JP7471332B2 - 滑り止め機能を有する経編地及び繊維製品 - Google Patents

滑り止め機能を有する経編地及び繊維製品 Download PDF

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Description

本発明は、滑り止め機能を有する経編地及び繊維製品に関し、詳しくは、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成されるベース組織の表面側及び/又は裏面側に、滑り止め用糸による滑り止め用編成組織が編み込まれてなる経編地及び繊維製品に関する。
従来、経編地及び繊維製品に滑り止め機能を付与することが検討されている。
滑り止め機能を付与する目的は様々であるが、主に、肌と接する製品(例えば、下着類など)への利用を想定したもの、具体的には、肌と接する面に滑り止め機能を付与することで、着用した際に衣類のずれを防止することを狙ったものや、さらに、肌を引っ張り上げながら着用することで、体型補正・姿勢矯正(ヒップアップ、バストアップなど)を狙ったものなどがある。
滑り止め機能を有する経編地の従来技術として、例えば、特許文献1には、パワーネット地の裏側に、滑り止め用スパンデックス糸を4コースから50コースごとに同一ウェールまたは1ウェールあるいは2ウェール移動させて挿入し、パワーネット伸縮用スパンデックス糸に前記滑り止め用スパンデックス糸よりも強い張力をかけることによって前記滑り止め用スパンデックス糸をパイル状に突出させた滑り止め機能付パワーネットが提案されている。
特開2011-63919号公報
上記特許文献1の技術では、滑り止め用スパンデックス糸が編地全体にわたって露出しており、滑り止め機能は十分に発揮されると思われる。
しかし、肌と接する製品を主たる用途として想定した場合には、編地全体にわたって露出した滑り止め用スパンデックス糸が肌全体を覆うこととなるため、通気性・吸汗性に乏しく、蒸れの原因となる恐れがある。
そこで、本発明は、通気性・吸汗性に優れ、かつ、滑り止め機能を有する経編地及び繊維製品を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる経編地は、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成されるベース組織の表面側及び/又は裏面側に、滑り止め用糸による滑り止め用編成組織が編み込まれてなる、滑り止め機能を有する経編地であって、前記滑り止め用編成組織は、少なくとも1種の滑り止め用糸が、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、前記滑り止め用編成組織の露出部の少なくとも一部において、隣接する露出部同士が1ウェール分以上離間している。
上記の本発明に係る経編地では、前記滑り止め用編成組織は、少なくとも、第1の滑り止め用糸及び第2の滑り止め用糸の2種の滑り止め用糸により編成され、かつ、前記2種の滑り止め用糸が、それぞれ、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、隣接する2種の滑り止め用糸同士が離間と接近を繰り返すことにより、隣接する露出部同士の離間が形成されており(以下、「第1の態様」ということがある。)、前記隣接する2種の滑り止め用糸が最も接近したコースにおいて、同一ウェール上に編目を形成している。
発明に係る経編地における代表的な別の態様では、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成されるベース組織の表面側及び/又は裏面側に、滑り止め用糸による滑り止め用編成組織が編み込まれてなる、滑り止め機能を有する経編地であって、前記滑り止め用編成組織は、少なくとも1種の滑り止め用糸が、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、前記滑り止め用編成組織の露出部の少なくとも一部において、隣接する露出部同士が1ウェール分以上離間しており、前記滑り止め用編成組織は、少なくとも、第1の滑り止め用糸及び第2の滑り止め用糸の2種の滑り止め用糸により編成され、前記2種の滑り止め用糸の繰り返し単位は、第1の滑り止め用糸の編込部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸の露出部が形成された組合せ箇所、及び、第1の滑り止め用糸の露出部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸の編込部が形成された組合せ箇所を備えており、1本又は2本以上の第1の滑り止め用糸と、1本又は2本以上の第2の滑り止め用糸とが交互に配列されていることにより、隣接する露出部同士の離間が形成されている(以下、「第2の態様」ということがある。)。
上記の本発明に係る経編地における代表的なさらに別の態様では、前記滑り止め用編成組織は、滑り止め用糸がXインYアウト(ただし、X,Yはそれぞれ独立して1以上の自然数)で糸通しされた編成筬で編成されたものであることにより、隣接する露出部同士の離間が形成されている(以下、「第3の態様」ということがある。)。
本発明にかかる繊維製品は、上記本発明にかかる経編地からなる。
本発明の編地は、滑り止め用編成組織における露出部により滑り止め機能が発揮される。他方、少なくとも一部において隣接する露出部同士が離間しているので、この離間箇所で、ベース組織が外部と通じることが可能となり、通気性・吸汗性にも優れている。
本発明の繊維製品は、上記本発明の経編地の有する特性を備えるものである。
編成例1の経編地における各編成組織を示す図である。 編成例1の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例2の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例3の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例4の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例5の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例6の経編地における各編成組織を示す図である。 編成例6の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例7の経編地における各編成組織を示す図である。 編成例7の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例8の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例9の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例10の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例11の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例12の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例13の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。 編成例14の経編地における各編成組織を示す図である。 編成例14の経編地における滑り止め用編成組織を示す図である。
以下、本発明にかかる経編地及びこれを用いた繊維製品の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔編成糸〕
ベース組織に用いる非弾性糸としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、綿、絹などの天然繊維などからなるものを、経編地の用途や要求性能に合わせて適宜に選択して使用することができる。種類としては、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸、混繊糸、複合糸など、特に限定されない。
非弾性糸の太さとしては、特に限定するわけではないが、例えば、22~156dtexである。
ベース組織に用いる弾性糸としては、例えば、ポリウレタン繊維などの弾性繊維からなるものなどが使用できる。
弾性糸の太さとしては、特に限定するわけではないが、例えば、22~470dtexである。
滑り止め用編成組織を構成する滑り止め用糸としては、ポリウレタン糸やゴム糸などの公知の弾性糸を使用することができる。
滑り止め用糸の太さとしては、特に限定するわけではないが、例えば、44~470dtexである。
本発明にかかる経編地では、弾性糸の交編率を10~49%とすることが好ましい。
〔経編地の編成〕
本発明にかかる経編地を編成するに際しては、通常の編成装置および編成方法が適用できる。
経編機としては、特に限定されず、例えば、トリコット編機、ラッセル編機などが使用でき、また、ジャカード編成組織を編成する場合には、ジャカード機構を備えたジャカード編機が使用できる。
編成後は、セット加工や精練処理、染色処理等の、通常の経編地に行われている処理を施すことができる。
〔第1の態様の編成例〕
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第1の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例(編成例1~6及びその他の変形例)を示す。なお、各編成例において説明が重複する点や、図面から明らかな点は、適宜説明を割愛している。また、各編成例において、共通の構成については、同一の符号を付している。
<編成例1>
編成例1の経編地は、筬GB1~筬GB4の4枚筬で編成される。筬GB1及びGB2により滑り止め用編成組織、筬GB3により非弾性糸編成組織、筬GB4により弾性糸編成組織が、それぞれ編成される。
図1に、編成例1の編地を構成する各編成組織を示す。
滑り止め用編成組織は、筬GB1に1イン2アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に1イン2アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
ベース組織を構成する非弾性糸編成組織は、筬GB3にフルセットで通糸された非弾性糸20により編成され、弾性糸編成組織は、筬GB4にフルセットで通糸された弾性糸30により編成されている。
第1の滑り止め用糸11は、図1に示す通り、43/33/33/22/22/22/21/11/11/11/11/11/01/11/11/11/22/22/23/33/33/33/33/33//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図1に示す通り、01/11/11/11/11/11/12/22/22/33/33/33/43/33/33/33/33/33/32/22/22/11/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
ベース組織は、非弾性糸20による編成組織を地組織とし、弾性糸30による挿入組織が組み合わされることによりストレッチ性が付与されている。
具体的には、非弾性糸20は、図1に示す通り、10/12/21/23/21/12//の繰り返し単位からなる。
また、弾性糸30は、図1に示す通り、00/22/11/33/11/22//の繰り返し単位からなる。
滑り止め用編成組織は、ベース組織よりもフロント側の筬で編成されるので、滑り止め用糸11,12は、一部がベース組織の表面側から露出して、その露出部分により、滑り止め機能が発揮される。
滑り止め用編成組織についてさらに具体的に説明するため、図2に、図1に示す2種の滑り止め用糸を1イン2アウトで編成した状態を示す滑り止め用編成組織を示す。
図1,2から、滑り止め用編成組織は、編込部として編目形成部を有するとともに、露出部として、ベース組織から露出するように編目形成部間に挿入される露出挿入部を有しており、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されていることが分かる。
2種の滑り止め用糸11,12は、露出挿入部においてベース組織から露出する。編目形成部ではベース組織内部に潜り込んだようになる。したがって、主に露出挿入部において、滑り止め機能が発揮されることになる。
本発明では、滑り止め用編成組織において、隣接する露出部同士が1ウェール分以上離間している。この1ウェール分以上離間している箇所は、2コース以上連続していることが好ましい。
編成例1では、隣接する2種の滑り止め用糸11,12同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図1,2では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図1,2では、1コース目及び13コース目)では、2ウェールの間隔が空いている。
このように、2種の滑り止め用糸11,12が離間と接近を繰り返すことで、露出挿入部はメッシュ調に配されることとなり、隣接する露出挿入部同士において1ウェール分以上の離間が生じている。そのため、タテ・ヨコ・ナナメにバランスよく滑り止め機能を付与することができるとともに、隣接する露出挿入部同士が離間している箇所では、ベース組織が滑り止め用糸により覆われることなく外部と通じていることで、通気性・吸汗性にも優れた編地となる。
なお、図1,2では、露出挿入部は、設計上、直線状ではなく階段状に図示されているが、最終製品としては、編目形成部間において、直線状に編地表面に露出する。
本発明では、滑り止め用編成組織において、以下に定義される割合Pが30~80%であることが好ましい。この範囲において、特に、通気性・吸汗性と、滑り止め機能とのバランスに優れたものとなる。
P=[(1リピート当たりの滑り止め用糸のトータルコース数)/(1リピート当たりのゲージ数×コース数)]×100
ただし、滑り止め用糸が、少なくとも1コースごとに左右に振られてベース組織内に挿入される波型挿入部を有する場合、この波型挿入部はベース組織内に潜り込んでいてこの部分での滑り止め機能は無視できる程度しかないので、当該波型挿入部のトータルコース数は、「1リピート当たりの滑り止め用糸のトータルコース数」から除く。
編成例1の場合、ヨコ3ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(24コース×2本)/(ヨコ3ゲージ×タテ24コース)]×100≒66.7%である。
<編成例2>
編成例2は、滑り止め用編成組織のみを編成例1から変更した編成例である。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例1と共通する点は、説明を割愛する。
編成例2の滑り止め用編成組織は、筬GB1に1イン3アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に1イン3アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図3に、編成例2の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11は、図3に示す通り、54/44/44/33/33/33/32/22/22/11/11/11/01/11/11/22/22/22/23/33/33/44/44/44//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図3に示す通り、01/11/11/22/22/22/23/33/33/44/44/44/54/44/44/33/33/33/32/22/22/11/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
図3から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。隣接する2種の滑り止め用糸同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図3では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図3では、1コース目及び13コース目)では、3ウェールの間隔が空いている。
編成例2では、隣接する2種の滑り止め用糸が最も離間するコースでの間隔が3ウェールであり、編成例1(2コース)よりも間隔が大きく、滑り止め機能よりも、通気性や吸汗性を優先した編成例と言える。
上述の割合Pは、編成例2の場合、ヨコ4ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(24コース×2本)/(ヨコ4ゲージ×タテ24コース)]×100=50%である。
<編成例3>
編成例3も、滑り止め用編成組織のみを編成例1から変更した編成例である。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例1と共通する点は、説明を割愛する。
編成例3の滑り止め用編成組織は、筬GB1に2イン3アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に2イン3アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図4に、編成例3の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11は、図4に示す通り、56/55/55/44/44/33/32/22/22/22/11/11/10/11/11/22/22/33/34/44/44/44/55/55//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図4に示す通り、10/11/11/11/22/22/23/33/33/44/44/55/56/55/55/55/44/44/43/33/33/22/22/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
図4から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。隣接する2種の滑り止め用糸同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図4では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図4では、1コース目及び13コース目)では、3ウェールの間隔が空いている。
編成例3は、各滑り止め用糸が2イン3アウトで通糸されているので、露出挿入部が2本一組で露出している一方で、最も離間するコースでの間隔は3ウェールと広いため、1イン2アウトの編成例1と比べて、メリハリのある編成例と言える。
上述の割合Pは、編成例3の場合、ヨコ5ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が4本編成されているので、
P=[(24コース×4本)/(ヨコ5ゲージ×タテ24コース)]×100=80%である。
<編成例4>
編成例4も、滑り止め用編成組織のみを編成例1から変更した編成例である。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例1と共通する点は、説明を割愛する。
編成例4の滑り止め用編成組織は、筬GB1に2イン4アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に2イン4アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図5に、編成例4の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11は、図5に示す通り、67/66/66/55/55/44/43/33/22/22/11/11/10/11/22/22/33/33/34/44/55/55/66/66//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図5に示す通り、10/11/22/22/33/33/34/44/55/55/66/66/67/66/55/55/44/44/43/33/22/22/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
図5から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。隣接する2種の滑り止め用糸同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図5では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図5では、1コース目及び13コース目)では、4ウェールの間隔が空いている。
編成例4も、編成例3と同様、各滑り止め用糸が2イン4アウトで通糸されている。露出挿入部が2本一組で露出している一方、最も離間するコースでの間隔は4ウェールと広いため、メリハリのある編成例と言える。また、編成例3と比べると、綺麗な菱形状となるので、バランスの良い編成例と言える。
上述の割合Pは、編成例4の場合、ヨコ6ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が4本編成されているので、
P=[(24コース×4本)/(ヨコ6ゲージ×タテ24コース)]×100≒66.7%である。
<編成例5>
編成例5も、滑り止め用編成組織のみを編成例1から変更した編成例である。滑り止め用編成組織は、上述の編成例2に類似している。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例1と共通する点は、説明を割愛する。
編成例5の滑り止め用編成組織は、筬GB1に1イン3アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に1イン3アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図6に、編成例5の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11は、図6に示す通り、54/44/44/43/33/33/32/22/22/21/11/11/01/11/11/12/22/22/23/33/33/34/44/44//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図6に示す通り、01/11/11/12/22/22/23/33/33/34/44/44/54/44/44/43/33/33/32/22/22/21/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
図6から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部2コースの繰り返しで構成されている。隣接する2種の滑り止め用糸同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図6では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図6では、1コース目及び13コース目)では、3ウェールの間隔が空いている。
編成例2と類似の編成であるが、編成例2との違いは、隣接する2種の滑り止め用糸同士が最も接近するコースと、最も離間するコースとの中間となるコース(図5では、4コース目、10コース目、16コース目及び22コース目)に、編目形成部を設けていることである。
その結果、編成例2と比べて、露出挿入部の割合が少なくなる。したがって、滑り止め機能よりも、通気性や吸汗性を優先した編成例と言える。
上述の割合Pは、編成例5の場合、ヨコ4ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(24コース×2本)/(ヨコ4ゲージ×タテ24コース)]×100=50%である。
<編成例6>
編成例6の経編地は、筬GB1~筬GB4の4枚筬で編成される。筬GB1により非弾性糸編成組織、筬GB2により弾性糸編成組織、筬GB3及びGB4により滑り止め用編成組織が、それぞれ編成される。
図7に、編成例6の編地を構成する各編成組織を示す。
滑り止め用編成組織は、筬GB3に1イン3アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB4に1イン3アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
ベース組織を構成する非弾性糸編成組織は、筬GB1にフルセットで通糸された非弾性糸20により編成され、弾性糸編成組織は、筬GB2にフルセットで通糸された弾性糸30により編成されている。
第1の滑り止め用糸11は、図7に示す通り、54/44/44/43/33/33/32/22/22/21/11/11/01/11/11/12/22/22/23/33/33/34/44/44//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図7に示す通り、01/11/11/12/22/22/23/33/33/34/44/44/54/44/44/43/33/33/32/22/22/21/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
ベース組織は、非弾性糸20、弾性糸30による各編成組織が組み合わされて形成されている。
具体的には、非弾性糸20は、図7に示す通り、23/10//の繰り返し単位からなる。
また、弾性糸30は、図7に示す通り、10/12//の繰り返し単位からなる。
滑り止め用編成組織は、ベース組織よりもバック側の筬で編成されるので、滑り止め用糸11,12は、一部がベース組織の裏面側から露出して、その露出部分により、滑り止め機能が発揮される。
滑り止め用編成組織についてさらに具体的に説明するため、図8に、図7に示す2種の滑り止め用糸を1イン3アウトで編成した状態を示す滑り止め用編成組織を示す。
図7,8から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部2コースの繰り返しで構成されている。隣接する2種の滑り止め用糸同士は、離間と接近を繰り返している。両者が最も接近するコース(図8では、7コース目及び19コース目)では、両者は同一ウェール上に編目を形成している。他方、両者が最も離間するコース(図8では、1コース目及び13コース目)では、3ウェールの間隔が空いている。
編成例6は、編成例1~5と異なり、滑り止め用糸11,12の一部がベース組織の裏面側から露出するため、表面側に弾性糸が露出し難い編地を編成することができる。
編成例6は、また、編成例1~5と異なり、ベース組織の弾性糸が挿入組織ではなく、ルーピング組織であることで、スリップアウトし難く、そのため、耐久性の高い編地を編成することができる。
このように、本発明においては、滑り止め用糸組織は、ベース組織の表面側、裏面側のいずれに配置してもよい。また、ベース組織の弾性糸は挿入組織に限らず、ルーピング組織であっても良い。このことは、後述する第2の態様及び第3の態様においても同様である。
上述の割合Pは、編成例6の場合、ヨコ4ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(24コース×2本)/(ヨコ4ゲージ×タテ24コース)]×100=50%である。
<その他の変形例>
本発明の第1の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例として、編成例1~6を例示したが、本発明の第1の態様に係る経編地は上記編成例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度で、種々の実施形態を採り得る。
例えば、上記編成例1~4では、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで、24コースを繰り返し単位として編成するようにし、上記編成例5,6では、編目形成部1コース、露出挿入部2コースの繰り返しで、24コースを繰り返し単位として編成するようにしている。この編目形成部のコース数や、露出挿入部のコース数を変更しても良い。また、編目形成部のコース数や、露出挿入部のコース数を変更することに伴い、繰り返し単位のコース数が増減しても構わない。
例えば、編目形成部を2コース以上連続させても良いし、露出挿入部のコース数を3コースや4コース、さらに6コース以上に変更しても良い。
また、滑り止め用糸の振り幅も特に限定されない。振り幅を大きくすると、隣接する2種の滑り止め用糸同士が最も離間するコースにおける両者の間隔を広くすることができることとなる。
なお、隣接する2種の滑り止め用糸同士が最も離間するコースにおける両者の間隔は、目的に応じて適宜決定することができるが、通気性・吸汗性を重視する場合は、2ウェール分以上の間隔を空けることが好ましい。
また、上記各編成例1~6においては、編込部として編目形成部を採用しているが、この編目形成部は、開き目であっても良いし、閉じ目であっても良い。また、編目形成部に代えて、第2の態様に関して後述する編成例7~10で採用しているような波型挿入部を採用しても良い。また、露出部として露出挿入部を採用しているが、いわゆるシンカーループを露出部として利用することもできる。
なお、ベース組織は、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成される任意の編成組織を採用することができ、上述の各編成例で採用したような特定の編成組織に限定されるものではない。
また、ベース組織を構成する非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織は、それぞれ、1種ずつに限定されるものではなく、2種以上の非弾性糸編成組織及び/又は2種以上の弾性糸編成組織からベース組織が構成されても良い。各編成組織は、総詰めに限定されず、例えば、一対のハーフセット編みであっても良い。また、ジャカード編成組織を含むものであっても良い。
〔第2の態様の編成例〕
次に、本発明の第2の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例(編成例7~10及びその他の変形例)について、第1の態様と同様、以下に示す。
<編成例7>
編成例7の経編地は、筬GB1~筬GB4の4枚筬で編成される。筬GB1により非弾性糸編成組織、筬GB2により弾性糸編成組織、筬GB3及びGB4により滑り止め用編成組織が、それぞれ編成される。
図9に、編成例7の編地を構成する各編成組織を示す。
滑り止め用編成組織は、筬GB3に3イン3アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB4に3イン3アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
ベース組織を構成する非弾性糸編成組織は、筬GB1にフルセットで通糸された非弾性糸20により編成され、弾性糸編成組織は、筬GB2にフルセットで通糸された弾性糸30により編成されている。
第1の滑り止め用糸11は、図9に示す通り、11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/00/11/00/11/00/11/00/11/00/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
第2の滑り止め用糸12は、図9に示す通り、11/11/11/00/11/00/11/00/11/00/11/00/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/11//の繰り返し単位(24コース)からなる。
ベース組織は、非弾性糸20による編成組織を地組織とし、弾性糸30による挿入組織が組み合わされることによりストレッチ性が付与されている。
具体的には、非弾性糸20は、図9に示す通り、10/12/21/23/21/12//の繰り返し単位からなる。
また、弾性糸30は、図9に示す通り、00/22/11/33/11/22//の繰り返し単位からなる。
滑り止め用編成組織は、ベース組織よりもバック側の筬で編成されるので、滑り止め用糸11,12は、一部がベース組織の裏面側から露出して、その露出部分により、滑り止め機能が発揮される。
滑り止め用編成組織についてさらに具体的に説明するため、図10に、図9に示す2種の滑り止め用糸を3イン3アウトで編成した状態を示す滑り止め用編成組織を示す。
図9,10から、2種の滑り止め用糸11,12による各滑り止め用編成組織は、それぞれ、編込部として、1コースごとに左右に振られて挿入される波型挿入部を有するとともに、露出部として、ベース組織から露出するように波型挿入部間に挿入される露出挿入部とを有しており、波型挿入部9コース、露出挿入部15コースの繰り返しで構成されていることが分かる。
2種の滑り止め用糸11,12は、露出挿入部においてベース組織から露出する。波型挿入部ではベース組織内部に潜り込んだようになる。したがって、主に露出挿入部において、滑り止め機能が発揮されることになる。
上述の割合Pは、編成例7の場合、ヨコ6ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、15コース(波型挿入部のトータルコース数を除いたコース数)の滑り止め用糸が6本編成されているので、
P=[(15コース×6本)/(ヨコ6ゲージ×タテ24コース)]×100=62.5%である。
図10に見るように、2種の滑り止め用糸11,12の繰り返し単位は、第1の滑り止め用糸11の波型挿入部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸12の露出挿入部が形成された組合せ箇所、第1の滑り止め用糸11の露出挿入部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸12の波型挿入部が形成された組合せ箇所を備える。
また、3本の第1の滑り止め用糸による挿入糸群と、3本の第2の滑り止め用糸による挿入糸群が交互に配列されている。このような配列は、第1の滑り止め用糸11及び第2の滑り止め用糸12を、それぞれ3イン3アウトで、かつ、インとアウトがちょうど対になるように筬に通糸することで可能となっている。
2種の滑り止め用糸11,12を上記のように組合せることで、タテ方向及びヨコ方向において、波型挿入部と露出挿入部が一定の間隔で交互に表れるようになる。これにより、比較的バランスよく滑り止め機能を付与することができるとともに、波型挿入部によって隣接する露出挿入部同士が離間した箇所では、ベース組織が滑り止め用糸により覆われることなく外部と通じていることで、通気性・吸汗性も良好となる。
<編成例8>
編成例8は、滑り止め用編成組織のみを編成例7から変更した編成例である。ベース組織は、編成例7と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例7と共通する点は、説明を割愛する。
編成例8の滑り止め用編成組織は、筬GB1に3イン5アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に3イン5アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図11に、編成例8の滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11及び第2の滑り止め用糸12の各繰り返し単位は、編成例7と同様である。ただ、筬への通糸を3イン5アウトとすることで、3本の第1の滑り止め用糸による挿入糸群と、3本の第2の滑り止め用糸による挿入糸群との間に、1ウェール分の離間が生じている点で、編成例7と異なる。
このように、第1の滑り止め用糸による挿入糸群と第2の滑り止め用糸による挿入糸群との間に離間を設けることで、露出挿入部同士がさらに離間することになるので、滑り止め機能よりも通気性や吸汗性を優先したい場合に有効である。
上述の割合Pは、編成例8の場合、ヨコ8ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、15コース(波型挿入部のトータルコース数を除いたコース数)の滑り止め用糸が6本編成されているので、
P=[(15コース×6本)/(ヨコ8ゲージ×タテ24コース)]×100≒46.9%である。
<編成例9>
編成例9も、滑り止め用編成組織のみを編成例7から変更した編成例である。ベース組織は、編成例7と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例7と共通する点は、説明を割愛する。
編成例9の滑り止め用編成組織は、筬GB1に2イン4アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に2イン4アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図12に、編成例9の滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11及び第2の滑り止め用糸12の各繰り返し単位は、編成例7,8と同様である。ただ、筬への通糸を2イン4アウトとすることで、2本の第1の滑り止め用糸による挿入糸群と、2本の第2の滑り止め用糸による挿入糸群との間に、1ウェール分の離間が生じている点で、編成例7,8と異なる。
3本の挿入糸群と離間を繰り返す編成例8と比べると、2本の挿入糸群と離間を繰り返す編成例9のほうが、全体として、離間が多く入ることになるので、滑り止め機能よりも通気性や吸汗性をより優先させた編成例となる。
上述の割合Pは、編成例9の場合、ヨコ6ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、15コース(波型挿入部のトータルコース数を除いたコース数)の滑り止め用糸が4本編成されているので、
P=[(15コース×4本)/(ヨコ6ゲージ×タテ24コース)]×100≒41.7%である。
<編成例10>
編成例10も、滑り止め用編成組織のみを編成例7から変更した編成例である。ベース組織は、編成例7と共通であり、説明を割愛する。また、滑り止め用編成組織についても、編成例7と共通する点は、説明を割愛する。
編成例10の滑り止め用編成組織は、筬GB1に3イン7アウトで通糸された第1の滑り止め用糸11、及び筬GB2に3イン7アウトで通糸された第2の滑り止め用糸12の2種の滑り止め用糸により編成されている。
図13に、編成例10の滑り止め用編成組織を示す。
第1の滑り止め用糸11及び第2の滑り止め用糸12の各繰り返し単位は、編成例7~9と同様である。ただ、筬への通糸を3イン7アウトとすることで、3本の第1の滑り止め用糸による挿入糸群と、3本の第2の滑り止め用糸による挿入糸群との間に、2ウェール分の離間が生じている点で、編成例6~8と異なる。
滑り止め機能に寄与する挿入糸群の本数を多めにしながら、挿入糸群間の離間を2ウェールと広く取ることで、メリハリのある編成例と言える。
上述の割合Pは、編成例10の場合、ヨコ10ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、15コース(波型挿入部のトータルコース数を除いたコース数)の滑り止め用糸が6本編成されているので、
P=[(15コース×6本)/(ヨコ10ゲージ×タテ24コース)]×100=37.5%である。
<その他の変形例>
本発明の第2の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例として、編成例7~10を例示したが、本発明の第2の態様に係る経編地は上記編成例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度で、種々の実施形態を採り得る。
例えば、上記編成例7~10では、波型挿入部9コース、露出挿入部15コースの繰り返し単位(全体としては24コースの繰り返し単位)となっているが、波型挿入部のコース数や、露出挿入部のコース数を変更しても良い。また、波型挿入部のコース数や、露出挿入部のコース数を変更することに伴い、繰り返し単位のコース数が増減しても構わない。
また、上記編成例7~10では、第1及び第2の滑り止め用糸は、2本以上を単位として、交互に配列されているが、第1及び第2の滑り止め用糸の一方又は双方の単位本数を1本としても良い。
さらに、上記各編成例7~10における波型挿入部は、1コースごとに左右に振られて挿入されているが、1コースに限定されるものでない。すなわち、波型挿入部としては、少なくとも1コースごとに左右に振られて挿入されるものであればよい。
また、編込部として、波型挿入部に代えて、第1の態様に関して上述した編成例7~10で採用しているような編目形成部を採用しても良い。さらに、露出部として露出挿入部を採用しているが、いわゆるシンカーループを露出部として利用することもできる。
第1の態様と同様、ベース組織は、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成される任意の編成組織を採用することができ、上述の各編成例で採用したような特定の編成組織に限定されるものではない。ベース組織を構成する非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織が2種以上の非弾性糸編成組織及び/又は2種以上の弾性糸編成組織からベース組織が構成されても良いこと、各編成組織は、総詰めに限定されず、例えば、一対のハーフセット編みであっても良いこと、ジャカード編成組織を含むものであっても良いことも、第1の態様と同様である。
〔第3の態様の編成例〕
最後に、本発明の第3の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例(編成例11~14及びその他の変形例)について、以下に示す。
<編成例11>
編成例11の経編地は、1種の滑り止め用糸を用いた例であり、滑り止め用糸を編成するための筬1枚、ベース組織の弾性糸編成組織を編成するための筬1枚、ベース組織の非弾性糸編成組織を編成するための筬1枚の計3枚の筬で編成される。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。
図14に、編成例11の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
編成例11の滑り止め用編成組織は、筬GB1に2イン1アウトで通糸された滑り止め用糸10により編成されている。
滑り止め用糸10は、図14に示す通り、10/11/11/11/11/11//の繰り返し単位(6コース)からなる。
図14から分かるように、滑り止め用編成組織は、編込部として編目形成部を有するとともに、露出部として、ベース組織から露出するように編目形成部間に挿入される露出挿入部を有しており、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。
2イン1アウトで糸通しされた編成筬で編成されていることで、隣接する露出挿入部同士が1ウェール分離間している。
上述の割合Pは、編成例11の場合、ヨコ3ゲージ、タテ6コースを1リピートとし、この1リピートに、6コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(6コース×2本)/(ヨコ3ゲージ×タテ6コース)]×100≒66.7%である。
<編成例12>
編成例12の経編地も、1種の滑り止め用糸を用いた例であり、編成例11と同様に3枚筬で編成される。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。
図15に、編成例12の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
編成例12の滑り止め用編成組織は、筬GB1に1イン1アウトで通糸された滑り止め用糸10により編成されている。
滑り止め用糸10は、図15に示す通り、23/22/22/11/11/11/10/11/11/22/22/22の繰り返し単位(12コース)からなる。
図15から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。
1イン1アウトで糸通しされた編成筬で編成されていることで、隣接する露出挿入部同士が1ウェール分離間している。
編成例11では滑り止め用糸が同一ウェール上に編成されているが、編成例12では、滑り止め用糸が斜め方向に挿入されているので、露出挿入部も斜め方向に露出することとなる。
上述の割合Pは、編成例12の場合、ヨコ2ゲージ、タテ12コースを1リピートとし、この1リピートに、12コースの滑り止め用糸が1本編成されているので、
P=[(12コース×1本)/(ヨコ2ゲージ×タテ12コース)]×100=50%である。
<編成例13>
編成例13の経編地も、1種の滑り止め用糸を用いた例であり、編成例11,12と同様に3枚筬で編成される。ベース組織は、編成例1と共通であり、説明を割愛する。
図16に、編成例12の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
編成例13の滑り止め用編成組織は、筬GB1に1イン2アウトで通糸された滑り止め用糸10により編成されている。
滑り止め用糸10は、図16に示す通り、43/33/33/22/22/22/21/11/11/11/11/11/01/11/11/11/22/22/23/33/33/33/33/33//の繰り返し単位(24コース)からなる。
図16から分かるように、滑り止め用編成組織は、編目形成部1コース、露出挿入部5コースの繰り返しで構成されている。
1イン2アウトで糸通しされた編成筬で編成されていることで、隣接する露出挿入部同士が2ウェール分離間している。
この編成例13も、編成例12と同様に、露出挿入部が斜め方向に露出するが、繰り返し単位24コースであり、編成例12よりも振り幅が大きい。因みに、この滑り止め用糸10の繰り返し単位は、編成例1の滑り止め用糸11の繰り返し単位と同じである。
上述の割合Pは、編成例13の場合、ヨコ3ゲージ、タテ24コースを1リピートとし、この1リピートに、24コースの滑り止め用糸が1本編成されているので、
P=[(24コース×1本)/(ヨコ3ゲージ×タテ24コース)]×100≒33.3%である。
<編成例14>
編成例14の経編地も、1種の滑り止め用糸を用いた例であり、編成例11~13と同様に3枚筬で編成される。
図17に、編成例14の編地を構成する滑り止め用編成組織を示す。
編成例14の滑り止め用編成組織は、筬GB3に2イン1アウトで通糸された滑り止め用糸10により編成されている。
滑り止め用糸10は、図17に示す通り、01/11/11/12/22/22/32/22/22/21/11/11//の繰り返し単位(12コース)からなる。
ベース組織は、非弾性糸20、弾性糸30による各編成組織が組み合わされて形成されている。
具体的には、非弾性糸20は、図17に示す通り、23/10//の繰り返し単位からなる。
また、弾性糸30は、図17に示す通り、10/12//の繰り返し単位からなる。
滑り止め用編成組織は、ベース組織よりもバック側の筬で編成されるので、滑り止め用糸10は、一部がベース組織の裏面側から露出して、その露出部分により、滑り止め機能が発揮される。
滑り止め用編成組織についてさらに具体的に説明するため、図18に、図17に示す滑り止め用糸を2イン1アウトで編成した状態を示す滑り止め用編成組織を示す。
図17,18から分かるように、滑り止め用編成組織は、編込部として編目形成部を有するとともに、露出部として、ベース組織から露出するように編目形成部間に挿入される露出挿入部を有しており、編目形成部1コース、露出挿入部2コースの繰り返しで構成されている。
2イン1アウトで糸通しされた編成筬で編成されていることで、隣接する露出挿入部同士が1ウェール分離間している。
この編成例14も、編成例12,13と同様に、露出挿入部が斜め方向に露出するが、繰り返し単位12コースであり、編成例12,13よりも振り幅が小さい。
編成例14は、また、編成例11~13と異なり、ベース組織の弾性糸が挿入組織ではなく、ルーピング組織であることで、スリップアウトし難く、そのため、耐久性の高い編地を編成することができる。
上述の割合Pは、編成例14の場合、ヨコ3ゲージ、タテ12コースを1リピートとし、この1リピートに、12コースの滑り止め用糸が2本編成されているので、
P=[(12コース×2本)/(ヨコ3ゲージ×タテ12コース)]×100≒66.7%である。
<その他の変形例>
本発明の第3の態様に係る経編地を編成するための具体的な編成例として、編成例11~14を例示したが、本発明の第3の態様に係る経編地は上記編成例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度で、種々の実施形態を採り得る。
上述の第1及び第2の態様では、2種以上の滑り止め用糸を用いて、その組み合わせ方を工夫することによって、露出部同士の離間を確保しているが、編成例11~14では、滑り止め用糸の糸通しの仕方のみによって、露出部同士の離間を確保している。
そのため、編成例11~14では、滑り止め用編成組織を編成するための筬が1枚で済むので、上記第1及び第2の態様(滑り止め用編成組織を編成するための筬は2枚)と比べて、少ない筬枚数で経編地を編成することができる。筬枚数が少なくなることで、編立が早くなり、生産効率の向上にも繋がる。
このように、編成例11~14は、少ない筬枚数で経編地を編成できる点を利点の1つとするものであるが、敢えて、同様の滑り止め用編成組織を、2種以上の滑り止め用糸を用いて編成しても構わない。
また、滑り止め用糸の糸通しの仕方に関し、編成例11~14は、滑り止め用糸がXインYアウト(ただし、X,Yはそれぞれ独立して1以上の自然数)で糸通しされた編成筬で編成されている。
Xの値が大きいほど、露出部の密度が大きくなり、滑り止め機能が強く発揮され、また、Yの値が大きいほど、露出部同士の離間が大きくなり、通気性や吸汗性が高くなる。
このような観点から、目的に合わせてX,Yの値を適宜調整することにより、様々な経編地を作製することができる。
編成例11~14のように、1種の滑り止め用糸で滑り止め用編成組織を編成する場合、Xの値は、特に限定するわけではないが、例えば、1~5程度とすることができる。また、Yの値も、特に限定するわけではないが、例えば、1~5程度とすることができる。
また、上記各編成例11~14においては、編込部として編目形成部を採用しているが、この編目形成部は、開き目であっても良いし、閉じ目であっても良い。また、編目形成部に代えて、第2の態様に関して上述した編成例7~10で採用しているような波型挿入部を採用しても良い。また、露出部として露出挿入部を採用しているが、いわゆるシンカーループを露出部として利用することもできる。
第1及び第2の態様と同様、ベース組織は、非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成される任意の編成組織を採用することができ、上述の各編成例で採用したような特定の編成組織に限定されるものではない。ベース組織を構成する非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織が2種以上の非弾性糸編成組織及び/又は2種以上の弾性糸編成組織からベース組織が構成されても良いこと、各編成組織は、総詰めに限定されず、例えば、一対のハーフセット編みであっても良いこと、ジャカード編成組織を含むものであっても良いことも、第1及び第2の態様と同様である。
〔経編地の用途〕
本発明にかかる経編地は、様々な繊維製品に利用でき、特にその用途が限定されるものではないが、例えば、ファンデーションやインナーウェア、スポーツウェア、アウターウェアなどの衣類、枕カバー、ベッドカバーなどの寝具や、カーテンなどに好適に利用でき、特に、下着類などの肌と接する製品への利用に適している。
以下、本発明にかかる経編地について実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、図1,2の編成例に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表1に示す。
Figure 0007471332000001
編成された経編地は、ベース組織の表面側から露出する滑り止め用編成組織の露出挿入部により、滑り止め機能を有するものであった。
滑り止め用編成組織において、隣接する2種の滑り止め用糸同士が離間と接近を繰り返すことにより、露出挿入部がメッシュ調に配されている。これにより、タテ・ヨコ・ナナメにバランスよく滑り止め機能を付与することができた。また、隣接する露出挿入部同士が離間している箇所では、ベース組織が滑り止め用糸により覆われることなく外部と通じていることで、通気性・吸汗性の良好な編地であった。
〔実施例2〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、図3の編成例に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表2に示す。
Figure 0007471332000002
作製された実施例2の経編地は、実施例1の経編地と同様、滑り止め機能、通気性・吸汗性の良好な編地であった。
実施例1と比較すると、滑り止め機能はやや控えめだが、より通気性・吸汗性に優れた編地であった。
〔実施例3〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、図9,10の編成例に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表3に示す。
Figure 0007471332000003
編成された経編地は、ベース組織の表面側から露出する滑り止め用編成組織の露出挿入部により、滑り止め機能を有するものであった。
滑り止め用編成組織において、波型挿入部と露出挿入部とが、タテ方向及びヨコ方向において、一定の間隔で交互に配されている。これにより、比較的バランスよく滑り止め機能を付与することができた。また、波型挿入部によって隣接する露出挿入部同士が離間した箇所では、ベース組織が滑り止め用糸により覆われることなく外部と通じていることで、通気性・吸汗性の良好な編地であった。
10,11,12 滑り止め用糸
20 非弾性糸
30 弾性糸
GB1~GB4 筬

Claims (5)

  1. 非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成されるベース組織の表面側及び/又は裏面側に、滑り止め用糸による滑り止め用編成組織が編み込まれてなる、滑り止め機能を有する経編地であって、
    前記滑り止め用編成組織は、少なくとも1種の滑り止め用糸が、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、
    前記滑り止め用編成組織の露出部の少なくとも一部において、隣接する露出部同士が1ウェール分以上離間しており、
    前記滑り止め用編成組織は、少なくとも、第1の滑り止め用糸及び第2の滑り止め用糸の2種の滑り止め用糸により編成され、かつ、前記2種の滑り止め用糸が、それぞれ、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、
    隣接する2種の滑り止め用糸同士が離間と接近を繰り返すことにより、隣接する露出部同士の離間が形成されており、
    前記隣接する2種の滑り止め用糸が最も接近したコースにおいて、同一ウェール上に編目を形成している経編地。
  2. 非弾性糸編成組織及び弾性糸編成組織により構成されるベース組織の表面側及び/又は裏面側に、滑り止め用糸による滑り止め用編成組織が編み込まれてなる、滑り止め機能を有する経編地であって、
    前記滑り止め用編成組織は、少なくとも1種の滑り止め用糸が、ベース組織内に編み込まれる編込部と、ベース組織から露出するように編込部間に形成される露出部を有する一定の繰り返し単位で編み込まれており、
    前記滑り止め用編成組織の露出部の少なくとも一部において、隣接する露出部同士が1ウェール分以上離間しており、
    前記滑り止め用編成組織は、少なくとも、第1の滑り止め用糸及び第2の滑り止め用糸の2種の滑り止め用糸により編成され、
    前記2種の滑り止め用糸の繰り返し単位は、第1の滑り止め用糸の編込部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸の露出部が形成された組合せ箇所、及び、第1の滑り止め用糸の露出部が形成されているコースにおいて第2の滑り止め用糸の編込部が形成された組合せ箇所を備えており、
    1本又は2本以上の第1の滑り止め用糸と、1本又は2本以上の第2の滑り止め用糸とが交互に配列されていることにより、隣接する露出部同士の離間が形成されている、経編地。
  3. 前記滑り止め用編成組織は、滑り止め用糸がXインYアウト(ただし、X,Yはそれぞれ独立して1以上の自然数)で糸通しされた編成筬で編成されたものであることにより、隣接する露出部同士の離間が形成されている、
    請求項1、又は請求項2に記載の経編地。
  4. 前記滑り止め用編成組織において、以下に定義される割合Pが30~80%である、請
    求項1から請求項3のいずれか1項に記載の経編地。
    P=[(1リピート当たりの滑り止め用糸のトータルコース数)/(1リピート当たり
    のゲージ数×コース数)]×100
    ただし、滑り止め用糸が、少なくとも1コースごとに左右に振られてベース組織内に挿
    入される波型挿入部を有する場合、当該波型挿入部のトータルコース数は、「1リピート
    当たりの滑り止め用糸のトータルコース数」から除く。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の経編地からなる、繊維製品。
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