JPWO2002076669A1 - ロウ材 - Google Patents
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Abstract
Description
この発明は、良好な耐食性と十分な接合強度を有するロウ付けを行うことが可能なロウ材に関し、特に、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等の外観の装飾性を要求される金属をロウ付けするのに好適で、結晶組織の粗大化を引き起こさない低い温度でロウ付けを行うことができるロウ材に関する。
背 景 技 術
ロウ付けは金属を比較的容易に接合することができる金属加工の技術として古くから知られている。ロウ付けは、現在でも重要な金属加工の技術であるため、様々な産業分野で用いられ、そのロウ付けに用いられるロウ材の種類も多岐に渡ってきている。
しかしながら、金属やその合金の種類によっては、有効なロウ材が見つけられていないものがある。ステンレス鋼もその一つである。ステンレス鋼は耐食性が高くて腐食を生じ難く、酸に対する耐性や熱に対する耐性も強いという優れた特性を有しているため様々な産業分野で広く用いられ、外観の装飾性を要求される金属製品(例えば、腕時計や眼鏡のフレーム)にも用いられている。
ところで、財団法人日本規格協会による「ステンレスのおはなし」(日本規格協会出版部発行)に記載されているように、ステンレス鋼で製造されている部材(以下「ステンレス鋼部材」という)に用いられるロウ材として、従来からAg基ロウやNi基ロウが知られている。
Ag基ロウはロウ材自体の融点が約800℃から1000℃程度である。中には800℃以下の温度でロウ付けを行えるロウ材、例えばJIS規格によるBAg−8(融点780℃)もあり、これをステンレス鋼部材のロウ付けに使用することもある。しかし、このロウ材は耐食性が芳しくないためロウ付けした後でステンレス鋼部材が腐食を引き起こしやすく、時計や眼鏡といった外観の装飾性を要求される金属製品のロウ付けにはあまり使用されていない。
Ni基ロウには、例えばJIS規格によるBNi−2(融点1000℃)がある。通常、水素などの還元雰囲気中で約800℃以下であれば結晶組織の粗大化は起こらない。ところが、このロウ材は融点が高く800℃を超えているため、このロウ材を用いてロウ付けを行うと、ロウ付けしたステンレス鋼部材の結晶組織の粗大化が起こってしまう。そのため、BNi−2でロウ付けしたときは、その粗大化した組織を研磨等を行って取り除き、その後で鏡面仕上げ等の工程を行わねばならない。なお、以下の説明では、ロウ付けの対象とされる被ロウ付け部材を「母材」といい、この発明では、主としてステンレス鋼部材を意味している。また、母材をステンレス鋼部材にすると、その場合の「母材の結晶粗大化温度」は800℃に設定される。
一方、特公昭61−10235号公報には、ステンレス鋼に適したロウ材としてCr,Fe,Si,Niを主成分としたロウ材(融点が1000℃から1200℃)が記載され、そのロウ材を用いて1050℃から1250℃でロウ付けしたことが記載されている。もっとも、このロウ材も、融点が母材の結晶粗大化温度以上であるため、ロウ付けした後にステンレス鋼部材の結晶組織の粗大化が起こってしまう。
ステンレス鋼では、その接合方法として、ロウ付けの他に溶接も広く用いられている。溶接は接合強度や耐食性という点での問題はないが、接合のため部分的に高温に熱しなければならない箇所が発生する。そのため、母材の結晶粗大化温度を超える箇所で結晶組織の粗大化が起こってしまい、溶接を施して加工した部分に後加工が必要になる欠点があった。また、ステンレス鋼部材を接合するには、溶接用に形成した突起に電流を流して溶接するプロジェクション溶接が行われることがある。しかし、このプロジェクション溶接は接合する部材の構造が複雑であると、その突起(プロジェクション部)に電流を均一に集中させにくくなり、溶接が困難になる欠点があった。
以上のように、ステンレス鋼部材を接合する従来の技術には、良好な耐食性と十分な接合強度を確保でき、しかも、結晶組織の粗大化が起こらない低い温度で接合することができる技術は存在しなかった。
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、外観の装飾性を要求される部材に用いられるステンレス鋼のような金属をロウ付けするためのロウ材において、結晶組織の粗大化が起こらない低い温度で接合するとともに、良好な耐食性と十分な接合強度を確保できるようにすることを目的とする。
発 明 の 開 示
この発明によるロウ材は、金、銀、銅及びアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記添加元素の割合が合計で1重量%より大きく36重量%未満であり、上記金の割合が80重量%未満であり、上記銀の割合が42重量%未満であることを特徴とする。
上記ロウ材は、添加元素の割合が合計で約2重量%以上約35重量%以下であるとよい。
また、上記ロウ材は上記金の割合が34重量%より大きく銀の割合が5重量%より大きいとよい。銀の割合が約6重量%以上約41重量%以下であれば好ましい。
さらに、上記金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であると一層好ましい。
この発明は、金、銀、銅及びゲルマニウムを主成分として構成されるロウ材であって、上記ゲルマニウムの割合が4重量%より大きく24重量%未満であり、上記金の割合が34重量%より大きく、上記銀の割合が41重量%未満であるロウ材を提供する。
このロウ材は、上記ゲルマニウムの割合が約5重量%以上約23重量%以下であるとよい。
また、金の割合が約35重量%以上約80重量%以下であり、銀の割合が約5重量%以上約40重量%以下であり、ゲルマニウムの割合が約10重量%以上約19重量%以下であるとよい。さらに、銀の割合が約6重量%以上約40重量%以下であるのが好ましい。
この発明は、金、銀、銅及びシリコンを主成分として構成されるロウ材であって、上記シリコンの割合が0.9重量%より大きく19重量%未満であり、上記金の割合が40重量%より大きく、上記銀の割合が4重量%より大きく37重量%未満であることを特徴とするロウ材も提供する。
このロウ材は、シリコンの割合が約1重量%以上約18重量%以下であるとよい。また、金の割合が約41重量%以上約79重量%以下であり、銀の割合が約5重量%以上約36重量%以下であるとよい。
この発明は、金、銀及び銅並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であり、上記金の割合が80重量%未満であり、上記銀の割合が42重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は、ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約34重量%以下であるとよい。また、金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であるとよい。
この発明は、金、銀、銅、パラジウム及びアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、上記金の割合が82重量%未満であり、上記パラジウムの割合が34重量%未満であり、上記銀の割合が47重量%未満であるロウ材も提供する。
上記ロウ材はパラジウムの割合が約33重量%以下であるとよい。
また、上記ロウ材は上記金の割合が33重量%より大きく上記銀の割合が4重量%より大きければ好ましい。さらに、金の割合が約51重量%以上約56重量%以下であり、銀の割合が約5重量%以上約20重量%以下であるとよい。
そして、この発明は、金、銀、銅及びパラジウム並びにアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる第1の添加元素及びリチウム又はマンガンの少なくとも一方の元素からなる第2の添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、上記金の割合が78重量%未満であり、上記第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であり、上記パラジウムの割合が32重量%未満であり、上記銀の割合が48重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上約37重量%以下であれば好ましい。
また、このロウ材は金の割合が33重量%より大きく銀の割合が5重量%より大きければ好ましい。さらに、金の割合が約34重量%以上約77重量%以下であり、銀の割合が6重量%以上47重量%以下であるのが好ましい。
さらに、この発明は、金、銀、銅、パラジウム及びニッケル並びにアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる第1の添加元素及びリチウム又はマンガンの少なくとも一方の元素からなる第2の添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であり、上記金の割合が74重量%未満であり、上記第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であり、上記パラジウムの割合が31重量%未満であり、上記ニッケルの割合が16重量%未満であり、上記銀の割合が47重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は、第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上約34重量%以下であれば好ましい。また、金の割合が35重量%より大きく、銀の割合が6重量%より大きいとよい。さらに、金の割合が約36重量%以上約73重量%以下であり、銀の割合が7重量%以上約46重量%以下であるとよい。
そしてさらにこの発明は、金、銀、銅、パラジウム及びゲルマニウムを主成分として構成されるロウ材であって、上記ゲルマニウムの割合が4重量%より大きく26重量%未満であり、上記金の割合が28重量%より大きく76重量%未満であり、上記パラジウムの割合が36重量%未満であり、上記銀の割合が51重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は、ゲルマニウムの割合が約5重量%以上約25重量%以下であるとよい。また、上記金の割合が約29重量%以上約75重量%以下であり、上記銀の割合が約5重量%以上約50重量%以下であるとよい。
またこの発明は、金、銀、銅、パラジウム及びシリコンを主成分として構成されるロウ材であって、上記シリコンの割合が0.9重量%より大きく17重量%未満であり、上記金の割合が30重量%より大きく72重量%未満であり、上記パラジウムの割合が38重量%未満であり、上記銀の割合が2重量%より大きく34重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は、シリコンの割合が約1重量%以上約16重量%以下であるとよい。また、上記金の割合が約40重量%以上約71重量%以下であり、上記銀の割合が約3重量%以上約32重量%以下であり、上記パラジウムの割合が約5重量%以上約37重量%以下であると好ましい。
さらにこの発明は、金、銀、銅及びパラジウム並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、上記金の割合が83重量%未満であり、上記パラジウムの割合が35重量%未満であり、上記銀の割合が49重量%未満であるロウ材も提供する。
このロウ材は、ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約37重量%以下であるのが好ましい。また、金の割合が約53重量%以上約56重量%以下であり、銀の割合が約5重量%以上約18重量%以下であると一層好ましい。
そしてこの発明は、金、銀、銅、パラジウム及びニッケル並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、上記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく37重量%未満であり、上記金の割合が74重量%未満であり、上記パラジウムの割合が27重量%未満であり、上記ニッケルの割合が18重量%未満であり、上記銀の割合が47重量%未満であると好ましい。
また、ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約36重量%以下であるとよい。金の割合が約52重量%以上約54重量%以下であり、銀の割合が約5重量%以上約19重量%以下であると一層好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、この発明によるロウ材を実施するための最良の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
〔第1のロウ材〕
まず、この発明による第1のロウ材であるAu−Ag−Cu系のロウ材について説明する。Au−Ag−Cu系のロウ材は、金(Au)及びAuと全率固溶する金属並びに金属又は半導体の元素からなる添加元素を主成分として構成されている。この実施の形態ではAuと全率固溶する金属として、銀(Ag)及び銅(Cu)を用いている。また、添加元素には、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、シリコン(Si)、錫(Sn)、鉛(Pb)、テルル(Te)又はタリウム(Tl)の少なくとも1種類以上の元素を用いている。このAu−Ag−Cu系のロウ材は、次のようにして作製している。まず、Au,Ag,Cuと、添加元素とを所望の組成になるように秤量して、それらの金属を真空溶解法により溶解して合金を作製する。その後、その合金をアルゴン(Ar)雰囲気中で厚さ約60μmの細長い箔形状(リボン形状)に加工することによって作製している。
そして、このAu−Ag−Cu系のロウ材について、Au,Ag,Cuの割合(重量%)を適宜変えるとともに、添加元素を構成するそれぞれの元素の種類と組成の割合(重量%)とを適宜変えながら、表1に示す実施例1−1〜1−12の12通りのサンプルと、表2に示す比較例1−1〜1−8の8通りのサンプルとの合計20通りのサンプルを用意した。その際、添加元素はSi,Te,Biのそれぞれが1種類の場合と、2種類以上の場合とについてサンプルを用意した。2種類以上の添加元素は次の場合について行った。
Si及びIn(実施例1−2,1−7〜1−9及び比較例1−5,1−6)
Ge,Al及びSb(実施例1−3);Ge,In及びGa(実施例1−4)
Bi,Sn及びTe(実施例1−5)
Pb,Si及びTl(実施例1−6及び比較例1−3)
Al,In及びTe(比較例1−4)
Ge及びSb(実施例1−10〜1−12及び比較例1−7,1−8)
また、用意した各サンプルの特性を調べるため、ステンレス鋼部材を母材とし、その材質をSUS316Lに設定してロウ付けを行った。各サンプルの特性は表1及び表2に示すa)からf)までの6つの項目、すなわち、a)融点(℃)、b)ロウ付け温度(℃)、c)SUS316Lに対する濡れ性、d)SUS316Lの結晶粗大化、e)接合強度(MPa)、f)耐食性を選んだ。各サンプルの中でこの発明の目的とするロウ材として適切と思われるものを実施例とし、各実施例と特性を比較するためのサンプルを比較例としている。なお、e)接合強度とf)耐食性は以下の試験を行うことによって確認している。
(ロウ材の接合強度試験及び耐食性試験)
ロウ材の接合強度と耐食性の試験は、第3図に示す金属部材17を作製して行っている。この金属部材17は次のようにして作製している。まず、長さ約25mm×幅約5mm×厚さ約1mmの2枚のSUS316Lからなるステンレス鋼板15,16を十字状に重ね合わせ、そのステンレス鋼板15,16が接触する交差部18にロウ材19を挟み込む。このロウ材19に上述した20通りのサンプルを用いる。そして、その交差部18を図示しない治具で固定した後、水素還元雰囲気中で表1,2に示すそれぞれのロウ付け温度で10分間加熱した後に急冷する。こうして、各サンプルを用いて金属部材17を20通り作製する。
そして、接合強度は図示しない治具を用いてステンレス鋼板15,16を第4図に示すように、厚さ方向a,bに引っ張り試験を行うことで測定した。耐食性は金属部材17の各サンプルについて、ISO3370に規定されたCASS試験により確認した。
また、比較のためロウ材19に、従来から知られているロウ材のNi基ロウ材(Ni:82.45重量%、Cr:7重量%、B:3重量%、Si:4.5重量%,Fe:3重量%、C:0.05重量%)と、Ag基ロウ材(Ag:58重量%、Cu:32重量%、Pd:10重量%)を用いて、それぞれ上述の要領で金属部材17を作製し、接合強度と耐食性の試験を行った。その結果は表3に示すとおりである。なお、表3において、元素記号の添え字は、ロウ材を構成する各元素の組成割合を示している。例えば、比較例1−10のロウ材は、Ag:58重量%、Cu:32重量%、Pd:10重量%である。
表3に示すように従来のロウ材は融点が800℃を超えている。これに対し、表1に示すように実施例1−1〜1−12のロウ材は、融点がいずれも800℃以下であり、これらについてはロウ付け温度も800℃以下となった。しかし、表2に示すように比較例1−1〜1−4及び1−6では、融点が800℃を超えてしまい、ロウ付け温度も800℃を越えてしまった(融点が800℃を超える場合は、いずれのサンプルもSUS316Lの結晶粗大化を引き起こしている)。SUS316Lに対する濡れ性は、実施例1−1〜1−12のサンプルすべてについて良好な結果が得られたが、比較例1−1〜1−7はやや良いに留まり十分ではなかった。また、SUS316Lに対する結晶組織の粗大化は、従来のロウ材のいずれにも発生し(比較例1−9,1−10)、比較例1−1〜1−4及び1−6でも発生した。これに対し、実施例1−1〜1−12のいずれについても、結晶組織の粗大化はみられなかった。接合強度は最低でも590MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好であった。耐食性は比較例1−8を除き、実施例1−1〜1−12と他の比較例が良好な結果を示した。
表1〜表3に示す結果からみて、Au−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となるために必要なAu,Ag,Cuの割合と、添加元素の種類及び割合は以下のようになる。
まず、Au−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となるためには、融点が母材の結晶粗大化温度以下であり、母材の結晶組織の粗大化が起こらない低い温度での接合(以下「低温接合」という)が可能でなければならない。母材をステンレス鋼部材に設定すると、その結晶粗大化温度は800℃に設定されるから、ロウ材の融点は800℃以下でなければならないこととなる(以下この条件を「条件A」とする)。
実施例1−1〜1−12の各サンプルはこの条件Aを満たしているが、比較例1−1〜1−4及び1−6はこの条件Aを満たしていない。比較例1−1〜1−4及び1−6と実施例1−1〜1−12とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
一方、比較例1−1〜1−4のように添加元素の割合の合計が1重量%に過ぎない場合と、36重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例1−1〜1−12に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれも添加元素の割合が合計で1重量%より大きく36重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためには添加元素の割合が合計で1重量%より大きく36重量%未満でなければならない。この点、特に実施例1−1〜1−12に示される値からみて、添加元素の割合が合計で約2重量%以上約35重量%以下であるのが好ましい。また、添加元素の割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例1−6に示すようにAuの割合が80重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例1−1〜1−12に示すようにAuの割合が80重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が80重量%未満であればよく、約79重量%以下であるのが好ましい。
次に、Au−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となるためには耐食性が良好でなければならない(以下この条件を「条件B」とする)。表1、表2の各サンプルをみると、耐食性が不十分なサンプルは比較例1−8のみでその他のサンプルでは良好である。この比較例1−8に示すサンプルはAgの割合が42重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が42重量%未満である。したがって、Agの割合が42重量%未満であれば条件Bをみたす。
そして、Au−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となるためには、十分な接合強度が確保されなければならない(以下この条件を「条件C」とする)。表1、表2をみると、上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも590MPaであり、いずれも従来のロウ材(比較例1−9,1−10)よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たすサンプルはいずれもこの条件Cを満たしている。
さらに、比較例1−5に示すようにAuの割合が34重量%になる場合、比較例1−7に示すようにAgの割合が5重量%になる場合は、いずれもステンレス鋼に対する濡れ性が不十分になる。したがって、上述の条件A,Bをともに満たす場合でも、Auの割合が34重量%より大きくAgの割合が5重量%より大きいことが好ましい。また、Agの割合が5重量%より大きい場合でも、特にAgの割合が約6重量%以上約41重量%以下の範囲内にある場合には、ロウ材の色はAgの銀白色の度合いが高くなりステンレス鋼の色に近くなる。そうすると、そのロウ材を用いてステンレス鋼部材の接合を行ったときに、ロウ付けして接合した部分を目立たなくすることができるから、そのロウ材は外観の装飾性を要求される部材(例えば、後述する時計ケース)の接合を行うのに好ましいものとなる。
特に実施例1−10,1−11のサンプルではステンレス鋼に対する濡れ性が一層良好であることを考慮すると、以上の条件に加えAuの割合及びAgの割合が次の条件を満たすことが好ましい。
Auの割合が約47重量%以上約64重量%以下であること
Agの割合が約6重量%以上約20重量%以下であること
Agの割合が6重量%以上20重量%以下の場合は、ステンレス鋼に対する濡れ性がその表面上で特に広範囲に広がるほど良好なロウ材になった。
以上のとおり、Au−Ag−Cu系のロウ材は、添加元素及びAuが条件Aを満たす範囲内にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば低温接合が可能で母材の結晶組織の粗大化を起こさずに接合することができる。この場合、ステンレス鋼部材は接合前の面状態が維持されているため従来のロウ材(Ni基ロウ材,Ag基ロウ材)よりも好ましいロウ材となる。また、良好な耐食性が確保され、接合強度が従来のロウ材よりも良好となり、十分な接合強度が得られる。そのため、Au−Ag−Cu系のロウ材がこれらの条件を満たす場合には、低温接合を可能とし良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。このロウ材は、ステンレス鋼部材(例えば、後述する時計ケース2)をロウ付けにより製造する場合のロウ材として好ましいロウ材になる。さらに、Au及びAgがともに上述の条件を満たせば、ステンレス鋼に対する濡れ性が一層良好となりより好ましいロウ材となる。
次に、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となる理由を第6図〜第11図に示す合金の2元系状態図を参照して詳しく説明する。第6図は横軸がAgに対するAuの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Auの2元系状態図、第7図は横軸がCuに対するAuの割合を示し、縦軸が融点を示すCu−Auの2元系状態図、第8図は横軸がAgに対するCuの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Cuの2元系状態図である。また第9図は横軸がAuに対するGeの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Geの2元系状態図、第10図は横軸がAuに対するSiの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Siの2元系状態図、第11図は横軸がAuに対するSnの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Snの2元系状態図である。いずれの状態図も、下記の文献1にそれぞれの詳しい説明が記載されている。
文献1:Binary Alloy Phase Diagrams volume1,volume2 American Society for Metals Metals Park,Ohio 44073
AgとAuの合金は、第6図に示すように、Auの割合を減少させていくにつれて融点が約1064℃から漸次低下していく。そして、Auの割合が0になった時点で融点が最も低い約961℃になる。
CuとAuの合金は、第7図に示すようにAuの割合を減少させていくにつれて融点が約1064℃から漸次低下していく。そして、Auの割合が約80重量%付近になった時点で融点が最も低い約889℃となった後上昇し、Auの割合が0になった時点で約1084℃になる。
また、AgとCuの合金は、第8図に示すように、Cuの割合を減少させていくにつれて融点が約1084℃から漸次低下していく。そして、Cuの割合が約28重量%(Agの割合が約72重量%)になった時点で融点が最も低い約780℃になる。このとき、AgとCuの合金は共晶組成となり、融点が大幅に低下する。この共晶組成となった状態を「Ag−Cuの共晶」とする。
Au−Ag−Cu系のロウ材は、Au,Ag,Cuに対して添加元素を加えている。この添加元素はそれぞれAuに対する割合がある値になったとき、Auとともに形成する合金の融点が大幅に低下する共晶点を持っている。この共晶点を以下「添加元素の共晶」という(添加元素(例えばGe)はAgと共晶組成になることもある)。
この添加元素の共晶について、Au−Ge,Au−Si,Au−Snの3つの場合を例にとり、第9図〜第11図に示す合金の2元系状態図を参照して詳しく説明する。
AuとGeの合金は第9図に示すように、Geの割合を減少させていくにつれて融点が約938℃から漸次低下していく。そして、Geの割合が約12.5重量%(Auの割合が約87.5重量%)になった時点で融点が最も低い約361℃になった後、約1064℃まで融点が上昇する。AuとGeの合金はこの融点が最も低い状態になったときに共晶を形成する組成(共晶組成)となる。この共晶組成となった状態を「Au−Geの共晶」とする。
AuとSiの合金は第10図に示すように、Siの割合を減少させていくにつれて融点が約1414℃から漸次低下していく。そして、Siの割合が約3.2重量%(Auの割合が約96.8重量%)になった時点で融点が最も低い約363℃になった後、約1064℃まで上昇する。AuとSiの合金は融点が最も低いこの状態になったときに共晶組成となる。この共晶組成となった状態を「Au−Siの共晶」とする。
AuとSnの合金は第11図に示すように、Snの割合を増加させていくにつれて融点が約1064℃から漸次低下していく。そして、Snの割合が約20重量%(Auの割合が約80重量%)になった時点で融点が約278℃に低下した後、約419℃まで上昇して再び低下する。AuとSnの合金は融点が約278℃に低下したときに共晶組成となる。この共晶組成となった状態を「Au−Snの共晶」とする。
これらAu−Ge,Au−Si,Au−Snの3つの合金はいずれも共晶組成になると融点が大幅に低下しているように、Auと各添加元素の合金はそれぞれ共晶組成になると融点が大幅に下がるという性質を有している。このことからみて、Au−Ag−Cu系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となるのは、上述したAg−Cuの共晶とともに、その添加元素の共晶を利用し得る特定の組成の場合と考えられる。ただし、Ag,CuはAuと全率固溶する金属であり、Auと置換される形になる。そのため、Ag,Cuの割合が不適切であると、Auと添加元素の割合が共晶組成から外れてしまうおそれがある。そうなると、添加元素の共晶による融点の低下が期待できなくなり、均一な固溶体の形成も困難になる。
これらの点からみて、Au−Ag−Cu系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu及び添加元素のそれぞれの割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在し、実験結果から求められた上述の範囲がそれぞれの望ましい範囲であると考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu系のロウ材は、次の条件1)〜3)をすべて満たす場合には、Ag−Cuの共晶とともに、Auとその添加元素の共晶とを利用して、低温接合が可能で接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になる。この場合、母材であるステンレス鋼部材は、結晶組織の粗大化が起こることがなく表面は接合前の状態が維持されるため、外観の装飾性を損なわずに接合を行うことができる。
条件1) 添加元素の少なくとも1種類以上の割合が合計で1重量%より大きく、36重量%未満の範囲であること
条件2) Auの割合が80重量%未満であること
条件3) Agの割合が42重量%未満であること
また、この組成でも、次の条件4)を満たす場合にはAu−Ag−Cu系のロウ材はステンレス鋼に対する濡れ性が良好になる。
条件4) Auの割合が34重量%より大きくAgの割合が5重量%より大きいこと
これらの条件に加えて、さらに、次の条件5)を満たす場合にはロウ材の色がAgの銀白色の度合いが高くなりステンレス鋼の色に近くなる。
条件5) Agの割合が約6重量%以上約41重量%以下であること
そしてさらに、次の条件6)及び7)を満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件6) Auの割合が約47重量%以上約64重量%以下であること
条件7) Agの割合が約6重量%以上約20重量%以下であること
〔第2のロウ材〕
続いて、この発明による第2のロウ材であるAu−Ag−Cu−Ge系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cu,Geの4種類の元素を主成分として構成され、上述した第1のロウ材の添加元素をGeのみ1種類に特定したものである。このロウ材は元素が異なるが、第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Ge系のロウ材についても、Au,Ag,Cu及びGeの割合(重量%)を適宜変えながら、表4に示す実施例2−1〜2−10の10通りのサンプルと、比較例2−1〜2−7の7通りのサンプルとの合計17通りのサンプルを用意した。用意した各サンプルの特性を調べるため、材質をSUS316Lに設定したステンレス鋼部材を母材にしてロウ付けを行い、各サンプルについてa)融点、c)SUS316Lに対する濡れ性、の2つの項目を調べた。その他のb)ロウ付け温度、d)SUS316Lの結晶粗大化、e)接合強度、f)耐食性の4つの項目については、実施例2−8,2−9と、比較例2−6,2−7の4通りのサンプルについて調べた。その結果は表5に示す通りである。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表4に示すように実施例2−1〜2−10のサンプルは融点が最高でも780℃(実施例2−4)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例2−1〜2−3は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例2−1〜2−10のサンプルすべてについて良好な結果が得られたが、比較例2−6を除く比較例2−1〜2−5と比較例2−7はやや良いに留まり十分ではなかった。また、表5に示すようにロウ付け温度は、比較例2−7が800℃を超えたほかはいずれも800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例2−7で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも840MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例2−6を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
Au−Ag−Cu−Ge系のロウ材も、第1のロウ材と同様に上述の条件A,B,Cの3つの条件を満たさねばならないが、表4及び表5に示す結果からみて、そのための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例2−1〜2−3と実施例2−1〜2−10とには、Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAg,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例2−1〜2−3に示すようにGeの割合が4重量%に過ぎない場合と、24重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例2−1〜2−10に示すように条件Aを満たすサンプルはいずれもGeの割合が4重量%より大きく24重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためにはGeが4重量%より大きく24重量%未満でなければならない。この点、特に実施例2−1〜2−10に示される値からみて、Geの割合は約5重量%以上約23重量%以下であるのが好ましい。しかし、Geの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例2−3に示すようにAuの割合が34重量%になると800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例2−1〜2−10に示すようにAuの割合が34重量%より大きくなれば融点が800℃よりも低くなり条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が34重量%より大きければよく、約35重量%以上であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例2−6のみでその他は良好である。この比較例2−6はAgの割合が41重量%になっており、その他のサンプルはAgの割合が41重量%未満である。したがって、Agの割合が41重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも880MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、条件A,Bを満たすサンプルでも、実施例2−4〜2−10のように以下の条件をすべて満たせばステンレス鋼に対する濡れ性が特に良好になる。
Auの割合が約35重量%以上約80重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上約40重量%以下であること
Geの割合が約10重量%以上約19重量%以下であること
特にAgの割合が約6重量%以上約40重量%以下の範囲にあればロウ材の色が銀白色に近くなり、ステンレス鋼部材のロウ付けした部分を目立たなくすることができる。
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Ge系のロウ材は、Ge及びAuがそれぞれ条件Aを満たす上述の範囲内にあり、Agが条件Bを満たす上述した範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au,Ag,Geがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。この場合、ロウ材がステンレス鋼部材の表面に広範囲に広がるため接合作業が行いやすくなり、より好ましいロウ材となる。
次に、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu−Ge系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となる理由を上述した第8図、第9図とともに、第12図、第13図に示す合金の2元系状態図を参照して詳しく説明する。
第12図は横軸がGeに対するAgの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Geの2元系状態図、第13図は横軸がGeに対するCuの割合を示し、縦軸が融点を示すCu−Geの2元系状態図であり、それぞれ上述の文献1に詳しい説明が記載されている。
AgとGeの合金は、第12図に示すようにAgの割合を増加させていくにつれて融点が約938℃から漸次低下していく。そして、Agの割合が約84重量%(Geが約16重量%)になった時点で融点が最も低い約651℃になり、その後融点が約961℃まで上昇する。AgとGeの合金は共晶組成となっているときに融点が大幅に低下している。この共晶組成となった状態を「Ag−Geの共晶」とする。
CuとGeの合金は、第13図に示すようにCuの割合を増加させていくにつれて融点が約938℃から漸次低下していく。そして、Cuの割合が約60.4重量%(Geが約39.6重量%)になった時点で融点が最も低い約644℃となった後上昇し、Cuの割合が100になった時点で約1084℃になる。CuとGeの合金は融点が最も低いこの状態になったときに共晶組成となる。この共晶組成となった状態を「Cu−Geの共晶」とする。
第2のロウ材はAu−Ag−Cuに対してGeを加えたものであるから、第1のロウ材と同様にAg−Cuの共晶を利用する組成が考えられる。また、第9図,第12図及び第13図に示すようにGeはAu,Ag,Cuに対する割合がある値になるとAu,Ag,Cuと共晶を形成する。そして、Au−Geの合金、Ag−Geの合金及びCu−Geの合金はそれぞれ上述したAu−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶を形成する共晶組成になると融点が低下している。しかし、添加されるAgとCuは、Auと置換される形になるから、これらの量が不適切だと共晶組成から外れてしまうおそれがある。第2のロウ材はこのようなAu−Geの共晶,Ag−Geの共晶又はCu−Geの共晶のいずれかを利用する特定の組成になったときに融点が低下し、すべて利用する組成になれば融点が一層低下すると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Ge系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu及びGeのそれぞれの割合にもこの発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表4,5に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Ge系のロウ材は次の条件8)〜10)をすべて満たす場合には、Ag−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶及びCu−Geの共晶の4つの共晶を利用して、低温接合が可能であり、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になる。
条件8) Geの割合が4重量%より大きく24重量%未満であること
条件9) Auの割合が34重量%より大きいこと、
条件10) Agの割合が41重量%未満であること
また、この組成でも、次の条件11)〜13)をすべて満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件11) Auの割合が約35重量%以上約80重量%以下であること
条件12) Agの割合が約5重量%以上約40重量%以下であること
条件13) Geの割合が約10重量%以上約19重量%以下であること
〔第3のロウ材〕
続いて、この発明による第3のロウ材であるAu−Ag−Cu−Si系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cu,Siの4種類の元素を主成分として構成され、上述した第1のロウ材の添加元素をSiのみ1種類に特定したものである。このロウ材は元素が異なるが、第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Si系のロウ材についても、Au,Ag,Cu及びSiの割合(重量%)を適宜変えながら、表6に示す実施例3−1〜3−11の11通りのサンプルと、比較例3−1〜3−6の6通りのサンプルとの合計17通りのサンプルを用意した。用意した各サンプルの特性を調べるため、材質をSUS316Lにしたステンレス鋼部材を母材にしてロウ付けを行い、第2のロウ材と同様に各サンプルについて、a)融点、c)SUS316Lに対する濡れ性、の2つの項目を調べ、その他の4つの項目は実施例3−9,3−10と、比較例3−5,3−6の4つのサンプルについて調べた。その結果は表7に示す通りである。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表6に示すように実施例3−1〜3−11のサンプルは融点が最高でも782℃(実施例3−1)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例3−1〜3−3,3−5は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例3−1〜3−11のサンプルすべてについて良好な結果が得られたが、比較例3−1,3−6を除く比較例3−2〜3−5はやや良いに留まり十分ではなかった。また、表7に示すようにロウ付け温度は、比較例3−5が800℃を超えたほかはいずれも800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例3−5で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも770MPaであり、いずれのサンプルも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例3−6を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
Au−Ag−Cu−Si系のロウ材も、第1のロウ材と同様に上述の条件A,B,Cの3つの条件を満たさねばならないが、表6及び表7に示す結果からみて、そのための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例3−1〜3−3,3−5と実施例3−1〜3−11とにはAu,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例3−1〜3−3に示すようにSiの割合が0.9重量%に過ぎない場合と、19重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例3−1〜3−11に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれもSiの割合が0.9重量%より大きく19重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためにはSiの割合が0.9重量%より大きく19重量%未満でなければならない。この点、特に実施例3−1〜3−11に示す値からみて、Siの割合は約1重量%以上約18重量%以下であるのが好ましい。しかし、Siの割合をこの範囲内に限定しても、比較例3−3のようにAuの割合が40重量%になると800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例3−1〜3−11に示すようにAuの割合が40重量%より大きくなれば融点が800℃よりも低くなり条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が40重量%より大きくなければならない。さらに、Auの割合をこの範囲内に限定しても、比較例3−5のようにAgの割合が4重量%になると800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例3−1〜3−11に示すようにAgの割合が4重量%より大きくなれば融点が800℃よりも低くなり条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAgの割合が4重量%より大きくなればよく、約5重量%以上であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なものは比較例3−6のみでその他のサンプルでは良好である。この比較例3−6をみるとAgの割合が37重量%になっており、その他のサンプルはAgの割合が37重量%未満である。したがって、Agの割合が37重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすものは接合強度が最低でも770MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、条件A,Bを満たすサンプルでも、実施例3−5〜3−11のように以下の条件をすべて満たせばステンレス鋼に対する濡れ性は特に良好になる。
Auの割合が約41重量%以上で約79重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上で約36重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Si系のロウ材は、Si,Au,Agがそれぞれ条件Aを満たす上述の範囲内にあり、Agが条件Bを満たす上述の範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au,Agがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。この場合、ロウ材がステンレス鋼部材の表面に広範囲に広がるため接合作業が行いやすくなり、より好ましいロウ材となる。
次に、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu−Si系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となる理由を上述した第8図、第10図とともに第14図に示す合金の2元系状態図を参照して詳しく説明する。
第14図は、横軸がSiに対するAgの割合を示し、縦軸が融点を示すSi−Agの2元系状態図であり、上述の文献1に詳しい説明が記載されている。
AgとSiの合金は、Agの割合を増加させていくにつれて融点が約1414℃から漸次低下していく。そして、Agの割合が約97重量%(Siが約3重量%)になった時点で融点が最も低い約845℃に低下し、その後融点が約961℃まで上昇する。AgとSiの合金は共晶組成になると融点が大幅に低下する。この共晶組成となった状態を「Ag−Siの共晶」とする。
第3のロウ材は、Au−Ag−Cuに対してSiを加えたものであるから、第1のロウ材と同様にAg−Cuの共晶を利用する組成が考えられる。また、第10図及び第14図に示すように、SiはAu又はAgに対する割合がある値になるとAu又はAgと共晶を形成する。そして、Au−Siの合金及びAg−Siの合金はそれぞれ上述したAu−Siの共晶、Ag−Siの共晶を形成する共晶組成になると融点が低下するが、添加するAg及びCuの量が不適切だと共晶組成から外れてしまうおそれがある。したがって、Au−Ag−Cu−Si系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu及びSiのそれぞれの割合にもこの発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表6,7に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Si系のロウ材は、次の条件14)〜16)をすべて満たす場合にはAg−Cuの共晶、Au−Siの共晶、Ag−Siの共晶の3つを利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になる。
条件14) Siの割合が0.9重量%より大きく19重量%未満であること 条件15) Auの割合が40重量%より大きいこと
条件16) Agの割合が4重量%より大きく37重量%未満であること
また、この組成でも、次の条件17),18)をともに満たす場合はステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件17) Auの割合が約41重量%以上で約79重量%以下であること
条件18) Agの割合が約5重量%以上で約36重量%以下であること
〔第4のロウ材〕
続いて、この発明による第4のロウ材であるAu−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au及びAuと全率固溶する金属並びにGe,Si及びSnのいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成され、上述した第1のロウ材の添加元素をGe,Si,Snの3種類に特定したものである。ここでは、Auと全率固溶する金属として、Ag及びCuを用いている。なお、このロウ材は元素が異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材についても、Au,Ag,Cu,Ge,Si,Snの6種類の元素と組成の割合(重量%)を適宜変えながら、表8及び表9に示す実施例4−1〜4−28の28通りのサンプルと、比較例4−1〜4−11の11通りのサンプルとの合計39通りのサンプルを用意した。用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表8及び表9に示すように、実施例4−1〜4−28のロウ材は、融点が最高でも743℃(実施例4−5)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例4−1〜4−7,4−9は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例4−1〜4−28のサンプルすべてについて良好な結果が得られたが、比較例4−11を除いて他の比較例はいずれもやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例4−1〜4−28のいずれもが800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例4−1〜4−7,4−9で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも600MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例4−11を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
Au−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材も、第1のロウ材と同様に上述の条件A,B,Cの3つの条件を満たさねばならないが、表8及び表9に示す結果からみて、そのための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例4−1〜4−7及び4−9と実施例4−1〜4−28とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例4−1〜4−7に示すようにGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%に過ぎない場合と、35重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例4−1〜4−28に示すように条件Aを満たすサンプルはいずれもGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためにはGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満でなければならない。この点、特に実施例4−1〜4−28に示される値からみて、Ge,Si及びSnの合計は約2重量%以上約34重量%以下であるのが好ましい。また、Ge,Si及びSnの合計がこの範囲内にある場合でも、比較例4−9に示すようにAuの割合が80重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例4−1〜4−28に示すようにAuの割合が80重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が80重量%未満であればよく、約79重量%以下であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例4−11のみでその他は良好である。この比較例4−11はAgの割合が42重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が42重量%未満である。したがって、Agの割合が42重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも600MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cを満たされる。
さらに、条件A,Bを満たすサンプルでも、比較例4−8に示すようにAuの割合が34重量%になる場合、比較例4−10に示すようにAgの割合が5重量%になる場合は、いずれもステンレス鋼に対する濡れ性が不十分になる。したがって、上述の条件A,Bをともに満たす場合でも、Auの割合が34重量%より大きく、Agの割合が5重量%より大きいことが好ましい。Agの割合が5重量%より大きい場合でも、特にAgの割合が約6重量%から約41重量%の範囲内にある場合には、ロウ材の色がAgの銀白色の度合いが高くなりステンレス鋼の色に近くなる。
特に実施例4−26,4−27のサンプルではステンレス鋼に対する濡れ性が一層良好であることを考慮すると、以上の条件に加えAuの割合及びAgの割合が次の条件を満たすことが好ましい。
Auの割合が約47重量%以上約64重量%以下であること
Agの割合が約6重量%以上約20重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材は、Ge,Si及びSnの合計と、Auがそれぞれ条件Aを満たす範囲内にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au及びAgがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。
次に、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材がこの発明の目的とするロウ材となる理由を上述した第8図〜第14図とともに第15図に示す合金の2元系状態図を参照して詳しく説明する。
第15図は、横軸がAgに対するSnの割合を示し、縦軸が融点を示すSn−Agの2元系状態図であり、上述の文献1に詳しい説明が記載されている。
AgとSnの合金は、Snの割合を増加させていくにつれて融点が約981℃から漸次低下していく。そして、Snの割合が約96.5重量%(Agが約3.5重量%)になった時点で融点が最も低い約221℃に低下し、その後融点が約231℃まで上昇する。AgとSnの合金は共晶組成になると融点が低下しており、この共晶組成となった状態を「Ag−Snの共晶」とする。
第4のロウ材は、Au−Ag−Cuに対してGe,SiおよびSnを加えたものであるから、第2のロウ材と同様にAg−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶を利用する組成が考えられる。また、AuはSi,Snに対する割合がある値になると、Si,Snと共晶を形成するので、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶を利用する組成も考えられる。さらに、Agも、Si,Snに対する割合がある値になると、Si,Snと共晶を形成するので、Ag−Siの共晶、Ag−Snの共晶を利用する組成も考えられる。このことから、第4のロウ材は、Ag−Cuの共晶のほか、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の8つの共晶のいずれかを利用する組成になると融点が低下する。しかし、添加されるAg及びCuは、Auと置換される形になるから、これらの量が不適切だと共晶組成から外れてしまうおそれがある。したがって、Au−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Ge,Si,Snのそれぞれの割合にもこの発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表8,9に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Ge−Si−Sn系のロウ材は次の条件19)〜21)をすべて満たすときに、Ag−Cuの共晶のほか、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の8つの共晶を利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になる。
条件19) Ge,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であること
条件20) Auの割合が80重量%未満であること
条件21) Agの割合が42重量%未満であること
さらに、次の条件22),23)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性が良好になり好ましいロウ材になる。
条件22) Auの割合が約47重量%以上約64重量%以下であること
条件23) Agの割合が約6重量%以上約20重量%以下であること
〔第5のロウ材〕
続いて、この発明による第5のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cuに対して、Au,Ag,Cuと全率固溶するパラジウム(Pd)を加えた4種類の元素を主元素とし、この主元素に第1の添加元素を加えたものである。その第1の添加元素は、第1のロウ材の添加元素と同様に金属又は半導体の元素からなり、ここではAl,Bi,Ga,Ge,In,Sb,Si,Sn,Pb,Te又はTlの少なくとも1種類以上の元素としている。このAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、元素は異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材についても、Au,Ag,Cu及びPdの割合(重量%)を適宜変えるとともに、第1の添加元素を構成するそれぞれの元素の種類と組成の割合(重量%)とを適宜変えながら、表10に示す実施例5−1〜5−13の13通りのサンプルと、表11に示す比較例5−1〜5−9の9通りのサンプルとの合計22通りのサンプルを用意した。その際、第1の添加元素は、Ga,Al,Biのそれぞれが1種類の場合と、2種類以上の場合とについてサンプルを用意した。2種類以上の第1の添加元素は次の通りである。
Bi及びSi(実施例5−2);In,Ga及びTe(実施例5−3)
Al,Ge及びTl(実施例5−4);Pb及びSn(実施例5−5)
Sb,Ge及びTe(実施例5−6)
Sn及びBi(実施例5−7,比較例5−5)
Al及びGe(実施例5−8);Ge及びGa(実施例5−9,比較例5−6)Sn及びSb(実施例5−10,比較例5−7)
Ge及びPb(実施例5−11)
In及びSn(実施例5−12,比較例5−8)
In及びTl(実施例5−13,比較例5−9)
Ga,Si及びTe(比較例5−3);Te,Ga及びPb(比較例5−4)
また、用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表10及び表11に示すように、実施例5−1〜5−13のサンプルは融点が最高でも724℃(実施例5−9)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例5−1〜5−4,5−6,5−9は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は、実施例5−1〜5−13のサンプルでは良好であるが、比較例5−8を除く比較例5−1〜5−9のサンプルはいずれもやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例5−1〜5−13のいずれもが800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例5−1〜5−4,5−6,5−9で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも590MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例5−8を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
Au−Ag−Cu−Pd系ロウ材も、第1のロウ材と同様に上述の条件A,B,Cの3つの条件を満たさねばならないが、表10及び表11に示す結果からみて、そのための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例5−1〜5−4,5−6,5−9と実施例5−1〜5−13とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例5−1〜5−4のように第1の添加元素の割合の合計が1重量%に過ぎない場合と、38重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例5−1〜5−13に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれも第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためには第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満でなければならない。この点、特に実施例5−1〜5−13に示す値からみて、第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上で約37重量%以下であるのが好ましい。しかし、第1の添加元素の割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例5−6に示すようにAuの割合が82重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例5−1〜5−13に示すようにAuの割合が82重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が82重量%未満であればよい。さらに、Auの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例5−9のようにPdの割合を34重量%にすると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。しかし、Pdの割合が34重量%未満であればいずれのサンプルも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が34重量%未満であればよく、約33重量%以下であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例5−8のみでその他は良好である。この比較例5−8はAgの割合が47重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が47重量%未満である。したがって、Agの割合が47重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも590MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cを満たされる。
さらに、比較例5−5に示すようにAuの割合が33重量%になる場合、比較例5−7に示すようにAgの割合が4重量%になる場合は、いずれもステンレス鋼に対する濡れ性が不十分になる。したがって、上述の条件A,Bをともに満たす場合でも、Auの割合が33重量%より大きくAgの割合が4重量%より大きいことが好ましい。特に、実施例5−10,5−11より、濡れ性をさらに良好にするには、次の2つの条件を満たすのがよい。
Auの割合が約51重量%以上約56重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上約20重量%以下であること
また、ステンレス鋼に対する濡れ性は考慮するなら、Pdの割合は34重量%よりも少ない方がよい。Pdを添加することによりロウ材の色味が銀白色の度合いが高まり、ステンレス鋼の色に近くなる。そうなると、ステンレス鋼部材をロウ付けしたとき、その接合部分を目立たなくすることができる。
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、第1の添加元素、Au及びPdが条件Aを満たす上述の範囲内にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au,Ag又はPdがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。この場合、ロウ材がステンレス鋼部材の表面に広範囲に広がるため接合作業が行いやすくなり、より好ましいロウ材となる。
そして、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、Au−Ag−Cuに対してPdと第1の添加元素を加えたものであるから、Ag−Cuの共晶と、上述した添加元素の共晶とを利用する組成が考えられる。また、Agと添加元素(例えばSi)とが共晶組成になる場合もあり、Pdと添加元素(例えばGe)とが共晶組成になる場合もある。このロウ材はこれらの共晶を形成することにより、融点が低下していると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Pd系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd及び第1の添加元素のそれぞれの割合にはこの発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表10及び表11に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、次の条件24)〜27)をすべて満たす場合に、少なくともAg−Cuの共晶及び添加元素の共晶の2つを利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件24) 第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であること
条件25) Auの割合が82重量%未満であること
条件26) Pdの割合が34重量%未満であること
条件27) Agの割合が47重量%未満であること
また、この組成でも、次の条件28),29)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を良好にすることができる。
条件28) Auの割合が33重量%より大きいこと
条件29) Agの割合が4重量%より大きいこと
さらに、次の条件30),31)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件30) Auの割合が約51重量%以上約56重量%以下であること
条件31) Agの割合が約5重量%以上約20重量%以下であること
〔第6のロウ材〕
次に、この発明による第6のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材について説明する。このロウ材は、第5のロウ材と比較して、第1の添加元素のほかに第2の添加元素を加えている点で相違している。その第2の添加元素は、ここでは、マンガン(Mn)又はリチウム(Li)のいずれか少なくとも一方の金属元素としている。このロウ材も、第1のロウ材と元素は異なるが同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材についても、Au,Ag,Cu及びPdの割合(重量%)を適宜変えるとともに、第1の添加元素を構成するそれぞれの元素の種類と組成の割合(重量%)とを変更し、第2の添加元素の組成の割合(重量%)を適宜変えながら、表12に示す実施例6−1〜6−13の13通りのサンプルと、表13に示す比較例6−1〜6−11の11通りのサンプルとの合計24通りのサンプルを用意した。その際、第1の添加元素は、Si,Pb,Sbのそれぞれが1種類の場合と、2種類以上の場合とについてサンプルを用意した。2種類以上の添加元素は次の通りである。
Te及びSi(実施例6−2);Ge,Sn及びGa(実施例6−3)
Al,Sn及びBi(実施例6−4);Ge,Sn及びSb(実施例6−5)
Sb,Sn及びPb(実施例6−6)
Sn及びAl(実施例6−7,比較例6−5)
Bi及びGe(実施例6−8);Si及びIn(実施例6−9,比較例6−6)
Ge及びPb(実施例6−10,比較例6−7)
In及びGa(実施例6−11)
In及びSn(実施例6−12,比較例6−8)
In及びTl(実施例6−13,比較例6−9)
In,Ge及びGa(比較例6−3);Ga,Si及びAl(比較例6−4)
Sn及びSb(比較例6−10);Sn及びTe(比較例6−11)
また、用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表12及び表13に示すように、実施例6−1〜6−13のサンプルは融点が最高でも644℃(実施例6−1,6−9,6−13)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例6−1〜6−4,6−6,6−9〜6−11は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は、実施例6−1〜6−13のサンプルでは良好であるが、比較例6−8〜6−11を除く比較例6−1〜6−7のサンプルはいずれもやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例6−1〜6−13のいずれもが800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例6−1〜6−4,6−6,6−9〜6−11で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも590MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例6−8を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
Au−Ag−Cu−Pd系のロウ材は上述の条件A,B,Cの3つの条件を満たさねばならないが、表12及び表13に示す結果からみて、そのための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例6−1〜6−4,6−6,6−9〜6−11と実施例6−1〜6−13とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例6−1〜6−4のように第1の添加元素の割合が合計で1重量%に過ぎない場合と、38重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例6−1〜6−13に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれも第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためには第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満でなければならない。この点、特に実施例6−1〜6−13に示す値からみて、第1の添加元素の合計が約2重量%以上約37重量%以下であるのが好ましい。しかし、第1の添加元素の割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例6−6に示すようにAuの割合が78重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例6−1〜6−13に示すようにAuの割合が78重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が78重量%未満であればよい。さらに、Auの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例6−10と6−11のように第2の添加元素を合計して3重量%の割合で添加すると、融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。したがって、条件Aを満たすためには、第2の添加元素の割合を合計で3重量%未満にしなければならない。さらに、比較例6−9のようにPdの割合を32重量%にすると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなるが、32重量%未満にすればいずれのサンプルも条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が32重量%未満であればよく、約31重量%以下であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例6−8のみでその他は良好である。この比較例6−8はAgの割合が48重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が48重量%未満である。したがって、Agの割合が48重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも590MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、Auの割合が比較例6−5のように33重量%になる場合、比較例6−7に示すようにAgの割合が5重量%になる場合は、いずれもステンレス鋼に対する濡れ性が不十分になる。したがって、上述の条件A,Bをともに満たす場合でも、Auの割合が33重量%より大きくAgの割合が5重量%より大きいことが好ましい。特に、実施例6−1〜6−13のいずれのサンプルも濡れ性が大変良好であることからすると、さらに次の2つの条件を満たすのが好ましい。これは、第2の添加元素の融点効果作用に起因していると考えられる。
Auの割合が約34重量%以上約77重量%以下であること
Agの割合が約6重量%以上約47重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、第1及び第2の添加元素,Au,Pdがいずれも条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au,Agがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。この場合、ロウ材がステンレス鋼部材の表面に広範囲に広がるため接合作業が行いやすくなり、より好ましいロウ材となる。
そして、上述した特定の割合で構成されるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材は、Au−Ag−Cuに対してPdと第1及び第2の添加元素を加えたものであるから、Ag−Cuの共晶と、上述した添加元素の共晶とを利用する組成が考えられる。さらには、Agと第1の添加元素(例えばSi)とが共晶組成になる場合もあり、Pdと第1の添加元素(例えばGe)とが共晶組成になる場合もある。このロウ材はこれらの共晶を形成することにより、融点が低下していると考えられる。さらに、第2の添加元素であるMn又はLiに融点降下作用があることから、第2の添加元素の添加によって融点が降下していると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Pd系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd及び第1及び第2の添加元素のそれぞれの割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表12及び表13に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd系のロウ材は次の条件32)〜36)をすべて満たすときに、少なくともAg−Cuの共晶及び添加元素の共晶の2つを利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件32) 第1の添加元素の少なくとも1種類以上の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であること
条件33) Auの割合が78重量%未満であること
条件34) 第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であること
条件35) Pdの割合が32重量%未満であること
条件36) Agの割合が48重量%未満であること
また、この組成でも、次の条件37),38)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を良好にすることができる。
条件37) Auの割合が33重量%より大きいこと
条件38) Agの割合が5重量%より大きいこと
さらに、次の条件39),40)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件39) Auの割合が約34重量%以上約77重量%以下であること
条件40) Agの割合が約6重量%以上約47重量%以下であること
〔第7のロウ材〕
続いて、この発明による第7のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cuに対して、Au,Ag,Cuと全率固溶するPdを加えるとともに、Au,Cuと全率固溶するNiを加えた5種類の元素を主元素とし、この主元素に第1の添加元素と第2の添加元素を加えたものである。その第1、第2の添加元素はいずれも第6のロウ材と同様である。このAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材は、第1のロウ材と元素は異なるが同様の方法により作製している。
このAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材についても、Au,Ag,Cu,Pd及びNiの割合(重量%)を適宜変えるとともに、第1の添加元素を構成する元素の種類と組成の割合(重量%)とを変更し、第2の添加元素の組成の割合(重量%)を適宜変えながら、表14に示す実施例7−1〜7−14の14通りのサンプルと、表15に示す比較例7−1〜7−12の12通りのサンプルとの合計26通りのサンプルを用意した。その際、第1の添加元素は、Si,Tl,Pbのそれぞれが1種類の場合と、2種類以上の場合とについてサンプルを用意した。2種類以上の第1の添加元素は次の通りである。
Ge及びIn(実施例7−2);Pb,Sn及びIn(実施例7−3)
Sn,Sb及びBi(実施例7−4);Ge,Al及びTl(実施例7−5)
Bi,In及びSi(実施例7−6)
Ge及びBi(実施例7−7,比較例7−5)
In及びSi(実施例7−8,7−12,比較例7−8)
Al及びTe(実施例7−9,比較例7−6)
Sn及びTl(実施例7−10,比較例7−7)
Ga及びAl(実施例7−11)
Bi及びSb(実施例7−13,比較例7−9)
Ge及びTe(実施例7−14,比較例7−12)
Si,In及びAl(比較例7−3);Bi,Ga及びGe(比較例7−4)
Sn及びSb(比較例7−10);Ge及びAl(比較例7−11)
また、用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表14及び表15に示すように、実施例7−1〜7−14のサンプルは融点が最高でも732℃(実施例7−14)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例7−1〜7−4,7−6,7−9〜7−12は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例7−1〜7−14のサンプルでは大変良好であるが、比較例7−8〜7−11を除くその他の比較例のサンプルはいずれもやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例7−1〜7−14のいずれもが800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例7−1〜7−4,7−6,7−9〜7−12で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも640MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例7−8を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
表14及び表15に示す結果からみて、Au−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材が上述の条件A,B,Cの3つを満たすための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例7−1〜7−4,7−6,7−9〜7−12と、実施例7−1〜7−13とにはAu,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例7−1〜7−4のように第1の添加元素の割合が合計で1重量%に過ぎない場合と、35重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例7−1〜7−14に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれも第1の添加元素が合計で1重量%より大きく35重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためには第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満でなければならない。この点、特に実施例7−1〜7−14に示される値からみて、第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上約34重量%以下であるのが好ましい。しかし、第1の添加元素の割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例7−6に示すようにAuの割合が74重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例7−1〜7−14に示すようにAuの割合が74重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が74重量%未満であればよい。さらに、Auの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例7−10と7−11のように第2の添加元素を合計して3重量%の割合で添加すると、融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。したがって、条件Aを満たすためには、第2の添加元素の割合を合計で3重量%未満にしなければならない。さらに、比較例7−9のようにPdの割合を31重量%にすると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなるが、31重量%未満にすればいずれのサンプルも条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためには、Pdの割合を31重量%未満にしなければならない。そして、比較例7−12のようにNiの割合を16重量%にすると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなるが、16重量%未満にすればいずれのサンプルも条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためには、Niの割合を16重量%未満にすればよく、約15重量%以下にするのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例7−8のみでその他は良好である。この比較例7−8はAgの割合が47重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が47重量%未満である。したがって、Agの割合が47重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも640MPaであり、いずれも従来のロウ材より良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。このAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材は第1,第5,第6の各ロウ材よりも接合強度が優れている。これは、Niを添加したことに起因していると考えられる。
一方、比較例7−5のようにAuの割合が35重量%になる場合と、比較例7−7のようにAgの割合が6重量%になる場合は、いずれもステンレス鋼に対する濡れ性が不十分になる。したがって、上述の条件A,Bをともに満たす場合でも、Auの割合が35重量%より大きく、Agの割合が6重量%より大きいことが好ましい。
さらに、実施例7−1〜7−14からみて、ステンレス鋼に対する濡れ性を良好にするには以下の2つの条件を満たすのがよい。濡れ性が良好になるのは第2の添加元素の融点効果作用に起因していると考えられる。
Auの割合が約36重量%以上約73重量%以下であること
Agの割合が約7重量%以上約46重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材は、第1及び第2の添加元素,Au,Pd及びNiが条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au及びAgがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。この場合、ロウ材がステンレス鋼部材の表面に広範囲に広がるため接合作業が行いやすくなり、より好ましいロウ材となる。
そして、このAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材も、Ag−Cuの共晶と、上述した添加元素の共晶とを利用する組成が考えられるため、これらの共晶を形成することにより、融点が低下していると考えられる。また、Ag又はPdと、第1の添加元素(例えばGe)とが共晶組成になることもある。さらに、第2の添加元素であるMn又はLiに融点降下作用があることから、第2の添加元素の添加によって融点が降下していると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd及びNi並びに第1及び第2の添加元素の割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは表14及び表15に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd−Ni系のロウ材は次の条件41)〜46)をすべて満たすときにAg−Cuの共晶と添加元素の共晶を利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件41) 第1の添加元素の少なくとも1種類以上の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であること
条件42) Auの割合が74重量%未満であること
条件43) 第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であること
条件44) Pdの割合が31重量%未満であること
条件45) Niの割合が16重量%未満であること
条件46) Agの割合が47重量%未満であること
また、この条件を満たす組成で、次の条件47),48)をともに満たす場合はステンレス鋼に対する濡れ性を良好にすることができる。
条件47) Auの割合が35重量%より大きいこと
条件48) Agの割合が6重量%より大きいこと
さらに、次の条件49),50)をともに満たす場合はステンレス鋼に対する濡れ性を一層良好にすることができる。
条件49) Auの割合が約36重量%以上約73重量%以下であること
条件50) Agの割合が約7重量%以上約46重量%以下であること
〔第8のロウ材〕
続いて、この発明による第8のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cuに対して、Au,Ag,Cuと全率固溶するPdを加えるとともに、Geを加えて構成され、上述した第5のロウ材の第1の添加元素をGeのみ1種類に限定したものである。この第8のロウ材も、元素は異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このロウ材についても、Au,Ag,Cu,Pd,Geの割合(重量%)を適宜変えながら、表16に示す実施例8−1〜8−9の9通りのサンプルと、比較例8−1〜8−7の7通りのサンプルとの合計16通りのサンプルを用意した。用意した各サンプルについて、上述した第2のロウ材と同様に、a)融点,c)SUS316Lに対する濡れ性、の2つの項目を調べたが、その他のb),d),e),f)の4つの項目については、実施例8−7〜8−9と、比較例8−5,8−6のサンプルについて調べた。その結果は表17に示す通りである。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表16に示すように、実施例8−1〜8−9のロウ材は、融点が最高でも740℃(実施例8−3)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例8−1〜8−4,8−7は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例8−1〜8−9のサンプルでは良好であるが、比較例8−1〜8−5はやや良いに留まり十分ではなかった。また、表17に示すようにロウ付け温度は、比較例8−5が800℃を超えたほかはいずれも800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例8−5で発生したがその他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも730MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例8−6を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
表16及び表17に示す結果からみて、Au−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材が上述の条件A,B,Cの3つを満たすための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例8−1〜8−4及び8−7と実施例8−1〜8−9とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例8−1,8−2に示すようにGeの割合が4重量%、26重量%の場合は融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例8−1〜8−9に示すようにGeの割合が4重量%より大きく26重量%未満であれば、条件Aは満たされる。したがって、条件Aを満たすためにはGeの割合が4重量%より大きく26重量%未満でなければならない。この点、特に実施例8−1〜8−9に示される値からみて、Geの割合が約5重量%以上約25重量%以下であるのが好ましい。しかし、Geの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例8−3に示すようにAuの割合が28重量%になる場合と、比較例8−4のようにAuの割合が76重量%になる場合は融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例8−1〜8−9に示すようにAuの割合が28重量%より大きく76重量%未満であれば融点が800℃よりも低くなり条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が28重量%より大きく76重量%未満でなければならない。また、Auの割合をこの範囲内に限定しても、比較例8−7のようにPdの割合が36重量%になると条件Aを満たさなくなる。しかし、実施例8−1〜8−9のようにPdの割合が36重量%未満であれば条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が36重量%未満であればよく、約35重量%以下であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例8−6のみでその他は良好である。この比較例8−6はAgの割合が51重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が51重量%未満である。したがって、Agの割合が51重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも730MPaであり、いずれも従来のロウ材より良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、条件A,Bを満たすサンプルでも、実施例8−4〜8−9のようにAu,Agが以下の条件をともに満たせばステンレス鋼に対する濡れ性は特に良好になる。
Auの割合が約29重量%以上約75重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上約50重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材は、Ge,Au,Pdが条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au,Agがそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。特に、このロウ材はPdを35重量%未満の割合で添加することで、ロウ材の色が銀白色になり好ましい。
そして、Au−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材には、PdとGeとが含まれている。そのPdとGeの合金は、第16図に示すようにPdの割合を増加させていくにつれて融点が約938℃から漸次低下していく。そして、Pdの割合が約45重量%付近になった時点で融点が最も低い約725℃となった後上昇及び下降を2度繰り返し、Pdの割合が100になった時点で融点が約1555℃になる。PdとGeの合金は融点が最も低いこの状態になったときに共晶組成となる。この共晶組成となった状態を「Pd−Geの共晶」とする。この点を考慮すると、Au−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材は、第2のロウ材と同様に、Ag−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶及びCu−Geの共晶のほか、Pd−Geの共晶を利用しえる組成になっているときに融点が最も低下すると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd,Geのそれぞれの割合にはこの発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表16,17に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd−Ge系のロウ材は次の条件51)〜54)をすべて満たすときにAg−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶及びPd−Geの共晶の5つを利用して、低温接合が可能で接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件51) Geの割合が4重量%より大きく26重量%未満であること
条件52) Auの割合が28重量%より大きく76重量%未満であること
条件53) Pdの割合が36重量%未満であること
条件54) Agの割合が51重量%未満であること
また、この条件を満たす組成で、Au,Agの割合が次の条件55),56)をともに満たす場合はステンレス鋼に対する濡れ性を良好にすることができる。
条件55) Auの割合が約29重量%以上約75重量%以下であること
条件56) Agの割合が約5重量%以上約50重量%以下であること
〔第9のロウ材〕
続いて、この発明による第9のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd−Si系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cuに対して、Au,Ag,Cuと全率固溶するPdを加えるとともに、Siを加えて構成され、上述した第5のロウ材の第1の添加元素をSiのみ1種類に特定したものである。この第9のロウ材も、元素は異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このロウ材についても、Au,Ag,Cu,Pd,Siの割合(重量%)を適宜変えながら、表18に示す実施例9−1〜9−9の9通りのサンプルと、比較例9−1〜9−7の7通りのサンプルの合計16通りのサンプルを用意した。用意した各サンプルについて、上述した第2のロウ材と同様に、a)融点,c)SUS316Lに対する濡れ性、の2つの項目を調べたが、その他のb),d),e),f)の4つの項目については、実施例9−7〜9−9と、比較例9−5,9−6の2通りのサンプルについて調べた。その結果は表19に示す通りである。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表18に示すように、実施例9−1〜9−9のロウ材は、融点が最高でも746℃(実施例9−1)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例9−1〜9−5,9−7は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例9−1〜9−9のサンプルでは良好であるが、比較例9−1〜9−5はやや良いに留まり十分ではなかった。また、表19に示すようにロウ付け温度は、比較例9−5が800℃を超えたほかはいずれも800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例9−5で発生したがその他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも760MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例9−6を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
表18及び表19に示す結果からみて、Au−Ag−Cu−Pd−Si系のロウ材が上述の条件A,B,Cの3つを満たすための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例9−1〜9−5,9−7と実施例9−1〜9−9とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例9−1,9−2に示すようにSiの割合が0.9重量%の場合と、17重量%の場合とは融点が800℃を超えてしまいいずれも条件Aを満たさない。しかし、実施例9−1〜9−9に示すように条件Aを満たすサンプルはいずれもSiの割合が0.9重量%より大きく17重量%未満である。したがって、条件Aを満たすためにはSiの割合が0.9重量%より大きく17重量%未満でなければならない。この点、特に実施例9−1〜9−3に示される値からみて、Siの割合が約1重量%以上で約16重量%以下であるのが好ましい。しかし、Siの割合がこの範囲内にある場合でも、比較例9−3に示すようにAuの割合が30重量%になる場合と比較例9−4のようにAuの割合が72重量%になる場合は融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例9−1から9−9に示すようにAuの割合が30重量%より大きく72重量%未満であれば融点が800℃より低くなり条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が30重量%より大きく72重量%未満でなければならない。また、Auの割合をこの範囲内に限定しても、比較例9−7のようにPdの割合が38重量%になると条件Aを満たさなくなる。しかし、実施例9−1〜9−9のようにPdの割合が38重量%未満であれば条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が38重量%未満でなければならない。さらに、比較例9−5のようにAgの割合が2重量%になると条件Aを満たさなくなる。しかし、実施例9−1〜9−9のようにAgの割合が2重量%より大きくなれば条件Aを満たす。したがって、条件Aを満たすためにはAgの割合が2重量%より大きければよく、約3重量%以上であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例9−6のみでその他は良好である。この比較例9−6はAgの割合が34重量%になっており、その他のサンプルはAgの割合が34重量%未満である。したがって、Agの割合が34重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも780MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、条件A,Bを満たすサンプルでも、実施例9−4〜9−9のようにAu,Ag,Pdが以下の条件をともに満たせばステンレス鋼に対する濡れ性は特に良好になる。
Auの割合が約40重量%以上約71重量%以下であること
Agの割合が約3重量%以上約32重量%以下であること
Pdの割合が約5重量%以上約37重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd−Si系のロウ材は、Si,Au,Pd,Agが条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。特に、Pdを38重量%未満の割合で添加することで、ロウ材の色が銀白色になり好ましい。
そして、第9のロウ材は、Au−Ag−Cuに対して、PdとSiを加えたものと考えることができるから、第3のロウ材と同様に、Ag−Cuの共晶、Au−Siの共晶、Ag−Siの共晶の3つを利用する組成になると融点が低下すると考えられる。したがって、Au−Ag−Cu−Pd−Si系のロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd及びSiのそれぞれの割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表18,19に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd−Si系のロウ材は次の条件57)〜60)を満たすときにAg−Cuの共晶、Au−Siの共晶、Ag−Siの共晶の3つの共晶を利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件57) Siの割合が0.9重量%より大きく17重量%未満であること
条件58) Auの割合が30重量%より大きく72重量%未満であること
条件59) Pdの割合が38重量%未満であること
条件60) Agの割合が2重量%より大きく34重量%未満であること
また、この条件を満たす組成で、かつAu,Ag,Pdの割合が次の条件61)〜63)をともに満たす場合はステンレス鋼に対する濡れ性を良好にすることができる。
条件61) Auの割合が約40重量%以上で約71重量%以下であること
条件62) Agの割合が約3重量%以上で約32重量%以下であること
条件63) Pdの割合が約5重量%以上で約37重量%以下であること
〔第10のロウ材〕
続いて、この発明による第10のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cu,Pdに対してGe,Si,Snのいずれか少なくとも1種類の元素を加えて構成され、上述した第5のロウ材の第1の添加元素をGe,Si及びSnの3つに特定したものである。この第10のロウ材も、元素は異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このロウ材についても、Au,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Snの割合(重量%)を適宜変えながら、表20に示す実施例10−1〜10−27の27通りのサンプルと、表21に示す比較例10−1〜10−12の12通りのサンプルの合計39通りのサンプルを用意した。また、用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表20及び表21に示すように、実施例10−1〜10−27のサンプルは融点が最高でも743℃(実施例10−3,10−27)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例10−1〜10−7,10−9,10−12は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例10−1〜10−27のサンプルでは良好であるが、比較例10−1〜10−10,10−12のサンプルはやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例10−1〜10−27のいずれも800℃未満であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例10−1〜10−7,10−9,10−12で発生したがその他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも590MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例10−11を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
表20及び表21に示す結果からみて、Au−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn系のロウ材が上述の条件A,B,Cの3つを満たすための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例10−1〜10−7及び10−9,10−12と実施例10−1〜10−27とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例10−1〜10−7に示すように、Ge,Si及びSnの割合が合計で1重量%に過ぎない場合と、38重量%,39重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例10−1〜10−27に示すように条件Aを満たすサンプルはいずれもGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満になっている。この点、特に実施例10−1〜10−27に示される値からみて、Ge,Si及びSnの割合の合計が約2重量%以上で約37重量%以下であるのが好ましい。また、Ge,Si及びSnの割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例10−9に示すようにAuの割合が83重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例10−1〜10−27に示すようにAuの割合が83重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が83重量%未満であればよい。また、Auの割合がこの範囲内にある場合でも実施例10−12に示すようにPdの割合が35重量%になると条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例10−1〜10−27に示すようにPdの割合が35重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が35重量%未満であればよく、約34重量%以下であるのが好ましい。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例10−11のみでその他は良好である。この比較例10−11はAgの割合が49重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が49重量%未満である。したがって、Agの割合が49重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも590MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。
さらに、実施例10−24,10−25について、ステンレス鋼に対する濡れ性が大変良好であることを考慮すると、Au又はAgのいずれか少なくとも一方が以下の条件を満たすのが好ましい。
Auの割合が約53重量%以上約56重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上約18重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn系のロウ材は、Ge,Si及びSnの合計,Au及びPdが条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au又はAgのいずれか少なくとも一方の割合がそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。
そして、Au−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn系のロウ材は、Au−Ag−Cu−Pdに対してGe,SiおよびSnを加えたものと考えることができるから、第8のロウ材と同様に、Ag−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶及びPd−Geの共晶の5つの共晶のいずれかを利用し、さらに、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の4つの共晶のいずれかを利用する組成になると融点が低下すると考えられる。したがって、このロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Snのそれぞれの割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは上述の表20,21に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn系のロウ材は次の条件64)〜67)をすべて満たすときにAg−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶、Pd−Geの共晶、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の9つの共晶を利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件64) Ge,Si及びSnの割合の合計が1重量%より大きく38重量%未満であること
条件65) Auの割合が83重量%未満であること
条件66) Pdの割合が35重量%未満であること
条件67) Agの割合が49重量%未満であること
さらに、次の条件68)又は69)を満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性が良好になり好ましいロウ材になる。
条件68) Auの割合が約53重量%以上約56重量%以下であること
条件69) Agの割合が約5重量%以上約18重量%以下であること
〔第11のロウ材〕
続いて、この発明による第11のロウ材であるAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材について説明する。このロウ材は、Au,Ag,Cu,Pdに対して、Ge,Si,Snのいずれか少なくとも1種類の元素を加えるとともに、Niを加えて構成されている。この第11のロウ材も、元素は異なるが第1のロウ材と同様の方法により作製している。
このロウ材についても、Au,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Sn,Niの割合(重量%)を適宜変えながら、表22に示す実施例11−1〜11−28の28通りのサンプルと、表23に示す比較例11−1〜11−13の13通りのサンプルの合計41通りのサンプルを用意した。また、用意した各サンプルについて、第1のロウ材と同様の6つの項目を選んで特性を調べた。なお、「実施例」と「比較例」の表示は第1のロウ材と同様である。e)接合強度とf)耐食性は、第1のロウ材と同様の要領で確認している。
表22及び表23に示すように、実施例11−1〜11−28のサンプルは融点が最高でも753(実施例11−15)であり、いずれも800℃以下である。しかし、比較例11−1〜11−7,11−9,11−12,11−13は融点が800℃を超えている。SUS316Lに対する濡れ性は実施例11−1〜11−28のサンプルでは良好であるが、比較例11−11を除く他の比較例のサンプルはやや良いに留まり十分ではなかった。また、ロウ付け温度は実施例11−1〜11−28のいずれもが800℃以下であった。SUS316Lの結晶粗大化は比較例11−1〜11−7,11−9,11−12,11−13で発生したが、その他のサンプルでは発生しなかった。接合強度は最低でも680MPaであり、いずれのサンプルでも従来のロウ材より良好であった。耐食性は比較例11−11を除くいずれのサンプルも良好な結果を示した。
表22及び表23に示す結果からみて、Au−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材が上述の条件A,B,Cの3つを満たすための条件は次のようになる。
条件Aについて)
比較例11−1〜11−7及び11−9,11−12,11−13と実施例11−1〜11−28とには、Au,Ag,Cuのそれぞれの割合に共通する範囲が存在するので、条件AをAu,Ag,Cuのそれぞれの割合だけから特定することは困難である。
次に、比較例11−1〜11−7に示すように、Ge,Si及びSnの割合が合計で1重量%に過ぎない場合と、37重量%になる場合とは融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさない。しかし、実施例11−1〜11−28に示すように条件Aを満たしているサンプルはいずれもGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく37重量%未満になっている。したがって、条件Aを満たすためにはGe,Si及びSnの割合が合計で1重量%より大きく37重量%未満でなければならない。この点、特に実施例11−1〜11−28に示される値からみて、Ge,Si及びSnの割合の合計が約2重量%以上で約36重量%以下であるのが好ましい。しかし、Ge,Si及びSnの割合の合計がこの範囲内にある場合でも、比較例11−9に示すようにAuの割合が74重量%になると融点が800℃を超えてしまい条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例11−1〜11−28に示すようにAuの割合が74重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはAuの割合が74重量%未満であればよい。また、Auの割合がこの範囲内にある場合でも実施例11−12に示すようにPdの割合が27重量%になると条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例11−1〜11−28に示すようにPdの割合が27重量%未満であればいずれのサンプルでも条件Aを満たしている。したがって、条件Aを満たすためにはPdの割合が27重量%未満でなければならない。さらに、Pdの割合がこの範囲内にある場合でも比較例11−13に示すようにNiの割合が18重量%になると条件Aを満たさなくなる。これに対し、実施例11−1〜11−28に示すようにNiの割合が18重量%未満であればいずれも条件Aを満たす。
条件Bについて)
耐食性が不十分なサンプルは比較例11−11のみでその他は良好である。この比較例11−11はAgの割合が47重量%になっており、その他のサンプルはいずれもAgの割合が47重量%未満である。したがって、Agの割合が47重量%未満であれば条件Bを満たす。
条件Cについて)
上述の条件A,Bをともに満たすサンプルは接合強度が最低でも680MPaであり、いずれも従来のロウ材よりも良好な値を示した。したがって、上述の条件A,Bをともに満たせば条件Cは満たされる。このAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材は、第10の各ロウ材よりも接合強度が優れている。これは、Niを添加したことに起因していると考えられる。
さらに、実施例11−24,11−25について、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好であることを考慮すると、Au及びAgが以下の条件を満たすのが好ましい。
Auの割合が約52重量%以上約54重量%以下であること
Agの割合が約5重量%以上約19重量%以下であること
以上のとおり、Au−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材は、Ge,Si及びSnの合計、Au,Pd及びNiが条件Aを満たす範囲にあり、かつAgが条件Bを満たす範囲内にあれば、低温接合を可能とし、良好な耐食性と十分な接合強度を確保するという3つの要件をすべて満足したロウ材となる。さらに、Au及びAgの割合がそれぞれ上述したステンレス鋼に対する濡れ性を良好にする範囲内にあれば、ステンレス鋼に対する濡れ性が良好となる。
そして、このAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材も第10のロウ材と同様に、Ag−Cuの共晶のほか、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶、Pd−Geの共晶、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の9つの共晶のいずれかを利用する組成になると、融点が低下すると考えられる。したがって、このロウ材を構成するAu,Ag,Cu,Pd,Ge,Si,Sn,Niのそれぞれの割合には、この発明の目的とするロウ材を得るために必要な範囲が存在するが、それは、上述の表22,23に示す実験結果から求められた範囲と考えられる。
以上をまとめると、この発明によるAu−Ag−Cu−Pd−Ge−Si−Sn−Ni系のロウ材は次の条件70)〜74)を満たすときにAg−Cuの共晶、Au−Geの共晶、Ag−Geの共晶、Cu−Geの共晶、Pd−Geの共晶、Au−Siの共晶、Au−Snの共晶、Ag−Siの共晶及びAg−Snの共晶の9つの共晶を利用して、低温接合が可能で、接合強度及び耐食性のいずれも良好なロウ材になっていると考えられる。
条件70) Ge,Si及びSnの割合の合計が1重量%より大きく37重量%未満であること
条件71) Auの割合が74重量%未満であること
条件72) Pdの割合が27重量%未満であること
条件73) Niの割合が18重量%未満であること
条件74) Agの割合が47重量%未満であること
さらに、次の条件75),76)をともに満たす場合にはステンレス鋼に対する濡れ性が良好になり好ましいロウ材になる。
条件75) Auの割合が約52重量%以上約54重量%以下であること
条件76) Agの割合が約5重量%以上約19重量%以下であること
(ロウ材による時計ケースの接合について)
次に、時計外装部品である時計ケースについて、この発明によるロウ材を用いてその先カン部の接合を行った場合について説明する。
第1図は、この発明によるロウ材を用いて、時計ケース本体1に4個の先カン部3,5,7,9を接合した時計ケース2を示す斜視図である。時計ケース本体1は、ステンレス鋼からなる肉厚の薄い円筒状の壁部と底部とを有していて、先カン部との接合面を含めてミラー面仕上げの加工が施されている。先カン部3,5,7,9はいずれもステンレス鋼製であり、研削研磨を加えて形成され、時計ケース本体1との接合面を除く外側表面にはヘアーライン面加工が施されている。また、先カン部3,5,7,9には、いずれも予めバネ棒穴11の穴開け加工が行われている。なお、時計ケース本体1と先カン部3,5,7,9はそれぞれ鍛造により成形されている。
そして、第2図に示すように、時計ケース本体1と各先カン部3,5,7,9の接合面にこの発明によるロウ材19を挟み込んで圧接し、図示しない治具で固定して、水素還元雰囲気中で約650℃〜約700℃の温度を加えて20分間加熱した。その後急冷した。この接合作業をロウ材19に上述した第1〜第11のロウ材を用いて行い、第1〜第11のロウ材のそれぞれについて時計ケース2を作製した。例えば、第7のロウ材では実施例7−8のサンプル(Au:50重量%、Ag:9重量%、Cu:9重量%、In:8重量%、Si:7重量%、Pd:7重量%、Mn:1重量%、Li:1重量%、Ni:8重量%)を用い、第8のロウ材では実施例8−7のサンプル(Au:56重量%、Ag:22重量%、Cu:5重量%、Pd:5重量%、Ge:12重量%)を用いた。また、第11のロウ材では実施例11−24のサンプル(Au:54重量%、Ag:5重量%、Cu:6重量%、Ge:7重量%、Si:3重量%、Sn:9重量%、Pd:6重量%、Ni:10重量%)を用いた。
その結果、ロウ材19が時計ケース本体1と各先カン部3,5,7,9との間の接合部分に完全に浸透し、両者が外観からみても完全に一体化した時計ケース2が得られた。この時計ケース2は、加熱した時の温度が母材の結晶粗大化温度(800℃)以下の温度であるため、ステンレス鋼に結晶組織の粗大化が起こることもなく接合前の面状態が保たれ、時計ケース本体1と各先カン部3,5,7,9で互いの界面が綺麗に形成されている。さらに、接合部分には十分な引っ張り強度(接合強度)を得ることができた。
以上のように、この発明によるロウ材を用いて金属製品である時計ケース本体1と先カン部3,5,7,9とを接合すると、両者を好ましい状態で接合することができる。
ところで、近年、時計ケースはデザインの自由度を拡大したいという要請から時計ケース本体と先カン部とを別々に製造し、異なった面状態で仕上げたいという要望が強くなってきている。例えば、時計ケース本体はミラー面仕上げ、先カン部はヘアーライン面仕上げというようである。しかし、時計ケースは、従来、バンドを連結するための先カン部を含めて一体化された部品として製造されているため、従来の時計ケースには次のような問題があった。
まず、時計ケースは、時計ケース本体と先カン部との境界面が両者の一体化により連続しているため、そのそれぞれにミラー面仕上げと、ヘアーライン面仕上げを施してそれぞれの境界面をきちんと出すことが困難であった。時計ケースを一体型にすると、鍛造で製造することによってコスト面で有利になるという利点はあるが、先カン部の形状がデザイン的に大きな制約を受けるという欠点もある。
一方、その先カン部にはバンド装着用のバネ棒を挿入するバネ棒穴をドリルによる後加工で形成する必要があるが、そのバネ棒穴は時計ケースの外観の美観を保持するため、外側から見えないように先カン部の内側に形成しなければならなかった。ところが、バネ棒穴を先カン部の内側から開けようとすると、その穴開け作業が困難になる。しかも、対向する先カン部がその穴開け作業の際に邪魔をするため、例えば、第5図に示すようにバネ棒穴11は先カン部7の加工面7aに垂直ではなく斜めに形成せざるを得なかった。そのため、バネ棒穴はバネ棒の大きさよりも多少大きめに形成しなければならなかった。このことで、バネ棒とバネ棒穴との間に余計な隙間が形成されてしまい、その隙間がバネ棒の緩み(がた)の一因になっていた。
しかし、上述のように、この発明によるロウ材を用いると、時計ケース本体1と各先カン部3,5,7,9とを接合して、両者が外観からみても完全に一体化した時計ケース2が得られる。したがって、時計ケース本体1と各先カン部3,5,7,9とを別々に製造してそれぞれ異なる面状態に仕上げても、上述の従来の時計ケースに見られる問題は一切生じないこととなる。
上述の第1〜第11のロウ材では、Auと全率固溶する金属として、Ag及びCuを用いたロウ材を例にとって説明している。Auと全率固溶する金属には、Ag及びCuのほかにPtやNiもあるため、Ag及びCuの代わりにプラチナ(Pt)やNiを用いてもよい。
また、上述の実施の形態では、ステンレス鋼部材を母材に設定してロウ材の特性を調べているため、この発明の目的とするロウ材となるための条件として、融点が800℃を超えないことを挙げている。母材をステンレス鋼以外の金属からなる部材に設定する場合は、融点は必ずしも800℃に限定されない。
以上のように、この発明によるロウ材で良好に接合される金属は主にステンレス鋼である。しかし、外観の装飾性を要求される金属、例えばチタンやチタン合金に対してもこの発明によるロウ材は十分適用し得るものである。
また、この発明によるロウ材は、形状を制限されることはない。接合するときの作業の利便性を考慮すると、板形、箔形、線形などで作製することが望ましい。しかし、組成によってはロウ材が脆弱性を幾分伴う場合もあり得る。その場合、ロウ材は粉末状にした後、圧粉して成形して使用しても良い。
そして、ロウ付け時の加熱温度は620から800℃、好ましくは650から750℃とするのがよく、ロウ付けする時間は約5分から1時間程度、ロウ付けする時の炉内の雰囲気は水素などの還元雰囲気又は真空にするのが好ましい。
産業上の利用可能性
この発明によるロウ材によれば、金属製品のロウ付けによる接合を母材の結晶粗大化温度以下の低い温度ですることが可能であり、接合した金属製品の良好な耐食性を確保するとともに、十分な接合強度を確保することができる。したがって、この発明によるロウ材は、外観の装飾性を要求されるステンレス鋼のような金属をロウ付けするのに適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は時計ケース本体に4個の先カン部を接合した時計ケースを示す斜視図である。
第2図は時計ケース本体に4個の先カン部を接合する前の時計ケース本体と4個の先カン部とを示す分解斜視図である。
第3図は2枚のステンレス鋼板を十字状に重ね合わせた金属部材を示す平面図である。
第4図は第3図の4−4線断面図である。
第5図は第1図に示す先カン部をバネ棒穴を含む平面で切断した断面図である。
第6図は横軸がAgに対するAuの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Auの2元系状態図である。
第7図は横軸がCuに対するAuの割合を示し、縦軸が融点を示すCu−Auの2元系状態図である。
第8図は横軸がAgに対するCuの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Cuの2元系状態図である。
第9図は横軸がAuに対するGeの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Geの2元系状態図である。
第10図は横軸がAuに対するSiの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Siの2元系状態図である。
第11図は横軸がAuに対するSnの割合を示し、縦軸が融点を示すAu−Snの2元系状態図である。
第12図は横軸がGeに対するAgの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Geの2元系状態図である。
第13図は横軸がGeに対するCuの割合を示し、縦軸が融点を示すCu−Geの2元系状態図である。
第14図は横軸がSiに対するAgの割合を示し、縦軸が融点を示すSi−Agの2元系状態図である。
第15図は横軸がAgに対するSnの割合を示し、縦軸が融点を示すAg−Snの2元系状態図である。
第16図は横軸がGeに対するPdの割合を示し、縦軸が融点を示すGe−Pdの2元系状態図である。
Claims (56)
- 金、銀、銅及びアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記添加元素の割合が合計で1重量%より大きく36重量%未満であり、
前記金の割合が80重量%未満であり、前記銀の割合が42重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記添加元素の割合が合計で約2重量%以上約35重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のロウ材。
- 前記金の割合が34重量%より大きく前記銀の割合が5重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第1項記載のロウ材。
- 前記金の割合が34重量%より大きく前記銀の割合が5重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第2項記載のロウ材。
- 前記銀の割合が約6重量%以上約41重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のロウ材。
- 前記銀の割合が約6重量%以上約41重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第2項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、前記銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、前記銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第2項記載のロウ材。
- 金、銀、銅及びゲルマニウムを主成分として構成されるロウ材であって、
前記ゲルマニウムの割合が4重量%より大きく24重量%未満であり、前記金の割合が34重量%より大きく、前記銀の割合が41重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記ゲルマニウムの割合が約5重量%以上約23重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第9項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約35重量%以上約80重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約40重量%以下であり、前記ゲルマニウムの割合が約10重量%以上約19重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第9項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約35重量%以上約80重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約40重量%以下であり、前記ゲルマニウムの割合が約10重量%以上約19重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第10項記載のロウ材。
- 前記銀の割合が約6重量%以上約40重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第9項記載のロウ材。
- 前記銀の割合が約6重量%以上約40重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第10項記載のロウ材。
- 金、銀、銅及びシリコンを主成分として構成されるロウ材であって、
前記シリコンの割合が0.9重量%より大きく19重量%未満であり、前記金の割合が40重量%より大きく、前記銀の割合が4重量%より大きく37重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記シリコンの割合が約1重量%以上約18重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第15項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約41重量%以上約79重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約36重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第15項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約41重量%以上約79重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約36重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第16項記載のロウ材。
- 金、銀及び銅並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であり、前記金の割合が80重量%未満であり、前記銀の割合が42重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約34重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第19項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、前記銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第19項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約47重量%以上約64重量%以下であり、前記銀の割合が約6重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第20項記載のロウ材。
- 金、銀、銅、パラジウム及びアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、前記金の割合が82重量%未満であり、前記パラジウムの割合が34重量%未満であり、前記銀の割合が47重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記パラジウムの割合が約33重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第23項記載のロウ材。
- 前記金の割合が33重量%より大きく前記銀の割合が4重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第23項記載のロウ材。
- 前記金の割合が33重量%より大きく前記銀の割合が4重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第24項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約51重量%以上約56重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第23項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約51重量%以上約56重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約20重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第24項記載のロウ材。
- 金、銀、銅及びパラジウム並びにアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる第1の添加元素及びリチウム又はマンガンの少なくとも一方の元素からなる第2の添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、前記金の割合が78重量%未満であり、前記第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であり、前記パラジウムの割合が32重量%未満であり、前記銀の割合が48重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上約37重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第29項記載のロウ材。
- 前記金の割合が33重量%より大きく前記銀の割合が5重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第29項記載のロウ材。
- 前記金の割合が33重量%より大きく前記銀の割合が5重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第30項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約34重量%以上約77重量%以下であり、前記銀の割合が6重量%以上47重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第29項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約34重量%以上約77重量%以下であり、前記銀の割合が6重量%以上47重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第30項記載のロウ材。
- 金、銀、銅、パラジウム及びニッケル並びにアルミニウム、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、シリコン、錫、鉛、テルル又はタリウムのうち、少なくとも1種類以上の元素からなる第1の添加元素及びリチウム又はマンガンの少なくとも一方の元素からなる第2の添加元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記第1の添加元素の割合が合計で1重量%より大きく35重量%未満であり、前記金の割合が74重量%未満であり、前記第2の添加元素の割合が合計で3重量%未満であり、前記パラジウムの割合が31重量%未満であり、前記ニッケルの割合が16重量%未満であり、前記銀の割合が47重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記第1の添加元素の割合が合計で約2重量%以上約34重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第35項記載のロウ材。
- 前記金の割合が35重量%より大きく、前記銀の割合が6重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第35項記載のロウ材。
- 前記金の割合が35重量%より大きく、前記銀の割合が6重量%より大きいことを特徴とする請求の範囲第36項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約36重量%以上約73重量%以下であり、前記銀の割合が7重量%以上約46重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第35項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約36重量%以上約73重量%以下であり、前記銀の割合が7重量%以上46重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第36項記載のロウ材。
- 金、銀、銅、パラジウム及びゲルマニウムを主成分として構成されるロウ材であって、
前記ゲルマニウムの割合が4重量%より大きく26重量%未満であり、前記金の割合が28重量%より大きく76重量%未満であり、前記パラジウムの割合が36重量%未満であり、前記銀の割合が51重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記ゲルマニウムの割合が約5重量%以上約25重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第41項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約29重量%以上約75重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約50重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第41項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約29重量%以上約75重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約50重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第42項記載のロウ材。
- 金、銀、銅、パラジウム及びシリコンを主成分として構成されるロウ材であって、
前記シリコンの割合が0.9重量%より大きく17重量%未満であり、前記金の割合が30重量%より大きく72重量%未満であり、前記パラジウムの割合が38重量%未満であり、前記銀の割合が2重量%より大きく34重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記シリコンの割合が約1重量%以上約16重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第45項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約40重量%以上約71重量%以下であり、前記銀の割合が約3重量%以上約32重量%以下であり、前記パラジウムの割合が約5重量%以上約37重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第45項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約40重量%以上約71重量%以下であり、前記銀の割合が約3重量%以上約32重量%以下であり、前記パラジウムの割合が約5重量%以上約37重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第46項記載のロウ材。
- 金、銀、銅及びパラジウム並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく38重量%未満であり、前記金の割合が83重量%未満であり、前記パラジウムの割合が35重量%未満であり、前記銀の割合が49重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約37重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第49項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約53重量%以上約56重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約18重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第49項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約53重量%以上約56重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約18重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第50項記載のロウ材。
- 金、銀、銅、パラジウム及びニッケル並びにゲルマニウム、シリコン及び錫のいずれか少なくとも1種類以上の元素を主成分として構成されるロウ材であって、
前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で1重量%より大きく37重量%未満であり、前記金の割合が74重量%未満であり、前記パラジウムの割合が27重量%未満であり、前記ニッケルの割合が18重量%未満であり、前記銀の割合が47重量%未満であることを特徴とするロウ材。 - 前記ゲルマニウム、シリコン及び錫の割合が合計で約2重量%以上約36重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第53項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約52重量%以上約54重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約19重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第53項記載のロウ材。
- 前記金の割合が約52重量%以上約54重量%以下であり、前記銀の割合が約5重量%以上約19重量%以下であることを特徴とする請求の範囲第54項記載のロウ材。
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