【発明の詳細な説明】
再分散性のポリマー粉末および該粉末から得られる水性ポリマー分散液
本発明は、水不溶性でフィルム形成性のポリマーとpHの変化により失活する
ことができる水溶性の噴霧保護コロイドとの混合物をベースとする再分散性のポ
リマー粉末に関する。さらに、本発明は、該ポリマー粉末を用いて調製すること
ができる水分散液に関する。
分散粉末は、特にプラスチック含有の水硬化系を変性する建造物部門や、プラ
スター,ペイントおよび接着剤において多年にわたって使用されてきた。再分散
性のプラスチック粉末を上記系に添加または使用することにより、接着特性,耐
磨耗性,耐引っかき性および屈曲強度の実質的な向上がもたらされる。代替物と
して同様に使用できる液状ポリマー分散液よりも分散粉末の大きな利点は、とり
わけ保存剤を添加しなくても貯蔵安定性が高く、また粉末状の乾燥混合物が凍結
し難い点にある。
今までに知られている分散粉末は水溶性の噴霧保護コロイドを含有しており、
該コロイドは、乾燥されることになるポリマー分散液に添加されるが、一般的に
は該分散液が乾燥される前に添加される。この手法は分散粉末のベースであるベ
ースポリマーが、例えば噴霧乾燥中において、早期にフィルム形成するのを防ぐ
とされており、ポリマー粉末を水中への再分散を可能にしている。
このために保護コロイドとしてポリビニルアルコール類が主に使用される。そ
の例が、例えばドイツ特許出願公開第4,030,638号明細書(米国特許第5,118,751
号明細書)や欧州特許出願公開第149,098号明細書(米国特許第4,859,751号明細
書)に記載されている。噴霧保護コロイドとしてフェノールスルホン酸−ホルム
アルデヒド縮合物の水溶性塩からなる分散粉末が、欧州特許出願公開第407,889
号明細書(米国特許第5,225,478号明細書)により公知である。噴霧保護コロイ
ドとしてのデキストリン類または澱粉エーテル類等の天然物の使用、および上記
分散粉末を接着剤や水硬化性バインダーに使用することが、欧州特許出願公開第
134,451号明細書により公知である。欧州特許出願公開第467,103号
明細書(米国特許第5,342,897号明細書)には、不飽和酸類またはその酸無水物
類とアルケンまたはスチレンとの水可溶性コポリマーを含むポリマー分散液の噴
霧乾燥による分散粉末の調製法が記載されている。
上述の水可溶性保護コロイドは、分散液の乾燥中にポリマーの早すぎるフィル
ム形成を防止することで、初めて乾燥ポリマー粉末を水中に再分散させるもので
ある(すなわち、ベース分散液の基本粒子の実質的な分散)。しかし、多くの塗
布においては、公知の分散粉末に用いられる保護コロイドは、生成物の特性に望
ましくない作用を呈する。既知の分散粉末を接着剤のバインダーとして用いると
、水溶性噴霧補助剤の保護コロイド特性に起因して、例えば噴霧保護コロイドの
内容物のためその接着性に望ましくない影響を及ぼしたりあるいは接着性が全く
無効となる。ペイントやプラスターにおいては、恒常的な水可溶性の噴霧保護コ
ロイドは耐水性をひどく損う。
したがって、本発明は、水に再分散可能であり、使用中に制御される方法にお
いて、用いる噴霧保護コロイドの作用が無視できるような分散粉末組成物を提供
することを目的の基本とした。
驚くべきことに、アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物)をベ
ースとする低分子量の水溶性ポリマーを噴霧保護コロイドとして使用することに
より、上記目的が達成されることが今や見い出された。
すなわち、本発明は、水に再分散可能な分散粉末組成物に関するもので、
a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類,スチ
レンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群から選ば
れるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性でフィルム形成性のベース
ポリマー、または該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤を含み
、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこ
れらの酸無水物類の中和されてない低分子量ホモ−またはコポリマー、あるいは
オレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の
部分的に中和されたホモポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくは
ジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたコポリマーから
構成され、C3〜C12−アルケン類またはスチレンとのコポリマーの場合は酸
含有量が80モル%より多く、他のコポリマーの場合は酸含有量が50〜99モ
ル%であることを特徴とする。
成分a)に好適なビニルエステルホモ−またはコポリマーは、炭素原子数1〜
18の非分岐状または分岐状カルボン酸のビニルエステル類により構成される群
から選ばれる1種またはそれ以上のモノマー単位を含む。好適な(メタ)アクリ
ル酸エステルポリマーは、炭素原子数1〜18の非分岐状または分岐状アルコー
ルを有するアクリル酸およびメタクリル酸のホモ−およびコポリマーである。
好ましいビニルエステル類には、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酪酸ビニ
ル,2−エチルヘキサン酸ビニル,ラウリル酸ビニル,酢酸1−メチルビニル,
ピバリン酸ビニル等の他に、例えばVV5R,VeoVa9R,VeoVa10R等の炭素原
子数5または9〜10のα位が分岐したモノカルボン酸のビニルエステル類など
がある。中でも酢酸ビニルが好ましい。
好ましいメタクリル酸エステル類またはアクリル酸エステル類には、アクリル
酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸エチル,アク
リル酸プロピル,メタクリル酸プロピル,アクリル酸n−ブチル,メタクリル酸
n−ブチル,アクリル酸i−ブチル,メタクリル酸i−ブチル,アクリル酸t−
ブチル,メタクリル酸t−ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル
酸2−エチルヘキシル等がある。中でも、アクリル酸メチル,メタクリル酸メチ
ル,アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
好適なビニルエステルポリマーの例としては、酢酸ビニルホモポリマー等のビ
ニルエステルホモポリマーや、下記のコポリマーなどがある。
すなわち、エチレン含量が1〜60重量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマー等
のビニルエステル−エチレンコポリマー;
エチレン含量が1〜40重量%および塩化ビニル含量が20〜80重量%の酢酸
ビニル−エチレン−塩化ビニルコポリマー等のビニルエステル−エチレン−塩化
ビニルコポリマー;
ラウリル酸ビニル,ピバリン酸ビニル,2−エチルヘキサン酸ビニルや、α位が
分岐したカルボン酸のビニルエステル類、特にバルサン酸(Versatic acid)ビ
ニルエステル(VeoVa9R,VeoVa10R)等の1種またはそれ以上の共重合可能
なビニルエステル類を1〜50重量%含有する酢酸ビニルコポリマーであり、さ
らに、これらのコポリマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい;
特に酢酸ビニル等のビニルエステル30〜90重量%と特にアクリル酸n−ブチ
ル,アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル1〜60重量%との
ビニルエステル−アクリル酸エステルコポリマーであり、さらに、これらのコポ
リマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい;
酢酸ビニル30〜75重量%、ラウリル酸ビニルまたは特にバルサン酸ビニルエ
ステル等のα位が分岐したカルボン酸のビニルエステル類1〜30重量%、およ
び特にアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル
酸エステル1〜30重量%のビニルエステル−アクリル酸エステルコポリマーで
あり、さらに、これらのコポリマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい
;
ビニルエステルとマレイン酸またはフマル酸のジイソプロピル,ジn−ブチル,
ジt−ブチル,ジエチルヘキシルエステル,メチルn−ブチルエステル等とのコ
ポリマー、例えば酢酸ビニルと1種またはそれ以上の上記マレイン酸エステルま
たはフマル酸エステル10〜60重量%とのコポリマーがあり、これらのコポリ
マーは更にエチレンやラウリル酸ビニル,バルサン酸ビニルエステル等の共重合
可能な他のビニルエステルを含有してもよい。
好適な(メタ)アクリル酸エステルポリマーの例としては、アクリル酸n−ブ
チルまたはアクリル酸2−エチルヘキシルのホモポリマーや、35〜65重量%
のメタクリル酸メチルと65〜35重量%のアクリル酸n−ブチルおよび/また
はアクリル酸2−エチルヘキシルとのコポリマー等がある。
塩化ビニルポリマーの例としては、前述のビニルエステル−塩化ビニルコポリ
マーの他に、塩化ビニル−エチレンコポリマー等がある。
スチレンポリマーの例としては、スチレン−ブタジエンコポリマーや、スチレ
ン−アクリル酸n−ブチル,スチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル等のスチ
レン−アクリル酸エステルコポリマーがあり、いずれの場合もスチレン含量は1
〜70重量%である。
また、以上のポリマーには、水溶性の向上、架橋および接着特性の変性のため
に、いずれの場合も全ポリマー重量に対して適宜1種またはそれ以上の補助モノ
マー単位を0.05〜30.0重量%、好ましくは0.5〜15重量%含有しても
よい。
水溶性を向上させるために好適な補助モノマーとしては、例えばアクリル酸,
メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,アクリルアミド,メタクリ
ルアミド等のα,β−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸類とそれ
らのアミド類や、エチレン性不飽和スルホン酸類とそれらの塩類、好ましくはビ
ニルスルホン酸,2−アクリルアミドプロパンスルホン酸塩および/またはN−
ビニルピロリドンなどがある。
ポリマーには、全ポリマー重量に対して0.5〜5.0重量%程度の架橋作用を
有するモノマー単位を含有することが好ましい。その例としては、N−メチロー
ルアクリルアミド,N−メチロールメタクリルアミド;N−(i−ブトキシメチ
ル)アクリルアミド(IBMA),N−(i−ブトキシメチル)メタクリルアミ
ド(IBMMA),N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド(NBMA),
N−(n−ブトキシメチル)メタクリルアミド(NBMMA)等のC1〜C6の
アルキル基を有するN−(アルコキシメチル)アクリルアミド類またはN−(ア
ルコキシメチル)メタクリルアミド類;エチレングリコールジアクリレート、1
,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアク
リレート、プロピレングリコールジアクリレート、アジピン酸ジビニル、ジビニ
ルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、ア
クリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、
メチレン−ビスアクリルアミド、アクリル酸シクロペンタジエニル、シアヌール
酸トリアリル等の複数のエチレン性不飽和基を有するコモノマーがある。
接着特性の変性に好適なコモノマー単位としては、例えばヒドロキシエチルエ
ステル,ヒドロキシプロピルエステル,ヒドロキシブチルアクリレートエステル
またはメタクリレートエステル等のメタクリル酸およびアクリル酸のヒドロキシ
アルキルエステルや、ジアセトン−アクリルアミド,アセチルアセトキシエチル
アクリレートまたはメタクリレート等の化合物がある。
遊離ラジカルにより重合する前述の水不溶性のポリマーは0〜100℃の温度
範囲で乳化重合法により製造されることが好ましく、その製造は遊離ラジカルを
形成し、通常乳化重合に用いられている水可溶化剤で重合が開始される。用いる
ことのできる分散剤としては、通常乳化重合に用いられている全ての乳化剤が挙
げられる。重合はpHが好ましくは2〜7の範囲で行われる。乾燥する前に、分
散液の固形含量を20〜65%に調節することが好ましい。
成分b)として好ましい物質には、アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン
酸(無水物)のホモ−またはコポリマーがあり、特にポリアクリル酸またはポリ
メタクリル酸が好ましい。アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物
)単位とこれらと共重合可能なモノマー単位とのコポリマー、特にこれらのコポ
リマーの酸含有量が80モル%以上である場合が更に好ましい。共重合可能なモ
ノマーの例としては、エチレン,プロピレン等のアルケン類,スチレン等のビニ
ル芳香族化合物類、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類,メタクリル酸
メチル等のメタクリル酸エステル類,メチルビニルエーテル等のアルキルビニル
エーテル類,メタクリルアミド,アクリルアミドなどがある。好ましいコモノマ
ーには、(メタ)アクリル酸エステル類,アルキルビニルエーテル類,(メタ)
アクリルアミド類等がある。好ましいコポリマーの例としては、マレイン酸−メ
チルビニルエーテル,メタクリル酸−メタクリル酸メチル,メタクリル酸−アク
リルアミドコポリマー等がある。また、上記ホモ−およびコポリマーの混合物も
使用することができる。
上記ポリマーの分子量は、250,000g/mol以下好ましくは150,000g/mol以下で
あり、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により測定される
重量平均分子量が、5,000〜50,000g/molの範囲にあることが特に好ましい。
成分b)として記載されたポリマーは、通常例えば溶液重合,バルク重合等の
当業者にとって公知の方法により製造される。また、これらのポリマーはしばし
ば商業的に入手可能である。
分散粉末組成物中の成分b)の含有量は、ベースポリマーに対して2〜40重
量%の範囲にあることが好ましく、5〜25重量%の範囲にあることが特に好ま
しい。
アンチブロッキング剤(成分c)の例としては、微粉砕された珪酸アルミニウ
ム,キーゼルグール,焼成して製造される二酸化珪素,沈殿珪酸,コロイド珪酸
,マイタロシリカ,カオリン,タルク,珪藻土,炭酸カルシウム,マグネシウム
ハイドロシリケート等がある。アンチブロッキング剤の含有量は、高分子成分の
全重量に対して4〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
また、分散粉末組成物には、目的とする使用分野に依存して更に添加剤を適宜
含有させることができる。
接着剤としての使用には、分散粉末組成物はまた、ベースポリマーに対してい
ずれの場合も100重量%までの粘着付与物質(粘着付与剤)を含有することが
できる。粘着付与物質としては、ロジン,二量化ロジン,水素化ロジンおよび/
または上記ロジンタイプのエステル類;例えば酢酸ブチルジグリコール,ブチル
ジグリコール,プロピレンジグリコールのエーテル類またはそれらのエステル類
等の高沸点物質を適宜組み合わせたポリテルペン樹脂,クマロン−インデン樹脂
,テルペン−フェノール樹脂,炭化水素樹脂;フタル酸エステル類,セバシン酸
エステル類,アジピン酸エステル類等の可塑剤が挙げられる。中でも、上記ロジ
ンタイプとそれらのエステル類,酢酸ブチルジグリコールおよび(2−ヒドロキ
シエチル)フェニルエーテルが好ましい。
また、組成物には、更に例えばポリシロキサン類または金属石鹸をベースとす
る疎水化剤をベースポリマーに対して0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜
10重量%の範囲で適宜含有させることができる。
さらに、乳化剤,湿潤剤等の界面活性物質をベースポリマーに対して0.1〜
2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲で含有させることもできる
。その例としてはアニオンやノニオン界面活性剤がある。
また、組成物には、更に例えば高分子量のポリアクリル酸類をベースとする濃
化剤をベースポリマーに対して0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜10重
量%の範囲で適宜含有させることができる。
使用可能な別の添加剤の例は消泡剤であり、これをベースポリマーに対して0
.05〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%までの量で適宜使用する
ことができる。
好ましい態様においては、本発明にかかる分散粉末組成物にはまた中和剤を含
有させることができる。これらの中和剤は、好ましくは粉末状の他の添加剤と適
宜併用して乾燥後の粉末に混合される。用いる中和剤の量は個々の分散粉末組成
物に依存する。慣用の無機塩基が好適であり、その例としては水酸化ナトリウム
,水酸化カリウム,水酸化カルシウム等がある。
建造物用材料に使用する場合、組成物にはまた、更にセメント液化剤をベース
ポリマーに対して1.0〜30重量%、好ましくは1.0〜15重量%の範囲で
含有させることができる。セメント液化剤としては、例えばスチレン−無水マレ
イン酸コポリマーや、メラミンまたはケトンとホルムアルデヒドおよび/または
ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒドおよび/またはフェノールスルホン酸
−ホルムアルデヒド縮合生成物のスルホネート基含有縮合生成物がある。
分散粉末組成物を調製するには、ベースポリマーa)が水分散液として用いら
れる。この分散液に噴霧保護コロイドb)が好ましくは水溶液の状態で添加され
、混合される。この混合操作は望ましい順序であればいかなる順序で実施しても
よく、ただ均一な分散混合物が存在することが重要である。適宜用いられる濃化
剤,界面活性物質,疎水化剤,消泡剤および更に適宜の添加剤は、乾燥前の水性
混合物に添加することが好ましい。粘着付与添加剤(粘着付与剤)の使用が望ま
しい場合は、該添加剤を最初の成分としてベースポリマーの分散液に添加するこ
とが好ましい。粘着付与剤は、溶解物または水乳化液もしくは水分散液として溶
液またはバルク(固体または液体)の状態でこれに添加することができる。粘着
付与剤をバルクの状態で用いる場合は、ベースポリマーの分散液に導入する際、
十分かつ完全な混合が保証されるべきである。
酸含有量が80モル%より多い噴霧保護コロイドb)を添加する場合、噴霧す
べき混合物のpHは一般に4.5以下であり、そのため噴霧保護コロイドを中和
されてないかまたは部分的に中和された状態で存在させて、再分散性の系を確実
に得ることができる。もし好適であれば、噴霧前に混合物のpHを調節しなけれ
ばならない。例えば、pHを変化させながらベースポリマーと噴霧保護コロイド
との水性混合物を乾燥させたフィルムについて再分散性を調査することによって
、好適なpHを容易に確立することができる。
上記成分を混合した後分散液は乾燥される。この乾燥は、噴霧乾燥または凍結
乾燥が好ましく、中でも噴霧乾燥が好ましい。この乾燥には、例えば加熱しても
よい乾燥ガス気流中で多重成分ノズルを通してまたはディスクを用いて噴霧する
公知の装置を利用することができる。乾燥ガスとしては一般に空気,窒素または
窒素に富んだ空気が用いられ、その温度は一般に250℃を超えてはならない。
乾燥ガスの最適な温度は幾つかの実験により求めることができ、しばしば60℃
より高い温度が特に適当であることが判明した。
例えばケーキングおよびブロッキングの防止のためおよび/または粉末の流動
性の向上の目的として保管温度を高めために、アンチブロッキング剤c)を粉末
に添加できる。この添加は、粉末がまだ微粉状に分散している間、例えば乾燥ガ
ス中にまだ懸濁している間に行うことが好ましい。特に、アンチブロッキング剤
は、計量して他の成分と別々ではあるが、分散液とは同時に乾燥装置に供給され
る。
分散粉末組成物が1種またはそれ以上の中和剤を含有する場合は、固形物の状
態で中和剤を分散粉末に添加することが好ましい。しかし、中和剤を計量して別
々ではあるが分散液とは同時に乾燥装置に供給することもできる。このような別
々の処理のためには、噴霧乾燥が特に適当であることが判明した。
分散粉末組成物は次に記載のような使用法で用いることができる。すなわち、
分散粉末組成物は、使用前に水と共に攪拌される乾燥製剤で通常用いられる。さ
らに、分散粉末組成物をまず水に再分散し、次いで更に再分散液の状態で添加剤
により変性することができる。
請求の範囲に記載の噴霧保護コロイド成分b)に基づいて、成分b)の中和に
より保護コロイドが失活した分散液を得ることができる。ここで、対応する量の
中和剤を予め含有し、好ましくは即使用可能な乾燥製剤の状態である分散粉末組
成物を水中に再分散液させることにより中和を行うことができる。粉末中の中和
剤の量は、所望のpH範囲が再分散液にもたらされるように選択される。別の可
能性は、分散粉末組成物を、あるいは中和剤で変性されてない乾燥製剤を水に再
分散または分散させ、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム等
の中和剤を引き続き添加して、所望のpH範囲が得る方法がある。例えばフロー
リング接着剤等のある塗布においては、妥当であるならば中和による保護コロイ
ドの失活を省略してもよい。
そのため、本発明は更に、前記分散粉末組成物をまたは水に存在させてpHを
適宜調節した前記分散粉末組成物からの乾燥製剤を再分散させることにより得ら
れる、好ましくはpHが5〜10の水性ポリマー分散液に関する。分散液の固形
物含量は、目的とする使用法に依存するが、一般に10〜80%の範囲にある。
本発明にかかる分散粉末組成物およびこれから得られる水性分散液は、接着剤
組成物の使用に特に好適であり、中でも感圧接着剤組成物およびフローリング接
着剤の使用に好適である。さらに、粉末および分散液は、プラスター,ペイント
および被覆物(例えば密封用スラリー)のバインダーとして、セメント非含有お
よびセメント含有充填組成物用バインダーとして、建造物用接着剤として、なら
びに繊維に使用される接着剤または被覆物用バインダーとして好適である。
失活されていない保護コロイドを含有する分散粉末またはこれから得られる水
性分散液とは対照的に、製剤ついては、例えば粘着性(タック),耐水性および
機械的強度に関して、噴霧保護コロイドの望ましくない影響によりベースポリマ
ーの好都合な特性が完全確保されず、すなわち一部確保されるが、該特性はなお
充分に効果があり、上記製剤は本発明にかかるシステムを利用することが可能で
ある。また、粘着付与剤を添加しなくても感圧接着剤に必要とされる粘着性をも
有する粉末状接着剤または接着性分散液が、これらの製剤とすることで得られ非
常に有用である。
以下の実施例は本発明を更に説明するのに役立つものである。
実施例
使用する物質
・分散液DI−1
ワッカー・ケミー社製のアクリル酸2−エチルヘキシル含量48重量%,酢酸
ビニル含量36重量%およびエチレン含量16重量%の酢酸ビニル−エチレン−
アクリル酸エチルヘキシルコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固形
分含量60%の水分散液。
・分散液DI−2
ワッカー・ケミー社製のエチレン含量45重量%および酢酸ビニル含量55重
量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固
形分含量61%の水分散液。
・分散液DI−3
ワッカー・ケミー社製のエチレン含量12重量%および酢酸ビニル含量88重
量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固
形分含量51%の水分散液。
・分散液DI−4
ワッカー・ケミー社製のアクリル酸2−エチルヘキシル含量90重量%および
酢酸ビニル含量10重量%のアクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニルコポリ
マーをベースとする乳化剤で安定化された固形分含量60%の水分散液。
・噴霧保護コロイド ソカラン(Sokalan)−CP13
ソカランCP13はBASF社製の分子量約20,000のポリアクリル酸である。
・噴霧保護コロイド ベルシコール(Versicol)−K11
ベルシコール−K11はアライドコロイド社製の分子量約10,000のポリメタク
リル酸である。
・粘着付与剤T−1
粘着付与剤T−1は、BASF社製の(2−ヒドロキシエチル)フェニルエー
テル(Plastilit-DS3431)20重量%と、Willers,Engel & Co.製のマヤ
(Maya)種中米産バルサム樹脂80重量%との混合物である。
実施例1
4000重量部の分散液DI−1,濃度25%のベルシコール−K11水溶液
1920重量部(DI−1樹脂に対して20%)および水1050重量部を完全
に混合した。分散液のpHは3.4であった。この混合物を二成分ノズルにより
噴霧乾燥した。噴霧成分として3バールに予め加圧した空気を用い、形成された
液滴を120℃に加熱した乾燥空気との対向流で乾燥した。得られた乾燥粉末を
カオリンをベースとする市販のアンチブロッキング剤10重量%と混合した。
比較例1
水酸化ナトリウムを添加して噴霧するバッチのpHを5.2と高くした以外は
、実施例1と同様にして分散粉末を調製した。
実施例2
2000重量部の分散液DI−1および1200重量部の粘着付与剤T−1(
DI−1樹脂に対して100%)を均一に混合した。次いで、濃度25%のベル
シコール−K11水溶液1907重量部(DI−1樹脂および粘着付与剤T−1
に対して20%)および水1000重量部を添加し、完全に混合した。混合物の
pHは2.8であった。この混合物を二成分ノズルにより噴霧乾燥した。噴霧成
分として3バールに予め加圧した空気を用い、形成された液滴を120℃に加熱
した乾燥空気との対向流で乾燥した。得られた粉末をカオリンをベースとする市
販のアンチブロッキング剤10重量%と混合した。
比較例2
水酸化ナトリウムを添加して噴霧バッチのpHを5.6と高くした以外は、実
施例2と同様にして分散粉末を調製した。
比較例3
濃度25%のベルシコール−K11水溶液を1920重量部に代えて1440
重量部(DI−1樹脂に対して15%)用いた以外、手順は実施例1と同じであ
った。混合物のpHは3.6であった。
実施例3
4000重量部の分散液DI−4,濃度25%のベルシコール−K11水溶液
1920重量部(DI−4樹脂に対して20%)および水950重量部を完全に
混合した。混合物のpHは3.4であった。実施例1と類似の方法により噴霧乾
燥を行った。得られた乾燥粉末をカオリンをベースとする市販のアンチブロッキ
ング剤10重量%と混合した。
実施例4
4000重量部の分散液DI−2,濃度28%のソカラン−CP13水溶液1
743重量部(DI−2樹脂に対して20%)および水1500重量部を完全に
混合した。混合物のpHは2.6であった。この混合物を二成分ノズルにより噴
霧乾燥した。実施例1と同様にして分散粉末を調製した。ただし、アンチブロッ
キング剤は使用しなかった。
実施例5
4000重量部の分散液DI−3および濃度28%のソカラン−CP13水溶
液729重量部(DI−3樹脂に対して10%)を完全に混合した。混合物のp
Hは2.2であった。実施例1と同様にして分散粉末を調製した。ただし、アン
チブロッキング剤は使用しなかった。
実施例6
濃度28%のソカラン−CP13水溶液729重量部に代えて、濃度25%の
ベルシコール−K11溶液816重量部(DI−3樹脂に対して10%)を用い
た以外、手順は実施例5と同じであった。混合物のpHは2.4であった。
使用法の検討
・噴霧保護コロイドの失活
噴霧保護コロイドの失活を調査するために、噴霧される分散液のpHがそこか
ら得られる分散粉末の再分散性に及ぼす影響について調査した。このために、各
分散粉末50gをそれぞれ水50gに加えて攪拌し、目盛付きのガラス管を用い
てチューブ沈降試験により再分散性を定性的に評価した。保護コロイドの中和に
よりコロイドが失活して、再分散性の系が単なるpH変化によりどのように非分
散性の系になるかを表1に示す。
・噴霧保護コロイドの失活に対する使用特性の向上
使用特性に対する噴霧保護コロイドの失活の影響を調査するために、再分散液
から製造される感圧接着フィルムの粘着性に及ぼす、再分散液のpHの影響につ
いて調査した。このために、各分散粉末50gをそれぞれ水50gに加えて攪拌
し、水酸化ナトリウムを添加して表2に示すpHを得た。また一方、それぞれの
再分散液は比較のために中和しなかった。再分散液を担体フィルム上にナイフコ
ートして、60℃で乾燥した。フィルムの粘着性(タック)を定性的に評価した
。保護コロイドの中和によりコロイドが失活して、他の点では同一の分散液から
フィルムの粘着性がどのように劇的に向上するかを表2に示す。
・粉末ペイントの処方試験
表3に示す処方に従って粉末ペイントを調製した。
表4に示す粉末および表3に示す処方から表4に示すPVC含有の粉末ペイン
トを調製した。溶解剤を用いて上記乾燥混合物を水に加えて混合した。このよう
にして得られた液状ペイントを乾燥した時の被膜の厚さが100μmとなるよう
に塗布した。標準的な気候条件で28日間保管した後、耐湿潤磨耗性をDIN5
3778に従って測定した。
他の点では同一の再分散液を用いているにもかかわらず、保護コロイドの中和
によりどれくらいこのコロイドが失活し、ペイントの処方における顔料結合能が
どれくらい劇的に向上するかを表4に示す。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年11月13日
【補正内容】
明細書(米国特許第5,342,897号明細書)には、不飽和酸類またはその酸無水物
類とアルケンまたはスチレンとの水可溶性コポリマーを含むポリマー分散液の噴
霧乾燥による分散粉末の調製法が記載されている。
上述の水可溶性保護コロイドは、分散液の乾燥中にポリマーの早すぎるフィル
ム形成を防止することで、初めて乾燥ポリマー粉末を水中に再分散させるもので
ある(すなわち、ベース分散液の基本粒子の実質的な分散)。しかし、多くの塗
布においては、公知の分散粉末に用いられる保護コロイドは、生成物の特性に望
ましくない作用を呈する。既知の分散粉末を接着剤のバインダーとして用いると
、水溶性噴霧補助剤の保護コロイド特性に起因して、例えば噴霧保護コロイドの
内容物のためその接着性に望ましくない影響を及ぼしたりあるいは接着性が全く
無効となる。ペイントやプラスターにおいては、恒常的な水可溶性の噴霧保護コ
ロイドは耐水性をひどく損う。
したがって、本発明は、水に再分散可能であり、使用中に制御される方法にお
いて、用いる噴霧保護コロイドの作用が無視できるような分散粉末組成物を提供
することを目的の基本とした。
驚くべきことに、アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物)をベ
ースとする低分子量の水溶性ポリマーを噴霧保護コロイドとして使用することに
より、上記目的が達成されることが今や見い出された。
すなわち、本発明は、水に再分散可能な分散粉末組成物に関するもので、
a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類,スチ
レンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群から選ば
れるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性でフィルム形成性のベース
ポリマー、または該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤を含み
、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこ
れらの酸無水物類の中和されてないホモ−またはコポリマー、あるいはオレフィ
ン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的に
中
和されたホモポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン
酸類またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたコポリマーから構成され、
C3〜C12−アルケン類またはスチレンとのコポリマーの場合は酸含有量が8
0モル%より多く、他のコポリマーの場合は酸含有量が50〜99モル%であり
、上記ポリマーの重量平均分子量は250,000g/mol以下であり、そして分散粉末
組成物のpHが4.5以下であることを特徴とする。
成分a)に好適なビニルエステルホモ−またはコポリマーは、炭素原子数1〜
18の非分岐状または分岐状カルボン酸のビニルエステル類により構成される群
から選ばれる1種またはそれ以上のモノマー単位を含む。好適な(メタ)アクリ
ル酸エステルポリマーは、炭素原子数1〜18の非分岐状または分岐状アルコー
ルを有するアクリル酸およびメタクリル酸のホモ−およびコポリマーである。
好ましいビニルエステル類には、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酪酸ビニ
ル,2−エチルヘキサン酸ビニル,ラウリル酸ビニル,酢酸1−メチルビニル,
ピバリン酸ビニル等の他に、例えばVV5R,VeoVa9R,VeoVa10R等の炭素原子数5
または9〜10のα位が分岐したモノカルボン酸のビニルエステル類などがある
。中でも酢酸ビニルが好ましい。
好ましいメタクリル酸エステル類またはアクリル酸エステル類には、アクリル
酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸エチル,アク
リル酸プロピル,メタクリル酸プロピル,アクリル酸n−ブチル,メタクリル酸
n−ブチル,アクリル酸i−ブチル,メタクリル酸i−ブチル,アクリル酸t−
ブチル,メタクリル酸t−ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル
酸2−エチルヘキシル等がある。中でも、アクリル酸メチル,メタクリル酸メチ
ル,アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
好適なビニルエステルポリマーの例としては、酢酸ビニルホモポリマー等のビ
ニルエステルホモポリマーや、下記のコポリマーなどがある。
すなわち、エチレン含量が1〜60重量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマー等
のビニルエステル−エチレンコポリマー;
エチレン含量が1〜40重量%および塩化ビニル含量が20〜80重量%の酢酸
ビニル−エチレン−塩化ビニルコポリマー等のビニルエステル−エチレン−塩化
ビニルコポリマー;
請求の範囲
1. a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類
,スチレンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群か
ら選ばれるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性ベースポリマー、ま
たは該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤からな
る再分散性の分散粉末組成物において、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モ
ノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の中和されてないホモ−
またはコポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類
またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたホモポリマー、あるいはオレフ
ィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的
に中和されたコポリマーから構成され、C3〜C12−アルケン類またはスチレ
ンとのコポリマーの場合は酸含有量が80モル%より多く、他のコポリマーの場
合は酸含有量が50〜99モル%であり、上記ポリマーの重量平均分子量は250,
000g/mol以下であり、そして分散粉末組成物のpHが4.5以下であることを
特徴とする、再分散性の分散粉末組成物。
2. 成分b)が、アクリル酸,メタクリル酸もしくはマレイン酸(無水物)の
ホモ−またはコポリマー、特にポリアクリル酸,ポリメタクリル酸、あるいはア
クリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物)単位とこれらと共重合する
ことができるモノマー単位との酸含有量が80モル%以上のコポリマーからなる
ことを特徴とする請求項1記載の再分散性の分散粉末組成物。
3. 分散粉末組成物中の成分b)の含有量が、ベースポリマーに対して2〜4
0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の再分散性の分散粉末
組成物。
4. 分散粉末組成物はまた、ベースポリマーに対して100重量%までの粘着
付与物質(粘着付与剤)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれ
かに記載の再分散性の分散粉末組成物。
5. 分散粉末組成物はまた、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムまたは水酸化
カルシウム等の中和剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
載の再分散性の分散粉末組成物。
6. 請求項1〜5のいずれかに記載の分散粉末組成物またはその乾燥製剤を水
に再分散させることにより得られる、pHが適宜5〜10の範囲である水性ポリ
マー分散液。
7. プラスター,ペイントもしくは被覆物のバインダー、セメント非含有もし
くはセメント含有充填組成物用バインダー、建造物用接着剤、または繊維の接着
剤もしくは被覆物用バインダーとして、接着剤組成物に特に感圧接着剤組成物ま
たはフローリング接着剤に使用される請求項1〜5のいずれかに記載の分散粉末
組成物の使用法。
8. プラスター,ペイントもしくは被覆物のバインダー、セメントを含まない
かもしくはセメントを含有する詰め物組成物のバインダー、建造物用接着剤、ま
たは繊維の接着剤もしくは被覆物用バインダーとして、接着剤組成物に特に感圧
接着剤またはフローリング接着剤に使用される請求項6記載の水性ポリマー分散
液の使用法。
【手続補正書】
【提出日】1998年7月9日
【補正内容】
明細書
再分散性のポリマー粉末および該粉末から得られる水性ポリマー分散液
本発明は、水不溶性でフィルム形成性のポリマーとpHの変化により失活する
ことができる水溶性の噴霧保護コロイドとの混合物をベースとする再分散性のポ
リマー粉末に関する。さらに、本発明は、該ポリマー粉末を用いて調製すること
ができる水分散液に関する。
分散粉末は、特にプラスチック含有の水硬化系を変性する建造物部門や、プラ
スター,ペイントおよび接着剤において多年にわたって使用されてきた。再分散
性のプラスチック粉末を上記系に添加または使用することにより、接着特性,耐
磨耗性,耐引っかき性および屈曲強度の実質的な向上がもたらされる。代替物と
して同様に使用できる液状ポリマー分散液よりも分散粉末の大きな利点は、とり
わけ保存剤を添加しなくても貯蔵安定性が高く、また粉末状の乾燥混合物が凍結
し難い点にある。
今までに知られている分散粉末は水溶性の噴霧保護コロイドを含有しており、
該コロイドは、乾燥されることになるポリマー分散液に添加されるが、一般的に
は該分散液が乾燥される前に添加される。この手法は分散粉末のベースであるベ
ースポリマーが、例えば噴霧乾燥中において、早期にフィルム形成するのを防ぐ
とされており、ポリマー粉末を水中への再分散を可能にしている。
このために保護コロイドとしてポリビニルアルコール類が主に使用される。そ
の例が、例えばドイツ特許出願公開第4,030,638号明細書(米国特許第5,118,751
号明細書)や欧州特許出願公開第149,098号明細書(米国特許第4,859,751号明細
書)に記載されている。噴霧保護コロイドとしてフェノールスルホン酸−ホルム
アルデヒド縮合物の水溶性塩からなる分散粉末が、欧州特許出願公開第407,889
号明細書(米国特許第5,225,478号明細書)により公知である。噴霧保護コロイ
ドとしてのデキストリン類または澱粉エーテル類等の天然物の使用、および上記
分散粉末を接着剤や水硬化性バインダーに使用することが、欧州特許出願公開第
134,451号明細書により公知である。欧州特許出願公開第467,103号明細書(米
国特許第5,342,897号明細書)には、不飽和酸類またはその酸無水物類とアルケ
ンまたはスチレンとの水可溶性コポリマーを含むポリマー分散液の噴霧乾燥によ
る分散粉末の調製法が記載されている。
上述の水可溶性保護コロイドは、分散液の乾燥中にポリマーの早すぎるフィル
ム形成を防止することで、初めて乾燥ポリマー粉末を水中に再分散させるもので
ある(すなわち、ベース分散液の基本粒子の実質的な分散)。しかし、多くの塗
布においては、公知の分散粉末に用いられる保護コロイドは、生成物の特性に望
ましくない作用を呈する。既知の分散粉末を接着剤のバインダーとして用いると
、水溶性噴霧補助剤の保護コロイド特性に起因して、例えば噴霧保護コロイドの
内容物のためその接着性に望ましくない影響を及ぼしたりあるいは接着性が全く
無効となる。ペイントやプラスターにおいては、恒常的な水可溶性の噴霧保護コ
ロイドは耐水性をひどく損う。
したがって、本発明は、水に再分散可能であり、使用中に制御される方法にお
いて、用いる噴霧保護コロイドの作用が無視できるような分散粉末組成物を提供
することを目的の基本とした。
驚くべきことに、アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物)をベ
ースとする低分子量の水溶性ポリマーを噴霧保護コロイドとして使用することに
より、上記目的が達成されることが今や見い出された。
すなわち、本発明は、水に再分散可能な分散粉末組成物に関するもので、
a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類,スチ
レンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群から選ば
れるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性でフィルム形成性のベース
ポリマー、または該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤を含み
、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこ
れらの酸無水物類の中和されてないホモ−またはコポリマー、あるいはオレフィ
ン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的に
中和されたホモポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボ
ン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたコポリマーから構成され
、C3〜C12−アルケン類またはスチレンとのコポリマーの場合は酸含有量が
80モル%より多く、他のコポリマーの場合は酸含有量が50〜99モル%であ
り、上記ポリマーの重量平均分子量は250,000g/mol以下であり、そして分散粉
末組成物のpHが4.5以下であることを特徴とする。
成分a)に好適なビニルエステルホモ−またはコポリマーは、炭素原子数1〜
18の非分岐状または分岐状カルボン酸のビニルエステル類により構成される群
から選ばれる1種またはそれ以上のモノマー単位を含む。好適な(メタ)アクリ
ル酸エステルポリマーは、炭素原子数1〜18の非分岐状または分岐状アルコー
ルを有するアクリル酸およびメタクリル酸のホモ−およびコポリマーである。
好ましいビニルエステル類には、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酪酸ビニ
ル,2−エチルヘキサン酸ビニル,ラウリル酸ビニル,酢酸1−メチルビニル,
ピバリン酸ビニル等の他に、例えばVV5R,VeoVa9R,VeoVa10R等の炭素原子数5
または9〜10のα位が分岐したモノカルボン酸のビニルエステル類などがある
。中でも酢酸ビニルが好ましい。
好ましいメタクリル酸エステル類またはアクリル酸エステル類には、アクリル
酸メチル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸エチル,アク
リル酸プロピル,メタクリル酸プロピル,アクリル酸n−ブチル,メタクリル酸
n−ブチル,アクリル酸i−ブチル,メタクリル酸i−ブチル,アクリル酸t−
ブチル,メタクリル酸t−ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル
酸2−エチルヘキシル等がある。中でも、アクリル酸メチル,メタクリル酸メチ
ル,アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
好適なビニルエステルポリマーの例としては、酢酸ビニルホモポリマー等のビ
ニルエステルホモポリマーや、下記のコポリマーなどがある。
すなわち、エチレン含量が1〜60重量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマー等
のビニルエステル−エチレンコポリマー;
エチレン含量が1〜40重量%および塩化ビニル含量が20〜80重量%の酢酸
ビニル−エチレン−塩化ビニルコポリマー等のビニルエステル−エチレン−塩化
ビニルコポリマー;
ラウリル酸ビニル,ピバリン酸ビニル,2−エチルヘキサン酸ビニルや、α位が
分岐したカルボン酸のビニルエステル類、特にバルサン酸(Versatic acid)ビ
ニルエステル(VeoVa9R,VeoVa10R)等の1種またはそれ以上の共重合可能
なビニルエステル類を1〜50重量%含有する酢酸ビニルコポリマーであり、さ
らに、これらのコポリマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい;
特に酢酸ビニル等のビニルエステル30〜90重量%と特にアクリル酸n−ブチ
ル,アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル1〜60重量%との
ビニルエステル−アクリル酸エステルコポリマーであり、さらに、これらのコポ
リマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい;
酢酸ビニル30〜75重量%、ラウリル酸ビニルまたは特にバルサン酸ビニルエ
ステル等のα位が分岐したカルボン酸のビニルエステル類1〜30重量%、およ
び特にアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル
酸エステル1〜30重量%のビニルエステル−アクリル酸エステルコポリマーで
あり、さらに、これらのコポリマーはエチレンを1〜40重量%含有してもよい
;
ビニルエステルとマレイン酸またはフマル酸のジイソプロピル,ジn−ブチル,
ジt−ブチル,ジエチルヘキシルエステル,メチルn−ブチルエステル等とのコ
ポリマー、例えば酢酸ビニルと1種またはそれ以上の上記マレイン酸エステルま
たはフマル酸エステル10〜60重量%とのコポリマーがあり、これらのコポリ
マーは更にエチレンやラウリル酸ビニル,バルサン酸ビニルエステル等の共重合
可能な他のビニルエステルを含有してもよい。
好適な(メタ)アクリル酸エステルポリマーの例としては、アクリル酸n−ブ
チルまたはアクリル酸2−エチルヘキシルのホモポリマーや、35〜65重量%
のメタクリル酸メチルと65〜35重量%のアクリル酸n−ブチルおよび/また
はアクリル酸2−エチルヘキシルとのコポリマー等がある。
塩化ビニルポリマーの例としては、前述のビニルエステル−塩化ビニルコポリ
マーの他に、塩化ビニル−エチレンコポリマー等がある。
スチレンポリマーの例としては、スチレン−ブタジエンコポリマーや、スチレ
ン−アクリル酸n−ブチル,スチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル等のスチ
レン−アクリル酸エステルコポリマーがあり、いずれの場合もスチレン含量は1
〜70重量%である。
また、以上のポリマーには、水溶性の向上、架槁および接着特性の変性のため
に、いずれの場合も全ポリマー重量に対して適宜1種またはそれ以上の補助モノ
マー単位を0.05〜30.0重量%、好ましくは0.5〜15重量%含有しても
よい。
水溶性を向上させるために好適な補助モノマーとしては、例えばアクリル酸,
メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,アクリルアミド,メタクリ
ルアミド等のα,β−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸類とそれ
らのアミド類や、エチレン性不飽和スルホン酸類とそれらの塩類、好ましくはビ
ニルスルホン酸,2−アクリルアミドプロパンスルホン酸塩および/またはN−
ビニルピロリドンなどがある。
ポリマーには、全ポリマー重量に対して0.5〜5.0重量%程度の架槁作用を
有するモノマー単位を含有することが好ましい。その例としては、N−メチロー
ルアクリルアミド,N−メチロールメタクリルアミド;N−(i−ブトキシメチ
ル)アクリルアミド(IBMA),N−(i−ブトキシメチル)メタクリルアミ
ド(IBMMA),N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド(NBMA),
N−(n−ブトキシメチル)メタクリルアミド(NBMMA)等のC1〜C6の
アルキル基を有するN−(アルコキシメチル)アクリルアミド類またはN−(ア
ルコキシメチル)メタクリルアミド類;エチレングリコールジアクリレート、1
,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアク
リレート、プロピレングリコールジアクリレート、アジピン酸ジビニル、ジビニ
ルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、ア
クリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、
メチレン−ビスアクリルアミド、アクリル酸シクロペンタジエニル、シアヌール
酸トリアリル等の複数のエチレン性不飽和基を有するコモノマーがある。
接着特性の変性に好適なコモノマー単位としては、例えばヒドロキシエチルエ
ステル,ヒドロキシプロピルエステル,ヒドロキシブチルアクリレートエステル
またはメタクリレートエステル等のメタクリル酸およびアクリル酸のヒドロキシ
アルキルエステルや、ジアセトン−アクリルアミド,アセチルアセトキシエチル
アクリレートまたはメタクリレート等の化合物がある。
遊離ラジカルにより重合する前述の水不溶性のポリマーは0〜100℃の温度
範囲で乳化重合法により製造されることが好ましく、その製造は遊離ラジカルを
形成し、通常乳化重合に用いられている水可溶化剤で重合が開始される。用いる
ことのできる分散剤としては、通常乳化重合に用いられている全ての乳化剤が挙
げられる。重合はpHが好ましくは2〜7の範囲で行われる。乾燥する前に、分
散液の固形含量を20〜65%に調節することが好ましい。
成分b)として好ましい物質には、アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン
酸(無水物)のホモ−またはコポリマーがあり、特にポリアクリル酸またはポリ
メタクリル酸が好ましい。アクリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物
)単位とこれらと共重合可能なモノマー単位とのコポリマー、特にこれらのコポ
リマーの酸含有量が80モル%以上である場合が更に好ましい。共重合可能なモ
ノマーの例としては、エチレン,プロピレン等のアルケン類,スチレン等のビニ
ル芳香族化合物類、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類,メタクリル酸
メチル等のメタクリル酸エステル類,メチルビニルエーテル等のアルキルビニル
エーテル類,メタクリルアミド,アクリルアミドなどがある。好ましいコモノマ
ーには、(メタ)アクリル酸エステル類,アルキルビニルエーテル類,(メタ)
アクリルアミド類等がある。好ましいコポリマーの例としては、マレイン酸−メ
チルビニルエーテル,メタクリル酸−メタクリル酸メチル,メタクリル酸−アク
リルアミドコポリマー等がある。また、上記ホモ−およびコポリマーの混合物も
使用することができる。
上記ポリマーの分子量は、250,000g/mol以下好ましくは150,000g/mol以下で
あり、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により測定される
重量平均分子量が、5,000〜50,000g/molの範囲にあることが特に好ましい。
成分b)として記載されたポリマーは、通常例えば溶液重合,バルク重合等の
当業者にとって公知の方法により製造される。また、これらのポリマーはしばし
ば商業的に入手可能である。
分散粉末組成物中の成分b)の含有量は、ベースポリマーに対して2〜40重
量%の範囲にあることが好ましく、5〜25重量%の範囲にあることが特に好ま
しい。
アンチブロッキング剤(成分c)の例としては、微粉砕された珪酸アルミニウ
ム,キーゼルグール,焼成して製造される二酸化珪素,沈殿珪酸,コロイド珪酸
,マイクロシリカ,カオリン,タルク,珪藻土,炭酸カルシウム,マグネシウム
ハイドロシリケート等がある。アンチブロッキング剤の含有量は、高分子成分の
全重量に対して4〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
また、分散粉末組成物には、目的とする使用分野に依存して更に添加剤を適宜
含有させることができる。
接着剤としての使用には、分散粉末組成物はまた、ベースポリマーに対してい
ずれの場合も100重量%までの粘着付与物質(粘着付与剤)を含有することが
できる。粘着付与物質としては、ロジン,二量化ロジン,水素化ロジンおよび/
または上記ロジンタイプのエステル類;例えば酢酸ブチルジグリコール,ブチル
ジグリコール,プロピレンジグリコールのエーテル類またはそれらのエステル類
等の高沸点物質を適宜組み合わせたポリテルペン樹脂,クマロン−インデン樹脂
,テルペン−フェノール樹脂,炭化水素樹脂;フタル酸エステル類,セバシン酸
エステル類,アジピン酸エステル類等の可塑剤が挙げられる。中でも、上記ロジ
ンタイプとそれらのエステル類,酢酸ブチルジグリコールおよび(2−ヒドロキ
シエチル)フェニルエーテルが好ましい。
また、組成物には、更に例えばポリシロキサン類または金属石鹸をベースとす
る疎水化剤をベースポリマーに対して0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜
10重量%の範囲で適宜含有させることができる。
さらに、乳化剤,湿潤剤等の界面活性物質をベースポリマーに対して0.1〜
2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲で含有させることもできる
。その例としてはアニオンやノニオン界面活性剤がある。
また、組成物には、更に例えば高分子量のポリアクリル酸類をベースとする濃
化剤をベースポリマーに対して0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜10重
量%の範囲で適宜含有させることができる。
使用可能な別の添加剤の例は消泡剤であり、これをベースポリマーに対して0
.05〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%までの量で適宜使用する
ことができる。
好ましい態様においては、本発明にかかる分散粉末組成物にはまた中和剤を含
有させることができる。これらの中和剤は、好ましくは粉末状の他の添加剤と適
宜併用して乾燥後の粉末に混合される。用いる中和剤の量は個々の分散粉末組成
物に依存する。慣用の無機塩基が好適であり、その例としては水酸化ナトリウム
,水酸化カリウム,水酸化カルシウム等がある。
建造物用材料に使用する場合、組成物にはまた、更にセメント液化剤をベース
ポリマーに対して1.0〜30重量%、好ましくは1.0〜15重量%の範囲で
含有させることができる。セメント液化剤としては、例えばスチレン−無水マレ
イン酸コポリマーや、メラミンまたはケトンとホルムアルデヒドおよび/または
ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒドおよび/またはフェノールスルホン酸
−ホルムアルデヒド縮合生成物のスルホネート基含有縮合生成物がある。
分散粉末組成物を調製するには、ベースポリマーa)が水分散液として用いら
れる。この分散液に噴霧保護コロイドb)が好ましくは水溶液の状態で添加され
、混合される。この混合操作は望ましい順序であればいかなる順序で実施しても
よく、ただ均一な分散混合物が存在することが重要である。適宜用いられる濃化
剤,界面活性物質,疎水化剤,消泡剤および更に適宜の添加剤は、乾燥前の水性
混合物に添加することが好ましい。粘着付与添加剤(粘着付与剤)の使用が望ま
しい場合は、該添加剤を最初の成分としてベースポリマーの分散液に添加するこ
とが好ましい。粘着付与剤は、溶解物または水乳化液もしくは水分散液として溶
液またはバルク(固体または液体)の状態でこれに添加することができる。粘着
付与剤をバルクの状態で用いる場合は、ベースポリマーの分散液に導入する際、
十分かつ完全な混合が保証されるべきである。
酸含有量が80モル%より多い噴霧保護コロイドb)を添加する場合、噴霧す
べき混合物のpHは一般に4.5以下であり、そのため噴霧保護コロイドを中和
されてないかまたは部分的に中和された状態で存在させて、再分散性の系を確実
に得ることができる。もし好適であれば、噴霧前に混合物のpHを調節しなけれ
ばならない。例えば、pHを変化させながらベースポリマーと噴霧保護コロイド
との水性混合物を乾燥させたフィルムについて再分散性を調査することによって
、好適なpHを容易に確立することができる。
上記成分を混合した後分散液は乾燥される。この乾燥は、噴霧乾燥または凍結
乾燥が好ましく、中でも噴霧乾燥が好ましい。この乾燥には、例えば加熱しても
よい乾燥ガス気流中で多重成分ノズルを通してまたはディスクを用いて噴霧する
公知の装置を利用することができる。乾燥ガスとしては一般に空気,窒素または
窒素に富んだ空気が用いられ、その温度は一般に250℃を超えてはならない。
乾燥ガスの最適な温度は幾つかの実験により求めることができ、しばしば60℃
より高い温度が特に適当であることが判明した。
例えばケーキングおよびブロッキングの防止のためおよび/または粉末の流動
性の向上の目的として保管温度を高めために、アンチブロッキング剤c)を粉末
に添加できる。この添加は、粉末がまだ微粉状に分散している間、例えば乾燥ガ
ス中にまだ懸濁している間に行うことが好ましい。特に、アンチブロッキング剤
は、計量して他の成分と別々ではあるが、分散液とは同時に乾燥装置に供給され
る。
分散粉末組成物が1種またはそれ以上の中和剤を含有する場合は、固形物の状
態で中和剤を分散粉末に添加することが好ましい。しかし、中和剤を計量して別
々ではあるが分散液とは同時に乾燥装置に供給することもできる。このような別
々の処理のためには、噴霧乾燥が特に適当であることが判明した。
分散粉末組成物は次に記載のような使用法で用いることができる。すなわち、
分散粉末組成物は、使用前に水と共に攪拌される乾燥製剤で通常用いられる。さ
らに、分散粉末組成物をまず水に再分散し、次いで更に再分散液の状態で添加剤
により変性することができる。
請求の範囲に記載の噴霧保護コロイド成分b)に基づいて、成分b)の中和に
より保護コロイドが失活した分散液を得ることができる。ここで、対応する量の
中和剤を予め含有し、好ましくは即使用可能な乾燥製剤の状態である分散粉末組
成物を水中に再分散液させることにより中和を行うことができる。粉末中の中和
剤の量は、所望のpH範囲が再分散液にもたらされるように選択される。別の可
能性は、分散粉末組成物を、あるいは中和剤で変性されてない乾燥製剤を水に再
分散または分散させ、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム等
の中和剤を引き続き添加して、所望のpH範囲が得る方法がある。例えばフロー
リング接着剤等のある塗布においては、妥当であるならば中和による保護コロイ
ドの失活を省略してもよい。
そのため、本発明は更に、前記分散粉末組成物をまたは水に存在させてpHを
適宜調節した前記分散粉末組成物からの乾燥製剤を再分散させることにより得ら
れる、好ましくはpHが5〜10の水性ポリマー分散液に関する。分散液の固形
物含量は、目的とする使用法に依存するが、一般に10〜80%の範囲にある。
本発明にかかる分散粉末組成物およびこれから得られる水性分散液は、接着剤
組成物の使用に特に好適であり、中でも感圧接着剤組成物およびフローリング接
着剤の使用に好適である。さらに、粉末および分散液は、プラスター,ペイント
および被覆物(例えば密封用スラリー)のバインダーとして、セメント非含有お
よびセメント含有充填組成物用バインダーとして、建造物用接着剤として、なら
びに繊維に使用される接着剤または被覆物用バインダーとして好適である。
失活されていない保護コロイドを含有する分散粉末またはこれから得られる水
性分散液とは対照的に、製剤ついては、例えば粘着性(タック),耐水性および
機械的強度に関して、噴霧保護コロイドの望ましくない影響によりベースポリマ
ーの好都合な特性が完全確保されず、すなわち一部確保されるが、該特性はなお
充分に効果があり、上記製剤は本発明にかかるシステムを利用することが可能で
ある。また、粘着付与剤を添加しなくても感圧接着剤に必要とされる粘着性をも
有する粉末状接着剤または接着性分散液が、これらの製剤とすることで得られ非
常に有用である。
以下の実施例は本発明を更に説明するのに役立つものである。
実施例
使用する物質
・分散液DI−1
ワッカー・ケミー社製のアクリル酸2−エチルヘキシル含量48重量%,酢酸
ビニル含量36重量%およびエチレン含量16重量%の酢酸ビニル−エチレン−
アクリル酸エチルヘキシルコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固形
分含量60%の水分散液。
・分散液DI−2
ワッカー・ケミー社製のエチレン含量45重量%および酢酸ビニル含量55重
量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固
形分含量61%の水分散液。
・分散液DI−3
ワッカー・ケミー社製のエチレン含量12重量%および酢酸ビニル含量88重
量%の酢酸ビニル−エチレンコポリマーをベースとする乳化剤で安定化された固
形分含量51%の水分散液。
・分散液DI−4
ワッカー・ケミー社製のアクリル酸2−エチルヘキシル含量90重量%および
酢酸ビニル含量10重量%のアクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニルコポリ
マーをベースとする乳化剤で安定化された固形分含量60%の水分散液。
・噴霧保護コロイド ソカラン(Sokalan)−CP13
ソカランCP13はBASF社製の分子量約20,000のポリアクリル酸である。
・噴霧保護コロイド ベルシコール(Versicol)−K11
ベルシコール−K11はアライドコロイド社製の分子量約10,000のポリメタク
リル酸である。
・粘着付与剤T−1
粘着付与剤T−1は、BASF社製の(2−ヒドロキシエチル)フェニルエー
テル(Plastilit-DS3431)20重量%と、Willers,Engel & Co.製のマヤ(
Maya)種中米産バルサム樹脂80重量%との混合物である。
実施例1
4000重量部の分散液DI−1,濃度25%のベルシコール−K11水溶液
1920重量部(DI−1樹脂に対して20%)および水1050重量部を完全
に混合した。分散液のpHは3.4であった。この混合物を二成分ノズルにより
噴霧乾燥した。噴霧成分として3バールに予め加圧した空気を用い、形成された
液滴を120℃に加熱した乾燥空気との対向流で乾燥した。得られた乾燥粉末を
カオリンをベースとする市販のアンチブロッキング剤10重量%と混合した。
比較例1
水酸化ナトリウムを添加して噴霧するバッチのpHを5.2と高くした以外は
、実施例1と同様にして分散粉末を調製した。
実施例2
2000重量部の分散液DI−1および1200重量部の粘着付与剤T−1(
DI−1樹脂に対して100%)を均一に混合した。次いで、濃度25%のベル
シコール−K11水溶液1907重量部(DI−1樹脂および粘着付与剤T−1
に対して20%)および水1000重量部を添加し、完全に混合した。混合物の
pHは2.8であった。この混合物を二成分ノズルにより噴霧乾燥した。噴霧成
分として3バールに予め加圧した空気を用い、形成された液滴を120℃に加熱
した乾燥空気との対向流で乾燥した。得られた粉末をカオリンをベースとする市
販のアンチブロッキング剤10重量%と混合した。
比較例2
水酸化ナトリウムを添加して噴霧バツチのpHを5.6と高くした以外は、実
施例2と同様にして分散粉末を調製した。
比較例3
濃度25%のベルシコール−K11水溶液を1920重量部に代えて1440
重量部(DI−1樹脂に対して15%)用いた以外、手順は実施例1と同じであ
った。混合物のpHは3.6であった。
実施例3
4000重量部の分散液DI−4,濃度25%のベルシコール−K11水溶液
1920重量部(DI−4樹脂に対して20%)および水950重量部を完全に
混合した。混合物のpHは3.4であった。実施例1と類似の方法により噴霧乾
燥を行った。得られた乾燥粉末をカオリンをベースとする市販のアンチブロッキ
ング剤10重量%と混合した。
実施例4
4000重量部の分散液DI−2,濃度28%のソカラン−CP13水溶液1
743重量部(DI−2樹脂に対して20%)および水1500重量部を完全に
混合した。混合物のpHは2.6であった。この混合物を二成分ノズルにより噴
霧乾燥した。実施例1と同様にして分散粉末を調製した。ただし、アンチブロッ
キング剤は使用しなかった。
実施例5
4000重量部の分散液DI−3および濃度28%のソカラン−CP13水溶
液729重量部(DI−3樹脂に対して10%)を完全に混合した。混合物のp
Hは2.2であった。実施例1と同様にして分散粉末を調製した。ただし、アン
チブロッキング剤は使用しなかった。
実施例6
濃度28%のソカラン−CP13水溶液729重量部に代えて、濃度25%の
ベルシコール−K11溶液816重量部(DI−3樹脂に対して10%)を用い
た以外、手順は実施例5と同じであった。混合物のpHは2.4であった。
使用法の検討
・噴霧保護コロイドの失活
噴霧保護コロイドの失活を調査するために、噴霧される分散液のpHがそこか
ら得られる分散粉末の再分散性に及ぼす影響について調査した。このために、各
分散粉末50gをそれぞれ水50gに加えて攪拌し、目盛付きのガラス管を用い
てチューブ沈降試験により再分散性を定性的に評価した。保護コロイドの中和に
よりコロイドが失活して、再分散性の系が単なるpH変化によりどのように非分
散性の系になるかを表1に示す。
・噴霧保護コロイドの失活に対する使用特性の向上
使用特性に対する噴霧保護コロイドの失活の影響を調査するために、再分散液
から製造される感圧接着フィルムの粘着性に及ぼす、再分散液のpHの影響につ
いて調査した。このために、各分散粉末50gをそれぞれ水50gに加えて攪拌
し、水酸化ナトリウムを添加して表2に示すpHを得た。また一方、それぞれの
再分散液は比較のために中和しなかった。再分散液を担体フィルム上にナイフコ
ートして、60℃で乾燥した。フィルムの粘着性(タック)を定性的に評価した
。保護コロイドの中和によりコロイドが失活して、他の点では同一の分散液から
フィルムの粘着性がどのように劇的に向上するかを表2に示す。
・粉末ペイントの処方試験
表3に示す処方に従って粉末ペイントを調製した。
表4に示す粉末および表3に示す処方から表4に示すPVC含有の粉末ペイン
トを調製した。溶解剤を用いて上記乾燥混合物を水に加えて混合した。このよう
にして得られた液状ペイントを乾燥した時の被膜の厚さが100μmとなるよう
に塗布した。標準的な気候条件で28日間保管した後、耐湿潤磨耗性をDIN5
3778に従って測定した。
他の点では同一の再分散液を用いているにもかかわらず、保護コロイドの中和
によりどれくらいこのコロイドが失活し、ペイントの処方における顔料結合能が
どれくらい劇的に向上するかを表4に示す。
以下、本発明の好適な実施態様を例示する。
1. a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類
,スチレンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群か
ら選ばれるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性ベースポリマー、ま
たは該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤からな
る再分散性の分散粉末組成物において、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モ
ノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の中和されてないホモ−
またはコポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類
またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたホモポリマー、あるいはオレフ
ィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的
に中和されたコポリマーから構成され、C3〜C12−アルケン類またはスチレ
ンとのコポリマーの場合は酸含有量が80モル%より多く、他のコポリマーの場
合は酸含有量が50〜99モル%であり、上記ポリマーの重量平均分子量は250,
000g/mol以下であり、そして分散粉末組成物のpHが4.5以下であることを
特徴とする、再分散性の分散粉末組成物。
2. 成分b)が、アクリル酸,メタクリル酸もしくはマレイン酸(無水物)の
ホモ−またはコポリマー、特にポリアクリル酸,ポリメタクリル酸、あるいはア
クリル酸,メタクリル酸またはマレイン酸(無水物)単位とこれらと共重合する
ことができるモノマー単位との酸含有量が80モル%以上のコポリマーからなる
ことを特徴とする上記1に記載の再分散性の分散粉末組成物。
3. 分散粉末組成物中の成分b)の含有量が、ベースポリマーに対して2〜4
0重量%であることを特徴とする上記1または2に記載の再分散性の分散粉末組
成物。
4. 分散粉末組成物はまた、ベースポリマーに対して100重量%までの粘着
付与物質(粘着付与剤)を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記
載の再分散性の分散粉末組成物。
5. 分散粉末組成物はまた、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムまたは水酸化
カルシウム等の中和剤を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載
の再分散性の分散粉末組成物。
6. 上記1〜5のいずれかに記載の分散粉末組成物またはその乾燥製剤を水に
再分散させることにより得られる、pHが適宜5〜10の範囲である水性ポリマ
ー分散液。
7. プラスター,ペイントもしくは被覆物のバインダー、セメント非含有もし
くはセメント含有充填組成物用バインダー、建造物用接着剤、または繊維の接着
剤もしくは被覆物用バインダーとして、接着剤組成物に特に感圧接着剤組成物ま
たはフローリング接着剤に使用される上記1〜5のいずれかに記載の分散粉末組
成物の使用法。
8. プラスター,ペイントもしくは被覆物のバインダー、セメントを含まない
かもしくはセメントを含有する詰め物組成物のバインダー、建造物用接着剤、ま
たは繊維の接着剤もしくは被覆物用バインダーとして、接着剤組成物に特に感圧
接着剤またはフローリング接着剤に使用される上記6記載の水性ポリマー分散液
の使用法。
請求の範囲
1. a)ビニルエステル類,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類
,スチレンおよび塩化ビニルのホモ−ならびにコポリマーにより構成される群か
ら選ばれるガラス転移温度が−60℃〜+80℃の水不溶性ベースポリマー、ま
たは該ベースポリマーの混合物、
b)ベースポリマーに対して2〜40重量%の水溶性噴霧保護コロイド、ならび
に
c)高分子成分の全重量に対して0〜30重量%のアンチブロッキング剤からな
る再分散性の分散粉末組成物において、上記成分b)が、オレフィン性不飽和モ
ノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の中和されてないホモ−
またはコポリマー、あるいはオレフィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類
またはこれらの酸無水物類の部分的に中和されたホモポリマー、あるいはオレフ
ィン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸類またはこれらの酸無水物類の部分的
に中和されたコポリマーから構成され、C3〜C12−アルケン類またはスチレ
ンとのコポリマーの場合は酸含有量が80モル%より多く、他のコポリマーの場
合は酸含有量が50〜99モル%であり、上記ポリマーの重量平均分子量は250,
000g/mol以下であり、そして分散粉末組成物のpHが4.5以下であることを
特徴とする、再分散性の分散粉末組成物。
2. 請求項1に記載の分散粉末組成物またはその乾燥製剤を水に再分散させる
ことにより得られる、pHが適宜5〜10の範囲である水性ポリマー分散液。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C08L 27/06 C08L 33/06
31/02 C09D 125/00
33/06 127/06
C09D 125/00 131/02
127/06 133/06
131/02 C09J 131/02
133/06 133/06
C09J 131/02 C08J 3/03 CEV
133/06
(72)発明者 ヴァイスゲルベル,ルドルフ
ドイツ連邦共和国 デー―84489 ブルク
ハウゼン,カール―グロス―シュトラーセ
9