO(フルウチ化学(株)製の特級グレード、純度:99.99%)90重量部に対して、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部を加え、N−メチルピロリドンを添加して、ペーストを得た。得られたペーストを厚さ35μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後圧延した後、200℃24時間真空乾燥を行い、塗工型電極を作製した。
実施例1と同様にしてX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図30に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVに2つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、31:69であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記塗工型電極を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電サイクル特性を図31に示した。 図31から、本比較例のコイン型電池は、Si(4)が多いため、分極が大きかった。また、Si(1)、Si(2)およびSi(3)が存在しないことから、これらとSi(0)とが連続的に結合した体積変化に強い構造が得られておらず、著しいサイクル劣化をしたものと考えられた。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極は、それを用いた電池の高い充放電効率とケイ素活物質の特徴である高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を有する負極活物質を提供することができる。
【0013】
得ることができるという観点から、0.1≦x≦0.6であるのが好ましい。
[0036]
さらに、本実施の形態の負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiO)においては、酸素原子がその骨格中に存在し、Si−O−Si結合が形成されている。このことから、上記四面体の中心に位置するケイ素周辺に形成される空隙は、Si−Si結合間の距離よりも大きくなる。さらに、Si−O結合エネルギーは430kJ/molであり、Si−Si結合エネルギーの184kJ/molに比べて格段に大きい。
これらのことから、Liイオンが挿入された場合の体積変化が効果的に抑制され、その結果、優れた充放電サイクル特性を実現することができる。
[0037]
上記のような本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiO)は、例えばスパッタ法または蒸着法により形成することができる。例えば、ケイ素源を、真空チャンバー内で、例えば銅箔製の基板上にスパッタまたは蒸着することにより、膜状の負極活物質を形成することができる。
[0038]
スパッタまたは蒸着を行う際には、上記真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、かつ基板の膜形成面(反応面)の温度上昇を抑制する。これにより、得られる負極活物質の結晶化を抑制する。すなわち、結晶化を抑制しつつ上記のような非晶質構造を有するケイ素酸化物からなる負極活物質を形成する。基板の膜形成面の温度上昇を抑制するためには、基板を冷却すればよい。基板の温度は、500℃以下であることが好ましく、室温〜300℃であることが特に好ましい。
[0039]
以下に、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物の製造方法、および、ケイ素酸化物の評価方法の一例について説明する。
[0040]
(1)負極活物質を構成するSiO薄膜の作製
図32は、本発明の負極活物質(すなわちケイ素酸化物)の製造装置の構成を示す概略図である。図32において、真空チャンバー2内は、排気ポンプ1により排気されている。まず、真空チャンバー2に置かれたカーボン製坩堝3内に、純度99.99%以上のケイ素(粒、塊または粉末を成型して得られたタブレット)を入れる。電子銃(図示せず)によりケイ素に電子線(EB)を照射してケイ素を溶融させ、蒸発させる。そして、カーボン製坩堝3に対向して設置された、例えば銅箔製の基板5上に、蒸着法でSi
【0021】
た。その結果、x値は0.1であった。
また、得られたSiO薄膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
[0067]
さらに、得られたSiO薄膜を、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像では、2nm以上の結晶子は認められず、また回折リングもハローパターンを示した。よって、得られたSiO薄膜は、均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図9に示した。Si2p束縛エネルギーは100eVから102eVの間で3つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)およびSi(2)に帰属され、これらの面積比から、図9に示すとおり、以下の関係が得られた。
[0068]
[数6]
[0069]
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図10に示し、充放電サイクル特性を図11に示した。
図11から、本実施例のコイン型電池は、初期には約10mAhという高い容量を発揮した。また、200サイクル経過後も約6.4mAhと、初期の60%以上の容量を維持した。よって、本実施例のコイン型電池は、優れた充放電サイクル特性を有することが
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質およびこれを用いた負極ならびにリチウムイオン二次電池に関する。
昨今、リチウムイオン二次電池が用いられるPC、携帯電話、PDA等の携帯情報端末や、ビデオレコーダー、メモリーオーディオプレーヤー等のオーディオビジュアル機器の小型化および高性能化が進んでいる。
このような小型化および高性能化にともない、リチウムイオン二次電池の高容量化も望まれている。従来のリチウムイオン二次電池は、正極にコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどのリチウム含有遷移金属酸化物と、負極に黒鉛などの炭素系材料が用いられている。しかし、これら材料の組み合わせで実用化されているリチウムイオン二次電池における高容量化は、ほぼ限界に達しつつある。
これに対し、リチウムイオン二次電池の高容量化を達成するため、負極活物質の選択や設計が検討されている。高容量化のための負極活物質としては、例えば金属リチウム、リチウムと合金化するアルミニウム、ケイ素、およびスズなどが検討されている(例えば非特許文献1)。なかでも、ケイ素は大きい理論容量を有するため、ケイ素を活物質として用いたリチウムイオン二次電池が提案されている(例えば特許文献1)。
ところが、ケイ素はリチウムイオンと反応する際に大きな体積変化を伴うため、繰り返し充放電により集電性が低下し、十分なサイクル特性が得られないという問題がある。
この問題を解決するための負極活物質として、SiOx(0<x<2)が提案されている(例えば特許文献2および特許文献3)。SiOxは高容量を有し、安定したサイクル特性を発揮する。ただし、SiOxは初期充電で挿入されたLiがすべて脱離しないため、いわゆる不可逆容量が大きくなってしまう。
そこで、当初よりLiを含有するリチウムシリケート化合物を用いることが提案されている。例えばLi4SiO4、Li2SiO3、Li2Si25、Li4Si38、Li6Si411などの、LiySiOx(0<y、0<x<2)で表されるリチウムシリケート化合物が提案されている(特許文献2)。また、良好なサイクル特性を得るために、SiOxに熱処理を施し、X線回折でSi(220)面の回折ピークが発現するよう結晶化させた負極活物質も提案されている(特許文献3)。
また、充放電による体積膨張を抑制するために、酸化数が0のケイ素と酸化数が+4のケイ素を有するケイ素化合物と、酸化数が0より大きく+4未満であるケイ素を有するケイ素低級酸化物と、を含む負極活物質が提案されている(例えば特許文献4参照)。
さらに、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy: XPS)を用い、酸化数が0のケイ素と酸化数が+4のケイ素を有するケイ素化合物と、酸化数が0より大きく+4未満であるケイ素を有するケイ素低級酸化物と、を含むSiO薄膜が示されている。併せてその充放電反応機構が開示されている(例えば非特許文献2参照)。
SiOで表される化学組成を有するケイ素酸化物においては、ミクロ的に見るとSiとSiO2とが相分離して存在する。したがって、SiOは平均組成を表すものであることが知られている(例えば非特許文献3)。
ここで、ケイ素酸化物は四面体構造を単位構造として有する。SiO2以外のケイ素酸化物(以下、中間酸化物という)は、四面体の頂点の酸素数1個、2個および3個に対応して、それぞれSi2O、SiOおよびSi23と表すことができる。これら中間酸化物は、熱力学的に不安定で、単体結晶として存在することはきわめて難しい。よって、SiOは上記のように平均組成を表すものであると推定される。なお、上記のような中間酸化物をX線光電子分光(XPS)法で測定すると、SiおよびSiO2に由来する2つのピークが明確に分離して検出される。
特開2002−83594号公報 特開平6−325765号公報 特開2004−71542号公報 特開2005−183264号公報 Solid State Ionics, 57, 113-115 (1998) Journal of The Electrochemical Society, 152(10), A2089 (2005) Journal of Non-Crystalline Solids, 204(2), 202-203 (1996)
しかしながら、上記特許文献2に記載のLiySiOxは電子伝導性が極めて小さい。よって、リチウムイオンを、リチウムイオン二次電池に求められる移動速度で、LiySiOxに脱離および挿入させることは極めて困難である。
上記特許文献3に記載の負極活物質は、非酸化性雰囲気下における830℃以上の熱処理により、SiとSiO2との混合物となる。この場合、充放電に関与できるのはSiのみであり、SiO2は充放電に関与しない。そのため、ある程度の量のSiを含有している割には、充分に高い容量を得ることは比較的困難である。さらに、SiO2が電子伝導性を有しないため、負極の抵抗が高くなる。その結果、リチウムイオンを、リチウムイオン二次電池に求められる移動速度で、負極活物質に脱離および挿入させることは、極めて困難なものとなる。
特許文献4においては、ケイ素単結晶粒子とアモルファスSiO2とアモルファスSiOとの混合物を、電子ビームの照射により溶融する。そして、得られた溶融物を支持体に蒸着して薄膜を得ることが例示されている。ここで、図27に、ケイ素単結晶粒子とアモルファスSiO2とアモルファスSiOの蒸気圧曲線(真空ハンドブック、日本真空技術(株)編、オーム社、p148−149)を示す。図27からわかるように、SiO2とSiOとの蒸気圧の差は極めて大きい。さらにアモルファスSiOは、高い昇華性を有する。よって、均質な薄膜を得ることは極めて困難である。
以上のような従来技術が有する問題点に鑑み、本発明は、ケイ素を含む活物質の一般的な特徴である高い充放電容量を損なうことなく、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供し、更にこれを用いた負極およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質は、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能なケイ素酸化物を含み、
上記ケイ素酸化物が、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する、四面体の単位構造を有し、上記単位構造が不規則に配列した非晶質構造を構成していること、を特徴とする。
ここで、本発明の負極活物質を構成するケイ素酸化物においては、非晶質構造において隣接する上記四面体は、上記4つの頂点を共有している。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば共有されない頂点が存在してもよい。
本発明におけるケイ素酸化物が有する「非晶質構造」は、主として均質な非晶質構造部分で構成されている。「均質な非晶質構造」とは、複数の非晶質化合物が界面を形成せずに構成する非晶質構造、すなわち界面が存在しない状態の非晶質構造をいう(図3参照)。ただし、例えば組成が連続的に変化する傾斜部が含まれていてもよい。また、本発明における上記ケイ素酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で「不均質な非晶質部分」を含んでいてもよい。さらに、上記ケイ素酸化物は、本発明の効果を損なわない程度に結晶質部分を含んでいてもよい。なお、得られたケイ素酸化物の非晶質構造が「均質」か否か、傾斜部があるか否かは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することなどにより確認することができる。
上記のような本発明の負極活物質において、非晶質構造を有するケイ素酸化物は、それ自体が安定である。また、上記ケイ素酸化物に対するリチウムイオンの脱離および挿入の速度は充分に速い。そのため、ケイ素を含む活物質の特徴である高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質を得ることができる。
ここで、上記単位構造における上記4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)とし、上記単位構造をSi(n)と表記した場合、上記ケイ素酸化物における上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(1)〜(3)を満たす。
上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(4)〜(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
上記本発明の負極活物質を含む負極と、
上記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
リチウムイオン伝導性を有する電解質と、
を含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、先に述べた本発明の負極活物質を用いているため、高い充放電容量と、優れた充放電サイクル特性とをより確実に両立することができる。
さらに、本発明のリチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含むリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法は、
ケイ素源を溶融してケイ素溶融物を得る工程と、
上記ケイ素溶融物を、雰囲気温度よりも低い温度を有する基板上に蒸着することによって、ケイ素酸化物で構成された負極活物質を得る工程と、を含み、
上記ケイ素酸化物は、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する四面体の単位構造を有し、かつ上記単位構造が不規則に配列して非晶質構造を構成している。
上記のような方法によれば、高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を発揮する本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質をより確実に得ることができる。
本発明によれば、ケイ素を含む活物質の一般的な特徴である高い充放電容量を損なうことなく、優れた充放電サイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池用負極活物質、ならびにこれを用いた負極およびリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含む。当該ケイ素酸化物は、SiとSiO2との単純な混合物ではなく、図1に示すように、中心にケイ素が位置し、4つの頂点にケイ素または酸素が位置する四面体の単位構造を有する。上記単位構造は、隣接する単位構造間で、上記頂点を共有しながら、不規則に配列して、非晶質構造を構成している。図1は、本発明の負極活物質のミクロ構造を模式的に示す図である。
本実施の形態の負極活物質を構成するケイ素酸化物は、非晶質として構成されている。これにより、Si(Si−Si4;ただし、「−」の前の原子は四面体の中心に位置する原子を示し、「−」の後の原子は4つの頂点に位置する原子を表す。以下同様。)、Si2O(Si−Si3O)、SiO(Si−Si22)、Si23(Si−SiO3)、およびSiO2(Si−O4)の、5種類の四面体の単位構造が、任意の割合で、頂点を共有しながら、相分離を示さずに均質に存在していると考えられる。
一般に、SiOxで表される化学組成を有するケイ素酸化物の単位構造においては、四面体の中心にケイ素原子が位置し、sp3混成により形成される4つの結合手にケイ素または酸素が位置していることが知られている。
Siの場合(すなわち、SiOxにおいてx=0の場合)、すべての頂点にSiが位置する。SiO2の場合(すなわちSiOxにおいてx=2の場合)、すべての頂点にOが位置する。SiのSi2p束縛エネルギーは99±1eVであり、SiO2のSi2p束縛エネルギーは103±1eVであり、互いに異なる。
本発明の負極活物質は、種々の形状を有することができ、例えば粒子状であっても薄膜状であっても構わない。製造工程上、上記構成のケイ素酸化物をより確実に得るという観点から、本実施の形態の負極活物質は薄膜状であることが好ましい。さらには、負極活物質は、例えば粒子が粒界を有するように堆積して形成された薄膜状であってもよい。負極活物質は、均一な薄膜状はもとより、本発明の効果を損なわない程度に部分的に不均一な薄膜状であってもよい。
ここで、図28は、SiOx薄膜(x=0.6)からなる本実施形態の負極活物質の、充放電過程における、Si2p束縛エネルギー変化を示す図である。図29は、Siの架橋酸素数別に、SiOx薄膜からなる本実施形態の負極活物質の、充放電過程における、Si2p束縛エネルギー変化をまとめた図である。
図28および図29に示すように、充電反応(Liイオンの挿入)および放電反応(Liイオンの脱離)によって、それぞれのSi2p束縛エネルギーは変化する。その変動幅(初期状態からのシフト量)の大きさは、Si>Si2O>SiO>Si23>SiO2の順になる。
本発明の負極活物質におけるケイ素酸化物は、上述したような構成を有するため、中間酸化物に含まれるSiも充放電に関与し、高い充放電容量が得られると考えられる。
また、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物においては、Si2p束縛エネルギーが連続的な変化をする。そのため、上記単位構造における4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)とし、単位構造をSi(n)と表記した場合、ケイ素酸化物をXPSで測定した場合のXPSスペクトルにおいて、上記単位構造の数NSi(n)に対応したピークが観測される。
かかるピークに基づいて、常法(例えば、Applied Surface Science, 70/71, p222-225 (1993)に記載の方法)でピーク面積を求めることにより、上記単位構造の数NSi(n)を求めることができる。
そして、本発明者らは、上述したような本発明の効果をより確実に得るためには、上記ケイ素酸化物中の単位構造の数NSi(n)が、以下の関係式(1)〜(3)を満たすことが好ましいことを見出した。
ここで、Si(0)が占める割合(すなわち上記式(1)の値)が0.1以上であれば、本実施の形態の負極活物質は、実用的な容量をより確実に発揮することが可能である。
また、本発明の負極活物質を構成するケイ素酸化物には、Si(0)の膨張収縮による応力に対する耐性を高めるために、Si(4)が存在することが好ましい。そして、Si(4)が占める割合(すなわち上記式(2)の値)が0.1以下であれば、Si(4)の割合が多くなり過ぎず、反応し得るケイ素の量を確保することができ、適度な容量をより確実に保持することができる。また、Si(4)は非導電物質であるが、非導電性物質であるSi(4)が占める割合が0.1以下であれば、実使用上、分極の影響を殆ど受けない。
上記式(3)の条件は、Si(0)からSi(4)の間に(すなわち上記ケイ素酸化物の非晶質構造のなかに)、Si(1)、Si(2)およびSi(3)の単位構造が、結合されて含まれていることを示す。
これらの単位構造がケイ素酸化物の非晶質構造の中に含まれることにより、連続的に結合エネルギーが変化する。よって、Si(0)の充放電サイクルに伴う体積変化に対して、強い構造を実現することができる。なお、Si(1)、Si(2)およびSi(3)の単位構造は、リチウムを吸蔵および放出することが知られている(上記特許文献4)。
以上のように、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物に、Si(1)、Si(2)およびSi(3)を含ませるとともに、Si(4)の占める割合(すなわち上記式(2)の値)を0.1以下に抑えることにより、充放電容量の確保が可能になり、分極の問題をより確実に回避することができる。
また、上記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(4)〜(6)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
NSi(0)/ΣNSi(n)が0.8を超えると、ケイ素酸化物の充放電に伴う体積変化が大きくなり、集電体からの負極活物質の剥離や脱落を生じる場合があり、良好な充放電サイクル特性を得にくくなる場合がある。
また、NSi(4)/ΣNSi(n)が0.1を超えると、ケイ素酸化物の電子伝導性が低下して、負極の内部抵抗が上昇する場合があり、結果として、分極が大きくなり充放電容量が低下する場合がある。
Si(1)、Si(2)およびSi(3)は、Si(0)よりも充放電による体積変化が小さく、Si(4)よりも電子伝導性が高いため、多い方が好ましい。{NSi(1)+NSi(2)+NSi(3)}/ΣNSi(n)が0.231以上であれば、ほぼ確実に良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
ここで、本実施の形態におけるケイ素酸化物は、SiOxで表すことができ、xの値は蛍光X線分析により求めることができる。当該蛍光X線分析によってxの値を求めた場合、xは0.1≦x≦1.2を満たすことが好ましい。なお、x値は後述するように平均値を示す。
xが0.1以上であれば、Si単独の場合と同様に、充放電に伴う体積膨張が大きくならず、活物質粒子間の集電性能の低下および充放電サイクル特性の低下をより確実に抑制することができる。また、xが1.2以下であれば、高率充放電特性を低下させず、適度に確保することができる。1.2以下であれば、酸素の量が多くなり過ぎず、負極の抵抗を低く抑えることができ、分極も抑制することができる。
さらには、適度な充放電サイクル特性と高率充放電特性とをより確実にバランス良く得ることができるという観点から、0.1≦x≦0.6であるのが好ましい。
さらに、本実施の形態の負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiOx)においては、酸素原子がその骨格中に存在し、Si−O−Si結合が形成されている。このことから、上記四面体の中心に位置するケイ素周辺に形成される空隙は、Si−Si結合間の距離よりも大きくなる。さらに、Si−O結合エネルギーは430kJ/molであり、Si−Si結合エネルギーの184kJ/molに比べて格段に大きい。
これらのことから、Liイオンが挿入された場合の体積変化が効果的に抑制され、その結果、優れた充放電サイクル特性を実現することができる。
上記のような本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物(SiOx)は、例えばスパッタ法または蒸着法により形成することができる。例えば、ケイ素源を、真空チャンバー内で、例えば銅箔製の基板上にスパッタまたは蒸着することにより、膜状の負極活物質を形成することができる。
スパッタまたは蒸着を行う際には、上記真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、かつ基板の膜形成面(反応面)の温度上昇を抑制する。これにより、得られる負極活物質の結晶化を抑制する。すなわち、結晶化を抑制しつつ上記のような非晶質構造を有するケイ素酸化物からなる負極活物質を形成する。基板の膜形成面の温度上昇を抑制するためには、基板を冷却すればよい。基板の温度は、500℃以下であることが好ましく、室温〜300℃であることが特に好ましい。
以下に、本実施の形態に係る負極活物質を構成するケイ素酸化物の製造方法、および、ケイ素酸化物の評価方法の一例について説明する。
(1)負極活物質を構成するSiOx薄膜の作製
図32は、本発明の負極活物質(すなわちケイ素酸化物)の製造装置の構成を示す概略図である。図32において、真空チャンバー2内は、排気ポンプ1により排気されている。まず、真空チャンバー2に置かれたカーボン製坩堝3内に、純度99.99%以上のケイ素(粒、塊または粉末を成型して得られたタブレット)を入れる。電子銃(図示せず)によりケイ素に電子線(EB)を照射してケイ素を溶融させ、蒸発させる。そして、カーボン製坩堝3に対向して設置された、例えば銅箔製の基板5上に、蒸着法でSiOx薄膜からなる負極活物質を形成する。
真空中でケイ素を蒸着するだけでは、Si膜しか得られないため、本実施の形態では真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、反応性蒸着を行うことにより、SiOx薄膜を形成する。すなわち、ケイ素を酸素と反応させながら蒸着させる。得られるSiOx薄膜のx値は、上記真空チャンバー内に導入する酸素ガス量(すなわち雰囲気の酸素濃度)を調整することにより、調整することが可能である。
さらに、本実施の形態においては、得られるSiOx薄膜を非晶質化するために、基板5の温度を、雰囲気温度よりも低くし、好ましくは室温付近にとどめる。基板5の温度を低下させる方法としては、例えば(i)基板を保持する基板ホルダー4内に冷却水を通して基板を冷却したり、基板または基板ホルダー4に冷却板を接して配置して、当該冷却板内に冷却水を通して基板を冷却したりする方法、(ii)ペルチェ素子を上記基板または基板ホルダーに貼り合わせて冷却する方法などが考えられる。基板をより容易かつ確実に冷却するという観点からは、上記(i)の方法が好ましい。
(2)SiOxのx値の決定
SiOxのx値は、得られたSiOx薄膜の表層から数μmの深さの領域を、例えばO−Ka線を用いた蛍光X線分析でのファンダメンタルパラメータ法を用いて求めることができる。蛍光X線分析には、例えば理学電機工業(株)製RIX3000を用いることができる。蛍光X線分析の条件としては、例えばターゲットにロジウム(Rh)を用い、管電圧50kV、管電流50mAとすればよい。ここで得られるx値は、基板上の測定領域で検出されるO−Ka線の強度から算出されるため、測定領域の平均値となる。
また、他の方法として、得られたSiOx薄膜全体を燃焼させてx値を決定することも可能である。例えば、燃焼管中に設置したグラファイト製るつぼ(坩堝)にSiOx薄膜を入れ、るつぼに通電し、発熱させる。このとき温度を約3000℃とする。この燃焼管にHeガスをキャリアとして流し、発生したCO2およびCOの量を定量することで、酸素の量を測定する。そして、あらかじめ測定した重量から、SiOxのx値を求めることができる。
(3)X線回折測定
非晶質構造が得られていることは、X線回折(XRD)測定により確認することができる。XRD測定には、例えば理学電機工業(株)製のRINT−2000を用いることができる。
XRD測定は、例えばX線源にCu−Kαを用い、管電圧40kV、管電流40mAとし、測定は2θ/θで10〜80°、ステップ0.02°、および走査速度0.6°/minの条件で行うことができる。ここで、明瞭な回折ピークが認められずブロードな回折パターンが得られた場合には、SiOxはX線的に非晶質である。
(4)X線光電子分光(XPS)測定
上記関係式(1)〜(3)の値は、X線光電子分光(XPS)測定により求めることができる。XPS測定には、例えば理学電機工業(株)製のXPS−7000を用いることができる。
XPS測定は、例えばX線源にAl−Kαを用い、管電圧10kV、管電流10mAの条件で行うことができる。また、表面に形成される酸化物等の影響を除外してSiOx薄膜の状態を正確に測定するために、得られたSiOx薄膜の表面から例えば200〜300nmまで、Arガスによるエッチングを行うことが好ましい。上記製造方法によれば、得られたSiOx薄膜の表面から深さ約200〜300nm以降において、ほぼ均一な層が形成されるからである。なお、本発明の負極活物質を構成するSiOx薄膜の厚さは、所望する電池のスペックに応じて適宜調整することができる。
上記エッチングは、例えば加速電圧500V、エッチング角度90°、およびイオン電流密度160μA/cm2の条件で行うことができる。この際のエッチングレートは、SiO2換算で約5nm/minであればよい。
SiOx薄膜の状態は、Si2pを測定することにより行うことができる。また、表面に形成される酸化膜等がエッチングにより除去されたか否かは、C1sを測定することにより判断することができる。
ここで、本明細書において、本発明に係る負極活物質を構成するSiOx薄膜の測定データは、Ar2pの基準値を242.3eVとして、Arを用いて補正したものである。すなわち、測定データは、Ar2pのズレから帯電補正を行って得られたデータである。
XPSスペクトルにおけるピークの同定においては、架橋酸素数が0、1、2、3および4の5つの場合があると仮定し、それぞれの基準値を99.8eV、100.7eV、101.5eV、102.5eVおよび103.5eVとする。そして、ガウス関数を用いてピーク分離を行う。ただし、場合によってはピーク数が減少することもある。基準値とする結合エネルギーには、Applied Surface Science, 70/71, p222-225 (1993)に記載されている値を用いる。
なお、原子数比は、上記ピーク分離を行うことで得られるピーク面積比と対応する。よって、ピーク面積比を原子数比として算出することができる。
(5)コイン型リチウムイオン二次電池の作製方法
本発明に係る負極活物質を用いた本発明に係るリチウムイオン二次電池の代表例として、コイン型リチウムイオン二次電池(コイン型電池)の一例を、図33を参照しながら以下に示す。
上記のようにして銅箔製基板上に作製されたSiOx薄膜を、基板とともに例えば直径12.5mmに切り抜き、負極11を得る。この負極11と正極12とを、ポリエチレン製セパレータ13(例えば厚さ25μm、直径17mm)を介して対向させて、2016サイズのコイン型電池ケース16の中に挿入する。
ついで、リチウムイオン二次電池用電解液を上記コイン型ケースに注液する。ケース内における空間を埋めるために、ステンレス鋼製スペーサ14を負極上に配置し、その上に、周囲に樹脂製のガスケット17を有する封口板15を被せる。その後、電池ケース16の周囲を封口板15にかしめて、2016サイズのコイン型電池(例えば総高1.6mm、直径20mm)10を作製する。
リチウムイオン二次電池用電解液には、例えば炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの1:1(体積比)混合溶媒に、溶質として1MのLiPF6を溶解して得られる電解液を用いることができる。
なお、本発明に係るリチウムイオン二次電池の各構成要素としては、上記本発明の負極活物質を用いる以外は、特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを選択することが可能である。
正極には、上記金属リチウム以外にも、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn24などのリチウム含有遷移金属酸化物;LiTiS2、LiMoS2などリチウム含有遷移金属硫化物を用いることができる。
また、セパレータには、例えばポリオレフィン系多孔質フィルムを用いることができる。ポリオレフィン系多孔質フィルムとしては、例えばポリプロピレン製多孔質フィルム、ポリエチレン/ポリプロピレンの多層構造を有する多孔質フィルム等が挙げられる。
また、電解液の溶媒としては、例えば炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)に代表される環状炭酸エステル;炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)に代表される鎖状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)に代表される環状カルボン酸エステル;ジメトキシメタン(DMM)、1,3−ジメトキシプロパン(DMP)などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン(DOL)などの環状エステルなどを用いることもできる。もちろん、これらのうちの2種以上を混合溶媒として用いることも可能である。
電解液の溶質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)に代表される無機酸アニオンリチウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)などの有機酸アニオンリチウム塩などを用いることができる。もちろん、これらのうちの2種以上を混合して用いることも可能である。
(6)評価方法
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、定電流充放電法によって充放電容量を測定することにより評価することができる。
上記のようにして作製したコイン型電池の場合、2極セルとしてその充放電容量を測定する。充放電容量測定は、例えば100μAの定電流での終止電圧までの充電、および100μAの定電流での終止電圧までの放電を1サイクルとし、当該サイクルを繰り返して行う測定周囲温度は、室温(例えば25℃)とすればよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
《実施例1》
1.負極活物質の作製
本実施例においては、まず、図32に示す構造を有する製造装置を用いて、本発明の負極活物質を作製した。
あらかじめ、真空チャンバー2内に設置されたカーボン製坩堝3中に、ケイ素タブレットを入れ、真空チャンバー2内の圧力を0.005Paに設定した後、酸素ガスを70sccmの流量で導入し、真空チャンバー2内の圧力を0.13Paに設定した。
その後、電圧:−9kVおよびEB電流:400mAの条件で、電子銃から上記ケイ素タブレットに電子線を照射し、ケイ素を溶解させ、カーボン製坩堝3と対向させた厚さ50μmの銅箔(基板)5上に蒸着させた。この蒸着は、膜厚計で10μmの厚さの薄膜が形成されるまで続けた。得られた薄膜の重量は2.4mgであった。なお、銅箔(基板)5は基板ホルダー4に保持させた。
ここで、蒸着時には、上記基板5が加熱されてその温度が百数十℃にもなってしまうため、基板ホルダー4内に冷却水を通して基板ホルダー4の温度を20℃に維持した。すなわち、雰囲気温度よりも基板5の温度が低くなるような条件で、上記蒸着を行い、蒸着中、基板5に接触している冷却板の温度を20℃に維持した。その他の具体的な条件は以下のとおりとし、本実施例における負極活物質を構成するSiOx薄膜を作製した。特に、冷却水の流路を内径6mmのサーペンタイン型流路とすることにより、基板5を充分に冷やすことができた。
基板ホルダーの材質 銅
基板ホルダーの大きさ(縦、横、厚さ) 10cm×10cm×2.5cm
冷却水の温度 15℃
冷却水の流量 3L/min
基板ホルダー内の冷却水の流路 内径6mmのサーペンタイン型流路
2.負極活物質の評価
得られたSiOx薄膜について上述した条件で蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、得られたSiOx薄膜について、上述したX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンを図2に示した。なお、図2において、縦軸は強度(カウント数)を示し、横軸は回折角度2θ(°)を示す。図2に示すX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像を図3に示した。また、その際に得られた回折リングを図4に示した。
図3に示す透過型電子顕微鏡像から、2nm以上の結晶子は認められなかった。また、回折リングもハローパターンを示すことから、得られたSiOx薄膜は均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、上述したX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図5に示した。Si2p束縛エネルギーは99eVから104eVの間で、5つのピークに分離することができた。それぞれのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比は、総和を100として算出すると、50.9:15.3:17.3:9.2:7.3であった。したがって以下の関係が得られた。
3.コイン型電池の作製
上記のようにして作製したSiOx薄膜を用い、図33に示す構造を有するコイン型電池を作製した。
具体的には、上記のようにして銅箔製基板上に作製されたSiOx薄膜を、基板ごと直径12.5mmに切り抜き、負極を得た。この負極と、金属リチウム製対極(counter electrode:厚さ300μm、直径15mm)とを、ポリエチレン製セパレータ(厚さ25μm、直径17mm)を介して対向させて、2016サイズのコイン型電池ケースの中に挿入した。
ついで、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの1:1(体積比)混合溶媒に、溶質として1MのLiPF6を溶解して得られる電解液を、上記コイン型ケースに注液した。その後、ケース内における空間に、ステンレス鋼製スペーサを配置し、その上に、周囲にポリプロピレン製のガスケットを有する封口板を被せた。そして、ケースの周囲を封口板にかしめて2016サイズのコイン型電池(本発明のリチウムイオン二次電池)を作製した。
4.コイン型電池の評価
上記のようにして作製したコイン型電池について、上述した評価方法を用いて充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図6に示し、充放電サイクル特性を図7に示した。なお、図6において、縦軸は金属リチウムに対する負極の電位(V)を示し、横軸は容量(mAh)を示す。また、図7において、縦軸は容量(mAh)を示し、横軸はサイクル数(回)を示す。
図7から、本実施例のコイン型電池は、初期には約5.8mAhという高い容量を発揮した。また、200サイクル経過後も約5.7mAhと、初期の90%以上の容量を維持した。よって、本実施例のコイン型電池は、優れた充放電サイクル特性を有することがわかった。また、図6から、充電容量7.5mAh、放電容量5.8mAh、不可逆容量1.7mAhであり、充電曲線と放電曲線の電位差が小さかった。よって、本実施例のコイン型電池は、分極特性に優れており、高率充放電特性も優れることがわかった。
さらに、X線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果を図8に示した。図8において、縦軸はカウント数(単位任意)を示し、横軸は束縛(結合)エネルギー(eV)を示す。
図8から、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《実施例2》
真空チャンバー内に導入する酸素ガスの流量を45sccmとし、3mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求め
た。その結果、x値は0.1であった。
また、得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像では、2nm以上の結晶子は認められず、また回折リングもハローパターンを示した。よって、得られたSiOx薄膜は、均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図9に示した。Si2p束縛エネルギーは100eVから102eVの間で3つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)およびSi(2)に帰属され、これらの面積比から、図9に示すとおり、以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図10に示し、充放電サイクル特性を図11に示した。
図11から、本実施例のコイン型電池は、初期には約10mAhという高い容量を発揮した。また、200サイクル経過後も約6.4mAhと、初期の60%以上の容量を維持した。よって、本実施例のコイン型電池は、優れた充放電サイクル特性を有することが
わかった。また、図10から、初期充電容量10.8mAh、放電容量10mAh、不可逆容量0.8mAhと不可逆容量が小さく、充電曲線と放電曲線の電位差が小さかった。よって、本実施例のコイン型電池は、分極特性に優れており、高率充放電特性も優れることがわかった。
さらに、実施例1と同様にX線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《実施例3》
真空チャンバー内に導入する酸素ガスの流量を80sccmとし、2.2mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は1.2であった。
また、得られたSiOx薄膜について実施例1と同様にX線回折測定を行った。得られたX線回折パターンから、非晶質構造のケイ素酸化物からなる負極活物質が得られていることが確認された。
さらに、得られたSiOx薄膜を、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した。得られた透過型電子顕微鏡像では、2nm以上の結晶子は認められず、また回折リングもハローパターンを示した。よって、得られたSiOx薄膜は、均質な非晶質構造が形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図12に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、11.9:1.8:34.7:48.3:3.3であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図13に示し、充放電サイクル特性を図14に示した。
図14から、本実施例のコイン型電池は、初期には約2mAhという容量を発揮し、200サイクル経過後も初期の70%以上の容量を維持しており、優れた充放電サイクル特性を有することがわかった。また、図13から、初期充電容量5mAh、放電容量2mAh、不可逆容量3mAhと不可逆容量が大きく、また充電曲線と放電曲線の電位差が大きいことから、本実施例のコイン型電池は、分極特性に劣ることがわかった。これはSiOx薄膜中の酸素量が多いため、極板抵抗が高くなったためと考えられた。また、初期容量が低いのは、一定の膜厚で製膜を行ったことから、SiOx薄膜中のSi量が低下しているためである。
さらに、実施例1と同様にX線光電子分光法を用い、充放電前、および、1サイクル充放電させた際の放電後のO1s束縛エネルギーを測定した。その結果、充電前の架橋酸素に帰属されるO1s束縛エネルギーは、532eVにピークを有することが観測された。一方、1サイクルの充放電を経験した放電後では、Si−O−Liの生成による非架橋酸素の影響により、530eVにピークがシフトすることがわかった。これは、すなわち、不可逆容量はSi−O−Liの生成に基づくことを意味する。
《比較例1》
酸素ガス代えてArガスを80sccmで真空チャンバー内に導入し、3.1mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行ったところ、検出限界以下であったため、Si薄膜が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図15に示した。Si2p束縛エネルギーは99.8eVに1つのピークを有するのみであった。このピークは、Si(0)に帰属され、以下の関係が得られた。すなわち、Si(0)とSi(4)を接続する中間の結合に帰属されるエネルギーが存在しなかった。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図16に示し、充放電サイクル特性を図17に示した。
図17から、本比較例のコイン型電池は、初期には約12mAhという高い容量を発揮した。しかし、200サイクル経過後には、著しく容量が低下し、充放電サイクル特性の劣化が激しいことがわかった。
この電池を分解すると、集電体である銅箔ごと破断していることが確認された。これは、負極活物質の充放電に伴う体積の膨張に集電体が追随しなかったためと考えられた。
《比較例2》
酸素ガスの流量を90sccmとし、3.5mgの薄膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の負極活物質を得た。
得られたSiOx薄膜について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は1.5であった。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図18に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、3.9:8.2:18:29:42であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図19に示し、充放電サイクル特性を図20に示した。
図20から、本比較例のコイン型電池は、初期には約2mAhという容量を発揮し、200サイクル経過後にも50%以上の容量を維持した。しかし、初期容量および容量維持率が低すぎ、ケイ素化合物の特徴である高容量が得られないことがわかった。
《比較例3》
SiO2粉末とSi粉末とをモル比3:7で混合した。得られた混合物90重量部に対して、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部を加え、N−メチルピロリドンを添加して、ペーストを得た。得られたペーストを厚さ35μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後圧延した後、200℃24時間真空乾燥を行い、塗工型電極を作製した。
得られた塗工型電極について、実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、実施例1と同様にして、X線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図21に示した。Si2p束縛エネルギーは99.5eVおよび103eVに2つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)およびSi(4)に帰属され、以下の関係が得られた。すなわち、Si(0)とSi(4)を接続する中間の結合に帰属されるエネルギーが存在しなかった。
また、上記塗工型電極を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図22に示し、充放電サイクル特性を図23に示した。
図23から、本比較例のコイン型電池は、分極が大きいため、充放電容量を大きく取ることはできないうえ、充放電サイクルを繰り返すと容量が著しく減少したことがわかる。これは、SiO2が不導体であるため、極板の抵抗が高くなったためと考えられる。更に、充放電に関与するSi粒子が、充放電サイクル中に膨張収縮を繰り返す結果、微細化し、集電不良を起こしているものと考えられた。
《比較例4》
基板と冷却板との間に厚さ5mmのポリイミド製板を配置して、上記基板の放熱を抑制した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の負極活物質を得た。
得られた塗工型電極について実施例1と同様にして蛍光X線分析を行い、x値を求めた。その結果、x値は0.6であった。
また、実施例1と同様にしてX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図24に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVの間で5つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)、Si(1)、Si(2)、Si(3)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、45.2:12.4:13.3:0.8:28.3であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記負極活物質を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電特性を図25に示し、充放電サイクル特性を図26に示した。
図26から、本比較例のコイン型電池は、分極が大きいため、充放電容量を大きく取ることはできないうえ、充放電サイクルを繰り返すと容量が著しく減少したことがわかる。これは、SiO2が不導体であるため、極板の抵抗が高くなると同時に、充放電に関与するSi粒子が充放電サイクル中に膨張収縮を繰り返す結果、微細化し集電不良を起こしているものと考えられた。
《比較例5》
真空チャンバー内の圧力を0.005Paに設定し、酸素ガスを導入せずに以下のようにして、負極活物質を作製した。
あらかじめ、単結晶(100)シリコンウェハーをアルゴン中で粉砕した粉末と、アモルファスSiO粉末と、アモルファスSiO2粉末とを、それぞれ17.85g、16.25gおよび10.9gを秤量し(仕込み組成でSiO0.6)、十分混合した後、得られた混合物を加圧成型して得た。
この蒸着源を真空チャンバー内に設置されたカーボン製坩堝中に入れ、電子銃からEB電圧:−9kVおよびEB電流:400mAの条件で電子線を照射し、上記蒸着源を溶解させて銅箔上に蒸着した。
しかしながら、スプラッシュがひどく薄膜は形成されなかった。また、真空チャンバーを開放して上記カーボン製坩堝内を確認すると、金属色の塊とガラス状の塊とが散見された。SiOと推測される褐色の粉末も幾分残っていたが、当該褐色の粉末の量は、当初仕込んだ総量よりもかなり減少していた。また、基板の表面状態が非常に粗くなっており、以降の分析に用いることができなかった。
これは、シリコンウェハーを粉砕して得られた粉末、アモルファスSiO粉末およびアモルファスSiO2粉末の蒸気圧に大きな差があること、SiO2が帯電し易いこと、SiOが昇華性であること、によるものと考えられた。なお、図27は、ケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素の蒸気圧曲線を示す図である。
《比較例6》
市販のSiO(フルウチ化学(株)製の特級グレード、純度:99.99%)90重量部に対して、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部を加え、N−メチルピロリドンを添加して、ペーストを得た。得られたペーストを厚さ35μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥後圧延した後、200℃24時間真空乾燥を行い、塗工型電極を作製した。
実施例1と同様にしてX線光電子分光法によりSi2p束縛エネルギーを測定し、その結果を図30に示した。Si2p束縛エネルギーは98eVから106eVに2つのピークに分離することができた。これらのピークは、低エネルギー側からSi(0)およびSi(4)に帰属され、これらの面積比を、総和を100として算出すると、31:69であった。したがって以下の関係が得られた。
また、上記塗工型電極を用い、実施例1と同様にしてコイン型電池を作製し、実施例1と同様にして、充放電容量を測定した。得られた充放電サイクル特性を図31に示した。 図31から、本比較例のコイン型電池は、Si(4)が多いため、分極が大きかった。また、Si(1)、Si(2)およびSi(3)が存在しないことから、これらとSi(0)とが連続的に結合した体積変化に強い構造が得られておらず、著しいサイクル劣化をしたものと考えられた。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極は、それを用いた電池の高い充放電効率とケイ素活物質の特徴である高い充放電容量を維持しつつ、優れた充放電サイクル特性を有する負極活物質を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る負極活物質のミクロ構造の例を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質のX線回折パターンを示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質の透過電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る負極活物質の回折リングパターンを示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の実施例1のSiOx薄膜を、初期と充放電後にX線光電子分光で測定したときの、O1s束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の実施例3のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例1のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例2のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例3のSiOx粉末塗工極板を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電特性を示す図である。 本発明の比較例4のSiOx薄膜を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の比較例5に用いたケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素の蒸気圧曲線を示す図である。 本発明のSiOx薄膜の充放電過程におけるSi2p束縛エネルギー変化を示す図である。 本発明のSiOx薄膜の充放電過程におけるSi2p束縛エネルギー変化をSiの架橋酸素数別にまとめた図である。 本発明の比較例6に用いた市販SiO粉末を、X線光電子分光で測定したときの、Si2p束縛エネルギーを表した図である。 本発明の比較例6の市販SiO粉末を用いたコイン型電池の充放電サイクル特性を示す図である。 本発明の一実施の形態に係るケイ素酸化物の製造装置の概略図である。 本発明の一実施の形態に係るコイン型リチウムイオン二次電池の概略断面図である。

Claims (10)

  1. リチウムイオンを吸蔵および放出可能なケイ素酸化物を含むリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記ケイ素酸化物が、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する、四面体の単位構造を有し、前記単位構造が不規則に配列した非晶質構造を構成しており、
    前記単位構造における前記4つの頂点に位置する酸素の数をn(n=0、1、2、3または4)として、前記単位構造をSi(n)と表記した場合に、
    前記ケイ素酸化物における前記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(1)〜(3)を満たすこと、
    を特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  2. 前記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(4)を満たすこと、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  3. 前記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(5)を満たすこと、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  4. 前記単位構造の数NSi(n)は、以下の関係式(6)を満たすこと、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  5. 前記ケイ素酸化物は、SiOx(但し、0.1≦x≦1.2)で表されること、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  6. 前記ケイ素酸化物は、SiOx(但し、0.1≦x≦0.6)で表されること、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  7. 前記負極活物質を少なくとも1度充放電した後に、前記ケイ素酸化物のAl−Kα線を用いたX線光電子分光において、O1sエネルギーが530±1eVに観測されること、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  8. 請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質を有する、リチウムイオン二次電池用負極。
  9. リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
    請求項8に記載の負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
    リチウムイオン伝導性を有する電解質と、
    を含むリチウムイオン二次電池。
  10. ケイ素源を溶融してケイ素溶融物を得る工程と、
    前記ケイ素溶融物を、雰囲気温度よりも低い温度を有する基板上に蒸着することによって、中心にケイ素が位置し4つの頂点にケイ素または酸素が位置する四面体の単位構造を有し、かつ前記単位構造が不規則に配列して非晶質構造を構成しているケイ素酸化物で構成された負極活物質を得る工程と、
    を含む方法により得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質。
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