JP4317481B2 - 厚手伸縮性経編地とその製造方法 - Google Patents
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Description
衣料品などの用途で、隠蔽性を高めたり厚みのある質感を表現したりする用途では、生地厚が分厚い伸縮性経編地が要求される。
伸縮性経編地の厚みを増やすには、例えば、編目が密に配置される編成組織を採用したり、太い弾性糸を使用したり、弾性糸および非弾性糸の編成組織の数あるいは糸の本数を増やしたりすることが考えられる。
例えば、特許文献1の技術では、主に第2の弾性糸によって伸縮特性が決まるが、第2弾性糸の太さを増やし過ぎると、パワーが強くなり過ぎ、しかも、伸びは少なくなるという問題が生じる。また、弾性糸が表面に露出し易いので、表面の外観性や質感に弾性糸の特性が強く出過ぎる場合があったり、端部のホツレが目立つ場合があったりする。
本発明の課題は、伸縮性経編地の生地厚を厚くしても、裁断端部におけるホツレや毛羽立ち、メクレなどの問題が発生し難く、表面の質感が良好で引き裂きに強いなどの生地特性に優れた厚手伸縮性経編地を提供することである。
そして、前記非弾性糸の編成組織は、21/32//、および、12/32//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有し、前記細い第1弾性糸の編成組織は、23/21//、および、34/32/21/23//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有し、前記太い第2弾性糸の編成組織は、22/44/22/33/11/33//、および、11/22/33/22//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有する。
〔非弾性糸〕
通常の経編地と同様の糸材料が使用できる。
綿などの天然繊維、ナイロンなどの合成繊維、さらには半合成繊維や再生繊維なども使用できる。これらの繊維からなるフィラメント糸、紡績糸、交撚糸などの何れも形態でもよい。
非弾性糸の太さは、16〜122dtexが採用でき、33〜55dtexがより好ましい。非弾性糸が十分に太ければ、生地の厚みを十分に確保でき、外観性や表面質感も良好になる。非弾性糸が太過ぎると、生地の伸縮性は低下する。
非弾性糸の編成組織は、第1弾性糸とともに厚手伸縮性経編地の地組織を構成する。1コース毎に2針の振り幅で1繰り返し単位では2針の合計振り幅を有して全てのコースでループを形成する。この条件を備えていれば、通常の伸縮性経編地において非弾性糸の地組織として採用されている各種の編成組織を採用したり組み合わせたりすることができる。比較的に緻密で厚みを確保し易い編成組織が、厚手の伸縮性経編地を構成し易く、表面の質感も良好になるなど好ましい。
具体的には、ツーウェイ、サテンなどの編成組織がある。より具体的には、21/32//、12/32//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用できる。
弾性糸の材料は、通常の伸縮性経編地で使用されている弾性糸と同様のものが採用できる。例えば、ポリウレタン弾性糸が使用できる。スパンデックスとして知られる高弾性ポリウレタン糸が使用できる。弾性糸に非弾性糸を被覆した被覆弾性糸も使用できる。
弾性糸としては、伸度200%以上のものが使用できる。好ましくは、伸度400%以上である。
2種類の弾性糸のうち、相対的に細いほうの第1弾性糸の太さを、22〜156dtexに設定できる。より好ましくは、44〜78dtexである。
〔弾性糸の編成組織〕
<細い第1弾性糸>
1コース毎に1〜2針の振り幅で1繰り返し単位では2〜3針の合計振り幅を有して全てのコースでループを形成し、前記非弾性糸とともに地組織を構成する。
通常の伸縮性経編地において、地組織を構成する非弾性糸および弾性糸による各種の編成組織を採用したり組み合わせたりすることができる。非弾性糸の編成組織で覆われて表面に露出し難い編成組織が好ましい。針間において、第1弾性糸が非弾性糸と逆の振りを有する編成組織が好ましい。
<太い第2弾性糸>
1コース毎に1〜2針の振り幅で1繰り返し単位では2〜5針の合計振り幅を有して挿入される。
通常の伸縮性経編地において、伸縮性を付与するために挿入される弾性糸による各種の編成組織を採用したり組み合わせたりすることができる。
具体的には、22/44/22/33/11/33//、11/22/33/22//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用できる。
前記した非弾性糸および弾性糸の編成組織を組み合わせて伸縮性経編地を編成する。
編成装置や編成条件は、基本的には通常の伸縮性経編地と同様の技術が適用できる。
編成装置としては、3枚以上の筬を有している必要がある。ラッシェル機、ジャガード機構付ラッシェル機、トリコット機などが使用できる。
通常、編成装置のフロント筬に非弾性糸、ミドル筬に第1弾性糸、バック筬に第2弾性糸が給糸される。さらに、柄模様を編成するための筬や、第3の弾性糸を編成するための筬などを加えることもできる。
非弾性糸による編成組織を、給糸量800〜2000mm/Rで編成することができる。
第1弾性糸による編成組織を、給糸量800〜1600mm/R(ST.100%)で編成することができる。ここで、給糸量単位〔mm/R(ST.100%)〕は、整型ストレッチ(ST.)を100%に設定した時の給糸量mm/Rを意味する。実際の経編地の製造において、整型ストレッチ(ST.)を100%以外の数値条件に設定する場合には、ST.100%に換算したときの給糸量mm/R(ST.100%)が、上記規定範囲に収まるようにする。
さらに、細い第1弾性糸の給糸量が太い第2弾性糸の給糸量の4.4〜16倍になるように設定することができる。
編成された経編地は、セット加工や精練処理、染色処理などの、通常の伸縮性経編地に行われている処理工程を経て、伸縮性経編地製品となる。
〔伸縮性経編地〕
製造された伸縮性経編地は、生地厚が十分に厚い厚手の生地であるとともに、弾性糸による優れた伸縮性すなわち伸びおよびパワーと、良好な表面質感や高い引裂強度、破裂強度など、従来の技術では達成し難かった特性を兼ね備えたものとなる。
伸縮性経編地の特性としては、伸びやパワーに優れたものが好ましい。特に、タテヨコ両方向、出来れば斜め方向も含めて、伸びおよびパワーのバランスが取れたものが好ましい。通常は、ヨコ方向に比べて、タテ方向の伸度、パワーが強いものが使用し易い。
具体的な数値条件として、タテ方向の伸度130〜250%、パワー700〜1600gに設定できる。ヨコ方向の伸度80〜300%、パワー300〜800gに設定できる。より好ましくは、タテ方向の伸度150〜220%、パワー850〜1200g、ヨコ方向の伸度150〜250%、パワー400〜700gである。ここで、伸度およびパワーは常法により測定される。具体的には、伸度は、生地の引張試験において、荷重2.25kgf(44.13N)で1回目の伸長時に測定された値で規定する。パワーは、80%伸長、3回目の伸長時に測定された値で規定する。
上記のような伸縮特性や強度特性などは、非弾性糸および弾性糸の糸使いおよび編成組織の組み合わせと編成条件によって調整することができる。
〔用途〕
通常の伸縮性経編地が使用される用途に使用できる。特に、外観性や着用感の良い伸縮性経編地が必要とされる各種の衣料品などに好適である。
図2において、編成装置のフロント筬〔F〕で編成される非弾性糸10の編成組織は、1コース毎に2針の振り幅で左右交互に振られ、開き目と閉じ目とを交互に繰り返し、全てのコースでループが形成されている。1繰り返し単位での合計振り幅も2針である。
ミドル筬〔M〕で編成される第1弾性糸20の編成組織は、非弾性糸10の編成組織と同様に、1コース毎に2針の振り幅で左右交互に振られ、全てのコースで閉じ目によるループが形成されている。1繰り返し単位での合計振り幅も2針である。
各糸の編成組織をまとめると、以下の符号で表される。
フロント筬〔F〕:21/32//。
ミドル筬 〔M〕:23/21//。
バック筬 〔B〕:22/44/22/33/11/33//。
図1に示す編地全体の編成組織では、全ての編目で、非弾性糸10と第1弾性糸20とがループを形成して絡んでいる。非弾性糸10と第1弾性糸20とは、針間において、互いに逆の振りで交差している。また、第2弾性糸30は、第1弾性糸20に対して各編目位置で交差している。編成後の編地にセット加工を行うと、第1弾性糸20と第2弾性糸30とは、互いに交差する各編目位置で互いに融着して一体化する。第1弾性糸20のループが固定された状態になる。
第2弾性糸30は、編地に挿入されていて、太さもあるので、強力な伸縮性を発揮する。しかも、第2弾性糸30がウェール方向に十分に振られていることで、第2弾性糸30の伸縮性は、基本的にはタテ方向に強く発現した上で、ヨコ方向にも良好に発揮される。編成状態を示す図1では、第2弾性糸30は左右に蛇行している状態で示されているが、製造後の編地製品においては、第2弾性糸30が直線的に伸びた状態で、非弾性糸10および第1弾性糸20の編成組織が変形させられた状態になる。このような、第2弾性糸30と非弾性糸10および第1弾性糸20との変形状態が、編地の裁断端部で各糸がほつれて長く伸び出してしまうことを防ぐ作用も果たす。
第1弾性糸20と第2弾性糸30とが融着一体化され、しかも、第1弾性糸20と非弾性糸10とが全ての編目位置で絡んでいることによって、ホツレや毛羽立ちが生じ難くなる。厚手伸縮性経編地を裁断すると、図1の端辺のように、各糸10〜30が切断された状態になる。このとき、前記したように、第1弾性糸20と第2弾性糸30とが融着一体化され、その上、全ての編目位置で第1弾性糸20と非弾性糸10とが絡んで固定された状態になっている。各糸10,20、30は、編目位置よりも先の極めて短い長さの端部が突出しているだけの状態になる。非弾性糸10あるいは第1弾性糸20が、端部を長く延ばしたり編目が解けたりして、ホツレを生じることがなくなる。例えば、糸10、20の端部を引き出して抜き取るような力が加わっても、編目位置で固定された各糸10、20がみだりに抜き出されることはない。挿入組織である第2弾性糸30は、編地を裁断した状態で、伸ばされていた状態から自らの弾性復元力で縮んで編地の内部側に引き込まれるので、太い第2弾性糸30が、端部にホツレとして大きくはみ出ることもない。
編成装置としては、カールマイヤー社製ラッセル機、タイプRSE4N3Kを用いた。
〔実施例1〕
<糸使いと編成組織>
図2に示す各編成組織を、下記の糸使いで編成した。
フロント筬〔F〕:ナイロン66、44T−34fブライト(東レ社製)
ミドル筬〔M〕:ライクラ44T−127C(オペロンテックス社製)
バック筬〔B〕:ライクラ310T−127C(オペロンテックス社製)
各糸の給糸量は以下のとおりである。
〔M〕:給糸量1000mm/R(ST.100%)
〔B〕:給糸量166mm/R(ST.100%)
<編地特性>
伸度:タテ方向178%、ヨコ方向250%
パワー:タテ方向903g、ヨコ方向458g。
引き裂き強度1745g、破裂強度27.5N/cm2。
生地厚0.73mm。
20 細い第1弾性糸
30 太い第2弾性糸
Claims (4)
- 非弾性糸と相対的に細い第1弾性糸と相対的に太い第2弾性糸とを組み合わせて編成された厚手の伸縮性経編地であって、
前記非弾性糸の編成組織は、21/32//、および、12/32//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有し、1コース毎に2針の振り幅で1繰り返し単位では2針の合計振り幅を有して全てのコースでループを形成し、
前記細い第1弾性糸の編成組織は、23/21//、および、34/32/21/23//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有し、1コース毎に1〜2針の振り幅で1繰り返し単位では2〜3針の合計振り幅を有して全てのコースでループを形成し、
前記太い第2弾性糸の編成組織は、22/44/22/33/11/33//、および、11/22/33/22//からなる群から選ばれる繰り返し単位を有し、1コース毎に1〜2針の振り幅で1繰り返し単位では2〜5針の合計振り幅を有して挿入されてなる、
ことを特徴とする、厚手伸縮性経編地。 - 前記非弾性糸が、16〜122dtexの太さであり、
前記細い第1弾性糸が、22〜156dtexの太さであり、
前記太い第2弾性糸が、33〜940dtexであって第1弾性糸の1.5〜22倍の太さである、
請求項1に記載の厚手伸縮性経編地。 - タテ方向の伸度130〜250%、パワー700〜1600gであり、
ヨコ方向の伸度80〜300%、パワー300〜800gであり、
引き裂き強度1000〜2500gであり、
破裂強度24.5〜40N/cm2であり、
生地厚0.5〜1.4mmである、
請求項1または2に記載の厚手伸縮性経編地。 - 請求項1から3までのいずれかに記載の厚手伸縮性経編地を製造する方法であって、
3枚以上の筬を有する経編機を用い、
フロント筬では、前記非弾性糸による編成組織を、給糸量800〜2000mm/Rで編成し、
ミドル筬では、前記細い第1弾性糸による編成組織を、給糸量800〜1600mm/R(ST.100%)で編成し、
バック筬では、前記太い第2弾性糸による編成組織を、給糸量100〜180mm/R(ST.100%)で編成し、
かつ、細い第1弾性糸の給糸量が太い第2弾性糸の給糸量の4.4〜16倍になるように設定する、
ことを特徴とする、厚手伸縮性経編地の製造方法。
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