JPS6237451B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はビデオテープ、オーデイオテープ、メ
モリーテープ、磁気シート、磁気デイスク等の磁
気記録媒体に関し、特に磁性層と支持体との密着
性が優れ且つ耐久性の良い磁気記録媒体に関す
る。 最近、磁気記録媒体の支持体としてポリエチレ
ンテレフタレートが使用されている。ポリエチレ
ンテレフタレートは、延伸し、高度に結晶化され
ているため、有機溶剤に対する耐久性と機械的強
度が優れている。 強磁性微粉末を結合剤中に分散させた塗布液を
支持体に塗布して得られる磁性層は機械強度が非
常に小さい。従つて、支持体に下塗層を施すこと
なく通常の厚みに形成した磁性層はわずかな力を
加えることにより破壊してしまう。このような磁
性層を支持体上に強力に密着させることは非常に
困難であつて、通常塗料を塗布する場合に用いら
れているような下塗層を設けることが、最も容易
でかつ有効な解決策である。 過去にこれらの下塗りに関しては、特公昭47−
22071号、同49−10243号、特開昭49−46406号、
同49−46407号、同50−32905号、同50−32906
号、同50−32907号などが知られているが、これ
らはいずれも一長一短があり、必らずしも下塗組
成物として充分に満足のゆくものではなかつた。 本発明の目的は磁性層と支持体との間の密着性
が優れた磁気記録媒体を提供するにある。 本発明者等はこのような下塗り組成の改善につ
いて種々研究検討を重ねた結果、本発明の目的
は、支持体に下塗層が施され、その上に磁性層が
設けられてなる磁気記録体において、該下塗層に
ガラス転移点（Tg）が10℃〜60℃の範囲に入る
無定形飽和ポリエステルを含有させることによつ
て達成される。特に、Tgが10℃以上30℃未満の
無定形飽和ポリエステルと30℃以上60℃以下の無
定形飽和ポリエステルの２種を組合せることによ
つて更に望しいものとなる。即ち、10℃〜60℃の
範囲のガラス転移点を持つ無定形飽和ポリエステ
ルを２種以上組合わせることによつて、下塗層自
体のガラス転移点を調節することが可能な手段と
してとることができる。また、ガラス転移点が10
℃〜60℃の範囲を取ることにより、磁気テープの
常用温度域における密着性が非常によくなる。磁
性層及び非磁性支持体のガラス転移点より下塗層
のガラス転移点の方が低いことが応力集中を分散
し緩和する機能を発揮するためと考えられる。 下塗層の厚さは0.03μ〜0.5μ、更に好ましく
は0.05μ〜0.3μである。0.03μより薄くなると、
応力集中を緩和させるだけの下塗り効果があまり
なく密着力が低下する。 0.5μより厚くなると、平滑な下塗り面をを得
にくくなるため、磁性層をも平滑にしにくくなり
Ｓ／Ｎ比の高い磁気テープを得ることができな
い。 本発明の下塗層に使用される無定形飽和ポリエ
ステルは、示差熱量計（DSC）で測定したTgが
10℃〜60℃を有する。 これらは１種もしくは数種の２塩基酸と１種も
しくは数種の２価アルコールとの重縮合により得
られる。すでにあるポリエステルと異種の２価ア
ルコール成分とによりエステル交換反応及び重縮
台反応により10℃〜60℃のTgの範囲に入るポリ
エステルを得ることもできる。 無定形飽和ポリエステルとしての２塩基酸成分
として、具体的には、フタル酸、アゼライン酸、
アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバ
チン酸などのHOOC−Ｒ−COOHの構造を持つ
化合物（Ｒは任意に選べる）がある。 ２価アルコール成分としては、エチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグ
リコール、ビスフエノールＡのエチレンオキサイ
ド付加物、ジエチレングリコールなどのHO−
R′−OHの構造を持つ化合物（R′は任意に選べ
る）がある。 上記２成分（２塩基酸、２価アルコール）は、
共に単独又は組合せることができる。 上記成分の重縮合に用いる比率はTgを10℃〜
60℃範囲に入れる要素の一つである。その更にも
う一つの要素は、Ｒ、R′の構造による。 本発明の無定形飽和ポリエステルとしては、具
体的には、たとえば次のようなものがあげられ
る。 フタル酸とエチレングリコール及びネオペンチ
ルグリコールの重縮合物、アジピン酸及びフタル
酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコー
ルの重縮合物、イソフタル酸及びテレフタル酸と
エチレングリコール及びネオペンチルグリコール
の重縮合物、セバチン酸及びテレフタル酸とエチ
レングリコール及びネオペンチルグリコールの重
縮合物、テレフタル酸とエチレングリコール及び
トリエチレングリコールの重縮合物、テレフタル
酸とエチレングリコール及びトリエチレングリコ
ール及びビスフエノールＡのエチレンオキサイド
付加物の重縮合物、イソフタル酸とエチレングリ
コール及びトリエチレングリコールの重縮合物な
どがある。 上記重縮合物は、いずれも、その組成比をうま
く調整することにより、10℃〜60℃のガラス転移
点を得ることができる。 本発明に使用できる無定形飽和ポリエステル
は、ガラス転移点０℃〜70℃、好ましくは、10℃
〜60℃である。また、相溶性の良好な２種以上の
無定形飽和ポリエステルを混合することにより、
Tgを10℃〜60℃の範囲に入れることが可能であ
る。これらのポリエステルは東洋紡(株)製「バイロ
ン＃103」、「バイロン＃500」、「バイロン＃200」、
「バイロン＃300」、富士写真フイルム(株)製の
「STAFIX」などの市販品が容易に入手できる。 本発明に使用する磁性層、強磁性粉末、添加剤
及び支持体等については従来の技術が使用でき、
これらについては特公昭56−26890号などに記載
されている。 以下本発明を実施例及び比較例により更に具体
的に説明する。ここに示す成分、割合、操作、順
序等は本発明の精神から逸脱しない範囲において
変更しうるものであることは本業界に携わるもの
にとつては容易に理解されることである。 尚、以下の実施例及び比較例において「部」は
すべて「重量部」を示す。 実施例において、下記の磁性層の処方を使用し
た。 γ−Fe₂O₃（Hc：200Oe、平均粒子長：0.5μ
ｍ、針状比：10／１） 300部 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重
合体（共重合比：92／３／５（重量比）重合度：
420） 56部 ポリエステルポリウレタン（ブチレンアジペート
とジフエニルメタンイソシアネートから合成、分
子量：約８万） 24部 導電性カーボンブラツク（平均粒子径：30ミリミ
クロン） ３部 ミリスチン酸 ４部 シリコーンオイル（ジメチルポリシロキサン、重
合度：60） 0.3部 メチルエチルケトン 500部 シクロヘキサノン 200部 上記の組成物をボールミルに入れ、24時間の分
散を行ない、ポリイソシアネート（商品名「デス
モジユールＬ−75」、３モルのトリレンジイソシ
アネートと１モルのトリメチロールプロパンのア
ダクト体、75wt％酢酸エチル溶液、Bayer A.G.
製）を20部加え、高速剪断分散を１時間行なつた
後、平均孔径３μｍのフイルターで過し、磁性
塗料を得た。 実施例 １ 支持体は、厚さ14μのポリエチレンテレフタレ
ートフイルムを用い、下塗り組成物として、Tg
を−30℃から＋90℃までの間で各種２塩基酸と２
価アルコールとから無定形ポリエステルを合成
し、２種の無定形飽和ポリエステルを混合し下塗
り層（厚さ0.2μ）を塗布し、その上に上記磁性
層を５μ厚で塗布した。 更に、＋20℃のTgの無定形飽和ポリエステルを
下塗層厚を0.02μから0.8μ位までの間で塗布し
た。それらの上に上記磁性層を５μ厚で塗布し
た。 得られた各サンプルについて以下の評価を行な
い、第１図〜第３図に示す結果を得た。 ＜磁性層密着強度測定法＞ 1/2in巾にスリツトした磁気テープの一部を両
面接着テープで台紙にはり、磁気テープの一端を
他端と同方向へ引張つたときの、はくり強度を測
定する。測定温湿度条件は、23℃、65％RHであ
る。 ＜ビデオＳ／Ｎ測定法＞ 測定器はシバンクK.K社製ノイズメーター
「925C」を使用し、基準テープを下塗りなしの磁
気テープとし、それに対するＳ／Ｎ比の差を求め
た。 ハイパスフイルター10KHz、ローパスフイル
ター4KHzでノイズレベルを測定した。使用した
VTRは松下電器産業(株)製造「NV−8300」であ
る。 第１図からわかるように、下塗層の厚さを0.03
μ以上にすると、100ｇ／1/2in巾以上の密着力を
得ることができる。しかし、第２図からわかるよ
うに、下塗層の厚さを0.5μより大きくすると、
ビデオＳ／Ｎが低くなる。 従つて、下塗層は、0.5μ以下が好ましい。 更に、第３図からわかるように、下塗層のバイ
ンダーのTgが10℃〜60℃の範囲で非常に高い磁
性層密着強度が得られる。０℃以下のTgの下塗
り剤では塗布工程におけるロール汚れ、ブロツキ
ング等が発生する。また、60℃より高いTgのバ
インダーは著しく密着力が低下する。 従つて、Tgが10℃〜60℃のバインダーを含む
下塗層が良好である。 実施例２〜４及び比較例１〜５ 第１表に示したような下塗層の組成を用いた以
外は実施例１と同様にして厚さ0.2μｍの下塗層
を塗布し、その上に磁性層を設けた、無定形飽和
ポリエステルＡ、Ｂ及びＣはエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ビスフエノールＡ
のエチレンオキサイド付加物の２価アルコールと
テレフタール酸の２塩基酸による重縮合物で二価
アルコールの種類と比率を変えてTgを調整し
た。 このようにして得られたサンプルは磁性層の密
着強度を測定してその結果を第１表に示した。 第１表の結果から明白な如く、本発明の２種の
無定形飽和ポリエステルを組み合せた場合は特に
優れた磁性層の密着強度を示した。 【表】

【図面の簡単な説明】

第１図は下塗層の厚さと磁性層の密着強度の関
係を示すグラフであり、第２図は下塗層の厚さと
ビデオＳ／Ｎの関係を示すグラフであり、第３図
は下塗層のバインダーのガラス転移点と磁性層の
密着強度の関係を示すグラフである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 支持体上に下塗層及び磁性層を有し、該下塗
   層はガラス転移温度が10℃以上30℃未満の無定形
   飽和ポリエステルとガラス転移温度が30℃以上60
   ℃以下の無定形飽和ポリエステルとを含有し、該
   無定形飽和ポリエステルは１種もしくは数種の２
   塩基酸と１種もしくは数種の２価アルコールとの
   重縮合により得られる無定形飽和ポリエステルで
   あり、かつ下塗層の厚さが0.03μ〜0.5μである
   ことを特徴とする磁気記録媒体。