まず、本発明の一実施例(以下、「本実施例」と言う。)の毛羽生成装置に用いる加工対象の炭素繊維基材について説明する。図9は、その加工対象の炭素繊維基材91が既に加工された状態を示すものであって、(A)図は、その炭素繊維基材91の一部を拡大した平面図であり、(B)図は(A)図のE−E線断面図、(C)図はF−F線断面図である。炭素繊維基材91は、直交する扁平な3K糸の経糸92と緯糸93とで構成される平織りの炭素繊維基材91とする。ここで、「K」は炭素繊維マルチフィラメント糸を構成するフィラメントの本数が1000本であることを意味している。したがって、3K糸は、フィラメント数が3000本の炭素繊維マルチフィラメント糸のことである。また、3K糸は、糸の幅(最大幅)が2mmの扁平な糸であり、この3K糸を用いて平織りした炭素繊維基材91は、表面および裏面における隣り合う経糸92、92のピッチが約2mmとなっている。
因みに、炭素繊維基材91の経糸92及び緯糸93の断面形状は、上下方向に潰れた扁平形状である。そして、本実施例の毛羽生成装置により、緯糸93を形成するフィラメントの一部を、表面及び裏面側から切断し、その切断された繊維の端部を起立させることによって、毛羽94が生成される。図面(図9を含む。)では、経糸方向をd、緯糸方向をe、上下方向をfとして表示してある。
このような加工対象の炭素繊維基材91に加工を施す本実施例の毛羽生成装置は、単独の装置として設けられている。因みに、本実施例を含む本発明の毛羽生成装置は、炭素繊維基材91に関する製造装置(織機、プリプレグ製造装置、裁断機、検反機、巻返し機、等)に対して設けられるものであっても良いが、本実施例では、他の製造装置とは別の独立した装置として設けられている。
図1〜図7には、本実施例の毛羽生成装置を具体化した一例が示されている。図1には、その一例の全体像を示す平面図が、図2には、図1のA−A線断面図が示されている。本実施例の毛羽生成装置では、炭素繊維基材91の炭素繊維マルチフィラメントの一部を切断するための切断装置5、5Aが2つ固定配置され、炭素繊維基材91が経糸方向dを移動方向としてこれら切断装置5、5Aに対して移動する構成とする。そのため、毛羽生成装置は、炭素繊維基材91を移動させるための構成として、炭素繊維基材91の送出装置2と巻取装置3とを備える。このため、本実施例では、炭素繊維基材91の移動によって炭素繊維基材91と2つの切断装置5、5Aとの間の相対移動が生じるものとなっている。
また、炭素繊維基材91は経糸方向dを移動方向とするため、炭素繊維基材91を形成する経糸92が本発明における「一方の糸(経糸と緯糸のうちの一方の糸)」となる。さらに、経糸方向dと直交する方向に織り込まれている緯糸93の方向(緯糸方向e)が、本発明における「幅方向」となる。なお、以後、炭素繊維基材91の移動方向である経糸方向dに関し送出装置2側を上流側、巻取装置3側を下流側として説明する。
本実施例の毛羽生成装置は、炭素繊維基材91の表裏両面のそれぞれに対向して2つの切断装置5、5Aと2つの毛羽起立装置50、50Aとを備えるものとする。従って、本実施例の毛羽生成装置は、炭素繊維基材91の表裏両面に毛羽94を生成するものとなっている。
また、本実施例での切断装置5、5Aは、刃物列10を備えており、刃物列10は、円盤型のカッタ(円盤型カッタ)11がその厚さ方向に複数枚並設されて構成されるものとする。従って、本実施例では、各円盤型カッタ11が、本発明における「刃部材」に相当している。
また、本実施例での切断装置5、5Aは、本発明におけるピッチ変更機構20、並びに押圧手段41を備えているものとする。ピッチ変更機構20とは、円盤型カッタ11の刃部11aの幅方向の間隔(ピッチ)を変更するものであり、押圧手段41とは、炭素繊維基材91へ向けた押圧力を円盤型カッタ11に作用させるものである。
また、本実施例の毛羽生成装置は、切断装置5、5Aに対向する炭素繊維基材91の面とは反対側の面で炭素繊維基材91に当接する受け部材(受けロール)7、7Aを備えており、これら受けロール7、7Aで炭素繊維基材91を支持することにより、切断装置5、5Aに対する炭素繊維基材91の位置を維持(規制)している。従って、受けロール7、7Aは、本発明における炭素繊維基材91の位置規制装置に相当している。
このような概要を有する本実施例の毛羽生成装置は、図1〜2に示すように、構成要素として、本体フレーム1と、本体フレーム1内で最上流側に配置された送出装置2と、本体フレーム1内で最下流側に配置された巻取装置3と、経糸方向dに関し送出装置2と巻取装置3との間において配置された第1のロール4、第2のロール4Aと、経糸方向dに関し第1のロール4、第2のロール4A間に配置された第1の受けロール7、第2の受けロール7Aと、第1の切断装置5、第2の切断装置5Aと、毛羽起立系統装置6(第1の毛羽起立装置50、第2の毛羽起立装置50Aを含むもの。)とを備えている。以下、各構成要素について、順に述べる。
本体フレーム1は、幅方向に離間して一対に設けられた躯体1cと前記一対の躯体1cを幅方向に連結する複数の梁部材とで構成されている。そして、第1の切断装置5、第2の切断装置5Aを支持するための第1の梁部材1a、第2の梁部材1bが、経糸方向dに関し第1のロール4と第2のロール4Aとの間の位置において、前記一対の躯体1cに対しそれぞれ幅方向に架け渡されるかたちで設けられている。
経糸方向dに関しては、第1の梁部材1aが第2の梁部材1bよりも上流側に配置されている。一方、上下方向fに関しては、第1の梁部材1aが第1のロール4よりも上方の位置に、第2の梁部材1bが第1のロール4よりも下方の位置に配置されている。
送出装置2は、送出ビーム2aと、送出ビーム2aを回転駆動する送出モータ2bとを備える。送出ビーム2aは、軸線を幅方向に向けた状態で配置されると共に、その両端に設けられた軸部2cにおいて、軸受2dを介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。また、送出ビーム2aには、経糸方向dに長尺の炭素繊維基材91が、経糸方向dを前記軸線に直交させた状態で巻き付けられている。因みに、送出モータ2bは、その出力軸2eの軸線を送出ビーム2aの軸線に一致させた状態で本体フレーム1に固定して設けられると共に、送出ビーム2aの前記軸部2cの一方に接続されている。
巻取装置3は、巻取ビーム3aと、巻取ビーム3aを回転駆動する巻取モータ3bとを備える。この巻取ビーム3aは、軸線を幅方向に向けた状態で配置されると共に、その両端に設けられた軸部3cにおいて、軸受3dを介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。また、巻取ビーム3aには、送出ビーム2aから引き出され、毛羽形成処理が施された炭素繊維基材91が巻き取られる。因みに、巻取モータ3bは、その出力軸3eの軸線を巻取ビーム3aの軸線に一致させた状態で本体フレーム1に固定して設けられると共に、巻取ビーム3aの前記軸部3cの一方に接続されている。
そして、巻取モータ3bは、炭素繊維基材91の経糸方向dの張力が所定の張力となるように、駆動トルクを制御されて巻取ビーム3aを回転駆動する。一方、送出モータ2bは、巻取ビーム3aに巻き取られて引き出される炭素繊維基材91の弛みを吸収すると共に、炭素繊維基材91が経糸方向dに所定の一定速度で送り出されて進行するように、回転速度を制御されて送出ビーム2aを積極的に回転駆動する。本実施例では、送出モータ2bおよび巻取モータ3bとしてサーボモータを採用しており、送出モータ2bおよび巻取モータ3bは、送出ビーム2aおよび巻取ビーム3aの巻径の変化に応じて、駆動トルクおよび回転速度を制御されるものとする。
第1のロール4、第2のロール4Aは、軸線を幅方向に向けた状態で、その両端に設けられた軸部4a、4Aaにおいて、軸受4b、4Abを介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。このうち第1のロール4は、経糸方向dに関し、送出装置2と第1の梁部材1aとの間に配置される。一方、第2のロール4Aは、経糸方向dに関し、第2の梁部材1bよりも下流側であって、巻取装置3の近傍に配置される。その上で、第1のロール4と第2のロール4Aとは、上下方向fに関し、送出ビーム2aおよび巻取ビーム3aよりも上方において、周面の上端位置が互いに同じ高さとなる位置に配置されている。そして、送出ビーム2aから送り出された炭素繊維基材91は、第1のロール4、第2のロール4Aの周面に順次巻き掛けられて転向され、巻取ビーム3aへと導かれており、送出ビーム2aと巻取ビーム3aとの間の位置で第1のロール4、第2のロール4Aによって支持されている。したがって、第1のロール4、第2のロール4Aは、共に本発明における「支持部材」に相当している。
そして、前述のように、本実施例では、経糸方向dに関し第1のロール4と第2のロール4Aとの間の位置に、炭素繊維基材91の表裏両面のそれぞれに対向する第1の切断装置5、第2の切断装置5Aを備えている。
第1の切断装置5は、炭素繊維基材91の表面に対向するように設けられており、第1の梁部材1aによって支持されている。一方、第2の切断装置5Aは、炭素繊維基材91の裏面に対向するように設けられており、第2の梁部材1bによって支持されている。
図3は、図2で示されている第1の切断装置5を拡大して表している。これら第1の切断装置5、第2の切断装置5Aは、上下逆さまに設けられている点を除いて同じ構成であり、何れも、刃部材としての円盤型カッタ11を幅方向に間隔をあけて複数枚配列された刃物列10と、円盤型カッタ11の刃部11aの幅方向の間隔(ピッチ)を変更するピッチ変更機構としての伸縮機構20と、刃物列10および伸縮機構20を支持する支持装置30とを備えている。図4には、図3のB−B線の矢印方向から視た第1の切断装置(刃物列10、伸縮機構20、支持装置30)5が示されている。また、図5には、経糸92の進行方向から視た第1の切断装置(刃物列10、伸縮機構20、支持装置30)5が示されている。
なお、本実施例では、各切断装置5、5Aは2つの刃物列10、10を備えており、該2つの刃物列10、10は、経糸方向dに関し一部を重複させた状態、より詳しくは、一方の刃物列10における円盤型カッタ11の刃先を他方の刃物列10における隣接する円盤型カッタ11の中間位置でその円盤型カッタ11間に入り込ませた状態で、並設されている。また、本実施例では、各切断装置5、5Aは、円盤型カッタ11に対し炭素繊維基材91へ向けた押圧力を作用させる調節装置40、40Aを備える。
以下に、前記した切断装置5、5Aの構成について詳細に説明する。但し、前述のように、第2の切断装置5Aは、構成が第1の切断装置5と同じであるため、以降では、第1の切断装置5の各構成について説明するものとする。また、各切断装置5、5Aに含まれる経糸方向dに並設された2つの刃物列10、10についても、それぞれ同じ構成であるため、以下ではその一方について説明するものとする。
図1〜3に示すように、本実施例では、支持装置30は、幅方向に離隔して対向配置される一対の支持フレーム31、31と、該支持フレーム31、31を支持する筐体32と、両支持フレーム31、31間に架設される第1の支持軸33とを備えている。
各支持フレーム31は、板状の部材であって、幅方向(緯糸方向e)に見て経糸方向dに長い長方形状を有する。本実施例では、支持フレーム31は2つの刃物列10、10に共通となっているため、前記のような長方形状となっている。また、各支持フレーム31は、幅方向における筐体32の両端部に固定されるかたちで支持されている。
筐体32は、薄板状の板材を屈曲させて形成されたものであって、一対の支持フレーム31、31間の空間の三方(図示の例では上方、経糸方向両側)を覆うと共に、下方(炭素繊維基材91側)が開口するように形成された断面コの字型の部材である。各支持フレーム31は、筐体32の幅方向における両端部の内側の面に対し、側面(3面)を当接させた状態で固定されている。また、筐体32は、その上面には幅方向に間隔をおいて支持プレート34が固定されており、これら支持プレート34の上に固定された後述の調節装置40を介して本体フレーム1(第1の梁部材1a)に支持されている。すなわち、各支持フレーム31は、調節装置40及び筐体32を介して本体フレーム1に支持されている。
第1の支持軸33は、各支持フレーム31に固定されたステーに両端部のそれぞれを支持されるかたちで1対の支持フレーム31、31間に架設されている。また、各ステーは、支持フレーム31の下端よりも下方へ延びるように設けられており、第1の支持軸33は、支持フレーム(筐体32)31の下端よりも下方に配置されている。
刃物列10は、図3〜5に示すように、幅方向に間隔をあけて配列された複数枚の円盤型カッタ11と、円盤型カッタ11を支持するために円盤型カッタ11毎に設けられる支持ステー14とを備えている。
円盤型カッタ11は、円盤形状に形成された薄板状のカッタであって、外周部に全周に亘って刃部11aが形成されている。従って、刃部11aの側面11a1が、本発明でいう「刃面」に相当する。因みに、図8に示す円盤型カッタ11は、刃部11aを除く本体部分において、厚み方向を形成する2つの側面が平行であるが、刃部11aにおいては、前記厚み方向の1つの側面のみが本体部分の一側面と同一平面に形成されており、もう一つの側面が先端に向かって傾斜する面となっている。
各円盤型カッタ11には、その中心位置に貫通孔11bが形成されている。また、各円盤型カッタ11は、前記貫通孔11bに挿通された軸部材12を介し、対応する支持ステー14に支持される。なお、前記軸部材12は、円盤型カッタ11を回転自在に支持すると共に、一端において支持ステー14に支持され、他端側には円盤型カッタ11の軸部材12からの抜けを防止するための抜け止め部材(ファスナー)13が固定されている。
支持ステー14は、板状の部材であって、経糸方向dに延びる延在部15と、延在部15の長手方向(経糸方向d)の一端側において前記長手方向と直交する方向の一方側(図3の上下方向fの下方側)へ向けて延在部15から突出するように設けられた第1の突出部16と、前記長手方向の他端側において第1の突出部16と同じ側へ向けて延在部15から突出するように設けられた第2の突出部17とを有する。
延在部15には、長手方向に沿うかたちで延在する長孔(貫通孔)15aが設けられている。
第2の突出部17は、円盤型カッタ11を支持する部分であって、図示の例では、第1の突出部16と比べ、前記長手方向及び前記一方側への寸法が大きく形成されている。また、第1の突出部16、第2の突出部17にも貫通孔16a、17aが設けられている。このうち第2の突出部17の貫通孔17aには前記の円盤型カッタ11を支持する軸部材12が挿通され、固定されている。
各支持ステー14は、第1の突出部16、第2の突出部17を炭素繊維基材91側(図3の例では下側)へ向けるかたちで、幅方向に間隔をあけて並設される。従って、各支持ステー14に支持される円盤型カッタ11も、幅方向に並設された状態となる。
第1の突出部16における貫通孔16aは第1の支持軸33が挿通されるものであり、各支持ステー14は、支持装置30(第1の支持軸33)に対し、第1の突出部16における貫通孔16aによって幅方向に移動可能に支持されている。また、各支持ステー14は、延在部15の長孔15aにおいて、伸縮機構20を介し支持装置30に支持されている。
伸縮機構20は、図3〜5に示すように、幅方向に伸縮可能に構成されるリンク機構20Aと、リンク機構20Aを伸縮させる操作機構20Bと、リンク機構20Aに対して刃物列10を連結する連結機構20Cとを含む。
リンク機構20Aは、図4に示すように、複数のリンク部材Lと、各リンク部材Lの端部を互いに屈曲可能に連結するピンPとで構成されている 。
リンク部材Lは、前記した複数の支持ステー(円盤型カッタ11)14の所定個ずつに対応して設けられる。従って、リンク部材Lの数は、支持ステー(円盤型カッタ11)14の総数に応じたもの(図示の例では、支持ステーの総数を前記所定個で除算した数)となる。
各リンク部材Lは、両端部に形成された貫通孔L1において、ピンP等を介して隣接するリンク部材Lと回動可能に連結される。(幅方向における両端に位置するリンク部材Lは、一端側でのみ連結される。)また、各リンク部材Lには、長手方向の中間位置に操作機構20Bを連結するための貫通孔L2が形成されると共に、その中間位置の貫通孔L2と両端の貫通孔L1との間のそれぞれの位置に連結機構20Cを取り付けるための貫通孔L3が形成されている。
このようなリンク機構(各リンク部材L)20Aは、刃物列10の上方の位置に配置され、各リンク部材Lの下面において刃物列10に連結されると共に、上面において操作機構20Bに連結される。
操作機構20Bは、図4に示すように、両端に雄ねじ部21aを有するねじ付き軸21と、ねじ付き軸21と前記リンク機構20Aとを連結すべく各リンク部材Lに対応して設けられる複数の連結用のブロック22A、22B(連結ブロック)と、ねじ付き軸21の端部に設けられる操作部23とで構成されている。因みに、各操作機構20Bは、第1の切断装置5に含まれる2つの刃物列10、10に対応して2つ設けられており、操作部23は、このような2つの操作機構20B、20Bに共通の単一の機構で構成されている。
ねじ付き軸21は、両端部に雄ねじ部21aを有する軸部材である。なお、ねじ付き軸21における一端側の雄ねじ部21aに形成される雄ねじと他端側の雄ねじ部21aに形成される雄ねじとは、逆ねじとなっている。そして、ねじ付き軸21は、前記リンク機構20Aの上方の位置において軸線を第1の支持軸33と平行に向けたかたちで配置され、その両端部において軸受(図示せず)を介して支持フレーム31に回転可能に支持されている。
連結ブロック22A、22Bは、図4に示すように、ねじ付き軸21の各雄ねじ部21aに螺合して設けられる一対の螺合ブロック22A(一方の螺合ブロックについては図示略)と、一対の螺合ブロック22Aの間でねじ付き軸21に嵌装された状態で設けられる複数の中間ブロック22Bとを含む。
各螺合ブロック22Aは、貫通孔(図示略)を有し、その貫通孔の内周面に、ねじ付き軸21の雄ねじ部21aに螺合するための雌ねじ(図示略)が形成されている。
各中間ブロック22Bは、螺合ブロック22Aと同様に貫通孔(図示略)を有する。但し、中間ブロック22Bにおける貫通孔(図示略)には雌ねじが形成されておらず、この点で螺合ブロック22Aと異なる。
このような各連結ブロック(螺合ブロック22A、中間ブロック22B)は、対応するリンク部材Lがねじ部材S等(図5参照)で連結されることで、対応するリンク部材Lを回動可能に支持する。すなわち、リンク機構20Aを構成する各リンク部材Lは、連結ブロック22A,22Bを介してねじ付き軸21に支持されている。
この構成により、各連結ブロック22A,22Bは、対応するリンク部材Lの中間位置を、経糸方向dに関しねじ付き軸21の位置に拘束する。なお、螺合ブロック22Aは、複数の連結ブロック(中間ブロック22B)の両端に位置するものであり、リンク機構20Aにおける前記両端に位置するリンク部材Lに対応する。
また、各連結ブロック22A、22Bは、隣接する連結ブロック22A、22Bとの間隔がリンク部材Lの長さよりも短い間隔であって、各連結ブロック22A、22B同士の間隔が等間隔となるように、ねじ付き軸21上に配置される。従って、各リンク部材Lが対応する連結ブロック22A、22Bに支持されることにより、リンク機構20Aは、連結されるリンク部材L、L同士の間の角度が等しいジグザグ形状を成した状態で支持されている。
操作部23は、前述のように、2つの刃物列10、10のそれぞれに対応する各伸縮機構20、20に共通の単一の機構として構成されている。具体的には、操作部23は、各伸縮機構20におけるねじ付き軸21のそれぞれの端部に連結された操作歯車23aと両操作歯車23a、23aを連結する中間歯車23bとを含む。また、両操作歯車23a、23aの一方には、作業者が操作するための操作用のハンドル23cが取り付けられている。
より詳しくは、各ねじ付き軸21は、その一端側において支持フレーム31から幅方向の外側へ向けて突出するように設けられており、各操作歯車23aは、ねじ付き軸21の前記突出した端部に対し相対回転不能に取り付けられている。
中間歯車23bは、両操作歯車23a、23aに噛合する位置に設けられ、支持フレーム31から外側へ向けて突出するように設けられた軸部材23b1等により、回転可能に支持されている。
この構成により、一方の操作歯車23aに取り付けられたハンドル23cで一方の伸縮機構20のねじ付き軸21を軸線回りに回転することにより、他方の伸縮機構20のねじ付き軸21も同方向に回転させる。
リンク機構20Aに対して刃物列10を連結するための連結機構20Cは、図3、図5に示すように、刃物列10の円盤型カッタ(支持ステー14)11毎に設けられて支持ステー14を支持する支持ブラケット24と、リンク部材L毎に設けられて支持ブラケット24を介して所定個ずつ支持ステー14を支持する支持レバー25とを主体として構成されている。
支持レバー25は、所定個の円盤型カッタ11を支持するためにリンク部材L毎に設けられる板状の部材である。図示の例では、支持レバー25は、リンク部材Lよりも大きい厚さ寸法を有する。また、延在方向の長さ寸法については、支持レバー25は、リンク部材Lよりも若干短く、リンク部材Lの両端の貫通孔L1、L1の間の距離とほぼ同じとなっている。
そして、各支持レバー25は、延在方向及び厚さ方向をそのリンク部材Lに一致させた状態で、対応するリンク部材Lの下方に配置される。また、そのリンク部材Lに設けられた連結機構用の2つの前記貫通孔L3、L3の下方には固定ブロック26aがそれぞれ配置され、各々の上側に位置する前記貫通孔L3の上側から挿通された連結部材26によって固定ブロック26aがリンク部材Lの下方に固定されている。その上で、これら両固定ブロック26a、26aに支持レバー25が固定される。
また、支持レバー25には、支持する所定個の円盤型カッタ11と同数の複数の貫通孔25aが、板厚方向に貫通するかたちで、延在方向に等間隔に設けられている。各支持レバー25には、各貫通孔25aに上側から挿通されたねじ部材25b等により支持ブラケット24が回動可能に支持される。
支持ブラケット24は、円盤型カッタ(支持ステー14)11毎に設けられる板状の部材であって、支持レバー25に支持された状態で下方へ延びる(長方形状の)板状の部材である。また、支持ブラケット24は、支持レバー25に支持される(前記のねじ部材25b等が螺挿される)取付部24Aと、取付部24Aの下方に位置すると共に取付部24Aよりも厚さ寸法が小さい支持部24Bとを有する。
これら取付部24Aと支持部24Bとは、厚さ方向における一方の側面を一致させるかたちで一体的に形成されている。なお、取付部24Aと支持部24Bとの厚さ寸法の差は、支持ステー14の厚さ寸法よりも大きくされている。この構成により、支持ステー14が板厚方向に関し支持ブラケット24の厚さの範囲内に配置されるので、支持ブラケット24は、幅方向の間隔の最も狭い状態においても、隣接する支持ブラケット24に支持される支持ステー14と干渉することなく、所望の間隔で配置される。
また、支持ブラケット24の支持部24Bには板厚方向の貫通孔24B1が設けられており、この貫通孔24B1に挿通される第2の支持軸27を介し、支持ステー14が支持ブラケット24に支持される。具体的には、支持ステー14における延在部15の長孔15aと支持ブラケット24における支持部24Bの貫通孔24B1との高さ位置を合わせた状態で、長孔15a及び貫通孔24B1に対し支持ステー14側から第2の支持軸27が挿通されることにより、支持ステー14が第2の支持軸27を介して支持ブラケット24に支持された状態となる。
第2の支持軸27は、支持ステー14側の端部に鍔部27aを有しており、支持ステー14は、この鍔部27aと支持ブラケット24の支持部24Bにおける前記一方の側面とは反対側の側面により、厚さ方向(幅方向)の位置が規制される。また、第2の支持軸27は、支持ブラケット24における支持部24Bから突出するような長さ寸法を有しており、その突出する部分に抜け止め部材28が固定されている。
なお、支持ステー14は、延在部15の長孔15aによって第2の支持軸27に支持されているため、支持ステー14と第2の支持軸27とは、長孔15aに沿った方向(経糸方向d)へ相対変位可能となっている。また、支持ステー14は、前述のように第1の突出部16において第1の支持軸33によっても支持されており、第1の支持軸33、第2の支持軸27によって2点で支持され、延在部15がリンク部材Lと平行な状態を維持するように支持されている。
これまでに詳述した各種の機構を含む伸縮機構20は、以下の要領で作用する。先ず、ねじ付き軸21が操作されて隣り合う連結ブロック(螺合ブロック22A、中間ブロック22B)間の間隔が変更されることによってリンク機構20Aにおける隣り合うリンク部材L、L同士の間の角度が変化すると、各リンク部材Lの下方に取り付けられた支持レバー25の延在方向と経糸方向dとのなす角度も変化する。これに伴い、各支持レバー25における支持ブラケット用の隣り合う貫通孔24B1、24B1の幅方向の間隔が変化する。そして、各貫通孔24B1の下方に支持ブラケット24が支持されていることから、隣り合う支持ブラケット24、24との幅方向の間隔も変化し、支持ブラケット24に対し支持ステー14を介して支持されている円盤型カッタ11についても、隣り合う円盤型カッタ11、11の間隔(ピッチ)が変更される。
なお、前述のように、支持ステー14は、第1の突出部16における貫通孔16aに支持装置30における第1の支持軸33が嵌挿され、第1の支持軸33によって幅方向に移動可能に支持されると共に、この第1の支持軸33の嵌挿並びに第1の支持軸33と貫通孔16aとの嵌合によって経糸方向dに対する傾きが規制された状態となっている。従って、支持ステー14は、支持ブラケット24の幅方向の変位に伴い、経糸方向dと略平行な状態を維持したまま幅方向に変位する。
また、支持レバー25の延在方向と経糸方向dとのなす角度の変化に伴い、各支持ブラケット24(各第2の支持軸27)の経糸方向dの位置も変化する。一方、支持ステー14については、第1の支持軸33によっても支持されているため、経糸方向dへ変位不能となっている。但し、前述のように、支持ブラケット24による支持ステー14の支持はその長孔15aを介しての支持であり、支持ステー14と支持ブラケット24(第2の支持軸27)とは経糸方向dへ相対変位可能となっているため、支持ブラケット24の前記経糸方向dへの変位が支持ステー14によって規制されることはない。言い換えれば、支持ステー14は、支持ブラケット24の経糸方向dへの変位の影響を受けることなく、経糸方向dの位置を維持したまま幅方向に変位する。
なお、以上で説明した本実施例の伸縮機構20においては、前記したねじ付き軸21の操作によって隣接する円盤型カッタ11、11の刃部(刃先)11a、11aの間隔を任意の大きさに調節可能な構成となっているが、前述のように、本発明では、主として経糸92又は緯糸93の一方(本実施例では緯糸93)について、その一部のフィラメントを切断して毛羽94を生成するものであるため、隣接する円盤型カッタ11、11の刃先の間隔(ピッチ)が炭素繊維基材91における経糸92のピッチの整数倍となるように、伸縮機構20の操作が行われる。
その上で、本発明による毛羽生成装置に仕掛けられる炭素繊維基材91の幅方向に関する位置を、経糸92、92間で表面に露出する緯糸93の範囲内に円盤型カッタ11の刃先が位置するように設定することで、主として緯糸93の一部のフィラメントを切断することが可能となる。
また、本発明では、隣接する円盤型カッタ11、11の間隔(ピッチ)の調整について、その間隔内に存在する経糸92と緯糸93のうち一方(図8に示す本実施例では経糸92)が6本未満、つまり5本以下(1〜5本の範囲内)となるように行われる。詳しくは、前記間隔W内に存在する経糸92が多くなるということは、言い換えれば緯糸93の切断間隔が大きくなるということであり、それに伴い、炭素繊維基材91における単位面積あたりの緯糸93の切断箇所が少なくなる。そのため、炭素繊維基材91の単位面積あたりに生成される毛羽94の長さの合計(総毛羽長)を所定の長さとするためには、前記間隔Wが長くなるほど各切断箇所において切断される緯糸93のフィラメントの本数(緯糸93の切断深さ)を多くしなければならなくなる。そして、そのように各切断箇所において切断される緯糸93のフィラメントの本数が多くなると、それに応じて緯糸93の強度が低下する。
なお、本発明の発明者らによる研究の結果として、前記間隔W内に存在する経糸92が6本以上の場合では、CFRPにおいて所望の層間剥離強さを得るために必要な最低限の総毛羽長を得るための本数でフィラメントを切断した場合であっても、その切断による緯糸93の強度の低下が許容できる範囲を超えてしまい、その結果として、そのような炭素繊維基材91を積層して製造されるCFRPも、製品として求められる所望の強度が得られなくなってしまう。
そこで、本発明では、前記間隔W内に存在する経糸92が5本以下となるように隣接する円盤型カッタ11、11の間隔Wの調整量を規定することにより、所定の前記毛羽長を得るために各切断箇所において切断される緯糸93のフィラメント本数(切断深さ)を少なくし、フィラメントの切断に伴う緯糸93の強度低下を許容できる範囲に留めるものである。
なお、本実施例では、刃物列10が、隣接する円盤型カッタ11、11の間隔Wの最も狭い状態において、幅方向に関し送出ビーム2aの延在範囲以上に亘って円盤型カッタ11を配列する構成となっており、炭素繊維基材91の存在範囲の全部を含むように設けられている。
そして、毛羽生成装置においては、前述したように、伸縮機構20等を支持する支持装置30を支持するために調節装置40が設けられている。この調節装置40は、図1〜図3に示すように、本実施例では、その構成として、支持装置30を介して刃物列10を支持すると共に炭素繊維基材91へ向けた押圧力を支持装置30を介して刃物列10(円盤型カッタ11)に作用させる「押圧手段」としてのエアシリンダ41と、エアシリンダ41に空気圧を供給する圧力空気供給装置(図示省略)と、刃物列10(支持装置30)を炭素繊維基材91へ向けて変位可能に案内するためのスライド軸42およびリニアブシュ43とを備えている。
エアシリンダ41は、本実施例では、第1の切断装置5の幅方向に間隔おいて2本を並設されている。各エアシリンダ41は単動式であり、ロッド41aの伸長方向が押圧方向となっている。
詳しくは、各エアシリンダ41は、圧縮バネ(図示省略)によってロッド41aが縮動方向へ付勢されると共に、圧力空気の作用によってロッド41aが伸張する単動式である。各エアシリンダ41は、ロッド41aの軸線を上下方向fに向けると共にロッド41aの伸長方向を下方へ向けて配置されており、シリンダ41b側が第1の梁部材1aに固定されると共に、ロッド41aの先端が前述の支持装置30における筐体32の上面に支持プレート34を介して連結されているものである。
前記のように、各エアシリンダ41においては、支持装置30に連結されたロッド41aに対し、圧縮バネによる上方へ向けた機械的な付勢力が作用しているため、それにより支持装置30が両エアシリンダ41、41によって支持された状態となっている。
なお、エアシリンダ41のロッド41aは、圧縮空気が供給されていない状態においては、圧縮バネの作用によって初期位置に維持されており、その状態から下方へ向けた変位が可能となっている。従って、両エアシリンダ41、41を含む調節装置40は、刃物列10を支持する支持装置30を下方へ変位可能に支持する、言い換えれば、支持装置30を介して刃物列10を下方(炭素繊維基材91側)へ変位可能に支持する構成となっている。そして、両エアシリンダ41、41は、圧力空気が供給されることにより、ロッド41aが伸張し、支持装置30に対し下方へ向けた押圧力を作用させる。すなわち、調節装置40は、刃物列10の円盤型カッタ11に対し、支持装置30を介して下方(炭素繊維基材91/第1の受けロール7)へ向けた押圧力を作用させる。
圧力空気供給装置(図示省略)は、圧力空気の供給源と、圧力空気の供給源から供給される空気圧を調節する精密減圧弁とを備えている。精密減圧弁は、圧力空気の供給源とエアシリンダ41との間の空圧回路に設けられており、供給源から供給される圧力空気の空気圧を精密に減圧して、エアシリンダ41に供給する空気圧を所望の圧力に調節する。
また、本実施例では、支持装置30の上下方向fの変位を案内する機構として、支持装置30の幅方向に並設された2組のリニアブシュ43およびスライド軸42を備えている。そのうちリニアブシュ43は、軸線を上下方向fへ向けた状態で第1の梁部材1aに固定して設けられる。また、スライド軸42は、リニアブシュ43に挿通されて上下方向fに移動可能に案内されると共に、下端を支持プレート34を介して支持装置30における筐体32の上面に固定されている。
以上の構成からなる調節装置40において、圧力空気供給装置における精密減圧弁を調節してエアシリンダ41の押圧力が調節されることにより、刃物列10が炭素繊維基材91に対し作用させる押圧力を調節される。
また、前述のように、毛羽生成装置においては、第1のロール4、第2のロール4Aで画定される炭素繊維基材91の経路の下側であって刃物列10に対向する位置で炭素繊維基材91を支持する第1の受けロール7が備えられている。従って、第1の受けロール7によって前記経路の位置に維持された状態の炭素繊維基材91に対し上方から作用する刃物列10による押圧力は、炭素繊維基材91の下方において第1の受けロール7によって受けられる。そこで、精密減圧弁による調整量を、エアシリンダ41に供給される圧力空気の圧力が所望の大きさとなるように設定することにより、刃物列10における円盤型カッタ11の刃先の位置が炭素繊維基材91の厚みの中に留まる位置に調節される。
第1の受けロール7は、経糸方向dに関しては、その軸線が第1の切断装置5における並設された2つの刃物列10、10の中間に位置するように配置され、上下方向fに関しては、周面の上端の位置が第1のロール4の周面の上端とほぼ同じ高さとなるように配置されている。そして、第1の受けロール7は、前記配置で、両端に設けられた軸部(図示せず)において、軸受を介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。そして、受けロール7は、第1のロール4、第2のロール4Aで画定される炭素繊維基材91の経路の下側であって第1の切断装置5に対向する位置で炭素繊維基材91に当接し、炭素繊維基材91を支持することにより、第1の切断装置5に対する炭素繊維基材91の位置を前記経路の位置に維持(規制)する。
因みに、第2の受けロール7Aは、上下方向fに関しては、周面の下端の位置が第1のロール4の周面の上端に炭素繊維基材91の厚みを加えた高さとほぼ同じ高さになるように配置されていること以外は、第1の受けロール7と同様の配置、支持構成であり、両端に設けられた軸部7Aaにおいて、軸受7Abを介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。そして、第2の受けロール7Aは、第1のロール4、第2のロール4Aで画定される炭素繊維基材91の経路の上側であって第2の切断装置5Aに対向する位置で炭素繊維基材91に当接し、炭素繊維基材91を支持することにより、第2の切断装置5Aに対する炭素繊維基材91の位置を前記経路の位置に維持(規制)する。
以上で説明した第1の切断装置5、及び説明を省略した第2の切断装置5Aによって切断された炭素繊維基材91に作用するのが毛羽起立系統装置6である。毛羽起立系統装置6は、図1、図2、図6、図7に示してあり、前述のように、本実施例では、第1のロール4と第2のロール4Aとの間の位置に、前記各切断装置5、5Aで切断された緯糸93の一部のフィラメントを前記した両切断装置5、5Aの下流側で毛羽94として起立させる毛羽起立系統装置6を備えている。因みに図6には、上流側から視た毛羽起立系統装置6が示されており、本体フレーム1を二点鎖線で示している。図7には、図1における毛羽起立系統装置6の左側部分が拡大して示されている。
毛羽起立系統装置6は、経糸方向dに関し第2の切断装置5Aよりも下流側の位置で本体フレーム1に支持されている。炭素繊維基材91の前記経路に対し、上側に位置する第1の起立機構50と、下側に位置する第2の起立機構50Aと、第1の起立機構50、第2の起立機構50Aの上下方向fの間隔を変更する昇降装置60とを備える。因みに、本実施例では、第1の起立機構50、第2の起立機構50Aが共通の(単一の)駆動モータ57で回転駆動される構成となっている。以下に、前記した各部の構成について詳細に説明する。
第1の起立機構50は、炭素繊維基材91に接触するように設けられると共に第1の切断装置5によって切断されたフィラメントを起立させる複数のロールブラシ51と、前記各ロールブラシ51を支持するロールブラシ用の回転軸54と、前記回転軸54を回転駆動する駆動モータ57とを備えている。このうち回転軸54は、その両端部において、軸受55を介し本体フレーム1に回動可能に支持されている。
ロールブラシ51は、円筒形の芯部材52を主体とし、その芯部材52の外周面に、周方向に亘り放射状に植設された多数本の樹脂製の毛材からなるブラシ列を、芯部材52の軸線方向に亘って複数列設けて構成されたものである。
ロールブラシ51は、芯部材52に回転軸54が挿通されるかたちで回転軸54に対し相対回転不能に固定されており、回転軸54を介し、本体フレーム1に対し回転可能に支持される。なお、本実施例では、ロールブラシ51は、第1の起立機構50において3つ設けられており、3つのロールブラシ51の幅方向(軸線方向)の寸法の合計が、炭素繊維基材91の幅寸法と略同じとなるように構成されている。
また、3つのロールブラシ51は、経糸方向dで見て幅方向に並設された状態で設けられると共に、中央に位置するロールブラシ51と両側に位置するロールブラシ51、51とは、経糸方向dに位置をずらして設けられている。
従って、本実施例では、第1の起立機構50において、2本の回転軸54が経糸方向dに位置をずらして設けられている。当該2本の回転軸54、54は、互いに同じ高さ位置であって、それぞれの支持するロールブラシ51が炭素繊維基材91の表面に接触する高さ位置に配置されている。また、当該2本の回転軸54、54の一方には、駆動モータ57が連結されると共に、両回転軸54、54は、幅方向におけるロールブラシ51よりも外側の位置に設けられたベルト伝達機構56によって連結され、駆動モータ57に回転駆動される前記一方の回転軸54の回転を、ベルト伝達機構56によって他方の回転軸54に伝達するように構成されている。
駆動モータ57は、その出力軸(図示せず)の軸線を前記一方の回転軸54の軸線に一致させた配置で本体フレーム1に対し固定して設けられており、その出力軸と前記一方の回転軸54とが直接的に連結されており、第1の起立機構50の駆動手段として機能する。
以上で説明した第1の起立機構50に対し第2の起立機構50Aは、複数のロールブラシ51Aと、前記各ロールブラシ51Aを支持するロールブラシ用の回転軸54Aと、第1の起立機構50の回転軸54の回転を第2の起立機構50Aに伝達するための歯車伝達機構58とを備えている。
ロールブラシ51Aおよびロールブラシ用の回転軸54Aについては、第1の起立機構50と同じ構成を採用している。ただし、回転軸54Aは、炭素繊維基材91の前記経路よりも下側の位置で後述の昇降装置60を介して本体フレーム1に支持される。
歯車伝達機構58は、互いに噛合する2つの歯車部材58A、58Aを有している。2つの歯車部材58A、58Aの一方は、幅方向に関しベルト伝達機構56よりも外側の位置で、第1の起立機構50における前記回転軸54、54の一方(図示の例では送出装置2側の回転軸54)に対して相対回転不能に取り付けられている。それに対し、前記歯車部材58A、58Aの他方は、第2の起立機構50Aにおける回転軸54Aのうち、前記歯車部材58A、58Aの一方が取り付けられた前記回転軸54の直下に位置する回転軸54Aに対して相対回転不能に取り付けられている。また、2つの歯車部材58A、58Aは、第2の起立機構50Aの作動位置(ロールブラシ51Aが炭素繊維基材91に接触する高さ位置)において互いに噛合した配置となっている。
これらの構成により、第2の起立機構50Aにおいては、駆動モータ57、第1の起立機構50における前記一方の回転軸54、及び歯車伝達機構58が、第2の起立機構50Aにおける回転軸54A(ロールブラシ51A)を回転駆動するための駆動手段として機能する。
以上のように、本実施例では、炭素繊維基材91に対し第1の切断装置5と同じ上側に第1の起立機構50が配置され、第2の切断装置5Aと同じ下側に第2の起立機構50Aが配置されている。そして、これら起立機構50、50Aは、各切断装置5、5Aで切断された炭素繊維基材91内のフィラメントを起立させて毛羽94を生成するように構成されている。従って、第1の起立機構50、第2の起立機構50Aのそれぞれが、本発明における「毛羽起立装置」に相当する。
昇降装置60は、第1の起立機構50、第2の起立機構50A間へ炭素繊維基材91を引き通す際に第2の起立機構50Aを第1の起立機構50から離隔させるべく、第2の起立機構50Aを上下方向fへ移動可能に支持すると共に、前記引き通し時に第2の起立機構50Aを下方へ変位させるものである。
本実施例では昇降装置60は、経糸方向dに関する第2の起立機構50Aの位置において幅方向に離隔して設けられる一対の昇降機構61、61を備えている。
昇降機構61は、上端部において軸受62等を介して第2の起立機構50Aにおける2本の回転軸54A、54Aを回転可能に支持すると共に下端部に雄ねじ部(図示せず)が形成された昇降軸61aと、本体フレーム1に支持される中空円筒状の昇降ブシュ61bであって内周面には昇降軸61aの雄ねじ部を螺合する雌ねじ部(図示せず)が形成された昇降ブシュ61bとを含む。
昇降ブシュ61bは、本体フレーム1に対し、上下方向fに変位不能に、且つ回転可能に支持されている。従って、昇降ブシュ61bを回転させることにより、昇降軸61aが上下方向fに変位し、それに伴って第2の起立機構50Aが上下方向fに変位する。そのため、本実施例の昇降装置60は、両昇降ブシュ61b、61bを同時に且つ同量だけ回転させる昇降操作機構63を備える。
昇降操作機構63は、各昇降ブシュ61bの外周面に固定されたウォームホイール64aを含むウォーム歯車機構64と、ウォーム歯車機構64を介して両昇降ブシュ61b、61bを連結される連結軸65とを含み、連結軸65の回転によって両昇降ブシュ61b、61bを同時に回転させる構成となっている。
連結軸65は、本体フレーム1に対し回転不能に支持されている。そして、連結軸65の両端部には、ウォームホイール64aと噛合するウォーム64bが相対回転不能に固定されている。また、昇降操作機構63においては、連結軸65の一端は、ウォーム64bよりも幅方向の外側に向けて突出しており、その突出部65aにハンドル66が相対回転不能に取り付けられている。従って、昇降装置60については、作業者によりハンドル66が回転操作されることによって連結軸65が回転し、その連結軸65の回転によって両昇降ブシュ61b、61bが同時に且つ同量だけ回転されることにより、昇降軸61a(第2の起立機構50A)が上下方向fに変位する。
これ以降、本実施例の毛羽生成装置の作用を説明するにあたり、装置構成について以下(1)、(2)の前提を踏まえたものとする。
(1)第1の切断装置5、第2の切断装置5Aについては、それぞれの伸縮機構20によって、各刃物列10における円盤型カッタ11の刃部(刃先)11aの間隔が、炭素繊維基材91における経糸92のピッチの2倍の間隔(4mm)に設定されているものとする。また、前記したように、各切断装置5、5Aは、2つの刃物列10、10を備え、一方の刃物列10における円盤型カッタ11の刃先を他方の刃物列10における隣接する円盤型カッタ11の中間位置でそれら円盤型カッタ11、11の間に入り込ませた状態で並設されている。このため、各切断装置5、5A全体としての隣り合う円盤型カッタ11、11の刃先の間隔Wが、炭素繊維基材91における経糸92のピッチ(2mm)と同じ間隔に設定された状態となっているものとする。
(2)送出ビーム2aは、送出装置2内において、幅方向に関し、炭素繊維基材91の隣り合う経糸92、92間において表面に露出する緯糸93の範囲内に各切断装置5、5Aにおける円盤型カッタ11の刃先が位置するように配置される。
切断装置5、5Aについての作用は、以下の通りである。第1の切断装置5、第2の切断装置5Aでは、毛羽生成時(毛羽生成装置の作動時)において、調節装置40、40Aにおけるエアシリンダ41に対し圧力空気の供給源から空気圧が供給されており、それにより、エアシリンダ41が支持装置30における筐体32に対し、第1の切断装置5では下方へ、第2の切断装置5Aでは上方へ向けた押圧力を作用させた状態(作動状態)となっている。
そうすると、調節装置40、40A及び支持装置30を介して支持される刃物列10の円盤型カッタ11は、前記第1のロール4、第2のロール4Aで画定される炭素繊維基材91の経路側へ変位して炭素繊維基材91に対し押接され、各円盤型カッタ11の刃先が炭素繊維基材91内へ入り込んだ状態(刺さった状態)となる。
なお、各エアシリンダ41に供給される空気圧は、精密減圧弁により、円盤型カッタ11の刃先の位置が炭素繊維基材91の厚みの中に留まる位置に維持されるような押圧力をエアシリンダ41が筐体32に作用させる大きさに調節されている。従って、各円盤型カッタ11の刃先は、炭素繊維基材91の厚みの中に留まった位置に維持されている。
また、炭素繊維基材91を挟んで各切断装置5、5Aの刃物列10と対向する位置には各受けロール7、7Aが設けられており、各切断装置5、5Aに対する炭素繊維基材91の位置が各受けロール7、7Aによって前記経路の位置に維持されると共に、各円盤型カッタ11による炭素繊維基材91に対する押圧力が、各受けロール7、7Aによって受けられるものとなっている。
従って、各切断装置5、5Aにおいては、毛羽生成装置の作動中において、経糸方向dに移動する炭素繊維基材91が幅方向の所定箇所において各切断装置5、5Aにおける円盤型カッタ11の刃先の位置を通過することに伴い、その刃先の位置を通過する炭素繊維基材91の緯糸93の一部のフィラメントが順次切断される。
なお、本実施例では、刃部材を円盤型カッタ11で構成しており、その円盤型カッタ11は、移動する炭素繊維基材91につれ回るかたちで軸部材12の軸線周りに従動回転されものとなっている。これにより、円盤型カッタ11の刃先は、局部的な摩耗を抑制されて、長期間に亘ってその切れ味を維持することができる。また、円盤型カッタ11が従動回転されることにより、前記刃先と炭素繊維基材91との相対速度を小さくして、前記相対速度の影響によるフィラメントの切断量のばらつきを抑制することができる。
毛羽起立系統装置6についての作用は、以下の通りである。各切断装置5、5Aによって切断されたフィラメント(炭素繊維基材91における緯糸93の一部のフィラメント)が毛羽起立系統装置6に達することにより、切断されたフィラメントが起立され、毛羽94が生成される。
詳しくは、以下の通りである。毛羽生成時(毛羽生成装置の作動時)、毛羽起立系統装置6においては、第2の起立機構50Aが昇降装置60によって上方の作動位置(ロールブラシ51Aが炭素繊維基材91に接触する高さ位置)に配置されており、歯車伝達機構58の2つの歯車部材58A、58Aが互いに噛み合った状態となっている。
また、各起立機構50、50Aにおいて、各ロールブラシ用の回転軸54、54Aが駆動モータ57によって回転駆動されており、その結果、各ロールブラシ51、51Aの周面に植設された毛材が回転軸54、54Aを中心として回転し、経路の上下に位置する各ロールブラシ51、51Aの毛羽94が炭素繊維基材91の表面及び裏面に接触することになる。
なお、本実施例では、駆動モータ57は、各ロールブラシ(毛材)51、51Aの回転方向が炭素繊維基材91の進行方向に対し逆行するように、各回転軸54、54Aを回転駆動している。具体的には、前記駆動モータ57は、第1の起立機構50における各回転軸54を図2における時計回りに回転駆動すると共に、第1の起立機構50の回転軸54の一方、歯車伝達機構58を介し、第2の起立機構50Aにおける各回転軸54Aを図2における反時計回りに、それぞれ回転駆動する。
因みに、前記切断された緯糸93の一部のフィラメントは、炭素繊維マルチフィラメント糸の表面のサイジング剤により、切断後も炭素繊維マルチフィラメント糸内に収束された状態となっていることがある。しかしながら、前記した構成により、毛羽起立系統装置6においては、切断後も炭素繊維マルチフィラメント糸内に収束された状態となっている緯糸93の一部のフィラメントが、炭素繊維基材91の移動と前記ロールブラシ51、51Aの回転に伴う毛材の回転とによる緯糸93と毛材との接触によって上方又は下方へ起立され、それによって炭素繊維基材91の表面及び裏面に毛羽94が生成される。
なお、毛羽起立系統装置6を通過することによって毛羽94が生成された炭素繊維基材91は、第2のロール4Aに案内されて巻取装置3側へ転向され、巻取ビーム3aによって巻き取られる。
以上のような本実施例の毛羽生成装置によれば、炭素繊維基材91の表面及び裏面に施される毛羽94の生成について、その生成作業を作業者に負担を掛けることなく、自動的に且つ短時間で行うことができ、しかも、手作業で行う場合と比べ、所望の量の毛羽94をより正確に生成することが可能となる。その上、炭素繊維基材91の表面及び裏面に対し同時に毛羽生成処理を施すので、炭素繊維基材91の表面及び裏面に対し別々の毛羽生成装置で毛羽生成処理を施すものと比べれば、より短時間に毛羽94の生成が行われると共に、その生成作業を簡略化することができる。
以上では、本発明による毛羽生成装置の一実施例について説明したが、前記実施例による毛羽生成装置ついては、以下のような変形も可能である。
前記実施例では、切断装置の刃部材に円盤型カッタ11を採用し、その円盤型カッタ11が、支持ステー14によって回転自在に支持され、移動する炭素繊維基材91に従動的に回転する構成としたが、これに代えて、円盤型カッタ11を積極的に回転駆動する構成としてもよい。すなわち、円盤型カッタ11を軸部材13の軸線周りに回転駆動する駆動装置を設け、積極的に円盤型カッタ11を回転駆動するようにしてもよい。また、刃部材としての円盤型カッタ11を支持ステー14に対し回転不能に取り付ける構成としてもよい。
また、刃部材については、円盤型カッタ11に限らず、平板の一辺に刃部を有するナイフ状の刃部材としてもよい。
前記実施例では、各切断装置5、5Aが2つの刃物列10を有しているが、これに限らず、毛羽94を生成する(一部のフィラメントを切断する)間隔との関係で単一の刃物列10でも対応可能な場合には、各切断装置5、5Aが刃物列10を1つのみ有するようにしてもよい。
刃部材の間隔(ピッチ)Wについて、前記実施例では、3K炭素繊維基材の経糸ピッチと等しくなるように設定しているが、刃部材の間隔Wは、必ずしもこれに限定されない。すなわち、本実施例の毛羽生成装置においては、加工対象の炭素繊維基材91は3K炭素繊維基材に限らず、6K炭素繊維基材や12K炭素繊維基材に対して毛羽生成処理を行うことも可能であり、それぞれの炭素繊維基材91の経糸ピッチに応じて刃部材の間隔Wを設定すればよい。
前記実施例では、刃物列10は、幅方向eに関し炭素繊維基材91の全幅に亘って刃部材を配列する構成となっているが、これに限らず、刃物列10は、炭素繊維基材91の幅方向eにおける一部の範囲に亘って刃部材を配列する構成であってもよい。すなわち、CFRP製品において求められる層間剥離強さとの関係で、炭素繊維基材91に対し形成される毛羽94の範囲が全幅に亘ってではなく、幅方向eにおける一部の範囲にのみ毛羽94を形成することが求められるような場合には、その一部の範囲に対応させるかたちで刃部材を配列する構成とすればよい。
前記実施例では、刃部材の間隔(ピッチ)Wを変更するピッチ変更機構として、単一のリンク機構を主体とする伸縮機構20を採用しているが、ピッチ変更機構はそのような構成のものに限らず、以下の1)〜4)のような構成としてもよい。
1)刃部材を幅方向に変位させて刃部材の間隔を変更する機構として、前記実施例のリンク機構20Aに代え、図10に示すようなパンタグラフ機構29Aを採用する。
具体的には、パンタグラフ機構29Aは、前記実施例と同様に複数のリンク部材Lを組み合わせてジグザグ形状を成すように構成された第1のリンク機構29A1と、第1のリンク機構29A1と同様の構成であって各リンク部材Lが第1のリンク機構29A1における対応するリンク部材Lと交差するように設けられた第2のリンク機構29A2とを含み、その第1のリンク機構29A1における各リンク部材Lと第2のリンク機構29A2における対応するリンク部材Lとを、両者の中間位置においてピンPによって互いに回動可能に連結して構成されている。ただし、図示の例では、第2のリンク機構29A2における両端部のリンク部材Lが、機能上不要な部分を省略されて設けられており、他のリンク部材Lの半分程度の延在長さとなっている。
なお、この構成の場合、第1のリンク機構29A1、第2のリンク機構29A2は、互いにリンク部材Lの中間位置をピンPで連結されているため、前記中間位置を経糸方向dに関し拘束された状態となっている。従って、この構成の場合、第1のリンク機構29A1、第2のリンク機構29A2は、伸縮動作を行っても常に各リンク部材間の角度が等しい状態となるため、前記実施例における中間ブロック22Bを省略した構成となっている。
そして、この構成の場合(パンタグラフ機構29A)においても、前記実施例と同様に、ねじ付き軸21上の螺合ブロック22Aの位置を変更することで、各リンク部材L(支持レバー25)が経糸方向dに対し成す角度が変更され、刃部材の幅方向の間隔Wが変更される。
2)刃部材を幅方向に変位させる構成に代えて、刃部材の間隔Wが固定されると共に刃部材の間隔(ピッチ)Wが異なる複数の刃物列を備え、フィラメントの切断を行う刃物列を切り換える連装機構120を採用する。具体的な構成としては、例えば、次のようなものが考えられる。
図11に示すように、連装機構120Aを、刃部材のピッチWの異なる複数(図示の例では4つ)の刃物列が回転軸121の軸線周りに等間隔(90°毎)に配置された構成とする。図示の例では、回転軸121は、切断装置105の支持装置130(支持フレーム131)に対し軸受を介し回動可能に支持されると共に、ステー114を介して4つの刃物列(第1の刃物列110a、第2の刃物列110b、第3の刃物列110c、第4の刃物列110d)を支持している。
刃物列を支持する前記ステー114は、回転軸121の軸線周りにおいて互いに等しい間隔で放射状に回転軸121から突出するように設けられている。従って、前記4つの刃物列は、回転軸121の軸線周りにおいて、互いに等しい間隔を成した状態で、回転軸121によって支持されている。
なお、回転軸121周りの刃物列の位置のうち、炭素繊維基材91に最も接近した位置がフィラメントの切断を行う位置(刃部材の刃先が炭素繊維基材91の厚みの中に留まる位置/以下、「切断位置」)となっている。
この連装機構120Aにおける刃物列の位置の切り換えについては、例えば、連装機構120Aが回転軸121の回動を阻止する制動装置を備えるものとし、作業者が、その制動装置を操作して回転軸121の回動が阻止された状態を解除すると共に、手動で回転軸121を回動させることで刃物列の位置を変更する等が考えられる。そして、切断位置に配置される刃物列が入れ換えられることにより、フィラメントの切断を行う刃部材の間隔が変更される。
連装機構120については、上記のような回転軸周りに刃物列を配置し、回転軸の回転によって刃物列を入れ換える構成に代えて、刃部材の間隔が異なる複数の刃物列を経糸方向dに並設し、複数の刃物列のいずれかでフィラメントの切断を行うように刃物列を変更する構成としてもよい。
具体的には、例えば、図12の例のように、切断装置115が刃部材の間隔が異なる2つの刃物列(第1の刃物列110a、第2の刃物列110b)を備えると共に、その2つの刃物列を炭素繊維基材91に対する同じ側において経糸方向dに位置を異ならせて配設する。
更に、各刃物列110a、110bに対応させて各刃物列を上下方向f(炭素繊維基材91に対し離間・接近する方向)に変位させる駆動手段(例えば、エアシリンダ141等)を備え、各刃物列110a、110bが独立して対応する駆動手段によって支持される構成とする。
その上で、2つの刃物列110a、110bの一方が切断位置に配置されると共に他方が炭素繊維基材91から離間した位置に配置される状態と、その逆の状態とで切り換えることにより、フィラメントの切断を行う刃部材の間隔を変更する。
なお、図示の例では、毛羽生成装置が、切断装置115に対向する炭素繊維基材91の面とは反対側の面で炭素繊維基材91に当接する受け部材として平板117を備えており、平板117で炭素繊維基材91を支持することにより、切断装置115に対する炭素繊維基材91の位置を維持(規制)している。
3)刃部材の間隔が等しい複数の刃物列を設けると共に、各刃物列を上下方向f(炭素繊維基材91に対し離間・接近する方向)に変位可能とし、切断位置に配置される刃部材の数を変更することで、全体としての刃部材の間隔を変更するようにしてもよい。
具体的には、例えば、刃部材の間隔が等しい2つの刃物列110a、110aを、幅方向に関し一方の刃物列110aの刃部材の刃先が他方の刃物列110aにおける隣接する刃部材の中間位置に位置する配置で、炭素繊維基材91に対する同じ側において経糸方向dに位置を異ならせて配設する。なお、この場合、各刃物列110a、110aの経糸方向fに関する配置については、前記実施例のような一部が重複する配置に限らず、経糸方向fに離間した配置であってもよい。
また、前記の連装機構120Bの例と同様に、各刃物列110a、110aが独立して駆動手段(エアシリンダ141)によって支持される構成とする。
その上で、2つの刃物列110a、110aを共に切断位置に配置する状態と、一方の刃物列110Aのみを切断位置に配置する状態とで切り換えることにより、全体としての刃部材の間隔を変更する。
なお、この例の場合、刃物列110aは、上記のような2つに限らず、3つ以上の刃物列110aを、幅方向に関し互いの刃先の位置が異なる配置となるように設けてもよい。また、上記のように駆動手段によって刃物列110aを炭素繊維基材91から離間させることに代えて、刃物列110aを切断装置に対し着脱可能とし、切断を行わない刃物列110aを作業者が切断装置から取り外すようにしてもよい。
4)刃物列に含まれる刃部材の数を変更する。具体的には、刃物列に対し各刃部材を着脱可能とし、所定の間隔毎に刃部材を取り外して間引くことにより、刃物列における刃部材の間隔を変更するようにしてもよい。
なお、本発明においては、切断装置がピッチ変更機構を必ずしも備える必要はなく、切断装置における刃物列の刃部の間隔(ピッチ)Wが固定された(変更不能な)ものであってもよい。
前記実施例では、切断するフィラメント量の調節について、刃部材(円盤型カッタ11)に作用させる炭素繊維基材91へ向けた押圧力を調節する、すなわち、一つの刃部材で切断するフィラメント量を調節することによって行うものとしたが、これに限らず、刃物列における刃部材の間隔を変更して調整するものとしてもよい。
具体的にはピッチ変更機構を備える切断装置において、ピッチ変更機構によって刃部材の間隔を変更することにより、経糸92間で表面及び裏面に露出する緯糸93の切断間隔を変更する。これにより、単位面積あたりの切断箇所が変更され、炭素繊維基材91に生成される毛羽94の総毛羽長が調節される。
前記実施例では、刃部材の刃先の位置を炭素繊維基材91の厚みの中に留まる位置に維持する調節装置として、刃物列が炭素繊維基材91に作用させる押圧力を調節するものとしているが、これに代えて、調節装置は、刃部材の刃先の位置を調節するものとしてもよい。
具体的には、前記実施例における「押圧手段」(エアシリンダ41)に代えて、上下方向f(炭素繊維基材91の厚み方向)に関し刃部材の刃先の位置を調節する「位置調節装置」を設ける。
この位置調節装置としては、例えば、図13の構成が考えられる。図13の例では、「位置調節装置」として、刃物列110を上下方向fに移動(変位)可能に支持するボールねじ機構142を採用している。また、位置調節装置は、このボールねじ機構142を駆動する駆動手段として駆動モータ143を備えている。
駆動モータ143は、出力軸を下方(炭素繊維基材91側)へ向けた状態で、ブラケット144を介して第1の梁部材1aに支持されている。
ボールねじ機構142は、駆動モータ143の出力軸に連結されるボールねじ142aと、ボールねじ142aに螺合されると共に刃物列110(支持装置130の筐体)を支持するナット142bとを含む。ボールねじ142aは、軸線を上下方向fに向けた状態で、駆動モータ143を支持するブラケット144により、回動可能に、且つ上下方向fに変位不能に支持されている。ナット142bは、ボールねじ142aに螺合されると共に、第1の梁部材1aとは反対側に延在する部分において、その下面に取り付けられた軸部材を介して刃物列110を支持する支持装置130(筐体)を支持している。また、ナット142bは、ブラケット144に取り付けられた図示しないレール部材との接触によって回転不能となっている。従って、駆動モータ143によってボールネジ142aが回転されることにより、ボールネジ142aの回動方向に応じてナット142bが上下方向fに変位し、そのナット142bの変位に伴って刃部材の刃先の位置が上下方向fに調整される。
なお、ボールねじ機構142および駆動モータ143は、刃物列110の両端部に対応する位置にそれそれ設けられ、各駆動モータ143を同期させて作動させることにより、水平な状態を維持したまま、刃物列110を上下方向fに位置を変位させることをが可能となっている。そして、この位置調節装置140により、刃物列110の刃先の位置を、炭素繊維基材91の厚みの中で微調節することで、切断するフィラメント量(炭素繊維基材91における総毛羽長)が調節される。
位置規制装置について、前記実施例では、炭素繊維基材を挟んで切断装置における刃物列と対向する位置に設けられた受け部材としての受けロールを備えたものとしたが、位置規制装置については、以下のように構成してもよい。
1)受け部材の構成を、円筒状の受けロールに代えて、平板状の部材(板材等)とするようにしてもよいし、又は、受けロールに代えて、支持部材(第1のロール4、第2のロール4A)を受け部材として兼用する。
具体的には、例えば、前記実施例の第1の切断装置5を、経糸方向dに関し第1のロール4の位置に配置して、第1のロール4を受け部材として兼用する。ただし、炭素繊維基材91の裏面用の第2の切断装置5Aも備える場合に、前記実施例のような第2の切断装置5Aが炭素繊維基材91の裏面側(下側)に配置される構成においては、第1のロール4を第2の切断装置5A用の受け部材として兼用することができないため、第2の切断装置5A用の位置規制装置を設ける。
2)受け部材に代えて、炭素繊維基材91の張力を調節する張力調整装置を備える。すなわち、刃物列による押圧力又は刃物列の位置との兼ね合いで、刃部材の刃先の位置が所望の位置となるように炭素繊維基材91の張力を調整する張力調整装置145を位置規制装置とする。
具体的には、図14に示す張力検出装置145aを含む構成が一例として考えられる。この例では、毛羽生成装置が、送出装置2から引き出される炭素繊維基材91の張力を検出する張力検出装置145aと、その張力検出装置145aで検出された張力に基づいて巻取モータ3bの駆動トルクを制御する駆動制御装置(図示せず)とを含む張力調整装置145を備える。
なお、図示の例の場合、第1のロール104も張力検出装置145の一部として機能する。詳しくは、以下の通りである。
図14の例では、本体フレーム1が、前記実施例と同様に、幅方向に離隔して一対に設けられた躯体1cを備えており、第1のロール104は、各躯体1cに固定された一対の支持ブラケット145e、145e間で、支持ブラケット145eを介して支持されるものであるが、各支持ブラケット145eに対しては、張力検出レバー145cを介して支持されている。
各支持ブラケット145eは、その内側面において張力検出レバー145cを支持している。そして、各張力検出レバー145cは、その延在方向の中間部において、支持軸145bを介して支持ブラケット145eに対し回動可能に支持されている。
また、各張力検出レバー145cの延在方向の一端には、その厚さ方向(前述の支持軸145bの軸心方向)に貫通する貫通孔145dが形成されている。そして、この貫通孔145dに対し軸受の外輪が嵌挿されると共に、その軸受の内輪に対し、第1のロール104の両端部に設けられた軸部が嵌挿されることにより、第1のロール104が張力検出レバー145cを介して支持ブラケット145eに支持された状態となる。
また、各張力検出レバー145cの延在方向の他端には、張力検出器としてのロードセル145fが連結される。なお、図示の例では、ロードセル145fは、S型ロードセルである。また、各ロードセル62は、その両端に取り付けられた軸の一方が球面軸受等を介して張力検出レバー145cに連結され、前記軸の他方が球面軸受等を介して支持ブラケット145eの内側面に固定されている。このように、支持ブラケット145eに対し回動可能に支持された各張力検出レバー145cは、ロードセル145fによってその回動が支持されており、それにより、第1のロール104は、その両端部において、張力検出レバー145cを介してロードセル145fに連結されると共に、所定の位置で支持された状態となっている。
この構成により、第1のロール104に対して巻き掛けられている炭素繊維基材91の張力が第1のロール104に作用し、第1のロール104に作用する荷重が、各ロードセル145fによって検出される。
駆動制御装置には、刃物列110による押圧力又は刃物列110の位置に応じた炭素繊維基材91の張力の基準値(目標値)が予め設定される。そして、駆動制御装置は、張力検出装置145aによって検出された炭素繊維基材91の張力(検出値)と上記基準値とを比較し、両者に偏差が生じている場合には、その偏差が解消されるように、巻取モータ3bの駆動トルクを制御する。具体的には、検出値が基準値よりも高ければ巻取モータの駆動トルクを小さくし、検出値が基準値よりも低ければ巻取モータ3bの駆動トルクを大きくするように、巻取モータ3bを制御する。
なお、位置規制装置として張力調整装置を設ける場合、切断するフィラメント量の調節を、調節装置で行うことに代えて、炭素繊維基材の張力を調整することで行うことも可能である。
詳しくは、炭素繊維基材91の張力が刃部材に作用させる押圧力(その反作用によって刃部材が炭素繊維基材91に対し作用させる押圧力)は、炭素繊維基材91の張力に応じたものとなるため、調節装置によって刃部材が炭素繊維基材91に対し作用させる押圧力又は刃部材の位置が一定の場合、炭素繊維基材91の厚みの範囲内における刃部材の刃先の位置は、炭素繊維基材91の張力に応じたものとなる。従って、炭素繊維基材91の張力を張力調整装置145で調整することにより、刃部材で切断するフィラメント量を調節することが可能となる。
前記実施例における各毛羽起立装置(第1、第2の起立機構50、50A)について、前記実施例では、各ロールブラシ51、51A(毛材)の回転方向を炭素繊維基材91の進行方向に対し逆行する方向としたが、これに限らず、各ロールブラシ51、51Aを炭素繊維基材91の進行方向に準じた方向へ回転駆動するようにしてもよい。この場合、ロールブラシ51、51Aの回転速度を、切断装置によって切断されたフィラメントが、ロールブラシ51、51Aの位置を通過する際に、回転駆動されるロールブラシ51、51Aの毛材のいずれかと接触する回転速度となるようにする。
また、各毛羽起立装置の駆動手段について、前記実施例では、各起立装置50、50Aにおける駆動手段の駆動源を共通の(単一の)駆動モータ57とし、第2の起立機構50A(回転軸50A)については、駆動モータ57で回転駆動される第1の起立機構50における回転軸54の回転が歯車伝達機構58によって伝達されるものとしたが、これに限らず、例えば、歯車伝達機構58に代えて、ベルト伝達機構等の他の駆動伝達機構を用い、第1の起立機構50における回転軸54の回転を第2の起立機構50Aにおける回転軸54Aに伝達する構成としてもよい。また、各起立機構50、50Aにおける駆動手段駆動源を共通の(単一の)駆動モータ57とすることに代えて、各起立機構における回転軸54、54A(ロ−ルブラシ51、51A)がそれぞれ専用の駆動モータで回転駆動される構成としてもよい。
また、第2の起立機構50Aの配置について、前記実施例では、第1の起立機構50の直下に配置しているがこれに限らず、第1の起立機構50と第2の起立機構50Aとを経糸方向dに関し離間した位置に配置してもよい。
また、前記実施例における第2の起立機構50Aを支持する昇降装置60については、前記実施例の構成に限らず、以下の1)、2)のような構成としてもよい。
1)昇降機構61を、雌ねじ部が形成された昇降軸及び昇降軸の雄ねじに形成された昇降ブシュ61bで構成されるものに代えて、流体圧で作動するアクチュエータや電動アクチュエータ等の直動装置を備える構成とする。
2)第2の起立機構50Aを上下方向fに移動させるものに代えて、第2の起立機構50Aを回転軸の周りに回動させてロールブラシ51Aを上下方向fに関し炭素繊維基材91の経路から離間させる構成とする。具体的には、例えば、昇降装置を、軸線を幅方向に向けて配置されると共に本体フレーム1に対し回動可能に設けられた回転軸と、回転軸に固定されるブラケットと、回転軸の回動を阻止する制動装置とを有する回動機構を備えたものとし、第2の起立機構50Aを回動機構のブラケットで支持する構成とする。そして、第2の起立機構50Aの作動位置と離間位置(ロールブラシ51Aが上下方向に関し炭素繊維基材91の経路から離間する位置)との切換については、作業者が、上記回動機構における制動装置を操作して回転軸の回動が阻止された状態を解除し、回転軸を回動可能な状態とした上で、手動で行うものとすればよい。
また、前記実施例では、第2の起立機構50Aが昇降装置60を介して本体フレーム1にを支持される構成としているが、これに限らず、以下の1)〜3)のような構成としてもよい。
1)第2の起立機構50A(ロールブラシ51A)の上下方向fに関する位置は固定とし、第1の起立機構50が昇降装置を介して本体フレーム等に支持されるように構成する。そして、この場合は、炭素繊維基材91の引き通し時においては、第1の起立機構50におけるロールブラシ51を、その作動位置から離間位置へ移動させるものとなる。
2)各起立機構50、50Aをそれぞれ独立した昇降装置で支持する構成とし、各起立機構50、50Aにおける各ロールブラシ51、51Aを共に離間位置へ移動可能とする。そして、炭素繊維基材91の引き通し時おいては、一方、又は、両方のロールブラシ51、51Aを離間位置へ移動させる。
3)なお、本発明においては、毛羽起立装置が昇降装置を必ずしも備える必要はなく、例えば、前述のように第1の起立機構50と第2の起立機構50Aとを経糸方向dに関し離間した位置に配置する場合においては、各起立機構50、50A(各ロールブラシ51、51A)の高さ位置が固定されたものであってもよい。
前記実施例では、各起立機構50、50Aが、切断されたフィラメントを起立させる構成として複数のロールブラシ51、51Aを採用し、且つそのロールブラシ51、51Aの幅方向の寸法を炭素繊維基材91の幅寸法よりも小さいものとして複数のロールブラシ51、51Aを幅方向において複数並列するものとしたが、これに限らず、各起立機構50、50Aが、炭素繊維基材91の全幅に亘って延在する1つのロールブラシを備えるものとしてもよい。
また、各起立機構における切断されたフィラメントを起立させる機構としては、ロールブラシに限らず、平板に毛材を植設した所謂「板ブラシ」であってもよい。そして、その場合は、板ブラシを上下方向fに関し毛材の先端部が炭素繊維基材91に接触する位置に配置すれば良く、それによっても、炭素繊維基材91と板ブラシとの移動に伴う炭素繊維糸(経糸92、緯糸93)と毛材との接触により、切断後のフィラメントが起立されてを毛羽94となる。
さらには、毛材を接触させてフィラメントを起立させるものに限らず、圧力流体(圧縮空気)によってフィラメントを起立させるものとしてもよい。具体的には、毛羽起立装置が、エアノズルと、エアノズルに空気圧を供給するための圧力空気供給装置とを備えるものとすればよい。その一例を図15に示す。
図15の例では、エアノズル147は、切断装置の各刃部材に対応して設けられており、噴出する空気の作用点148が対応する刃部材の下流側の位置となるように、先端を指向させて設けられている。より詳しくは、図示の例では、刃物列10を2つ備える切断装置において、上流側の刃物列10に対応するエアノズル147を上流側に、下流側の刃物列10に対応するエアノズル147を下流側に、それぞれ刃物列10を支持する支持装置30(筐体32)に対し配置した上で、各エアノズル147の先端を、前記作用点148が各刃物列10の刃部材と炭素繊維基材91との接触する位置よりも下流側となるように指向されている。各刃部材により切断されたフィラメントは、炭素繊維基材91と共に経糸方向dに移動されて前記作用点148を通過し、前記作用点148において、エアノズル147の先端から噴射される空気圧146の作用によって炭素繊維基材91内の毛羽94として起立される。
前記実施例では、毛羽生成装置が、炭素繊維基材91の表裏両面のそれぞれに対向する第1の切断装置5、第2の切断装置5Aを備えると共に、炭素繊維基材91の表裏両面のそれぞれに対向する毛羽起立装置を備え、炭素繊維基材91の表面および裏面の両方に毛羽94を生成するものとしているが、これに限らない。毛羽生成装置が、炭素繊維基材91の表面および裏面のうちのいずれか一方と対向する同じ側に切断装置と毛羽起立装置(起立機構)とを備える構成とし、毛羽生成装置が炭素繊維基材91の表面および裏面の一方にのみ毛羽94を生成するようにしてもよい。
また、切断装置と炭素繊維基材91との相対的な移動について、前記実施例では、固定配置した切断装置に対して炭素繊維基材91を移動させる構成としているが、これに限らず、固定配置した炭素繊維基材91に対して切断装置を移動させる構成としてもよい。具体的には、例えば、支持部材として平板を設け、炭素繊維基材91を平板に固定配置した上で、切断装置を炭素繊維基材91の経糸92および緯糸93のうちの一方の糸の方向に沿った方向へ移動可能に構成する。
なお、前記実施例では、毛羽生成装置を独立した装置として設けたが、本願発明は、炭素繊維基材91に関する他の製造装置に対して設けることも可能である。
図16に示す例はその一例であって、図示の例では、毛羽生成装置を、炭素繊維基材91を製織する織機149に対して設けている。詳しくは、毛羽生成装置(切断装置153および毛羽起立装置154)は、織機149で製織される炭素繊維基材91の経路における別巻取装置152側への案内ロール151と別巻取装置の案内ロール161との間に設けられている。図示の例では、織機の一部である案内ロール151、161により支持されて経路を画定された炭素繊維基材91の表面と対向する位置に切断装置153および毛羽起立装置154が配置されており、案内ロール151、161を毛羽生成装置の支持部材として兼用している。また、受けロール160は、切断装置153が対向する炭素繊維基材91の表面とは反対側の裏面で炭素繊維基材に当接する位置に配置されている。
そして、図示の例では、織機149で製織された炭素繊維基材91は、別巻取装置152に巻き取られて移動する経路の途中で、前記切断装置よりも前記縦糸方向dにおける下流側(別巻取装置152側)に設けられた毛羽起立装置によって表面側に毛羽生成処理を施される構成となっている。
また、毛羽生成装置が設けられる製造装置は、図16のような織機に限らず、プリプレグ製造装置、裁断機、検反機、または、巻返し機であってもよい。
さらに、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更可能である。