JP2007188877A - 電極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池 - Google Patents

電極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract


【課題】放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた高性能の非水電解質二次電池を安価に安定して効率的に実現し得る電極を提供する。
【解決手段】集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、該活物質が結合していることを特徴とする電極、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合している電極を製造する方法において、該活物質を気相成長させる工程を備えることを特徴とする電極の製造方法、前記電極(負極)又は前記方法で製造された電極(負極)及び正極と、電解質を備える非水電解質二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、該活物質が結合していることを特徴とする電極及びその製造方法、並びにこの電極を用いた非水電解質二次電池に関する。また本発明は、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、且つ、安価な電極及びその製造方法、並びにこの電極を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池が必要になってきている。特に、ニッケル・カドミウム、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギー密度の高い非水溶媒系リチウム二次電池が注目されてきている。リチウム二次電池の高容量化についても、従来、広く検討されていたが、近年、電池に要求される性能も高度化してきており、更なる高容量化と安価化が必要とされている。
リチウム二次電池の負極材料としては、これまで黒鉛などが検討されている。黒鉛はサイクル特性に優れ、電極膨張が小さく、且つ、安価であるために使用されてきた。しかしながら、黒鉛からなる負極材料は理論容量が372mAh/gという限界があり、更なる高容量化は期待出来ない。そこで、近年は黒鉛負極の代わりに理論容量が大きなリチウムと合金を形成するSi、Sn、Al等の合金系負極の検討がなされている。特にSiは容量が高く、負極としての適用が数多く試みられている。しかしながら、Si系負極はリチウムとの反応時に体積膨張が大きく、Siが微粉化したり、集電体から剥離しやすく、且つ、電解液との反応性が高く、サイクル特性が悪いという欠点がある。このため、合金系負極の高容量を活かしつつ、電解液との反応性が抑制された、サイクル特性に優れ、且つ、安価な負極の実現が求められている。
こうした中で、特許文献1には、Si等を蒸着やスパッタ法で銅箔基板状へ成膜することにより、電気抵抗が低く集電性が高く、高電圧、高容量で充放電特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献2には、集電体上に炭素からなる第一の活物質層を設け、その上にLiと合金化可能な金属または半導体からなる第二の活物質層を設けた電極を用いることにより、充放電時の膨張収縮による活物質の剥離を防止し、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献3には、炭素を主成分とする第一層の上にLiを吸蔵可能な材料を主成分とする第二層を有することにより、高い充放電効率を維持し、サイクル特性が向上した高容量な電池を得ることが記載されている。
また、特許文献4には、集電体表面に金属の突起物を形成し、突起物表面にSi等の電極材を形成することにより、サイクル特性が向上した高容量な電池を得ることが記載されている。
特開平11−135115号公報 特開2001−283833号公報 特開2002−358954号公報 特開2005−116509号公報
近年の電池に対する更なる高容量化の必要性の増大に伴い、高容量である合金系負極の活用が望まれているが、合金系負極では以下のような課題がある。
(1)電解液との反応に伴う不可逆容量が増加し、正極活物質中のリチウムを消費し、結果として電池容量が低下する。
(2)リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴う合金の微粉化や集電体からの剥離が生じ、サイクル特性が悪化する。
(3)サイクル中に電解液との反応により、充放電可能な活物質量が減少し、サイクル特性が悪化する。
(4)集電体からの剥離や微粉化を抑制するために、活物質を種々な工程を施し製造するので、生産性に劣りコストの低減が困難である。
従って、リチウム二次電池の更なる高容量化においては、合金系活物質を用いることによる高容量化だけでなく、電解液との反応を抑制し、サイクル特性を向上し、且つ、安価な負極を得ることが強く求められている。
しかしながら、特許文献1で、Siを蒸着法やスパッタ法で成膜した負極の場合、電解液との反応に伴う不可逆容量の増加や、リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴う合金の微粉化や集電体からの剥離を抑えることが難しく、サイクル特性が低下する問題がある。
また、特許文献2においては、集電体上に第一の活物質層として黒鉛をPVdF結着剤と共に塗布し、その上に第二の活物質層としてSiをCVD法で形成しているが、集電体と黒鉛は結着剤を介して接着しているため、活物質の膨張収縮に伴い剥離しやすく、集電性が低下しサイクル特性に問題がある。
また、特許文献3においても、集電体上に第一の活物質層として黒鉛及びVGCF(気相成長炭素繊維)をPVdF結着剤と共に塗布し、その上に第二の活物質層としてSiやSiOxを蒸着法で形成しているが、集電体と黒鉛及びVGCFは結着剤を介して接合しているため、活物質の膨張収縮に伴い剥離しやすく、集電性が低下しサイクル特性に問題がある。
また、特許文献4においては、電解銅箔表面に銅メッキすることで突起物を形成し、合金系電極材料の集電性を改善しているが、電解銅箔に更にメッキにて突起物を形成しているため製造コストが高い問題がある。また、突起物が剛直であるために、活物質の膨張収縮を緩和し難い問題もある。
本発明は上記の背景に鑑みて創案されたものであり、その課題は、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、且つ、安価な電極及びその製造方法と、この電極を用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、合金系電極について鋭意検討した結果、サイクル中の充放電に伴う合金の膨張収縮により、合金と集電体の界面の密着性が悪化し、集電が取れなくなることでサイクル劣化が進行することが明らかとなり、集電体表面に結合した気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質を結合させることで、
(i)充放電に伴う合金の膨張収縮の応力を導電性物質が変形することで緩和でき、
(ii)活物質が集電体から剥離しても、導電性物質が活物質及び集電体と結合しているので集電を確保することができ、
(iii)導電性物質が気相成長によって生成しているので工程数が減り安価に製造でき、
放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた高性能な電極及び非水電解質二次電池を安価に安定して効率的に実現し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、該活物質が結合していることを特徴とする電極、に存する(請求項1)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1に記載の電極において、前記導電性物質が炭素を主成分とする導電性繊維状物質であることを特徴とする電極、に存する(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1または請求項2に記載の電極において、前記活物質がSiを含むことを特徴とする電極、に存する(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電極
において、前記活物質がSi中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質を有する電極であって、該化合物が一般式SiZxy(式中Z、M、x、yは下記条件(1)〜(4)の通り)で表されることを特徴とする電極、に存する(請求項4)。(1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、式Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電極
において、前記活物質が気相成長で作製された物質であることを特徴とする電極、に存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合している電極を製造する方法において、該活物質を気相成長させる工程を備えることを特徴とする電極の製造方法、に存する(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電極であることを特徴とする非水電解質二次電池、に存する(請求項7)。
また、本発明の別の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項6項に記載の方法によって製造された電極であることを特徴とする非水電解質二次電池、に存する(請求項8)。
本発明によれば、放電容量が高く、サイクル特性に優れた高性能の非水電解質二次電池を安価に安定して効率的に提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[1]電極
本発明の電極は、集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合していることを特徴とする電極である。
このような本発明の電極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極として極めて有用である。例えば、本発明の電極を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、またサイクル特性に優れ、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
また、キャパシター等の電子エネルギー素子用の電極としても優れたものである。
<活物質>
本発明に係る活物質は、活物質元素と、場合によって含有される添加元素Z、Mを主成分とする。
[活物質元素]
活物質元素は、Si、Sn、Al、Zn、Ag、Ge、Pbのリチウムと合金化可能な元素であれば特に限定されないが、好ましくはSi、Sn元素であり、更に好ましくはSi元素である。Si元素が好ましい理由は、放電容量が大きいからである。なお、活物質中には2種類以上の活物質元素を含んでも良い。
[添加元素]
活物質は、活物質元素以外の添加元素Z、Mを含んでも良い。この添加元素Zとしては、C及び/又はN元素が好ましい。また、添加元素Mとしては活物質元素と添加元素Z以外の、周期律表2族、4族、5族、6族、8族、9族、11族、13族、14族、15族及び16族より選ばれる1種又は2種以上の元素であり、より好ましくは、B、Ti、Zr、W、O元素であり、更に好ましくはO元素である。
ここで、添加元素ZにC、N元素を用いると好ましい理由は、例えば活物質元素がSiの場合、
(i)Siよりも高融点化合物を形成しうる
(ii)Siよりも共有結合半径が小さい
(iii)Si中での拡散係数が小さい
(iv)リチウムと反応しても体積変化が少ない
からである。
その詳細は次の通りである。
理由(i):元素C、Nは、具体的にはSiC、Si34等のSiよりも高融点である
平衡的に存在する化合物を形成しうる。高融点化合物は一般的に生成の自由エネルギーが負で大きい安定な化合物である。このため、これらは後述するSiの活量を効果的に低下させることができ、電解液との反応性を抑制することができる。
理由(ii):元素C、Nは、Siの共有結合原子半径よりも小さいので、詳細は不明であるが、SiZxMy化合物中に平衡的に存在する化合物を形成し難く、高濃度で元素Zをより均質に分布させる事に有効と考えられ、Siの活量をより効果的に低下させることができ、電解液との反応性を抑制することができる。
理由(iii):元素C、Nは、Si中における拡散係数が小さいので、元素C、NがS
i中に分散していると、充放電に伴うSiの凝集や結晶化が抑制され、Siの微粉化や電解液との反応を抑制することができる。
理由(iv):元素C、Nは、リチウムと反応しても体積変化が少ないので、Siの導電パス切れに影響を及ぼし難いと考えられる。
なお、Cu、Ni等の元素のように、Cu3Si、Ni2Si等の平衡的に存在しうる化合物がSiよりも低融点である場合は、Siの活量が効果的に低下せず電解液との反応性を抑制することが難しく、且つ、Cu、Ni元素はSi中での拡散係数が大きいので、充放電に伴うSiの凝集や結晶化進行しSiの微粉化が起こり易く、サイクル特性は改善されない場合もある。また、活物質元素中に平衡的に存在する化合物が主成分となる場合には、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化する等の虞のある場合もある。
ここで、活量について説明する。
一般に、活量とは、一種の熱力学濃度である。物質量n1、n2、、、、、からなる多成分系について、成分iの化学ポテンシャルをμi、純物質の化学ポテンシャルをμi 0とす
ると、
μi−μi 0=RTlog ai
で定義されるaiを活量と呼ぶ。
また、活量aiと濃度ciの比γi
ai/ci=γi
を活量係数と呼ぶ。
例えば、溶媒と溶質からなるある系を熱力学的な溶液として考えた場合に、活量係数は、系を理想溶液と考えた場合のある成分の化学ポテンシャルと、系を実在溶液と考えた場合のある成分の真の化学ポテンシャルとの差に対応する量である。(1)ある成分iが溶質
である実在溶液の場合、溶質の濃度が低くなると、系は成分iが溶質の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。反対に、(2)ある成分iが溶媒である実在溶液の場合、
溶媒の濃度が高くなると、系は成分iが溶媒の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。また、成分iの化学ポテンシャルが、実在溶液の方が理想溶液よりも安定なときはγi<1となる。
活物質元素がSiの場合、成分iはSiであり、溶媒とみなされるSi中に、溶質とみなされる元素Zを含むことで溶媒Siの活量aiが低下し、γi<1となり、元素Zを含有したSi化合物(固溶体:実在溶液と見なす)の方がSi(理想溶液と見なす)よりも安定となり、この結果、電解液との反応性が更に抑制されていると考えられる。
但し、Siと元素Zの平衡的に存在する化合物Siap等を形成すると、Siの活量を効率的に低下させることができないので、添加元素Zを含む場合、元素ZはSi中に非平衡的に存在することが重要と考えられる。
[組成]
活物質の組成としては、特に限定はされないが、活物質元素の含有率が通常35at%以上、好ましくは50at%以上、更に好ましくは60at%以上で、また上限は、通常95at%以下、好ましくは90at%以下、更に好ましくは80at%以下である。活物質元素の含有率がこの範囲であれば、高容量の電池が得られるので好ましい。
活物質の組成は、例えば、後述の実施例に示す如く、X線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、当該活物質よりなる電極の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を行い、活物質中の活物質元素等の原子濃度をそれぞれ算出することで求めることができる。
[活物質元素がSiでSiZxy化合物の組成]
活物質がSi中に元素Zが非平衡的に存在した相のSiZxy化合物を主成分とする活物質の場合、SiZxyの組成において、SiZxyのxは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、式Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]で算出されるZ濃度比Q(Z)は、特に限定はされないが、通常0.10以上、好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.40以上、また上限は、通常0.95以下、好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.65以下となる値である。なお、「Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物」とは、Siapにおいて、p/(a+p)の値が最低値をとって平衡的に存在する化合物Siapをいう。
なお、本発明におけるSiに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Siapは、Siと元素Zの相図(例えば、ASM International社出版の「Desk Handbooks Phase Diagrams for Binary Alloys」)に記載されており、本発明では、このSiapのZ濃度(p
/(a+p))に対して、上述のZ濃度比Q(Z)を設定して、Z濃度比Q(Z)の数値範囲を用いて、xの範囲を限定している。
ここで言う、「平衡的に存在する化合物」とは、前記相図等に線図の頂として記載されている化合物Siap(式中a,pは整数)等の定比化合物のことであり、例えば、ZがCである場合には、SiCが安定な化合物として知られており、本発明に於いてはこの化合物を平衡的に存在する化合物とする。従って、ZがCである場合には、SiCが本発明のSiapに相当する。
また、例えば、ZがNである場合には、Si34が最も安定な化合物として知られているが、Si23、SiNも定比化合物として存在することが知られており、本発明に於いてはこれらの全ての化合物を平衡的に存在する化合物とする。従って、ZがNである場合には、SiNが本発明のSiapに相当する。
一方、「非平衡に存在する化合物」とは、平衡的に存在する化合物以外の化合物を指す。非平衡に存在する化合物の場合には、特定の定比化合物を形成せず、Si原子とZ原子がマクロに見ると均一に分散している。
Z濃度比Q(Z)がこの範囲を下回ると、Siの活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い場合もある。一方、この範囲を上回ると、平衡的に存在する安定な化合物SiaZp等を形成し、元素Zを増やしてもSiの活量は低下せず、電解液との反応性を抑制できない虞がある場合もある。また、SiaZp等は導電性が低いために、このような化合物が形成されると活物質の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞のある場合もある。更にまた、この範囲を大きく上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い場合もある。
ここで、Z濃度比Q(Z)が1の場合、Siは安定な化合物SiaZpとなっていることを意味し、好ましくない場合もある。
なお、元素Zとして、C、Nの元素を同時に用いる場合、2種の元素のそれぞれのSiaZp基準の元素Z濃度に対してZ濃度比Q(Z)を求め、その合計値をZ濃度比Q(Z)と見なす。
SiZxyのyは、0≦y≦0.5を満たす実数である。化合物SiZxyに元素Mを
含み、y≠0の場合、化合物SiZxMy中における元素Mの割合yは、特に限定はされないが、通常0.08以上、好ましくは0.10であり、また上限は、通常0.50以下、好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.30以下である。yがこの範囲を上回ると、Siの含有量が少なくなり、高容量になり難くなる場合もある。
また、元素Mを実質的に含まない場合、元素Mの割合yは、y=0又はy≒0をさす。本発明において、y≒0とは、本発明に係る活物質の製造工程等で元素Mが不可避的に含まれる(Mが実質的に含まれない)場合をさし、例えば、yは0.08未満である。
[活物質元素がSiで、添加元素ZがC、添加元素MがOの場合の組成]
活物質元素がSiで、添加元素ZがCで、添加元素MがOであり、一般式SiCxOyで表される活物質の場合、一般式SiCxOyにおいて、xは特に限定はされないが、通常0.053以上、好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.25以上であり、また上限は、通常0.90以下、好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.45以下である。
また、yは特に限定はされないが、通常0.0以上、好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.10以上であり、また上限は、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。
[活物質元素Siで、活物質中における元素Zの存在状態]
本発明の活物質中の元素Zの存在状態は、X線回折測定において、XIsz値が特に制限されないが、元素ZがCの場合、好ましくは1.2以下、更に好ましくは0.7以下である。元素ZがNの場合、好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.0以下である。XIsz値がこの範囲以下であれば、元素ZがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とし、SiaZp等の平衡的に存在する化合物は主成分でないと定義し、好ましい。XIsz値がこの範囲を上回る場合、即ち、SiaZp等の平衡的に存在する化合物の相が主成分となる(元素ZがCの場合は炭化珪素、Nの場合は窒化珪素)場合には、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化する虞や、SiaZp等の導電性が低いために薄膜状負極材の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞や、活物質の単位質量当たりの放電容量が小さくなる虞のある場合もある。XIsz値の下限値は通常0.0以上である。
[X線回折測定方法]
X線回折測定における活物質のXIsz値は、例えば、本発明の電極の活物質面を照射面にセットし、X線回折装置(例えば、リガク社製「X線回折装置」)を用いて測定することができ、測定条件については後述の実施例において示す通りである。
XIsz値の定義は次の通りである。
(元素ZがCの場合のXIsz値)
2θが35.7度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質のXIszと定義する。
ここで、2θが35.7度のピークはSiCに由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.2以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
(元素ZがNの場合のXIsz値)
2θが70.2度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質のXIszと定義する。
ここで、2θが27.1度のピークはSi34由来のピーク、28.4度のピークはシ
リコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.1以下であるということは、Si34が殆ど検出されないことを意味する。
[活物質元素がSi、添加元素Zの活物質における元素Zの分布状態]
活物質元素Si中の元素Zは、例えば、原子、若しくは分子、或いはクラスター等として、1μm以下の大きさのレベルで存在する。薄膜状の活物質の場合、元素Zの分布状態は、特に限定はされないが、好ましくは、薄膜状活物質中の厚み方向、及び、面内方向(厚み方向に対して垂直な方向)に均一に分布しており、更に好ましくは、薄膜状活物質の面内方向に均一に分布している。元素Zの分布が活物質の不均一で、局所的に存在している場合、Siの充放電に伴う膨張・収縮が元素Zの存在しないSi部分で集中的に起きるため、サイクルの進行に伴い導電性が悪化する虞のある場合もある。元素Zの分散状態はEPMA等で確認できる。
[活物質元素がSiで、添加元素Z、Mの活物質における元素Mの分布状態]
活物質元素Si中の元素Mは、分布状態に特に制限はなく、均一に分布していても、均一に分布していなくても、どちらでも良い。
[活物質元素がSiで添加元素Cの活物質のラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値]
活物質元素がSiで添加元素Cの活物質について、ラマン法により測定したラマンRC値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。ラマンRC値がこの範囲を上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い場合もある。ラマンRC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
また、ラマン法により測定したラマンRSC値は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。ラマンRSC値がこの範囲を上回ると、導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり充放電ができなくなる虞のある場合もある。ラマンRSC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
また、ラマン法により測定したラマンRS値は、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上で、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.65以下である。ラマンRS値がこの範囲を下回ると、サイクル特性が悪化する可能性がある場合もある。ラマンRS値がこの範囲を上回ると、充放電できない可能性がある場合もある。
なお、本発明における活物質のラマンスペクトル分析によるラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値とは、以下のラマン測定方法によるラマンスペクトル分析から求められ、各々、次のように定義される。
(ラマン測定方法)
ラマン分光器(例えば、日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、活物質が測定面となるように電極を測定セルにセットし、試料を回転させながらセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射し測定を行う。測定したラマンスペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、ラマンRC値、RSC値、RS値を求める。なお、バックグラウンド補正は、ピーク終始点を直線で結び、バックグラウンドを求め、その値をピーク強度から差し引くことで行う。
ここでラマン測定条件は次の通りであり、スムージング処理は、コンボリューション15ポイントの単純平均とする。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm-1
測定範囲:200cm-1〜1900cm-1
露光時間:30〜300sec
積算回数:3回
(定義)
・ラマンRC値
1300cm-1〜1600cm-1付近に現れるピークcのピーク強度Ic、300cm-1〜500cm-1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RC(RC=Ic/Ias)を算出し、活物質のラマンRC値と定義する。
ここで、ピークcとピークasは、それぞれ炭素とシリコン由来によるピークと考えられ、従って、ラマンRC値は炭素の量を反映したものであり、ラマンRC値が2.0以下であるということは、炭素が殆ど検出されないことを意味する。
・ラマンRSC値
650cm-1〜850cm-1付近に現れるピークscのピーク強度Isc、300cm-1〜500cm-1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RSC(RSC=Isc/Ias)を算出し、活物質のラマンRSC値と定義する。
ここで、ピークscとピークasは、それぞれSiCとシリコン由来によるピークと考えられ、従ってラマンRSC値はSiCの量を反映したものであり、ラマンRSC値が0.25以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
・ラマンRS値
520cm-1の強度Is、300cm-1〜500cm-1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RS(RS=Is/Ias)を算出し、活物質のラマンRS値と定義する。
ラマンRS値は、Siの状態を反映したものである。
[形態]
本発明の活物質は、図1(a)〜(f)に示した模式図の様な形態であり、少なくとも導電性物質と結合しており、活物質の構造としては、例えば、柱状構造、層状構造、平板構造等が挙げられる。
[膜厚]
活物質の膜厚は、これを用いてなる電極の活物質層の厚さに相当し、特に限定はされないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上であり、また上限は、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。活物質の膜厚がこの範囲を下回ると、これを用いた本発明の電極の1枚当たりの容量が小さく、大容量の電池を得るには数多くの負極が必要となり、従って、併せて必要な正極、セパレータ、負極自体の集電体の総容積が大きくなり、電池容積当たりに充填できる負極活物質量が実質的に減少し、電池容量を大きくすることが困難になる場合もある。一方、この範囲を上回ると、充放電に伴う膨張・収縮で、活物質が集電体基板から著しく剥離する虞があり、サイクル特性が悪化する可能性がある場合もある。
なお、この活物質は後述の製造方法に記述されるように、気相から成膜するのが好ましい。
<集電体>
以下、集電体について詳細に説明する。
[材質]
集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、中でも薄膜に加工しやすく、安価な銅が好ましい。銅箔には、圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い
場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理など)がなされていても良い。
[厚さ]
銅箔等よりなる集電体は、薄い方が薄い電極を製造することができ、同じ収納容積の電池容器内に、より広い表面積の負極を詰めることができる点で好ましいが、過度に薄いと、強度が不足し、電池製造時の捲回等で銅箔が切断する恐れがある。このため、銅箔等よりなる集電体は、5〜70μm程度の厚さであることが好ましい。銅箔の両面に活物質を形成する場合は、銅箔は更に薄い方が良いが、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による銅箔の亀裂発生を回避する観点から、この場合において、銅箔の更に好ましい厚さは8〜35μmである。
集電体として銅箔以外の金属箔を使用する場合には、それぞれの金属箔に応じて、好適な厚さのものを使用することができるが、その厚さはおおむね5〜70μm程度の範囲内である。
[物性]
集電体には、更に次のような物性が望まれる。
(1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体の導電性繊維状物質形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上、特に好ましくは0.10μm以上であり、また上限は、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
集電体の平均表面粗さ(Ra)を上記した下限と上限の間の範囲内とすることにより、良好な充放電サイクル特性が期待できる。上記下限値以上とすることにより、導電性繊維状物質や活物質との界面の面積が大きくなり、導電性繊維状物質や活物質との密着性が向上する。平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが好ましい。
(2)引張強度
集電体の引張強度は、特に制限されないが、通常100N/mm2以上、好ましくは2
50N/mm2以上、更に好ましくは400N/mm2以上、特に好ましくは500N/mm2以上である。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、
通常1000N/mm2以下である。
引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割っ
たものである。本発明における引張強度は、JISZ2241(金属材料引張試験方法)に記載と同様の装置及び方法で測定される。引張強度が高い集電体であれば、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる場合もある。
(3)0.2%耐力
集電体の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm2以上、好ましくは
150N/mm2以上、特に好ましくは300N/mm2以上である。0.2%耐力は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N /mm2以下が望ましい。
0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形している事を意味している。本発明における0.2%耐力は、引張強度と同様な装置及び方法で測定される。0.2%耐力が高い集電体であれば、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による集電体の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる場合もある。
<導電性物質>
以下、導電性物質について詳細に説明する。
[元素]
本発明の導電性物質の元素は、Ni、Cu、Fe、C、Sn、Si等から選ばれる元素を主成分とし、前記元素や前記元素を用いた化合物として導電性物質を形成することができれば特に限定はされないが、好ましくは、集電体及び/又は活物質と固溶体等を形成することが可能な元素を主成分とし、より好ましくはNi、Cu、C元素を主成分とし、更に好ましくはC元素を主成分とする。
ここで、導電性物質の元素にCを主成分として用いると好ましい理由は、例えば活物質元素がSiで集電体元素がCuの場合、
(i)リチウムと反応しても体積変化が少ない
(ii)活物質元素Si、集電体元素Cuと反応し化合物、または拡散層を形成可能である。
(iii)気相から成長させることができるからである。
その詳細は次の通りである。
理由(i):元素Cは、リチウムと反応しても体積変化が少ないので、Siの導電パス
切れに影響を及ぼし難いと考えられる。
理由(ii):元素Cは、活物質元素Siと直接反応しSiC等の結合が部分的に形成可能であったり、集電体元素Cuに元素Cが傾斜している拡散層を形成可能であるため、活物質や集電体からの剥離を抑制できると考えられる。
理由(iii):元素Cは、気相から導電性の繊維状物質として成長させることが容易で
あり、生産性に優れている。
[形態]
本発明の導電性物質は、例えば、図1(a)〜(f)に示した模式図の様な形態であり、集電体表面及び活物質と結着剤等の介在なしに結合している。導電性物質の形態は、粒子状、繊維状、板状等がある。中でも繊維状物質が集電性に優れているので好ましい。また繊維状物質の場合、1本の繊維であってもいいし、複数本に枝分かれしている繊維状物質であってもよい。また、繊維は直線状でなく、らせん状に巻いていても、綿状にカールしていてもよい。
導電性物質が集電体表面に結合していることで、表面が平滑である安価な集電体(例えば、圧延銅箔)をそのまま用いても、活物質は少なくとも導電性物質に結合しているため、集電体との密着性を維持し集電を確保し易い。
[活物質に対する割合]
以下の式で示される本発明の導電性物質の活物質に対する割合は、特に限定はされないが通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、また上限は、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
導電性物質の割合=導電性物質の重量/活物質重量×100
導電性物質の活物質に対する割合がこの範囲を下回ると、集電体と活物質を結合する量が少なく、導電性物質を入れた効果が現れ難い場合もある。また、この範囲を上回ると、電極中の活物質の含有量が少なくなり電池容量が小さくなる場合もある。
[導電性物質が繊維状の場合の直径]
本発明の導電性物質が繊維状の場合、繊維直径は、特に限定はされないが通常0.7nm以上、好ましくは10nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、また上限は、通常1μm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
繊維直径がこの範囲を上回ると、柔軟性が得られ難く膨張収縮の緩和効果が小さい場合もある。
[導電性物質が繊維状の場合の長さ]
本発明の導電性物質が繊維状の場合、繊維長は特に限定されないが、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、また上限は、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
導電性繊維状物質の繊維長がこの範囲を下回ると、導電性繊維状物質の柔軟性が得られ難く膨張収縮の緩和効果が小さい場合もある。一方この範囲を上回ると負極の厚さが厚くなり電池容量が低下する虞のある場合もある。
[導電性物質が繊維状で、元素Cの場合の構造]
本発明の導電性物質が繊維状で、元素がCの場合の構造は、繊維軸方向に対し炭素面の配列方向が垂直である構造(プレートレット型)、斜めに傾斜している構造(ヘリングボン型)、繊維軸方向である構造(チューブラ型)等がある。
[2]製造方法
本発明の電極の製造方法は、上記特徴を有する電極が製造可能な方法であれば特に制限されないが、例えば、以下に挙げる方法などによって製造することができる。
<集電体表面への導電性物質の形成方法>
[原料]
導電性物質の原料としては、前述の導電性元素の単独体原料や該元素を含む化合物等を用いることができる。例えば、C元素を主成分として気相成長で導電性物質を形成する場合、元素C源としてはCH4、C26、C38、C22、C24、CO等である。これら
は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、希釈ガスとしてN2
Ar等の不活性ガスやH2を用いても良い。
[形成方法]
集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合した導電性物質の形成方法は気相成長法を用いる。
気相成長で導電性物質を形成する方法としては、CVD法などが用いられる。
CVD法では、前述の原料を気相化学反応により、集電体表面に堆積させて導電性物質を形成する。一般にCVD法は、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、cat−CVD法などを挙げることができる。熱CVD法は、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ導電性物質を形成するものである。プラズマCVD法は、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いた方法であり、光CVD法は、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いた方法である。cat−CVD法は、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより導電性物質を形成するものである。
この中でも、cat−CVD法は低温でC元素を主成分とする導電性物質を高速に形成できるので好ましい。触媒として用いる元素はFe、Ni、Co、希土類金属等が挙げられ、好ましくはNi触媒が用いられ、酢酸塩、硝酸塩等としてアルコールや水等の溶媒に溶解し、集電体上に塗布、乾燥し、更に還元することにより触媒金属を形成する。
前記cat−CVD法の原料ガスと加熱触媒との接触分解反応温度は、特に限定はされないが通常450℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは550℃以上であり、また上限は、通常1100℃以下、好ましくは900℃以下、より好ましくは800℃以下である。
接触分解反応温度がこの範囲を下回ると、C元素の成長が遅い場合もある。また、この範囲を上回ると、集電体と触媒金属の反応が進行したり、集電体の変質が起きる可能性がある場合もある。
<導電性物質への活物質の形成方法>
[原料]
活物質の原料としては、前述の活物質元素の単独体、化合物、組成物、混合物を用いることが出来る。活物質元素としては、前述のSi、Sn、Al、Zn、Ag、Ge、Pbのリチウムと合金化可能な元素が挙げられるが、その単独体としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi、金属Sn、Al、Zn、Ag等を、化合物としては、シリコン化合物(SiC、Si34、SiS、SiS2等の昇華性化合物)等を用いることができる。
活物質元素を含む昇華性の化合物は前述の通りであるが、昇華性の化合物を用いると、後述の蒸着法において容器との反応を抑制し易く、且つ、活物質の組成を制御し易く好ましい。特にSiCは、雰囲気から混入する酸素がSiC中の炭素と反応することで、活物質中に含まれる酸素量を低減しながら、且つ、炭素量を調整できるので好ましい。
また、活物質原料中の少なくとも一部に昇華性の化合物を用いる場合、昇華性化合物の割合は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上であり、また上限は、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。昇華性化合物の割合がこの範囲を下回ると、前述の昇華性化合物を用いた効果を得難い。
添加元素Zの種類は前述の通りであるが、その原料のうち、例えば、C元素の原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等の炭素や、炭化物等の炭素との反応種を、N元素の原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、C元素の原料としては、Cを含むガス(CH4、C26、C38等)や黒鉛のアーク放電や抵抗加熱などに よりCを気化させたガスを、N元素の原料としては、Nを含むガス(NH3、N2等)を用いることができる。
後述の蒸着法での気相成長の場合、成長速度を上げるには活物質原料の加熱温度を上げることが最も効果的であるが、同時に雰囲気から混入する酸素が活物質と反応し易くなり酸化物が多く形成してしまう虞があるが、添加元素ZにC元素を含む場合、高温になるほど雰囲気中の酸素と炭素の反応が進行するため、活物質中に含まれる酸素量を低減できるので好ましい。
また、例えば、活物質元素がSiである場合、Siと炭素が反応することでSi単独よりも蒸発速度の速いSiとCからなる化合物が形成し蒸発するため、気相成長速度が速まり好ましい。
また、活物質元素と添加元素Z、Mを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
また、これら活物質元素、活物質元素を含む昇華性の化合物、添加元素Z、Mの原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
一般式SiZxyにおいて、y≠0で添加元素Mを含む場合、添加元素Mは活物質元素と添加元素Z以外の、周期律表2族、4族、5族、6族、8族、9族、11族、13族、14族、15族及び16族より選ばれる1種又は2種以上の元素であり、より好ましくは、B、Ti、Zr、W、O元素であり、更に好ましくはO元素を用いることができる。
活物質は、以下に詳述される、A:スパッタリング、B:真空蒸着、C:CVD、D:イオンプレーティング、の少なくとも1つによって形成され得る。また、これらを組み合せて活物質を形成させてもよい。
A.スパッタリング
スパッタリングでは、減圧下で、プラズマを利用して上記原料よりなるターゲットから発せられた活物質材料を集電体表面の導電性物質上に衝突、堆積させて薄膜等を形成する。スパッタリングによると、形成した活物質と導電性物質や集電体との界面状態が良好であり、導電性繊物質や集電体に対する活物質の密着性も高い。
ターゲットに対するスパッタ電圧の印加方法としては、直流電圧、交流電圧のいずれも用いることができる。その際、集電体に実質的に負のバイアス電圧を印加して、プラズマからのイオンの衝突エネルギーを制御することも可能である。
活物質形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。化合物SiZxy中の元素ZがNの場合、前記不活性ガス中に微量の窒素ガスとして共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
スパッタリングにより活物質を形成する際の集電体は、水冷やヒーター等により温度を制御することもできる。集電体の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
スパッタリングによる活物質の形成における成長速度は、通常0.01〜0.5μm/分である。
活物質形成前に、逆スパッタや、その他のプラズマ処理などの前処理により、導電性物
質や集電体表面をエッチングすることができる。このような前処理は、導電性物質や集電体表面の汚染物や酸化膜の除去、活物質の密着性の向上に有効である。
B.真空蒸着
真空蒸着では、活物質となる上記原料を溶融・蒸発させて、導電性物質上に堆積させる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて高い成長速度で膜を形成できる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて、所定膜厚の活物質形成時間の短縮を図る観点から製造コスト面で有利に活用することができる。その具体的な方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法などを挙げることができる。誘導加熱法では黒鉛等の蒸着坩堝を誘導電流により、抵抗加熱法では蒸着ボートなど通電した加熱電流により、電子ビーム加熱蒸着では電子ビームにより、それぞれ蒸着材料を加熱溶融し、蒸発させて形成する。
真空蒸着の雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。化合物SiZxy中の元素ZがNの場合、微量の窒素ガスを不活性ガスと一緒に導入しながら減圧にし、真空下で同時にSiZxyを形成することも可能である。
活物質形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
真空蒸着により活物質を形成する際の集電体は、ヒーター等により温度を制御することもできる。集電体の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
真空蒸着による活物質の形成における成長速度は、通常0.1〜500μm/分程度である。
スパッタリングの場合と同様に、導電性物質に活物質堆積させる前に、イオンガンなどでイオン照射をすることにより導電性物質や集電体表面にエッチング処理を施しても良い。このようなエッチング処理により、導電性物質や基板と活物質との密着性を更に高めることができる。活物質を形成する間に、導電性物質や集電体にイオンを衝突させることにより、導電性物質や集電体に対する活物質の密着性を更に向上させることもできる。
C.CVD(Chemical Vapor Deposition)
CVDでは、活物質となる上記原料を気相化学反応により導電性物質上に堆積させる。一般にCVDは、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、cat−CVDなどを挙げることができる。熱CVDでは、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ活物質を形成する。プラズマCVDは、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いる。光CVDは、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いる。cat−CVDは、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより活物質を形成する。
CVDで用いられるSi源としてはSiH4、SiCl4等であり、Z源としてはNH3
、N2、CH4、C26、C38等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
D.イオンプレーティング
イオンプレーティングでは、活物質となる上記原料を溶融・蒸発させ、プラズマ下で蒸発粒子をイオン化及び励起することで、導電性物質上に強固に形成させる。具体的には、
原料を溶融・蒸発させる方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法等を挙げることができ、イオン化及び励起する方法としては、活性化反応蒸着法、多陰極熱電子照射法、高周波励起法、HCD法、クラスターイオンビーム法、マルチアーク法等を挙げることができる。また、前記原料を蒸発させる方法とイオン化及び励起する方法は、適宜選択し、それらを組み合わせて行うことができる。
蒸着法の高い成長速度の利点と、スパッタリングの導電性物質や集電体への強い密着性の利点を利用し、例えば、スパッタリングにより第1の薄膜層を形成し、その後蒸着法により高速に第2の薄膜層を形成することにより、導電性物質や集電体との密着性が良好になる界面領域を形成すると共に、高い成長速度で活物質を形成することができる。このような成長方法のハイブリッドな組合手法により、充放電容量が高く、且つ充放電サイクル特性に優れた電極を効率的に製造することができる。
スパッタリングと蒸着法を組み合わせて活物質を形成することは、減圧雰囲気を保ちつつ連続的に行われることが好ましい。これは、大気に暴露することなく連続的に第1の薄膜層と第2の薄膜層とを形成することによって、不純物の混入を防止できるからである。例えば、同一の真空環境の中で、集電体を移動させながら、スパッタ及び蒸着を順次行うような薄膜形成装置を用いることが好ましい。
集電体の両面に活物質を形成する場合、集電体の一方の面に対する活物質層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成と、集電体の他方の面に対する活物質層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成とは、減圧雰囲気を保持したまま連続して行うことが好ましい。
[3]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解質を備える非水電解質二次電池において、負極として本発明の電極ないし本発明の方法により製造された電極を用いたものである。
本発明の非水電解質二次電池を構成する正極、電解質等の電池構成上必要な、負極以外の部材の選択については特に制限されない。以下において、本発明の非水電解質二次電池を構成する負極以外の部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
<正極>
正極は、集電体上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなる。正極は、通常、正極活物質と結着及び増粘効果を有する有機物を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体上に薄く塗布した後、乾燥する工程、続いて所定の厚み及び密度まで圧密するプレス工程により形成される。
正極活物質材料には、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有している限り特に制限はないが、金属カルコゲナイド系の正極材料が特に好ましい。具体的には、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などを使用することができる。具体的には、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2
LiMn24及びこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb34、Mo34、CoS2、V25、P25、CrO3、V33、TeO2、GeO2等を用いることが
できる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
正極活物質層には、正極用導電剤を用いることができる。正極用導電剤は、用いる正極活物質材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極活物質材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、正極活物質材料に対して2〜15重量%が特に好ましい。
正極活物質層の形成に用いられる結着及び増粘効果を有する有機物としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架
橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体を
挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
正極活物質層には、前述の導電剤の他、更にフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30重量%が好ましい。
正極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30重量%以下程度まで添加することもできる。
有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。これらは1種
を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
正極活物質、結着剤である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される正極用導電剤、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して正極活物質スラリーを調製し、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層が形成される。
正極活物質スラリー中の正極活物質の濃度の上限は通常70重量%以下、好ましくは55重量%以下であり、下限は通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上である。正極活物質の濃度がこの上限を超えると正極活物質スラリー中の正極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると正極活物質スラリーの保存中に正極活物質が沈降しやすくなる。
正極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、下限は通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる正極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると正極活物質層の結着性に劣るものとなる。
正極用集電体基板には、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。正極用集電体基板の厚みは特に限定されないが通常1〜50μm程度である。
<電解質>
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23等が好ましく用いられる。これらの溶質は、1種類を選択して使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上、特に0.5mol/L以上で、2mol/L以下、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。これらの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒が好ましい。
これらの溶媒は1種類を選択して使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明に係る非水系電解液は、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルや従来公知の過充電防止剤、脱酸剤、脱水剤などの種々の助剤を含有していても良い。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等が挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
これらは1種を単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。
非水系電解液が分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルを電解液に含有させることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。その理由は明らかではないが、負極の表面に安定な保護被膜を形成することができるためと推測される。ただし、その含有量が少ないとこの特性が十分に向上しない。しかし、含有量が多すぎると高温保存時にガス発生量が増大する傾向にあるので、電解液中の含有量は上記の範囲にするのが好ましい。
過充電防止剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の
前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール及び2,6−ジフルオロアニソ−ル等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上併用しても良い。
非水系電解液中における過充電防止剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。過充電防止剤を含有させることにより、過充電等のときの電池の破裂・発火を抑制することができる。
他の助剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン及びテトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。これらの助剤を含有することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状又は、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としても良い。有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
<電池構成>
本発明の非水電解質二次電池は、少なくとも正極および負極と、電解質によって構成され、更に必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケース等など備えて構成されてもよい。
セパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
本発明の非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解質二次電池を製造する方法は特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その
上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット及び封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<導電性物質の形成>
集電体として、平均表面粗さ(Ra)が0.05μm、引張強度が400N/mm2
0.2%耐力が380N/mm2で、厚さが18μmである、表面が平滑な圧延銅箔を用
い、触媒として酢酸ニッケル・4水和物のメタノール溶液を用い、金属性ローラーで集電体表面に塗布後、メタノールを室温で蒸発乾燥させ、銅箔上に酢酸ニッケルを約0.1mg/cm2担持した。この酢酸ニッケルを担持した銅箔表面を上にして石英反応管内にセ
ットし、30NmL/minのH2ガス流通下、電気炉にて550℃で30分間保持し、酢酸ニッケルをNi金属に還元した。続いて、雰囲気を30NmL/minのC24に切替え、550℃で10分間cat−CVD処理を行い、集電体表面にC元素からなる導電性物質を形成した。
得られた導電性物質は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、長さ約2μmの導電性繊維状物質であった。
<活物質の形成>
集電体として、前記C元素からなる導電性物質を形成した集電体を用い、ターゲット材として、SiとCの混合物(原子比でSi:C=1:0.3)を用い、RFスパッタ装置(徳田製作所社製「CFS−4ES」)にて成膜を行い、導電性繊維状物質及び集電体上に薄膜状活物質が形成された負極を得た。この時、SUS基板は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め2×10-3Paまで真空引き後、チャンバー内に高純度アルゴンガスを流して圧力を0.67Paの雰囲気としてから、電力密度8.8W/cm2で90分間成膜を行った。このスパッタガスの酸素濃度は0.001%程度であった。
なお、成膜前に電解銅箔表面の酸化膜等を除去する目的で逆スパッタを行い、導電性繊維状物質や基板表面のエッチングをした。
得られた負極の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された活物質の膜厚は約6μmであった。また、集電体表面と導電性繊維状物質、及び導電性繊維状物質と活物質は結合しているのが観察された。
また、導電性物質の形成前後の重量変化と活物質の形成前後の重量変化から、負極中の導電性物質重量と活物質重量を求め、導電性物質の活物質に対する割合を求めたところ20重量%であった。
また、下記の方法に従ってXPSにて活物質の組成分析をしたところ、Si薄膜中に元素Cは24原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.49に相当した。また、原子濃度比で表すとSi/C/O=1.00/0.33/0.04であった。また、下記の方法に従ってラマン測定にて活物質のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=scピーク検出されず、RS=0.55であった。更にまた、下記の方法に従って活物質のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。
<XPS測定>
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESC
A」)を用い、活物質の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。得られたC1sのピークトップを284.5eVとして帯電補正し、Si2p、C1s、O1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C、Oの原子濃度をそれぞれ算出した。得られたそのSiとCとOの原子濃度から、原始濃度比Si/C/O(Si原子濃度/C原子濃度/O原子濃度)を算出し、活物質の組成値Si/C/Oと定義する。
<ラマン測定>
ラマン測定としては、ラマン分光器(日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、活物質を測定セルへセットし、測定はセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射させながら行った。
なお、ここでのラマン測定条件は次のとおりである。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm-1
測定範囲:200cm-1〜1900cm-1
スムージング処理:単純平均、コンボリューション15ポイント
<X線回折測定>
X線回折測定としては、リガク社製「RINT2000PC」を用い、活物質を測定セルへセットし、Out-of-Plane法にて、2θ=10〜70度の範囲の測定を行った。バックグラウンドの補正は、2θ=15〜20度付近と、40〜45度付近を直線で結び行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、得られた活物質の分析及び測定方法は、特記しない限り、実施例1におけると同様である。
上記で製造された負極を用いて、下記の方法に従ってリチウム二次電池を作製し、この電池について、下記方法で放電容量、充放電効率、サイクル特性の評価を行い、結果を表2に示した。
<コイン型リチウム二次電池作製方法>
上記方法で作製した集電体の片面に活物質が形成されている負極を10mmφに打ち抜き、110℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液とセパレータと対極とを用いてコイン型電池(リチウム二次電池)を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液とを用いた。セパレータとし
てポリエチレンセパレータとを用いた。対極としてリチウム金属対極を用いた。
<放電容量評価>
1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して10mVまで充電し、更に、
10mVの一定電圧で電流値が0.123mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電
を行う充放電サイクルを5サイクル繰り返し、1〜3サイクル目の放電の平均値を放電容量とした。また、重量当りの放電容量とする場合は、負極材の活物質重量は負極重量から同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで求め、以下に従って計算した。
放電容量(mAh/g)=1〜3サイクル目の平均放電容量(mAh)/活物質重量
(g)
活物質重量(g)=負極重量(g)−同面積の銅箔重量(g)
<充放電効率評価>
放電容量の測定時に、以下に従って計算した。
充放電効率(%)={初回放電容量(mAh)/初回充電容量(mAh)}×100
<サイクル特性評価>
上述の放電容量の測定方法に従い、この充放電サイクルを10回繰り返し、以下の式でサイクル維持率を計算した。
サイクル維持率(%)={10サイクル後の放電容量(mAh)/1〜3サイクルの平均放電容量(mAh)}×100
[実施例2]
実施例1と同じ表面にC元素からなる導電性物質を形成した集電体を用い、活物質原料として破砕Siを用い、セキスイメディカル電子社製「MU−1700D高周波誘導加熱装置」にて、高周波誘導加熱式の真空蒸着を行って負極を作製した。
集電体は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバー内を真空引きし1×10-3Paの雰囲気としてから、破砕Siの入った黒鉛坩堝を高周波誘導加熱電流9Aにて加熱し80秒間真空蒸着を行った。またこの時、放射温度計で測定した真空蒸着時の坩堝上面の温度は1650℃であった。
得られた薄膜状活物質の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された活物質の膜厚は約4μmであり、真空蒸着時間で膜厚を除した成膜速度(膜厚÷真空蒸着時間)は40nm/secであった。また、集電体表面と導電性繊維状物質、及び導電性繊維状物質と活物質が結合しているのが観察された。
また、導電性物質の形成前後の重量変化と活物質の形成前後の重量変化から、負極中の導電性物質重量と活物質重量を求め、導電性物質の活物質に対する割合を求めたところ35重量%であった。
この負極について、実施例1と同様の方法に従ってXPSにて活物質の組成分析をしたところ、Si薄膜中に黒鉛坩堝から混入させた添加元素Cが11原子%、雰囲気から混入させた添加元素Oが11原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.25に相当した。また、原子濃度比で表すとSi/C/O=1.00/0.14/0.14であった。また、実施例1と同様の方法に従ってラマン測定にて活物質のラマン値を求めたところ、RC=ピーク検出されず、RSC=0.05、RS=0.57であった。更に、実施例1と同様の方法に従って活物質のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.12であった。
この負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例1]
<活物質の形成>
集電体として、銅箔表面にC元素からなる導電性物質を形成しないで、そのまま活物質を銅箔表面に直接形成した以外は、実施例1と同様にして集電体上に活物質を形成して負極を作製した。
得られた薄膜状活物質の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された活物質の膜厚は約6μmであった。また、活物質は集電体表面に直接形成されていた。
この負極について、実施例1と同様の方法に従ってXPSにて活物質の組成分析をした
ところ、Si薄膜中に元素Cが24原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.49に相当した。また、原子濃度比で表すとSi/C/O=1.00/0.33/0.04であった。また、実施例1と同様の方法に従ってラマン測定にて活物質のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=ピーク検出されず、RS=0.55であった。更に、実施例1と同様の方法に従って活物質のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。
この負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例2]
<導電性物質の形成>
集電体の代わりに、1mm厚さの銅板上に実施例1と同様にC元素からなる導電性物質を形成した。形成した導電性物質を銅板から剥離し、C元素からなる導電性繊維状物質のみを得た。得られた導電性繊維状物質に結着剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)1.5重量%(混合粉末を100重量%とした時)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)2重量%とを、それぞれ水溶液や水懸濁液の形で加えて更に混合し、厚み18μmの実施例1で用いた圧延銅箔上に塗布後、80℃で30分予備乾燥をし、結着剤によって約2μmの厚さで銅箔表面に接着している導電性繊維状物質を形成した。
<活物質の形成>
得られた銅箔を、導電性繊維状物質が接着している面を上にし、実施例1と同様に活物質を形成した。
得られた薄膜状活物質の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された活物質の膜厚は約6μmであった。また、集電体表面に導電性繊維状物質が集電体表面と平行な方向(集電体表面と繊維軸方向が同じ)に結着剤で接着され、その上に活物質が形成しているのが観察された。
また、導電性物質の形成前後の重量変化と活物質の形成前後の重量変化から、負極中の導電性物質重量と活物質重量を求め、導電性物質の活物質に対する割合を求めたところ25重量%であった。
この負極について、実施例1と同様の方法に従ってXPSにて活物質の組成分析をしたところ、Si薄膜中に元素Cが24原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.49に相当した。また、原子濃度比で表すとSi/C/O=1.00/0.33/0.04であった。また、実施例1と同様の方法に従ってラマン測定にて活物質のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=ピーク検出されず、RS=0.55であった。更に、実施例1と同様の方法に従って活物質のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。
この負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
上記実施例及び比較例で作製した負極の分析値等を表1に纏めて示す。
Figure 2007188877
Figure 2007188877
表1及び2より次のことが分かる。
比較例1の負極は、集電体表面に気相成長によって生成させた導電性物質が形成していないため本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例2の負極は、集電体表面に気相成長によって生成させた導電性物質を形成しているが、結着剤を用い接着しているために本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
これらに対して、実施例1、2の本発明の負極は、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合しており、全てが本発明の規定範囲を満たしている。そして、このような負極を用いると、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れた高性能の電池が得られる。
集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、該活物質が結合していることを特徴とする電極を用いることにより、放電容量が高く、充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、且つ、安価な非水電解質二次電池を実現することができるため、本発明の電極及び非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池が適用される電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
本発明の電極の構造を示す模式図である。この図において、導電性物質2は繊維状のものを例示している。また、(a)は平板状活物質で、集電体と活物質が密着していない構造、(b)は柱状活物質で、集電体と活物質が密着していない構造、(c)は柱状活物質で、集電体と活物質が部分的に密着している構造、(d)は平板状活物質で、集電体と活物質が密着している構造、(e)は層状活物質で、集電体と活物質が密着していない構造、(f)は粒状活物質で、集電体と活物質が密着していない、若しくは部分的に密着している構造を示す。
符号の説明
1 活物質
2 導電性物質
3 集伝体

Claims (8)

  1. 集電体と導電性物質と活物質からなる電極において、集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合していることを特徴とする電極。
  2. 前記導電性物質が、炭素を主成分とする導電性繊維状物質であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
  3. 前記活物質が、Siを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極。
  4. 前記活物質が、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質であって、該化合物が一般式SiZxy(式中Z、M、x、yは下記条件(1)〜(4)の通り)で表されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電極。
    (1)元素Zは、C及び/又はNよりなる元素である。
    (2)元素MはSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
    (3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、式Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
    (4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
  5. 前記活物質が、気相成長で作製された物質であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電極。
  6. 集電体表面に結合し、気相成長によって生成させた導電性物質に、活物質が結合している電極を製造する方法において、該活物質を気相成長させる工程を備えることを特徴とする電極の製造方法。
  7. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  8. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項6に記載の方法によって製造された電極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
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