JPWO2003039196A1 - 電磁誘導発熱ローラとその製造方法、及び加熱装置と画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
電磁誘導発熱ローラ(21)は、表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層(22)、弾性層(23)、および芯材(24)を有する。発熱ローラ(21)は加圧部材(31)に圧接されてニップ部(34)を形成し、ニップ部(34)を通過する被加熱材(11)を昇温させる。誘導発熱層(22)は、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有する。このため、誘導発熱層(22)が変形しやすく、幅Wの広いニップ部(34)を形成できる。また、誘導発熱層(22)の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
Description
技術分野
本発明は電磁誘導加熱により発熱昇温し、シート状の被加熱材と連続的に接触して被加熱材を加熱昇温させるための電磁誘導発熱ローラに関する。特に、複写機、プリンター等に用いられる電子写真方式、またはこれに類する方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、トナー像を被記録材上に加熱定着させるための加熱装置に用いられる電磁誘導発熱ローラおよびその製造方法に関する。更に、本発明はこのような電磁誘導発熱ローラを用いた加熱装置および画像形成装置に関する。
背景技術
電子写真複写機やプリンター等の画像形成装置における定着装置(加熱装置)を例にして説明する。画像形成装置に用いられる定着装置は、電子写真や静電記録等の適宜の画像形成プロセス手段により、加熱溶融性の樹脂等よりなるトナーを用いて被記録材上に形成した未定着のトナー画像を、熱により被記録材面上に永久固着する装置である。
これらの定着装置に最も良く用いられる方式としては、所定の定着温度に加熱・温調した加熱ローラとこれに対向して圧接される加圧ローラとが形成するニップ部に被記録材を導入して挟持搬送させることで未定着トナー画像を被記録材面上に加熱定着させるローラ定着方式がある。そしてこのローラ定着方式の加熱ローラの熱源としてはハロゲンランプが多用されている。
一方、近年、省電力化やウォームアップ時間の短縮の要求から、加熱ローラの熱容量を低減したベルト定着方式やその加熱源としてベルト自体を電磁誘導により発熱させる誘導加熱方式が提案されている。図7に電磁誘導により加熱されるエンドレスベルトを用いた従来の誘導加熱定着装置の一例を示す(例えば特開平10−74007号公報参照)。
図7において、160は高周波磁界を発生させる励磁手段としてのコイルアッセンブリである。110はコイルアッセンブリ160が発生する高周波磁界によって発熱する金属スリーブ(発熱ベルト)であり、ニッケルやステンレスの薄層からなるエンドレスチューブの表面にフッ素樹脂がコーティングされたものである。金属スリーブ110の内側に内部加圧ローラ120が挿入され、金属スリーブ110の外側に外部加圧ローラ130が設置され、外部加圧ローラ130が金属スリーブ110を挟んで内部加圧ローラ120に押圧されることによりニップ部250が形成される。金属スリーブ110、内部加圧ローラ120、外部加圧ローラ130がそれぞれ矢印方向に回転しながらコイルアッセンブリ160に高周波電流が流されると、金属スリーブ110が電磁誘導加熱されて急速に昇温し所定の温度に達する。この状態で所定の加熱を継続しながら被記録材140をニップ部230に挿入し通過させることで、被記録材140上に形成されたトナー像を被記録材140上に定着させる。
上記した従来の誘導加熱定着装置では、発熱ベルトとしての金属スリーブ110がニッケルやステンレスの金属製エンドレスベルト表面に離型層を形成してなる。このように、金属製のエンドレスベルトをメッキ法や塑性加工法により形成すると生産性が上がらず高価となる。また、ベルトの材質が金属の場合、厚みが50〜60μm以下の場合は安定した精度で加工しにくいし、これ以上の場合は特にニップ部での繰り返しの曲げに弱く耐久性が不十分である。さらに、発熱ベルトとこれを駆動するローラとが別々の部材で構成されているため、発熱ベルトの回転駆動が不安定になる。
また、上記の発熱ベルト方式とは異なり、弾性ローラの外周に金属製のエンドレスベルトを被せて作成し、該エンドレスベルトを同様に電磁誘導加熱するローラ加熱方式が知られている。しかし、エンドレスベルトを弾性ローラに被せて接着して発熱ローラを製造する方法は加工工程が煩雑である。
発明の開示
本発明は、従来の問題を解決し、製造し易く安価でしかも耐久性がある誘導加熱方式の発熱ローラとその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この発熱ローラを用いて被記録材上に形成した未定着のトナー画像を被記録材面に永久固着する加熱装置、およびこの加熱装置を具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の電磁誘導発熱ローラは、表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層、弾性層、および芯材を有し、加圧部材に圧接されてニップ部を形成し、前記ニップ部を通過する被加熱材を昇温させる電磁誘導発熱ローラであって、前記誘導発熱層が、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有することを特徴とする。
また、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
また、本発明の加熱装置は、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記ニップ部を形成する加圧ローラと、磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘導発熱させる磁場発生手段とを有し、前記ニップ部に導入された被加熱材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することにより前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
更に、本発明の画像形成装置は、被記録材上にトナー像を形成する画像形成手段と、上記の本発明の加熱装置とを備え、前記画像形成手段が前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記録材上に定着することを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
本発明の誘導発熱ローラは、表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層、弾性層、および芯材を有し、前記誘導発熱層が、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有する。
これにより、誘導発熱層が金属の薄層ではなく柔軟性のある樹脂またはゴムを基材としているために、誘導発熱層が変形しやすく、幅の広いニップ部を形成できる。また、誘導発熱層の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
前記誘導発熱層が、基材に導電体フィラーを分散した層と、基材に前記導電体フィラーよりも高抵抗の磁性体フィラーを分散した層とが積層されてなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、誘導発熱層が導電体フィラーを分散した単層のみからなる場合に比べ交番磁界による発熱効率をより増大することができる。また、誘導発熱層を貫通して芯材に達する漏れ磁束を少なくすることができるので、芯材の発熱を考慮する必要がなく、芯材として安価で十分な機械的強度を備えた材料を使用できる。また、芯材の発熱が抑えられるので、芯材の軸受けの熱による損傷を防止できる。
前記誘導発熱層の前記基材が、シリコーンゴムからなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、誘導発熱層がシリコーンゴムを基材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、弾性層上に塗工等で容易に形成でき、また誘導発熱層の柔軟性も向上する。
前記弾性層が発泡シリコーンゴムからなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、弾性層が柔軟性と耐熱性に加え高い断熱性を兼ね備えるため、電磁誘導発熱ローラの表面温度を急速に昇温できる。
前記誘導発熱層が前記弾性層の表面に塗工または吹き付けにより直接形成されたものであることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、従来のように、誘導発熱層として金属の薄層チューブ等を弾性層とは別に作成して、その後、金属チューブを弾性層に被せて形成される発熱ローラに比べて、発熱ローラの製造が容易である。また、チューブを接着する場合には、接着のむらがあるとこれがローラ表面の温度むらになり易いが、誘導発熱層を弾性層上に直接形成すれば接合むらも無くローラ表面の温度むらも発生しにくい。
前記離型層と前記誘導発熱層との間に第2の弾性層を有しているのが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、表面温度むらが緩和され、また、被記録材面との均一な接触が確保できる。
次に、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
これにより、工程が簡素で、かつ耐久性、温度むら等の良好な電磁誘導発熱ローラが形成できる。
また、前記第2の弾性層を備える本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記第2の弾性層を形成する工程と、前記第2の弾性層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
これにより、誘導発熱層、第2の弾性層、離型層を順次、形成するので製造が容易である。
次に、本発明の加熱装置は、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記ニップ部を形成する加圧ローラと、磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘導発熱させる磁場発生手段とを有し、前記ニップ部に導入された被加熱材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することにより前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
これにより、ウォームアップ時間が極めて短く、かつ耐久性、均一加熱安定性の高い加熱装置が実現できる。
また、本発明の画像形成装置は、被記録材上にトナー像を形成する画像形成手段と、上記の本発明の加熱装置とを備え、前記画像形成手段が前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記録材上に定着させることを特徴とする。
これにより、ウォームアップ時間が短く、耐久性があり、しかも均一なトナー像の定着ができる画像形成装置が実現できる。
以下に本発明を図面を参照しながら更に詳細に説明する。
図5は本発明の一実施形態の加熱装置を定着装置として用いた画像形成装置の断面図である。以下にこの装置の構成と動作を説明する。
1は電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム1は矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器2により所定の電位に一様に帯電される。3はレーザビームスキャナであり、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームを出力する。上記のように一様帯電された感光ドラム1の表面が、このレーザビームで選択的に走査露光されることにより、感光ドラム1面上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。次いで、この静電潜像は、回転駆動される現像ローラ4aを有する現像器4により帯電した粉体トナーを供給されて、トナー像として顕像化される。
一方、給紙部10からは被記録材11が一枚ずつ給送され、レジストローラ対12、13を経て、感光ドラム1とこれに当接させた転写ローラ14とからなるニップ部へ、感光体ドラム1の回転と同期した適切なタイミングで送られる。転写バイアスの印加された転写ローラ14の作用によって、感光ドラム1上のトナー像は被記録材11に順次転写される。ニップ部(転写部)を通った被記録材11は感光ドラム1から分離され、定着装置15へ導入され、転写トナー像の定着が行われる。定着されて像が固定された被記録材11は排紙トレイ16へ出力される。被記録材が分離された後の感光ドラム1面はクリーニング装置17で転写残りトナー等の残留物が除去されて清浄にされ、繰り返し次の作像に供される。
次に、上記の定着装置15として使用可能な本発明の加熱装置の実施の形態を実施例とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は上記画像形成装置に用いられる、本発明の実施の形態1の加熱装置としての定着装置の断面図である。図2は図1の矢印II方向からみた磁場発生手段の構成図、図3は図2のIII−III線(発熱ローラ21の回転中心軸と励磁コイル36の巻回中心軸36aとを含む面)での矢視断面図である。図4Aは図1の定着装置に用いられる本発明の発熱ローラ21の断面構成図、図4Bは図4Aにおける部分4Bの拡大断面図である。以下、図1〜図4Bを参照して本実施の形態の定着装置と発熱ローラを説明する。
図4A、図4Bにおいて、発熱ローラ21は、表面側から順に離型層27、薄肉の弾性層(第2の弾性層)26、薄肉の導電材よりなる誘導発熱層(以下、単に「発熱層」という)22、断熱性の良好な弾性層23、及び回転軸となる芯材24より構成されている。
図3は図2のIII−III線での矢視断面図で、定着装置全体を横方向からみた断面構成をあらわしている。発熱ローラ21は外径が30mmであり、その最下層である芯材24の両端において軸受け28、28’により側板29、29’に回転可能に支持されている。発熱ローラ21は、図示しない装置本体の駆動手段によって芯材24に一体的に固定された歯車30を介して回転駆動される。
36は磁場発生手段としての励磁コイルであり、発熱ローラ21の外周の円筒面に対向して配置され、表面を絶縁した外径0.15mmの銅線からなる線材を60本束ねた線束を9回周回して形成されている。
励磁コイル36の線束は、発熱ローラ21の円筒面の回転中心軸(図示せず)方向の端部ではその外周面に沿って円弧状に配置され、それ以外の部分では前記円筒面の母線方向に沿って配置されている。また、発熱ローラ21の回転中心軸と直交する断面図である図1に示すように、励磁コイル36の線束は、発熱ローラ21の円筒面を覆うように、発熱ローラ21の回転中心軸を中心軸とする仮想の円筒面上に、重ねることなく(但し、発熱ローラの端部を除く)密着して配置されている。また、発熱ローラ21の回転中心軸を含む断面図である図3に示すように、発熱ローラ21の端部に対向する部分では、励磁コイル36の線束を2列に並べて積み重ねて盛り上がっている。従って、励磁コイル36は、全体として鞍の様な形状に形成されている。ここで、励磁コイル36の巻回中心軸36aは、発熱ローラ21の回転中心軸と略直交し、発熱ローラ21の回転中心軸方向の略中心点を通る直線であり、励磁コイル36は前記巻回中心軸36aに対してほぼ対称に形成されている。線束は表面の接着剤により互いに接着され、図示した形状を保っている。励磁コイル36は発熱ローラ21の外周面から約2mmの間隔を設けて対向している。図1の断面図において、励磁コイル36が発熱ローラ21の外周面と対向する角度範囲は、発熱ローラ21の回転中心軸に対して約180度と広い範囲である。
37は前記励磁コイル36とともに磁場発生手段を構成する背面コアであり、励磁コイル36の巻回中心軸36aを通り、発熱ローラ21の回転中心軸と平行に配置された棒状の中心コア38と、励磁コイル36に対して発熱ローラ21とは反対側に、励磁コイル36と離間して配置された略U字状のU字コア39とからなる。中心コア38とU字コア39とは磁気的に接続されている。図1に示すように、U字コア39は、発熱ローラ21の回転中心軸と励磁コイル36の巻回中心軸36aとを含む面に対して略対称なU字状である。このようなU字コア39は、図2、図3に示すように、発熱ローラ21の回転中心軸方向に離間して複数個配置されている。本実施例では、U字コア39の、発熱ローラ21の回転中心軸方向の幅は10mmで、このようなU字コア39が26mm間隔で合計7個配置されている。U字コア39は、励磁コイル3からの外部に漏れる磁束を捕捉する。
図1に示すように、各U字コア39の両先端は、励磁コイル36と対向しない範囲まで延長され、励磁コイル36を介さずに発熱ローラ21と対向する対向部Fが形成されている。また中心コア38は、励磁コイル36を介さずに発熱ローラ21と対向し、かつ、U字コア39よりも発熱ローラ21側に突出して対向部Nを形成している。突出した中心コア38の対向部Nは、励磁コイル36の巻回中心の中空部内に挿入されている。中心コア38の断面形状は4mm×10mmである。
本実施例では、背面コア37の材料としては、フェライトを用いた。背面コア37の材料としては、フェライトやパーマロイ等の高透磁率で固有抵抗の高い材料が望ましいが、透磁率が多少低くても磁性材であれば用いることができる。
40は厚さが1mmで、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱温度の高い樹脂からなる断熱部材である。
図1において、加圧部材としての加圧ローラ31は、金属軸32の表面にシリコーンゴムよりなる弾性層33を被覆してなる。弾性層は硬度50度(JIS−A)である。加圧ローラ31は発熱ローラ21に対して全体で約200Nの力で圧接されニップ部34を形成している。加圧ローラ31の外径は30mmで、長さは発熱ローラ21とほぼ同一で、その有効長は発熱層22より僅かに長い。
ニップ部34では、発熱ローラ21の弾性層23が圧縮変形し、発熱層22が幅方向(発熱ローラ21の回転中心軸方向)において略均一な圧力で押圧されている。ニップ部34の、被記録材11の走行方向Cに沿った幅Wは約5.5mmである。発熱ローラ21には非常に大きな力が加えられており、その表面の発熱層22の厚さは薄いが、弾性層23を介して中実の芯材24がその圧力を支えているため、回転中心軸に対するたわみ量はわずかに抑えられ、回転中心軸方向において幅Wが略均一なニップ部34が形成されている。さらに、ニップ部34では発熱層22および弾性層23が加圧ローラ31の外周面に沿って凹状に変形しているため、被記録材11がこのニップ部34を通過して出てくるとき、被記録材11の進行方向が発熱ローラ21の外表面となす角度が大きくなり、被記録材11の剥離性が極めてよい。
加圧ローラ31はこの状態で金属軸32の両端を従動軸受け35、35’により回転可能に支持されている。加圧ローラ31の弾性層33の材質は、上記のシリコーンゴムの他に、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や耐熱性ゴムで構成しても良い。また加圧ローラ31の表面には耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA(四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)等の樹脂あるいはゴムを単独あるいは混合で被覆してもよい。熱の放散を防ぐため、加圧ローラ31は熱伝導性の小さい材料で構成されることが望ましい。
図1で41は温度検知センサで、発熱ローラ21の表面に接触し、ニップ部34に至る直前の発熱ローラ21の表面の温度を検知し、図示しない制御回路にフィードバックする。動作時はこれにより励磁回路42の励磁電力を調節することによって、発熱ローラ21のニップ部34直前の表面温度を摂氏170度にコントロールする。本実施例では、ウォームアップ時間を短縮するという目的を達成するために、発熱層22及びこれより外側に設けた弾性層26及び離型層27の熱容量を極力小さく設定している。
以上の構成で発熱ローラ21と加圧ローラ31とを回転させながら励磁回路42により励磁コイル36に20〜50kHzの高周波電流を流す。これによって交番磁束が励磁コイル36を取り巻く中心コア38、U字コア39および励磁コイル36に対向する発熱ローラ21の発熱層22を経由して流れ、この交番磁束により発熱層22に渦電流が発生して発熱ローラ21の表面温度が急速に上昇を始める。発熱ローラ21の表面温度は温度検知センサ41で検知され、所定の170℃に温調される。そして、未定着のトナー像を担持した被記録材11がニップ部34に挿入され、ニップ部34でトナー像と被記録材11とは順次加熱されてトナー像が被記録材11上に定着される。
次に発熱ローラ21の構成について詳しく述べる。
本実施例では芯材24は直径20mmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)で構成した。芯材24の材料としては、耐熱性が有り、機械的強度(回転中心軸方向の曲げ剛性)が強い材料が好ましい。更に、できるだけ芯材24の内部を磁束が通りにくいように、磁気抵抗が高い材料が好ましく、また、漏れ磁束が芯材24内部を通過したとしてもそれによって渦電流が発生しないように、絶縁性の材料であることが好ましい。耐熱性の絶縁材料としてアルミナ等のセラミック材料を用いることもできる。
弾性層23は、低熱伝導性のシリコーンゴムの発泡体よりなり、本実施例では厚さ5mm、硬度45度(ASKER−C)のものを用いている。弾性層23は発泡シリコーンゴムに限るものではないが、適度の弾力性を有することでニップ部34の幅Wを確保し、かつ発熱層22からの熱の拡散を少なくするためには硬度は20〜55度(ASKER−C)のものが望ましい。また、発泡体でない場合は硬度50度(JIS−A)以下のシリコーンゴムを用いることが耐熱性、柔軟性の点から望ましい。
本実施例の発熱層22は、シリコーンゴムを基材として、この中に鱗片状のニッケル片を分散したものを弾性層23上に60μmの厚みで塗布形成したものである。励磁コイル36によって発生された交番磁束はこの発熱層22内のニッケル片を伝って発熱層22内を通過し、それによってニッケル片に渦電流が発生して発熱層22は急速に加熱される。なお、本実施例では発熱層22の基材としてシリコーンゴムを用いたが、これに代えてポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フッ素ゴムのように柔軟性のある耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムを用いることもできる。また、基材中に分散させるフィラーとしては、上記のニッケル片に限定されず、磁性金属の粉体や非磁性金属の粉体を用い、これらを混合または積層して基材中に分散させてもよい。粉体の形状はファイバー状、球状、鱗片状などいずれでも良い。分散させるフィラーとしては交番磁束により渦電流が流れる導電性を有した材料であれば良いことは言うまでもないが、本実施例ではフィラーとして磁性金属であるニッケルを用いた。これにより励磁コイル36によって発生される交番磁束を発熱層22内に導き、励磁コイル36を周回する磁気回路の磁気抵抗を低減し、発熱層22を貫通して他層へ漏れる磁束(漏れ磁束)を低減できるため、効率の良い加熱が可能となる。なお、発熱層22の厚さは10〜200μmが好ましい。
弾性層(第2の弾性層)26は被記録材11との密着をよくするために設けられており、本実施例ではシリコーンゴムよりなる厚さ200μm、硬度20度(JIS−A)の層である。弾性層26の厚さは200μmに限定されるものではなく、50〜500μmの範囲が望ましい。厚すぎると、熱容量が大きくなりすぎて、ウォームアップ時間が遅くなり、薄すぎると被記録材11との密着性の効果が低減する。弾性層26の材質は、シリコーンゴムに限らず、他の耐熱性ゴムや耐熱性樹脂を使用することも可能である。なお、この弾性層26は必ずしも設けなくても支障はないが、トナー像がカラー画像の場合には設けることが望ましい。
離型層27としてはPTFE(四フッ化エチレン)、やPFA(四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素系の樹脂を用いることができ、本実施例では厚さ30μmとした。
本実施例に用いた発熱ローラ21は下記の製造方法によって形成する。弾性層23を発泡成型(表面にスキン層を有することが好ましい)した後、この弾性層23上に導電体フィラーを分散したシリコーンゴムの原液をスプレー法またはディッピング法等により所定の厚みに付与する。その後これを加硫して弾性層23上に発熱層22を形成する。なお、このとき芯材24は発熱層22を形成する前に弾性層23と接着固定されていても良いし、また発熱層22の形成後に芯材24を挿入接着してもかまわない。また、芯材24上に弾性層23を直接成型することも可能である。また、発熱層22は多数回重ね塗りして形成しても良い。弾性層23上に発熱層22を形成した後に弾性層(第2の弾性層)26のシリコーンゴムを発熱層22と同様、発熱層22上に重ね塗りして加硫する。その後、離型層27を、PFAチューブを被せてプライマー層を介して接着、またはPTFEをコーティングし焼成するなどの方法で形成する。なお、それぞれの層間にはそれぞれの材料に合わせたプライマー層を介在させても良い。また、発熱層22の基材にポリイミド樹脂を用いる場合にも上記と同様にポリイミドワニスを弾性層23上に塗工形成する。
本発明では、このように発熱層22を、金属ベルトのようなチューブを弾性層23とは別体として形成するのではなく、弾性層23上に直接形成するため、製造工程が簡素で作業を集約しやすく、安価に製造できるという特徴を有する。
以上に述べた実施の形態1によれば、発熱層22が金属の薄層ではなく柔軟性のある樹脂またはゴムを基材としているために、発熱層22が変形しやすく、幅Wが大きなニップ部34を形成できる。また、発熱層22の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
また、発熱層22がシリコーンゴムなどの耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムを基材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、弾性層23上に塗工等で形成しやすく、また柔軟性も高い。
弾性層23が柔軟性と耐熱性に加え高い断熱性を兼ね備えるため発熱ローラ22の温度を急速に昇温できる。
発熱層22が弾性層23上に直接形成されるため、従来のように誘導発熱層として金属の薄層チューブ等を弾性層とは別に作成して、その後、弾性層に金属チューブを被せて形成される発熱ローラに比べて、加工が容易である。また、チューブを接着する場合には、接着のむらがあるとこれがローラ表面の温度むらになり易いが、本発明のように弾性層23上に発熱層22を直接形成すれば接合むらも無くローラの表面温度むらも発生しにくい。
なお、上記の実施の形態においては発熱ローラ21は芯材24上に弾性層23、発熱層22、第2の弾性層26、離型層27を順に備えた層構成となっているが、本発明は必ずしもこの層構成に限定されるものではなく、各層を多層の構成にしたり、また、各層間に接着層を設けたり、各層間に補助的な層を形成したりすることは差し支えない。
(実施の形態2)
図6は、本実施の形態2の発熱ローラ21の表面近傍の部分拡大断面図である。図6において実施の形態1と同一の機能を有する部材には同一の符号を付してそれらについての詳細な説明を省略する。
本実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、発熱ローラ21の発熱層22の構成のみである。
図6に示すように、本実施の形態では、発熱層22は、シリコーンゴムの基材に導電体フィラーとして鱗片状の銀粉を分散させた導電層22aと、同じくシリコーンゴム基材に磁性体フィラーとして鉄の粉体を分散した磁性体層22bとの2層で構成される。励磁コイル36の動作時に励磁コイル36を周回して発生する交番磁束の多くは図6の破線Dで示すように導電層22aを貫通して磁性体層22b内を流れる。これによって導電層22aに渦電流が発生して発熱すると同時に、磁性体層22bにも同様に渦電流が発生して発熱する。導電層22aに分散させるフィラーは固有抵抗ができるだけ小さい材料が好ましく、例えば金、銀、銅、アルミニウム等が望ましい。
導電層22aを磁性体層22bよりも外側に設けると実施の形態1に示した発熱層22を磁性体層単層とした場合より発熱効率を向上させることができる。
また、導電層22aに渦電流が発生し、且つ、これより内周側に磁性体層22bを備えることにより、発熱ローラ21の半径方向に磁性体層22bを貫通して漏れ出す漏れ磁束Eを低減できる。漏れ磁束Eが芯材24に達すると、芯材24が金属材料の場合、芯材24に渦電流が発生して芯材24が発熱するが、本実施の形態では漏れ磁束Eを低減できるので芯材24の発熱量を低減することができる。なお、実施の形態1で説明したように芯材24を絶縁材料で構成すれば芯材24が発熱することはない。しかし、実施の形態1で例示したPPSは機械的強度が低く、アルミナは高価である。本実施の形態によれば、芯材24に達する漏れ磁束Eを低減できるので、芯材24の材料として安価でかつ強度を確保できる一般的な金属材料を用いても、芯材24の発熱を抑えることができる。
このように、本実施の形態によれば、漏れ磁束Eを少なくできるので発熱層22を効率よく発熱させることができる。従って、エネルギーロスを低減できる。また、漏れ磁束Eを低減できることにより、芯材24に達する磁束を低減できる。従って、芯材24として、絶縁材料を用いる必要がなく、一般的な金属材料を用いることができるので、安価で十分な機械的強度を確保できる。更に、芯材24の発熱が抑えられるので、芯材24の軸受け28,28’が加熱されて発生するトラブルも低減できる。
以上に説明した実施の形態は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、その発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置の断面図である。
図2は、図1の矢印II方向からみた磁場発生手段の構成図である。
図3は、図2のIII−III線における本発明の実施の形態1に係る加熱装置の断面図である。
図4Aは図1の定着装置に用いられる本発明の実施の形態1に係る発熱ローラの断面図、図4Bは図4Aにおける部分4Bの拡大断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示した断面図である。
図6は、本発明の実施の形態2に係る発熱ローラの表面近傍の部分拡大断面図である。
図7は、従来の誘導加熱定着装置の断面図である。
本発明は電磁誘導加熱により発熱昇温し、シート状の被加熱材と連続的に接触して被加熱材を加熱昇温させるための電磁誘導発熱ローラに関する。特に、複写機、プリンター等に用いられる電子写真方式、またはこれに類する方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、トナー像を被記録材上に加熱定着させるための加熱装置に用いられる電磁誘導発熱ローラおよびその製造方法に関する。更に、本発明はこのような電磁誘導発熱ローラを用いた加熱装置および画像形成装置に関する。
背景技術
電子写真複写機やプリンター等の画像形成装置における定着装置(加熱装置)を例にして説明する。画像形成装置に用いられる定着装置は、電子写真や静電記録等の適宜の画像形成プロセス手段により、加熱溶融性の樹脂等よりなるトナーを用いて被記録材上に形成した未定着のトナー画像を、熱により被記録材面上に永久固着する装置である。
これらの定着装置に最も良く用いられる方式としては、所定の定着温度に加熱・温調した加熱ローラとこれに対向して圧接される加圧ローラとが形成するニップ部に被記録材を導入して挟持搬送させることで未定着トナー画像を被記録材面上に加熱定着させるローラ定着方式がある。そしてこのローラ定着方式の加熱ローラの熱源としてはハロゲンランプが多用されている。
一方、近年、省電力化やウォームアップ時間の短縮の要求から、加熱ローラの熱容量を低減したベルト定着方式やその加熱源としてベルト自体を電磁誘導により発熱させる誘導加熱方式が提案されている。図7に電磁誘導により加熱されるエンドレスベルトを用いた従来の誘導加熱定着装置の一例を示す(例えば特開平10−74007号公報参照)。
図7において、160は高周波磁界を発生させる励磁手段としてのコイルアッセンブリである。110はコイルアッセンブリ160が発生する高周波磁界によって発熱する金属スリーブ(発熱ベルト)であり、ニッケルやステンレスの薄層からなるエンドレスチューブの表面にフッ素樹脂がコーティングされたものである。金属スリーブ110の内側に内部加圧ローラ120が挿入され、金属スリーブ110の外側に外部加圧ローラ130が設置され、外部加圧ローラ130が金属スリーブ110を挟んで内部加圧ローラ120に押圧されることによりニップ部250が形成される。金属スリーブ110、内部加圧ローラ120、外部加圧ローラ130がそれぞれ矢印方向に回転しながらコイルアッセンブリ160に高周波電流が流されると、金属スリーブ110が電磁誘導加熱されて急速に昇温し所定の温度に達する。この状態で所定の加熱を継続しながら被記録材140をニップ部230に挿入し通過させることで、被記録材140上に形成されたトナー像を被記録材140上に定着させる。
上記した従来の誘導加熱定着装置では、発熱ベルトとしての金属スリーブ110がニッケルやステンレスの金属製エンドレスベルト表面に離型層を形成してなる。このように、金属製のエンドレスベルトをメッキ法や塑性加工法により形成すると生産性が上がらず高価となる。また、ベルトの材質が金属の場合、厚みが50〜60μm以下の場合は安定した精度で加工しにくいし、これ以上の場合は特にニップ部での繰り返しの曲げに弱く耐久性が不十分である。さらに、発熱ベルトとこれを駆動するローラとが別々の部材で構成されているため、発熱ベルトの回転駆動が不安定になる。
また、上記の発熱ベルト方式とは異なり、弾性ローラの外周に金属製のエンドレスベルトを被せて作成し、該エンドレスベルトを同様に電磁誘導加熱するローラ加熱方式が知られている。しかし、エンドレスベルトを弾性ローラに被せて接着して発熱ローラを製造する方法は加工工程が煩雑である。
発明の開示
本発明は、従来の問題を解決し、製造し易く安価でしかも耐久性がある誘導加熱方式の発熱ローラとその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この発熱ローラを用いて被記録材上に形成した未定着のトナー画像を被記録材面に永久固着する加熱装置、およびこの加熱装置を具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の電磁誘導発熱ローラは、表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層、弾性層、および芯材を有し、加圧部材に圧接されてニップ部を形成し、前記ニップ部を通過する被加熱材を昇温させる電磁誘導発熱ローラであって、前記誘導発熱層が、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有することを特徴とする。
また、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
また、本発明の加熱装置は、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記ニップ部を形成する加圧ローラと、磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘導発熱させる磁場発生手段とを有し、前記ニップ部に導入された被加熱材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することにより前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
更に、本発明の画像形成装置は、被記録材上にトナー像を形成する画像形成手段と、上記の本発明の加熱装置とを備え、前記画像形成手段が前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記録材上に定着することを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
本発明の誘導発熱ローラは、表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層、弾性層、および芯材を有し、前記誘導発熱層が、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有する。
これにより、誘導発熱層が金属の薄層ではなく柔軟性のある樹脂またはゴムを基材としているために、誘導発熱層が変形しやすく、幅の広いニップ部を形成できる。また、誘導発熱層の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
前記誘導発熱層が、基材に導電体フィラーを分散した層と、基材に前記導電体フィラーよりも高抵抗の磁性体フィラーを分散した層とが積層されてなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、誘導発熱層が導電体フィラーを分散した単層のみからなる場合に比べ交番磁界による発熱効率をより増大することができる。また、誘導発熱層を貫通して芯材に達する漏れ磁束を少なくすることができるので、芯材の発熱を考慮する必要がなく、芯材として安価で十分な機械的強度を備えた材料を使用できる。また、芯材の発熱が抑えられるので、芯材の軸受けの熱による損傷を防止できる。
前記誘導発熱層の前記基材が、シリコーンゴムからなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、誘導発熱層がシリコーンゴムを基材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、弾性層上に塗工等で容易に形成でき、また誘導発熱層の柔軟性も向上する。
前記弾性層が発泡シリコーンゴムからなることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、弾性層が柔軟性と耐熱性に加え高い断熱性を兼ね備えるため、電磁誘導発熱ローラの表面温度を急速に昇温できる。
前記誘導発熱層が前記弾性層の表面に塗工または吹き付けにより直接形成されたものであることが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、従来のように、誘導発熱層として金属の薄層チューブ等を弾性層とは別に作成して、その後、金属チューブを弾性層に被せて形成される発熱ローラに比べて、発熱ローラの製造が容易である。また、チューブを接着する場合には、接着のむらがあるとこれがローラ表面の温度むらになり易いが、誘導発熱層を弾性層上に直接形成すれば接合むらも無くローラ表面の温度むらも発生しにくい。
前記離型層と前記誘導発熱層との間に第2の弾性層を有しているのが好ましい。
かかる好ましい実施形態によれば、表面温度むらが緩和され、また、被記録材面との均一な接触が確保できる。
次に、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
これにより、工程が簡素で、かつ耐久性、温度むら等の良好な電磁誘導発熱ローラが形成できる。
また、前記第2の弾性層を備える本発明の電磁誘導発熱ローラの製造方法は、少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記第2の弾性層を形成する工程と、前記第2の弾性層上に前記離型層を形成する工程とを含む。
これにより、誘導発熱層、第2の弾性層、離型層を順次、形成するので製造が容易である。
次に、本発明の加熱装置は、上記の本発明の電磁誘導発熱ローラと、前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記ニップ部を形成する加圧ローラと、磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘導発熱させる磁場発生手段とを有し、前記ニップ部に導入された被加熱材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することにより前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする。
これにより、ウォームアップ時間が極めて短く、かつ耐久性、均一加熱安定性の高い加熱装置が実現できる。
また、本発明の画像形成装置は、被記録材上にトナー像を形成する画像形成手段と、上記の本発明の加熱装置とを備え、前記画像形成手段が前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記録材上に定着させることを特徴とする。
これにより、ウォームアップ時間が短く、耐久性があり、しかも均一なトナー像の定着ができる画像形成装置が実現できる。
以下に本発明を図面を参照しながら更に詳細に説明する。
図5は本発明の一実施形態の加熱装置を定着装置として用いた画像形成装置の断面図である。以下にこの装置の構成と動作を説明する。
1は電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。感光ドラム1は矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器2により所定の電位に一様に帯電される。3はレーザビームスキャナであり、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームを出力する。上記のように一様帯電された感光ドラム1の表面が、このレーザビームで選択的に走査露光されることにより、感光ドラム1面上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。次いで、この静電潜像は、回転駆動される現像ローラ4aを有する現像器4により帯電した粉体トナーを供給されて、トナー像として顕像化される。
一方、給紙部10からは被記録材11が一枚ずつ給送され、レジストローラ対12、13を経て、感光ドラム1とこれに当接させた転写ローラ14とからなるニップ部へ、感光体ドラム1の回転と同期した適切なタイミングで送られる。転写バイアスの印加された転写ローラ14の作用によって、感光ドラム1上のトナー像は被記録材11に順次転写される。ニップ部(転写部)を通った被記録材11は感光ドラム1から分離され、定着装置15へ導入され、転写トナー像の定着が行われる。定着されて像が固定された被記録材11は排紙トレイ16へ出力される。被記録材が分離された後の感光ドラム1面はクリーニング装置17で転写残りトナー等の残留物が除去されて清浄にされ、繰り返し次の作像に供される。
次に、上記の定着装置15として使用可能な本発明の加熱装置の実施の形態を実施例とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は上記画像形成装置に用いられる、本発明の実施の形態1の加熱装置としての定着装置の断面図である。図2は図1の矢印II方向からみた磁場発生手段の構成図、図3は図2のIII−III線(発熱ローラ21の回転中心軸と励磁コイル36の巻回中心軸36aとを含む面)での矢視断面図である。図4Aは図1の定着装置に用いられる本発明の発熱ローラ21の断面構成図、図4Bは図4Aにおける部分4Bの拡大断面図である。以下、図1〜図4Bを参照して本実施の形態の定着装置と発熱ローラを説明する。
図4A、図4Bにおいて、発熱ローラ21は、表面側から順に離型層27、薄肉の弾性層(第2の弾性層)26、薄肉の導電材よりなる誘導発熱層(以下、単に「発熱層」という)22、断熱性の良好な弾性層23、及び回転軸となる芯材24より構成されている。
図3は図2のIII−III線での矢視断面図で、定着装置全体を横方向からみた断面構成をあらわしている。発熱ローラ21は外径が30mmであり、その最下層である芯材24の両端において軸受け28、28’により側板29、29’に回転可能に支持されている。発熱ローラ21は、図示しない装置本体の駆動手段によって芯材24に一体的に固定された歯車30を介して回転駆動される。
36は磁場発生手段としての励磁コイルであり、発熱ローラ21の外周の円筒面に対向して配置され、表面を絶縁した外径0.15mmの銅線からなる線材を60本束ねた線束を9回周回して形成されている。
励磁コイル36の線束は、発熱ローラ21の円筒面の回転中心軸(図示せず)方向の端部ではその外周面に沿って円弧状に配置され、それ以外の部分では前記円筒面の母線方向に沿って配置されている。また、発熱ローラ21の回転中心軸と直交する断面図である図1に示すように、励磁コイル36の線束は、発熱ローラ21の円筒面を覆うように、発熱ローラ21の回転中心軸を中心軸とする仮想の円筒面上に、重ねることなく(但し、発熱ローラの端部を除く)密着して配置されている。また、発熱ローラ21の回転中心軸を含む断面図である図3に示すように、発熱ローラ21の端部に対向する部分では、励磁コイル36の線束を2列に並べて積み重ねて盛り上がっている。従って、励磁コイル36は、全体として鞍の様な形状に形成されている。ここで、励磁コイル36の巻回中心軸36aは、発熱ローラ21の回転中心軸と略直交し、発熱ローラ21の回転中心軸方向の略中心点を通る直線であり、励磁コイル36は前記巻回中心軸36aに対してほぼ対称に形成されている。線束は表面の接着剤により互いに接着され、図示した形状を保っている。励磁コイル36は発熱ローラ21の外周面から約2mmの間隔を設けて対向している。図1の断面図において、励磁コイル36が発熱ローラ21の外周面と対向する角度範囲は、発熱ローラ21の回転中心軸に対して約180度と広い範囲である。
37は前記励磁コイル36とともに磁場発生手段を構成する背面コアであり、励磁コイル36の巻回中心軸36aを通り、発熱ローラ21の回転中心軸と平行に配置された棒状の中心コア38と、励磁コイル36に対して発熱ローラ21とは反対側に、励磁コイル36と離間して配置された略U字状のU字コア39とからなる。中心コア38とU字コア39とは磁気的に接続されている。図1に示すように、U字コア39は、発熱ローラ21の回転中心軸と励磁コイル36の巻回中心軸36aとを含む面に対して略対称なU字状である。このようなU字コア39は、図2、図3に示すように、発熱ローラ21の回転中心軸方向に離間して複数個配置されている。本実施例では、U字コア39の、発熱ローラ21の回転中心軸方向の幅は10mmで、このようなU字コア39が26mm間隔で合計7個配置されている。U字コア39は、励磁コイル3からの外部に漏れる磁束を捕捉する。
図1に示すように、各U字コア39の両先端は、励磁コイル36と対向しない範囲まで延長され、励磁コイル36を介さずに発熱ローラ21と対向する対向部Fが形成されている。また中心コア38は、励磁コイル36を介さずに発熱ローラ21と対向し、かつ、U字コア39よりも発熱ローラ21側に突出して対向部Nを形成している。突出した中心コア38の対向部Nは、励磁コイル36の巻回中心の中空部内に挿入されている。中心コア38の断面形状は4mm×10mmである。
本実施例では、背面コア37の材料としては、フェライトを用いた。背面コア37の材料としては、フェライトやパーマロイ等の高透磁率で固有抵抗の高い材料が望ましいが、透磁率が多少低くても磁性材であれば用いることができる。
40は厚さが1mmで、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱温度の高い樹脂からなる断熱部材である。
図1において、加圧部材としての加圧ローラ31は、金属軸32の表面にシリコーンゴムよりなる弾性層33を被覆してなる。弾性層は硬度50度(JIS−A)である。加圧ローラ31は発熱ローラ21に対して全体で約200Nの力で圧接されニップ部34を形成している。加圧ローラ31の外径は30mmで、長さは発熱ローラ21とほぼ同一で、その有効長は発熱層22より僅かに長い。
ニップ部34では、発熱ローラ21の弾性層23が圧縮変形し、発熱層22が幅方向(発熱ローラ21の回転中心軸方向)において略均一な圧力で押圧されている。ニップ部34の、被記録材11の走行方向Cに沿った幅Wは約5.5mmである。発熱ローラ21には非常に大きな力が加えられており、その表面の発熱層22の厚さは薄いが、弾性層23を介して中実の芯材24がその圧力を支えているため、回転中心軸に対するたわみ量はわずかに抑えられ、回転中心軸方向において幅Wが略均一なニップ部34が形成されている。さらに、ニップ部34では発熱層22および弾性層23が加圧ローラ31の外周面に沿って凹状に変形しているため、被記録材11がこのニップ部34を通過して出てくるとき、被記録材11の進行方向が発熱ローラ21の外表面となす角度が大きくなり、被記録材11の剥離性が極めてよい。
加圧ローラ31はこの状態で金属軸32の両端を従動軸受け35、35’により回転可能に支持されている。加圧ローラ31の弾性層33の材質は、上記のシリコーンゴムの他に、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や耐熱性ゴムで構成しても良い。また加圧ローラ31の表面には耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA(四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)等の樹脂あるいはゴムを単独あるいは混合で被覆してもよい。熱の放散を防ぐため、加圧ローラ31は熱伝導性の小さい材料で構成されることが望ましい。
図1で41は温度検知センサで、発熱ローラ21の表面に接触し、ニップ部34に至る直前の発熱ローラ21の表面の温度を検知し、図示しない制御回路にフィードバックする。動作時はこれにより励磁回路42の励磁電力を調節することによって、発熱ローラ21のニップ部34直前の表面温度を摂氏170度にコントロールする。本実施例では、ウォームアップ時間を短縮するという目的を達成するために、発熱層22及びこれより外側に設けた弾性層26及び離型層27の熱容量を極力小さく設定している。
以上の構成で発熱ローラ21と加圧ローラ31とを回転させながら励磁回路42により励磁コイル36に20〜50kHzの高周波電流を流す。これによって交番磁束が励磁コイル36を取り巻く中心コア38、U字コア39および励磁コイル36に対向する発熱ローラ21の発熱層22を経由して流れ、この交番磁束により発熱層22に渦電流が発生して発熱ローラ21の表面温度が急速に上昇を始める。発熱ローラ21の表面温度は温度検知センサ41で検知され、所定の170℃に温調される。そして、未定着のトナー像を担持した被記録材11がニップ部34に挿入され、ニップ部34でトナー像と被記録材11とは順次加熱されてトナー像が被記録材11上に定着される。
次に発熱ローラ21の構成について詳しく述べる。
本実施例では芯材24は直径20mmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)で構成した。芯材24の材料としては、耐熱性が有り、機械的強度(回転中心軸方向の曲げ剛性)が強い材料が好ましい。更に、できるだけ芯材24の内部を磁束が通りにくいように、磁気抵抗が高い材料が好ましく、また、漏れ磁束が芯材24内部を通過したとしてもそれによって渦電流が発生しないように、絶縁性の材料であることが好ましい。耐熱性の絶縁材料としてアルミナ等のセラミック材料を用いることもできる。
弾性層23は、低熱伝導性のシリコーンゴムの発泡体よりなり、本実施例では厚さ5mm、硬度45度(ASKER−C)のものを用いている。弾性層23は発泡シリコーンゴムに限るものではないが、適度の弾力性を有することでニップ部34の幅Wを確保し、かつ発熱層22からの熱の拡散を少なくするためには硬度は20〜55度(ASKER−C)のものが望ましい。また、発泡体でない場合は硬度50度(JIS−A)以下のシリコーンゴムを用いることが耐熱性、柔軟性の点から望ましい。
本実施例の発熱層22は、シリコーンゴムを基材として、この中に鱗片状のニッケル片を分散したものを弾性層23上に60μmの厚みで塗布形成したものである。励磁コイル36によって発生された交番磁束はこの発熱層22内のニッケル片を伝って発熱層22内を通過し、それによってニッケル片に渦電流が発生して発熱層22は急速に加熱される。なお、本実施例では発熱層22の基材としてシリコーンゴムを用いたが、これに代えてポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フッ素ゴムのように柔軟性のある耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムを用いることもできる。また、基材中に分散させるフィラーとしては、上記のニッケル片に限定されず、磁性金属の粉体や非磁性金属の粉体を用い、これらを混合または積層して基材中に分散させてもよい。粉体の形状はファイバー状、球状、鱗片状などいずれでも良い。分散させるフィラーとしては交番磁束により渦電流が流れる導電性を有した材料であれば良いことは言うまでもないが、本実施例ではフィラーとして磁性金属であるニッケルを用いた。これにより励磁コイル36によって発生される交番磁束を発熱層22内に導き、励磁コイル36を周回する磁気回路の磁気抵抗を低減し、発熱層22を貫通して他層へ漏れる磁束(漏れ磁束)を低減できるため、効率の良い加熱が可能となる。なお、発熱層22の厚さは10〜200μmが好ましい。
弾性層(第2の弾性層)26は被記録材11との密着をよくするために設けられており、本実施例ではシリコーンゴムよりなる厚さ200μm、硬度20度(JIS−A)の層である。弾性層26の厚さは200μmに限定されるものではなく、50〜500μmの範囲が望ましい。厚すぎると、熱容量が大きくなりすぎて、ウォームアップ時間が遅くなり、薄すぎると被記録材11との密着性の効果が低減する。弾性層26の材質は、シリコーンゴムに限らず、他の耐熱性ゴムや耐熱性樹脂を使用することも可能である。なお、この弾性層26は必ずしも設けなくても支障はないが、トナー像がカラー画像の場合には設けることが望ましい。
離型層27としてはPTFE(四フッ化エチレン)、やPFA(四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素系の樹脂を用いることができ、本実施例では厚さ30μmとした。
本実施例に用いた発熱ローラ21は下記の製造方法によって形成する。弾性層23を発泡成型(表面にスキン層を有することが好ましい)した後、この弾性層23上に導電体フィラーを分散したシリコーンゴムの原液をスプレー法またはディッピング法等により所定の厚みに付与する。その後これを加硫して弾性層23上に発熱層22を形成する。なお、このとき芯材24は発熱層22を形成する前に弾性層23と接着固定されていても良いし、また発熱層22の形成後に芯材24を挿入接着してもかまわない。また、芯材24上に弾性層23を直接成型することも可能である。また、発熱層22は多数回重ね塗りして形成しても良い。弾性層23上に発熱層22を形成した後に弾性層(第2の弾性層)26のシリコーンゴムを発熱層22と同様、発熱層22上に重ね塗りして加硫する。その後、離型層27を、PFAチューブを被せてプライマー層を介して接着、またはPTFEをコーティングし焼成するなどの方法で形成する。なお、それぞれの層間にはそれぞれの材料に合わせたプライマー層を介在させても良い。また、発熱層22の基材にポリイミド樹脂を用いる場合にも上記と同様にポリイミドワニスを弾性層23上に塗工形成する。
本発明では、このように発熱層22を、金属ベルトのようなチューブを弾性層23とは別体として形成するのではなく、弾性層23上に直接形成するため、製造工程が簡素で作業を集約しやすく、安価に製造できるという特徴を有する。
以上に述べた実施の形態1によれば、発熱層22が金属の薄層ではなく柔軟性のある樹脂またはゴムを基材としているために、発熱層22が変形しやすく、幅Wが大きなニップ部34を形成できる。また、発熱層22の繰り返し曲げに対する耐久性が向上する。
また、発熱層22がシリコーンゴムなどの耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムを基材としてこれに導電体フィラーを分散した層であるため、弾性層23上に塗工等で形成しやすく、また柔軟性も高い。
弾性層23が柔軟性と耐熱性に加え高い断熱性を兼ね備えるため発熱ローラ22の温度を急速に昇温できる。
発熱層22が弾性層23上に直接形成されるため、従来のように誘導発熱層として金属の薄層チューブ等を弾性層とは別に作成して、その後、弾性層に金属チューブを被せて形成される発熱ローラに比べて、加工が容易である。また、チューブを接着する場合には、接着のむらがあるとこれがローラ表面の温度むらになり易いが、本発明のように弾性層23上に発熱層22を直接形成すれば接合むらも無くローラの表面温度むらも発生しにくい。
なお、上記の実施の形態においては発熱ローラ21は芯材24上に弾性層23、発熱層22、第2の弾性層26、離型層27を順に備えた層構成となっているが、本発明は必ずしもこの層構成に限定されるものではなく、各層を多層の構成にしたり、また、各層間に接着層を設けたり、各層間に補助的な層を形成したりすることは差し支えない。
(実施の形態2)
図6は、本実施の形態2の発熱ローラ21の表面近傍の部分拡大断面図である。図6において実施の形態1と同一の機能を有する部材には同一の符号を付してそれらについての詳細な説明を省略する。
本実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、発熱ローラ21の発熱層22の構成のみである。
図6に示すように、本実施の形態では、発熱層22は、シリコーンゴムの基材に導電体フィラーとして鱗片状の銀粉を分散させた導電層22aと、同じくシリコーンゴム基材に磁性体フィラーとして鉄の粉体を分散した磁性体層22bとの2層で構成される。励磁コイル36の動作時に励磁コイル36を周回して発生する交番磁束の多くは図6の破線Dで示すように導電層22aを貫通して磁性体層22b内を流れる。これによって導電層22aに渦電流が発生して発熱すると同時に、磁性体層22bにも同様に渦電流が発生して発熱する。導電層22aに分散させるフィラーは固有抵抗ができるだけ小さい材料が好ましく、例えば金、銀、銅、アルミニウム等が望ましい。
導電層22aを磁性体層22bよりも外側に設けると実施の形態1に示した発熱層22を磁性体層単層とした場合より発熱効率を向上させることができる。
また、導電層22aに渦電流が発生し、且つ、これより内周側に磁性体層22bを備えることにより、発熱ローラ21の半径方向に磁性体層22bを貫通して漏れ出す漏れ磁束Eを低減できる。漏れ磁束Eが芯材24に達すると、芯材24が金属材料の場合、芯材24に渦電流が発生して芯材24が発熱するが、本実施の形態では漏れ磁束Eを低減できるので芯材24の発熱量を低減することができる。なお、実施の形態1で説明したように芯材24を絶縁材料で構成すれば芯材24が発熱することはない。しかし、実施の形態1で例示したPPSは機械的強度が低く、アルミナは高価である。本実施の形態によれば、芯材24に達する漏れ磁束Eを低減できるので、芯材24の材料として安価でかつ強度を確保できる一般的な金属材料を用いても、芯材24の発熱を抑えることができる。
このように、本実施の形態によれば、漏れ磁束Eを少なくできるので発熱層22を効率よく発熱させることができる。従って、エネルギーロスを低減できる。また、漏れ磁束Eを低減できることにより、芯材24に達する磁束を低減できる。従って、芯材24として、絶縁材料を用いる必要がなく、一般的な金属材料を用いることができるので、安価で十分な機械的強度を確保できる。更に、芯材24の発熱が抑えられるので、芯材24の軸受け28,28’が加熱されて発生するトラブルも低減できる。
以上に説明した実施の形態は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、その発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱装置の断面図である。
図2は、図1の矢印II方向からみた磁場発生手段の構成図である。
図3は、図2のIII−III線における本発明の実施の形態1に係る加熱装置の断面図である。
図4Aは図1の定着装置に用いられる本発明の実施の形態1に係る発熱ローラの断面図、図4Bは図4Aにおける部分4Bの拡大断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示した断面図である。
図6は、本発明の実施の形態2に係る発熱ローラの表面近傍の部分拡大断面図である。
図7は、従来の誘導加熱定着装置の断面図である。
Claims (10)
- 表面から順に少なくとも離型層、誘導発熱層、弾性層、および芯材を有し、
加圧部材に圧接されてニップ部を形成し、前記ニップ部を通過する被加熱材を昇温させる電磁誘導発熱ローラであって、
前記誘導発熱層が、耐熱性樹脂又は耐熱性ゴムからなる基材に導電体フィラーを分散した層を有することを特徴とする電磁誘導発熱ローラ。 - 前記誘導発熱層が、基材に導電体フィラーを分散した層と、基材に前記導電体フィラーよりも高抵抗の磁性体フィラーを分散した層とが積層されてなる請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラ。
- 前記誘導発熱層の前記基材が、シリコーンゴムからなる請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラ。
- 前記弾性層が発泡シリコーンゴムからなる請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラ。
- 前記誘導発熱層が前記弾性層の表面に塗工または吹き付けにより直接形成されたものである請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラ。
- 前記離型層と前記誘導発熱層との間に第2の弾性層を有する請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラ。
- 少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記離型層を形成する工程とを含む請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラの製造方法。
- 少なくとも、前記弾性層上に前記誘導発熱層を塗工または吹き付けにより形成する工程と、前記誘導発熱層上に前記第2の弾性層を形成する工程と、前記第2の弾性層上に前記離型層を形成する工程とを含む請求項6に記載の電磁誘導発熱ローラの製造方法。
- 請求項1に記載の電磁誘導発熱ローラと、
前記電磁誘導発熱ローラが圧接されて前記ニップ部を形成する加圧ローラと、
磁場を作用させて前記電磁誘導発熱ローラの前記誘導発熱層を誘導発熱させる磁場発生手段とを有し、
前記ニップ部に導入された被加熱材を前記電磁誘導発熱ローラと前記加圧ローラとで加圧搬送することにより前記被加熱材を連続的に加熱することを特徴とする加熱装置。 - 被記録材上にトナー像を形成する画像形成手段と、
請求項9に記載の加熱装置とを備え、
前記画像形成手段が前記被記録材上に形成した未定着のトナー像を前記加熱装置が前記被記録材上に定着させることを特徴とする画像形成装置。
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