JPWO2005124000A1 - パイル織編物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 使用の際、屈曲部で地組織がパイル間から見えることに起因する色調や光沢の変化を防止することができ、かつ、構造及び外観上の高級感を損なうことのないパイル織編物を提供する。特には、玉縁等や複合糸を用いることなく、確実な目むき防止が可能なパイル織編物を提供する。【解決手段】パイル糸をカットすることで形成されるカットパイル4と、地組織の一部の地糸をセミカット方式で起毛したセミカット起毛パイル7とを備える。カットパイル4の長さは0.5〜4.0mmである。【選択図】 図9

Description

本発明は、主に、インテリア資材、椅子張り、或いは車両用内装材として用いられるパイル織編物に関する。特には、使用の際、屈曲部で地組織がパイル間から見えることに起因する色調や光沢の変化を防止することができ、かつ、構造及び外観上の高級感を損なうことのないパイル織編物に関する。
パイル織編物(パイルが形成された織物または編物)は、その良質な風合いや外観上の高級感から衣料用素材、インテリア資材、車両用内装材に多く使用されている。その強度などの物性上の利点や平面外観の見栄えの良さから、車両用シート材として多く用いられている。
これらパイル織編物のパイルには大きく分けて2つの種類があり、カットパイルと呼ばれるものと、起毛パイルと呼ばれるものに分類される。カットパイルとは、図1のように2つの地組織1を結ぶ連結糸2をカットすることにより出来るパイル3か、または、図2のように地組織にループ状のパイル4を構成しておき、そのループパイル4の先端をシャーリング(剪毛)などでカットすることにより出来るパイル3のことである。代表的な素材としては、連結糸2をカットするものとしてダブルラッセルやモケットなどがあり、ループパイル4をカットしてなるものとしてはシンカーパイル、ポールトリコットや有線モケットなどがある。
また、起毛パイルとは、図3の様に地組織の一部の地糸5の側面を針布などで引掻くことにより一部もしくは全部のフィラメントを毛羽立たせてできたパイルのことである。さらに起毛パイルは以下の2つに分類することが出来る。1つは、図4に示すように、地組織の一部の地糸5を切断することなく毛羽立たせたセミカットとよばれるものであり、もう一つは、図5に示すように、地組織の一部の地糸5の全てを切断したフルカットとよばれるものである。このとき、セミカットされて得られた起毛パイルでは、図6に示すように、地組織の一部の地糸5と、その糸上に毛羽立ったパイル7とが混在している。これに対し、フルカットされて得られた起毛パイルでは、図7に示すように地組織の一部の地糸5が切断されてパイル8が立った状態になっている。
本発明においては、地組織の一部の地糸を切断することなく毛羽立たせて出来た起毛パイルのことをセミカット起毛パイルと呼び、地組織の一部の地糸を全て切断して出来た起毛パイルのことをフルカット起毛パイルと呼ぶ。フルカット起毛パイルの代表的な素材としてはトリコットやコーデュロイなどがある。
パイル部がカットパイルまたはフルカット起毛パイルで構成されるパイル織編物は、立毛性、風合、外観が良好である。そのため、椅子張りや車輌用シート材に用いられることが多い。ところが、椅子張り等に使用するにあたり屈曲部位へ貼り合わせた際に、非屈曲部の外観(平面外観)と、屈曲させた部位の外観(屈曲外観)とでは、異なる外観を呈するという問題が生じる。平面外観には、主にパイル糸の断面部が表出しているのに対し、屈曲外観には、パイル糸の側面部或いはパイル織編物の地組織部が表出するためである。このような、平面外観に対する屈曲外観の差異を「目むき」といい、商品の品位を低下させる原因となっている。「目むき」は、パイル部がカットパイル、またはフルカット起毛パイルで構成されるパイル織編物であると、図7に示すように一定の間隔で一定向きにパイルが構成されることに起因している。
一方、パイル部がセミカット起毛パイルのみで構成されるパイル織編物においては、目むきの問題が発生しない。これは、パイル部がセミカット起毛パイルのみのパイル織編物であると、図6のような構成となるため、パイルが一定の間隔で同じ向きに並ぶことが無いためである。しかしながら、パイル部がセミカット起毛パイルのみで構成されるパイル織編物の見た目は、畝(うね)感が強く、品位が損なわれてしまう虞がある。畝(うね)感とは、セミカット起毛パイルの間から毛羽立たなかった地組織の一部の地糸がよこ方向に整然と並ぶ様が畝状に見えてしまうことである。
このように平面外観と屈曲外観が互いに異なるという問題を解決する手段として、カットパイルやフルカット起毛パイルで構成されるパイル織編物を用い、且つ、屈曲部位を縫製処理した上で、縫製部分に「玉縁」といわれる部材をあてるという方法がある。玉縁は、縫い目部分の縫い糸や地糸側面の露出を防ぐ目的で効果がある。
また、特許文献1に開示されているように、熱収縮率が20%以上異なる2種類の複合糸をパイル糸として用い、パイル部を上下2層構造とすることにより、パイルの根本部分のパイル密度を上げて目むきを防ぐ方法がある。
特開平10−212646号公報
ところが上記従来の解決手段において、玉縁を使用する方法は、玉縁という素材を使用する事や縫製における工程増加によるコストアップの問題が有り、また、玉縁の存在によるデザインの制約により近年は敬遠されている。また、上記2種類の複合糸を用いる方法は、パイル部が上下2層構造になったとしてもパイル全体の密度が増えるわけではないため、目むきの根本的解決手段にはなり得なかった。
本発明は、上記の問題点を解決するものである。すなわち、本発明は、玉縁等や複合糸を用いることなく、確実な目むき防止が可能なパイル織編物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明においては、地組織部とカットパイル部とで形成されるパイル織編物において、カットパイルの隙間に位置する地組織の一部の地糸をセミカットすることによりセミカット起毛パイルを形成し、カットパイルとセミカット起毛パイルの両方を存在させパイルの間隔を不規則かつ緻密に並べることにより、どの方向に屈曲した場合にも目むきを生じないようにした。
即ち、本発明のパイル織編物は、地組織部と、パイル部とで形成される織編物であって、パイル部が、パイル糸をカットすることで形成されるカットパイルと、該地組織の一部の地糸をセミカットしてなるセミカット起毛パイルの2種類のパイルからなることを特徴とする。
織編物が編物である場合、好ましくは、地組織の一部の地糸を2〜6ニードルの範囲でアンダーラップすることにより編成され、この地糸を起毛させてなるセミカット起毛パイルとカットパイルを有する。ここで、より好ましくは、編みゲージ14〜30ゲージで編成され、仕上がり時の密度が25〜60コース/インチ、14〜45ウェール/インチである。本発明における仕上がり時とは、織編物のパイル糸や連結糸をカットしカットパイルを作成した後セミカット起毛した状態を表す。
織編物が織物である場合、好ましくは、重ね組織或いはパイル組織を有するものであり、任意の個所の緯糸又は経糸を2〜10本浮かせて織製し、この浮いた地糸を起毛させてなるセミカット起毛パイルとカットパイルとを有する。ここで、より好ましくは、地組織の仕上がり時の密度は経糸密度が20〜100本/インチ、緯糸密度が16〜120本/インチである。
また、編物であると織物であるとに拘わらず、好ましくは、セミカット起毛パイルを形成する糸が、繊度56〜886dtexのマルチフィラメント糸である。
本発明のパイル織編物であると、カットパイルとセミカット起毛パイルが同時に存在するため、パイルの間隔が緻密で、かつ方向性が無い状態で存在することから、これを屈曲させた場合、いずれの方向への曲げに対しても目むきが発生し難くなる。そのため、椅子張りや車両用シート素材として好適な、高品位のパイル織編物を得ることができる。
本発明において用いられるパイル織編物は、ダブルラッセル、モケット、シンカーパイル、ポールトリコット、有線モケットなどを用いることができるが、起毛性を考慮するとダブルラッセルが好ましく用いられる。
ダブルラッセル経編地は、図8に示すように2列針床からなるダブルラッセル機を用いて編成される。編糸A1は筬L1に導入され、編糸A2は筬L2に導入され、これら2枚の筬により前側の編針11で前側の地組織1を編成する。編糸A6は筬L6に導入され、編糸A5は筬L5に導入され、これら2枚の筬により後側の編針11で後側の地組織1を編成する。編糸A3とA4はパイル糸でもある連結糸2であり、編糸A3は筬L3に導入され、編糸A4は筬L4に導入され、前後の編針11に編成されて連結糸2となる。この様にして、前側地組織と、後側地組織と、これらを連結する連結糸部とから成るダブルラッセル経編地が形成される。連結糸部を形成しているパイル糸2を切り開くことにより、同一のカットパイルを有する2枚の経編地が得られる。
本発明の編地の仕上がり時の密度は、25〜60コース/インチ、14〜45ウェール/インチであり、更に好ましくは、30〜55コース/インチ、18〜40ウェール/インチである。25コース/インチ或いは14ウェール/インチより小さい場合は畝(うね)感が強くなり見た目の品位が悪くなる虞がある。仕上げ密度が60コース/インチより大きくなる場合は、カットパイルの密度が高くなるため針布が入りにくくなり起毛性が悪くなる虞がある。また、45ウェール/インチより大きくなる場合は、アンダーラップされた起毛される地糸の長さが短くなることによって、起毛性が悪くなる虞がある。
また、地組織を形成する少なくとも一部の地糸を2〜6ニードルの範囲でアンダーラップして、好ましくは3〜5ニードルの範囲でアンダーラップして編成し、この地糸部分をカットパイル面側からセミカットする。このように編成を行うことで、地糸の部分が起毛しやすくなるので、容易にセミカット起毛パイルが形成される。地糸が2ニードル未満のアンダーラップにて編成された場合、すなわち1ニードルだけアンダーラップするか、または同一ニードル位置で編成された場合は起毛が困難になる。一方、6ニードルを越えるアンダーラップを行って編成された場合では、コース方向に編糸が多く重なるため生地が硬くなったり、コース密度が入りにくく、パイルとパイルとの間隔が開き見栄えが良くない。
また、セミカット起毛パイルを形成する糸の太さは56〜886dtex、好ましくは78〜330dtexである。56dtexより細い糸を使用すると物性的に問題があり、886dtexより太い場合は目付が大きくなりコスト面で問題がある。
一方、本発明の編地におけるカットパイル3は、長さが0.5〜4.0mmであることが好ましい。カットパイル長が0.5mm未満であると目むきを十分に抑えることができず、4.0mmより長いと起毛の安定性を保つことが困難になる虞がある。本発明で言うカットパイル3の長さとは、生地全体の厚みから地組織1の厚みを引いたパイル糸のみの長さのことである。
上記のように構成されたカットパイル経編地の地組織を、カットパイル面側よりセミカットを施すことによって、図9に示すように、カットパイル3の隙間にセミカット起毛パイル7が不規則かつ緻密に形成される。カットパイル3は、編み込まれていることから、一定の間隔で一定の向きに林立し、セミカット起毛パイル7は、地組織の一部の地糸をパイル面側からセミカットによって毛羽立たせて構成していることから、特定の間隔や向きを取らずにカットパイル3の間に林立する。このように、カットパイルとセミカット起毛パイルとが、同一面上に隙間のないような状態で同時に存在する。
次ぎに、本発明のパイル織編物が織物である場合について説明する。本発明の織物の仕上がり時の密度は、地組織を形成する経糸密度が20〜100本/インチ、緯糸密度が16〜120本/インチであることが好ましい。地組織を形成する経糸密度が20本/インチ未満或いは緯糸密度が16本/インチ未満であると畝感が強くなり見た目の品位が悪くなる虞があり、地組織を形成する経糸密度が100本/インチ或いは緯糸密度が120本/インチより大きい場合は目付が重く、コストが高くなる虞がある。
また、地組織を形成する少なくとも一部の地糸を経または緯方向に2〜10本、好ましくは3〜8本だけ糸を浮かせて織成し、この地組織部分をカットパイル面側からセミカットすることによってセミカット起毛パイル7が形成される。地組織の地糸の浮かせ方が2本より小さい場合は起毛が困難になり、10本以上ではピリング性が悪くなる虞がある。
また、セミカット起毛パイルを形成する糸の太さは56〜886dtexであり、好ましくは394〜591dtexである。56texより細い糸を使用すると物性的に問題があり、886dtexより太い場合は目付が大きくなりコスト面で問題がある。
本発明の織物のカットパイル3は、編地の場合と同様、長さ0.5〜4.0mmであることが好ましい。カットパイル長が0.5mm未満であると目むきを十分に抑えることができず、4.0mmより長いと起毛の安定性を保つことが困難になる虞がある。
上述した本発明のパイル経編地について、これを車両用シート材や椅子張り材に使用する際の、90度近くに屈曲するコーナ箇所での状態に関し、従来例との比較をもって説明する。
図10には、パイル部がカットパイルだけで形成される従来の経編地を示す。カットパイルの並び方は一定間隔に配置され、パイル立ち方向はコース方向となっている。これをコース方向に屈曲させた場合(コース方向線を境として曲げる場合)を図11に示す。図11−Aに示すように屈曲部にカットパイルがない部分や図11−Bに示すように屈曲部にカットパイルがある部分のいずれの箇所でも地組織部が他の平坦な部分に比較して露出度が大きくなり、目むきが発生する。
次に、これをウェール方向に屈曲させた場合(ウェール方向線を境として曲げる場合)を図12に示す。図12−Aに示すように屈曲部にカットパイルがない部分や図12−Aに示すようにカットパイルがある部分のいずれの箇所も地組織部の露出度が他の平坦部と変わらず、目むきが発生していない。これはカットパイルのパイル立ち方向が屈曲方向に一致して外側に開いているので、地組織部の露出が抑えられるからである。
このように、パイル部がカットパイルのみの従来の経編地においては、ウェール方向に屈曲させた場合は目むきが発生せず、コース方向に屈曲させた場合に目むきが発生する。
図13に、パイル部がセミカット起毛パイルのみの従来の経編地を示す。セミカット起毛パイルの、パイルの並び方は特定の間隔を持たず、パイル立ち方向は一定の方向性を有しない。これをコース方向で屈曲させた場合を図14に、ウェール方向で屈曲させた場合を図15に示す。
図14、図15に示すようにセミカットの起毛パイルは全面に形成されており、かつランダムにパイルが向いているため、いずれの箇所、方向においても地組織部の露出度が他の平坦部と変わらず、目むきが発生していない。しかしながら、屈曲させていない部分について見た目には畝(うね)感がつよく、品位を損なっている。これは、毛羽立たなかった地組織の一部の地糸が整然と並ぶ様がパイルの間から見えてしまうためである。
次に、図9に示した本発明の経編地を屈曲させた場合について説明する。図16には、パイル部にカットパイルとセミカットの起毛パイルとが併存する本発明の経編地を、コース方向で屈曲させた場合(コース方向線を境として曲げる場合)を示す。図16−Aに示すように、カットパイルのパイル立上がり箇所でコース方向に屈曲させた場合にも、また、図16−Bに示すように、カットパイルのパイル立上がりでない箇所でコース方向に屈曲させた場合にも、いずれも地組織が露出しない。図17には、本発明の経編地を、ウェール方向で屈曲させた場合(ウェール方向線を境として曲げる場合)を示す。図17−A、Bに示すように、コース方向での屈曲と同様、いずれの箇所で屈曲させても地組織部が露出することがない。
以上のように、本発明のパイル織編物は、カットパイルと、地組織の一部の地糸をパイル面から起毛することによって得られたセミカットの起毛パイルとが混在することによって、屈曲部での使用に際し、その方向性を選ばず、如何なる形状の際も目むきが発生せず、かつ、畝感の無いパイル織編物となっている。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。実施例における目むき評価試験は下記のとおりに行った。
<目むき評価試験>
〈試験片の準備〉:試験片は、幅100mm×長さ100mmの正方形状とし、ウェール(たて方向)方向で2枚、コース(よこ方向)方向で2枚、正・逆バイヤス方向でそれぞれ2枚を準備する。準備した試験片の表側を重ね合わせて、1辺から10mmの位置を縫合する。
〈測定方法〉:縫い目を、台の90度の角に合わせ、一方を固定し他方に3kgの荷重を掛ける。その時の縫い目部の状態を、観察し等級評価する。
5級…全く目むきしていないもの、
4級…やや目むきしているもの、
3級…目むきして地の部分が若干見えるもの、
2級…縫い目部だけでなく、その付近も目むきしているもの、
1級…縫い目が著しく開き、縫合糸がはっきり見えるもの。
<実施例1>
図18に示すように、ダブルラッセル編機(マイヤー製 RD−6DPLM−77―18E)を使用した。地組織のL−1、L−6に167dtex−48fの糸を使用し、L−2、L−5に440dtex−96fの糸を使用して前後の地組織を編成するとともに、連結糸のL−3、L−4に167dtex−48fの糸を使用して前後の地組織を連結した。この際、起毛する地組織は、筬L−2、L−5の編糸を2ニードル分アンダーラップして編成し、編成された二重編地の中央を切り開いて、パイル編地の基布を得た。得られた基布をパイル面から針布起毛機でセミカット起毛を施し、仕上がり時のカットパイルの長さが3.3mm、編密度が26コース/インチ、20ウェール/インチのパイル編地を得た。
<実施例2>
図19に示すように、ダブルラッセル編機(マイヤー製 RD−6DPLM−77―22E)を使用した。地組織のL−1、L−6に110dtex―48fの糸を使用し、L−2、L−5に110dtex−48fを使用して前後の地組織を編成するとともに、連結糸のL−3、L−4に110dtex−48fの糸を使用して前後地組織を連結した。この際、起毛する地組織は、筬L−2、L−5の編糸を4ニードル分アンダーラップして編成し、編成された二重編地の中央を切り開いて、パイル編地の基布を得た。得られた基布をパイル面から針布起毛機でセミカット起毛を施し、仕上がり時のカットパイルの長さが1.8mm、編密度が42コース/インチ、26ウェール/インチのパイル編地を得た。
<実施例3>
図20に示すように、ダブルラッセル編機(マイヤー製 RD−6DPLM−77―28E)を使用した。地組織のL−1、L−6に84dtex−24fの糸を使用し、L−2、L−5に84dtex−72fの糸を使用して前後の地組織を編成するとともに、連結糸のL−3、L−4に84dtex−24fの糸を使用し前後地組織を連結した。この際、起毛する地組織は、筬L−2、L−5の編糸を5ニードル分アンダーラップして編成し、編成された二重編地の中央を切り開いて、パイル編地の基布を得た。得られた基布をパイル面から針布起毛機でセミカット起毛を施し、仕上がり時のカットパイルの長さが0.8mm、編密度が58コース/インチ、36ウェール/インチのパイル編地を得た。
<実施例4>
23羽/インチの2重ビロード織機を使用して、図21A〜21Bに示す組織図にしたがい、図21Cのような構成の2重織物を作製した。そして、これを切り開いて、図21Dに構成を示すパイル織物(2重ビロード)を得た。これをパイル面より針布起毛機でセミカット起毛を施し、仕上がり時のカットパイルの長さが1.2mmのパイル織物を得た。
なお、表裏の地組織(基布)を形成するための経糸及び緯糸には、ポリエステル・レーヨンの30/2(ポリエステルとレーヨンの混紡スパン糸であって30番の双糸;394dtex)を用い、パイル糸には、ポリエステルの20/2(20番の双糸;590dtex)を用い、モケット状に織製した。また、仕上がり状態におけるパイルの密度は、緯糸方向に23本/インチであり、経糸方向に48本/インチである。
<比較例1>
ダブルラッセル編機(マイヤー製 RD−6DPLM−77―22E)を使用した。地組織のL−1、L−6に110dtex−48fの糸を使用し、L−2、L−5に501dtex−96fを使用して前後の地組織を編成するとともに、連結糸のL−3、L−4に110dtex−48fの糸を使用して前後地組織を連結した。この際、地組織の筬L−2、L−5の編糸は同一ニードル位置として編成し、編成された二重編地の中央を切り開いて、パイル編地の基布を得た。得られた基布は、仕上がり時のカットパイルの長さが1.8mm、編密度が20コース/インチ、22ウェール/インチであった。
<比較例2>
ダブルラッセル編機(マイヤー製 RD−6DPLM−77―28E)を使用した。地組織のL−1、L−6に56dtex−24fの糸を使用し、L−2、L−5に56dtex−24fを使用して前後の地組織を編成するとともに、連結糸のL−3、L−4に56dtex−24fの糸を使用し前後地組織を連結した。この際、起毛する地組織の筬L−2、L−5の編糸は1ニードル分アンダーラップして編成し、編成された二重編地の中央を切り開いて、パイル編地の基布を得た。得られた基布をパイル面から針布起毛機でセミカット起毛を施し、仕上がり時のカットパイルの長さが0.3mm、編密度が65コース/インチ、40ウェール/インチのパイル編地を得た。
<比較例3>
23羽/インチの2重ビロード織機を使用して、図24Aに示す組織図に従い構成し、これを切り開いて図24Bに構成を示すパイル織物(2重ビロード)を得た。これを整毛して仕上がり時のカットパイルの長さが1.2mmのパイル織物を得た。起毛は施していない。なお、表裏の地組織(基布)の経糸及び緯糸、並びに、パイル糸、及びパイルの密度は、実施例4の場合と同一である。
上記実施例及び比較例についての目むき評価試験を、表1にまとめて示す。
Figure 2005124000
表1の結果から知られるように、実施例のパイル織編物であると、編成または織成のウェール方向、コース方向、及び、正及び逆のバイアス方向のいずれの方向で屈曲を行っても、やや目むきが見られるか(4級)、または全く目むきが見られない(5級)というものであった。特に、実施例3のパイル織編物であると、コース方向を除く3方向の屈曲により、全く目むきが見られなかった。
これに対して、比較例1〜2のパイル編物であると、コース方向を除く3方向の屈曲ではやや目むきが見られるか(4級)、または全く目むきが見られない(5級)というものであったが、コース方向の屈曲では縫い目部及びその付近が外観に表れた(2級)。また、比較例3のパイル織物であると、いずれの方向の屈曲においても目むきが明瞭に見られ、特にウェール方向の屈曲では、縫合糸がはっきり見える状態(1級)となった。
カットパイルの作成法を示す概念図である。 カットパイルの作成法を示す別の概念図である。 起毛パイルを形成するためのループパイルを有する布帛の概念図である。 セミカットを示す概念図である。 フルカットを示す概念図である。 セミカットされた布帛の概念図である。 フルカットされた布帛の概念図である。 ダブルラッセル機の概念図である。 本発明のカットパイルを有する布帛にセミカットを施した布帛の概念図である。 フルカットのみ施された布帛の概念図である。 フルカットのみ施された布帛のコース方向線に屈曲させた屈曲部の状態を表す概念図である。 フルカットのみ施された布帛のウェール方向線に屈曲させた屈曲部の状態を表す概念図である。 セミカットのみ施された布帛の概念図である。 セミカットのみ施された布帛のコース方向線に屈曲させた屈曲部の状態を表す概念図である。 セミカットのみ施された布帛のウェール方向線に屈曲させた屈曲部の状態を表す概念図である。 本発明のカットパイルを有する布帛にセミカットを施した布帛のコース方向線に沿って屈曲させた屈曲部の状態を示す概念図である。 本発明のカットパイルを有する布帛にセミカットを施した布帛のウェール方向線に沿って屈曲させた屈曲部の状態を示す概念図である。 実施例1の組織図である。 実施例2の組織図である。 実施例3の組織図である。 実施例4のパイル織物を得るための2重織物の組織図である。 実施例4のパイル織物を得るための2重織物における地組織の組織図である。 実施例4のパイル織物を得るための2重織物の構成図である。 実施例4のパイル織物についての構成図である。 比較例1の組織図である。 比較例2の組織図である。 比較例3のパイル織物についての、図21Aに対応する組織図である。 比較例3のパイル織物についての、図21Dに対応する構成図である。
符号の説明
1 地組織
2 連結糸
3 カットパイル
4 ループパイル
5 地糸
6 起毛針
7 セミカット起毛パイル
8 フルカット起毛パイル
11 編針
12 針釜
A1〜A6 編糸
B1〜B6 ビーム
L1〜L6 筬
G1〜G6 ガイド

Claims (7)

  1. 地組織部と、パイル部とで形成される織編物であって、パイル部が、パイル糸をカットすることで形成されるカットパイルと、該地組織の一部の地糸をセミカットしてなるセミカット起毛パイルの2種類のパイルからなることを特徴とするパイル織編物。
  2. 地組織部と、パイル部とで形成される織編物であって、パイル部が、2つの地組織と該地組織を連結する連結糸によって形成された二重織編物の連結糸をカットすることによって形成されるカットパイルと、該地組織の一部の地糸をセミカットしてなるセミカット起毛パイルの2種類のパイルからなることを特徴とするパイル織編物。
  3. 地組織の一部の地糸を2〜6ニードルの範囲でアンダーラップすることにより編成された編物からなり、セミカット起毛パイルが、このようにアンダーラップした地糸をセミカットしたものである請求項1または2記載のパイル織編物。
  4. 編みゲージ14〜30ゲージで編成され、仕上がり時の密度が25〜60コース/インチ、14〜45ウェール/インチである請求項3記載のパイル織編物。
  5. 重ね組織或いはパイル組織を有し、緯糸又は経糸を2〜10本浮かせて織製した織物から形成され、セミカット起毛パイルが、この浮いた地糸をセミカットしたものである請求項1または2記載のパイル織編物。
  6. 仕上がり時の地組織の経糸密度が20〜100本/インチ、緯糸密度が16〜120本/インチである請求項5記載のパイル織編物。
  7. セミカット起毛パイルを形成する糸が、繊度56〜886dtexのマルチフィラメント糸である請求項1〜6のいずれかに記載のパイル織編物。
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