JP2011232479A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、非通紙領域での過剰な昇温を抑制すると共に、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを形成させない電磁誘導加熱方式の定着装置と画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の定着装置と画像形成装置は、電磁誘導コイル23と、電磁誘導コイル23から発生した磁界によって発熱する定着ベル卜22と、電磁誘導コイル23に対向して配置され、所定の温度で非磁性の特性を示す整磁金属材料からなる発熱制御部材と、非磁性金属からなり定着ベルト22と発熱制御部材を透過した磁束を打ち消す磁束制御部材25と、を備え、電磁誘導コイル23の長手方向に沿った線を境にして長尺片31_1と長尺片31_2とに分離して構成されると共に、互いに電気的に絶縁されて配置されることを主な特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子写真方式の複写機やファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に用いられる定着装置に関し、特に、電磁誘導加熱方式によって未定着トナーを画像形成媒体に定着する定着装置とこれを用いた画像形成装置に関する。
近年、複写機やファクシミリ、プリンタ等に用いられる定着装置に、電磁誘導加熱方式を採用することが行われている。電磁誘導加熱方式の定着装置においては、電磁誘導コイルの近くに導電体を配置し、この電磁誘導コイルに交番電流を印加する。この時電磁誘導コイルの周囲には電流の変化に伴って磁界が発生し、発生した磁束が導電体を透過することによって導体内に渦電流が発生する。この渦電流によって導電体自身が加熱され、この熱により未定着のトナーの定着を行うことができる。
導電体で発生した熱がニップに伝達されると、この熱と定着ローラの圧力によって画像形成媒体上の未定着のトナーが溶融して定着される。導電体で生じた熱をニップへ伝えるには、ニップを形成する定着ローラそのものを導電体とするか、定着ベルトを設けて熱を伝えればよい。
ところで、定着装置のニップの温度は、ここを通過する記録紙等の画像形成媒体(以下、記録紙という。)と周囲への伝熱で熱を奪われて、温度低下を来す。従って、定着ローラまたは定着ベルトと記録紙が接触する通紙領域では温度低下を起こすが、記録紙が通過する幅より外側の非接触になる部分では熱は奪われず温度低下しない。そして温度低下は一定の状態にはならない。記録紙の幅には様々な種類があり、定着ローラや定着ベルトの幅方向の温度分布は通紙する記録紙によって変動するためである。
例えば、A4の記録紙とB5、A4の記録紙ではその幅が異なる。そして、定着ローラや定着ベルトの軸方向の幅はこれらの記録紙に一部の領域で接触する。B5のような狭い幅の記録紙がニップを通過する時には、記録紙に非接触となる部分(非通紙領域)が生じ、この部分では記録紙に熱が奪われることがなく、温度上昇する。通紙領域を170℃程度の定着設定温度にするのであれば、非通紙領域はこの設定温度以上の例えば210℃以上の温度に温度上昇してしまう。
このような過昇温の部分を有するニップに、幅広の例えばB4の記録紙を通過させると、一度転写されたトナーが再び定着ローラまたは定着ベルトに付着するようなことも生じる。また、過昇温はこれらの部材の寿命を縮めてしまう。
そこで、従来、過昇温対策のためキュリー温度を調整した整磁金属製の定着ローラを使用することが提案された(例えば特許文献1)。キュリー温度とは、強磁性体がその温度に到達すると磁性を失い、常磁性体(非磁性体)に変化する温度である。(特許文献1)では、このキュリー温度を定着温度に対し適切に調整した整磁金属を用いて、過昇温を制御している。
更に(特許文献2)においては、整磁合金をローラ形状とせず、固定した方式で過昇温を制御することを実現した。図18(a)は従来のスリットや切り欠きを用紙紙幅方向に沿って複数設けた発熱制御部材の側面図、図18(b)は従来の発熱制御部材の渦電流の説明図、図18(c)はスリットや切り欠きによって発生する従来の定着ベルトの温度ムラの説明図である。図18(a),(b),(c)に示すように、発熱制御部材131に対して、渦電流を抑えるためスリットや切り欠き(遮断手段M)を用紙紙幅方向(定着ベルトの周方向)に沿って複数設ける(図18(a)を参照)。これにより電磁誘導作用で支持部材124に支持されている発熱制御部材131に発生する渦電流を記録紙幅方向で遮断し、発熱を抑える。
国際公開第2006/098275号 特開2008−152247号公報
このように定着装置の非通紙領域は、通過する記録紙に熱を奪われないため、定着設定温度以上に過昇温し易く、部品の寿命を短くし、定着品質を低下させる傾向があった。
また、定着装置においてはウォームアップ時間の短縮が要請される。このため定着用部品は低熱容量化する必要がある。しかし、定着用部品が低熱容量化されると、過昇温が発生し易く、過昇温対策はこのウォームアップとの関係もあって解決するのが難しい問題であった。
さて非通紙域の過昇温対策として、上記した従来の定着装置が用いられているが、次のような課題がある。
(特許文献1)の定着装置では、整磁金属を薄肉ローラ形状にする加工が難しいことや、ローラ形状とせず、ベルト懸架部材として固定し、定着ベルトと摺動接触する方式をとった場合は、加熱部を移動する定着ベルトに比べ、加熱部に固定された整磁金属製のベルト懸架部材は、整磁金属製のベルト懸架部材の温度上昇が急激になるため、過昇温抑制を必要としない部分でも、キュリー温度に容易に到達してしまう。従って、加熱部に対向する位置でベルト懸架部材を固定する場合は、定着ベルト(発熱ベルト)の発熱効率を整磁金属製のベルト懸架部材に対し十分に大きくする必要があり、定着ベルトの選択肢が限られるという課題が生じる。
次に、(特許文献2)の定着装置は、発熱ベルトの内部に発熱制御部材として整磁金属を用いた発熱制御部材を用いているが、固定された発熱制御部材に渦電流が発生すると急激に温度上昇するため、発熱制御部材の整磁金属に、渦電流損による発熱を抑制するため、スリットや切り欠き(遮断手段M)を複数設けて発熱制御部材131を周方向に細かい部分に分けている。発熱制御部材の周方向にスリットや切り欠きを設けることで、発熱制御部材の発熱効率が下がり、定着ベルトとの相対的な発熱割合の差は減少する。
しかし、スリットにより渦電流の発生を抑制することで、発熱ベルトに対する相対的な発熱割合は低下するが、局所的にみれば各部分において渦電流が流れ自己発熱する(図18(b)参照。)。自己発熱を抑えるためにスリットの数を増すと、構成が複雑になること、発熱ベルトに接触させる場合には、それぞれの接触具合によって温度ムラを生じてしまうこと、等の課題が生じる。
また、発熱制御部材を含めた、被発熱側の電気抵抗値やインダクタンス等の電気特性は、電磁誘導コイルに対し、幅方向で一様であることが望ましいが、スリットの空隙により電気特性は一様でなくなるため、空隙部の幅によっては、図18(c)に示すような軸方向に局所的な温度ムラが生じる。
このため、発熱ベルトは、発熱制御部材の温度上昇に対し、相対的に十分大きな発熱効率を有するか、発熱制御部材のスリットの数を増やし、発熱ベルトに対して発熱割合を十分に小さくする必要がある。この発熱ベルトの発熱効率を増すことによる問題点は(特許文献1)と同様であり、スリットの数を増やすことによる弊害も前述の通りである。
そこで、本発明は、非通紙領域での過剰な昇温を抑制すると共に、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを形成させない電磁誘導加熱方式の定着装置を提供することを目的とする。また、本発明は、非通紙領域での過剰な昇温を抑制すると共に、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを形成させない電磁誘導加熱方式の定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の定着装置は、磁界を発生する電磁誘導コイルと、電磁誘導コイルから発生した磁界によって発熱する発熱層を備えた定着ベル卜と、定着ベルトを介して電磁誘導コイルに対向して配置され、所定の温度で非磁性の特性を示す整磁金属材料からなる発熱制御部材と、非磁性金属からなり定着ベルトと発熱制御部材を透過した磁束を打ち消す磁束制御部材と、を備え、発熱制御部材が電磁誘導コイルの長手方向に沿った線を境にして第1発熱制御部材と第2発熱制御部材とに分離して構成されると共に、第1および第2発熱制御部材が互いに電気的に絶縁されて配置されることを主な特徴とする。
本発明の定着装置と画像形成装置によれば、磁界の変化を妨げる向きに電流が流れようとしても、分離された第1発熱制御部材と第2発熱制御部材において電流の向きがそれぞれ一方向となり、発熱制御部材の全体を通して渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。従って、発熱ベルトに対する相対的な発熱割合は略ゼロになる。このため固定された発熱制御部材に対して、発熱ベルトの発熱効率を上げる必要がなくなる。またウォームアップ中は、発熱制御部材は磁性コアとして磁路を形成する機能を担うだけであるため、発熱制御部材が発熱してしまう場合に比べて、ベルトの発熱割合が増加し、ウォームアップタイムが改善される。更に、被発熱側は、幅方向に対し、均一な電気特性になるため温度ムラが生じにくくなる。
発熱制御部材は定着ベルトに密着しているため、定着ベルトからの熱伝達により定着ベルトと同期して温度変化し、定着ベルトが過昇温して発熱制御部材の温度がキュリー温度に到達すると、磁束抑制部材により透過してきた磁束を打ち消す磁束が発生し、定着ベルトの温度上昇が抑制される。これにより定着ベルトは、ベルト懸架部材の温度を略一致した温度になり、非通紙域の過昇温をキュリー温度でとどめることができる。
定着ベルトと発熱制御部材の接触部の熱伝導率を調整することで、定着ベルトと発熱制御部材の密着性が悪い場合でも、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを生じさせない。以上のことからウォームアップタイムの短縮化を図りつつ定着ベルトの温度ムラの解消することができる。
本発明の実施の形態1における画像形成装置の全体の構成を示す構成図 図1に示した画像形成装置の定着装置の断面図 本発明の実施の形態1における画像形成装置の定着装置の電磁誘導コイルを上部としてコイル側からベルト懸架部材を見た上面図 本発明の実施の形態1における定着装置の定着ベルトの構成図 本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の構成図 本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の作用を説明する説明図 本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の間隙付近の拡大展開図 発熱制御部材を分割することによって渦電流が流れない原理の説明図 本発明の実施の形態1における定着装置の磁束遮蔽板と発熱制御部材の拡大図 (a)本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の構成図、(b)(a)の発熱制御部材の拡大図 本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材が複数の板の組み合わせで円筒状に構成された場合の構成図 比較例1の構成図 比較例1の定着装置に対して記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図 温度測定位置の配置を示す説明図 比較例2の構成図 比較例2の定着装置に対して比較例1と同様にA4縦の記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図 本発明の実施例1における定着装置に対して記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図 (a)従来のスリットや切り欠きを用紙紙幅方向に沿って複数設けた発熱制御部材の側面図、(b)従来の発熱制御部材の渦電流の説明図、(c)スリットや切り欠きによって発生する従来の定着ベルトの温度ムラの説明図
本発明の請求項1の発明は、磁界を発生する電磁誘導コイルと、電磁誘導コイルから発生した磁界によって発熱する発熱層を備えた定着ベル卜と、定着ベルトを介して電磁誘導コイルに対向して配置され、所定の温度で非磁性の特性を示す整磁金属材料からなる発熱制御部材と、非磁性金属からなり定着ベルトと発熱制御部材を透過した磁束を打ち消す磁束制御部材と、を備え、発熱制御部材が電磁誘導コイルの長手方向に沿った線を境にして第1発熱制御部材と第2発熱制御部材とに分離して構成されると共に、第1および第2発熱制御部材が互いに電気的に絶縁されて配置されることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、磁界の変化を妨げる向きに電流が流れようとしても、分離された第1発熱制御部材と第2発熱制御部材において電流の向きがそれぞれ一方向となり、発熱制御部材の全体を通して渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。ウォームアップ中は、発熱制御部材は磁性コアとして磁路を形成する機能を担うだけとなるため、発熱制御部材が発熱してしまう場合に比べて、ベルトの発熱割合が増加し、ウォームアップタイムが改善される。更に、被発熱側は、幅方向に対し、均一な電気特性になるため温度ムラが生じにくくなる。
発熱制御部材は定着ベルトに密着しているため、定着ベルトからの熱伝達により定着ベルトと同期して温度変化し、定着ベルトが過昇温して発熱制御部材の温度がキュリー温度に到達すると、磁束抑制部材により透過してきた磁束を打ち消す磁束が発生して、定着ベルトの温度上昇が抑制される。これにより定着ベルトは、ベルト懸架部材の温度と略一致した温度になり、非通紙域の過昇温をキュリー温度に留めることができる。
定着ベルトと発熱制御部材の接触部の熱伝導率を調整することで、定着ベルトと発熱制御部材の密着性が悪い場合でも、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを生じさせない。ウォームアップタイムの短縮化を図りつつ定着ベルトの温度ムラの解消することができる。
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に従属する発明であって、第1および第2発熱制御部材は、電磁誘導コイルから発生する磁束により渦電流が発生しない短手方向の幅を有していることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、第1および第2発熱制御部材は電気的に絶縁され、第1発熱制御部材と第2発熱制御部材の間隙を通して渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。
本発明の請求項3の発明は、請求項2の発明に従属する発明であって、第1および第2発熱制御部材の短手方向の幅には長短が設けられると共に、第1および第2発熱制御部材の間隙が電磁誘導コイルの各長手方向の部分に対向する位置の間に配置されることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、発熱制御部材を定着ベルトのたるみ側のみ長くして密着した形状を作る等、用途に合わせて長短を決定して配置することができる。間隙が長手方向の電流に対向する位置の間の位置に限られるので、各発熱制御部材において単独でも渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。
本発明の請求項4の発明は、請求項1の発明に従属する発明であって、発熱制御部材が2枚以上の整磁合金の板を組み合わせて円筒形状に構成されたことを特徴とする定着装置である。
この構成によって、製造が難しい整磁合金を複数の板で円筒状に形成し、容易かつ安価に製造することができる。
本発明の請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかの発明に従属する発明であって、発熱制御部材が定着ベルトとの摩擦により連れ周りすることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、発熱制御部材を円筒状に形成し、この円筒を回転させて定着ベルトとの接触摺動部分の摩擦をさらに軽減させ、定着ベルトの寿命を延ばすことができる。
本発明の請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかの発明に従属する発明であって、発熱制御部材のキュリー温度が定着下限温度以上に設定されることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、キュリー温度が定着下限温度以上に設定されるため、キュリー温度では確実に定着でき、発熱制御が容易に行える。
本発明の請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の何れかの発明に従属する発明であって、発熱制御部材のキュリー温度が定着ベルトの耐熱温度以下に設定されることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、定着ベルトを耐熱温度以上にすることがない。
本発明の請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7の何れかの発明に従属する発明であって、発熱制御部材の厚さは、150μm以上300μm以下とすることを特徴とする定着装置である。
この構成によって、大きな電力を投入した場合に容易に飽和磁束密度に到達して発熱効率が低下することがなく、ウォームアップ中に定着ベルト対し発熱制御部材の熱容量が負荷にならず、ウォームアップタイムを遅延させない。
本発明の請求項9の発明は、感光体ドラムと、感光体ドラムの感光体に静電潜像を形成する制御手段と、静電潜像をトナーで現像する現像装置と、現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、請求項1乃至請求項8の何れかの発明の定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
この構成によって、磁界の変化を妨げる向きに電流が流れようとしても、分離された第1発熱制御部材と第2発熱制御部材において電流の向きがそれぞれ一方向となり、発熱制御部材の全体を通して渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。ウォームアップ中は、発熱制御部材は磁性コアとして磁路を形成する機能を担うだけとなるため、発熱制御部材が発熱してしまう場合に比べて、ベルトの発熱割合が増加し、ウォームアップタイムが改善される。更に、被発熱側は、幅方向に対し、均一な電気特性になるため温度ムラが生じにくくなる。
発熱制御部材は定着ベルトに密着しているため、定着ベルトからの熱伝達により定着ベルトと同期して温度変化し、定着ベルトが過昇温して発熱制御部材の温度がキュリー温度に到達すると、磁束抑制部材により透過してきた磁束を打ち消す磁束が発生して、定着ベルトの温度上昇が抑制される。これにより定着ベルトは、ベルト懸架部材の温度と略一致した温度になり、非通紙域の過昇温をキュリー温度に留めることができる。
定着ベルトと発熱制御部材の接触部の熱伝導率を調整することで、定着ベルトと発熱制御部材の密着性が悪い場合でも、定着ベルトの温度分布に局所的な温度ムラを生じさせない。ウォームアップタイムの短縮化を図りつつ定着ベルトの温度ムラの解消することが可能な画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明に係る実施の形態1を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には同一符号を付与し、重複する説明は省略する。
図1は本発明の実施の形態1における画像形成装置の全体の構成を示す構成図である。図2は図1に示した画像形成装置の定着装置の断面図である。図3は本発明の実施の形態1における画像形成装置の定着装置の電磁誘導コイルを上部としてコイル側からベルト懸架部材を見た上面図である。
本発明の画像形成装置は、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ、およびプリンタ等である。なお、図1のフルカラー画像形成装置は外筐が図示されていない。
図1に示すフルカラー画像形成装置はタンデム型の複写機であり、原稿の画像をスキャナ(図示しない)によって読み取り、画像形成部IMにおいて、画像の読み取った画素信号により感光体ドラム1に静電潜像を形成し、これを現像してトナー像とし、更にこれを記録紙P上に転写する。この画像形成部IMには、給紙部15から記録紙Pが1枚ずつピックアップされて供給され、画像形成部IMにおいて現像、転写された後、定着装置Tで定着され、その後外部に設けた排紙部(図示しない)から排紙される。
図1において、画像形成部IMには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の感光体ドラム1が中間転写ベルト5に沿って配置されており、感光体ドラム1は一次転写後にクリーナ9で除電され、帯電器2により一様に帯電される。この一様に帯電した感光体ドラム1にLSU(Laser Scanning Unit)から各色の画素信号に対応して変調されたレーザ光10を照射し、感光体(OPC)層表面でレーザ光10を走査し、感光体(OPC)に静電潜像を形成する。
給紙部15内の記録紙Pはピックアップローラ(図示しない)によって給紙部15から1枚ずつピックアップされ、レジストローラ(図示しない)を経て、レジストセンサ(図示しない)で記録紙Pが到達したことを検出し、感光体ドラム1と加圧ローラ6とのニップに感光体ドラム1の回転と同期した適切なタイミングで送られる。
像形成ユニット3には、感光体ドラム1と対向して現像ローラ4が設けられる。また、像形成ユニット3の容器には各色トナー14がそれぞれ収容されており、それぞれ攪拌されて供給ローラ13で供給され、ブラシ(図示しない)により現像ローラ4の表面に薄いトナーの層を形成する。負に帯電しているトナーはバイアス電位により現像ローラ4から感光体ドラム1に転写され、現像ローラ4により静電潜像に従って顕像化され、数百Vの正の電位が印加された感光体ドラム1上に未定着のトナー像を形成する。
顕像化された未定着の各色のトナー像は、転写ローラ8とテンションローラ12に張架された無端帯状の中間転写ベルト5に一次転写され、トナーはYMCAの順で中間転写ベルト5上に積み重ねられて担持される。この中間転写ベルト5上のトナーは、数百Vの正電位が印加された転写ローラ8と加圧ローラ7の作用により、記録紙Pに二次転写される。二次転写において中間転写ベルト5に残ったトナーは掻き取り部材11で掻き取られ、再度各感光体ドラム1の位置へ向かう。未定着状態のトナー像が担持された記録紙Pが搬送されてくると、定着装置Tにおける熱と圧力でトナーが溶融させられ、熱定着される。この定着が行われた後排紙される。
ここで、本発明の実施の形態1における実施の形態1の定着装置Tについて図2、図3を基に説明する。図2において、実施の形態1の定着装置Tは、定着ベルト22と、定着ベルト22を誘導加熱する電磁誘導コイル23とを備えており、定着ローラ21とベルト懸架部材24の間には熱容量が小さな無端帯状の定着ベルト22が巻き掛けられ、ベルト懸架部材24の内側には磁束遮蔽板25が設けられている。定着ベルト22は加圧ローラ26と共にニップを形成し、ニップにおいて記録紙Pを加圧、加熱して、二次転写された記録紙P上のトナーを定着する。
図2、図3に示すように、電磁誘導コイル23の長尺方向の辺のそれぞれに対向する位置で、発熱制御部材31を構成する円弧断面の長尺片31_1と長尺片31_2が、間隙Δをもって平行に並んで、ベルト懸架部材24の周囲に固定されている。そしてこのベルト懸架部材24は固定軸32に固定される。この間隙Δの詳細については、後述する。
電磁誘導コイル23は非磁性材料からなる半円筒をなす凹状のコイル保持部材27に取り付けられている。このコイル保持部材27の凹部の内部空間にベルト懸架部材24が配置され、ベルト懸架部材24は定着ローラ21と共に定着ベルト22を張架する。
定着ベルト22の発熱層22aはFeやNi等の磁性金属の基材を用いるのでも、アルミニウム、銀、銅、非磁性のステンレス材等の非磁性金属等の基材を用いるのでもよい。非磁性金属を使用する場合は、5μm〜50μmのごく薄いシートもしくはメッキ等で形成することが望ましい。2層以上の複数の層に積層して形成することができる。実施の形態1においては、定着ベルト22の発熱層22aは非磁性ステンレスと銅の積層基材を用い、図4に示すように非磁性ステンレス層22a_1と銅層22a_2を備えている。そして、発熱層22aの内周側にフッ素樹脂等の耐熱性樹脂の被覆層22bが設けられるのがよい。図4は本発明の実施の形態1における定着装置の定着ベルトの構成図である。発熱層22aの外周側にはシリコンゴム等からなる弾性層22cが設けられ、更にその外側にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂の単独もしくは混合樹脂の表面離型層22dが設けられる。
続いて定着ローラ21は、図2に示すように定着ベルト22が巻き掛けられてベルト懸架部材24と共にこれを張架するもので、芯材21aにシリコンゴム等の低熱伝導性材料の弾性層21bが成形されている。好適には、弾性層21bの表面に例えばフッ素樹脂等の耐熱性樹脂の被覆層21cを形成しておくのがよい。
加圧ローラ26は、定着ローラ21に従動して互いに逆方向に回転する。この加圧ローラ26と定着ローラ21の周りに巻かれた定着ベルト22とが定着装置のニップを形成する。これにより記録紙Pを定着しつつ搬送できる。加圧ローラ26も、芯材となるパイプ26aにシリコンゴム等の低熱伝導性材料の弾性層26bが成形され、表面には、PFA等のフッ素樹脂による離型層(図示しない)が設けられている。
定着ベルト22を張架するベルト懸架部材24は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の耐熱性樹脂の固定部材24dを介して固定軸32に固定され、ベルト懸架部材24の定着ベルト22と接触する表面には発熱制御部材31が設けられる。
なお、固定軸32には、懸架される定着ベルト22に対し、図示されないバネ部材等で、定着ローラ21から離れる方向に張力が掛けられている。固定軸32が撓むと、ベルト懸架部材24にも撓みが生じ、定着ベルト22との間の密着性が悪くなる。
発熱制御部材31は整磁金属により構成される。ここで用いる整磁金属は、Fe−NiやFe−Ni−Cr等からなる整磁合金で、NiやCrの添加量を調整することでキュリー温度を任意の温度に設定することができる。実施の形態1の定着装置Tでは、整磁合金のキュリー温度はおよそ200℃〜220℃に設定されている。キュリー温度を、定着下限温度、例えば170℃以上に設定することにより、キュリー温度においては確実にトナーを溶融して定着することができ、発熱制御も200℃〜220℃で安定して容易に行える。また、このキュリー温度を定着ベルト22の耐熱温度以下に設定することにより、定着ベルト22を耐熱温度以上に上昇させないで済む。
整磁合金からなる発熱制御部材31の厚さは、150μm以下の厚さでは、1200W等大きな電力を投入した場合に容易に飽和磁束密度に到達してしまい、定着ベルト22の発熱効率が低下してしまう。また、肉厚が300μmを超えるとウォームアップ中に定着ベルト22に対し発熱制御部材31の熱容量が負荷になり、ウォームアップタイムが遅延する。このため、本実施の形態1では厚さは200μm〜300μmに設定されている。
そして詳細は後述するが整磁合金を円筒状(パイプ)に形成し、定着ベルト22との摩擦により連れ周りする構成を採用することができる。この時、円筒を回転させて定着ベルト22との接触摺動部分の摩擦をより軽減し、定着ベルト22の寿命を延ばすことができる。連れ周りにより発熱制御部材31の温度上昇は穏やかになる。
図5は本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の構成図である。整磁金属層31aの外周に摺動層31bが形成されている。摺動層31bは、定着ベルト22との摩擦を低減し、定着ベルト22の磨耗寿命を延ばすものである。また磨耗寿命のためだけではなく、定着ベルト22との熱伝導を調整する役割も果たしている。摺動層31bは、PFAやPTFE等の単層もしくは複合樹脂のコーティング、フッ素を含侵したガラス基材テープ等の貼り付け、耐熱樹脂の焼付け等の方法で形成される。なお、この摺動層31bは、発熱制御部材31と接する定着ベルト22内面にポリイミドやフッ素樹脂等でコーティングあるいは、それらを基材とした定着ベルト22を用いることで、代用することもできる。
図6、図7、図8によって、加熱時における発熱制御部材31の作用とその動作原理について説明する。図6は本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の作用を説明する説明図、図7は本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の間隙付近の拡大展開図である。また、図8は発熱制御部材を分割することによって渦電流が流れない原理の説明図である。
前述したように、発熱制御部材31は、電磁誘導コイル23の凹部空間内に配置され、電磁誘導コイル23の長尺方向に沿って間隙Δだけ離して平行に並べられた、2つの長尺片31_1、長尺片31_2により構成されている。すなわち発熱制御部材31は電磁誘導コイル23の長手方向に沿った線を境にして長尺片31_1、長尺片31_2の2つの部分に分離して配置される。
この2つの長尺片31_1、長尺片31_2は何れも略90°をなす円弧状断面を有し、電磁誘導コイル23と対向して所定の距離だけベルト懸架部材24側に寄った位置に離れて配置される。そして、電磁誘導コイル23を周回する電流の長手方向の電流に対し、互いにどちらか1方向のみに対向するように配置される。
ここで、長尺片31_1、長尺片31_2がベルト懸架部材24側に寄った位置に配置されるというのは、電磁誘導コイル23の内周部が記録紙Pの搬送路側に向かって投影された時、投影空間となる範囲の内部に長尺片31_1、長尺片31_2の間隙Δが収まって設けられるということである。ただし、長尺片31_1の幅β1、長尺片31_2の幅β2はβ1=β2だけでなく、幅β1、幅β2には長短を設けてもよい。定着ベルト22のたるみ側のみ長くして密着した形状を作る等、用途に合わせて長短を決定することができる。
好適な位置に置かれた長尺片31_1、長尺片31_2においては、電磁誘導コイル23の電流はそれぞれ1方向のみにしか流れない(図8を参照)。各長尺片31_1,31_2では渦電流は流れない。iv=0となる。
すなわち、電磁誘導コイル23を流れる電流iは、図8のループをなしたコイルを流れ、この中央を磁束φが貫く。そしてこの磁界により、渦電流ivが発熱制御部材31内で発生しようとしても、この渦電流ivは、長尺片31_1、長尺片31_2の間の間隙Δの存在により流れることができない。つまり、長尺片31_1,31_2は物理的に接合されていないため、電気的に導通できず、渦電流ivが流れない。
しかし、図18(a)のようなスリットを形成した場合、渦電流は細かく分割されたループで流れ、局所的に各部分において自己発熱する。これに対し、実施の形態1の場合は長尺片31_1、長尺片31_2には渦電流ivが発生せず、この渦電流が流れることによるジュール熱が発生しない。
また、発熱制御部材31は、整磁金属で作られているため、キュリー温度以下では、強磁性体として振舞う。このため、電磁誘導コイル23から発生する磁束は、発熱制御部材31を構成する長尺片31_1および長尺片31_2の内部を導かれ、長尺片31_1、長尺片31_2はキュリー温度以下では磁性コアとして機能する。ただ、発熱制御部材31は、渦電流によるジュール熱は発生しないが、厳密には磁束が通過することによる磁心損失によりわずかな発熱はする。
発熱制御部材31を通過した磁束は、電磁誘導コイル23に戻り、図6のφに示すような磁気ループを形成する。発熱制御部材31およびベルト懸架部材24に懸架された定着ベルト22は、電磁誘導コイル23から発生する磁束φにより、渦電流が流れ、ジュール熱を発生し、加熱される。
実施の形態1では、渦電流が流れて発熱する部材は、定着ベルト22のみであるため、図18に示すような、発熱制御部材31中に渦電流が発生して発熱する従来技術の系と比較して、定着ベルト22の発熱効率は相対的に高くなる。
つまり、実施の形態1では主な発熱部材が定着ベルト22のみとなるため、発熱制御部材31は、定着ベルト22の温度上昇に依存する熱伝導のみにより、温度上昇する。整磁金属は、温度上昇すると徐々に飽和磁束密度が下がるため、キュリー温度到達前にも、ある程度磁束が透過してしまうが、ウォームアップ中等、整磁金属を磁性コアの代わりとして利用する場合は、整磁金属が自己発熱することのない本実施の形態1の方式が従来技術より優れた特性の方式ということができる。
定着ベルト22の発熱により、発熱制御部材31の温度がキュリー温度を超えると、発熱制御部材31は非磁性体としての特性を示し、図6,図7の破線で示すように磁束φが定着ベルト22、発熱制御部材31を透過して通り抜けるようになる。この定着ベルト22、発熱制御部材31を透過した磁束は、次に磁束遮蔽板25と固定軸32に到達する。
この磁束遮蔽板25は非磁性金属で形成され、銀、銅、アルミニウム、非磁性のステンレス、等を用い、それぞれの厚さは、表皮深さ以上に設定するのがよい。固定軸32の材料も非磁性材料である。磁束遮蔽板25には固定軸32を収容する凹部と両翼に屈曲された反射板25_1、反射板25_2が設けられている。
表皮深さ以上の厚さを持つ非磁性金属は、磁束が透過すると内部に渦電流が流れ、渦電流が流れると、透過する磁束と逆方向の磁束が発生する。磁束遮蔽板25は表皮深さ以上の厚さを有しているため、この部分に渦電流が流れ、逆方向の磁束(以降、反発磁束と称す)を発生し、定着ベルト22、発熱制御部材31を透過した磁束を打消し、定着ベルト22の発熱を抑制する。
本実施の形態1における磁束遮蔽板25は、厚さ1.5mmのアルミニウム板を用いており、定着ベルト22、発熱制御部材31を透過した磁束が透過した時の様子を図6に示す。図6を拡大し展開したものが図7である。
図6において、磁束遮蔽板25の内部に渦電流が発生し、電磁誘導コイル23から発生する磁束に対して逆方向の磁束を発生する。図6の二重丸◎と×は、磁束遮蔽板25内部を流れる渦電流の向きを示す。電磁誘導コイル23が形成した磁束φは、磁束遮蔽板25に発生した渦電流による反発磁束により弱められると共に、定着ベルト22の発熱が抑制される。
ところで、長尺片31_1、長尺片31_2の間隙Δには整磁金属が存在しない。しかし定着ベルト22と間隙Δを透過する磁束は、磁束遮蔽板25の作用により、発熱制御部材31の温度がキュリー温度を超えた場合と同様に作用するため、間隙Δの位置では定着ベルト22の発熱が抑制される。
本実施の形態1では、間隙Δは、できるだけ狭く設定すると共に、間隙Δからの透過磁束を打ち消さないように、磁束遮蔽板25を凹形状とすることで、間隙Δからの磁束透過による発熱ロスを抑制している。
なお、実施の形態1においては、発熱制御部材31は、長尺片31_1、長尺片31_2は何れも略1/4分割の円筒、すなわち90°分割の長尺片であり、両者を並べると略半割の円筒になる。しかし各円弧断面の周方向の幅には長短があってもよい。すなわち、電磁誘導コイル23の巻線幅、コイルの粗密等により、各円弧の幅はそれぞれ変化してよい。
ただ、図6の長尺片31_1の周方向の幅β1、長尺片31_2の周方向の幅β2に対して、幅β1>幅β2とすると、幅広の幅β1をもつ長尺片31_1が、短い方の長尺片31_2のコイル部分にまで延びる幅にするのはよくない。この場合、長尺片31_1の内部に単独で渦電流が流れる。
すなわち、図8で示すように、一方の長尺片31_1の幅β1が幅広になりすぎると、コイルのループを少なくとも一部完全に含むようになり、長尺片31_1内に渦電流ivが発生する。従って、長尺片31_1、長尺片31_2は電磁誘導コイル23の内周部の投影空間の範囲内に収める必要があると共に、もう一方のコイル部分の位置まで延長するような幅広にしてはならない。間隙Δは電磁誘導コイル23の長手方向の電流に対向する位置の間に配置する必要がある。このように長尺片31_1、長尺片31_2の幅に長短をつけ、間隙Δを長手方向の電流の間に置けば、各発熱制御部材は単独でも渦電流が流れず、略発熱しなくなる。
また、長尺片31_1、長尺片31_2が突き合わされる2辺の端部には、図2、図9のように固定軸32側に向かって折り曲げられた各屈曲片Rを設けるのがよい。屈曲片R同士が間隙Δで対向して配置されることになる。この間隙Δは電気的に絶縁され、長尺片31_1、長尺片31_2は不導通としなければならない。
ところで、長尺片31_1,長尺片31_2の間隙Δは、電気的に両者が絶縁できれば足りるから、例えば図10(a),(b)のように絶縁部材33を挟んで屈曲片R同士を接触させることで、発熱制御部材の温度に関係なく間隙Δを透過する磁束を減らすことができる。図10(a)は本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材の構成図、図10(b)は(a)の発熱制御部材の拡大図である。図10(a),(b)の絶縁部材33は、絶縁被覆33_1、絶縁被覆33_2を形成し、屈曲片Rとして折り曲げるだけで形成できる。間隙Δは、長手方向の電流の間に置かれ、発熱制御部材31が互いに不導通であればよく、また、図8では、直線で表現しているが、長手方向に斜めや曲線状であってもよい。
そして、図10(a)においては発熱制御部材31は長尺片31_1、長尺片31_2の2枚の長尺片によって構成されているが、更にそれ以上の枚数の長尺片を組み合わせることにより円筒状(パイプ状)に構成することもできる。図11は本発明の実施の形態1における定着装置の発熱制御部材が複数の板の組み合わせで円筒状に構成された場合の構成図である。図11においては一例として4枚の板の組み合わせで円筒が構成されている。
長尺片31_1、長尺片31_2、長尺片31_3、長尺片31_4は、何れも略90°の円弧断面を有しており、それぞれの円弧方向両端に屈曲片Rが設けられ、隣接させる長尺片の屈曲片R同士が突き合わされて円筒をなすように組み合わされる。
この長尺片31_1、長尺片31_2、長尺片31_3、長尺片31_4は、固定軸32に固定されたPPS等の耐熱性樹脂の固定部材の表面に固定される。このような2枚以上の枚数の長尺片を組み合わせる構成は、定着ベルト22との摩擦によって連れ周りする発熱制御部材31を作るのに好適な構成となる。そして絶縁部材33は絶縁被覆を形成するだけで設けることができる。
続いて、本発明の実施の形態1の定着装置Tの作用について具体的に説明する。最初に比較例1として、ベルト懸架部材が円筒であり、発熱制御部材が定着ベルトの内周に完全に密着していない部分を有する定着装置を説明する。
(比較例1)
比較例1はベルト懸架部材を固定し、図12に示すように発熱制御部材の定着ローラ側が断面120°だけ切り欠かれ、発熱制御部材が定着ベルトの内周に全面的には密着せず、一部定着ベルトから離れた部分を有している場合である。図12は比較例1の構成図、図13は比較例1の定着装置に対して記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図を示す。なお、図14は、温度測定位置の配置を示す説明図である。図14においてA,Cは定着装置の長手方向両端の非通紙域の位置を示し、Bは中央位置であり、通紙域(言い換えれば温度制御部)となる位置を示している。
図13は最大加熱幅A3幅(A4横幅)の定着装置に対してA4縦(A4用紙の短手方向を先頭に通紙する)の記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図を示す。横軸の時間の1目盛は30sec/div、縦軸の温度の1目盛は10℃/div、同じく電力の1目盛は300W/divである。定着設定温度は175℃である。図13のラインEC、EBは発熱制御部材が定着ベルトの内周に密着していないベルト非接触部n(図12参照)の温度を示す。なお、添え字A,Cは図14における非通紙域A,Cでの温度を示し、添え字Bは図14における中央位置Bでの温度を示す。ラインFA、FCは定着ベルトの非通紙域A,C部の温度、ラインGB,GCは発熱制御部材の中央位置Bでのベルト接触部s(発熱制御部材のベルトに接触している、ベルト非接触部n以外の部分であり、図12参照)の温度、ラインNBは温度制御部(通紙域、ここでは中央位置B)における定着ベルトの温度である。
これに対して、ラインKは定着装置に供給した電力の変化である。
この図13によれば、次のことが分かる。定着装置に電力を供給し始めると、発熱制御部材のベルトに非接触のベルト非接触部nで急激に温度上昇しており、定着ベルトの両端においても徐々に温度上昇している。これは通紙域から外れた非通紙域において温度上昇が起きていることを示す。
通紙開始直後は、ラインNBから分かるように温度制御部(中央位置B)の温度がわずかに低下し、暫くして設定温度付近に戻るが、時間経過と共に温度は徐々に低下し、40秒から90秒後は目標とする175℃を維持できなくなっている。この間投入されている電力はラインKに示すように950Wで変わりはない。電力を投入し続けているのにもかかわらず、再び温度低下を起こしていることが分かる。
この原因は、通紙初期から発熱制御部材のベルト非接触部nの温度が上昇し続けるためで、このベルト非接触部nで発生した熱が、ベルト接触部sの温度をも上昇させてしまい、通紙域を含む加熱幅全域(A,B,Cのすべての領域)において発熱制御部材の温度が上昇する。ラインGB,GCは発熱制御部材のB,Cにおけるベルト接触部sの温度の推移を示す。
発熱制御部材が温度上昇すると、これによって磁束遮蔽板への磁束の透過が始まり、定着ベルトの発熱効率が低下し、温度制御部(中央位置B)の温度低下を起こす。また、発熱制御部材がキュリー温度以上に発熱しているため、ラインFA、FCからも分かるように、非通紙域の定着ベルトの温度もキュリー温度以上に上昇し、過昇温を抑制することができていない。
(比較例2)
比較例2は図15に示すように比較例1と基本の構成は同一ではあるが、発熱制御部材と定着ベルトが密着していない部分(ベルト非接触部n)をなくしたものである。図15は比較例2の構成図、図16は比較例2の定着装置に対して比較例1と同様にA4縦の記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図を示す。
図15において、横軸の時間の1目盛は30sec/div、縦軸の温度の1目盛は10℃/div、同じく電力の1目盛は300W/divである。定着設定温度は175℃である。図16のラインE2C、E2Bは発熱制御部材の非通紙域Cと中央位置Bのベルト非接触部nに相当する位置における温度を示す。ラインF2A、F2Cは定着ベルトの非通紙域A,Cの温度、ラインN2Bは温度調節部(ここでは中央位置B)における定着ベルトの温度である。
ラインG2B,G2Cは発熱制御部材の中央位置B、非通紙域Cでの温度、ラインN2Bは温度制御部(中央位置B)における定着ベルトの温度、ラインK2は定着装置に供給した電力の変化である。
この図16によれば、定着装置に電力を供給し始めると、定着ベルトは、良好に温度上昇する。この時のウォームアップタイムは16.1秒である。ラインF2A、F2Cを見ると、通紙開始後定着ベルトの両端において徐々に温度上昇するが、おおむね一定の温度を示す。比較例1でのベルト非接触部nに相当するベルト接触部sの端部分においてもラインE2C、E2Bから見ると急激な温度上昇は見られない。しかし非通紙域A,C間では、ラインF2A、F2Cが示すように8℃程度の温度差が見られ、これは定着ベルトと発熱制御板との密着性にムラにより、温度ムラが生じることを示している。
温度制御部(中央位置B)においては、ラインN2Bから分かるように比較例1で見られた、温度維持後からの再温度低下は見られず、温度維持に必要な電力もラインK2のように徐々に減少し、概ね良好に通紙が行えている。
このように定着ベルトと発熱制御部材を密着させることで、非通紙域の過昇温を抑制できるが、密着性によっては温度ムラを生じかねず、比較例1のように急上昇する可能性も含んでいることも分かる。
(実施例1)
そこで、実施例1の定着装置の構成と作用を説明する。図17は本発明の実施例1における定着装置に対して記録紙を通紙した場合の電力と各所の温度変化図を示す。横軸の時間の1目盛は30sec/div、縦軸の温度の1目盛は25℃/div、同じく電力の1目盛は300W/divである。
実施例1の定着装置は図2に示した通りのものであり、発熱制御部材を2つに分け、略4分割の長尺片を間隙1mmだけ離し、略半円筒に構成したものである。図17のラインE3C、E3Bは発熱制御部材の端部分Cと中央位置Bの温度、ラインF3A、F3Cは定着ベルトの非通紙域A,Cの温度、ラインN3Bは温度調節部(ここでは中央位置B)における定着ベルトの温度である。ラインF3A、F3Cは定着ベルトの非通紙域A,Cの温度、ラインG3B,G3Cは発熱制御部材の中央位置B,非通紙域Cでの温度での温度、ラインN3Bは温度制御部(中央位置B)における定着ベルトの温度、ラインK3は定着装置に供給した電力の変化である。
この図17によれば、ラインK3のように定着装置に電力を供給し始めると、定着ベルトからやや遅れて発熱制御板の温度が上昇しており、発熱制御板で発熱していないことが分かる。ウォームアップに要した時間は、14.9秒で、比較例2より1秒以上ウォームアップタイムが改善しており、定着ベルトの発熱効率が改善されていることが分かる。
通紙を開始すると非通紙域A,Cの部分の定着ベルト温度がラインF3A、F3Cのように上昇し、定着ベルトの温度上昇に伴い、ラインG3Cのように非通紙域の発熱制御部材の温度も遅れて温度上昇する。比較例1のように急上昇する箇所は見られない。また、この時非通紙域の定着ベルトは、発熱制御部材がキュリー温度に到達するまでは、原理的に通紙域と同様に発熱し続けるが、ラインF3A、F3Cで示すように定着ベルトにおいても急激な温度上昇は見られない。
これは、接している発熱制御部材が発熱していないため、発熱制御部材に定着ベルトで発生した熱が奪われることで、急激な温度上昇を抑えていることを示している。発熱制御部材がE3Cのようにキュリー温度付近に到達すると、定着ベルトの温度上昇はラインG3B,G3Cに示すように略止まり、過昇温が抑制される。ラインF3A、F3Cは略一致しており、比較例2でみられた、定着ベルトの温度ムラも見られない。
このように本発明の実施の形態1の定着装置と画像形成装置によれば、磁界の変化を妨げる向きに電流が流れようとしても、分離された各長尺片において電流の向きがそれぞれ一方向となり、発熱制御部材の全体を通して渦電流が流れず、発熱制御部材は略発熱しなくなる。
そして、発熱制御部材自身の自己発熱がなく、発熱制御部材は定着ベルトに密着しているため、定着ベルトからの熱伝達により定着ベルトと同期して温度変化し、定着ベルトが過昇温して発熱制御部材の温度がキュリー温度に到達すると、磁束遮蔽板によりこの領域の磁束が打ち消され、定着ベルトの温度上昇が抑制される。これにより定着ベルトとベルト懸架部材の温度を略一致した温度にすることができる。
定着ベルトと発熱制御部材の密着性が悪い場合でも、発熱制御部材の温度がキュリー温度以上に温度上昇することはなく、また接触ムラによる温度ムラが生じ難い。以上のことからウォームアップタイムの短縮化を図りつつ定着ベルトの温度ムラの解消することができる。
また、各発熱制御部材の端部にそれぞれ屈曲片を設け、絶縁部材を挟んで屈曲片同士を接触させると、発熱制御部材の加工や配置が容易になる。
本発明は、電磁誘導加熱方式によって未定着トナーを画像形成媒体に定着する定着装置とこれを用いた画像形成装置に適用できる。
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 像形成ユニット
4 現像ローラ
5 中間転写ベルト
6 加圧ローラ
7 加圧ローラ
8 転写ローラ
9 クリーナ
10 レーザ光
11 掻き取り部材
12 テンションローラ
13 供給ローラ
14 トナー
15 給紙部
21 定着ローラ
21a 芯材
21b 弾性層
21c 被覆層
22 定着ベルト
22a 発熱層
22a_1 非磁性ステンレス層
22a_2 銅層
22b 被覆層
22c 弾性層
22d 表面離型層
23 電磁誘導コイル
24 ベルト懸架部材
24d 固定部材
25 磁束遮蔽板
25_1 反射板
25_2 反射板
26 加圧ローラ
26a パイプ
26b 弾性層
27 コイル保持部材
31 発熱制御部材
31a 整磁金属層
31b 摺動層
31_1 長尺片
31_2 長尺片
31_3 長尺片
31_4 長尺片
32 固定軸
33 絶縁部材
33_1 絶縁被覆
33_2 絶縁被覆
124 支持部材
131 発熱制御部材
3 実施例1の電力
T 定着装置
IM 画像形成部
M 遮断手段
R 屈曲片
P 記録紙
n ベルト非接触部
s ベルト接触部
Δ 間隙
φ 磁束

Claims (9)

  1. 磁界を発生する電磁誘導コイルと、
    前記電磁誘導コイルから発生した磁界によって発熱する発熱層を備えた定着ベル卜と、
    前記定着ベルトを介して前記電磁誘導コイルに対向して配置され、所定の温度で非磁性の特性を示す整磁金属材料からなる発熱制御部材と、
    非磁性金属からなり前記定着ベルトと前記発熱制御部材を透過した磁束を打ち消す磁束制御部材と、を備え、
    前記発熱制御部材が前記電磁誘導コイルの長手方向に沿った線を境にして第1発熱制御部材と第2発熱制御部材とに分離して構成されると共に、前記第1および第2発熱制御部材が互いに電気的に絶縁されて配置されることを特徴とする定着装置。
  2. 前記第1および第2発熱制御部材は、前記電磁誘導コイルから発生する磁束により渦電流が発生しない短手方向の幅を有していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記第1および第2発熱制御部材の前記短手方向の幅には長短が設けられると共に、前記第1および第2発熱制御部材の間隙が前記電磁誘導コイルの各長手方向の部分に対向する位置の間に配置されることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
  4. 前記発熱制御部材が2枚以上の整磁合金の板を組み合わせて円筒形状に構成されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  5. 前記発熱制御部材が前記定着ベルトとの摩擦により連れ周りすることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の定着装置。
  6. 前記発熱制御部材のキュリー温度が定着下限温度以上に設定されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の定着装置。
  7. 前記発熱制御部材のキュリー温度が前記定着ベルトの耐熱温度以下に設定されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の定着装置。
  8. 前記発熱制御部材の厚さは、150μm以上300μm以下とすることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の定着装置。
  9. 感光体ドラムと、
    前記感光体ドラムの感光体に静電潜像を形成する制御手段と、
    前記静電潜像をトナーで現像する現像装置と、
    現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
    請求項1〜8に記載された何れか1項の定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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JP6098753B1 (ja) * 2016-08-12 2017-03-22 富士ゼロックス株式会社 定着装置及び画像形成装置

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