JP4899841B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
詳しくは、本発明は、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された非水電解液二次電池に関する。
(1) 電解液との反応に伴う不可逆容量が増加し、正極活物質中のリチウムを消費し、結果として電池容量が低下する。
(2) リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴うSi微粉化や集電体からの剥離が生じ、サイクル特性が悪化する。
(3) サイクル中に電解液との反応により、充放電可能な活物質量が減少し、サイクル特性が悪化する。
(4) サイクル中にリチウムの挿入による電極膨張が蓄積し、電池体積の増加、つまり体積当たりの電池容量の低下を招く。
即ち、本発明は、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された非水電解液二次電池用を提供することを目的とする。
(i) C及び/又はNよりなる元素Zを、
(ii) 非平衡的に特定範囲の濃度で、
存在させると、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a,pは整数)等の形成がほとんど無いか、又は、形成されても非常に少ないものとなり、後述するSiの活量を効果的に低下させることができ、且つ、このような負極材に対して、電解液として、
(iii) フッ素を含有するエステル化合物を含む電解液
と組み合わせることにより、詳細な理由は不明であるが、電解液との反応性を著しく抑制することができ、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解液二次電池を安定して効率的に実現し得ることを見出し、本発明を完成させた。
一般に、活量とは、一種の熱力学濃度である。物質量n1、n2、、、、、からなる多成分系について、成分iの化学ポテンシャルをμi、純物質の化学ポテンシャルをμi 0とすると、
μi−μi 0=RTlog ai
で定義されるaiを活量と呼ぶ。
また、活量aiと濃度ciの比γi
ai/ci=γi
を活量係数と呼ぶ。
(1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(2)元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
ラマン分光器(例えば、日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、本発明の非水電解液二次電池用負極を測定セルにセットし、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら測定を行う。測定したラマンスペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、ラマンRC値、RSC値、RS値を求める。なお、バックグラウンド補正は、ピーク終始点を直線で結び、バックグラウンドを求め、その値をピーク強度から差し引くことで行う。
ここでラマン測定条件は次の通りであり、スムージング処理は、コンボリューション15ポイントの単純平均とする。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm−1
測定範囲:200cm−1〜1900cm−1
1300cm−1〜1600cm−1付近に現れるピークcのピーク強度Ic、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RC(RC=Ic/Ias)を算出し、負極材のラマンRC値と定義する。
ここで、ピークcとピークasは、それぞれ炭素とシリコン由来によるピークと考えられ、従って、ラマンRC値は炭素の量を反映したものであり、ラマンRC値が2.0以下であるということは、炭素が殆ど検出されないことを意味する。
650cm−1〜850cm−1付近に現れるピークscのピーク強度Isc、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RSC(RSC=Isc/Ias)を算出し、負極材のラマンRSC値と定義する。
ここで、ピークscとピークasは、それぞれSiCとシリコン由来によるピークと考えられ、従ってラマンRSC値はSiCの量を反映したものであり、ラマンRSC値が0.25以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
520cm−1の強度Is、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RS(RS=Is/Ias)を算出し、負極材のラマンRS値と定義する。
ラマンRS値は、Siの状態を反映したものである。
赤外分光光度計(例えば、サーモエレクトロン社製「Magna560」)を用い、充放電を行った後の非水電解液二次電池用負極の負極材を集電体から剥離し、測定セルにセットし、透過法により測定を行う。測定は、窓材がダイヤモンド製の透過測定用サンプルフォルダーを用い、不活性雰囲気下にて行う。測定した赤外線透過スペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、IRsc値を求める。なお、バックグラウンド補正は、2000〜4000cm−1の範囲における最小値を結んだ直線を延長し、バックグラウンドを求め、その値を各強度から差し引くことで行う。
1600cm−1における透過光強度Isc、1650cm−1における透過光強度Iacoを測定し、その強度比IRsc(IRsc=Isc/Iaco)を算出し、充放電後のIRsc値と定義する。
本発明の非水電解液二次電池には、後述する本発明の負極材(薄膜状負極材、粉末状負極材)を集電体上に設けた負極を用いる。
本発明の薄膜状負極材を用いた負極は、例えば、後述の製造方法の項に記述されるように、集電体上に負極材層を気相成膜することで得られる。また、粉末状負極材を用いた負極は、例えば、粉末状負極材と結着剤等を含む負極材スラリーを集電体上に塗布して負極材層を形成することで得られる。
なお、薄膜状負極材を用いた負極では、本発明の負極材よりなる薄膜負極材層の上又は下に後述する負極材Aを含む層を形成して用いても良い。
本発明の負極材を有する負極について、充放電を行った後、前述の赤外反射光分析により測定したIRsc値は、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。IRsc値がこの範囲を下回ると、サイクル中にSiを含む負極と電解液が著しく反応し、実質的に充放電可能な活物質量が徐々に減少し、好ましいサイクル特性が得られ難い場合もある。IRsc値の上限値は3.0程度である。
本発明の非水電解液二次電池には、非水電解液二次電池用負極材として、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする負極材を用いる。上記負極化合物は一般式SiZxMy(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される。
(1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(2)元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
(元素Z)
負極化合物SiZxMyにおける元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(i)Siよりも高融点化合物を形成しうる
(ii)Siよりも共有結合半径が小さい
(iii)Si中での拡散係数が小さい
(iv)リチウムと反応しても体積変化が少ない
からである。
その詳細は次の通りである。
理由(ii):元素C、Nは、Siよりも共有結合原子半径が小さいので、詳細は不明であるが、SiZxMy化合物中に、Zが平衡的に存在する化合物を形成し難く、高濃度で元素Zをより均質に分布させる事に有効と考えられ、Siの活量をより効果的に低下させることができ、この結果、電解液との反応性を抑制することができる。
理由(iii):元素C、Nは、Si中における拡散係数が小さいので、元素C、NがSi中に分散していると、充放電に伴うSiの凝集や結晶化が抑制され、Siの微粉化や電解液との反応を抑制する。
理由(iv):元素C、Nは、リチウムと反応しても体積変化が少ないので、Siの導電パス切れに影響を及ぼし難いと考えられる。
負極化合物SiZxMyにおける元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上であり、好ましくは周期表4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族、及び16族よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素であり、より好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、W、B、O元素であり、更に好ましくは、Ti、Zr、W、O元素であり、最も好ましくはO元素である。
負極化合物SiZxMyの組成において、SiZxMyのxは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が通常0.10以上、好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.40以上で、また、通常0.95以下、好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.65以下となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
元素ZがCで、且つ元素MがOの場合、一般式SiCxOyにおいて、xは通常0.053以上、好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.25以上で、通常0.90以下、好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.45以下である。
本発明の負極材のSi中の元素Zの存在状態は、以下に記載するX線回折測定において、XIsz値が特に制限されないが、元素ZがCの場合、好ましくは1.20以下、更に好ましくは0.70以下である。元素ZがNの場合、好ましくは1.10以下、更に好ましくは1.00以下である。XIsz値がこの範囲以下であれば、元素ZがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とし、SiaZp等の平衡的に存在する化合物は主成分でないと定義し、好ましい。XIsz値がこの範囲を上回る場合、即ち、SiaZp等の平衡的に存在する化合物(元素ZがCの場合は炭化珪素、Nの場合は窒化珪素)の相が主成分となる場合には、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化する虞や、SiaZp等の導電性が低いために薄膜状負極材の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞や、活物質の単位質量当たりの放電容量が小さくなる虞のある場合もある。XIsz値の下限値は通常0.00以上である。
X線回折測定における負極材のXIsz値は、例えば、本発明の負極材を照射面にセットし、X線回折装置(例えば、リガク社製「X線回折装置」)を用いて測定することができ、測定条件については後述の実施例において示す通りである。
XIsz値の定義は次の通りである。
2θが35.7度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、負極材のXIszと定義する。
ここで、2θが35.7度のピークはSiCに由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.20以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
2θが70.2度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、負極材のXIszと定義する。
ここで、2θが27.1度のピークはSi3N4由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.10以下であるということは、Si3N4が殆ど検出されないことを意味する。
本発明の負極材中の元素Zは、例えば、原子、若しくは分子、或いはクラスター等として、1μm以下の大きさのレベルで存在し、元素Zの分布状態は、好ましくは負極材中に均一に分布しており、後述する粉末状負極材の場合には、更に好ましくは、粉末状負極材の粒子中心部から粒子表面に向かって元素Zの濃度勾配が高くなるように傾斜している。また、後述する薄膜状負極材の場合には、更に好ましくは、薄膜状負極と集電体との接触部分から、薄膜表面に向かって濃度勾配が高くなるように傾斜している。元素Zの分布が負極材中で不均一に、局所的に存在している場合、Siの充放電に伴う膨張・収縮が元素Zの存在しないSi部分で集中的に起きるため、サイクルの進行に伴い導電性が悪化する虞のある場合がある。元素Zの分散状態は、後述の実施例に示す如く、EPMA等で確認できる。
本発明の負極材中の元素Mの分布状態には特に制限はなく、均一に分布していても、均一に分布していなくても、どちらでも良い。
元素ZがCの場合、本発明の負極材について、前述のラマン法により測定したラマンRC値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。ラマンRC値がこの範囲を上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い場合もある。ラマンRC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
本発明の負極材の形態は、通常、薄膜状若しくは粉末状である。
(構造)
集電体上に成膜された薄膜状負極材の構造としては、例えば、柱状構造、層状構造等が挙げられる。
薄膜状負極材の膜厚は、これを用いてなる負極の負極材層の厚さに相当し、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。薄膜状負極材の膜厚がこの範囲を下回ると、これを用いた本発明の負極(以下、薄膜状負極材を用いた負極を「薄膜負極」と称す場合がある。)の1枚当たりの容量が小さく、大容量の電池を得るには数多くの負極が必要となり、従って、併せて必要な正極、セパレータ、薄膜負極自体の集電体の総容積が大きくなり、電池容積当たりに充填できる負極材量が実質的に減少し、電池容量を大きくすることが困難になる場合もある。一方、この範囲を上回ると、充放電に伴う膨張・収縮で、薄膜状負極材が集電体基板から剥離する虞があり、サイクル特性が悪化する可能性のある場合もある。
(形状)
粉末状負極材の形状としては、例えば、球形、多角形、不定形等が挙げられる。
粉末状負極材の体積基準平均粒径は、特に制限されないが、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。粉末状負極材の体積基準平均粒径がこの範囲を下回ると、粒径が小さすぎるため、粉末状負極材間の導電パスや、粉末状負極材と後述の導電剤や負極材Aとの間の導電パスが取り難くなり、サイクル特性が悪化する虞がある場合もある。一方、この範囲を上回ると、後述の如く塗布により集電体上に負極材層を製造する時にむらが生じ易い場合もある。
なお、粉末状負極材の体積基準平均粒径としては、測定対象に界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2体積%水溶液(約1ml)を混合し、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920」)にて、体積基準の平均粒径(メジアン径)を測定した値を用いることができる。後述の実施例では、この方法により体積基準平均粒径を求めた。
粉末状負極材のBET比表面積は、特に制限されないが、通常0.5m2/g以上、好ましくは1.0m2/g以上、また、通常50m2/g以下、好ましくは30m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下の範囲である。BET比表面積の値がこの範囲の下限を下回ると、負極に用いた場合、電池の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなり易く、リチウムが電極表面で析出し易くなるため、安全上好ましくない場合もある。一方、BET比表面積の値がこの範囲の上限を上回ると、負極とした時に電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなり易く、好ましい電池が得られ難い場合もある。
なお、粉末状負極材のBET比表面積としては、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、粉末状負極材に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値を用いることができる。
粉末状負極材のタップ密度は、特に制限されないが、通常0.2g/cm3以上、好ましくは0.3g/cm3以上、更に好ましくは0.5g/cm3以上、また、通常3.5g/cm3以下、好ましくは2.5g/cm3以下の範囲である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極材料層の充填密度を上げ難く、高容量の電池を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると、負極材料層中の気孔量が少なくなる虞があり、好ましい電池特性を得難い場合もある。
なお、粉末状負極材のタップ密度としては、例えば、目開き300μmの篩を使用し、20cm3のタッピングセルに粉末状負極材を落下させてセルを満杯に充填した後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いてストローク長10mmのタッピングを1000回行ない、その時のタッピング密度を測定した値を用いることができる。
<材質>
集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、中でも薄膜に加工しやすく、安価な銅が好ましい。銅箔には、圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
銅箔等よりなる集電体基板は、薄い方が薄い負極を製造することができ、同じ収納容積の電池容器内により広い表面積の負極を詰めることができる点で好ましいが、過度に薄いと、強度が不足し、電池製造時の捲回等で銅箔が切断する恐れのある場合もあることから、5〜70μm程度の厚さであることが好ましい。銅箔の両面に負極材層を形成する場合は、銅箔は更に薄い方がよいが、充電・放電に伴う負極材層の膨張・収縮による銅箔の亀裂発生を回避する観点から、この場合において、銅箔の更に好ましい厚さは10〜35μmである。
集電体基板には、更に次のような物性が望まれる。
(1) 平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の負極材層形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.15μm以上であり、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常100N/mm2以上、好ましくは250N/mm2以上、更に好ましくは400N/mm2以上、特に好ましくは500N/mm2以上である。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常1000N/mm2以下である。
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm2以上、好ましくは150N/mm2以上、特に好ましくは300N/mm2以上である。0.2%耐力は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N/mm2以下が望ましい。
本発明の薄膜状負極材の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下に挙げる製造法などによって製造することができる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、
(i)Si、元素Z、及び元素Mの組成物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zの組成物)
(ii)Si、元素Z、及び元素Mの混合物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zの混合物)
(iii)Si、元素Z、及び元素Mそれぞれの単独体(各々の単独体は、それぞれの元素を含むガスでも良い。)(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zのそれぞれの単独体)
(iv)Si及び元素Zの組成物或いは混合物と、元素Mの単独体(Mを含むガスでも良い)
(v)Si、元素Z、及び元素Mを含むガス(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zを含むガス)
(vi)Siの単独体と、元素Z及び元素Mの組成物或いは混合物
(vii)Si及び元素Mの組成物或いは混合物と、元素Zの単独体(元素Zを含むガスでも良い)
のいずれか一つを用い、Siと元素Zと元素M(ただし、y=0又はy≒0のときは、Siと元素Z)を同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。Z原料としては、C、N元素を用いる。また、元素Zは、CとNとを同時に用いることもできる。
薄膜状負極材の形成方法としては、気相成膜法、具体的には、蒸着法(真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法)、スパッタ法、溶射法(フレーム溶射法、プラズマ溶射法)などが挙げられる。また、スパッタ法と蒸着法、スパッタ法と溶射法とを組合せて成膜しても良い。
以下に、薄膜状負極材の形成方法について説明する。
スパッタ法では、減圧下で、プラズマを利用して上記原料よりなるターゲットから発せられた負極材料を集電体基板に衝突、堆積させて薄膜を形成する。スパッタ法によると、形成した薄膜状負極材と集電体基板との界面状態が良好であり、集電体に対する薄膜状負極材の密着性も高い。
真空蒸着法は、負極材となる上記原料を溶融・蒸発させて、集電体基板上に堆積させる方法であり、一般に、スパッタ法に比べて高い成膜速度で薄膜を形成できる利点を有する方法である。真空蒸着法は、スパッタ法に比べて、所定膜厚の薄膜状負極材の形成時間の短縮を図る観点から製造コスト面で有利に活用することができる。その具体的な方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法などを挙げることができる。誘導加熱法では黒鉛等の蒸着坩堝を誘導電流により、抵抗加熱法では蒸着ボートなど通電した加熱電流により、電子ビーム加熱蒸着では電子ビームにより、それぞれ蒸着材料を加熱溶融し、蒸発させて成膜する。
CVD法では、負極材となる上記原料を気相化学反応により集電体基板上に堆積させる。一般にCVD法は、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、cat−CVD法などを挙げることができる。熱CVD法は、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ薄膜を形成するものである。プラズマCVD法は、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いた方法であり、光CVD法は、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いた方法である。cat−CVD法は、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより薄膜を形成するものである。
イオンプレーティング法では、負極材となる上記原料を溶融・蒸発させ、プラズマ下で蒸発粒子をイオン化及び励起することで、集電体基板上に強固に成膜させる。具体的には、原料を溶融・蒸発させる方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法等を挙げることができ、イオン化及び励起する方法としては、活性化反応蒸着法、多陰極熱電子照射法、高周波励起法、HCD法、クラスターイオンビーム法、マルチアーク法等を挙げることができる。また、前記原料を蒸発させる方法とイオン化及び励起する方法は適選組み合わせて行なうことができる。
溶射法では、負極材となる上記原料を加熱により溶融若しくは軟化させ、微粒子状にして加速し集電体基板上に粒子を凝固・堆積させる。その具体的な方法としては、フレーム溶射法、アーク溶射法、直流プラズマ溶射法、RFプラズマ溶射法、レーザー溶射法等を挙げることができる。
蒸着法の高い成膜速度の利点と、スパッタ法の集電体基板への強い成膜密着性の利点を利用し、例えば、スパッタ法により第1の薄膜層を形成し、その後蒸着法により高速に第2の薄膜層を形成することにより、集電体基板との密着性が良好になる界面領域を形成すると共に、高い成膜速度で薄膜状負極材を形成することができる。このような成膜方法のハイブリッドな組合せ手法により、充放電容量が高く、且つ充放電サイクル特性に優れた薄膜負極を効率的に製造することができる。
一般式SiZxMyにおいて、元素ZがCである場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、
(i)Si、C、及び元素Mの組成物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCの組成物)
(ii)Si、C、及び元素Mの混合物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCの混合物)
(iii)Si、C、及び元素Mそれぞれの単独体(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCのそれぞれの単独体)
(iv)Si及びCの組成物或いは混合物と、元素Mの単独体(Mを含むガスでも良い)
(v)Si、C、及び元素Mを含むガス(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCを含むガス)
(vi)Si単独体と、C及び元素Mの組成物或いは混合物
(vii)Si及び元素Mの組成物或いは混合物と、C単独体
のいずれか一つを用い、SiとCと元素M(ただし、y=0又はy≒0のときは、SiとC)を同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。C原料としては例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いることができる。M原料としては、通常Siと元素Z以外の元素であり、好ましくは周期表4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族、16族の元素であり、より好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、W、B、O元素であり、更に好ましくは、Ti、Zr、W、O元素を用いることができる。
上記製造法1と同様な成膜法を用いるが、通常、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法が採用される。
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。また、一般式SiCxMy中のM元素がOの場合、前記不活性ガス中にそれぞれ微量の酸素ガスを共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
真空蒸着法の雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。また、一般式SiCxMy中の元素MがOの場合、それぞれ微量の酸素ガスを不活性ガスと一緒に導入しながら減圧にし、真空下で同時にSi/C/Mを形成することも可能である。
CVD法で用いられる原料ガスは、元素Si源としてはSiH4、SiCl4等であり、元素C源としてはCH4、C2H6、C3H8等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
一般式SiZxMyにおいて、元素ZがCで元素MがOである場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、
(I)Si、及びCの組成物
(II)Si、及びCの混合物
(III)Si、及びCそれぞれの単独体
又は
(IV)Si、及びCを含むガス
のいずれか一つを用い、成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の酸素濃度が0.0001〜0.125%である雰囲気下にて、SiとCを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さにする。
原料である蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源のSi原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。C原料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いることができる。成膜ガス中の酸素としては、酸素等のO元素含有ガスを単独又は不活性ガスとの組み合せで用いる。
上記製造法1と同様な成膜法を用いる。
蒸着、スパッタ、又は溶射時の成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の酸素濃度は通常0.0001%以上で、通常0.125%以下、好ましくは0.100%以下、更に好ましくは0.020%以下である。成膜ガス中に含まれる酸素濃度がこの範囲を上回ると、Si/C/O薄膜中の元素O量が多くなり、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く場合もある。酸素濃度が少な過ぎるとSi/C/O薄膜を成膜し得ない場合もある。
一般式SiZxMyにおいて、元素ZがNで、y=0又はy≒0である場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、
(I)Si単独体
(II)Siを含む組成物
(III)Siを含む混合物
又は
(IV)Siを含むガス
のいずれか一つを用い、成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度が1〜22%である雰囲気下にて、SiとNを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは薄膜状負極材の膜厚の項で記述した厚さにする。
原料である蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。成膜ガス中のNとしては、窒素等のN元素含有ガスを単独又は不活性ガスとの組み合せで用いる。
上記製造法1と同様な成膜法を用いる。
蒸着、スパッタ、又は溶射時の成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度は通常1%以上で、通常22%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。成膜ガス中に含まれる窒素濃度この範囲を上回ると、SiNx薄膜中の元素N量が多くなり、充放電に関与しない窒化珪素が生成し、放電容量の低下を招く場合もある。窒素濃度が少な過ぎるとNを含有したSiNx薄膜を成膜し得なく、且つ、サイクル特性の低下を招く場合もある。
本発明の粉末状負極材の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下に挙げる製造法などによって製造することができる。
粉末状負極材の原料(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のうち、Si原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi、シリコン化合物(窒化珪素、炭化珪素等)等を用いることができる。Z原料としては、C,N元素を別々に、又は同時に用いることができる。例えば、C元素の原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭化物等を、N元素の原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、C元素の原料としては、Cを含むガス(CH4、C2H6、C3H8等)を、N元素の原料としては、Nを含むガス(NH3、N2等)を用いることができる。
Si及びZ原料としては、Si及び元素Zを組み合わせた単一の化合物(若しくは元素)を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
また、これらSi、Z原料、M原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
粉末状負極材の製造方法としては、例えば、
[1−4−1]Siを含む粉末粒子表面に元素Zを反応させ、粉末粒子内部に元素Zを拡散する方法、
[1−4−2]Si、及び元素Zを含む原料を用いて、基板上に蒸着、CVD、スパッタ等により気相成膜し、得られた膜を粉砕する方法、
[1−4−3]Si、及び元素Zを含む溶融塩を、電解する方法
などが挙げられる。いずれの方法においても、化合物SiZxMyに元素Mを含む場合は、更にM原料を併用すれば良い。但し、元素Mが酸素(O)の場合は、製造過程の雰囲気から取り込まれ含んでも良い。
以下に、[1−4−1]〜[1−4−3]の形成方法について説明する。
元素Zを拡散する方法としては、次の<4−1−1>〜<4−1−4>の方法が挙げられる。
<4−1−1>元素Zを含むガス雰囲気下で、Siを含む粉末粒子を加熱処理することにより、Si粉末粒子中に元素Zを拡散させる。
<4−1−2>Siを含む粉末粒子と元素Zを含む粒子を接触させた状態で、真空下、若しくはAr等の不活性雰囲気下で加熱処理することにより、Si粉末粒子中に元素Zを拡散させる。
<4−1−3>Siを含む粉末粒子に、プラズマ等によりイオン化した元素Zを照射し、Siを含む粉末粒子中に元素Zを拡散させる。
<4−1−4>Siを含む粉末粒子と元素Zを含む粒子を遊星ボールミル等によりメカニカルミリングし、Siを含む粉末粒子中に元素Zを拡散させる。
化合物SiZxMyを含む膜の気相成膜方法としては、以下の気相成膜法を用いる。成膜する時に用いる基体は、SUS、銅、アルミニウム等の金属や、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス等よりなる基板等を用い、基板等の上に成膜された化合物SiZxMy膜を剥離し、更に粉砕、必要に応じて分級処理することで粉末状負極材を得る。
〈4−2−1〉真空蒸着法
〈4−2−2〉CVD法
〈4−2−3〉スパッタ法
真空蒸着法は、上記原料を溶融・蒸発させて、上記の基体上に堆積させてSiZxMyを含む膜を形成する方法であり、一般に、スパッタ法に比べて高い成膜速度で膜を形成できる利点を有する方法である。真空蒸着法は、スパッタ法に比べて、負極材の形成時間の短縮を図る観点から製造コスト面で有利に活用することができる。その具体的な方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法などを挙げることができる。誘導加熱法では黒鉛等の蒸着坩堝を誘導電流により、抵抗加熱法では蒸着ボートなど通電した加熱電流により、電子ビーム加熱蒸着では電子ビームにより、それぞれ蒸着材料を加熱溶融し、蒸発させて成膜する。
CVD法では、下記の原料を気相化学反応により、基体上に堆積させてSiZxMyを含む膜を形成する。一般にCVD法は、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、cat−CVD法などを挙げることができる。熱CVD法は、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ膜を形成するものである。プラズマCVD法は、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いた方法であり、光CVD法は、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いた方法である。cat−CVD法は、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより膜を形成するものである。
スパッタ法では、減圧下で、プラズマを利用して、上記原料よりなるターゲットから発せられた材料を、基体に衝突、堆積させてSiZxMyを含む膜を形成する。
具体的には、Siと元素Zと元素MとをSiZxMyの組成で含む溶融塩をプラズマ誘起によりカソード電解し、粉末状負極材を得る方法が挙げられる。原料としては、Siを含有する塩と元素Z含有する塩を用いることができる。
上述のようにして製造された粉末状負極材を用いて負極を製造する場合、この粉末状負極材中には、本発明の効果を妨げない範囲で、本発明の負極材以外の他の負極材(以下「負極材A」と称す。)を混合して用いても良い。負極材Aを用いる場合、負極材Aとしてはリチウムイオンを充放電可能なものであれば良く、特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、球形化黒鉛等)、人造黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ等)のグラファイト類、ピッチや樹脂等を焼成した非晶質炭素類、黒鉛と非晶質炭素を複合化した多相構造材料類、アルミニウム、錫などの金属類、SiOなどの酸化物類が挙げられる。これらの負極材Aのなかで、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛と非晶質炭素を複合化した多相構造材料が、現在工業的に一般に使用されており、コストが安く、扱い易いため、好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
〈4−4−1〉本発明の負極材を含む負極材料と、必要に応じて用いられる導電剤と、結着及び増粘効果を有する有機物(以下「結着剤」と称す。)を集電体上に塗布した構造
〈4−4−2〉本発明の負極材を含む負極材料が導電性物質と複合化した粒子と、結着剤を集電体上に塗布した構造
〈4−4−3〉本発明の負極材を含む負極材料が、焼結剤により集電体と一体に焼結された構造
〈4−4−4〉本発明の負極材を含む負極材料が、低融点金属と結合することにより集電体と一体化した構造
〈4−4−5〉本発明の負極材を含む負極材料が、バインダー成分無しに集電体と一体化した構造
以下に、〈4−4−1〉〜〈4−4−5〉の負極の構造及びその製造方法について説明する。なお、集電体としては前述のものを用いることができ、負極材層の厚さは特に限定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、また、上限は、通常100μm以下、好ましくは90μm以下、更に好ましくは80μm以下とすることができる。
この構造は、本発明の粉末状負極材に、負極材A及び/又は導電剤と結着剤を含有する負極材料層を集電体上に形成してなる。
〈導電剤〉
負極材料層には、導電剤を含んでも良い。導電剤は、用いる負極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅等の金属粉末類などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、VGCFが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極材料に対して、1〜30重量%が好ましく、特に1〜15重量%が好ましい。
結着剤としては、後述する液体溶媒に対して安定な高分子が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はプロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
この構造は、本発明の粉末状負極材と導電性物質が複合化した粒子と結着剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、複合化粒子と結着剤を水あるいは上述の〈4−4−1〉におけると同様な有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
導電性物質には、導電性を有する酸化物や炭素、黒鉛、カーボンブラック等が用いられる。例えば、酸化物としてはIn2O3、ZnO、SnO2等、炭素としてはCVD炭素等、黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛、VGCF等が挙げられる。
複合化した粒子は、メカノケミカル法、CVD法、炭素前駆体との焼成法等により、本発明の負極材を含む負極材料と導電性物質を混合、複合化することで得られる。
メカノケミカル法による混合、複合化する方法としては、例えば、ボールミル、振動ミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン(ホソカワミクロン製)、ハイブリダイザー、マイクロス(奈良機械製作所製)等の装置を用いることができる。
また、CVD法としては、例えば、炭化水素系ガスを原料とし、粉末状活物質表面に膜状、及び/又は繊維状の熱分解炭素(黒鉛)を形成し、複合化する方法が挙げられる。尚、CVD処理前にNi等の触媒をあらかじめ粉末状活物質表面に担持しても良い。
また、炭素前駆体との焼成法としては、粉末状活物質を含む負極材料と導電性物質と石油ピッチやコールタールピッチ類や樹脂類を原料とした炭素前駆体を混合し、更に600〜1300℃程度の温度で焼成することで複合化する方法が挙げられる。
複合化粒子の構造としては、例えば、導電性物質のマトリックス中に粉末状活物質の微粒子が包埋されている構造や、粉末状活物質の表面を導電性物質が被覆している構造などが挙げられる。
複合化粒子中の導電性物質の含有割合は多過ぎると負極材料量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると導電性物質を複合化して導電性を改善した効果が現れ難い場合があることから、複合粒子中の本発明の粉末状負極材の含有量が通常50重量%以上、特に70重量%以上で、通常99重量%以下、特に97重量%以下となるようにすることが好ましい。
この構造は、本発明の負極材を含む負極材料と焼結剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極材料と焼結性有する物質を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により焼結させて製造される。
焼結剤には、酸化物、炭化物、窒化物等の前駆体や、炭素前駆体を用いる。例えば、酸化物前駆体としては、有機ジルコニウム化合物、有機チタニウム化合物等が、炭素前駆体としては、石油ピッチやコールタールピッチ類を熱処理(酸化)し、軟化点、揮発分を調整した物(大阪化成社製TGP3500)などが挙げられる。
焼結剤の使用量は多過ぎると負極材料量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極材料間や負極材料と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極材料の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材を含む負極材料に対して、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
この構造は、本発明の負極材を含む負極材料と低融点金属が結合した活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極材料と低融点金属を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により製造される。
低融点金属には、はんだ、ろう等を用いる。例えば、はんだとしては、Sn−Pb合金、Bi−Inを添加した低融点はんだ、Ag,Sb,Cu添加はんだなどが挙げられる。
低融点金属の使用量は多過ぎると負極材料量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極材料間や負極材料と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極材料の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材粉末を含む負極材料に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
この構造は、バインダー成分無しに本発明の負極材を含む負極材料を活物質層として集電体上に形成してなり、通常、負極材料を集電体基板上に真空下で高速衝突させる常温衝撃固化等によりバインダー成分無しに集電体と一体化する方法により製造される。より具体的には、本発明の負極材を含む負極材料を、エアロゾルデポジション法にて、集電体上へ直接成膜する方法が挙げられる。
本発明の非水電解液二次電池には、非水電解液として、非水溶媒中にリチウム塩が溶解され、また、フッ素を含有するエステル化合物(以下において、「含フッ素エステル」と称す場合がある。)を含有する本発明の非水電解液を用いる。
本発明にかかる含フッ素エステルは、フッ素原子を1つ以上含有する各種酸エステル化合物であれば、特に限定されない。
これらの中でも、さらに炭酸エステル、カルボン酸エステルが好ましく、炭酸エステルが最も好ましい。
本発明の非水電解液が含有し得る非水溶媒としては、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、任意のものを用いることができる。また、非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
リチウム塩は本発明の非水電解液において電解質として用いられるものである。このリチウム塩に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。通常は、リチウム塩としては、一般に非水電解液に使用されている無機又は有機のリチウム塩を用いるようにする。
本発明の非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していることが好ましい。この添加剤としては、従来公知のものを任意に用いることができ、また、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。添加剤の例としては、過充電防止剤や、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤などが挙げられる。
また、非水電解液がこれらの助剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水電解液全体に対して通常0.01質量以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下だけ含有させることが望ましい。
本発明の非水電解液二次電池を構成する正極、セパレータ等の電池構成上必要な、負極と非水電解液以外の部材の選択については特に制限されない。
以下において、本発明の非水電解液二次電池を構成する負極と非水電解液以外の部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
正極は、集電体基板上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなり、通常、正極活物質と結着及び増粘効果を有する有機物を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
本発明の非水電解液二次電池においては、適宜、セパレータを用いるようにする。セパレータの形状や構造に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。中でも、非水電解液に対して安定で、保液性の優れた材料で構成されたものを用いることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンで構成された多孔性シートや不織布等を用いることが好ましい。
本発明の非水電解液二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
非水電解液、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解液二次電池を製造する方法は、特に限定されず通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解液二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
ターゲット材として、SiとCの混合物(原子比でSi:C=1:0.3)を用い、集電体基板として圧延銅箔Aを用い、RFスパッタ装置(徳田製作所社製「CFS−4ES」)にて成膜を行ない、集電体基板上に薄膜状負極材が形成された負極(以下「薄膜負極A」と称す。)を得た。
この時、圧延銅箔Aは水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め2×10-3Paまで真空引き後、チャンバー内に高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気としてから、電力密度8.8W/cm2で90分間成膜を行った。このスパッタガスの酸素濃度は0.001%程度であった。
なお、成膜前に圧延銅箔A表面の酸化膜を除去する目的で逆スパッタを行い、基板表面のエッチングをした。
また、後述のサイクル特性(B)評価のために、圧延銅箔Aの代わりに圧延銅箔Bを用い、上記と同様の成膜を一方の面に施した後、圧延銅箔Bを裏返して更に他方の面に同様の成膜を行い、集電体基板の両面に薄膜状負極材が形成された負極(以下「薄膜負極B」と称す。)を製造した。
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、負極材(負極)の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。得られたC1sのピークトップを284.5eVとして帯電補正し、Si2p、C1s、O1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C、Oの原子濃度をそれぞれ算出した。得られたそのSiとCとOの原子濃度から、原始濃度比Si/C/O(Si原子濃度/C原子濃度/O原子濃度)を算出し、負極材の組成値Si/C/Oと定義する。
ラマン測定としては、ラマン分光器(日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、負極材(負極)を測定セルへセットし、測定はセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射させながら行った。
なお、ここでのラマン測定条件は次のとおりである。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm−1
測定範囲:200cm−1〜1900cm−1
スムージング処理:単純平均、コンボリューション15ポイント
X線回折測定としては、リガク社製「RINT2000PC」を用い、負極材(負極)を測定セルへセットし、Out-of-Plane法にて、2θ=10〜70度の範囲の測定を行った。バックグラウンドの補正は、2θ=15〜20度付近と、40〜45度付近を直線で結び行った。
EPMAによる薄膜断面の分布分析としては、電子プローブマイクロアナライザー(JEOL社製「JXA−8100」)を用い、樹脂包埋を行わずにミクロトームで断面作成した負極材(負極)について、集電体から負極材表面までの元素分析を行った。
上記方法で作製した集電体の片面に薄膜状負極材が形成されている薄膜負極Aを10mmφに打ち抜き、110℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/ジエチルカーボネート(DEC)=4/6(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液と、セパレータとしてポリエチレンセパレータと、対極としてリチウムコバルト酸化物正極とを用い、コイン型電池(リチウム二次電池)を作製した。
1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して10mVまで充電し、更に、10mVの一定電圧で電流値が0.123mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう充放電サイクルを5サイクル繰り返し、3〜5サイクル目の放電の平均値を放電容量とした。また、質量当りの放電容量とする場合は、負極材の活物質質量は負極質量から同面積に打ち抜いた銅箔の質量を差し引くことで求め、以下に従って計算した。
放電容量(mAh/g)
=3〜5サイクル目の平均放電容量(mAh)/活物質質量(g)
活物質質量(g)=負極質量(g)−同面積の銅箔質量(g)
放電容量の測定時に、以下に従って計算した。
充放電効率(%)={初回放電容量(mAh)/初回充電容量(mAh)}×100
上記方法で作製した集電体の両面に薄膜負極材が形成されている薄膜負極Bを30mm×40mmの大きさに切り抜き、85℃で真空乾燥した後、ドライルームに移し、乾燥空気雰囲気下で、電解液として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/ジエチルカーボネート(DEC)=4/6(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液と、セパレータとしてポリエチレンセパレータと、対極としてリチウムコバルト酸化物正極とを用い、前記負極が2枚の正極に挟まれているアルミラミネート型電池(リチウム二次電池)を作製した。
0.2C(1C=80mA)の電流密度でリチウムコバルト正極に対して4.2Vまで充電し、更に、4.2Vの一定電圧で電流値が2mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.2Cの電流密度でリチウムコバルト正極に対して3Vまで放電を行う充放電サイクルを4回繰り返して電池容量を安定化させ、続いて0.7Cの電流密度でリチウムコバルト正極に対して4.2Vまで充電し、更に、4.2Vの一定電圧で電流値が7mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1Cの電流密度でリチウムコバルト正極に対して3Vまで放電を行う充放電サイクルを200回繰り返し、以下に従ってサイクル維持率(B)を計算した。
サイクル維持率(B)(%)
={200サイクル後の放電容量(mAh)
/安定化後の5サイクル目の放電容量(mAh)}×100
上述のサイクル維持率(B)の測定方法に従い、この充放電サイクルを200回繰り返し、200サイクル時(B)の充放電効率を計算した。
200サイクル時(B)の充放電効率(%)
={200回時の放電容量(mAh)/200回時の充電容量(mAh)}×100
上述のサイクル維持率(B)の測定後(200サイクル後)、放電状態のラミネート型電池をアルゴングローブボックス中で短絡させないように解体し、電極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、SEM観察にてサイクル後放電時の電極の厚み(銅箔除く)を測定した。電池作製前の電極の厚み(銅箔除く)を基準として、次式に基づいてサイクル(B)後の電極膨張率を求めた。
サイクル(B)後の電極膨張率(倍)
=(サイクル(B)後の電極厚み/充放電前の電極厚み)
赤外分光光度計(サーモエレクトロン社製「Magna560」)を用い、充放電を行った後の薄膜負極Aから薄膜状負極材を剥離して測定セルにセットし、透過法により赤外透過光測定を行った。
なお、薄膜状負極材は、上記の放電容量(A)の測定後、更に45サイクルし、放電状態のコイン電池をアルゴングローブボックス中で短絡させないように解体し、負極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、集電体銅箔から剥離して測定に用いた。
バックグラウンドの補正は、図2に示すように、2000〜4000cm−1の範囲における最小値を結んだ直線を延長し、バックグラウンドを求め、その値を各強度から差し引くことで行った。
実施例1と同じ負極を用い、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=2/1.8/6.2(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
実施例1と同じ負極を用い、電解液にビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート/ジエチルカーボネート(DEC)=2/8(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
ターゲット材として、SiとCの混合物(SiとCの面積比が大凡100対2の円板)を用いた以外は、実施例1と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Cは6原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.13に相当した。また、原子濃度比でSi/C/O=1.00/0.07/0.08であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.45であった。また、負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.15であった。更にまた、EPMAで負極材中の元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSi中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極A,Bを用い、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/ジエチルカーボネート(DEC)=6/4(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
ターゲット材としてSiを用い、チャンバー内に高純度窒素ガスを流して圧力を0.034Paとし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とした以外は、実施例1と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Nは33原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.68に相当した。また、原子濃度比でSi/N/O=1.00/0.51/0.02であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RS=0.72であった。また、負極材のX線回折測定を行ったところ、Si3N4の明確なピークは検出されずXIsz=0.91であった。更にまた、EPMAで負極材中の元素Nの分布を測定したところ、実施例1と同様にSi中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極A,Bを用い、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1.5/2.5/6(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6に、更にビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を0.015Pa、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気とし、成膜時間を80分間に変えた以外は、実施例5と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は5μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Nは20原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.43に相当した。また、原子濃度比でSi/N/O=1.00/0.27/0.06であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RS=0.57であった。また、負極材のX線回折測定を行ったところ、Si3N4の明確なピークは検出されずXIsz=0.94であった。更にまた、EPMAで負極材中の元素Nの分布を測定したところ、実施例5と同様にSi中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極A,Bを用い、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(モノフルオロエチレンカーボネート)/エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=0.5/3.5/6(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6に、更にビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
約20μmのSi粒子と黒鉛を重量比で8対2の割合で混合、ペレットを作成し蒸着源とし、集電体基板として圧延銅箔Aを用い、ULVAC社製「EX−400装置」にて電子ビーム加熱蒸着を行って、集電体基板上に薄膜状負極材が形成された薄膜負極Aを得た。この時、チャンバーを予め9×10−5Paまで真空引き後、エミッション電流60mAで成膜を行った。
また、上記と同様にして圧延銅箔Bを用いて薄膜負極Bを得た。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は約7μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、負極材中に元素Cは18原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.43に相当した。また、原子濃度比でSi/C/O=1/0.28/0.26であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=0.10、RSC=0.15、RS=0.60であった。また、負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。更にまた、EPMAで負極材中の元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSi中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
実施例1と同じ負極を用い、電解液に4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン/ジエチルカーボネート(DEC)=2/8(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
ターゲット材にSiを用い、成膜時間を60分間とした以外は、実施例1と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は4μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素C、Nは含有されておらず、原子濃度比でSi/O=1.00/0.02であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.30であった。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
ターゲット材を、SiとNiの混合物(Si円板上に、SiとNiの面積比が大凡100対4となるように、Niのチップを貼りつけたもの)に変えた以外は、実施例1と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は6μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Niは25原子%含有されており、NiSi2中の元素Ni濃度に対するNi濃度比Q(Ni)は0.79に相当した。また、原子濃度比でSi/Ni/O=1.00/0.35/0.06であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=0.04、RS=0.28、RSN=0.07であった。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
成膜時の高純度アルゴンガス中の酸素濃度を0.15%に変えた以外は、実施例3と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は約5μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Cは27原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.81に相当した。また、原子濃度比でSi/C/O=1.00/0.68/0.83であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=2.69、RSC=0.35、RS=0.84であった。更にまた、負極材のX線回折測定を行ったところ、XIsz=0.77であった。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。なお、放電容量(A)が小さかったため、アルミラミネート型電池でのサイクル評価は行なわなかった。
ターゲット材のSiとCの面積比を100対1に、成膜時間を80分間に変えた以外は、実施例3と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は約5μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Cは3原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.06に相当した。また、原子濃度比でSi/C/O=1.00/0.03/0.06であった。また、負極材のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.41であった。また、負極材のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.13であった。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を0.19Paに変えた以外は、実施例5と同様にして薄膜状負極材を成膜して薄膜負極A,Bを作製した。
得られた薄膜負極A,Bの負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された負極材の膜厚は7μmであった。また、負極材の組成分析をしたところ、膜中に元素Nは53原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は1.07に相当した。また、原子濃度比でSi/N/O=1.00/1.15/0.02であった。また、負極材のラマンスペクトル分析をしたところ、ラマンピークは得られなかった。更にまた、負極材のX線回折測定を行ったところ、XIsz=1.18であった。
この薄膜負極A,Bを用いて実施例1と同様にしてコイン型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。なお、コイン電池で充放電出来なかったため、アルミラミネート型電池でのサイクル評価は行なわなかった。
実施例1と同じ薄膜負極A,Bを用い、電解液にエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3.7/6.3(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
実施例1と同じ薄膜負極A,Bを用い、電解液にエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3.7/6.3(質量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6に、更にビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した電解液を用いて実施例1と同様にしてコイン型電池、アルミラミネート型電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
比較例1の電池は、含フッ素エステルを含む非水電解液を用いているが、負極にSiを用いており薄膜状負極材中に元素Zが存在せず、本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
(1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(2)元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
Claims (10)
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、非水溶媒にリチウム塩が溶解された非水電解液とを備える非水電解液二次電池において、該負極が、一般式SiZxMy(式中Z、M、x、yは下記条件(1)〜(4)の通り)で表される、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする負極材を有し、且つ、該非水電解液が、フッ素を含有するエステル化合物を含むことを特徴とする非水電解液二次電池。
(1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(2)元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。 - 前記非水電解液が、フッ素を含有する炭酸エステルを、リチウム塩を除いた非水電解液の質量に対して2〜80質量%含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 前記非水電解液が、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチレンサルファイトからなる群より選ばれる1種以上を0.01〜10質量%含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 前記負極材が、Si中に元素Zが分散した化合物からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 前記負極材のラマンスペクトル分析によるラマンRC値が0.0以上、2.0以下であり、且つ、ラマンRSC値が0.0以上、0.25以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 前記負極材のラマンスペクトル分析によるラマンRS値が0.40以上、0.75以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 前記一般式SiZxMyにおいて、元素ZがCで、元素Mが酸素であり、x、yは、それぞれ0.053≦x≦0.90、0<y≦0.50の範囲の数であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
- 充放電を行った後に、前記負極の赤外分光光度計を用いた赤外透過光分析によるIRsc値が0.9以上、3.0以下であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
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