本発明は、電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に形成された未定着画像を記録媒体に加熱定着させる定着装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置においては、磁場により発熱体に渦電流を発生させ、この渦電流による発熱体のジュール発熱により、転写紙およびOHPシートなどの記録媒体上に形成された未定着画像を記録媒体に加熱定着している。
従来、この種の定着装置として、鉄、フェライト、パーマロイなどからなる芯材(コア)の周囲にコイルを巻回して構成した磁束発生手段の磁束により、肉厚の薄い磁性体からなるフィルム状のスリーブもしくは無端状ベルトなどの回転移動する発熱体を発熱させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような薄肉の熱容量が小さな発熱体を用いた定着装置は、発熱体を短時間で発熱させることができるので、発熱体が所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
しかしながら、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、発熱体の回転移動方向と直交する幅方向両端部の放熱量が中央部よりも大きくなる。
このため、このような薄肉の発熱体を用いた定着装置においては、発熱体の幅方向両端部の発熱量が所定の定着温度よりも低下して、記録媒体の搬送方向両側部に形成されている未定着画像の加熱不足や定着不良が生じ易くなる。
特許文献1では、このような発熱体の幅方向両端部からの放熱による加熱不足を補うために、コイルが巻かれているコアの幅方向両端部の断面積を大きくすることで発熱体の幅方向両端部に作用する磁束を強めるようにしている。
特開平8−16005号公報
しかしながら、前述したような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、発熱体が薄肉に構成されているため、発熱体の回転移動時における偏心や振動により発熱体とコアとの離間距離が変動し易い。
また、この種の従来の定着装置の発熱体は、磁性体で構成されており、コアとの離間距離が小さくなるに従ってその単位面積あたりの磁束密度が大きくなり、コアとの離間距離が大きくなるに従ってその単位面積あたりの磁束密度が小さくなる。
このため、この種の従来の定着装置においては、発熱体の回転移動時における偏心や振動で発熱体とコアとの離間距離が変動することによって発熱体の発熱量が変化して発熱体に温度ムラが生じ易い。
従って、この種の従来の定着装置では、前記特許文献1記載のようにコイルが巻かれているコアの幅方向両端部の断面積を大きくして発熱体の幅方向両端部に作用する磁束を強めた場合、発熱体の幅方向両端部における発熱ムラがさらに大きくなってしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、発熱体が偏心したり振動したりしても、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができる定着装置を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明の定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性体で構成した発熱体と、前記発熱体の移動方向と直交する幅方向中央部に作用する磁束よりも幅方向両端部に作用する磁束を増強させる磁束増強手段と、を具備する構成を採る。
また、本発明の定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性の発熱体と、を備え、前記磁束発生手段と前記対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される前記発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有する構成を採る。
本発明によれば、発熱体が磁束を透過する非磁性体で構成されているので、発熱体の偏心や振動による発熱体とコアとの離間距離の変動が発熱体の発熱に悪影響を及ぼすことがなく、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができる。
本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態に係る定着装置の基本的な構成を説明するための断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の主要部を図3に示す線分X−Xに沿って破断した概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の主要部を図9に示す線分Y−Yに沿って破断した概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態7に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の主要部を図14に示す線分Z−Zに沿って破断した概略断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
まず、本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザビームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、クリーニング装置113、定着装置200などを具備している。
図1において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位に一様に帯電される。
レーザビームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザビーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位となり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の前記暗電位よりも小さく、前記明電位よりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが、感光ドラム101の表面の前記明電位の部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化され、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が転写された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、上述した画像形成装置100に搭載される定着装置について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る定着装置の基本的な構成を説明するための断面図である。
図2に示すように、この定着装置200は、発熱体としての定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240およびベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図2において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図2に示すように、定着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁束発生手段としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の移動方向に沿って折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210および支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向するフェライトで構成した対向コア233を備えている。
コア232は、センターコア234、サイドコア235、アーチコア236で構成されている。センターコア234は、アーチコア236の中央部に配設(または一体形成)されている。サイドコア235は、一対のフェライトからなり、アーチコア236の両端部にそれぞれ配設(または一体形成)されている。
コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。
励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が30kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、発熱体としての定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210を発熱体とする構成を示しているが、支持ローラ220を発熱体とし、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
この定着装置200は、図2に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231およびコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド237が設けられている。このコイルガイド237は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成される。このコイルガイド237は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図2に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、後述するように、定着ベルト210がコア232と対向コア233との間の磁束に影響を与えないためには、磁束が定着ベルト210を透過する必要がある。このため、定着ベルト210は、銀や銅等の非磁性材料で構成することが好ましい。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、磁束を通し易い非磁性材料の方が好ましい。また、できるだけ渦電流を発生し難い方がよく、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
(実施の形態1)
次に、本発明の実施の形態1に係る定着装置について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の主要部を図3に示す線分X−Xに沿って破断した概略断面図である。
図3および図4に示すように、本実施の形態1に係る定着装置300は、発熱体としての定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240および加圧ローラ250などを備えている。
励磁装置230は、磁束発生手段としての励磁コイル231、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232、定着ベルト210および支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向するフェライトで構成した対向コア233で構成されている。コア232は、センターコア234、サイドコア235、アーチコア236で構成されている。
本実施の形態1に係る定着装置300における定着ベルト210は、非磁性体で構成されている。銅や銀等の非磁性体は10μm程度に薄肉にすることで電気抵抗が高くなって、誘導電流により効果的に発熱する。また、定着ベルト210は非磁性体であるので磁束が透過するようになる。
この定着装置300における対向コア233は、その幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が、その幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されている。
このような対向コア233は、例えば、図3および図4に示すように、そのコア軸2331の中央部にドーナツ状に形成された外径が小さい小径対向コア2332を挿着し、コア軸2331の両端部にドーナツ状に形成された外径が大きい大径対向コア2333を挿着して構成される。
このように、本実施の形態1に係る定着装置300においては、発熱体としての定着ベルト210の移動方向と直交する幅方向中央部に作用する磁束よりも幅方向両端部に作用する磁束を増強させる磁束増強手段として、小径対向コア2332と大径対向コア2333との組み合わせにより対向コア233の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
上述のように、本実施の形態1に係る定着装置300は、対向コア233の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。これにより、定着ベルト210の幅方向両端部の発熱量が増加する。つまり、定着ベルト210の幅方向両端部からの放熱による温度低下を補って、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一化される。
また、定着ベルト210は、磁束が透過するので、定着ベルト210に対して励磁コイル231の反対側に対向コア233を配置できる。これにより、この定着装置300においては、強磁性のフェライトを用いたコア232と対向コア233との間に強い磁束が得られるようになる。
ここで、定着ベルト210は、その回転時の偏心などによりコア232との間隔が変動しやすい。これに対し、コア232と対向コア233は、それぞれ所定の位置に固定されており、相対位置が変化しない。
従って、本実施の形態1に係る定着装置300においては、コア232と対向コア233との間の磁束はほとんど変動せず、かつ定着ベルト210は磁束が透過し磁束に変化を与えないので、定着ベルト210を貫く磁束は変化しない。つまり、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、定着ベルト210は所定の発熱量を安定に保つことができる。
従来例では、コイルの周りに発生する磁束の経路をコアと発熱体で構成しているため、発熱体の位置により磁束が変化していたが、本発明によれば、磁束の経路をコア232と対向コア233で構成しているため、発熱体(定着ベルト210)の位置に関係なく磁束は一定であり、安定な発熱を得ることができる。
このように、本実施の形態1に係る定着装置300においては、コア232と対向コア233の間に非磁性の定着ベルト210を配置し、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくした構成により、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一であり、かつ一定の温度を維持できるので、安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置300は、対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅よりも必要以上に大きくすることなく定着ベルト210の長手方向の温度分布の均一化を図ることができるので、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
また、この定着装置300においては、コイル231の対向位置に面する、対向コア233の両端部2333を大径化しているため、センターコア234の両端部を大径化した場合の構成と比較して、構造上の自由度の増加を図ることができ、装置構成が容易となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る定着装置について説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る定着装置の主要部の構成を示す概略平面図である。
本実施の形態2に係る定着装置500は、前記磁束増強手段として、コア232の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、図5に示すように、センターコア234(図4参照)の幅方向両端部のセンターコア2341の断面積を、幅方向中央部のセンターコア2342の断面積よりも大きくしてコア232の幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置500は、コア232の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置500の定着ベルト210(図4参照)は、実施の形態1に係る定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置500は、実施の形態1に係る定着装置300(図3参照)と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置500は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
なお、この定着装置500では、幅方向両端部のセンターコア2341を定着ベルト210の移動方向に大きくした例で説明したが、これに限らず、幅方向両端部のセンターコア2341を定着ベルト210の移動方向と直交する方向に大きくしても同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る定着装置について説明する。図6は、本発明の実施の形態3に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
図6に示すように、本実施の形態3に係る定着装置600は、前記磁束増強手段として、コア232と対向コア233との幅方向両端部の間隔G1を幅方向中央部の間隔G2よりも小さくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、センターコア234の幅方向両端部のセンターコア2341を、幅方向中央部のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設して幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置600は、コア232と対向コア233との幅方向両端部の間隔G1が幅方向中央部の間隔G2よりも小さくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置600の定着ベルト210は、実施の形態1に係る定着装置300の定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置600は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置600は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る定着装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態4に係る定着装置700は、前記磁束増強手段として、サイドコア235の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、図7に示すように、サイドコア235の幅方向両端部に磁束増強用の補助サイドコア2351を配設し、サイドコア235の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくしてコア232の幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置700は、サイドコア235の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置700の定着ベルト210は、実施の形態1に係る定着装置300の定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置700は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、また、この定着装置700は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る定着装置について説明する。図8は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図9は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図である。図10は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の主要部を図9に示す線分Y−Yに沿って破断した概略断面図である。
図8、図9および図10に示すように、本実施の形態5に係る定着装置800は、定着ベルト210の小サイズ紙における非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体801を対向コア233の外周の一部に配設した構成を採っている。
本例の磁気遮蔽体801は、例えば厚み1mmの銅などの導電性部材からなり、図示しない駆動手段により対向コア233が回転することにより、図8に示すセンターコア234と対向コア233との間の磁路を遮蔽する遮蔽位置と、図9に示す前記磁路から退避する退避位置とに変位可能となっている。
ここで、センターコア234は、図10に示すように、最大サイズ紙幅(例えばA3サイズの記録紙幅)Lmaxに対応する長さに形成されている。また、磁気遮蔽体801は、定着ベルト210と加圧ローラ250とのニップ部に小サイズ紙幅(例えばA4サイズの記録紙幅)Lminの記録紙109を通紙した場合における定着ベルト210の非通紙領域に作用する磁束を遮蔽することができる長さを有している。
本例の定着装置800においては、対向コア233を回転させるだけで、センターコア234と対向コア233との間の磁路の長手方向の幅を、最大サイズ紙幅Lmaxと小サイズ紙幅Lminとに切り替えられるので、定着ベルト210の発熱幅を通紙される記録紙109の紙幅に容易に対応させることができる。
ところで、上述のような磁気遮蔽体801を有する定着装置800では、最大サイズ紙幅の記録紙109が通紙される場合(図9)、支持ローラ220から磁気遮蔽体801への熱伝導があるため、磁気遮蔽体801と対応する通紙領域の両端の温度が、磁気遮蔽体801と対応しない通紙領域の中央の温度よりも低下する傾向がある。
そこで、本例の定着装置800においては、図10に示すように、磁気遮蔽体801と対向する部位のセンターコア2341が、磁気遮蔽体801と対向しない部位のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設されている。
このように、本例の定着装置800では、磁気遮蔽体801の位置に対応した部位のコア232と対向コア233との間隔を狭くしているので、磁気遮蔽体801の位置に対応した部位の定着ベルト210の発熱量が増し、磁気遮蔽体801による温度低下が補われて、定着ベルト210の発熱温度の均一化が可能になる。
なお、本発明の実施の形態5では、磁気遮蔽体801による温度低下を補うために、センターコア2341を対向コア233に接近させて磁束を増強した例で説明したが、これに限らず、実施の形態1から実施の形態3のいずれかの構成における磁束の増強でもよい。
上記各実施の形態に係る第1の態様に係る定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性体からなる発熱体と、前記発熱体の移動方向と直交する幅方向中央部の磁束よりも前記幅方向両端部の磁束を増強させる磁束増強手段とを具備する構成を採る。
上記各実施の形態に係る第2の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアに前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体が配設され、前記磁束増強手段は、前記磁気遮蔽体を配設した部位の磁束を増強させる構成を採る。
上記各実施の形態に係る第3の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁束増強手段は、前記対向コアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第4の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コアは、前記コイルの中心部に配設されたセンターコアを有し、前記磁束増強手段は、前記センターコアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第5の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁束増強手段は、前記コアと前記対向コアとの幅方向両端部の間隔を幅方向中央部の間隔よりも小さくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第6の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コアは、前記コイルの両側部に配設された一対のサイドコアを有し、前記磁束増強手段は、前記サイドコアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第7の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体は、環状に形成され、前記コイルは、前記発熱体の外周部に配置されている構成を採る。
上記各実施の形態の第8の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルを前記発熱体に対向させた状態で、周波数30kHzにおける前記コイルのインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下である構成を採る。
上記各実施の形態の第9の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルに印加される電流の周波数が20kHz〜100kHzである構成を採る。
上記各実施の形態の第10の態様に係る画像形成装置は、記録媒体上に形成された未定着画像を定着する定着手段を備えた画像形成装置であって、前記定着手段として、上記構成の定着装置を用いる構成を採る。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る定着装置について説明する。図11は、本発明の実施の形態6に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態6に係る定着装置900は、磁束発生手段としての励磁コイル231が巻回されているコア232と対向コア233とが、最大サイズ(例えば、A3サイズ)の記録紙109が通紙される発熱体としての定着ベルト210の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有している。
具体的には、図11に示すように、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax以上の長さに構成されている。
本実施の形態6に係る定着装置900における発熱体としての定着ベルト210は、銅や銀等の非磁性材料を10μm程度に薄肉にすることで電気抵抗が高くなって、誘導電流により効果的に発熱する。また、非磁性であるので磁束が定着ベルト210を透過するようになる。この定着ベルト210は、磁束が透過するので、定着ベルト210に対して励磁コイル231の反対側に対向コア233を配置できる。これにより、この定着装置900においては、強磁性のフェライトを用いたコア232と対向コア233との間に強い磁束が得られるようになる。
ここで、定着ベルト210は、その回転時の偏心などによりコア232との間隔が変動しやすい。これに対し、コア232と対向コア233は、それぞれ所定の位置に固定されており、相対位置が変化しない。
従って、本実施の形態6に係る定着装置900においては、コア232と対向コア233との間の磁束はほとんど変動せず、かつ定着ベルト210は磁束が透過し磁束に影響を与えないので、定着ベルト210を貫く磁束は変化しない。つまり、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、定着ベルト210は所定の発熱量を安定に保つことができる。
従来例では、コイルの周りに発生する磁束の経路をコアと発熱体で構成しているため、発熱体の位置により磁束が変化していたが、本発明によれば、磁束の経路をコアと対向コアで構成しているため、発熱体の位置に関係なく磁束は一定であり、安定な発熱を得ることができる。
また、定着ベルト210の幅方向両端部は、放熱の影響により温度低下が生じるが、本実施の形態1に係る定着装置900は、図11に示したように、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxよりも、例えば片側10mm以上長くなるように構成されている。これにより、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax内の温度は放熱の影響を受けないので、所定範囲の定着温度を保つことができるようになる。ここで、所定範囲の定着温度とは、例えば、未定着トナー像111がカラー画像の場合には170±5℃、モノクロ画像の場合には190±10℃である。
上述のように、本実施の形態6に係る定着装置900においては、コア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax以上の長さに構成されているので、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax内の温度分布が均一に保たれるようになり安定した定着性を得られるようになる。
また、本実施の形態6に係る定着装置900においては、定着ベルト210が磁束を透過し磁束に影響を与えることがなく、コア232と対向コア233との間の磁束がほとんど変動しないので、定着ベルト210の偏心や振動によりコア232と定着ベルト210との間隔が変化しても、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7に係る定着装置について説明する。図12は、本発明の実施の形態7に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
図12に示すように、本実施の形態7に係る定着装置1000は、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1が、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxと同程度の長さに構成されている。
また、本実施の形態7に係る定着装置1000は、対向コア233の幅方向の長さL2が、コア232の長さL1よりも長く形成されている。または、対向コア233の幅方向の長さL2が、励磁コイル231の幅方向の内径寸法(以下、これを「コイルの内寸」という)L3よりも長く形成されている。
このように、本実施の形態2に係る定着装置1000は、対向コア233の幅方向の長さL2が、コア232の長さL1またはコイルの内寸L3よりも長く形成されているので、励磁コイル231の折り返し部(幅方向の両端部)に対応する部位の定着ベルト210の発熱量が増加する。
これにより、本実施の形態2に係る定着装置1000においては、定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を補うことができるので、コア232またはコイルの内寸L3を定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxとほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の小型化が可能となる。
また、この定着装置1000の定着ベルト210は、実施の形態1、6に係る定着ベルト210と同様、磁束が透過する薄肉の非磁性体で構成されている。従って、この定着装置1000においては、定着ベルト210の偏心や振動によりコア232と定着ベルト210との間隔が変化しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8に係る定着装置について説明する。図13は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図14は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の動作態様を示す概略断面図である。図15は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の主要部を図14に示す線分Z−Zに沿って破断した概略断面図である。
図13、図14および図15に示すように、本実施の形態8に係る定着装置1100は、定着ベルト210の小サイズ紙における非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体1101を対向コア233の外周の一部に配設した構成を採っている。
本例の磁気遮蔽体1101は、例えば厚み1mmの銅などの導電性部材からなる。磁気遮蔽体1101は、表皮深さ以上の十分な厚みを有しているので、電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束を遮蔽することができる。
また、磁気遮蔽体1101は、図示しない駆動手段により対向コア233が回転することにより、図13に示すセンターコア234と対向コア233との間の磁路を遮蔽する遮蔽位置と、図14に示す前記磁路から退避する退避位置とに変位可能となっている。
ここで、センターコア234は、図15に示すように、最大サイズ紙幅(例えばA3サイズの記録紙幅)Lmaxに対応する長さに形成されている。また、磁気遮蔽体1101は、定着ベルト210と加圧ローラ250とのニップ部に小サイズ紙幅(例えばA4サイズの記録紙幅)Lminの記録紙109を通紙した場合における定着ベルト210の非通紙領域に作用する磁束を遮蔽することができる長さを有している。
本例の定着装置1100においては、対向コア233を回転させるだけで、センターコア234と対向コア233との間の磁路の長手方向の幅を、最大サイズ紙幅Lmaxと小サイズ紙幅Lminとに切り替えられるので、定着ベルト210の発熱幅を通紙される記録紙109の紙幅に容易に対応させることができる。
ところで、上述のような磁気遮蔽体1101を有する定着装置1100では、最大サイズ紙幅Lmaxの記録紙109が通紙される場合(図14)、支持ローラ220から磁気遮蔽体1101への熱伝導があるため、磁気遮蔽体1101と対応する通紙領域の両端の温度が、磁気遮蔽体1101と対応しない通紙領域の中央の温度よりも低下する傾向がある。
そこで、本例の定着装置1100においては、図15に示すように、磁気遮蔽体1101と対向する部位のセンターコア2341が、磁気遮蔽体1101と対向しない部位のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設されている。
このように、本例の定着装置1100では、磁気遮蔽体1101の位置に対応した部位のコア232と対向コア233との間隔を狭くしているので、磁気遮蔽体1101の位置に対応した部位の定着ベルト210の発熱量が増し、磁気遮蔽体1101による温度低下が補われて、定着ベルト210の温度の均一化が可能になる。
上述のように、本発明の実施の形態6から8に係る定着装置900、1000、1100は、コア232と対向コア233とが、最大サイズの記録紙109が通紙される定着ベルト210の最大通紙領域Wmaxを所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有しているので、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
また、本発明の実施の形態6から8に係る定着装置900、1000、1100は、定着ベルト210の偏心や振動による定着ベルト210とコア232との離間距離の変動が定着ベルト210の発熱に悪影響を及ぼすことがない。
このように実施の形態6から8の定着装置900、1000、1100は、発熱体の回転移動時における偏心や振動で発熱体とコアとの離間距離が変動することによって発熱体の発熱量が変化して発熱体に温度ムラが生じ易い従来の定着装置とは異なる。つまり、実施の形態6から8の定着装置900、1000、1100は、発熱体の偏心や振動による発熱体の発熱ムラおよび発熱体の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えて、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるものとなっている。
実施の形態6〜8の第1の態様に係る定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性の発熱体と、を備え、前記磁束発生手段と前記対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される前記発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有する構成を採る。また、実施の形態6〜8の第2の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体の移動方向に直交する幅方向の前記コアと前記対向コアとの長さが、前記発熱体の最大通紙領域幅以上である構成としてもよい。さらに、実施の形態6〜8の第3態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアの前記幅方向の長さが、前記コアよりも長く形成されているものとしてよい。さらに、実施の形態6〜8の第4の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアの前記幅方向の長さが、前記コイルの前記幅方向の内径寸法よりも長く形成されている構成としてもよい。
さらに、実施の形態6〜8の第5の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアに、前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体を配設した構成としてもよい。また、実施の形態6〜8の第6の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁気遮蔽体は非磁性の導電性材料で構成されているものとしてもよい。また、実施の形態6〜8の第7の態様に係る定着装置は、実施の形態6〜8の第6の態様の構成において、前記磁気遮蔽体が配設された部位に対応する前記コアと前記対向コアの間隔は、前記磁気遮蔽体が配設されていない部位に対応する前記コアと前記対向コアの間隔よりも小さい構成としてもよい。
また、実施の形態6〜8の第8の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体は、環状に形成され、前記コイルは、前記発熱体の外周部に配置されている構成としてもよい。さらに、実施の形態6〜8の第9の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルを前記発熱体に対向させた状態で、周波数30kHzにおける前記コイルのインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下である構成としてよい。
また、実施の形態6〜8の第10の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルに印加される電流の周波数が20kHz〜100kHzである構成としてもよい。
また、実施の形態6〜8の第11の態様に係る画像形成装置は、記録媒体上に形成された未定着画像を定着する定着手段を備えた画像形成装置であって、前記定着手段として、実施の形態6〜8の第1の態様から第10の態様のいずれかに記載の定着装置を用いる構成としてもよい。
実施の形態6から8の態様によれば、磁束発生手段と対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有しているので、発熱体の最大通紙領域の温度を均一かつ安定に保つことができる。また、発熱体が磁束を透過する薄肉の非磁性体で構成されているので、発熱体の偏心や振動による発熱体とコアとの離間距離の変動が発熱体の発熱に悪影響を及ぼすことがない。
実施の形態6から8の態様に係る定着装置は、発熱体の偏心や振動による発熱体の発熱ムラ、および発熱体の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えて、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置の定着装置として有用となる。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、発熱体としての定着ベルト210が環状に形成され、励磁コイル231が定着ベルト210の外周部に配置されているので、定着ベルト210の交換やメンテナンスの作業効率が向上する。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、励磁コイル231を定着ベルト210に対向させた状態で、周波数30kHzにおける励磁コイル231のインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下であることが好ましい。これにより、励磁コイル231の励磁回路として、汎用性のある安価な回路を用いることができる。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、励磁コイル231に印加される電流が、周波数20kHz〜100kHzであることが好ましい。これにより、励磁コイル231の電源のロスを小さく抑えることができ稼働効率が向上する。
本明細書は、2004年11月18日出願の特願2004−334996及び2004年11月19日出願の特願2004−336529に基づく。これらの内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、発熱体が偏心したり振動したりして発熱体とコアとの離間距離が変動しても、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置の定着装置として有用である。
本発明は、電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に形成された未定着画像を記録媒体に加熱定着させる定着装置に関し、特に電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置においては、磁場により発熱体に渦電流を発生させ、この渦電流による発熱体のジュール発熱により、転写紙およびOHPシートなどの記録媒体上に形成された未定着画像を記録媒体に加熱定着している。
従来、この種の定着装置として、鉄、フェライト、パーマロイなどからなる芯材(コア)の周囲にコイルを巻回して構成した磁束発生手段の磁束により、肉厚の薄い磁性体からなるフィルム状のスリーブもしくは無端状ベルトなどの回転移動する発熱体を発熱させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような薄肉の熱容量が小さな発熱体を用いた定着装置は、発熱体を短時間で発熱させることができるので、発熱体が所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
しかしながら、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、発熱体の回転移動方向と直交する幅方向両端部の放熱量が中央部よりも大きくなる。
このため、このような薄肉の発熱体を用いた定着装置においては、発熱体の幅方向両端部の発熱量が所定の定着温度よりも低下して、記録媒体の搬送方向両側部に形成されている未定着画像の加熱不足や定着不良が生じ易くなる。
特許文献1では、このような発熱体の幅方向両端部からの放熱による加熱不足を補うために、コイルが巻かれているコアの幅方向両端部の断面積を大きくすることで発熱体の幅方向両端部に作用する磁束を強めるようにしている。
特開平8−16005号公報
しかしながら、前述したような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、発熱体が薄肉に構成されているため、発熱体の回転移動時における偏心や振動により発熱体とコアとの離間距離が変動し易い。
また、この種の従来の定着装置の発熱体は、磁性体で構成されており、コアとの離間距離が小さくなるに従ってその単位面積あたりの磁束密度が大きくなり、コアとの離間距離が大きくなるに従ってその単位面積あたりの磁束密度が小さくなる。
このため、この種の従来の定着装置においては、発熱体の回転移動時における偏心や振動で発熱体とコアとの離間距離が変動することによって発熱体の発熱量が変化して発熱体に温度ムラが生じ易い。
従って、この種の従来の定着装置では、前記特許文献1記載のようにコイルが巻かれているコアの幅方向両端部の断面積を大きくして発熱体の幅方向両端部に作用する磁束を強めた場合、発熱体の幅方向両端部における発熱ムラがさらに大きくなってしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、発熱体が偏心したり振動したりしても、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができる定着装置を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明の定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性体で構成した発熱体と、前記発熱体の移動方向と直交する幅方向中央部に作用する磁束よりも幅方向両端部に作用する磁束を増強させる磁束増強手段と、を具備する構成を採る。
また、本発明の定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性の発熱体と、を備え、前記磁束発生手段と前記対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される前記発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有する構成を採る。
本発明によれば、発熱体が磁束を透過する非磁性体で構成されているので、発熱体の偏心や振動による発熱体とコアとの離間距離の変動が発熱体の発熱に悪影響を及ぼすことがなく、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
まず、本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザビームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、クリーニング装置113、定着装置200などを具備している。
図1において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位に一様に帯電される。
レーザビームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザビーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位となり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の前記暗電位よりも小さく、前記明電位よりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが、感光ドラム101の表面の前記明電位の部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化され、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が転写された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、上述した画像形成装置100に搭載される定着装置について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る定着装置の基本的な構成を説明するための断面図である。
図2に示すように、この定着装置200は、発熱体としての定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240およびベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図2において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図2に示すように、定着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁束発生手段としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の移動方向に沿って折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210および支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向するフェライトで構成した対向コア233を備えている。
コア232は、センターコア234、サイドコア235、アーチコア236で構成されている。センターコア234は、アーチコア236の中央部に配設(または一体形成)されている。サイドコア235は、一対のフェライトからなり、アーチコア236の両端部にそれぞれ配設(または一体形成)されている。
コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。
励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が30kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、発熱体としての定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210を発熱体とする構成を示しているが、支持ローラ220を発熱体とし、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
この定着装置200は、図2に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231およびコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド237が設けられている。このコイルガイド237は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成される。このコイルガイド237は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図2に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、後述するように、定着ベルト210がコア232と対向コア233との間の磁束に影響を与えないためには、磁束が定着ベルト210を透過する必要がある。このため、定着ベルト210は、銀や銅等の非磁性材料で構成することが好ましい。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、磁束を通し易い非磁性材料の方が好ましい。また、できるだけ渦電流を発生し難い方がよく、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
(実施の形態1)
次に、本発明の実施の形態1に係る定着装置について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る定着装置の主要部を図3に示す線分X−Xに沿って破断した概略断面図である。
図3および図4に示すように、本実施の形態1に係る定着装置300は、発熱体としての定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240および加圧ローラ250などを備えている。
励磁装置230は、磁束発生手段としての励磁コイル231、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232、定着ベルト210および支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向するフェライトで構成した対向コア233で構成されている。コア232は、センターコア234、サイドコア235、アーチコア236で構成されている。
本実施の形態1に係る定着装置300における定着ベルト210は、非磁性体で構成されている。銅や銀等の非磁性体は10μm程度に薄肉にすることで電気抵抗が高くなって、誘導電流により効果的に発熱する。また、定着ベルト210は非磁性体であるので磁束が透過するようになる。
この定着装置300における対向コア233は、その幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が、その幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されている。
このような対向コア233は、例えば、図3および図4に示すように、そのコア軸2331の中央部にドーナツ状に形成された外径が小さい小径対向コア2332を挿着し、コア軸2331の両端部にドーナツ状に形成された外径が大きい大径対向コア2333を挿着して構成される。
このように、本実施の形態1に係る定着装置300においては、発熱体としての定着ベルト210の移動方向と直交する幅方向中央部に作用する磁束よりも幅方向両端部に作用する磁束を増強させる磁束増強手段として、小径対向コア2332と大径対向コア2333との組み合わせにより対向コア233の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
上述のように、本実施の形態1に係る定着装置300は、対向コア233の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。これにより、定着ベルト210の幅方向両端部の発熱量が増加する。つまり、定着ベルト210の幅方向両端部からの放熱による温度低下を補って、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一化される。
また、定着ベルト210は、磁束が透過するので、定着ベルト210に対して励磁コイル231の反対側に対向コア233を配置できる。これにより、この定着装置300においては、強磁性のフェライトを用いたコア232と対向コア233との間に強い磁束が得られるようになる。
ここで、定着ベルト210は、その回転時の偏心などによりコア232との間隔が変動しやすい。これに対し、コア232と対向コア233は、それぞれ所定の位置に固定されており、相対位置が変化しない。
従って、本実施の形態1に係る定着装置300においては、コア232と対向コア233との間の磁束はほとんど変動せず、かつ定着ベルト210は磁束が透過し磁束に変化を与えないので、定着ベルト210を貫く磁束は変化しない。つまり、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、定着ベルト210は所定の発熱量を安定に保つことができる。
従来例では、コイルの周りに発生する磁束の経路をコアと発熱体で構成しているため、発熱体の位置により磁束が変化していたが、本発明によれば、磁束の経路をコア232と対向コア233で構成しているため、発熱体(定着ベルト210)の位置に関係なく磁束は一定であり、安定な発熱を得ることができる。
このように、本実施の形態1に係る定着装置300においては、コア232と対向コア233の間に非磁性の定着ベルト210を配置し、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくした構成により、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一であり、かつ一定の温度を維持できるので、安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置300は、対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅よりも必要以上に大きくすることなく定着ベルト210の長手方向の温度分布の均一化を図ることができるので、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
また、この定着装置300においては、コイル231の対向位置に面する、対向コア233の両端部2333を大径化しているため、センターコア234の両端部を大径化した場合の構成と比較して、構造上の自由度の増加を図ることができ、装置構成が容易となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る定着装置について説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る定着装置の主要部の構成を示す概略平面図である。
本実施の形態2に係る定着装置500は、前記磁束増強手段として、コア232の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、図5に示すように、センターコア234(図4参照)の幅方向両端部のセンターコア2341の断面積を、幅方向中央部のセンターコア2342の断面積よりも大きくしてコア232の幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置500は、コア232の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置500の定着ベルト210(図4参照)は、実施の形態1に係る定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置500は、実施の形態1に係る定着装置300(図3参照)と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置500は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
なお、この定着装置500では、幅方向両端部のセンターコア2341を定着ベルト210の移動方向に大きくした例で説明したが、これに限らず、幅方向両端部のセンターコア2341を定着ベルト210の移動方向と直交する方向に大きくしても同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る定着装置について説明する。図6は、本発明の実施の形態3に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
図6に示すように、本実施の形態3に係る定着装置600は、前記磁束増強手段として、コア232と対向コア233との幅方向両端部の間隔G1を幅方向中央部の間隔G2よりも小さくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、センターコア234の幅方向両端部のセンターコア2341を、幅方向中央部のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設して幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置600は、コア232と対向コア233との幅方向両端部の間隔G1が幅方向中央部の間隔G2よりも小さくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置600の定着ベルト210は、実施の形態1に係る定着装置300の定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置600は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置600は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る定着装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態4に係る定着装置700は、前記磁束増強手段として、サイドコア235の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして幅方向両端部の磁束を増強させる構成を採っている。
すなわち、本例では、図7に示すように、サイドコア235の幅方向両端部に磁束増強用の補助サイドコア2351を配設し、サイドコア235の幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくしてコア232の幅方向両端部の磁束を増強させるように構成している。
この定着装置700は、サイドコア235の幅方向両端部(長手方向両端部)の断面積が幅方向中央部の断面積よりも大きくなるように構成されているので、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくすることができる。
また、この定着装置700の定着ベルト210は、実施の形態1に係る定着装置300の定着ベルト210と同様、磁束が透過する非磁性体で構成されており、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の所定の発熱量を安定に保つことができる。
また、この定着装置700は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、定着ベルト210の幅方向両端部に作用する磁束を大きくして定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えるようにしているので、定着ベルト210の長手方向の温度分布が均一になり安定した定着性を得られるようになる。
また、この定着装置700は、コア232および対向コア233の幅方向の長さを最大サイズの紙幅とほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の大型化を回避することができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る定着装置について説明する。図8は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図9は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図である。図10は、本発明の実施の形態5に係る定着装置の主要部を図9に示す線分Y−Yに沿って破断した概略断面図である。
図8、図9および図10に示すように、本実施の形態5に係る定着装置800は、定着ベルト210の小サイズ紙における非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体801を対向コア233の外周の一部に配設した構成を採っている。
本例の磁気遮蔽体801は、例えば厚み1mmの銅などの導電性部材からなり、図示しない駆動手段により対向コア233が回転することにより、図8に示すセンターコア234と対向コア233との間の磁路を遮蔽する遮蔽位置と、図9に示す前記磁路から退避する退避位置とに変位可能となっている。
ここで、センターコア234は、図10に示すように、最大サイズ紙幅(例えばA3サイズの記録紙幅)Lmaxに対応する長さに形成されている。また、磁気遮蔽体801は、定着ベルト210と加圧ローラ250とのニップ部に小サイズ紙幅(例えばA4サイズの記録紙幅)Lminの記録紙109を通紙した場合における定着ベルト210の非通紙領域に作用する磁束を遮蔽することができる長さを有している。
本例の定着装置800においては、対向コア233を回転させるだけで、センターコア234と対向コア233との間の磁路の長手方向の幅を、最大サイズ紙幅Lmaxと小サイズ紙幅Lminとに切り替えられるので、定着ベルト210の発熱幅を通紙される記録紙109の紙幅に容易に対応させることができる。
ところで、上述のような磁気遮蔽体801を有する定着装置800では、最大サイズ紙幅の記録紙109が通紙される場合(図9)、支持ローラ220から磁気遮蔽体801への熱伝導があるため、磁気遮蔽体801と対応する通紙領域の両端の温度が、磁気遮蔽体801と対応しない通紙領域の中央の温度よりも低下する傾向がある。
そこで、本例の定着装置800においては、図10に示すように、磁気遮蔽体801と対向する部位のセンターコア2341が、磁気遮蔽体801と対向しない部位のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設されている。
このように、本例の定着装置800では、磁気遮蔽体801の位置に対応した部位のコア232と対向コア233との間隔を狭くしているので、磁気遮蔽体801の位置に対応した部位の定着ベルト210の発熱量が増し、磁気遮蔽体801による温度低下が補われて、定着ベルト210の発熱温度の均一化が可能になる。
なお、本発明の実施の形態5では、磁気遮蔽体801による温度低下を補うために、センターコア2341を対向コア233に接近させて磁束を増強した例で説明したが、これに限らず、実施の形態1から実施の形態3のいずれかの構成における磁束の増強でもよい。
上記各実施の形態に係る第1の態様に係る定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性体からなる発熱体と、前記発熱体の移動方向と直交する幅方向中央部の磁束よりも前記幅方向両端部の磁束を増強させる磁束増強手段とを具備する構成を採る。
上記各実施の形態に係る第2の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアに前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体が配設され、前記磁束増強手段は、前記磁気遮蔽体を配設した部位の磁束を増強させる構成を採る。
上記各実施の形態に係る第3の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁束増強手段は、前記対向コアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第4の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コアは、前記コイルの中心部に配設されたセンターコアを有し、前記磁束増強手段は、前記センターコアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第5の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁束増強手段は、前記コアと前記対向コアとの幅方向両端部の間隔を幅方向中央部の間隔よりも小さくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第6の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コアは、前記コイルの両側部に配設された一対のサイドコアを有し、前記磁束増強手段は、前記サイドコアの幅方向両端部の断面積を幅方向中央部の断面積よりも大きくして前記幅方向両端部の磁束を増強させる構成からなる。
上記各実施の形態の第7の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体は、環状に形成され、前記コイルは、前記発熱体の外周部に配置されている構成を採る。
上記各実施の形態の第8の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルを前記発熱体に対向させた状態で、周波数30kHzにおける前記コイルのインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下である構成を採る。
上記各実施の形態の第9の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルに印加される電流の周波数が20kHz〜100kHzである構成を採る。
上記各実施の形態の第10の態様に係る画像形成装置は、記録媒体上に形成された未定着画像を定着する定着手段を備えた画像形成装置であって、前記定着手段として、上記構成の定着装置を用いる構成を採る。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る定着装置について説明する。図11は、本発明の実施の形態6に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
本実施の形態6に係る定着装置900は、磁束発生手段としての励磁コイル231が巻回されているコア232と対向コア233とが、最大サイズ(例えば、A3サイズ)の記録紙109が通紙される発熱体としての定着ベルト210の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有している。
具体的には、図11に示すように、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax以上の長さに構成されている。
本実施の形態6に係る定着装置900における発熱体としての定着ベルト210は、銅や銀等の非磁性材料を10μm程度に薄肉にすることで電気抵抗が高くなって、誘導電流により効果的に発熱する。また、非磁性であるので磁束が定着ベルト210を透過するようになる。この定着ベルト210は、磁束が透過するので、定着ベルト210に対して励磁コイル231の反対側に対向コア233を配置できる。これにより、この定着装置900においては、強磁性のフェライトを用いたコア232と対向コア233との間に強い磁束が得られるようになる。
ここで、定着ベルト210は、その回転時の偏心などによりコア232との間隔が変動しやすい。これに対し、コア232と対向コア233は、それぞれ所定の位置に固定されており、相対位置が変化しない。
従って、本実施の形態6に係る定着装置900においては、コア232と対向コア233との間の磁束はほとんど変動せず、かつ定着ベルト210は磁束が透過し磁束に影響を与えないので、定着ベルト210を貫く磁束は変化しない。つまり、定着ベルト210が回転してコア232と定着ベルト210との間隔が変動しても、定着ベルト210は所定の発熱量を安定に保つことができる。
従来例では、コイルの周りに発生する磁束の経路をコアと発熱体で構成しているため、発熱体の位置により磁束が変化していたが、本発明によれば、磁束の経路をコアと対向コアで構成しているため、発熱体の位置に関係なく磁束は一定であり、安定な発熱を得ることができる。
また、定着ベルト210の幅方向両端部は、放熱の影響により温度低下が生じるが、本実施の形態1に係る定着装置900は、図11に示したように、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxよりも、例えば片側10mm以上長くなるように構成されている。これにより、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax内の温度は放熱の影響を受けないので、所定範囲の定着温度を保つことができるようになる。ここで、所定範囲の定着温度とは、例えば、未定着トナー像111がカラー画像の場合には170±5℃、モノクロ画像の場合には190±10℃である。
上述のように、本実施の形態6に係る定着装置900においては、コア232の長さL1と対向コア233の長さL2とが、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax以上の長さに構成されているので、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmax内の温度分布が均一に保たれるようになり安定した定着性を得られるようになる。
また、本実施の形態6に係る定着装置900においては、定着ベルト210が磁束を透過し磁束に影響を与えることがなく、コア232と対向コア233との間の磁束がほとんど変動しないので、定着ベルト210の偏心や振動によりコア232と定着ベルト210との間隔が変化しても、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7に係る定着装置について説明する。図12は、本発明の実施の形態7に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図である。
図12に示すように、本実施の形態7に係る定着装置1000は、定着ベルト210の移動方向に直交する幅方向のコア232の長さL1が、定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxと同程度の長さに構成されている。
また、本実施の形態7に係る定着装置1000は、対向コア233の幅方向の長さL2が、コア232の長さL1よりも長く形成されている。または、対向コア233の幅方向の長さL2が、励磁コイル231の幅方向の内径寸法(以下、これを「コイルの内寸」という)L3よりも長く形成されている。
このように、本実施の形態2に係る定着装置1000は、対向コア233の幅方向の長さL2が、コア232の長さL1またはコイルの内寸L3よりも長く形成されているので、励磁コイル231の折り返し部(幅方向の両端部)に対応する部位の定着ベルト210の発熱量が増加する。
これにより、本実施の形態2に係る定着装置1000においては、定着ベルト210の幅方向両端部の放熱による温度低下を補うことができるので、コア232またはコイルの内寸L3を定着ベルト210の最大通紙領域幅Wmaxとほぼ同じ長さにすることができ、装置本体の小型化が可能となる。
また、この定着装置1000の定着ベルト210は、実施の形態1、6に係る定着ベルト210と同様、磁束が透過する薄肉の非磁性体で構成されている。従って、この定着装置1000においては、定着ベルト210の偏心や振動によりコア232と定着ベルト210との間隔が変化しても、コア232と対向コア233の間の磁束はほとんど変動せず、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8に係る定着装置について説明する。図13は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図14は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の動作態様を示す概略断面図である。図15は、本発明の実施の形態8に係る定着装置の主要部を図14に示す線分Z−Zに沿って破断した概略断面図である。
図13、図14および図15に示すように、本実施の形態8に係る定着装置1100は、定着ベルト210の小サイズ紙における非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体1101を対向コア233の外周の一部に配設した構成を採っている。
本例の磁気遮蔽体1101は、例えば厚み1mmの銅などの導電性部材からなる。磁気遮蔽体1101は、表皮深さ以上の十分な厚みを有しているので、電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束を遮蔽することができる。
また、磁気遮蔽体1101は、図示しない駆動手段により対向コア233が回転することにより、図13に示すセンターコア234と対向コア233との間の磁路を遮蔽する遮蔽位置と、図14に示す前記磁路から退避する退避位置とに変位可能となっている。
ここで、センターコア234は、図15に示すように、最大サイズ紙幅(例えばA3サイズの記録紙幅)Lmaxに対応する長さに形成されている。また、磁気遮蔽体1101は、定着ベルト210と加圧ローラ250とのニップ部に小サイズ紙幅(例えばA4サイズの記録紙幅)Lminの記録紙109を通紙した場合における定着ベルト210の非通紙領域に作用する磁束を遮蔽することができる長さを有している。
本例の定着装置1100においては、対向コア233を回転させるだけで、センターコア234と対向コア233との間の磁路の長手方向の幅を、最大サイズ紙幅Lmaxと小サイズ紙幅Lminとに切り替えられるので、定着ベルト210の発熱幅を通紙される記録紙109の紙幅に容易に対応させることができる。
ところで、上述のような磁気遮蔽体1101を有する定着装置1100では、最大サイズ紙幅Lmaxの記録紙109が通紙される場合(図14)、支持ローラ220から磁気遮蔽体1101への熱伝導があるため、磁気遮蔽体1101と対応する通紙領域の両端の温度が、磁気遮蔽体1101と対応しない通紙領域の中央の温度よりも低下する傾向がある。
そこで、本例の定着装置1100においては、図15に示すように、磁気遮蔽体1101と対向する部位のセンターコア2341が、磁気遮蔽体1101と対向しない部位のセンターコア2342よりも対向コア233に接近した位置に配設されている。
このように、本例の定着装置1100では、磁気遮蔽体1101の位置に対応した部位のコア232と対向コア233との間隔を狭くしているので、磁気遮蔽体1101の位置に対応した部位の定着ベルト210の発熱量が増し、磁気遮蔽体1101による温度低下が補われて、定着ベルト210の温度の均一化が可能になる。
上述のように、本発明の実施の形態6から8に係る定着装置900、1000、1100は、コア232と対向コア233とが、最大サイズの記録紙109が通紙される定着ベルト210の最大通紙領域Wmaxを所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有しているので、定着ベルト210の温度を均一かつ安定に保つことができる。
また、本発明の実施の形態6から8に係る定着装置900、1000、1100は、定着ベルト210の偏心や振動による定着ベルト210とコア232との離間距離の変動が定着ベルト210の発熱に悪影響を及ぼすことがない。
このように実施の形態6から8の定着装置900、1000、1100は、発熱体の回転移動時における偏心や振動で発熱体とコアとの離間距離が変動することによって発熱体の発熱量が変化して発熱体に温度ムラが生じ易い従来の定着装置とは異なる。つまり、実施の形態6から8の定着装置900、1000、1100は、発熱体の偏心や振動による発熱体の発熱ムラおよび発熱体の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えて、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるものとなっている。
実施の形態6〜8の第1の態様に係る定着装置は、磁性体からなるコアに巻回したコイルにより磁束を発生する磁束発生手段と、前記コアに対向配置されて前記コアとの間に磁路を形成する対向コアと、前記磁路を横切る方向に移動して誘導加熱される非磁性の発熱体と、を備え、前記磁束発生手段と前記対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される前記発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有する構成を採る。また、実施の形態6〜8の第2の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体の移動方向に直交する幅方向の前記コアと前記対向コアとの長さが、前記発熱体の最大通紙領域幅以上である構成としてもよい。さらに、実施の形態6〜8の第3態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアの前記幅方向の長さが、前記コアよりも長く形成されているものとしてよい。さらに、実施の形態6〜8の第4の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアの前記幅方向の長さが、前記コイルの前記幅方向の内径寸法よりも長く形成されている構成としてもよい。
さらに、実施の形態6〜8の第5の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記対向コアに、前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束を遮蔽する磁気遮蔽体を配設した構成としてもよい。また、実施の形態6〜8の第6の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記磁気遮蔽体は非磁性の導電性材料で構成されているものとしてもよい。また、実施の形態6〜8の第7の態様に係る定着装置は、実施の形態6〜8の第6の態様の構成において、前記磁気遮蔽体が配設された部位に対応する前記コアと前記対向コアの間隔は、前記磁気遮蔽体が配設されていない部位に対応する前記コアと前記対向コアの間隔よりも小さい構成としてもよい。
また、実施の形態6〜8の第8の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記発熱体は、環状に形成され、前記コイルは、前記発熱体の外周部に配置されている構成としてもよい。さらに、実施の形態6〜8の第9の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルを前記発熱体に対向させた状態で、周波数30kHzにおける前記コイルのインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下である構成としてよい。また、実施の形態6〜8の第10の態様に係る定着装置は、上記構成において、前記コイルに印加される電流の周波数が20kHz〜100kHzである構成としてもよい。
また、実施の形態6〜8の第11の態様に係る画像形成装置は、記録媒体上に形成された未定着画像を定着する定着手段を備えた画像形成装置であって、前記定着手段として、実施の形態6〜8の第1の態様から第10の態様のいずれかに記載の定着装置を用いる構成としてもよい。
実施の形態6から8の態様によれば、磁束発生手段と対向コアとが、最大サイズの記録媒体が通紙される発熱体の最大通紙領域を所定範囲の定着温度に発熱させる大きさを有しているので、発熱体の最大通紙領域の温度を均一かつ安定に保つことができる。また、発熱体が磁束を透過する薄肉の非磁性体で構成されているので、発熱体の偏心や振動による発熱体とコアとの離間距離の変動が発熱体の発熱に悪影響を及ぼすことがない。
実施の形態6から8の態様に係る定着装置は、発熱体の偏心や振動による発熱体の発熱ムラ、および発熱体の幅方向両端部の放熱による温度低下を抑えて、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置の定着装置として有用となる。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、発熱体としての定着ベルト210が環状に形成され、励磁コイル231が定着ベルト210の外周部に配置されているので、定着ベルト210の交換やメンテナンスの作業効率が向上する。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、励磁コイル231を定着ベルト210に対向させた状態で、周波数30kHzにおける励磁コイル231のインダクタンスが10μH以上50μH以下、電気抵抗が0.5Ω以上5Ω以下であることが好ましい。これにより、励磁コイル231の励磁回路として、汎用性のある安価な回路を用いることができる。
また、本発明の各実施の形態に係る定着装置は、励磁コイル231に印加される電流が、周波数20kHz〜100kHzであることが好ましい。これにより、励磁コイル231の電源のロスを小さく抑えることができ稼働効率が向上する。
本明細書は、2004年11月18日出願の特願2004−334996及び2004年11月19日出願の特願2004−336529に基づく。これらの内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、発熱体が偏心したり振動したりして発熱体とコアとの離間距離が変動しても、発熱体の温度を均一かつ安定に保つことができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリおよびプリンタ等の画像形成装置の定着装置として有用である。
本発明の実施の形態に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態に係る定着装置の基本的な構成を説明するための断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の主要部を図3に示す線分X−Xに沿って破断した概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の主要部を図9に示す線分Y−Yに沿って破断した概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態7に係る定着装置の主要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の対向コアに配設した磁気遮蔽体を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の主要部を図14に示す線分Z−Zに沿って破断した概略断面図