JP5320671B2 - 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池 Download PDF

Info

Publication number
JP5320671B2
JP5320671B2 JP2006328370A JP2006328370A JP5320671B2 JP 5320671 B2 JP5320671 B2 JP 5320671B2 JP 2006328370 A JP2006328370 A JP 2006328370A JP 2006328370 A JP2006328370 A JP 2006328370A JP 5320671 B2 JP5320671 B2 JP 5320671B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
negative electrode
electrode material
value
secondary battery
electrolyte secondary
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006328370A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007188872A (ja
Inventor
亨 布施
美和 古田土
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2006328370A priority Critical patent/JP5320671B2/ja
Publication of JP2007188872A publication Critical patent/JP2007188872A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5320671B2 publication Critical patent/JP5320671B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、非水電解質二次電池用負極材と、この負極材を用いた非水電解質二次電池用負極、並びにこの負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
詳しくは、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた、電極膨張の小さい非水電解質二次電池を提供し得る非水電解質二次電池用負極材及び非水電解質二次電池用負極と、これらを用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池が必要になってきている。特に、ニッケル・カドミウム、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギー密度の高い非水溶媒系リチウム二次電池が注目されてきている。リチウム二次電池の高容量化についても、従来、広く検討されていたが、近年、電池に要求される性能も高度化してきており、更なる高容量化が必要とされている。
リチウム二次電池の負極材料としては、これまで黒鉛などが検討されている。黒鉛はサイクル特性に優れ、電極膨張が小さく、且つ、安価であるために使用されてきた。しかしながら、黒鉛からなる負極材料は理論容量が372mAh/gという限界があり、更なる高容量化は期待出来ない。
そこで、近年は黒鉛負極の代わりに理論容量が大きなリチウムと合金を形成するSi、Sn、Al等の合金系負極の検討がなされている。特にSiは容量が高く、負極としての適用が数多く試みられている。しかしながら、Si系負極はリチウムとの反応時に体積膨張が大きく、Siが微粉化したり、集電体から剥離しやすく、且つ、電解液との反応性が高く、サイクル特性が悪いという欠点がある。
このため、合金系負極の高容量を活かしつつ、電解液との反応性が抑制された、サイクル特性に優れた、電極膨張の小さい負極の実現が求められている。
こうした中で、特許文献1には、Si等を蒸着やスパッタ法で銅箔基板上へ成膜することにより、電気抵抗が低く、集電性が高く、高電圧、高容量で充放電特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献2には、微結晶又は非晶質シリコン薄膜の少なくとも表面に、周期律表4,5,6周期のIIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、IIb族の元素の少なくとも1種を含むことにより、サイクル特性が向上した電極を得ることが記載されている。
また、特許文献3には、微結晶又は非晶質シリコン薄膜に、C,O,N,Ar,Fから選ばれる少なくとも1種を不純物として添加することにより、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献4には、酸化数0価のシリコンと酸化数+IV価のシリコン酸化物の間にシリコン低級酸化物を設けることにより、シリコンとシリコン酸化物間の膨張収縮を緩和させ、サイクル特性の優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
特開平11−135115号公報 特開2003−7295号公報 WO01/56099号公報 特開2005−183264号公報
近年の電池に対する更なる高容量化の必要性の増大に伴い、高容量であるSi系負極材の活用が望まれているが、Si系負極材では以下のような課題がある。
(1) 電解液との反応に伴う不可逆容量が増加し、正極活物質中のリチウムを消費し、結果として電池容量が低下する。
(2) リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴うSi微粉化や集電体からの剥離が生じ、サイクル特性が悪化する。
(3) サイクル中に電解液との反応により、充放電可能な活物質量が減少し、サイクル特性が悪化する。
(4) サイクル中にリチウムの挿入による電極膨張が蓄積し、電池体積の増加、つまり体積当たりの電池容量の低下を招く。
従って、リチウム二次電池の更なる高容量化においては、Si系負極材を用いることによる高容量化だけでなく、電解液との反応を抑制し、初期及びサイクル中の充放電効率の向上、サイクル特性の向上、サイクル後の電極膨張の増加を抑制することが強く求められている。
このような状況において、前述の特許文献1〜4では、それぞれ次のような課題があった。
即ち、特許文献1に記載される、Siを蒸着法やスパッタ法で成膜した負極の場合、電解液との反応性が著しく、充放電に伴う電極膨張の蓄積を抑えることが難しく、体積当たりの電池容量が低下する問題や、サイクル特性が低下する問題がある。
特許文献2においては、Si薄膜の少なくとも表面に、周期律表4,5,6周期のIIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、IIb族の内の少なくとも1種を含むことで、Si薄膜よりもサイクル特性を改善することはできるが、電解液との反応性の抑制は不十分であり、サイクル特性に未だ課題が残る。
特許文献3のように、Si薄膜にC,O,N,Ar,Fの内の少なくとも1種を添加することで、Si薄膜よりもサイクル特性は改善できるが、添加量が少なく電解液との反応性の抑制は不十分であり、サイクル特性に未だ課題が残る。
また、特許文献4のように、リチウムを吸蔵・放出するSiに、膨張抑制材のSiOと親和性を上げるためのSiO(0<x<2)を含むことで、Siよりもサイクル特性は改善できるが、酸化数0価のSiが主活物質であるために、電解液との反応性の抑制は不十分であり、サイクル特性に未だ課題が残る。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものである。
即ち、本発明は、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた、電極膨張の小さい非水電解質二次電池を提供し得る非水電解質二次電池用負極材及び非水電解質二次電池用負極と、これらを用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、Siを含む負極材について鋭意検討した結果、膨張収縮に伴う導電パス切れ以外の要因として、サイクル中にSiと電解液が反応することで劣化が進行することが明らかとなり、電解液との反応性を抑制するには、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、且つ、次の(イ)及び(ロ)の要件、又は(ハ)の要件、好ましくはこれらすべての要件を満たす場合、後述するSiの活量を効果的に低下させ、電解液との反応性を抑制し、放電容量が高く、サイクル特性に優れた高性能の非水電解質二次電池を安定して効率的に実現し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
(イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
(ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20%以下である。
(ハ)該負極材をアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
ここで、活量について説明する。
一般に、活量とは、一種の熱力学濃度である。物質量n、n、、、、、からなる多成分系について、成分iの化学ポテンシャルをμ、純物質の化学ポテンシャルをμ とすると、
μ−μ =RTlog a
で定義されるaを活量と呼ぶ。
また、活量aiと濃度ciの比γi
ai/ci=γi
を活量係数と呼ぶ。
例えば、溶媒と溶質からなるある系を熱力学的な溶液として考えた場合に、活量係数は、系を理想溶液と考えた場合のある成分の化学ポテンシャルと、系を実在溶液と考えた場合のある成分の真の化学ポテンシャルとの差に対応する量である。(1)ある成分iが溶質である実在溶液の場合、溶質の濃度が低くなると、系は成分iが溶質の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。反対に、(2)ある成分iが溶媒である実在溶液の場合、溶媒の濃度が高くなると、系は成分iが溶媒の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。また、成分iの化学ポテンシャルが、実在溶液の方が理想溶液よりも安定なときはγi<1となる。
本発明においては、成分iはSiであり、溶媒とみなされるSi中に、溶質とみなされる元素Aを含むことで溶媒Siの活量aiが低下し、γi<1となり、元素Aを含有したSi化合物(固溶体:実在溶液と見なす)の方がSi(理想溶液と見なす)よりも安定となり、この結果、電解液との反応性が抑制されていると考えられる。
但し、Si中にSiと元素Aの平衡的に存在する化合物Si等を形成すると、Siの活量を効率的に低下させることができないので、元素AはSi中に非平衡的に存在することが重要となる。
ここで言う、平衡的に存在する化合物とは、Siと元素Aの相図(例えば、ASM International社出版の「Desk Handbooks Phase Diagrams for Binary Alloys」)等に線図の頂として記載されている化合物Si(式中a,pは整数)等の定比化合物のことである。例えば、AがCである場合には、SiCが安定な化合物として知られており、本発明に於いてはこの化合物を平衡的に存在する化合物とする。
また、例えば、AがNである場合には、Siが最も安定な化合物として知られているが、Si、SiNも定比化合物として存在することが知られており、本発明に於いてはこれら全ての化合物を平衡的に存在する化合物とする。
一方、非平衡に存在する化合物とは、平衡的に存在する化合物以外の化合物を指す。非平衡に存在する化合物の場合には、特定の定比化合物を殆ど形成せず、Si原子とA原子がマクロに見ると均一に分散している。
また、ここで、本発明のX線光電子分光法分析によるP(0)値、Ps値、P(+IV)値について説明する。
P(0)値、Ps値、P(+IV)値は後述の様に定義されるが、P(0)値は酸化数0価のSi原子の存在割合を、Ps値は酸化数0〜+IV価の間のSi原子の存在割合を、P(+IV)値は酸化数+IV価のSi原子の存在割合を示す。
ここで、一般に、酸化数とは、対象原子の電子密度が単体である時と比較してどの程度であるかを知る目安の値であり、ある原子が酸化状態にある場合、酸化数は正の値をとり、その絶対値が大きいほど電子不足の状態にあることを示す。
例えば、Si単体は本発明のP(0)値がほぼ100となり、多くのLiと結合することが可能で高い放電容量を得ることができるが、電解液との反応性は抑制できない。
また、例えば、SiOは、本発明のP(+IV)値が100に近くなり、可逆的にLiと結合することが難しくなり、高い放電容量と充放電効率を得ることが出来ない。
また、例えば、Si単体(0価)とSiO(+IV価)との混合物の場合、単なる混合物であるために、両者の欠点を補うことが出来ない。
なお、本発明における負極材のX線光電子分光法分析によるXPSのP(0)値、Ps値、P(+IV)値とは、以下のX線光電子分光法分析から求められ、次のように定義される。
[XPS測定方法]
X線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、本発明の非水電解質二次電池用負極材の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施する。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)等のスペクトルを得る。帯電補正は、アルゴンイオンスパッタにより、試料表面に打ち込まれたArのピークを基準(若しくは不純物等として検出されるC1sのピークトップを284.5eV)とし、Si2p、C1s、N1s、O1s等のスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C、N、O等の原子濃度をそれぞれ算出し、負極材の原子濃度比Si/C/N/O(Si原子濃度/C原子濃度/N原子濃度/O原子濃度)を求める。
〈Ps値、P(0)値、P(+IV)値の定義〉
XPS測定法によって得られたSi2pピークを、データ解析ソフト(Multipak)を用い、実施例の項で後述する方法でピーク分離を行い、Ps値、P(0)値、P(+IV)値を求め、次の様に定義する。
Ps値
=(+I、+II、+III価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
P(0)値
=(0価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
P(+IV)値
=(+IV価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
また、ここで、本発明におけるアルカリ水溶液によるエッチング処理について説明する。
Siのアルカリ水溶液によるエッチング処理時の反応式は、下記の通りであり、Siが水酸基と反応(Siが酸化)し、水酸化物として溶出し、Siはエッチング(重量が減少)される。
Si+2HO+2OH→2H+SiO(OH) 2−
一方、電解液とSiとの反応の詳細は不明であるが、充放電サイクルの繰り返しにより、Siが反応することが判っており、サイクル特性を向上させる為には電解液との反応(Siの酸化)の抑制が重要となる。
従って、電解液との反応性を抑制するには、Siがアルカリ水溶液にエッチング(酸化)され難いほど有利であると考えられるからである。
なお、本発明における負極材のアルカリ水溶液エッチング時の収率EY値とは、以下のアルカリ水溶液エッチング法分析から求められ、次のように定義される。
[アルカリ水溶液エッチング法]
エッチング液は、アルカリとして水酸化リチウム(例えば、和光純薬社製「水酸化リチウム一水和物 和光特級」)を用い、純水にて溶解し、0.5M水酸化リチウム水溶液として用いる。エッチング処理は、エッチング液を70℃に加温し、負極材を20分間エッチング液に浸漬し、その後純水にて付着しているアルカリを洗浄して行う。エッチング処理前後の重量から下記式によりエッチング収率を算出し、負極材をアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値と定義する。
収率EY=エッチング後負極材重量/エッチング前負極材重量 ×100
なお、エッチングに用いる負極材は、薄膜状、粉末状の形態であり、各々、次のようにして処理が行われる。
(薄膜状負極材)
エッチングに用いる負極材が薄膜状(シート状)の場合、例えば、シート面積10〜50cm程度に対し、エッチング液150mlを用いる。また、集電体上に形成されたシートの場合は、エッチング液に浸漬しても重量変化の殆ど無い集電体等であれば、集電体等と共にエッチングしても良い。
(粉末状負極材)
エッチングに用いる負極材が粉末状の場合、比表面積1〜30m/gの負極材であれば、その約1g程度に対し、エッチング液150mlを用いる。
本発明の要旨は、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、次の(イ)及び(ロ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材(請求項1)、に存する。
(イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
(ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20以下である。
また、本発明の別の要旨は、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、次の(ハ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材(請求項2)、に存する。
(ハ)該化合物を、70℃の0.5M水酸化リチウム水溶液を用いて20分間エッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
また、本発明の別の要旨は、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、前記(イ)及び(ロ)の要件と前記(ハ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材(請求項3)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材において、前記化合物に対して、黒鉛が15wt%〜95wt%含有されていることを特徴とする非水電解質二次電池用負極材(請求項4)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、負極活物質が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用負極(請求項5)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池(請求項6)、に存する。
本発明によれば、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた電極膨張の小さい高性能の非水電解質二次電池を安定して効率的に実現することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[1]非水電解質二次電池用負極材
本発明の非水電解質二次電池用負極材は、次の(1),(2),(3)のいずれかである。
(1)Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする非水電解質二次電池用負極材であって、以下の(イ)及び(ロ)の要件を満たす。
(2)Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする非水電解質二次電池用負極材であって、以下の(ハ)の要件を満たす。
(3)Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする非水電解質二次電池用負極材であって、以下の(イ)及び(ロ)の要件と以下の(ハ)の要件を満たす。
(イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
(ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20%以下である。
(ハ)該負極材をアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
以下において、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材を「本発明の負極材」と称す場合がある。
本発明の負極材を負極活物質として用い、集電体上にこの負極活物質を含む層を設けたものが「本発明の負極」である。
このような本発明の負極材は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極活物質として極めて有用である。例えば、負極活物質として本発明の負極材を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、またサイクル特性に優れ、電極膨張が小さく、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
[負極材のPs値、P(0)値、P(+IV)値]
〈条件(イ):Ps値とP(+IV)値〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、X線光電子分光法分析によるPs値は、通常70以上、好ましくは80以上、更に好ましくは90以上であり、P(+IV)値は、通常、実質的に0である。Pz値とP(+IV)値がこの範囲外であると、0価及び/又は+IV価のSiが多くなり、電解液との反応性を抑制し難くなり、良いサイクル特性が得られなかったり、放電容量や充放電効率が小さくなる問題がある。なお、Ps値の上限は100である。
ここで、P(+IV)値が実質的に0であると言うことは、+IV価のSiが殆ど存在しないことを意味し、P(+IV)値が3未満程度を指す。
〈条件(ロ):Ps値とP(0)値〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、X線光電子分光法分析によるPs値は、通常70以上、好ましくは80以上、更に好ましくは90以上であり、P(0)値は、通常20以下、好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。Pz値とP(0)値がこの範囲外であると、0価及び/又は+IV価のSiが多くなり、電解液との反応性を抑制し難くなり、良いサイクル特性が得られなかったり、放電容量や充放電効率が小さくなる問題がある。
[負極材の収率EY値]
〈条件(ハ):エッチング時の収率EY値〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値は、通常75wt%以上、好ましくは80wt%以上、更に好ましくは85wt%以上、特に好ましくは95wt%以上である。EY値がこの範囲を下回ると、Siと電解液の反応を抑制する効果が小さく、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い。なお、EY値の上限値は通常100wt%である。
[化合物の組成]
〈化合物中の元素A〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、元素AはSi以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上であり、好ましくは、周期律表4族、5族、6族、8族、9族、13族、14族、15族、及び16族よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素であり、より好ましくは、B、C、N、O、P、及びS元素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはC、N、及びO元素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、特に好ましくはC及び/又はN元素である。
〈負極材中の元素Aの割合〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、元素Aの濃度は、通常5at%以上、好ましくは7.5at%以上、更に好ましくは15at%以上、特に好ましくは20at%で、通常50at%未満、好ましくは43at%以下、更に好ましくは38at%以下、特に好ましくは33at%以下である。
なお、元素Aに2種類の元素を同時に用いる場合、2種の元素のそれぞれの濃度を求め、その合計値を元素Aの濃度とみなす。
負極材の組成は、例えば、後述の実施例に示す如く、X線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、負極材の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を行い、Si、元素A等の原子濃度をそれぞれ算出することで求めることができる。
〈負極材中の元素Aの存在状態〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、元素Aの存在状態は、後述のX線回折測定において、XIsa値が通常1.20以下、好ましくは0.70以下である。XIsa値がこの範囲以下であれば、元素AがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とし、平衡的に存在する化合物は主成分でないと定義し、好ましい。XIsa値がこの範囲を上回る場合、即ち、平衡的に存在する化合物の相が主成分となる場合には、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化する虞がある場合もある。XIsa値の下限値は通常0.00以上である。
[X線回折測定法]
X線回折測定における負極材のXlsa値は、例えば、本発明の負極材を照射面にセットし、X線回折装置(例えば、リガク社製「X線回折装置」)を用いて測定することができ、測定条件については後述の実施例において示す通りである。
X線回折により測定したXIsa値は、元素Aが炭素Cの場合、特に制限されないが、好ましくは1.20以下、更に好ましくは0.70以下であり、元素Aが窒素Nの場合、好ましくは1.10以下、更に好ましくは1.00以下である。XIsa値がこの範囲を上回る場合、即ち、元素AがCの場合は炭化珪素、Nの場合は窒化珪素の生成が多い場合には、活物質の単位重量当たりの放電容量が小さくなる場合がある。
なお、化合物のXIsaは次のようにして定義される。
〈元素Aが炭素Cである場合のXIsa値〉
2θが35.7度のピーク強度Isc、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsa(XIsa=Isc/Is)を算出し、負極材のXIsaと定義する。
ここで、2θが35.7度のピークはSiCに由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsa値が1.20以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
〈元素Aが窒素Nである場合のXIsa値〉
2θが70.2度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsa(XIsa=Isz/Is)を算出し、負極材のXIsaと定義する。
ここで、2θが27.1度と28.4度のピークは、Siとシリコン由来によるピークと考えられ、XIsa値が1.10以下であるということは、Siが殆ど検出されないことを意味する。
〈元素Aの分布状態〉
Si中に元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材において、元素Aは、例えば、原子、若しくは分子、或いはクラスター等、1μm以下の大きさのレベルで存在する。後述する薄膜状負極材の場合、元素Aの分布状態は、好ましくは、化合物中の厚み方向、及び、面内方向(厚み方向に対して垂直な方向)に均一に分布しており、更に好ましくは、化合物中の面内方向に均一に分布している。元素Aの分布が活物質の面内方向において不均一で、局所的に存在している場合、元素Aの存在しないSi部分で電解液との反応が集中的に起きるため、サイクル特性が悪化する虞のある場合もある。元素Aの分散状態は、後述の実施例に示す如く、EPMA等で確認できる。
〈元素Aが炭素Cである場合のラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値〉
元素Aが炭素Cの場合、本発明の負極材について、ラマン法により測定したラマンRC値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。ラマンRC値がこの範囲を上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い場合もある。ラマンRC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
元素Aが炭素Cの場合、ラマン法により測定したラマンRSC値は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。ラマンRSC値がこの範囲を上回ると、導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり充放電ができなくなる虞のある場合もある。ラマンRSC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
元素Aが炭素Cの場合、ラマン法により測定したラマンRS値は、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上で、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.65以下である。ラマンRS値がこの範囲を下回ると、サイクル特性が悪化する可能性がある場合もある。ラマンRS値がこの範囲を上回ると、充放電できない可能性がある場合もある。
なお、本発明の負極材のラマンスペクトル分析によるラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値とは、以下のラマン測定方法によるラマンスペクトル分析から求められ、各々、次のように定義される。
(ラマン測定方法)
ラマン分光器(例えば、日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、本発明の負極材を測定セルにセットし、試料を回転させながらセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射し測定を行う。測定したラマンスペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、ラマンRC値、RSC値、RS値を求める。なお、バックグラウンド補正は、ピーク終始点を直線で結び、バックグラウンドを求め、その値をピーク強度から差し引くことで行う。
ここでラマン測定条件は次の通りであり、スムージング処理は、コンボリューション15ポイントの単純平均とする。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm−1
測定範囲:200cm−1〜1900cm−1
露光時間:30〜300sec
積算回数:3回
(定義)
・ラマンRC値
1300cm−1〜1600cm−1付近に現れるピークcのピーク強度Ic、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RC(RC=Ic/Ias)を算出し、負極材のラマンRC値と定義する。
ここで、ピークcとピークasは、それぞれ炭素とシリコン由来によるピークと考えられ、従って、ラマンRC値は炭素の量を反映したものであり、ラマンRC値が2.0以下であるということは、炭素が殆ど検出されないことを意味する。
・ラマンRSC値
650cm−1〜850cm−1付近に現れるピークscのピーク強度Isc、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RSC(RSC=Isc/Ias)を算出し、負極材のラマンRSC値と定義する。
ここで、ピークscとピークasは、それぞれSiCとシリコン由来によるピークと考えられ、従ってラマンRSC値はSiCの量を反映したものであり、ラマンRSC値が0.25以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
・ラマンRS値
520cm−1の強度Is、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RS(RS=Is/Ias)を算出し、負極材のラマンRS値と定義する。
ラマンRS値は、Siの状態を反映したものである。
〈形態〉
本発明の負極材の形態は、薄膜状若しくは粉末状として用いられる。
[薄膜状負極材]
〈構造〉
本発明において、集電体上に成膜された薄膜状負極材の構造としては、例えば、柱状構造、層状構造等が挙げられる。以下、薄膜状負極材を用いた負極を「薄膜負極」と称す場合がある。
〈膜厚〉
薄膜状負極材の膜厚は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。薄膜状負極材の膜厚がこの範囲を下回ると、本発明の薄膜負極の1枚当たりの容量が小さく、大容量の電池を得るには数多くの負極が必要となり、従って、併せて必要な正極、セパレータ、薄膜負極自体の集電体の総容積が大きくなり、電池容積当たりに充填できる負極活物質量が実質的に減少し、電池容量を大きくすることが困難になる場合もある。一方、この範囲を上回ると、充放電に伴う膨張・収縮で、薄膜状負極材が集電体基板から剥離する虞があり、サイクル特性が悪化する可能性がある場合もある。
[粉末状負極材]
〈体積基準平均粒径〉
本発明の粉末状負極材の体積基準平均粒径は、特に制限されないが、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。粉末状負極材の体積基準平均粒径がこの範囲を下回ると、粒径が小さすぎるため、粉末状負極材間の導電パスや、粉末状負極材と後述の導電剤や負極材Bとの間の導電パスが取り難くなり、サイクル特性が悪化する虞のある場合もある。一方、この範囲を上回ると、後述の如く塗布により集電体上に負極活物質層を製造する時にむらが生じ易い場合もある。
体積基準平均粒径としては、測定対象に界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2体積%水溶液(約1ml)を混合し、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920」)にて、体積基準の平均粒径(メジアン径)を測定した値を用いることができる。後述の実施例では、この方法により体積基準平均粒径を求めた。
〈BET比表面積〉
本発明の粉末状負極材のBET比表面積は、特に制限されないが、通常は0.5m/g以上、好ましくは1.0m/g以上、また、通常は50m/g以下、好ましくは30m/g以下、更に好ましくは10m/g以下の範囲である。BET比表面積の値がこの範囲の下限を下回ると、負極に用いた場合、電池の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなり易く、リチウムが電極表面で析出し易くなるため、安全上好ましくない場合もある。一方、BET比表面積の値がこの範囲の上限を上回ると、負極とした時に電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなり易く、好ましい電池が得られ難い場合もある。
BET比表面積としては、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、粉末状負極材に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値を用いることができる。
〈タップ密度〉
本発明の粉末状負極材のタップ密度は、特に制限されないが、通常0.2g/cm以上、好ましくは0.3g/cm以上、更に好ましくは0.5g/cm以上、また、通常3.5g/cm以下、好ましくは2.5g/cm以下の範囲である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極活物質層の充填密度を上げ難く、高容量の電池を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると、電極中の気孔量が少なくなる虞があり、好ましい電池特性を得難い場合もある。
タップ密度としては、例えば、目開き300μmの篩を使用し、20cmのタッピングセルに粉末状負極材を落下させてセルを満杯に充填した後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いてストローク長10mmのタッピングを1000回行ない、その時のタッピング密度を測定した値を用いることができる。
[製造方法]
本発明の負極材の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下に挙げる製造法などによって製造することができる。
〈原料〉
化合物の原料(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のうち、Si原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi、シリコン化合物(窒化珪素、炭化珪素等)等を用いることができる。元素Aの原料としては、元素Aの単独体や元素Aを含む化合物を用いることができる。例えば、元素Cの原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭化物等を、元素Nの原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、元素Cの原料としては、Cを含むガス(CO、CH、C、C等)を、元素Nの原料としては、Nを含むガス(NH、N等)を用いることができる。
Si及びA原料としては、Si及び元素Aを組み合わせた単一の化合物(若しくは元素)を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
また、これらSi、A原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
〈方法〉
化合物の製造方法としては、薄膜状負極材と粉末状負極材の製造方法がある。
〈薄膜状負極材の製造方法〉
(製造法1)
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(i)〜(vii)のいずれか一つを用い、Siと元素Aを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
(i)Si、元素Aの組成物
(ii)Si、元素Aの混合物
(iii)Si、元素A単独体(各々の単独体は、それぞれの元素を含むガスでも良い。)
(iv)Si、元素Aを含むガス
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。元素A原料としては、化合物組成の元素Aの項で記述した元素であれば、2種以上の複数の元素を同時に用いることもできる。
原料のうち、(i)Si、元素Aの組成物としては、Si、及び元素Aを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、又は、複数の化合物として用いても良い。
これらSi、元素A原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
薄膜状負極材は、以下に詳述される
A:スパッタリング
B:真空蒸着
C:CVD
D:イオンプレーティング
E:溶射法(フレーム溶射法、プラズマ溶射法)
の少なくとも1つによって形成され得る。
A.スパッタリング
スパッタリングでは、減圧下で、プラズマを利用して上記原料よりなるターゲットから発せられた負極材料を集電体基板に衝突、堆積させて薄膜を形成する。スパッタリングによると、形成した薄膜状負極材と集電体基板との界面状態が良好であり、集電体に対する薄膜状負極材の密着性も高い。
ターゲットに対するスパッタ電圧の印加方法としては、直流電圧、交流電圧のいずれも用いることができる。その際、集電体基板に実質的に負のバイアス電圧を印加して、プラズマからのイオンの衝突エネルギーを制御することも可能である。
薄膜形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。化合物中の元素AがNの場合、前記不活性ガス中に微量の窒素ガスとして共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
スパッタリングにより薄膜状負極材を形成する際の集電体基板は、水冷やヒーター等により温度を制御することもできる。集電体基板の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
スパッタリングによる薄膜状負極材の形成における成膜速度は、通常0.01〜0.5μm/分である。
薄膜状負極材形成前に、逆スパッタや、その他のプラズマ処理などの前処理により、集電体基板表面をエッチングすることができる。このような前処理は、集電体基板としての銅箔表面の汚染物や酸化膜の除去、薄膜状負極材の密着性の向上に有効である。
B.真空蒸着
真空蒸着では、負極材となる上記原料を溶融・蒸発させて、集電体基板上に堆積させる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて高い成膜速度で薄膜を形成できる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて、所定膜厚の薄膜状負極材の形成時間の短縮を図る観点から製造コスト面で有利に活用することができる。その具体的な方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法などを挙げることができる。誘導加熱法では黒鉛等の蒸着坩堝を誘導電流により、抵抗加熱法では蒸着ボートなど通電した加熱電流により、電子ビーム加熱蒸着では電子ビームにより、それぞれ蒸着材料を加熱溶融し、蒸発させて成膜する。
薄膜形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
真空蒸着により薄膜状負極材を形成する際の集電体基板は、ヒーター等により温度を制御することもできる。集電体基板の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
真空蒸着による薄膜状負極材の形成における成膜速度は、通常0.1〜100μm/分である。
スパッタリングの場合と同様に、集電体基板上に薄膜状負極材を堆積させる前に、イオンガンなどでイオン照射をすることにより集電体基板表面にエッチング処理を施しても良い。このようなエッチング処理により、基板と薄膜状負極材との密着性を更に高めることができる。薄膜を形成する間に、集電体基板にイオンを衝突させることにより、集電体基板に対する薄膜状負極材の密着性を更に向上させることもできる。
C.CVD(Chemical Vapor Deposition)
CVDでは、化合物となる上記原料を気相化学反応により集電体基板上に堆積させる。一般にCVDは、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、cat−CVDなどを挙げることができる。熱CVDでは、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ薄膜を形成する。プラズマCVDは、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いる。光CVDは、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いる。cat−CVDは、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより薄膜を形成する。
CVDで用いられる元素Si源としてはSiH、SiCl等であり、元素A源としてはNH、N、BCl、CH、C、C等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
D.イオンプレーティング
イオンプレーティングでは、負極材となる上記原料を溶融・蒸発させ、プラズマ下で蒸発粒子をイオン化及び励起することで、集電体基板上に強固に成膜させる。具体的には、原料を溶融・蒸発させる方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法等を挙げることができ、イオン化及び励起する方法としては、活性化反応蒸着法、多陰極熱電子照射法、高周波励起法、HCD法、クラスターイオンビーム法、マルチアーク法等を挙げることができる。また、前記原料を蒸発させる方法とイオン化及び励起する方法は適選組み合わせて行なうことができる。
E.溶射法
溶射法では、負極材となる上記原料を加熱により溶融若しくは軟化させ、微粒子状にして加速し集電体基板上に粒子を凝固・堆積させる。その具体的な方法としては、フレーム溶射法、アーク溶射法、直流プラズマ溶射法、RFプラズマ溶射法、レーザー溶射法等を挙げることができる。
蒸着法の高い成膜速度の利点と、スパッタリングの集電体基板への強い成膜密着性の利点を利用し、例えば、スパッタリングにより第1の薄膜層を形成し、その後蒸着法により高速に第2の薄膜層を形成することにより、集電体基板との密着性が良好になる界面領域を形成すると共に、高い成膜速度で薄膜状負極材を形成することができる。このような成膜方法のハイブリッドな組合せ手法により、充放電容量が高く、且つ充放電サイクル特性に優れた薄膜負極を効率的に製造することができる。
スパッタリングと蒸着法を組み合わせて薄膜状負極材を形成することは、減圧雰囲気を保ちつつ連続的に行われることが好ましい。これは、大気に暴露することなく連続的に第1の薄膜層と第2の薄膜層とを形成することによって、不純物の混入を防止できるからである。例えば、同一の真空環境の中で、集電体基板を移動させながら、スパッタ及び蒸着を順次行うような薄膜形成装置を用いることが好ましい。
集電体基板の両面に薄膜状負極材を形成する場合、集電体基板の一方の面に対する薄膜状負極材層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成と、集電体基板の他方の面に対する薄膜状負極材層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成とは、減圧雰囲気を保持したまま連続して行うことが好ましい。
(製造法2)
負極材において、元素Aが炭素Cである場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(i)〜(iv)のいずれか一つを用い、SiとCとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
(i)Si、Cの組成物
(ii)Si、Cの混合物
(iii)Si、C各々の単独体(各々の単独体は、それぞれの元素を含むガスでも良い。)
(iv)Si、Cを含むガス
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。C原料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いることができる。
原料のうち、(i)Si、Cの組成物としては、Si、Cを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、又は、複数の化合物として用いても良い。
また、これらSi、C原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
成膜には、A:スパッタリング、B:真空蒸着、C:CVDが採用される。
A.スパッタリング
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。負極材中の元素Aが炭素Cに酸素Oを含む場合、前記不活性ガス中に微量の酸素ガスを共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
B.真空蒸着
真空蒸着の雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。また、負極材中の元素Aが炭素Cに酸素Oを含む場合、それぞれ微量の酸素ガスを不活性ガスと一緒に導入しながら減圧にし、真空下で同時にSi/C/Oを形成することも可能である。
C.CVD
CVDで用いられる原料ガスは、元素Si源としてはSiH、SiCl等であり、元素C源としてはCH、C、C等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
成膜ガス中の酸素濃度は、例えば、四極子マスフィルタを用い、成膜ガスのマススペクトルを分析することで求めることができる。酸素ガスが共存しているアルゴンガスを成膜ガスとして用いる場合には、そのアルゴンガスを酸素分析計で測定することで求めることもできる。
(製造法3)
元素Aが窒素Nである負極材の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(I)〜(IV)のいずれか一つを用い、成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度が1〜22%である雰囲気下にて、SiとNを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さにする。
(I)Si単独体
(II)Siを含む組成物
(III)Siを含む混合物
(IV)Siを含むガス
原料である蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。成膜ガス中のNとしては、窒素等のN元素含有ガスを単独又は不活性ガスとの組み合せで用いる。
これらSi等の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。窒素ガスは、Si成膜中に原料ガスとして共存させることが製造上好ましい。
成膜法としては、前述の製造法1と同様な成膜法を用いることができる。
蒸着、スパッタ、又は溶射時の成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度は通常1%以上で、通常22%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。成膜ガス中に含まれる窒素濃度がこの範囲を上回ると、SiN薄膜中の元素N量が多くなり、充放電に関与しない窒化珪素が生成し、放電容量の低下を招く場合がある。窒素濃度が少な過ぎるとNを含有したSiN薄膜を成膜し得なく、且つ、サイクル特性の低下を招く場合がある。
成膜ガス中の窒素濃度は、例えば、四極子マスフィルタを用い、成膜ガスのマススペクトルを分析することにより求められる。
〈粉末状負極材の製造方法〉
粉末状負極材は、以下に詳述される
F:ガス拡散法
G:固相拡散法
H:イオン化拡散法
I:メカニカルアロイング拡散法
J:気相成膜粉砕法
K:溶融塩法
の少なくとも1つによって形成され得る。
(製造法4)
Siを含む粉末粒子表面に元素Aを反応させ、粉末粒子内部に元素Aの拡散層を形成する製造方法について以下に述べる。
元素Aの拡散層を形成する方法としては、次のF〜Iの製造方法が挙げられる。
F.ガス拡散法
ガス拡散法は、元素Aを含むガス雰囲気下で、Siを含む粉末粒子を加熱処理することにより、Si粉末粒子中に元素Aを拡散させる方法である。
G.固相拡散法
固相拡散法は、Siを含む粉末粒子と元素Aを含む粒子を接触させた状態で、真空下、若しくはAr等の不活性雰囲気下で加熱処理することにより、Si粉末粒子中に元素Aを拡散させる方法である。
H.イオン化拡散法
イオン化拡散法は、Siを含む粉末粒子に、プラズマ等によりイオン化した元素Aを照射し、Siを含む粉末粒子中に元素Aを拡散させる方法である。
I.メカニカルアロイング拡散法
メカニカルアロイング拡散法は、Siを含む粉末粒子と元素Aを含む粒子を真空下、若しくは不活性雰囲気下でメカニカルアロイングすることにより、Si粉末粒子中に元素Aを拡散させる方法である。
(製造法5)
Si、及び元素Aを含む原料を用いて、基体上に蒸着、CVD、スパッタ等により気相成膜し、得られた膜を粉砕する製造方法について以下に述べる。
J.気相成膜粉砕法
気相成膜粉砕法としては、化合物の気相成膜方法に上記製造法1のA〜Dと同様な気相成膜法を用いる。但し、成膜する時に集電体基板の代わりに、SUS、銅、アルミニウム等の金属や、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス等よりなる基体を用い、基体上に成膜された化合物を剥離し、更に粉砕、必要に応じて分級処理することで粉末状負極材を得る。
粉砕に用いる装置について特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)等を用いることができ、湿式篩い分けの場合:機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
(製造法6)
Si、及び元素Aを含む溶融塩を、電解する製造方法について以下に述べる。
K.溶融塩法
溶融塩法としては、Siと元素Aを含む溶融塩をプラズマ誘起によりカソード電解し、粉末状負極材を得る製造方法が挙げられる。原料としては、Siを含有する塩と元素A含有する塩を用いることができる。
[2]非水電解質二次電池用負極
本発明の非水電解質二次電池用負極は、負極活物質として本発明の負極材を用いたものであり、一般的には、集電体上に本発明の負極材を含む負極活物質層を導電性が確保されるように設けてなるものである。また、負極材の形態としては薄膜状と粉末状があり、薄膜状は、集電体上に気相成膜等を用いて直接活物質層を設けてなるものであり、粉末状は、集電体上にバインダーや導電助剤等を加えて塗布等により活物質層を設けてなるものである。
このような本発明の負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極として極めて有用である。例えば、本発明の負極を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、またサイクル特性に優れ、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
[粉末状負極活物質]
本発明の粉末状負極活物質には、本発明の粉末状負極材を用いるが、本発明の効果を妨げない限り、粉末状負極活物質に本発明の粉末状負極材以外の負極材(以下「負極材B」と称す。)を含んでも良い。負極材Bを用いる場合、負極材Bはリチウムイオンを充放電可能であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、球形化黒鉛等)、人造黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ等)のグラファイト類、ピッチや樹脂等を焼成した非晶質炭素類、黒鉛と非晶質炭素を複合化した多相構造材料類、アルミニウム、錫などの金属類、SiOなどの酸化物類が挙げられる。
これらの負極材Bのなかで、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛と非晶質炭素を複合化した多相構造材料が、現在工業的に一般に使用されており、コストが安く、扱い易いため、好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
負極材Bの添加量は、特に限定されないが、本発明の負極材に対して、通常15wt%以上、好ましくは30wt%以上、更に好ましくは40wt%以上、特に好ましくは50wt%以上、また、通常95wt%以下、好ましくは90wt%以下、更に好ましくは85wt%以下である。
[集電体]
集電体としては、例えば、金属円柱、金属コイル、金属板、金属箔膜、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱などが用いられる。この中でも特に金属箔膜が、現在工業化製品に使用されているために好ましい。なお、金属薄膜は適宣メッシュ状にして用いても良い。
金属箔膜の厚さは、特に限定はされないが、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下である。上記範囲よりも薄い金属箔膜の場合、集電体として必要な強度が不足する場合がある。
また、集電体に用いられる金属としては、具体的には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム等が挙げられる。この中でも、好ましくは銅及びニッケルが挙げられ、更に好ましくは銅が挙げられる。これは、負極活物質を結着させることが容易で、工業的に、形、大きさ等の加工が容易なためである。
[物性]
〈充填密度〉
負極活物質層の充填密度は、特に制限されないが、通常0.5g/cm以上、好ましくは0.7g/cm以上、また通常2.5g/cm以下、好ましくは2.0g/cm以下である。負極活物質層の充填密度がこの範囲を下回ると、高容量の電池を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると電極中の気孔量が少なくなる虞があり、好ましい電池特性を得難い場合もある。
なお、負極活物質層の充填密度としては、集電体を除く負極重量を、負極面積と負極厚みで除して求めた値を用いることができる。
〈空隙率〉
負極の空隙率は、特に制限されないが、通常10%以上、好ましくは20%以上、また通常50%以下、好ましくは40%以下である。負極の空隙率がこの範囲を下回ると、負極中の気孔が少なく電解液が浸透し難くなり、好ましい電池特性を得難い。一方、この範囲を上回ると、負極中の気孔が多く電極強度が弱くなりすぎて、好ましい電池特性を得難い。
なお、負極の空隙率としては、負極の水銀ポロシメータによる細孔分布測定によって得られる全細孔容積を、集電体を除いた負極材活物質層の見掛け体積で割った値の百分率を用いることができる。
〈膜厚〉
負極活物質層の膜厚は、薄膜状負極活物質(薄膜負極)の場合は前述の通りであるが、粉末状負極活物質の場合、特に限定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、また上限は、通常100μm以下、好ましくは90μm以下、更に好ましくは80μm以下とすることができる。
[構造及び製造方法]
負極の構造及びその製造方法としては特に制限はないが、例えば、負極の構造としては
(1)本発明の負極材粉末を含む負極活物質と、必要に応じて用いられる導電剤と、結着及び増粘効果を有する有機物(以下「結着剤」と称す。)を集電体上に塗布した構造
(2)本発明の負極材粉末を含む負極活物質が導電性物質と複合化した粒子と、結着剤を集電体上に塗布した構造
(3)本発明の負極材粉末を含む負極活物質が、焼結剤により集電体と一体に焼結された構造
(4)本発明の負極材粉末を含む負極活物質が、低融点金属と結合することにより集電体と一体化した構造
(5)本発明の負極材粉末を含む負極活物質が、バインダー成分無しに集電体と一体化した構造
(6)集電体上に本発明の薄膜状負極材を直接成膜した構造
などが挙げられる。
上記(6)の薄膜負極の製造方法は、前述の薄膜状負極の製造方法の項で詳述した通りである。
以下に、(1)〜(5)の負極の構造及びその製造方法について説明する。
(1)負極活物質と必要に応じ用いられる導電剤と、結着剤を集電体上に塗布した構造
この構造は、本発明の負極材粉末に、負極材B及び/又は導電剤と結着剤を含有する負極活物質層を集電体上に形成してなる。
〈導電剤〉
負極活物質層には、導電剤を含んでもよい。導電剤は、用いる負極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅等の金属粉末類などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、VGCFが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極活物質に対して、1〜30wt%が好ましく、特に1〜15wt%が好ましい。
〈結着剤〉
結着剤としては、後述する液体溶媒に対して安定な高分子が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はプロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記のイオン伝導性を有する高分子組成物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物や、ポリエーテル化合物の架橋体高分子や、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、又はポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩かを複合させた高分子、あるいはこれにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高い誘電率又はイオン−双極子相互作用力かを有する有機化合物を配合した高分子を用いることができる。
具体的には、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、又はセルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリエチレンオキシドが挙げられ、更に好ましくは、ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、又はポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。これらは、現在工業的に一般に使用されており、扱い易いため好適である。
この構造の負極は、本発明の負極材粉末と、負極材B及び/又は導電剤と、結着剤を分散中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により製造される。
負極活物質、必要に応じて用いられる導電剤と結着剤を混合して集電体上に塗布する際の負極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30wt%以下程度まで添加することもできる。
また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
負極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をこれらの溶媒に混合して負極活物質スラリーを調製し、これを負極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより負極活物質層が形成されるが、この負極活物質スラリー中の負極活物質の濃度の上限は通常70wt%以下、好ましくは55wt%以下であり、下限は通常30wt%以上、好ましくは40wt%以上である。負極活物質の濃度がこの上限を超えると負極活物質スラリー中の負極活物質が凝集しやすくなる場合もあり、下限を下回ると負極活物質スラリーの保存中に負極活物質が沈降しやすくなる場合もある。
また、負極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30wt%以下、好ましくは10wt%以下であり、下限は通常0.1wt%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる負極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると負極活物質層の結着性に劣るものとなる場合もある。
(2)負極活物質が導電性物質と複合化した粒子と、結着剤を集電体上に塗布した構造
この構造は、本発明の負極材粉末と導電性物質が複合化した粒子と結着剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、複合化粒子と結着剤を水あるいは上述の(1)におけると同様な有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
〈導電性物質〉
導電性物質には、導電性を有する酸化物や炭素、黒鉛、カーボンブラック等が用いられる。例えば、酸化物としてはIn、ZnO、SnO等、炭素としてはCVD炭素等、黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛、VGCF等が挙げられる。
〈複合化粒子〉
複合化した粒子は、メカノケミカル法、CVD法、炭素前駆体との焼成法等により、本発明の負極材粉末を含む負極活物質と導電性物質を混合、複合化することで得られる。
メカノケミカル法による混合、複合化する方法としては、例えば、ボールミル、振動ミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン(ホソカワミクロン製)、ハイブリダイザー、マイクロス(奈良機械製作所製)等の装置を用いることができる。
また、CVD法としては、例えば、炭化水素系ガスを原料とし、負極材粉末表面に膜状、及び/又は繊維状の熱分解炭素(黒鉛)を形成し、複合化する方法が挙げられる。尚、CVD処理前にNi等の触媒をあらかじめ負極材粉末表面に担持しても良い。
また、炭素前駆体との焼成法としては、負極材粉末を含む負極活物質と導電性物質と石油ピッチやコールタールピッチ類や樹脂類を原料とした炭素前駆体を混合し、更に600〜1300℃程度の温度で焼成することで複合化する方法が挙げられる。
複合化粒子の構造としては、例えば、導電性物質のマトリックス中に負極材粉末の微粒子が包埋されている構造や、負極材粉末の表面を導電性物質が被覆している構造などが挙げられる。
複合化粒子中の導電性物質の含有割合は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると導電性物質を複合化して導電性を改善した効果が現れないことから、複合粒子中の本発明の負極材粉末の含有量が通常50wt%以上、特に70wt%以上で、通常99wt%以下、特に97wt%以下となるようにすることが好ましい。
(3)負極活物質が、焼結剤により集電体と一体に焼結された構造
この構造は、本発明の負極材粉末を含む負極活物質と焼結剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極活物質と焼結性有する物質を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により焼結させて製造される。
〈焼結剤〉
焼結剤には、酸化物、炭化物、窒化物等の前駆体や、炭素前駆体を用いる。例えば、酸化物前駆体としては、有機ジルコニウム化合物、有機チタニウム化合物等が、炭素前駆体としては、石油ピッチやコールタールピッチ類を熱処理(酸化)し、軟化点、揮発分を調整した物(大阪化成社製TGP3500)などが挙げられる。
焼結剤の使用量は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極活物質間や負極活物質と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極活物質の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材粉末を含む負極活物質に対して、通常3wt%以上、好ましくは5wt%以上、通常50wt%以下、好ましくは30wt%以下である。
(4)負極活物質が、低融点金属と結合することにより集電体と一体化した構造
この構造は、本発明の負極材粉末を含む負極活物質と低融点金属が結合した活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極活物質と低融点金属を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により製造される。
〈低融点金属〉
低融点金属には、はんだ、ろう等を用いる。例えば、はんだとしては、Sn−Pb合金、Bi−Inを添加した低融点はんだ、Ag,Sb,Cu添加はんだなどが挙げられる。
低融点金属の使用量は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極活物質間や負極活物質と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極活物質の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材粉末を含む負極活物質に対して、通常5wt%以上、好ましくは10wt%以上、通常60wt%以下、好ましくは40wt%以下である。
(5)負極活物質が、バインダー成分無しに集電体と一体化した構造
この構造は、バインダー成分無しに本発明の負極材粉末を含む負極活物質を活物質層として集電体上に形成してなり、通常、負極活物質を集電体基板上に真空下で高速衝突させる常温衝撃固化等によりバインダー成分無しに集電体と一体化する方法により製造される。より具体的には、本発明の負極材粉末を含む負極活物質を、エアロゾルデポジション法にて、集電体上へ直接成膜する方法が挙げられる。
[3]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、負極として本発明の負極を用いたものである。
本発明の非水電解質二次電池を構成する正極、電解質等の電池構成上必要な、負極以外の部材の選択については特に制限されない。
以下において、本発明の非水電解質二次電池を構成する負極以外の部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
[正極]
正極は、集電体基板上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなり、通常、正極活物質と結着剤を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
〈正極活物質〉
正極活物質には、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有している限り特に制限はないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などを使用することができる。具体的には、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn及びこれらの非定比化合物、MnO、TiS、FeS、Nb、Mo、CoS、V、P、CrO、V、TeO、GeO等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
〈導電剤〉
正極活物質層には、正極用導電剤を用いることができる。正極用導電剤は、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極活物質に対して1〜50wt%が好ましく、特に1〜30wt%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15wt%が特に好ましい。
〈結着剤〉
正極活物質層の形成に用いられる結着剤としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
〈その他の添加剤〉
正極活物質層には、前述の導電剤の他、更にフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30wt%が好ましい。
〈溶媒〉
正極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30wt%以下程度まで添加することもできる。
また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
正極活物質、結着剤である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される正極用導電剤、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して正極活物質スラリーを調製し、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層が形成される。
なお、この正極活物質スラリー中の正極活物質の濃度の上限は通常70wt%以下、好ましくは55wt%以下であり、下限は通常30wt%以上、好ましくは40wt%以上である。正極活物質の濃度がこの上限を超えると正極活物質スラリー中の正極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると正極活物質スラリーの保存中に正極活物質が沈降しやすくなる。
また、正極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30wt%以下、好ましくは10wt%以下であり、下限は通常0.1wt%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる正極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると正極活物質層の結着性に劣るものとなる。
〈集電体〉
正極用集電体としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。
正極用集電体の厚みは特に限定されないが通常1〜50μm程度である。
[電解質]
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。なおここで電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO等のリチウム塩が好ましく用いられる。これらの溶質は、1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上、特に0.5mol/L以上で、2mol/L以下、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。これらの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒が好ましい。
これらの溶媒は1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に係る非水系電解液は、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルや従来公知の過充電防止剤、脱酸剤、脱水剤などの種々の助剤を含有していてもよい。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等が挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
これらは1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液が分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01wt%以上、好ましくは0.1wt%以上、特に好ましくは0.3wt%以上、最も好ましくは0.5wt%以上であり、通常8wt%以下、好ましくは4wt%以下、特に好ましくは3wt%以下である。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルを電解液に含有させることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。その理由は明かではないが、負極の表面に安定な保護被膜を形成することができるためと推測される。ただし、その含有量が少ないとこの特性が十分に向上しない。しかし、含有量が多すぎると高温保存時にガス発生量が増大する傾向にあるので、電解液中の含有量は上記の範囲にするのが好ましい。
過充電防止剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソールおよび2,6−ジフルオロアニソ−ル等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液中における過充電防止剤の割合は、通常0.1〜5wt%である。過充電防止剤を含有させることにより、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる。
他の助剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物およびフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホンおよびテトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、通常0.1〜5wt%である。これらの助剤を含有することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
また、非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状又は、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としてもよい。この場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
[その他の構成部材]
非水電解質二次電池には、電解質、負極、及び正極の他に、更に必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケースなどを用いることもできる。
セパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
[非水電解質二次電池の形状]
本発明の非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
[非水電解質二次電池の製造方法]
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解質二次電池を製造する方法は、特に限定されず通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
比較例7
Si中にSi以外の元素Cが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、下記の方法に従って求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が99.1、P(0)値が0.5、P(+IV)値が0.4であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が100wt%である負極材を用いて、下記の方法に従ってリチウム二次電池を作製し、この電池について、下記方法で放電容量、充放電効率、サイクル特性(A)、サイクル後の電極膨張率の評価を行い、結果を表2に示した。
なお、この負極材及び薄膜負極の製造方法は後述の通りである。
〈Ps値、P(0)値、P(+IV)値〉
後述のXPS測定法によって得られたSi2pピークを、データ解析ソフト(Multipak)を用いピーク分離を行いPs値、P(0)値、P(+IV)値を求めた。具体的には、得られたスペクトルデータにShirley法によるバックグラウンド処理を行い、非線形最小二乗法を用いたカーブフィッティング法を行なった。また、カーブフィッティング法は、ガウス関数を用い、測定スペクトルを再現するように最小二乗法でピーク位置、強度、半値幅等を決定した。
なお、ピーク分離の初期条件として、Siの0価(Si(0))及びSiの+IV価(Si(+IV))のピーク位置、半値幅を固定した。また、+I、+II、+III価のSiについては任意に設定を行ない、Si(0)の面積、Si(+IV)の面積、それ以外の面積を求め、次式に従ってPs値、P(0)値、P(+IV)値を規定した。
なお、Si(0)のピーク位置、半値幅はSi−waferを測定した位置、半値幅を、Si(+IV)のピーク位置、半値幅はSiO(合成石英)を測定した位置、半値幅を用いた。また、Si(0)のピーク位置より低エネルギー側に現れるSiと合金由来のピークについては、Si(0)の面積に含めた。
Ps値
=(+I、+II、+III価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
P(0)値
=(0価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
P(+IV)値
=(+IV価の合計ピーク面積)
/(0価から+IV価までの合計ピーク面積) ×100
〈アルカリ水溶液エッチング法〉
エッチング液は、アルカリとして水酸化リチウム(和光純薬社製「水酸化リチウム一水和物 和光特級」)を用い、純水にて溶解し0.5M水酸化リチウム水溶液として用いた。エッチング処理は、エッチング液を70℃に加温し、負極材を20分間エッチング液に浸漬し、その後純水にて付着しているアルカリを洗浄した。エッチング処理前後の重量からエッチング収率を算出し、負極材のアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値を求めた。
収率EY=エッチング後負極材重量/エッチング前負極材重量 ×100
なお、薄膜状負極材であるためシート面積20cm程度に対し、エッチング液150mlを用いてエッチング処理を行なった。また、集電体に用いた銅箔のみで前記と同様のエッチング処理を行なったが重量変化は見られなかったので、負極材のエッチング処理は集電体と共に行なった。
〈リチウム二次電池の作製方法〉
後述の方法で作製した薄膜負極を、10mmφに打ち抜き、110℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液としてエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF電解液と、セパレータとしてポリエチレンセパレータと、対極としてリチウム金属対極とを用い、コイン電池(リチウム二次電池)を作製した。
〈リチウム二次電池の評価〉
リチウム二次電池の評価方法は次の通りである。
(放電容量評価)
1.23mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して10mVまで充電し、更に、10mVの一定電圧で電流値が0.123mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.23mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう充放電サイクルを5サイクル繰り返し、3〜5サイクル目の放電の平均値を放電容量とした。また、重量当りの放電容量とする場合は、負極材重量は負極重量から同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで求め、以下に従って計算した。
放電容量(mAh/g)
=3〜5サイクル目の平均放電容量(mAh)/負極重量(g)
負極材重量(g)=負極重量(g)−同面積の銅箔重量(g)
(充放電効率評価)
放電容量の測定時に、以下に従って計算した。
充放電効率(%)={初回放電容量(mAh)/初回充電容量(mAh)}×100
(サイクル特性(A)評価)
上述の放電容量の測定方法に従い、この充放電サイクルを50回繰り返し、以下に従ってサイクル維持率(A)を計算した。
サイクル維持率(A)(%)
={50サイクル後の放電容量(mAh)
/3〜5サイクルの平均放電容量(mAh)}×100
(サイクル後の電極膨張率測定)
上述のサイクル特性(A)の測定後(50サイクル後)、放電状態のコイン電池をアルゴングローブボックス中で短絡させないように解体し、負極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、SEM観察にてサイクル後放電時の負極の厚み(銅箔除く)を測定した。電池作製前の負極の厚み(銅箔除く)を基準として、次式に基づいてサイクル後の電極膨張率を求めた。
サイクル後の電極膨張率(倍)=(サイクル後の負極厚み/充放電前の負極厚み)
〈負極材及び薄膜負極の作製方法〉
ターゲット材として、SiとCの混合物(原子比でSi:C=1:0.3)を用い、集電体基板として、成膜面の平均表面粗さ(Ra)が0.3μm、引張強度が400N/mm、0.2%耐力が380N/mmで、厚さが18μmである、成膜面を粗面化した圧延銅箔を用い、RFスパッタ装置(徳田製作所社製「CFS−4ES」)にて成膜を行ない、集電体上に薄膜状負極材を形成した。この時、SUS基板は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め2×10-3Paまで真空引き後、チャンバー内に高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気としてから、電力密度8.8W/cmで90分間成膜を行った。
なお、成膜前に電解銅箔表面の酸化膜を除去する目的で逆スパッタを行い、基板表面のエッチングをした。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった(図1(a)参照)。
また、下記の方法に従ってXPSにて負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=72/24/1/3であった。
また、下記の方法に従ってラマン測定にて負極材のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=scピーク検出されず(ND)、RS=0.55であった。
更にまた、下記の方法に従って負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsa=0.38であった。
更に、下記の方法に従って電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて、負極材中の元素Cの分布を測定したところ、図1(c)に示すように、Si中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
〈XPS測定〉
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、負極材の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、150nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)とN1s(390〜405eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。帯電補正は、アルゴンイオンスパッタにより、試料表面に打ち込まれたArのピークを基準(若しくは不純物等として検出されるC1sのピークトップを284.5eV)とし、Si2p、C1s、N1s、O1s等のスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C、N、O等の原子濃度をそれぞれ算出し、負極材の原子濃度比Si/C/N/O(Si原子濃度/C原子濃度/N原子濃度/O原子濃度)を求めた。
〈ラマン測定〉
ラマン測定としては、ラマン分光器(日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、負極材を測定セルへセットし、測定はセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射させながら行った。
なお、ここでのラマン測定条件は次のとおりである。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm−1
測定範囲:200cm−1〜1900cm−1
露光時間:30〜300sec
積算回数:3回
スムージング処理:単純平均、コンボリューション15ポイント
〈X線回折測定〉
X線回折測定としては、リガク社製「RINT2000PC」を用い、負極材を測定セルへセットし、Out-of-Plane法にて、2θ=10〜90度の範囲の測定を行った。バックグラウンドの補正は、2θ=10〜20度付近と、50〜70度付近を直線で結び行った。
〈EPMA測定〉
電子プローブマイクロアナライザー(JEOL社製「JXA−8100」)を用い、樹脂包埋した負極材について、その断面をミクロトームで作成し元素分析を行った。
比較例8
Si中にSi以外の元素C、Oが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が93.0、P(0)値=6.9、P(+IV)値=0.1であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=99wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の薄膜負極は、チャンバー内に高純度酸素ガスを流して圧力を0.02Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とし、成膜時間を95分間とした以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、下記の方法に従ってXPSにて負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=59/17/1/23であった。
また、下記の方法に従ってラマン測定にて負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず(ND)、RSC=0.12、RS=0.74であった。
更にまた、下記の方法に従って負極材のX線回折測定を行ったところ、SiC、SiO等の明確なピークは検出されずXIsa=0.8であった。
比較例9
Si中にSi以外の元素C、Oが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が99.7、P(0)値=0.0、P(+IV)値=0.3であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=99wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の薄膜負極は、チャンバー内に高純度酸素ガスを流して圧力を0.01Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とした以外は、比較例8と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、下記の方法に従ってXPSにて負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=67/13/0/12であった。
また、下記の方法に従ってラマン測定にて負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=0.08、RS=0.67であった。
更にまた、下記の方法に従って負極材のX線回折測定を行ったところ、SiC、SiO等の明確なピークは検出されずXIsa=0.16であった。
更にまた、比較例7と同様にしてEPMAで元素Cの分布を測定したところ、比較例7と同様にSi中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
比較例10
Si中にSi以外の元素Nが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が79.7、P(0)値=20.3、P(+IV)値=0.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=85wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の薄膜負極は、ターゲット材としてSiを用い、チャンバー内に高純度窒素ガスを流して圧力を0.034Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とし、成膜時間を95分間とした以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=73/0/25/2であった。
また、負極材のラマン値を求めたところ、RS=0.72であった。
また、負極材のX線回折測定を行ったところ、Siの明確なピークは検出されずXIsa=0.91であった。
更にまた、EPMAで負極材中の元素Nの分布を測定したところ、比較例7と同様にSi中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
比較例11
Si中にSi以外の元素Oが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が88.9、P(0)値=11.1、P(+IV)値=0.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=65wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の薄膜負極は、チャンバー内に高純度酸素ガスを流して圧力を0.02Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とした以外は、比較例10と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=73/1/1/25であった。
また、負極材のX線回折測定を行ったところ、SiO、SiO等の明確なピークは検出されずXIsa=0.92であった。
更にまた、EPMAで負極材中の元素Oの分布を測定したところ、比較例7と同様にSi中に元素Oは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
[実施例
Si中にSi以外の元素Cが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が95.6、P(0)値=1.6、P(+IV)値=2.8であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=93wt%である負極材を用いて、下記の方法でコイン電池の作製をし、比較例7と同様に評価を行い、結果を表2に示した。
〈負極の作製方法〉
下記の方法で作製した粉末状負極材1.6gに対し、負極材Bとして、結晶面(002)の面間隔d002=0.336nm、平均粒径=6μmの人造黒鉛を、重量比20/80(=粉末状負極材/負極材B)の割合で加え、瑪瑙乳鉢を用いて乾式混合した。得られた混合粉末に、結着剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)1.5wt%(混合粉末を100wt%とした時)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)2wt%とを、それぞれ水溶液や水懸濁液の形で加えて、更に混合した。こうして得られた混合物を、厚み18μmの銅箔上に塗布後、80℃で30分予備乾燥をした。更に、直径12.5mmφに打ち抜き、110℃で一昼夜真空乾燥して、評価用の負極とした。
〈リチウム二次電池の作製方法〉
得られた負極をアルゴン雰囲気下のグローブボックスへ移し、電解液としてエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF電解液と、セパレータとしてポリエチレンセパレータと、対極としてリチウム金属対極とを用い、コイン電池(リチウム二次電池)を作製した。
〈粉末状負極材の作製方法〉
ターゲット材として、SiとCの混合物(SiとCの面積比が大凡100対9の円板)を用い、基板として表面光沢のある厚さ1mmのSUS板を用い、直流スパッタ装置(島津製作所社製「HSM−52」)にて成膜を行った。この時、SUS基板は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め4×10−4Paまで真空引き後、高純度アルゴンガスをチャンバー内に40sccm流し、メインバルブの開度を調整して1.6Paの雰囲気としてから、電力密度7W/cmで180分間成膜を行った。
この時、スパッタガスの酸素濃度は0.001%であった。
基板取り出し後に、得られた膜は簡単にSUS基板から剥離し薄片となった。前記1回の成膜で約0.7gの薄片が得られ、この成膜を繰り返し行い約3gの薄片を得た。得られた薄片を瑪瑙乳鉢で粉砕し、目開き45μmの篩にて分級し粉末状負極材とした。
前記の方法に従って粒度分布計で負極材の体積基準平均粒径を測定したところ15μmであった。
また、比較例7と同様にして負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=65/24/0/11であった。
また、比較例7と同様にして負極材のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=scピーク検出されず(ND)、RS=0.45であった。
また、比較例7と同様にして負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXPsa=0.35であった。
更にまた、比較例7と同様にしてEPMAで元素Cの分布を測定したところ、比較例7と同様にSi中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
比較例12
Si中にSi以外の元素C、Oが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が73.2、P(0)値=9.8、P(+IV)値=17.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=90wt%である負極材を用いて、実施例と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、次のようにして作製した。
基板として表面光沢のある厚さ1mmのSUS板を用い、成膜時間を180分間とした以外は、比較例8と同様に成膜を行った。
基板取り出し後に、得られた膜は簡単にSUS基板から剥離し薄片となった。前記1回の成膜で約0.7gの薄片が得られ、この成膜を繰り返し行い約3gの薄片を得た。得られた薄片を瑪瑙乳鉢で粉砕し、目開き45μmの篩にて分級し粉末状負極材とした。
実施例と同様にして粒度分布計で負極材の体積基準平均粒径を測定したところ12μmであった。
また、比較例7と同様にして負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=52/14/0/34であった。
また、比較例7と同様にして負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず(ND)、RSC=0.12、RS=0.74であった。
また、比較例7と同様にして負極材のX線回折測定を行ったところ、SiC、SiO等の明確なピークは検出されずXPsa=0.17であった。
更にまた、比較例7と同様にしてEPMAで元素Cの分布を測定したところ、比較例7と同様にSi中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
[比較例1]
Si負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が3.6、P(0)値=96.4、P(+IV)値=0.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=0wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、ターゲット材にSiを用いた以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は5μmであった。
また、比較例7と同様にして負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=97/0/0/3であった。
また、比較例7と同様にして負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず(ND)、RSC=csピーク検出されず(ND)、RS=0.30であった。
[比較例2]
SiOを主成分とする負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が13.1、P(0)値=0.0、P(+IV)値=86.9であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=51wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、チャンバー内に高純度酸素ガスを流して圧力を0.2Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とした以外は、比較例10と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=35/0/0/65であった。
また、比較例7と同様にして負極材のラマン値を求めたところ、RC=0.17、RSC=0.06、RS=1.09であった。
また、比較例7と同様にして負極材のX線回折測定を行ったところ、SiOのピークが検出された。
[比較例3]
Si中にSi以外の元素Cが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が48.9、P(0)値=76.4、P(+IV)値=4.6であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=59wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、ターゲット材として、SiとCの混合物(SiとCの面積比が大凡100対1の円板)を用いた以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=87/7/0/6であった。
また、比較例7と同様にして負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず(ND)、RSC=csピーク検出されず(ND)、RS=0.40であった。
また、比較例7と同様にして負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXPsz=0.10であった。
[比較例4]
Si中にSi以外の元素Oが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が69.2、P(0)値=6.6、P(+IV)値=22.2であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=83wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、チャンバー内に高純度酸素ガスを流して圧力を0.04Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とした以外は、比較例10と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O=46/0/0/54であった。
[比較例5]
Si中にSi以外の元素Tiが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が7.4、P(0)値=92.6、P(+IV)値=0.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=74wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、ターゲット材として、SiとTiの混合物(Si円板上に、SiとTiの面積比が大凡100対9となるように、Tiのチップを貼り付けたもの)を用いた以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O/Ti=74/1/0/2/23であった。
[比較例6]
Si中にNiSi相を含む負極材であって、比較例7と同様に求めた、X線光電子分光法分析によるPs値が16.5、P(0)値=83.5、P(+IV)値=0.0であり、アルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値=83wt%である負極材を用いて、比較例7と同様にして、コイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表2に示した。
なお、本比較例の負極材は、ターゲット材を、SiとNiの混合物(Si円板上に、SiとNiの面積比が大凡100対4となるように、Niのチップを貼りつけたもの)に変えた以外は、比較例7と同様にして作製した。
得られた薄膜負極の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。
また、負極材の組成分析をしたところ、原子濃度比で表すとSi/C/N/O/Ni=71/0/0/4/25であった。
また、比較例7と同様にして負極材のX線回折測定を行ったところ、NiSiのピークが検出された。
なお、各例で用いた負極材の物性等を表1にまとめて示す。
Figure 0005320671
Figure 0005320671
表1,2より次のことが分かる。
比較例1の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(0)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例2の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(+IV)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、且つ、SiOが主成分で本発明の規定範囲外であり、その結果、充放電効率が低く、放電容量が小さいわりにサイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例3の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(0)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例4の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(0)値、P(+IV)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、その結果、充放電効率が低かった。
比較例5の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(0)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例6の負極材は、X線光電子分光法分析によるPs値、P(0)値とアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
これらに対して、実施例1の本発明の負極材は、Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とし、全てが本発明の規定範囲を満たしている。そして、このような負極材を用いると、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑えられた高性能の電池が得られる。
Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする本発明の負極材であって、次の(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれか1以上の要件を満たす本発明の負極材によれば、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された、優れた非水電解質二次電池を実現することができるため、この負極材を用いた本発明の非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池が適用される電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
(イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
(ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20%以下である。
(ハ)該負極材をアルカリ水溶液でエッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
(a)図は、比較例7で得られた負極材のSEM写真であり、(b)図、(c)図は、各々、同EPMA測定から得られたSiとCの分布図である。

Claims (6)

  1. Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、次の(イ)及び(ロ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材。
    (イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
    (ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20以下である。
  2. Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、次の(ハ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材。
    (ハ)該化合物を、70℃の0.5M水酸化リチウム水溶液を用いて20分間エッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
  3. Si中にSi以外の元素Aが非平衡的に存在した相の化合物と黒鉛とを含有する非水電解質二次電池用負極材であって、該元素Aが、C及びO元素を少なくとも含み、下記(イ)及び(ロ)の要件と下記(ハ)の要件を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用負極材。
    (イ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(+IV)値が実質的に0である。
    (ロ)該化合物のX線光電子分光法分析によるPs値が70以上であり、且つ、P(0)値が20以下である。
    (ハ)該化合物を、70℃の0.5M水酸化リチウム水溶液を用いて20分間エッチングした時の収率EY値が85wt%以上である。
  4. 前記化合物に対して、黒鉛が15wt%〜95wt%含有されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材。
  5. 負極活物質が、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
  6. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
JP2006328370A 2005-12-13 2006-12-05 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池 Active JP5320671B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006328370A JP5320671B2 (ja) 2005-12-13 2006-12-05 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005359158 2005-12-13
JP2005359158 2005-12-13
JP2006328370A JP5320671B2 (ja) 2005-12-13 2006-12-05 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007188872A JP2007188872A (ja) 2007-07-26
JP5320671B2 true JP5320671B2 (ja) 2013-10-23

Family

ID=38343865

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006328370A Active JP5320671B2 (ja) 2005-12-13 2006-12-05 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5320671B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20120070745A1 (en) * 2010-09-16 2012-03-22 Samsung Sdi Co., Ltd. Negative active material for rechargeable lithium battery and rechargeable lithium battery including the same
JP2013008586A (ja) 2011-06-24 2013-01-10 Sony Corp リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用負極、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器
JP6193798B2 (ja) 2014-04-14 2017-09-06 信越化学工業株式会社 リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法
JP6183443B2 (ja) * 2015-12-10 2017-08-23 ソニー株式会社 リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用負極、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器
JP6408639B2 (ja) * 2017-04-24 2018-10-17 信越化学工業株式会社 リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極、及びリチウムイオン二次電池
WO2021157459A1 (ja) * 2020-02-07 2021-08-12 Dic株式会社 二次電池負極用活物質、負極及び二次電池

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3277845B2 (ja) * 1997-05-12 2002-04-22 住友金属工業株式会社 リチウムイオン2次電池用負極材料の製造方法
JP4037975B2 (ja) * 1998-12-25 2008-01-23 株式会社トクヤマ 非水電解液二次電池負極材料の製造方法
JP2005235397A (ja) * 2000-01-25 2005-09-02 Sanyo Electric Co Ltd リチウム電池用電極並びにこれを用いたリチウム電池及びリチウム二次電池
JP2001210315A (ja) * 2000-01-25 2001-08-03 Sanyo Electric Co Ltd リチウム二次電池用電極及びこれを用いたリチウム二次電池
JP2002075350A (ja) * 2000-08-24 2002-03-15 Sanyo Electric Co Ltd 電池用活物質並びにこれを用いた電池用電極及び二次電池
JP4623283B2 (ja) * 2004-03-26 2011-02-02 信越化学工業株式会社 珪素複合体粒子及びその製造方法並びに非水電解質二次電池用負極材
JP4994634B2 (ja) * 2004-11-11 2012-08-08 パナソニック株式会社 リチウムイオン二次電池用負極、その製造方法、およびそれを用いたリチウムイオン二次電池
JP4824394B2 (ja) * 2004-12-16 2011-11-30 パナソニック株式会社 リチウムイオン二次電池用負極、その製造方法、およびそれを用いたリチウムイオン二次電池
JP4802570B2 (ja) * 2005-06-24 2011-10-26 パナソニック株式会社 リチウムイオン二次電池用負極、その製造方法、およびそれを用いたリチウムイオン二次電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007188872A (ja) 2007-07-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5217433B2 (ja) 非水電解質二次電池、その負極、及びその材料
Li et al. Quasi-compensatory effect in emerging anode-free lithium batteries
JP7148150B2 (ja) 再充電可能なバッテリのための2次元物質によるリチウム金属のパッシベーション
JP4972880B2 (ja) 非水電解質二次電池用負極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
JP4899841B2 (ja) 非水電解液二次電池
KR100666822B1 (ko) 개선된 전기화학 특성을 갖는 음극활물질 및 이를 포함하는전기 화학 소자
KR100860341B1 (ko) 비수전해질 이차 전지와 그 음극
JP2008077993A (ja) 電極及び非水電解質二次電池
JP2008305781A (ja) 電極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
WO2013047747A1 (ja) リチウム二次電池
WO2012014998A1 (ja) リチウム二次電池
JPWO2007063765A1 (ja) 負極活物質、これを用いた負極およびリチウムイオン二次電池
JP2007019027A (ja) リチウム二次電池
JP5194483B2 (ja) 非水電解質二次電池用シリコン負極集電体、非水電解質二次電池用シリコン負極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
KR20150045337A (ko) 양극 활물질, 그 제조방법 및 이를 포함한 양극을 구비한 리튬 전지
CN111095626B (zh) 锂二次电池用负极活性材料及其制备方法
JP5056224B2 (ja) 薄膜又は粉末製造方法、薄膜又は粉末製造装置、及び非水電解質二次電池用電極材の製造方法
JP5320671B2 (ja) 非水電解質二次電池用負極材、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池
JP2007188871A (ja) リチウムイオン二次電池
CN111033871B (zh) 水系二次电池
CN112714971A (zh) 锂二次电池用负极活性材料以及包含其的负极和锂二次电池
JP2010282901A (ja) リチウムイオン二次電池用負極材、および、その製造方法、ならびに、リチウムイオン二次電池
WO1999063612A1 (fr) Batterie secondaire contenant une solution electrolytique non aqueuse
JP2007184252A (ja) 非水電解質二次電池用電極材の製造方法、非水電解質二次電池用電極及びその製造方法、非水電解質二次電池用電極集電体の製造方法、並びに非水電解質二次電池
JP2009170265A (ja) 層状粉末物質およびその製造方法、非水電解質二次電池用電極材、および非水電解質二次電池用負極、並びに非水電解質二次電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090715

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120216

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120911

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130212

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130307

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130618

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5320671

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350