JP5056224B2 - 薄膜又は粉末製造方法、薄膜又は粉末製造装置、及び非水電解質二次電池用電極材の製造方法 - Google Patents

薄膜又は粉末製造方法、薄膜又は粉末製造装置、及び非水電解質二次電池用電極材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、気相成長速度が速く、安価で生産性に優れ、且つ、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護できる薄膜又は粉末製造方法、薄膜又は粉末製造装置、及び非水電解質二次電池用電極材の製造方法、並びにこの非水電解質二次電池用電極材を用いた非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池に関する。
一般的に気相成長による薄膜又は粉末製造技術は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法などに分類される。これらは、目的用途によりそれぞれの製造法が選択され用いられているが、共通の課題として、性能に優れるのは無論のこと、生産性やコストの点で優れる製造法が求められている。特に高速成膜が可能で、安価なプロセスであれば、多岐に渡った用途への展開が可能であり、その様な薄膜又は粉末製造技術や装置が望まれている。
その中でも、真空蒸着法が成膜速度とコストの点で有利であり、更なる改良が求められている。
従来、真空蒸着法では、真空容器内に蒸発源の原料物質と基体とが配置され、抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱又はアーク加熱などにより蒸発源の原料物質を加熱(溶融)・蒸発させ、蒸気を基体上で凝縮させることにより、基体表面に膜(成膜物)を形成している。
ここで、真空蒸着において、更なる高速成膜を実現するためには、
(i)蒸発源と基体の距離を近づける
(ii)蒸気圧を高める(蒸発源の加熱温度を高くする)
などが有効な手段である。
しかしながら、蒸発源と基体との距離を近づけたり、蒸発源の加熱温度を高くしたりすると、蒸発源やその容器並びに加熱用ヒーター等からの熱伝導や輻射熱が大きくなり、基体(表面)温度が上昇し、基体の変質や形成した膜(成膜物)へ悪影響、例えば、基体の構成材料と成膜物との反応による成膜物の変質や特性劣化、を及ぼす問題があった。
従って、気相成長による薄膜又は粉末製造においては、更なる高速成膜が可能で、安価で生産性に優れ、且つ、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護できる薄膜又は粉末製造方法が強く求められている。
例えば、気相成長による薄膜製造技術を用いた具体例の一つとして、Si、Sn、Al等の合金系薄膜を用いたリチウム二次電池用の負極材が注目され、合金系負極の高容量を活かしつつ、安価な負極材の実現が求められており、前記熱伝導や輻射熱による基体や薄膜の変質を抑制しながら、高性能化と同時に更なる高速成膜化が必要とされている。
こうした中で、特許文献1には、半導体基板への真空蒸着において、基板温度測定用基板に熱電対を付けて基板の表面温度を推定することで、蒸発源からの輻射熱による熱供給量を制御する真空蒸着装置が記載されている。しかしながら、特許文献1では、加熱パワーをコントロールすることで熱供給量を制御し、基板温度を80〜100℃の範囲内にしているが、加熱パワーを低減させて温度コントロールを行っているので蒸着速度が遅くなる課題がある。また、発熱源からの熱伝導や輻射熱を抑制する部材を装置に設けることには何ら触れられていない。
また、特許文献2には、電子ビームを用いた真空蒸着において、蒸気漏洩の防止容器にセラミックスコーティングを施した炭素基板を用いることで、高真空を阻害するガス発生を抑制でき、効率的な運転ができる真空蒸着装置が記載されている。しかしながら、特許文献2には、高温の発熱源からの熱伝導や輻射熱から基体(蒸着板)や成膜物を保護する部材を設けることについては何ら触れられておらず、更なる高速成膜は望めない。
また、特許文献3には、電子ビーム等を用いた真空蒸着において、蒸着源を囲むように活物質が付着し難い防着板を設けることで、装置の稼働率や生産性を向上させることが記載されている。しかしながら、特許文献3には、高温の発熱源からの熱伝導や輻射熱から基体(集電体)や成膜物を保護する部材を設けることについては何ら触れられておらず、更なる高速成膜は望めない。
更に、特許文献4には、電子ビーム等を用いた真空蒸着において、蒸着源からの輻射熱や基体(集電体)の冷却や成膜時間を制御することにより、基体表面の温度を60〜195℃の範囲内にする製造方法が記載されている。また、輻射熱を制御する方法として、蒸着源と基体との間にシャッターを設け、シャッターを閉じることにより輻射熱を抑制する方法や、加熱部の面積を少なくして輻射熱を抑制する方法や、蒸着源と基体との距離を長くすることで輻射熱を抑制することが記されている。しかしながら、輻射熱を抑制することは可能でも、その為に成膜速度が低下する問題があり、更なる高速成膜は望めない。即ち、特許文献4の方法は、所定間隔でシャッターを閉じて、間欠的に成膜を行い、シャッターが閉じている間に基体を冷却するようにしたものであるが、このような方法では生産効率の良い連続製膜は行えない。また、輻射熱の防止のために断熱部材を用いることについても何ら触れられておらず、断熱機能のないシャッターでは基体を十分に保護することはできない。
特許第3451694号公報 特開2002−339059号公報 特開2003−7290号公報 特開2005−44526号公報
本発明は、気相成長速度が速く、安価で生産性に優れ、且つ、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護できる薄膜又は粉末製造方法、薄膜又は粉末製造装置、及び非水電解質二次電池用電極材の製造方法、並びにこの非水電解質二次電池用電極材を用いた非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、真空蒸着法等を用いた薄膜又は粉末製造方法について鋭意検討した結果、原料物質を保持した容器と基体との間に断熱部材を設置して、製膜時の原料物質の加熱源からの熱による基体の加熱を抑制することによって、基体と原料物質の容器とを近接配置した上で原料物質の加熱温度を高め、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護した上で、速い気相成長速度で、安価に生産性良く、薄膜又は粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、容器内の原料物質を加熱源により減圧下で600℃以上に加熱して蒸発させ、該原料物質の蒸気を基体上に凝縮させて気相成長させる薄膜の製造方法において、該容器と基体との間に、開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを設置し、前記容器からの蒸気をチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通して前記基体へ導き、該原料物質の蒸発時における前記加熱源による基体の加熱を抑制することを特徴とする薄膜製造方法(請求項1)、に存する
た、本発明の別の要旨は、前記原料物質を抵抗加熱若しくは誘導加熱によって加熱することを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造方法(請求項)、に存する
た、本発明の別の要旨は、前記基体を往復運動させ、前記薄膜が所定の膜厚に到達するまで該往復運動を継続することを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、前記基体の端部まで成膜した後に、前記容器に前記原料物質の補給を行なうことを特徴とする請求項に記載の薄膜製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造した薄膜を、前記基体から剥離させて粉末として回収することを特徴とする粉末製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の薄膜製造方法で製造した薄膜を用いた非水電解質二次電池用電極材の製造法であって、前記原料物質が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含み、該原料物質を減圧下で前記加熱源によって該リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素の融点より200℃以上高い温度に加熱することを特徴とする非水電解質二次電池用電極材の製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、請求項に記載の粉末製造方法によって製造した粉末を用いた非水電解質二次電池用電極材の製造法であって、前記原料物質が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含み、該原料物質を減圧下で前記加熱源によって該リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素の融点より200℃以上高い温度に加熱することを特徴とする非水電解質二次電池用電極材の製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、前記気相成長において、前記原料物質と炭素、又は、前記原料物質と炭素との反応種を気相成長させることを特徴とする請求項又はに記載の非水電解質二次電池用電極材の製造方法(請求項)、に存する。
ここで、高温での気相成長の場合、成長速度を上げるには原料物質の加熱温度を上げる(蒸気圧を高くする)ことが最も効果的であるが、炭素を含まない原料のみを用いた場合、加熱温度を上げると雰囲気等から混入する酸素が増えたり、原料物質と酸素が反応し易くなったりし、酸化物を多く形成してしまう場合もある。
一方、原料物質と炭素、又は、原料物質と炭素との反応種を原料に用いた場合、高温において雰囲気中の酸素は原料物質よりも炭素と反応し易く、一酸化炭素等の形で雰囲気中に存在し、依って原料物質中に含まれる酸素量が低減され、結果として加熱温度を上げることが可能となり、成長速度を更に高めることができると考えられる。
また、例えば、原料物質がSiである場合、Siと炭素が反応することでSi単独よりも蒸発速度の速いSiとCからなる化合物(SiC、SiC、SiC)等を形成して蒸発するため、気相成長速度が上がる効果も考えられる。
なお、ここで炭素源は、例えば、薄膜又は粉末製造装置の一部の黒鉛ヒーターや黒鉛坩堝や黒鉛チムニー等の炭素を含む材料から供給されても構わないし、原料物質と一緒に容器に入れて用いても構わない。
また、本発明の別の要旨は、前記薄膜が、一般式SiC(式中x=0.05〜0.90、y=0〜0.9)で表される組成を有することを特徴とする請求項に記載の非水電解質二次電池用電極材の製造方法(請求項)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、真空チャンバ内に、原料物質を収容する容器と、該容器内の原料物質を加熱するためのヒーターと、該原料物質の蒸気が表面上に凝縮して薄膜が生成する基体とを配置してなる薄膜製造装置において、該容器と基体との間に、該ヒーターからの熱による基体の加熱を抑制するための開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを配置した薄膜製造装置であって、前記容器からの蒸気がチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通って前記基体へ導かれることを特徴とする薄膜製造装置(請求項10)、に存する。
また、本発明の別の要旨は、真空チャンバ内に、原料物質を収容する容器と、該容器内の原料物質を加熱するためのヒーターと、該原料物質の蒸気が表面上に凝縮して薄膜が生成する基体と、該基体上の薄膜を該基体から剥離させて粉末として回収する手段とを配置してなる粉末製造装置において、該容器と基体との間に、該ヒーターからの熱による基体の加熱を抑制するための開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを配置した粉末製造装置であって、前記容器からの蒸気がチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通って前記基体へ導かれることを特徴とする粉末製造装置(請求項11)、に存する。
本発明によれば、容器内の原料物質を加熱して蒸発させ、蒸気を基体上に凝縮させて気相成長させる薄膜又は粉末の製造方法において、容器と基体との間に断熱部材を設置して、原料物質の加熱源からの熱による基体の加熱を抑制することにより、基体と原料物質の容器とを近接配置した上で原料物質の加熱温度を高めても、基体や基体上の成膜物への加熱源の影響を抑えることができ、速い気相成長速度で、且つ、原料物質が加熱される際の熱による基体や成膜物の劣化や変質を防止した上で、安価に生産性良く、薄膜又は粉末を製造することができる。
従って、このようにして製造される薄膜又は粉末を用いて、高特性の非水電解質二次電池用電極材、非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池を、安価にかつ生産性良く提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[1]薄膜
まず、本発明で製造される薄膜のうち、特に非水電解質二次電池用電極材として用いられる場合に好適な薄膜について詳細に説明する。
[元素]
薄膜に用いられる元素(以下、薄膜に用いられる元素を「薄膜元素」と称す場合がある)は、特に限定はされないが、1種以上の金属元素及び/又は半金属元素と、場合によって含有される添加元素などで構成される。
<金属元素>
金属元素とは半金属元素や非金属元素を除いた元素であり、特に限定はされないが、周期表1族、2族、4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、12族、13族及び14族より選ばれる1種以上の金属元素であり、より好ましくはリチウムイオンを吸蔵・放出可能な金属元素であり、更に好ましくはZn、Al、Ag、Sn、Pb、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu元素であり、特に好ましくはZn、Al、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu元素である。
ここで、非金属元素とは、H、C、N、P、O、S、周期表17族、周期表18族の元素のことを指す。
<半金属元素>
半金属元素とは、例えば、岩波社出版の「理化学辞典第5版」の半金属元素の項に記載されている、メタロイドと呼ばれる非金属元素ではあるが金属元素の傾向も示すものを指し、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Teより選ばれる1種以上の元素であり、より好ましくはリチウムイオンを吸蔵・放出可能なB、Si、Ge、As、Sbより選ばれる1種以上の元素であり、更に好ましくはB、Si、Geより選ばれる1種以上の元素である。
(リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素)
ここで、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素とは、元素単体、若しくは化合物の形態において、リチウムイオンを吸蔵・放出可能である元素と定義し、元素単体ではZn、Al、Ag、Sn、Pb、B、Si、Ge等が、化合物(例えば酸化物)の形態としてはTi、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等がリチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素である。また、これらの元素は1種以上であれば、複数種を混ぜて用いても良い。
なお、薄膜中に2種類以上のリチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素が含まれる場合、後述する「リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素の融点」とは、該元素の中で最も高融点である元素の融点を指す。
<添加元素>
薄膜は、金属元素や半金属元素以外の添加元素を含んでも良い。この添加元素としては、特に限定はされないが、非金属元素より選ばれる1種以上の元素であり、より好ましくはC、N、P、O、Sより選ばれる1種以上の元素であり、更に好ましくはC、N、Oより選ばれる1種以上の元素である。
[組成]
薄膜の組成としては、特に限定はされないが、金属元素及び/又は半金属元素の含有率が、通常10at%以上、好ましくは20at%以上、更に好ましくは30at%以上で、通常95at%以下、好ましくは85at%以下、更に好ましくは80at%以下である。
薄膜の組成は、例えば、後述の実施例に示す如く、X線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、当該薄膜の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を行い、薄膜中の元素の原子濃度をそれぞれ算出することで求めることができる。
<半金属元素がリチウムイオンを吸蔵・放出可能なSiで、添加元素がC、Oの場合の薄膜組成>
薄膜を構成する半金属元素が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素であるSiであり、添加元素がC、或いは更にOであり、一般式SiCで表される薄膜(活物質)の場合、一般式SiCにおいて、xは特に限定はされないが、通常0.05以上、好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.25以上で、通常0.90以下、好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.45以下である。
また、yは特に限定はされないが、通常0.0以上、好ましくは0.05以上で、通常0.90以下、好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.40以下である。
[形態]
本発明において、薄膜は基体上に原料物質を気相成長させることで得られる。
[構造]
基体上に成膜された薄膜の構造としては、例えば、柱状構造、層状構造等が挙げられる。
[膜厚]
薄膜の膜厚は、特に限定はされないが、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、また通常100μm以下、好ましくは60μm以下、更に好ましくは30μm以下である。非水電解質二次電池用電極材用の薄膜の場合、膜厚はこれを用いてなる電極の活物質層の厚さに相当し、膜厚がこの範囲であれば、充放電に伴う膨張・収縮で薄膜(活物質層)が基体(集電体)から剥離するのを抑制でき、良いサイクル特性が得られるので好ましい。
[2]粉末
次に、本発明で製造される粉末のうち、特に非水電解質二次電池用電極材として用いられる場合に好適な粉末(以下、電極材として用いられる粉末を「電極材粉末」と称す場合がある)について詳細に説明する。
[元素]
粉末に用いられる元素(以下、粉末に用いられる元素を「粉末元素」と称す場合がある)は、特に限定はされないが、前記薄膜元素と同様な元素を用いることができる。
[組成]
粉末の組成としては、特に限定はされないが、前記薄膜と同様な組成のものを用いることができる。
[形態]
本発明において、粉末は基体上に原料物質を気相成長し、更に基体上から原料物質を剥離することで得られる。
[体積基準平均粒径]
本発明に係る粉末の体積基準平均粒径は、特に限定はされないが、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。粉末の体積基準平均粒径がこの範囲を下回ると、粒径が小さすぎるため、電極材粉末間の導電パスや、電極材粉末と後述の導電剤などとの間の導電パスが取り難くなり、サイクル特性が悪化する虞のある場合もある。一方、この範囲を上回ると、後述の如く塗布により集電体上に電極活物質層を製造する時にむらが生じ易い。
体積基準平均粒径としては、測定対象に界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの2体積%水溶液(約1ml)を混合し、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920」)にて、体積基準の平均粒径(メジアン径)を測定した値を用いることができる。
[BET比表面積]
本発明に係る粉末のBET比表面積は、特に限定はされないが、通常は0.5m/g以上、好ましくは1.0m/g以上、また、通常は100m/g以下、好ましくは60m/g以下、更に好ましくは20m/g以下の範囲である。BET比表面積の値がこの範囲であると、電極材として用いた場合、電池の充電時にリチウムの受け入れ性が良かったり、電解液との反応性少なく、好ましい電池が得られる。
BET比表面積としては、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、電極材粉末に対して窒素流通下、350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値を用いることができる。
[3]薄膜用の基体
以下、本発明の薄膜製造方法により、上述のような薄膜が気相成長により形成される薄膜用の基体について説明するが、中でも特に非水電解質二次電池用電極材として用いられる場合に好適な薄膜用の基体(即ち、負極用及び正極用の集電体)について詳細に説明する。
[材質]
基体の材質としては、金属、非金属、無機物(酸化物、窒化物、炭化物等)などが挙げられるが、非水電解質二次電池用電極材の基体(負極用及び正極用の集電体)の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウム等が挙げられ、中でも薄く加工しやすく、安価な銅やアルミニウムが好ましい。また、厚さが25μmよりも薄い場合、強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)やアルミニウム合金を用いることができる。
また、負極用の集電体(基体)の銅箔には、圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、これを用いた負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理など)がなされていても良い。
また、正極用の集電体(基体)としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。
[厚さ]
基体の厚さとしては、特に限定はされないが、通常1〜100μm程度であるが、非水電解質二次電池用電極材の基体(負極用及び正極用の集電体)の厚さとしては、薄い方が薄い電極を製造することができ、同じ収納容積の電池容器内に、より広い表面積の電極活物質を詰めることができる点で好ましいが、過度に薄いと強度が不足し、電池製造時の捲回等で集電体が切断する恐れがある。このため、集電体は5〜70μm程度の厚さであることが好ましい。集電体の両面に活物質を形成する場合は、集電体は更に薄い方が良いが、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による集電体の亀裂発生を回避する観点から、この場合において集電体の更に好ましい厚さは10〜35μmである。
[物性]
基体を非水電解質二次電池用電極材の負極用の集電体として用いる場合には、更に次のような物性が望まれる。
(1) 平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体の薄膜(活物質層)形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.15μm以上であり、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
集電体の平均表面粗さ(Ra)を上記した下限と上限の間の範囲内とすることにより、良好な充放電サイクル特性が期待できる。上記下限値以上とすることにより、活物質との界面の面積が大きくなり、活物質との密着性が向上する。平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが好ましい。
(2) 引張強度
集電体の引張強度は、特に制限されないが、通常100N/mm以上、好ましくは250N/mm以上、更に好ましくは400N/mm以上、特に好ましくは500N/mm以上である。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常1000N/mm以下である。
引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、JISZ2241(金属材料引張試験方法)における記載と同様な装置及び方法で測定される。引張強度が高い集電体であれば、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による集電体の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
(3) 0.2%耐力
集電体の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm以上、好ましくは150N/mm以上、特に好ましくは300N/mm以上である。0.2%耐力は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N/mm以下が望ましい。
0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形している事を意味している。0.2%耐力が高い集電体であれば、充電・放電に伴う活物質の膨張・収縮による集電体の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。本発明における0.2%耐力は、引張強度と同様な装置及び方法で測定される。
[4]粉末用の基体
以下、本発明の粉末製造方法により、上述のような粉末を製造するための気相成長工程で用いられる基体について説明するが、中でも特に非水電解質二次電池用電極材として用いられる場合に好適な電極材粉末用の基体について詳細に説明する。
[材質]
基体の材質としては、金属、非金属、無機物(酸化物、窒化物、炭化物等)などが挙げられるが、電極材粉末用の基体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウム等を用いることが好ましい。
[十点平均表面粗さ(Rz)]
JISB0601−1994に記載の方法で規定される基体の膜形成面の十点平均表面粗さ(Rz)は、特に限定はされないが、通常1.5μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。また、下限は通常0.0001μm程度である
集電体の十点平均表面粗さ(Rz)を上記の範囲内とすることにより、基体上に成膜した成膜物を、基体上から容易に剥離することができ、好ましい。
[5]薄膜製造方法
次に、本発明の薄膜の製造方法について説明する。
本発明の薄膜製造方法は、容器内の原料物質を加熱源により減圧下で600℃以上に加熱して蒸発させ、該原料物質の蒸気を基体上に凝縮させて気相成長させる薄膜の製造方法において、該容器と基体との間に断熱部材を設置し、該原料物質の加熱源からの熱による基体の加熱を抑制することを特徴とする。
[原料物質]
原料物質(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のうち、薄膜の原料としては、薄膜元素(金属元素及び/又は半金属元素と、場合によって含有される添加元素など)の単独体、化合物、組成物、混合物を用いることができる。薄膜元素としては、前述のZn、Al、Ag、Sn、Ti、Zr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuより選ばれる金属元素、及び/又は、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Teより選ばれる半金属元素、場合によって含有される添加元素としてC、N、P、O、S等の非金属元素などが挙げられるが、その単独体としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi、金属Sn、Al、Zn、Ag等を、化合物としては、シリコン化合物、チタン化合物等を用いることができる。
また、原料物質として、薄膜元素を含む昇華性の化合物を用いても良い。その原料のうち、例えば、薄膜元素がSiの場合、昇華性のSiC、Si、SiS、SiS等を用いることができる。昇華性の化合物を用いると、容器との反応を抑制し易く、且つ、薄膜(活物質)の組成を制御し易く好ましい。特にSiCは、雰囲気から混入する酸素がSiC中の炭素と反応することで、薄膜中に含まれる酸素量を低減しながら、且つ、炭素量を調整できるので好ましい。
また、原料物質中の少なくとも一部に昇華性の化合物を用いる場合、原料物質中の昇華性化合物の割合は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。昇華性化合物の割合がこの範囲を下回ると、前述の昇華性化合物を用いた効果が得難くなる場合がある。
添加元素の種類は前述の通りであるが、その原料のうち、例えば、C元素の原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等の炭素や、炭化物等の炭素との反応種を、N元素の原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、C元素の原料としては、Cを含むガス(CH、C、C等)や黒鉛のアーク放電や抵抗加熱などによりCを気化させたガスを、N元素の原料としては、Nを含むガス(NH、N等)を、O元素の原料としては、Oを含むガス(O、空気、水蒸気等)を用いることができる。
前述の通り、高温での気相成長の場合、成長速度を上げるには原料物質の加熱温度を上げることが最も効果的であるが、同時に雰囲気から混入する酸素が薄膜(活物質)と反応し易くなり酸化物が多く形成してしまう虞がある場合もある。添加元素にC元素を含む場合、高温になるほど雰囲気中の酸素と炭素の反応が進行するため、薄膜中に含まれる酸素量を低減できるので好ましい。
また、例えば、薄膜元素がSiである場合、Siと炭素が反応することでSi単独よりも蒸発速度の速いSiC,SiC,SiC等が形成し蒸発するため、気相成長速度が速まり好ましい。
また、金属元素及び/又は半金属元素と添加元素を組み合わせた単一の化合物を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
また、これら薄膜元素、薄膜元素を含む昇華性の化合物、金属元素及び/又は半金属元素と添加元素の原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
[基体]
薄膜の気相成長が行なわれる基体は、上述の薄膜用の基体を用いることができる。
[薄膜製造装置]
本発明の薄膜製造方法に用いられる薄膜製造装置は、例えば、真空チャンバと、この中に設けられた原料物質を入れる容器、容器内の原料物質を600℃以上に加熱するためのヒーター(加熱制御部)、真空チャンバ内を減圧にするための真空装置(真空制御部)、基体を保持する媒体(ロール等)、断熱部材、例えば、原料物質保持容器に取り付けられる、開口部を有する蓋、原料物質の蒸気を導くチムニー、シャッター、原料物質を補給する装置などから構成される。
<容器>
容器の材質としては、人造黒鉛、カーボンなどの炭素材、石英、セラミックス、W等の高融点金属等を用いることができる。このうち、炭素材は真空蒸着時に成長された薄膜中にCを混入させることができ、且つ、薄膜中の酸素量を低減させることができるので好ましい。
また、容器の個数は1個でも、原料物質の種類に合わせ複数個に分けて用いても構わない。
なお、成膜された薄膜中のCの混入濃度は、特に限定はされないが、通常1at%以上、好ましくは5at%以上、更に好ましくは10at%以上、特に好ましくは15at%以上、最も好ましくは20at%以上であり、通常48at%以下、好ましくは43at%以下、更に好ましくは38at%以下、特に好ましくは33at%以下である。この範囲のCの混入濃度が好ましい理由は、非水電解質二次電池用の負極材として用いた場合、電解液との反応性を抑制し、良い電池性能が得られるからである。
<加熱方法>
基体上に薄膜を気相成長させる方法としては、例えば真空蒸着を用いることができる。 その際の気相成長の具体的な加熱方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法などを挙げることができる。誘導加熱法では原料を投入した黒鉛質等よりなる蒸着坩堝(容器)を誘導電流により加熱溶融させることにより、原料を蒸発させて気相成長させる。抵抗加熱法では原料を保持した蒸着ボート(容器)などに通電した加熱電流により加熱溶融させることにより、原料を蒸発させて気相成長させる。電子ビーム加熱法では電子ビームにより原料を加熱溶融させることにより原料を蒸発させて気相成長させる。これらの加熱法の中でも、抵抗加熱法がコストの面で有利であり好ましい。
なお、原料を加熱する際の加熱温度の測定は、熱電対や放射温度計等の温度測定器を用いて行うことができる。
<加熱ヒーター>
前述の抵抗加熱法などで、容器を加熱するヒーターとしては、特に限定はされないが、ニクロム線ヒーター、カンタル線ヒーター、炭化珪素ヒーター、黒鉛ヒーターなどが挙げられ、中でも黒鉛ヒーターは耐熱温度が高く好ましい。
また、特に限定はされないが、加熱ヒーターの周囲(容器に向かい合わない面)に後述の断熱部材の材質として用いられる断熱材等を保温材として設けると、ヒーターの保温性が上がり、加熱用の電力を減らすことができ、且つ、チャンバへの熱伝導が少なくチャンバ容積を小さくできるので好ましい。
ヒーターの形状としては、長方形、円形、楕円形などの形が挙げられ、発熱面積を大きくする為に、板にスリットを入れることでS字状にしたヒーターや、複数本の棒状ヒーターを並列にしたものなどを用いることができる。
<真空度>
真空蒸着時の真空チャンバ内の真空度としては、特に限定されるものではなく、通常20〜10−6Pa程度であるが、蒸着速度や生産性や装置コストの観点から1〜10−2Pa程度が好ましい。
<断熱部材>
本発明に用いられる断熱部材としては、原料物質を保持する上述の容器の開口部を覆う蓋状部材であって、原料物質の蒸気が通過し得る開口部を有するものが好ましい。
以下、断熱部材としての開口部を有する蓋状部材を「断熱蓋」と称す場合がある。
(材質)
断熱部材の材質としては、特に限定はされないが、熱伝導及び輻射熱を軽減することができる多孔性の断熱材からなることが好ましい。多孔性の断熱材の材質としては、繊維状としてガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維や炭素繊維などが、粉末状としては炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、アルミナ、珪酸カルシウム粉末などが挙げられ、それらをフェルト状やボード状の形態にした多孔性のものを用いることができる。中でも炭素繊維を用いたフェルト状やボード状形態のものが、耐熱温度が高く、断熱性が良いことから、原料物質の加熱温度をより高くできるので好ましい。
またここで、本発明における多孔性の断熱材とは、JISR1611(ファインセラミックスのレーザーフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率試験方法)やASTME1461−92、若しくは、JIS2616(耐火断熱れんがの熱伝導率の試験方法)における記載と同様な装置及び方法で測定される熱伝導率が、0.01〜1W/m・K程度の断熱材のことを指す。
また、特に限定はされないが、前記多孔性の断熱材の周囲、特に基体側の面及び/又は容器側の面に遮蔽板を設けると、更に容器やヒーターからの輻射熱を遮ることができるので好ましい。遮蔽板の材質としては炭素材、セラミックス、W等の高融点金属等が挙げられるが、中でも炭素材は耐熱温度が高く好ましい。遮蔽板としての炭素材は、黒鉛ブロックから加工した板や、膨張黒鉛シートなどを用いることができる。
ここで、本発明における遮蔽板とは、前述の多孔性の断熱材におけると同様な装置及び方法で測定される熱伝導率が5〜400W/m・K程度の板材などのことを指す。
後述の図3に示すように、断熱部材としての断熱蓋7を2枚の遮蔽板7bを、間に断熱材7aを介して積層した構造とする場合、その厚さには特に制限はないが、例えば、断熱材7aの厚さは0.5〜7cm、遮蔽板7bの厚さは各々1〜15mmで、断熱蓋7全体の厚さは0.7〜10cmとなるようにすることが好ましい。断熱蓋の厚さが薄過ぎると十分な断熱効果が得られず、厚過ぎると断熱部材のコストが高くなる場合もある。
(開口部)
前述の断熱蓋に設けられた、原料物質を含む蒸気が通過するための開口部の形状(平面視形状)としては、長方形、円形、楕円形などの形が挙げられる。また、開口部の個数や大きさは、容器若しくは基体の大きさに合わせ適当なものを用いることができる。
また、特に限定はされないが、前記遮蔽板も同様な開口部を有することが好ましい。
この開口部の大きさには特に制限はなく、装置の規模や加熱温度によっても異なるが、過度に大きいと断熱部材を設けたことによる断熱効果が得られず、過度に小さいと成膜効率が悪くなるため、例えば、後述の図2の様な真空チャンバにおいて断面積が4500cm程度の大きさの場合、断熱部材の開口面積として(複数の開口部を設けた場合は、その合計の開口面積として)20〜450cm、例えば断熱蓋の中央付近に1個設けた円形の開口部であれば、直径として2.5〜12cm程度とすることが好ましい。また、同様な理由から、この開口部の大きさ(面積)は、加熱ヒーターを上方から見た時にヒーターで囲まれている加熱範囲の面積(例えば、後述の図3の加熱ヒーター斜視図において、断熱蓋側から見た時に、ヒーター外周部で形成される四角い加熱面積)に対して、好ましくは20〜75%程度、更に好ましくは30〜60%程度である。
(設置場所)
薄膜製造装置のチャンバ内において、断熱部材は、基体への熱伝導や輻射熱を軽減するため、加熱ヒーター及び容器と基体との間に設ける。中でも断熱蓋を、容器を囲む加熱ヒーター上に接するように設けると、容器と基体までの距離を縮めることができ、成膜速度を速めることができるので好ましい。
<チムニー>
薄膜製造装置のチャンバ内において、特に限定はされないが、容器から原料物質を含む蒸気を効率的に基体上へ導くためのチムニーを設けることができる。
チムニーの断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状としては、長方形、円形、楕円形などの形が挙げられ、断熱蓋の開口部と同じ形状であっても、異なった形状であっても構わない。チムニーの蒸気流通部の大きさには特に制限はないが、長さ方向に直交する断面積の大きさとして、18〜700cm程度、例えば、断面形状が円形の場合、直径2.4〜15cm程度で、前述の断熱蓋の開口部の直径に対して、好ましくは90〜150%程度、更に好ましくは95〜105%程度の大きさである。
また、チムニーの長さ方向の形状は、容器から基体に向う方向に屈曲部がなく真直ぐに伸びていることが、原料物質を含む蒸気の滞留を防ぎ、有効に基体へ成膜させることができるので好ましい。
また、チムニーの設置場所は、容器と接する様に設けても、容器から離して設けても(例えば、断熱蓋に接して設ける)どちらでもよいが、原料物質を含む蒸気とヒーター等の余分な反応を少なくする為に、容器と接する様に設けるのが好ましい。また、チムニーの容器と反対側の端部は基体付近まで延びるように設けることが、原料物質を含む蒸気を更に有効に基体へ成膜させることができるので好ましい。
チムニーの材質は、炭素材、セラミックス、W等の高融点金属等が挙げられるが、これらのうち、黒鉛等の炭素材は耐熱温度が高く、また、真空蒸着時に成長された薄膜中にCを混入させることができ、且つ、薄膜中の酸素量を低減させることができるので好ましい。
チムニーは容器と別の加熱機構によって加熱しても構わない。チムニーを加熱することにより、原料物質を含む蒸気がチムニーに付着することを軽減できるので好ましい。
<シャッター>
薄膜製造装置のチャンバ内において、特に限定はされないが、容器と基体の間に原料物質を含む蒸気を遮ることのできるシャッターを設けることができる。シャッターを設けることにより、原料物質の補給時の膜厚変化などの影響を防ぐことができ、また、基体上の必要な部分に薄膜を成膜できるので好ましい。
シャッターの材質は、炭素材、セラミックス、W等の高融点金属等が挙げられるが、耐熱性(熱膨張が小さく、耐熱衝撃性が高い)の点で、黒鉛等の炭素材が好ましい。
<基体を保持する媒体>
薄膜製造装置のチャンバ内において、特に限定はされないが、成膜時に基体を保持する媒体としてロールなどを用いることができる。中でも内部が冷媒で冷やされた冷却ロールは、基体や薄膜への熱伝導や輻射熱による熱の影響を小さくできるので好ましい。
(材質)
基体を保持する媒体(ロール)の材質としては、銅、ステンレス、真鍮、アルミニウム等の金属や、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスが挙げられ、中でも高強度のステンレスや、熱伝導に優れる銅が好ましい。
<基体の搬送>
薄膜製造装置において、基体の搬送方法は、特に限定はされないが、低速度で一方向に搬送し所望の膜厚に到達させても、高速に往復運動させ所望の膜厚に到達させても構わない。中でも基体を高速に往復運動させる方法は、基体や薄膜への熱伝導や輻射熱による熱の影響を小さくできるので好ましい。例えば、往復運動時の搬送速度は、5〜100cm/秒程度である。
ここで往復運動とは、例えば、送り出しロールと巻き取りロールからなる搬送装置を用い、そのロール間で基体を往復させる方法が挙げられる。
<原料物質の補給>
薄膜製造装置において、原料物質の補給方法は、特に限定はされないが、好ましくは前記シャッターを閉じた状態で原料物質を容器へ補給する。中でも、上述の如く、基体を往復運動させる場合において、基体の端部まで成膜された時に原料物質を容器へ補給すると、薄膜の膜厚や組成の変動を小さくできるので好ましい。
また、予め加熱しておいた原料物質を容器へ補給すると、原料物質や容器の温度変化が少なく蒸着状態を安定に保つことができるので好ましい。
[気相成長させる方法]
<加熱温度>
原料物質を気相成長させる時の原料の加熱温度は、通常600℃以上、好ましくは900℃以上、より好ましくは1200℃以上、更に好ましくは1500℃以上、最も好ましくは1800℃以上である。加熱温度がこの範囲であれば、気相成長速度が大きく好ましい。一方、この範囲を下回ると気相成長速度が小さく生産性に劣る。
また、加熱温度の上限は加熱部の材質の耐熱性から、大凡2800℃までである。
<気相成長速度>
原料物質を気相成長させる時の成膜速度は、特に限定はされることはなく、通常10nm/秒〜5μm/秒程度であるが、生産性や膜厚の制御のし易さから30nm/秒〜1μm/秒程度が好ましい。
<雰囲気>
気相成長させる雰囲気としては、一般的に真空雰囲気(100Pa以下の減圧下)が用いられる。薄膜への添加元素がC,Oの場合、微量の酸素ガス、又は空気を導入しながら減圧にし、加熱温度を調整することで、真空下で同時にSiC薄膜(活物質)の組成を制御しながら成長することが可能である。また、この時、酸素ガス又は空気と共に不活性ガスを混入させることも可能である。
なお、気相成長中の雰囲気の酸素濃度としては、例えば、四極子マスフィルタを用い、蒸着ガスのマススペクトルを分析することで得られる。また、酸素ガスが共存しているアルゴンガスを蒸着ガスとして用いる場合には、そのアルゴンガスを酸素分析計で測定することで求められる。
気相成長を開始する前のチャンバ内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
<成膜厚さ>
気相成長により成膜された薄膜の厚さは、前述の薄膜の好適厚さの範囲内であることが好ましい。
[6]粉末製造方法
次に、本発明に係る粉末製造方法について説明する。
本発明の粉末製造方法は、前述の本発明の薄膜製造方法に従って基体上に気相成長させて形成した薄膜(成膜物)を基体から剥離させて粉末として回収することを特徴とする。
基体から剥離した粉末は、必要に応じて、後処理として粗粉砕、微粉砕、分級処理を行ない所望の体積基準平均粒径にすることができる。
粉砕に用いる装置について特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)等を用いることができ、湿式篩い分けの場合:機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
[原料物質]
原料物質のうち、粉末用の原料としては、薄膜用と同様な原料物質を用いることができる。
[基体]
原料物質の気相成長が行なわれる基体は、上述の粉末用の基体を用いることができる。
[粉末製造装置]
本発明の気相成長工程に用いられる粉末製造装置は、例えば、前述の薄膜製造装置において、更に、成膜物を基体上から掻き落とす装置を設けた構成とされる。真空チャンバ、原料物質を保持する容器、加熱ヒーター、断熱部材としての開口部を有する断熱蓋、真空装置、チムニー、シャッター、原料物質の補給装置等の構成や、基体の搬送、原料物質の補給、真空度等の制限条件等については、前述の本発明の薄膜製造装置と同様であり、気相成長工程での加熱温度、気相成膜速度、雰囲気等についても、前記薄膜製造装置と同様な条件を採用することができる。
<基体の構成>
粉末製造装置のチャンバ内において、特に限定はされないが、成膜時の基体として円盤やロールなどを用いることができる。中でも内部が冷媒で冷却される構成とされた冷却円盤は、基体や成膜物への熱伝導や輻射熱による熱の影響を小さくできるので好ましい。
<成膜物を基体上から掻き落とす装置>
粉末製造装置のチャンバ内においては、基体上に成膜した薄膜(成膜物)を基体から剥離させるために、掻き落とし装置などを設ける。掻き落とし装置としては、特に限定はされないが、ナイフ状の金属片を基体表面に押し付けるなどの方法で成膜物を剥離させるものが挙げられる。
[7]非水電解質二次電池用電極材の製造方法
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極材の製造方法について説明する。
本発明の非水電解質二次電池用電極材の製造方法は、本発明の薄膜製造方法又は粉末製造方法に従って薄膜又は粉末を製造するに当たり、容器に入れたリチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素(以下適宜、「活物質元素」と記す場合がある)を含む原料物質を、減圧下で600℃以上の温度で、且つ、該活物質元素の融点より200℃以上高い温度に加熱して、該物質を含む蒸気を該基体上に凝縮させて気相成長させることを特徴とする。
[原料物質]
原料物質(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のうち、原料としては、活物質元素の単独体、化合物、組成物、混合物を用いることができる。活物質元素としては、前述のZn、Al、Ag、Sn、Ti、Zr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuより選ばれる金属元素、及び/又は、B、Si、Ge、As、Sbより選ばれる半金属元素、場合によって含有される添加元素としてC、N、P、O、S等の非金属元素などが挙げられるが、その単独体としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi、金属Sn、Al、Zn、Ag等を、化合物としては、シリコン化合物、チタン化合物等を用いることができる。
また、原料物質として、活物質元素を含む昇華性の化合物を用いても良い。その原料のうち、例えば、活物質元素がSiの場合、昇華性のSiC、Si、SiS、SiS等を用いることができる。昇華性の化合物を用いると、容器との反応を抑制し易く、且つ、薄膜または成膜物の組成を制御し易く好ましい。特にSiCは、雰囲気から混入する酸素がSiC中の炭素と反応することで、薄膜または成膜物中に含まれる酸素量を低減しながら、且つ、炭素量を調整できるので好ましい。
また、原料物質中の少なくとも一部に昇華性の化合物を用いる場合、原料物質中の昇華性化合物の割合は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。昇華性化合物の割合がこの範囲を下回ると、前述の昇華性化合物を用いた効果が得難くなる場合がある。
添加元素の種類は前述の通りであるが、その原料のうち、例えば、C元素の原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等の炭素や、炭化物等の炭素との反応種を、N元素の原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、C元素の原料としては、Cを含むガス(CH、C、C等)や黒鉛のアーク放電や抵抗加熱などによりCを気化させたガスを、N元素の原料としては、Nを含むガス(NH、N等)を、O元素の原料としては、Oを含むガス(O、空気、水蒸気等)を用いることができる。
前述の通り、高温での気相成長の場合、成長速度を上げるには原料物質の加熱温度を上げることが最も効果的であるが、同時に雰囲気から混入する酸素が薄膜または成膜物と反応し易くなり酸化物が多く形成してしまう虞がある場合もある。添加元素にC元素を含む場合、高温になるほど雰囲気中の酸素と炭素の反応が進行するため、薄膜または成膜物中に含まれる酸素量を低減できるので好ましい。
また、例えば、活物質元素がSiである場合、Siと炭素が反応することでSi単独よりも蒸発速度の速いSiC,SiC,SiC等が形成し蒸発するため、気相成長速度が速まり好ましい。
また、活物質元素と添加元素を組み合わせた単一の化合物を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
また、これら活物質元素、活物質元素を含む昇華性の化合物の原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
[基体]
本発明の非水電解質二次電池用電極材の基体は、上述した薄膜用または粉末用の基体を用いることができる。
[薄膜または粉末製造装置]
本発明の非水電解質二次電池用電極材の気相成長に用いられる薄膜または粉末製造装置は、上述した薄膜または粉末製造装置を用いることができる。
[気相成長させる方法]
本発明の非水電解質二次電池用電極材を気相成長させる方法は、次の様な方法を用いることができる。
<加熱温度>
原料物質を気相成長させる時の原料の加熱温度は、特に限定はされないが、600℃以上の温度であり、且つ、活物質元素の融点よりも200℃以上高く、好ましくは活物質元素の融点よりも300℃以上高く、更に好ましくは活物質元素の融点よりも400℃以上高い温度である。加熱温度がこの範囲であれば、気相成長速度が大きく好ましい。
また、加熱温度の上限は加熱部の材質の耐熱性から、大凡2800℃までである。
<気相成長速度>
原料物質を気相成長させる時の成膜速度は、特に限定はされないが、通常10nm/秒〜5μm/秒程度であるが、生産性や膜厚の制御のし易さから30nm/秒〜1μm/秒程度が好ましい。
<雰囲気>
気相成長させる雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。薄膜または成膜物への添加元素がC,Oの場合、微量の酸素ガス、又は空気を導入しながら減圧にし、加熱温度を調整することで、真空下で同時にSiC薄膜(活物質)の組成を制御しながら成長することが可能である。また、この時、酸素ガス又は空気と共に不活性ガスを混入させることも可能である。
なお、気相成長中の雰囲気の酸素濃度としては、例えば、四極子マスフィルタを用い、蒸着ガスのマススペクトルを分析することで得られる。また、酸素ガスが共存しているアルゴンガスを蒸着ガスとして用いる場合には、そのアルゴンガスを酸素分析計で測定することで求められる。
気相成長を開始する前のチャンバ内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
[8]薄膜製造装置の実施形態
以下に図面を参照して本発明の薄膜製造装置の実施の形態についてより具体的に説明する。
図1は本発明の薄膜製造装置の実施の形態を示す模式的な断面図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
この薄膜製造装置は、原料物質を加熱する蒸発ゾーンと、基体上に該物質を成膜する成膜ゾーンとの2つのゾーンに大別される。
1は真空チャンバであり、真空チャンバ1内の蒸発ゾーンには、原料物質3を保持する容器2と、この容器を加熱するためのヒーター4が設けられている。5,6は、それぞれヒーター4への通電のための黒鉛リード部、銅リード部である。また、19は加熱温度測定のための熱電対であり、8はヒーター保温材である。容器2の上部には、原料物質の蒸気を誘導するためのチムニー9及び11が設けられている。また、容器2及びヒーター3の上部には開口部を有する断熱蓋7が設けられ、この断熱蓋7の開口部にシャッター10が取り付けられている。17はチャンバ1内を真空引きするためのメインバルブであり、18はリークバルブ、20は加熱温度を放射温度計で測定するためのガラス窓である。
成膜ゾーンには、冷却ロール13とこの冷却ロール13に保持された基体(集電体)16が設けられている。21は膜厚計である。なお、蒸発ゾーンと成膜ゾーンの境界には冷却ロール13の回転部などに原料物質の蒸気が凝縮するのを防ぐための防護板12が設けられている。
図3に示す如く、断熱蓋7は、板面の中央部に開口部を有する2枚の遮蔽板7b,7bが断熱材7aを介して積層された構造となっている。
また、ヒーター4は、断面四角形の角筒形状であり、4側面と底面部がヒーター保温材8により被覆されて保温されている。このヒーター4はスリットを入れた抵抗加熱式ヒーターである。
しかして、断熱蓋7は、ヒーター4を囲むヒーター保温材8の上端面部に載置して設けられており、容器2の上部開口と断熱蓋7との間にチムニー9が設けられ、チムニー9の上端面にシャッター10を介してチムニー11が設けられている。チムニー9の上端部は断熱蓋7の開口に篏合し、断熱蓋7の上板面とチムニー9の上端面とは面一となっている。
この薄膜製造装置では、メインバルブ17からチャンバ1内を真空引きして所定の減圧条件とすると共にリード部5,6を介してヒーター4に通電して容器2内の原料物質3を所定の温度に加熱して原料物質3の蒸気を発生させ、チムニー9、断面蓋7の開口、及びチムニー11を経て原料物質の蒸気を基体16に導き、基体16上に気相成長させる。このとき、基体16は、所定の速度で回転する冷却ロール13で冷却されつつ、回転する。基体16上に成膜した薄膜の厚さは膜厚計21で監視することができる。また原料物質3の加熱温度は熱電対19(又は、ガラス窓20を通して放射温度計)で検出することができる。
基体16上に所定の膜厚の薄膜が成膜された後は、ヒーター4への通電を停止し、チャンバ1内を常圧に戻し、基体16を取り出して薄膜を基体16と共に回収する。
この薄膜製造装置では、容器2上に断熱蓋7を設けたことにより、容器2を加熱するヒーター4からの熱伝導や輻射熱が基体16に到達することが抑制され、これにより、基体16及び基体16上に成膜された薄膜の熱劣化が防止される。
このことにより、ヒーター4の加熱温度を高くすることができ、また、容器2と基体16を近接して配置することが可能となることから、成膜速度は、断熱蓋7を設けない場合に比べて格段に速くなる上に、高品質の薄膜を得ることが可能となる。
容器2及び/又はヒーター4の上端部と基体16との間の距離は、薄膜製造装置全体の規模や加熱温度、基体の材質や原料物質の種類によっても異なるが、従来、適正な成膜のためには、例えば、70〜100cm程度の間隔を設ける必要があった容器2及び/又はヒーター4−基体16間距離Lを、本発明では30〜50cm程度に近接させることができる。
なお、原料物質3を保持する容器2の形状については特に制限はなく、図6(a)に示すような有底円筒形状の容器2Aや図6(b)に示すような有底角筒形状の容器2Bを用いることができる。また、チムニー9,11についても、容器2の形状に合わせて、図7(a)に示すような、円筒形状のチムニー9A,11Aや、図7(b)に示すような角筒形状のチムニー9B,11Bを用いることができる。
図5は、本発明の薄膜製造装置の他の実施の形態を示す模式的な断面図であり、図1に示す薄膜製造装置と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
この薄膜製造装置は、チャンバ1内に送り出しロール14と巻き取りロール15とを設け、送り出しロール14から連続的に送り出しされて巻き取りロール15で巻き取られる帯状の基体(集電体)16A上に原料物質の蒸気を凝縮させて気相成長させることにより(前述の如く、送り出しロール14と巻き取りロール15とのロール間で基体16Aを往復させて成膜しても良い。)、薄膜を連続的に製造する装置である。図5の薄膜製造装置の他の構成は、図1に示す薄膜製造装置と同様である。
この薄膜製造装置であっても、断熱蓋7により、基体16A及び基体16A上に成膜された薄膜の熱劣化を防止して、効率的な薄膜製造を行える。
[9] 粉末製造装置の実施の形態
次に、図4を参照して本発明の粉末製造装置の実施の形態についてより具体的に説明する。
図4は本発明の粉末製造装置の実施の形態を示す模式的な断面図である。
図4において、図1に示す薄膜製造装置と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
この粉末製造装置は、図1の薄膜製造装置の成膜ゾーンにおいて、防護板12及び膜厚計21を取り去り、冷却ロール13と基体16の代りに、円盤形状の基体30を回転可能に取り付け、また、この基体30の板面に成膜された薄膜(成膜物)の掻き落とし装置31と回収容器32とを設けて成膜回収ゾーンとした点が異なり、その他は同様の構成とされている。
この粉末製造装置では、図1の薄膜製造装置と同様にしてチャンバ1内を減圧条件とすると共に原料物質3を加熱して蒸発させ、原料物質3の蒸気をチムニー9、断熱蓋7の開口及びチムニー11を経て、基体30に導き、この基体30上で成膜させる。基体30のチムニー11の上方部分では成膜がなされ、掻き落とし装置31の上方位置では成膜物の剥離、回収が行われる。従って、基体30が回転することにより、成膜と、成膜物の回収とが連続して行われる。
この粉末製造装置であっても、断熱蓋7により、基体30及び基体30上に成膜された成膜物の熱劣化を防止して、効率的な粉末製造を行える。
[10]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、電極として、本発明の非水電解質二次電池用電極材の製造方法により製造された電極材を含む本発明の電極を用いたものである。
本発明の非水電解質二次電池を構成する、電解質等の電池構成上必要な電極以外の部材の選択については特に制限されない。
以下において、本発明の製造方法で得られた電極材を負極に用いた非水電解質二次電池を構成する材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
[負極]
負極は、集電体上に、負極用の電極材として以下の(i)又は(ii)の方法を用いて製造された電極材を形成したものである。
(i)負極用の電極材として、本発明の薄膜製造方法により、基体である集電体上に形成された負極材薄膜を用いる(以下、この負極材薄膜を用いた負極を「薄膜負極」と称す場合がある。)。
(ii)負極用の電極材として、本発明に係る粉末製造方法で得られた負極材粉末を用い、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)などと共に、集電体上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成されたものを用いる。負極材粉末には他の負極材(人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素、チタン酸リチウムなど)や導電剤(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類)を混合し用いても構わない。
[正極]
正極は、集電体基板上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなり、通常、正極活物質と結着剤を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
〈正極活物質〉
正極活物質には、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有している限り特に制限はないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などを使用することができる。具体的には、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn及びこれらの非定比化合物、MnO、TiS、FeS、Nb、Mo、CoS、V、P、CrO、V、TeO、GeO等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
〈導電剤〉
正極活物質層には、正極用導電剤を用いることができる。正極用導電剤は、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極活物質に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
〈結着剤〉
正極活物質層の形成に用いられる結着剤としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン
−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
〈その他の添加剤〉
正極活物質層には、前述の導電剤の他、更にフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30重量%が好ましい。
〈溶媒〉
正極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30重量%以下程度まで添加することもできる。
また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
正極活物質、結着剤である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される正極用導電剤、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して正極活物質スラリーを調製し、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層が形成される。
なお、この正極活物質スラリー中の正極活物質の濃度の上限は通常70重量%以下、好ましくは55重量%以下であり、下限は通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上である。正極活物質の濃度がこの上限を超えると正極活物質スラリー中の正極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると正極活物質スラリーの保存中に正極活物質が沈降しやすくなる。
また、正極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、下限は通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる正極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると正極活物質層の結着性に劣るものとなる。
〈集電体〉
正極用集電体としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。正極用集電体の厚みは特に限定されないが通常5〜70μm程度である。
[電解質]
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。なおここで電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO等が好ましく用いられる。これらの溶質は、1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上、特に0.5mol/L以上で、2mol/L以下、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。これらの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒が好ましい。
これらの溶媒は1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に係る非水系電解液は、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルや従来公知の過充電防止剤、脱酸剤、脱水剤などの種々の助剤を含有していてもよい。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等が挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
これらは1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液が分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルを電解液に含有させることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。その理由は明かではないが、負極の表面に安定な保護被膜を形成することができるためと推測される。ただし、その含有量が少ないとこの特性が十分に向上しない。しかし、含有量が多すぎると高温保存時にガス発生量が増大する傾向にあるので、電解液中の含有量は上記の範囲にするのが好ましい。
過充電防止剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール及び2,6−ジフルオロアニソ−ル等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
非水系電解液中における過充電防止剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。過充電防止剤を含有させることにより、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる。
他の助剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン及びテトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上併用して用いてもよい。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、通常0.1〜30重量%である。これらの助剤を含有することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
また、非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状又は、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としてもよい。この場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
[その他の構成部材]
非水電解質二次電池用負極には、電解質、負極、及び正極の他に、更に必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケースなどを用いることもできる。
セパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
[非水電解質二次電池の形状]
本発明の非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
[非水電解質二次電池の製造方法]
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解質二次電池を製造する方法は、特に限定されず通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を載せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を載せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<薄膜製造装置>
図1〜3に示す薄膜製造装置により、本発明に従って薄膜(薄膜状の負極材)の製造を行った。容器2として黒鉛製の坩堝を用い、原料物質3として直径数mmのシリコン粒子を300g入れた。また、容器2の上端面に接する様に黒鉛製のチムニー9を設置した。また、スリットを入れた黒鉛製の抵抗加熱式ヒーター4の上部には、中央部に開口部(開口面積75cm)を持つ炭素繊維からなるフェルト状断熱材7a(厚さ7mm、熱伝導率0.15W/m・K)と黒鉛製の遮蔽板7b(厚さ5mm、熱伝導率104W/m・K)からなる断熱蓋7(全厚さ17mm)を設置し、ヒーター4の側周4面及び下部にも炭素繊維からなるフェルト状断熱材をヒーター保温材8として設置した。また、断熱蓋7の上部には、黒鉛製のシャッター10とチムニー11(長さ方向に直交する断面積75cm)を設置した。断熱蓋7の開口部の面積は、加熱ヒーターを上部から見た時にヒーターで囲まれている加熱範囲の面積に対して約38%に相当した。
ここで、熱伝導率の値は前述の試験方法に準拠し測定した。
<成膜>
成膜は、基体(集電体)16として成膜面の平均表面粗さ(Ra)が0.3μm、引張強度が400N/mm、0.2%耐力が380N/mmで、厚さが18μmである、成膜面を粗面化した圧延銅箔を用い、上記薄膜製造装置にて、抵抗加熱式の真空蒸着を行って薄膜負極を作製した。
基体(集電体)16の圧延銅箔は、冷却水を流したステンレス製の冷却ロール13に密着させ巻きつけ、チャンバ1内を真空引きし6×10−3Paの雰囲気としてから、シリコン粒子の入った黒鉛坩堝の容器2を黒鉛製のヒーター4で24KWの出力にて加熱し、冷却ロール13を回転速度13rpm(銅箔16の搬送速度に換算して約13m/min)で回転させながら1分30秒間真空蒸着を行なった。このとき、集電体銅箔16と蒸着原料3を入れた容器2との距離Lは約50cmであった。また、シリコンを入れずに真空蒸着時と同じ出力において、熱電対19若しくは放射温度計で測定した坩堝の加熱温度は約1850℃であった。
得られた薄膜状の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は約7μmであり、真空蒸着時間で膜厚を除した成膜速度(膜厚÷真空蒸着時間)は約5μm/minであった。
下記の方法に従ってXPSにて、この薄膜状の負極材の組成分析をしたところ、Si薄膜中に黒鉛坩堝(若しくはチムニー)から混入した添加元素Cが19at%、雰囲気から混入した添加元素Oが1at%含有されていた。
また、下記の方法に従ってX線回折にて薄膜負極の同定分析をしたところ、2θ=28°付近にブロードなピークが観察され、薄膜状の負極材はアモルファス状態のSi(C、O含有)であった。また、ケイ化銅CuSiに相当するピークは観察されなかった。
なお、以下の実施例及び比較例において、得られた活物質の分析及び測定方法は、特記しない限り、実施例1におけると同様である。
〈XPS測定〉
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、薄膜状の負極材の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。得られたC1sのピークトップを284.5eVとして帯電補正し、Si2p、C1s及びO1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C及びOの原子濃度をそれぞれ算出した。
〈X線回折測定〉
リガク社製「RINT2000PC」を用い、薄膜状の負極材を測定セルへセットし、Out-of-Plane法にて、2θ=10〜90度の範囲でX線回析を行った。
上記で製造された薄膜負極を用いて、下記の方法に従ってリチウム二次電池を作製し、この電池について、下記方法で放電容量の評価を行い、結果を表1に示した。
〈リチウム二次電池作製方法〉
上記方法で作製した薄膜負極を10mmφに打ち抜き、110℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液とセパーレータと対極とを用いてコイン電池(リチウム二次電池)を作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF電解液を用いた。セパレータとしては、ポリエチレンセパレータとを用いた。対極としては、リチウム金属対極を用いた。
〈放電容量評価〉
1.23mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して10mVまで充電し、更に、10mVの一定電圧で電流値が0.123mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.23mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう充放電サイクルを5サイクル繰り返し、3〜5サイクル目の放電の平均値を放電容量とした。重量当りの放電容量とする場合は、活物質重量は負極重量から同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで求め、以下の式で計算した。
放電容量(mAh/g)
=3〜5サイクル目の平均放電容量(mAh)/活物質重量(g)
(活物質重量(g)=負極重量(g)−同面積の銅箔重量(g))
[実施例2]
<粉末製造装置>
図4に示す様な粉末製造装置において、容器2として黒鉛製の坩堝を用い、原料物質3として直径数mmのシリコン粒子を300g入れた。また、容器2の上端面に接する様に黒鉛製のチムニー9を設置した。また、スリットを入れた黒鉛製の抵抗加熱式ヒーター4の上部には、中央部に開口部(開口面積75cm)を持つ炭素繊維からなるフェルト状断熱材7a(厚さ7mm、熱伝導率0.15W/m・K)と黒鉛製の遮蔽板(厚さ5mm、熱伝導率104W/m・K)からなる断熱蓋7(全厚さ17mm)を設置し、ヒーター4の側周4面及び下部にも炭素繊維からなるフェルト状断熱材をヒーター保温材8として設置した。また、断熱蓋7の上部には、黒鉛製のシャッター10とチムニー11(長さ方向に直交する断面積75cm)を設置した。断熱蓋7の開口部の面積は、加熱ヒーターを上部から見た時にヒーターで囲まれている加熱範囲の面積に対して約38%に相当した。
ここで、熱伝導率の値は前述の試験方法に準拠し測定した。
<成膜>
成膜は、基体30として成膜面の平均表面粗さ(Ra)が0.01μmである表面を研磨した中空銅板を用い、前記粉末製造装置にて、抵抗加熱式の真空蒸着を行って粉末(薄片)状の負極材を作製した。
基体30の銅板の中空部内に冷却水を流し成膜面を冷却し、チャンバ内を真空引きし6×10−3Paの雰囲気としてから、シリコン粒子の入った黒鉛坩堝2を黒鉛製のヒーター4で24KWの出力にて加熱し、基体30を回転速度10rpmで回転させながら10分間真空蒸着を行なった。このとき、基体30と蒸着原料3を入れた容器2との距離Lは約50cmであった。また、シリコンを入れずに真空蒸着時と同じ出力において、熱電対19若しくは放射温度計で測定した坩堝上面の加熱温度は1850℃であった。真空蒸着後、ステンレス製のナイフを持つ掻き落とし装置31にて、基体30から成膜物を回収容器32へ掻き落とした。
得られた成膜物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された膜厚は約45μmであり、真空蒸着時間で膜厚を除した成膜速度(膜厚÷真空蒸着時間)は約4.5μm/minであった。
この成膜操作を行い約6gの薄片状の成膜物を得た。得られた成膜物を瑪瑙乳鉢で粉砕し、目開き37μmの篩にて分級し粉末状の負極材とした。
前述の方法に従い、得られた粉末状の負極材の体積基準平均粒径を測定したところ、体積基準平均粒径は17μmであった。
また、前述の方法に従い、得られた粉末状の負極材のBET比表面積を測定したところ2m/gであった。
実施例1と同様にXPSにて粉末状の負極材の組成分析をしたところ、Si粉末中に黒鉛坩堝(若しくはチムニー)から混入させた添加元素Cが19at%、雰囲気から混入させた添加元素Oが5at%含有されていた。
また、粉末X線回折にて粉末状の負極材の同定分析をしたところ、2θ=28°付近にブロードなピークが観察され、粉末状の負極材はアモルファス状態のSi(C、O含有)であった。また、ケイ化銅CuSiに相当するピークは観察されなかった。
この粉末状活物質を用いて下記の方法に従って負極を作製し、この負極を用いて実施例1と同様にコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表1に示した。
〈リチウム二次電池用負極の作製方法〉
上記方法で作製した粉末状活物質1.6gに対し、負極材と導電剤を兼ねて、結晶面(002)の面間隔d002=0.335nm、平均粒径=12μmの天然黒鉛を、重量比80/20(=本発明に係る粉末状活物質/導電剤)の割合で加え、瑪瑙乳鉢を用いて乾式混合した。得られた混合粉末に、結着剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)1.5重量%(混合粉末を100重量%とした時)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)2重量%とを、それぞれ水溶液や水懸濁液の形で加えて、更に混合した。こうして得られた混合物を、厚み18μmの圧延銅箔上に塗布後、80℃で30分予備乾燥をした。更に、直径12.5mmφに打ち抜き、110℃で一昼夜真空乾燥して、評価用の負極とした。
[比較例1]
実施例1で用いた薄膜製造装置において、断熱蓋7を取り除いて成膜した以外実施例1と同様に薄膜負極を製作した。
得られた薄膜状の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は約7μmであり、真空蒸着時間で膜厚を除した成膜速度(膜厚÷真空蒸着時間)は約5μm/minであった。
実施例1と同様にXPSにて薄膜状の負極材の組成分析をしたところ、Si/C/O/Cuの原子比率at%は40/19/3/38であった。
また、実施例1と同様にX線回折にて薄膜負極の同定分析をしたところ、2θ=28°付近にアモルファス状態のSiに相当するブロードなピークと、45°付近にケイ化銅CuSiに相当するシャープなピークが観察された。
この負極を用いて実施例1と同様にコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1で用いた薄膜製造装置において、断熱蓋7の代わりに黒鉛製の遮蔽板7b(厚さ5mm、熱伝導率104W/m・K)を1枚のみ用いて成膜した以外は、実施例1と同様に薄膜負極を製作した。
得られた薄膜状の負極材の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は約7μmであり、真空蒸着時間で膜厚を除した成膜速度(膜厚÷真空蒸着時間)は約5μm/minであった。
実施例1と同様にXPSにて薄膜状の負極材の組成分析をしたところ、Si/C/O/Cuの原子比率at%は43/23/4/30であった。
また、実施例1と同様にX線回折にて薄膜負極の同定分析をしたところ、2θ=28°付近にアモルファス状態のSiに相当するブロードなピークと、45°付近にケイ化銅CuSiに相当するシャープなピークが観察された。
この負極を用いて実施例1と同様にコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を表1に示した。
Figure 0005056224
表1より次のことが分かる。
比較例1の製造法は、容器(原料)と基体(集電体)との間に遮蔽板を用いているが、これは熱伝導率が大きく断熱部材ではないので本発明の規定範囲外であり、その結果、気相成長速度を速めるために高温にすると、原料物質が加熱される際の熱により基体(銅箔)と成膜物(シリコン)が反応(ケイ化銅が生成)した。また、成膜物を負極活物質として電池に用いた場合、基体と成膜物が反応したため放電容量が小さかった。
比較例2の製造法は、容器(原料)と基体(集電体)との間に開口部を有する黒鉛製の遮蔽板を用いているが、これは断熱部材ではないので本発明の規定範囲外であり、その結果、気相成長速度を速めるために高温にすると、原料物質が加熱される際の熱により基体(銅箔)と成膜物(シリコン)が反応(ケイ化銅が生成)した。また、成膜物を負極活物質として電池に用いた場合、基体と成膜物が反応したため放電容量が小さかった。
これらに対して、実施例1、2の本発明の製造法は、容器(原料)と基体(集電体)との間に開口部を有する断熱蓋を用いており、全てが本発明の規定範囲を満たしている。このような製造法を用いると、気相成長速度が速く、安価で生産性に優れ、且つ、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護できる薄膜又は粉末が得られる。また、例えば、成膜物を負極活物質として電池に用いた場合、放電容量の大きな電池が得られる。
本発明によれば、気相成長速度が速く、安価で生産性に優れ、且つ、原料物質が加熱される際の熱から基体や成膜物を保護された方法で薄膜又は粉末を製造することができるため、本発明は気相成長を用いてなる薄膜や粉末が適用される電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
また、例えば、本発明を非水電解質二次電池用電極材の製造に適用した場合、放電容量等の特性に優れた非水電解質二次電池用電極材を、速い気相成長速度で、安価に生産性良く製造することができ、これにより、高特性の非水電解質二次電池を安価にかつ生産性良く提供することができ、電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
本発明の薄膜製造装置の実施の形態を示す模式的な断面図である。 図1におけるII−II線に沿う断面図である。 図1における容器、加熱ヒーター、断熱蓋を示す分解斜視図である。 本発明の粉末製造装置の実施の形態を示す模式的な断面図である。 本発明の薄膜製造装置の他の実施の形態を示す模式的な断面図である。 本発明の薄膜製造装置又は粉末製造装置で用いられる容器の実施の形態を示す斜視図である。 本発明の薄膜製造装置又は粉末製造装置で用いられるチムニーの実施の形態を示す斜視図である。
1 真空チャンバ
2 容器
3 原料物質
4 ヒーター
5 黒鉛リード部
6 銅リード部
7 断熱蓋
7a 断熱材
7b 遮蔽板
8 ヒーター保温材
9(9A,9B),11(11A,11B) チムニー
12 防護板
13 冷却ロール
14 送り出しロール
15 巻き取りロール
16,16A 基体(集電体)
17 メインバルブ
18 リークバルブ
19 熱電対
20 ガラス窓
21 膜厚計
30 基体
31 掻き落とし装置
32 回収容器

Claims (11)

  1. 容器内の原料物質を加熱源により減圧下で600℃以上に加熱して蒸発させ、該原料物質の蒸気を基体上に凝縮させて気相成長させる薄膜の製造方法において、該容器と基体との間に、開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを設置し、前記容器からの蒸気をチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通して前記基体へ導き、該原料物質の蒸発時における前記加熱源による基体の加熱を抑制することを特徴とする薄膜製造方法。
  2. 前記原料物質を抵抗加熱若しくは誘導加熱によって加熱することを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造方法。
  3. 前記基体を往復運動させ、前記薄膜が所定の膜厚に到達するまで該往復運動を継続することを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造方法。
  4. 前記基体の端部まで成膜した後に、前記容器に前記原料物質の補給を行なうことを特徴とする請求項3に記載の薄膜製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造した薄膜を、前記基体から剥離させて粉末として回収することを特徴とする粉末製造方法。
  6. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薄膜製造方法で製造した薄膜を用いた非水電解質二次電池用電極材の製造法であって、前記原料物質が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含み、該原料物質を減圧下で前記加熱源によって該リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素の融点より200℃以上高い温度に加熱することを特徴とする非水電解質二次電池用電極材の製造方法。
  7. 請求項5に記載の粉末製造方法によって製造した粉末を用いた非水電解質二次電池用電極材の製造法であって、前記原料物質が、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含み、該原料物質を減圧下で前記加熱源によって該リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素の融点より200℃以上高い温度に加熱することを特徴とする非水電解質二次電池用電極材の製造方法。
  8. 前記気相成長において、前記原料物質と炭素、又は、前記原料物質と炭素との反応種を気相成長させることを特徴とする請求項6又は7に記載の非水電解質二次電池用電極材の製造方法。
  9. 前記薄膜が、一般式SiC(式中x=0.05〜0.90、y=0〜0.9)で表される組成を有することを特徴とする請求項8に記載の非水電解質二次電池用電極材の製造方法。
  10. 真空チャンバ内に、原料物質を収容する容器と、該容器内の原料物質を加熱するためのヒーターと、該原料物質の蒸気が表面上に凝縮して薄膜が生成する基体とを配置してなる薄膜製造装置において、
    該容器と基体との間に、該ヒーターからの熱による基体の加熱を抑制するための開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを配置した薄膜製造装置であって、前記容器からの蒸気がチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通って前記基体へ導かれることを特徴とする薄膜製造装置。
  11. 真空チャンバ内に、原料物質を収容する容器と、該容器内の原料物質を加熱するためのヒーターと、該原料物質の蒸気が表面上に凝縮して薄膜が生成する基体と、該基体上の薄膜を該基体から剥離させて粉末として回収する手段とを配置してなる粉末製造装置において、
    該容器と基体との間に、該ヒーターからの熱による基体の加熱を抑制するための開口部を有する多孔性の断熱部材と炭素材からなるチムニーを配置した粉末製造装置であって、前記容器からの蒸気がチムニーの蒸気流通部から前記開口部を通って前記基体へ導かれることを特徴とする粉末製造装置。
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