JP4635039B2 - 伸縮性経編地 - Google Patents
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伸縮性経編地に優れた伸縮性を付与するために、弾性糸の編成組織について様々な工夫がなされている。
例えば、本件出願人は、商品名「トリスキン(登録商標)」と名付けた伸縮性経編地を開発し(特許文献1参照)、製造販売している。この伸縮性経編地は、非弾性糸からなる地組織に、振り幅の異なる2種類の弾性糸を挿入編成することで、経緯両方向に優れた伸びとパワーを発揮することができる。
そのほかにも、弾性糸の編成組織を工夫したり、弾性糸の材質や特性を向上させたりすることで、伸縮性経編地の性能向上を図ることが考えられている。
ポリウレタン弾性糸などの弾性糸は、非弾性糸に比べると、表面にザラツキがある。弾性糸を編み込んだ経編地は、弾性糸が表面に露出する部分で表面質感が低下することになる。綿のような優しい当接感を実現することはできない。
例えば、前記した特許文献1の技術では、弾性糸の組織を工夫することで、経編地の表面側については通常の非弾性糸のみからなる経編地と遜色のない滑らかさが得られるが、裏面側については、少しザラツキが残る。
弾性糸を使った伸縮性経編地は、破裂強度や引裂強度に劣るという問題もある。これは、一般的に、弾性糸は非弾性糸に比べて前記強度特性に劣っているため、弾性糸を編み込んだ経編地は、衣料品などに使用しているうちに、引裂きや破裂が生じる心配があり、耐久性に劣るという問題がある。
さらに、前記した弾性糸を二目編で組み込む技術では、特別な設定が必要であるほか、編成された経編地にカールが生じて使用し難いという問題や、非弾性糸に比べてコストのかかる弾性糸を大量に使用するために、経編地の生産コストが高くつくという問題もある。
〔非弾性糸〕
通常の経編地と同様の糸材料が使用できる。
非弾性糸は、全く弾性の無い糸だけではなく、弾性糸に比べて弾性あるいは伸縮性の少ない糸であればよい。具体的には、本明細書において、非弾性糸とは、伸び100%未満の糸を意味する。好ましくは、伸び60%未満の糸である。
非弾性糸の太さは、フィラメント糸の場合、15−235dtexが採用でき、22−78dtexが好ましい。紡績糸の場合、40−140綿番手が採用でき、50−80綿番手が好ましい。
〔非弾性糸の編成組織〕
非弾性糸の編成組織は、1本の糸が、同じコース上で複数針に渡るオーバーラップを行ない複数の編目を形成する二目編組織を有する。
非弾性糸の編成組織には、前記した二目編組織に加えて、二目編組織以外の各種の編成組織を組み合わせることもできる。1枚の経編地に、二目編組織の領域と二目編組織以外の領域とが配置されてあってもよい。
〔弾性糸〕
弾性糸の材料は、通常の伸縮性経編地で使用されている弾性糸と同様のものが採用できる。例えば、ポリウレタン弾性糸が使用できる。スパンデックスとして知られる高弾性ポリウレタン糸が使用できる。
2種類の弾性糸を、振り幅を違えて挿入する場合、第1および第2の弾性糸を22−620dtexの範囲で同じ太さにしたり太さを変えて組み合わせたりすることができる。
〔弾性糸の編成組織〕
弾性糸の編成組織は、1本の糸が、同じコース上では単独の編目を形成するか編目を形成しない。
第1の弾性糸が全ウェールにわたってコース毎に1〜2針の振り幅で挿入され、第2の弾性糸が全ウェールにわたってコース毎に1〜3針の振り幅で挿入される編成組織が採用できる。この編成組織は、前記した特許文献1に開示された編成組織のうち、弾性糸の編成組織を適用することができる。同様に、第2718441号公報、特開2000−220065号公報などに開示された編成組織における、弾性糸の編成組織を適用することもできる。第1、第2の弾性糸に加えて、第3の弾性糸を、別の編成組織で挿入することもできる。
1本の弾性糸がコース毎に隣のウェールに渡って編目を形成する編成組織からなる群から選ばれる何れか1種の編成組織が採用できる。
〔伸縮性経編地の編成〕
前記した非弾性糸および弾性糸の編成組織を組み合わせて伸縮性経編地を編成する。
編成装置や編成条件は、基本的には通常の伸縮性経編地と同様の技術が適用できる。
編成装置としては、ラッシェル機、ジャガード機構付ラッシェル機、トリコット機などが使用される。
非弾性糸の供給量は、編成組織や糸条件などによっても異なるが、二目編組織を編成する場合、1800−3400mm/Rの範囲に設定できる。
弾性糸の供給量は、90−900mm/R(整経ストレッチst100%)の範囲に設定できる。
〔伸縮性経編地〕
製造された伸縮性経編地は、弾性糸による優れた伸縮性すなわち伸びおよびパワーと、良好な表面質感や高い引裂強度、破裂強度など、従来の伸縮性経編地では達成し難かった特性を兼ね備えたものとなる。
伸縮性経編地の特性として、伸びやパワーに優れたものが好ましい。特に、経緯両方向、出来れば斜め方向も含めて、伸びおよびパワーのバランスが取れたものが好ましい。具体的には、伸びが200−370%(タテ)、100−250(ヨコ)、150−300(ナナメ)、パワーが150−1000kg(タテ)、300−1500kg(ヨコ)、200−1200(ナナメ)であるものが好ましい。
上記のような伸縮特性および強度特性は、非弾性糸および弾性糸の糸使いおよび編成組織の組み合わせによって調整することができる。
〔用途〕
通常の伸縮性経編地が使用される用途に使用できる。特に、外観性や着用感が要求される衣料品などに好適である。例えば、ガードルやブラジャー、ボディースーツ、ショーツなどの女性用インナーウェアがある。水着やレオタード、スキーウェアなどのスポーツウェアもある。
すなわち、生地が柔らかくなり、優しい接触感があり、緻密で透け感がなく、しかも、表裏の質感の違いも少ない。破裂強度が高くなり、引裂き強力が大きく、ほつれ難い利点も発揮できる。弾性糸の編成組織に特殊な変更が不要であるため、一般的な編成装置や編成条件が採用できる。弾性糸の使用量も少なくて済むので、能率的かつ低コストで製造できる。
図1(a)は、非弾性糸の編成組織を示し、1本の糸が、同じコース上で複数針に渡るオーバーラップを行ない複数の編目を形成する二目編組織を構成している。編成組織〔A〕は、2針に渡るオーバーラップを行なって、2個の編目が設けられている。編成組織〔B〕は、3針に渡るオーバーラップを行なっている。編成組織〔C〕−〔E〕は、さらに、編目の構造やオーバーラップ幅などを種々に変更している。
図1(b)は、弾性糸の編成組織を示し、1本の糸が、同じコース上では単独の編目を形成するか編目を形成していない。そのうち、編成組織〔M〕は、いわゆる鎖編組織である。編成組織〔N〕は、コース毎にループを形成している。編成組織〔O〕は、1針または2針の振り幅で挿入された挿入組織である。編成組織〔P〕は、1針の振り幅からなる挿入組織である。編成組織〔Q〕は、1針または3針の振り幅からなる挿入組織である。編成組織〔R〕は、一部のコースではループを形成し、他のコースでは挿入されている。
編成装置としては、カールマイヤー社製ラッシェル機、タイプRSE4N−56GGを用いた。
〔実施例1〕
<糸使い>
F.GB1:ナイロン66、33T−26セミダル(東レ社製)
GB2: ―
B.GB3:ライクラ117T−127C(東レ・デュポン社製)
B.GB4:ライクラ44T−127C(東レ・デュポン社製)
ここで、Fはフロント筬、Bはバック筬を示す。以下も同様。
F.GB1:フルセッティング(混率88%)
B.GB3:フルセッティング(混率8%)
B.GB4:フルセッティング(混率4%)
<編組織>
図2参照。
GB1の非弾性糸は、同じコース上で2針に渡るオーバーラップを行ない2個の編目を形成する二目編になっている。
<給糸量>
F.GB1:2900mm/R
B.GB3:140mm/R(st75%)
B.GB4:225mm/R(st100%)
<仕上がり性量>
コース:147c/in、ウェール:43.6w/in
生地厚み:0.55mm
<伸縮性>
得られた経編地に対して、引張試験を行なった結果を示す。
編地の特性について評価した。
ほつれ :非常に強い。
破裂強度:470kPa(4.8kgf/cm2)
引裂強度:1269g
カール :0度
透け感 :透けない。
風合 :非常に柔らかく、優しいタッチであり、表裏とも差がない。
〔比較例1〕
弾性糸を二目編で編成している。
<糸使い>
F.GB1:ナイロン6、33T−6セミダル異形(東レ社製)
GB2:ライクラ44T−127C(東レ・デュポン社製)
B.GB3: ―
B.GB4: ―
<筬への配列>
F.GB1:フルセッティング(混率52%)
GB2:フルセッティング(混率48%)
<編組織>
図3参照。
GB2の弾性糸は、実施例1の非弾性糸と同じ編成組織の二目編である。
<給糸量>
F.GB1:1350mm/R
GB2:1900mm/R(st100%)
<仕上がり性量>
コース:122c/in、ウェール:60.0w/in
生地厚み:0.59mm
<伸縮性>
ほつれ :強い。
破裂強度:186kPa(1.9kgf/cm2)
引裂強度:1030g
カール :51度(使用に難あり)
透け感 :ほぼ透けない。
風合 :ゴム様の風合いで、表裏ともにザラザラしている。
〔比較例2〕
実公昭59−2148号公報に記載の技術である。非弾性糸からなる地組織に、2種類の弾性糸を挿入している。非弾性糸の編成組織は、二目編ではない。
F.GB1:ナイロン6、33T−6セミダル異形(東レ社製)
M.GB3:ライクラ156T−127C(東レ・デュポン社製)
B.GB4:ライクラ44T−127C(東レ・デュポン社製)
<筬への配列>
F.GB1:フルセッティング(混率70%)
M.GB3:フルセッティング(混率16%)
B.GB4:フルセッティング(混率14%)
<編組織>
図4参照。
GB2とGB3の弾性糸は、実施例1と同じく、振り幅が異なる2種類の挿入組織である。
<給糸量>
F.GB1:1100mm/R
B.GB3:98mm/R(st75%)
B.GB4:350mm/R(st100%)
<仕上がり性量>
コース:207c/in、ウェール:50w/in
生地厚み:0.43mm
<伸縮性>
ほつれ :十分に使用可能な範囲ではあるが、少し弱い。
破裂強度:147kPa(1.5kgf/cm2)
引裂強度:1084g
カール :0度
透け感 :透ける。
風合 :柔らかさはあるが、表の滑らかさに比べて裏は少しザラツキがある。
〔実施例と比較例の評価〕
(1) 比較例1では、弾性糸を二目編にしたことによって、タテヨコ斜めの何れの方向にも優れた伸びおよびパワーを発揮できる。
(2) 比較例2では、2種類の弾性糸を組み合わせたことによって、比較例1よりは少ないが、実用的に十分な伸びおよびパワーを示す。
ところが、編地の風合は、表は滑らかであるが、裏に少しザラツキがでる。透け感があるため、用途によっては使用し難いこともある。破裂強度もそれほど高くない。
(3) 実施例1では、比較例1に比べて、全方向での伸びとパワーとのバランスという点では少し劣るが、比較例2とはほぼ同等であり、実用的に十分な伸縮性を有している。
非弾性糸に比べて高価な弾性糸の使用量が、比較例1よりも大幅に減っているので、製造コストの低減が図れる。
M−R 弾性糸の編成組織
Claims (3)
- 非弾性糸と弾性糸とを組み合わせて編成された伸縮性経編地であって、
前記非弾性糸の編成組織は、1本の糸が同じコース上で複数針に渡るオーバーラップを行ない複数の編目を形成する二目編組織を有し、
前記弾性糸の編成組織は、1本の糸が同じウェール上でコース毎に編目を形成する鎖編組織を必須とする編成組織からなる、
ことを特徴とする、伸縮性経編地。 - 前記非弾性糸の二目編組織は、フルセットまたは1イン1アウトである、
請求項1に記載の伸縮性経編地。 - 前記非弾性糸は、伸度100%未満であって、15−235dtexのフィラメント糸または40−140綿番手の紡績糸であり、
前記弾性糸は、伸度200%以上であり、前記編目を形成する編成組織では17−156dtex、前記編目を形成しない編成組織では20−620dtexである、
請求項1または2に記載の伸縮性経編地。
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