JPH11241230A - 炭素繊維、炭素繊維用前駆体繊維、複合材料および炭素繊 維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維、炭素繊維用前駆体繊維、複合材料および炭素繊 維の製造方法

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JPH11241230A
JPH11241230A JP10351255A JP35125598A JPH11241230A JP H11241230 A JPH11241230 A JP H11241230A JP 10351255 A JP10351255 A JP 10351255A JP 35125598 A JP35125598 A JP 35125598A JP H11241230 A JPH11241230 A JP H11241230A
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carbon fiber
yarn
single yarn
precursor
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Katsumi Yamazaki
勝巳 山▲ざき▼
Masaru Tanaka
勝 田中
Yoji Matsuhisa
要治 松久
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来になく高い強度特性を有する炭素繊維を提
供すること、および優れた炭素繊維を製造するための炭
素繊維用前駆体繊維を提供すること、さらにこれら本発
明の炭素繊維を用いて強度特性に優れる複合材料を提供
すること。 【解決手段】平均単糸径が5μm未満であり、かつ樹脂
含浸ストランド引張強度が8GPa以上であることを特
徴とする炭素繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維、炭素繊
維用前駆体繊維、複合材料、特に引張強度に優れた炭素
繊維、それを製造するための炭素繊維用前駆体繊維、複
合材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は比強度、比弾性率に優れてい
るため、その特長を生かしてスポーツ用品および航空・
宇宙用途に広く使われている。
【0003】従来、炭素繊維の引張強度の向上、および
炭素繊維用前駆体繊維の高性能化については多くの技術
が提案されているが、引張強度が8GPaを超える炭素
繊維を生産性良く製造することは極めて困難であった。
【0004】かかる従来の技術では、繊維の内部に存在
する異物・マクロボイド、または表面欠陥といったマク
ロ欠陥の生成抑制や除去が中心であった。具体的には、
異物・マクロボイドを減少させるために、モノマーまた
はポリマー原液のろ過を強化する技術(特開昭59−8
8924号公報、特公平4−12882号公報)が提案
されている。また表面欠陥の生成抑制については、製糸
工程でのガイドの形状およびガイドに接する糸条の張力
を規制することにより、表面欠陥生成を抑制する技術
(特公平3−41561号公報)などが提案されてい
る。
【0005】しかし、かかる表面欠陥の生成抑制技術
は、望まれる強度特性の水準が低い段階では効果があっ
たが、工程管理が充分進み、異物またはそれに伴うマク
ロボイドが有効に除去されるようになった現時点におい
ては、これらの工程管理による強度特性の向上は期待し
難くなっている。
【0006】炭素繊維の製造工程においては、前駆体繊
維を高温下で耐炎化、炭化するため、単糸間接着が発生
し易く、単糸間接着そのものや、接着の剥離痕が表面欠
陥の原因となり、これにより炭素繊維の強度特性が低下
している。
【0007】かかる単糸間接着を抑制する技術として、
製糸工程で繊維に付与する油剤を改良する技術が種々提
案されている。具体的には、従来の高級アルコールなど
を中心とした非シリコーン系化合物からなる油剤に対し
て、離型性、平滑性に優れたシリコーン系化合物からな
る油剤を適用する技術(特公昭60−18334号、特
公昭53−10175号、特開昭60−99011号、
特開昭58−214517号公報)が提案されている。
また、シリコーン系化合物からなる油剤の耐熱性を改善
する技術(特公平4−33862号公報、特公昭58−
5287号公報、特開昭60−146076号公報)、
エポキシ変性シリコーンを油剤に適用する技術(特公平
4−29766号公報、特公昭60−18334号公
報)、アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリコーン
との組み合わせを油剤に適用する技術(特公平4−33
892号公報、特公平5−83642号公報)、および
アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンおよび
アルキレンオキサイド変性シリコーンとの組み合わせを
油剤に適用する技術(特公平3−40152号公報)な
どが提案されている。
【0008】しかし、これらの油剤を用いても、単糸間
接着を有効に抑制することはできず、また、油剤が単糸
の内部に侵入し、ミクロボイドという形で欠陥となり、
得られる炭素繊維の強度特性を充分向上できないという
問題があった。
【0009】そこで、製糸工程または焼成工程で生成し
た表面欠陥を後処理工程で除去する技術が考えられ、濃
厚無機酸中で加熱する(特開昭54−59497号公
報、特公昭52−35796号公報)または熱無機酸中
で電解処理する(特公平5−4463号公報)ことによ
り、表面欠陥をエッチング除去する技術が提案されてい
る。しかし、これらの技術では、エッチング処理後に過
度に生成した表面官能基を不活性化処理することが、得
られる複合材料の性能を高めるために必要であるため、
設備が煩雑となり、製造コスト上昇の原因となってい
た。
【0010】また、マクロ欠陥以外に、炭素繊維の強度
特性を支配する因子としてミクロボイドやミクロ欠陥の
存在があり、それらの生成抑制技術についても種々の提
案がある。
【0011】製糸技術の改良により、炭素繊維用前駆体
繊維の性能を高める技術として、前駆体繊維を緻密化す
る技術、凝固浴条件を最適化することにより未延伸糸を
緻密化する技術(特開昭59−82420号公報)、浴
延伸温度をできるだけ高くして延伸糸を緻密化する技術
(特公平6−15722号公報)などが提案されてい
る。
【0012】またアクリロニトリルに、アクリル酸また
はメタクリル酸のエステルを共重合し、耐炎化糸におけ
る酸素濃度の内外層差を小さくする技術(特開平2−8
4505号公報)が提案されているが、この技術では、
得られる繊維の緻密性が低く、また単糸間接着を防止す
る効果も不充分なため、炭素繊維の引張強度は5.1G
Pa以下と低いレベルのものしか得られなかった。
【0013】さらに、焼成工程における昇温速度を低く
する、または張力を上げるなどにより構造を緻密化する
技術(特開昭2−110924号公報)などが提案され
ている。しかし昇温速度の低下は、焼成速度の低下また
は装置の大型化につながり、張力の上昇は毛羽の発生頻
度を増やし、品位を低下させるため、焼成速度の低下な
どの製造コスト上昇の原因となるとともに、これらの条
件の適正化によっては炭素繊維の強度特性の向上には限
界があった。
【0014】また、炭素繊維の高性能化を目的として、
炭素繊維に内部に微粒子などの形態で異種化合物を添加
する技術(特公昭61−58404号公報、特開平2−
251615号公報、特開平4−272236号公報)
や各種の樹脂をポリアクリロニトリル系ポリマーと混合
する技術(特開平5−195324号公報)、さらには
常温で固体または気体である原子または分子を真空下で
イオン化して電場により加速し、単糸表層部に注入して
炭素繊維の表層構造を改良する技術(特開平3−180
514号公報)などが提案されている。
【0015】しかし、微粒子を添加する技術において
は、微粒子が単糸表層部に存在して異物として作用し、
製糸工程や焼成工程で、単糸切れなどによる毛羽が発生
するなどプロセス性が低下するとともに、樹脂含浸スト
ランド引張強度などの機械的特性を低下させる原因とも
なっていた。またこの際、微粒子に金属元素を含ませる
と、黒鉛化促進作用により結晶の成長が過度となり圧縮
強度に不利となる問題があった。微粒子の代わりに各種
の樹脂をポリマーに混合しても、均質な構造の炭素繊維
を得ることが困難で、却って炭素繊維の強度特性が低下
した。また、炭素繊維に異種元素をイオン注入し、単糸
表層部の構造を改良する技術では、炭素繊維の機械的特
性を向上する効果は認められるものの、真空下での処理
が必要となり、工業的に製造することが困難であった。
【0016】特公平7−37685号公報には、樹脂含
浸ストランド引張強度が6.5GPa以上の炭素繊維が
提案されているが、硝酸イオンを必須とする高温の電解
質中で電解処理した後、不活性雰囲気中で加熱すること
により表面官能基を適正化するという煩雑なプロセスを
経たことによって達成したものであり、製造コストの上
昇が避けられなかった。
【0017】また、単糸繊度の細繊度化による強度特性
の向上についても、従来は0.5デニール未満のような
細繊度としても、製糸工程における表面損傷、製糸工程
や焼成工程での単糸間接着などの外乱の影響が大きくな
り、得られる強度特性の向上は僅かなものであった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
問題点を解決すること、すなわち、引張強度が8GPa
以上と従来になく高い強度特性を有する炭素繊維を提供
すること、および強度特性に優れる炭素繊維を製造する
ための炭素繊維用前駆体繊維を提供すること、さらに本
発明の炭素繊維を用いることにより、高い性能を有する
複合材料を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、本発明の炭素繊維、炭素繊維用前駆体繊維、複
合材料および炭素繊維の製造方法は以下の構成を有す
る。
【0020】すなわち、平均単糸径が5μm未満であ
り、かつ樹脂含浸ストランド引張強度が8GPa以上で
あることを特徴とする炭素繊維である。
【0021】また、95モル%以上のアクリロニトリル
からなるアクリル系共重合体で構成される炭素繊維前駆
体繊維であって、極限粘度が2.5〜4.0であり、ヨ
ウ素吸着による明度差ΔLが5〜35であり、単糸繊度
が0.25〜0.45デニールであることを特徴とする
炭素繊維用前駆体繊維、または95モル%以上のアクリ
ロニトリルからなるアクリル系共重合体で構成される炭
素繊維前駆体繊維であって、極限粘度が2.5〜4.0
であり、ヨウ素吸着による明度差ΔLが5〜35であ
り、単糸繊度が0.6デニール以下であり、かつ単糸表
層部に耐炎化遅延元素の最大濃度部を有することを特徴
とする炭素繊維前駆体繊維である。
【0022】さらに、95モル%以上のアクリロニトリ
ルからなる極限粘度が2.5〜4.0の共重合体を、湿
式紡糸法または乾湿式紡糸法で紡糸した後、70℃以上
の温水中で延伸して膨潤度100%以下の糸条を得、そ
の後、該糸条にシリコーン系化合物からなる油剤を付与
して得られる単糸繊度が0.6デニール以下の炭素繊維
用前駆体繊維を耐炎化した後、炭化することを特徴とす
る炭素繊維の製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の炭素繊維、炭素繊
維用前駆体繊維、および複合材料について詳細に説明す
る。
【0024】本発明の炭素繊維は、平均単糸径が5μm
未満、かつ樹脂含浸ストランド引張強度(以下、単に引
張強度と略記)が8GPa以上のものである。平均単糸
径が5μm以上の炭素繊維に、8GPa以上という高い
引張強度を発現させるためには、製糸工程や焼成工程で
の生産性を極端に低下させる必要があり、実用的でな
い。平均単糸径は、高い引張強度の発現のために5μm
未満であることが必要であり、4.5μm以下が好まし
く、4μm以下がより好ましい。なお、平均単糸径は、
前駆体繊維の生産性や、製糸工程での延伸性(以下、製
糸延伸性と略記)など、製糸工程でのプロセス性(以
下、製糸プロセス性と略記)を考慮すると、低くとも2
μm以上であることが好ましく、2.5μm以上がより
好ましい。
【0025】炭素繊維の引張強度は、8GPa未満では
従来と同等の性能であり、適用する複合材料の軽量化な
どに大きく貢献できない。かかる理由より、引張強度は
8.5GPa以上が好ましく、9GPa以上がより好ま
しく、9.5GPa以上がさらに好ましく、10GPa
以上が特に好ましい。引張強度の上限については高いほ
ど好ましいが、伸度に上限があることから、20GPa
以下が好ましい。
【0026】本発明における炭素繊維は、その樹脂含浸
ストランド引張弾性率(以下、単に引張弾性率と略記)
が、290GPa以上が好ましく、330GPa以上が
より好ましく、360GPa以上がさらに好ましい。剛
性を維持しながら強度特性を高めることにより部材を薄
肉化することが可能になる。引張弾性率は、高弾性率を
発現させるためには高温で焼成する必要が生じ、これに
より引張強度が低下する傾向があるので実用上、650
GPa以下が好ましく、550GPa以下がより好まし
く、450GPaが以下がさらに好ましい。
【0027】本発明における炭素繊維は、単糸の試長が
5mmにおける引張強度の分布において、引張強度が1
0GPaを超える単糸を、単糸全体に対して5%以上含
むのが好ましく、10%以上含むことがより好ましい。
なお、かかる単糸の含有率は、15%程度あれば、本発
明の効果を奏するに当たって充分であることが多い。単
糸は、その試長が短くなる程、大きな欠陥の存在確率が
低くなるため、強度特性が向上する。前記引張強度の分
布において、試長5mmの単糸の引張強度が10GPa
を超える割合が5%未満である炭素繊維では、その引張
強度を8GPa以上とすることが困難となる。
【0028】さらに本発明における炭素繊維は、単糸の
破断面観察によるマクロ欠陥の割合が50%以下である
ことが好ましい。破断面を観察すると、破断の開始点か
ら断面上を放射状に破断が伝播した条痕が認められるこ
とがあるため、破断開始点を確定することができる。破
断開始点には、傷、付着物、凹み、縦筋または内部ボイ
ドといったマクロ欠陥が認められる場合と、走査電子顕
微鏡(以下、SEMと略記)によっては、欠陥らしきも
のが観察されない場合がある。本発明においてマクロ欠
陥とは、破断要因が特定できたもののうち、欠陥のサイ
ズが0.1μm以上のものをいう。汚れなどによって破
断面が観察できなかったものを除いて50本以上の単糸
について観察し、破断面が観察できた単糸の総数に対し
て、マクロ欠陥が原因で破断した単糸の数の占める割合
をマクロ欠陥率とする。
【0029】マクロ欠陥があると、炭素繊維の基質、す
なわちミクロ構造を改良しても、マクロ欠陥により、低
い引張応力で破断開始してしまうために高い強度特性を
発現できない。従ってマクロ欠陥は少ないほど良く、マ
クロ欠陥率は、50%以下であることがより好ましく、
30%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好まし
い。下限については0%が好ましいが、実際的には5%
以上であることが好ましい。
【0030】本発明において、炭素繊維の破断面は次に
示す方法を一例として観察できる。すなわち、先ず後述
する単糸強度の測定法で試長を50mmとして、引張試
験を行う。
【0031】単糸が破断した後、水中から慎重に純粋に
引張により破断した1次破断面をサンプリングし、SE
M用の試料台に設置する。ここで、2次破断面は曲げモ
ードまたは圧縮モードで破壊しているため、破断面の片
側半分の破壊の様子が異なることを参考にして見分けて
排除しておく。2次破断面が多すぎてサンプリングでき
ないときには、浸漬する液体を水より高粘度のものにか
えるか、試長を長くすることによって適宜修正する。
【0032】次に示す条件で破断面を斜め方向から観察
し、SEMによって欠陥の同定を行う。 ・試料マウント:カーボン粘着テープ ・試料コーティング:白金−パラジウム ・加速電圧:20kV ・エミッション電流:10μA ・ワーキングディスタンス:15mm ・倍率:10000倍以上
【0033】また、本発明における炭素繊維は、その平
均単糸径が4〜5μmの場合は、後述する耐炎化遅延元
素を50〜1000ppm含むことが好ましい。耐炎化
遅延元素の含有量が50ppm未満では、炭素繊維の強
度特性を向上する効果が不足し、1000ppmを超え
ると耐炎化反応の遅延化され過ぎ、焼成工程での製造コ
スト上昇につながることがある。耐炎化遅延元素は、耐
炎化時に単糸表層部における耐炎化反応を遅延させるこ
とによって、単糸表層部と単糸中心部での耐炎化反応を
均一とする効果を有するものである。従って、最終的に
得られる炭素繊維は、耐炎化遅延元素を含むものとな
る。
【0034】しかし、かかる均一化効果は、前駆体繊維
の平均単糸径が比較的大きい場合に効果を発揮するもの
であり、得られる炭素繊維の平均単糸径が4μm未満と
なるような前駆体繊維では、耐炎化遅延元素を含まなく
とも、単糸表層部と単糸中心部で、ほぼ均一に耐炎化さ
れるため、実質的にかかる均一化効果が発揮されないこ
とから、必ずしも耐炎化遅延元素を含有させる必要はな
い。ここで、耐炎化遅延元素としては、後述するように
ホウ素が最も好ましい。本発明において、単糸表層部と
は、繊維の表面から半径方向に、単糸半径の1/6まで
の深さの領域のことをいう。また、単糸中心部とは、単
糸半径の1/6の深さから半径方向に、中心までの領域
のことをいう。
【0035】本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、それを
構成する共重合体が、アクリロニトリルを95モル%以
上含有するものである。95モル%未満では炭素繊維用
前駆体繊維として耐熱性が不足したり、得られる炭素繊
維の構造形成が不完全なものとなり、高い強度特性を発
現することが難しくなる。共重合体に含まれる他の成分
としては、後述するような、共重合体の親水性を向上さ
せる成分(以下、親水性向上成分と略記)、製糸延伸性
を向上させる成分(以下、製糸延伸性向上成分と略
記)、耐炎化反応を促進する成分(以下、耐炎化反応促
進成分と略記)、耐炎化時の酸素透過性を促進する成分
(以下、酸素透過性促進成分と略記)などがある。
【0036】また、共重合体は、その極限粘度が2.5
〜4.0のものである必要がある。極限粘度が2.5未
満では、前駆体繊維の分子配列が低くなり、得られる炭
素繊維の強度特性が低下することがあり、4.0を超え
ると製糸延伸性の低下により、分子の配列状態が悪くな
り、前駆体繊維の構造上の欠陥が増加して、得られる炭
素繊維の強度特性が低下することがある。
【0037】さらに本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、
単糸表層部における緻密性の指標となるヨウ素吸着によ
る明度差ΔLが5〜35のものである。また、明度差Δ
Lは5〜25であるのが好ましい。ヨウ素は単糸表層部
におけるボイド構造に多く吸着されるため、明度差ΔL
が35を超える程、繊維が多くのボイドを含んでいる
と、炭素繊維に満足のいく強度特性が得られないことが
多い。また、明度差ΔLは、繊維表面の微細な凹凸に保
持されたヨウ素が残る場合を考慮して、実質的に5を下
限値とするのが良い。
【0038】また、本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、
単糸表層部に耐炎化遅延元素の最大濃度部を有している
ものでも良い。この場合は、単糸繊度が0.45〜0.
6デニールであるのが好ましい。耐炎化遅延元素は、前
述のとおり、単糸表層部に多く存在して、単糸表層部で
の耐炎化反応を抑制することによって、単糸表層部と単
糸中心部との構造差を僅少とし、炭素繊維の強度特性を
向上させるものである。なお、本発明の炭素繊維用前駆
体繊維の単糸繊度が0.45デニール未満の場合は、耐
炎化反応が繊維断面半径方向でほぼ均一に進行するた
め、耐炎化遅延元素を含有させる必要はない。
【0039】さらにまた、本発明における炭素繊維用前
駆体繊維は、その繊維軸方向の結晶配向度π400(以
下、単に結晶配向度と略記)が、90%以上であるのが
好ましい。90%未満では得られる炭素繊維の構造形成
が不完全となり、高い強度特性を得難くなる。だだし、
結晶配向度を高くするために延伸倍率を上げ過ぎると、
クラックなどの発生により炭素繊維の強度特性が大幅に
低下する傾向が見られることから、結晶配向度の実質的
な上限値は、95%程度である。
【0040】本発明において、炭素繊維用前駆体繊維に
含有される耐炎化遅延元素は、ホウ素(B)、Ca、Z
r、Mg、Ti、Y、Cr、Fe、Al、Sr、および
ランタノイド元素から選ばれた一種以上の元素、もしく
はそれを含む水溶性の化合物であることが好ましい。前
述したように、単糸繊度が高い場合は、これらの耐炎化
遅延元素を、前駆体繊維の単糸表層部に多く存在させる
ことによって、単糸表層部における耐炎化反応を遅延さ
せ、実質的に単糸中心部における耐炎化反応の程度に近
づけることが可能となる。これらの元素の中で、取り扱
い易さや炭素との共存のし易さの面で、ホウ素が好まし
く使用され、具体的には水溶性のホウ酸が好ましい。
【0041】耐炎化遅延元素を含む場合、前駆体繊維に
おける耐炎化遅延元素の含有率は、0.01〜0.5重
量%であることが好ましい。単糸繊度が高い場合は、耐
炎化遅延元素の含有率が0.01重量%未満では耐炎化
遅延効果が不足するし、0.5重量%を超えて含有する
と全体の耐炎化反応が遅くなり過ぎて生産性が悪化する
ことがある。
【0042】また、シリコーン系化合物からなる油剤に
起因するケイ素の、前駆体繊維における含有率は、0.
01〜5.0重量%であることが好ましい。かかる油剤
に起因するケイ素は少ないほど好ましいが、含有率が
0.01重量%未満では単糸間接着を防止する効果が不
足気味となり、5.0重量%を超えると、焼成時にロー
ラー表面にシリコーン系化合物が堆積し、繊維の巻付き
などのトラブルが多発することがある。
【0043】本発明における炭素繊維用前駆体繊維は、
耐炎化遅延元素を含む場合、含有する耐炎化遅延元素
は、下記(3)式で定義される単糸内外層濃度比R1が
5〜1000であることが好ましい。
【0044】 R1=Co/Ci …(3) Co:SIMSで測定した繊維表面から25nm深さの
単糸外層の元素カウント数 Ci:SIMSで測定した繊維表面から600nm深さ
の単糸内層の元素カウント数 本発明における炭素繊維用前駆体繊維が含有するケイ素
は、下記(4)式で定義される単糸内外層濃度比R2が
1〜10であることが好ましい。
【0045】 R2=Co/Ci …(4) Co:SIMSで測定した繊維表面から25nm深さの
単糸外層の元素カウント数 Ci:SIMSで測定した繊維表面から600nm深さ
の単糸内層の元素カウント数 前駆体繊維を酸化性雰囲気中で加熱して耐炎化する際、
単糸1本でみると酸化性ガスは、単糸の表面から中心部
に向けて浸透するため、単糸中心部に対して単糸表層部
での耐炎化反応が優先的に進行し、単糸中心部での耐炎
化が不完全となり、単糸表層部と単糸中心部に構造差が
現れる。かかる現象は高い強度特性を有する炭素繊維を
得る上で望ましくないため、耐炎化遅延元素を含む場合
は、前記(3)式に定義される、単糸内外層濃度比R1
が5〜1000の範囲になるように、耐炎化遅延元素を
単糸表層部に多く存在させ、単糸表層部での耐炎化反応
を遅延し、単糸全体で耐炎化反応を均一とするのが好ま
しい。前記R1が5未満では、耐炎化遅延効果が不足す
ることがあり、R1が1000を超えると単糸表層部で
の耐炎化反応が遅延され過ぎて構造形成が不完全なもの
となり、耐炎化糸の耐熱性が低下して、後続する前炭化
工程で単糸間接着が発生し、得られる炭素繊維の強度特
性を低下させてしまうことがある。
【0046】前駆体繊維の内部に存在するケイ素は、水
膨潤糸条に油剤として付与したシリコーン系化合物に由
来するものであり、かかる油剤の浸透によって単糸表層
部におけるボイド構造に取り込まれたものである。ボイ
ド構造に取り込まれたケイ素は、続く乾燥緻密化の作
用、すなわち、ボイド構造を潰して無構造化し、前駆体
繊維の構造を緻密化する作用を阻害して、単糸表層部に
ボイド構造を残存させてしまうため、ケイ素は可能な限
り少なくするのが好ましい。従って、前記(4)式で定
義される、ケイ素の単糸内外層濃度比R2は1〜10が
好ましい。R2が10を超えると、単糸表層部に多量の
ケイ素が存在していることとなり好ましくない。ここで
R2の下限値は、シリコーン系化合物が油剤として繊維
表面から浸透することから、実質的に1と近似できる。
【0047】また本発明において、前駆体繊維の単糸繊
度は、5μm未満の平均単糸径を有する炭素繊維を容易
に得るため、0.6デニール以下が好ましい。0.6デ
ニールを超えると、耐炎化後、単糸表層部と単糸中心部
との構造差が大きくなり、炭素繊維の強度特性を高める
ため、焼成工程で極端な延伸が必要となり、炭素繊維の
引張強度を8GPa以上とするのが困難となる。前駆体
繊維の単糸繊度は、低過ぎると、前駆体繊維の品質や生
産性の低下につながるため、0.25デニール以上とす
るのが良い。
【0048】次に本発明の炭素繊維の製造方法について
説明する。
【0049】主原料である共重合体は、アクリロニトリ
ルを95モル%以上含有することが必要である。95モ
ル%未満ではアクリル系の前駆体繊維として耐熱性が不
足したり、得られる炭素繊維において、その構造が不完
全なものとなり高い強度特性を得難くなる。
【0050】また、共重合体には、その極限粘度が2.
5〜4.0の範囲になるような分子量のものを使用す
る。極限粘度が2.5未満では分子配列の高い前駆体繊
維となりにくく、得られる炭素繊維に高い強度特性が得
難くなる。4.0を超えると製糸延伸性の低下などによ
り、分子配列の向上が期待できなくなり、前駆体繊維に
構造上の欠陥が増大し、炭素繊維の強度特性が低下す
る。
【0051】上記共重合体を溶剤で均一に溶解した紡糸
原液から、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法で紡糸した
後、最高温度が70℃以上の温水浴中で延伸して糸条の
膨潤度を100%以下とする。温水の温度が70℃未満
では、共重合体の極限粘度が2.5〜4.0の場合は、
その膨潤度を100%以下とし難しくなる。また、糸条
の膨潤度が100%を超えるとボイド構造が多くなり、
続いて付与される耐炎化遅延元素が単糸中心部まで浸入
し易くなり、均一に耐炎化できなくなる場合がある。さ
らにその後糸条に付与されるシリコーン系化合物も単糸
中心部まで浸透し、続く乾燥緻密化の作用を阻害してボ
イド構造を増加させる原因となる。糸条の膨潤度は低い
程、シリコーン系化合物の浸透現象が起こり難くなるの
で好ましいが、耐炎化遅延元素を付与する場合は、該元
素を必要な量浸入させ難くなるので、前記膨潤度は、5
0%が良く、好ましくは60%を下限とするのが良い。
【0052】こうして得られる水膨潤糸条に、耐炎化遅
延元素および/またはシリコーン系化合物を油剤に含ま
せて付与する。シリコーン系化合物は、耐熱性が高く、
単糸間接着を防止する効果に優れると同時に、水に乳化
もしくは分散した液の安定性に優れているものが良く、
アミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンを
含むのが好ましく、さらに加えてシリコーンレジンを含
むのがより好ましい。また、アミノ変性シリコーンとエ
ポキシ変性シリコーンは、その25℃におけるオイル粘
度が、それぞれ200〜20000cst、1000〜
40000cstであることが好ましい。シリコーンレ
ジンについては水溶性のものが分散安定性、均一付着性
の観点から好ましい。
【0053】かかる油剤は、乾燥緻密化前に、乾燥緻密
化工程での単糸間接着を有効に防止できる最低限の量を
付与した後、一旦乾燥緻密化し、さらに続く焼成工程で
の単糸間接着を有効に防止するために、再度付与し、そ
の後熱処理することによって、単糸の内部へのケイ素の
浸入を適度に抑制し、ボイド構造が少なく、前記明度差
ΔLが5〜25の範囲の前駆体繊維を得ることができ
る。なお、本発明において焼成とは、前駆体繊維を、耐
炎化処理に引き続いて炭化処理して最終生産物たる炭素
繊維とする一連の処理をいう。
【0054】乾燥緻密化および/または熱処理を終えた
繊維は、結晶配向度が90%以上になるまで必要に応じ
て高温熱媒体中で2〜7倍に延伸して単糸繊度が0.6
デニール以下の前駆体繊維とする。この際、高温熱媒体
として加圧水蒸気を使用すると、水分子が、アクリロニ
トリル系の共重合体の可塑剤としての効果を発揮し、高
倍率延伸が可能となる結果、結晶配向度を90%以上に
することが容易となり、生産性の点でも好ましい。
【0055】このようにして得られた前駆体繊維を耐炎
化した後、炭化することによって、引張強度が8GPa
以上である本発明の炭素繊維を得ることができる。
【0056】さらに詳細に本発明の炭素繊維の製造方法
について説明する。本発明において、アクリロニトリル
系の共重合体は95モル%以上のアクリロニトリルおよ
びアクリロニトリルと共重合可能な5モル%以下のビニ
ル化合物からなるものである。アクリロニトリルは炭素
繊維の主要構造部を形成するものであるから他の共重合
成分はできるだけ少ない方が良いが、炭素繊維の欠陥を
減少させ、高い強度特性を発現させるため、前記ビニル
化合物を最小限度に共重合するのが好ましい。かかる共
重合成分には、紡糸時の凝固糸沈殿構造をより微細化す
るための、親水性向上成分、製糸延伸性向上成分、耐炎
化反応促進成分、酸素透過性促進成分などがあり、これ
らから、目的に応じて適宜選択するのが好ましい。
【0057】前記ビニル化合物の内、親水性向上成分と
しては、具体的には、カルボキシル基、スルホ基、アミ
ノ基、アミド基など、親水性の官能基を有するビニル化
合物が挙げられる。これら化合物は、紡糸時に発現する
凝固糸沈殿構造を微細にして、前駆体繊維のボイド構造
を減少させ、得られる炭素繊維の強度特性を高めるもの
である。特に本発明において、使用する共重合体の極限
粘度が高めのため、紡糸原液の共重合体濃度を低く設定
する必要があり、このため凝固時にサイズの大きなボイ
ドの発生を有効に抑止するビニル化合物は有効である。
【0058】また、共重合体の親水性を向上させるとと
もに、繊維の緻密性を向上させる成分の具体例として
は、カルボキシル基を有するものとして、アクリル酸、
メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン
酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸などが挙げ
られるが、中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン
酸が好ましい。中でもイタコン酸は、少量共重合するだ
けで、共重合体の親水性向上効果と耐炎化促進効果とが
発現されるため好ましい。また、スルホ基を有するもの
としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ス
チレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプ
ロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホプロピル
メタクリレートなどが挙げられるが、中でもアリルスル
ホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2
−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好
ましい。さらに、アミノ基を有するものとしては、ジメ
チルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチ
ルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレー
ト、ジエチルアミノエチルアクリレート、ターシャリー
ブチルアミノエチルメタクリレート、アリルアミン、o
−アミノスチレン、p−アミノスチレンなどが挙げられ
るが、中でもジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ
エチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエ
チルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート
が好ましい。さらにまた、アミド基を有するものとして
は、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアク
リルアミド、クロトンアミドなどが挙げられる。
【0059】これらカルボキシル基、スルホ基、アミノ
基、アミド基は、アンモニア、アミン化合物、水酸化ナ
トリウムなどの塩基や塩酸などの酸で重合前または重合
後に中和することによって、共重合体の親水性をさらに
向上させることができる。かかる中和により、紡糸時の
凝固糸沈殿構造の微細化が促進され、繊維の緻密性が大
幅に向上する。中和は、共重合体の全量を中和しても良
いし、親水性の向上のための最小限の量だけ中和しても
良い。前記中和用試薬としては、購入価格、取り扱いの
容易性や、炭素繊維の欠陥の原因となる元素を含まない
ことなどを考慮するとアンモニアが最も好ましい。すな
わち、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカ
ルボン酸は、前述したように耐炎化促進効果を有するの
で、その一部または全部をアンモニアで中和することに
より、共重合体に、耐炎化促進効果と親水性向上効果を
同時に付与することができる。
【0060】共重合体の親水性を向上させ、紡糸時に形
成される凝固糸沈殿構造をより微細にすると、繊維の緻
密性が向上する反面、製糸延伸性が悪化し、製糸工程の
生産性の低下につながることがある。かかる生産性の低
下を避けるために、製糸延伸性を向上させる成分を共重
合して、共重合体のガラス転移温度を低下させ、製糸延
伸性を維持することが好ましい。この観点からは、共重
合成分としては、そのモノマー単位が分子量の大きなも
のであることが好ましく、共重合体を設計するに当た
り、その自由度を高くするため、耐炎化反応を適度に促
進する効果を有するビニル化合物が好ましい。具体的に
は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル
酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニルなどが挙げ
られ、中でも反応性の観点から、アクリル酸メチルが好
ましい。
【0061】さらに、前記ビニル化合物の内、耐炎化反
応促進成分として、不飽和カルボン酸が使用できる。具
体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ク
ロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、
メサコン酸などが挙げられるが、中でもアクリル酸、メ
タクリル酸、イタコン酸が好ましく、少量の共重合量で
耐炎化反応を促進する効果のあるイタコン酸がより好ま
しい。これら化合物は、耐炎化を短時間で完了させるの
に効果的であり、焼成工程に要するコストの低減にも寄
与する。
【0062】前駆体繊維の緻密性や結晶配向度の向上
は、得られる炭素繊維に高い強度特性を発現させるため
に重要であるが、一方では酸化性雰囲気で加熱して耐炎
化構造を形成する耐炎化工程において、酸化性ガスが単
糸中心部に透過し難いため、単糸表層部と単糸中心部と
の構造差が大きくなって、強度特性を向上する効果が不
充分となる。このような観点から、共重合体に、耐炎化
での酸素透過促進成分を共重合しておくことが好まし
い。
【0063】かかる酸素透過促進成分としては、重合性
不飽和カルボン酸のエステルが好ましく、特にノルマル
プロピルエステル、ノルマルブチルエステル、イソブチ
ルエステル、セカンダリーブチルエステル、炭素数が5
以上であるアルキルのエステルより選ばれたエステルの
ようにバルキーな側鎖を有するエステルが好ましい。具
体的には、アクリル酸ノルマルプロピル、メタクリル酸
ノルマルブチル、メタクリル酸イソブチル、イタコン酸
イソブチル、エタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステア
リル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジエチルアミノエ
チルメタクリレートなどが挙げられるが、中でもアクリ
ル酸、メタクリル酸、イタコン酸のエステルが好まし
く、イソプロピルエステル、ノルマルブチルエステル、
イソブチルエステルがより好ましい。ノルマルメチルエ
ステルのように側鎖の小さいエステルでも酸素透過促進
効果を有するが、バルキーな側鎖を有するエステルと同
じ酸素透過性を得るためにはより多くの量を共重合する
のが有効である。
【0064】前記親水性向上成分、製糸延伸性向上成
分、耐炎化反応促進成分、および酸素透過性促進成分は
それぞれ2種類以上の成分を合わせて使っても良いし、
1種の成分で同時に2以上の効果を合わせ持つものであ
れば、1種の成分で2以上の役割を分担しても良い。
【0065】これら成分の種類の数は、できるだけ少な
い方が製造コストの低減につながり好ましい。従って、
親水性向上効果と耐炎化反応促進効果を一種の不飽和カ
ルボン酸で得るのが好ましい。この不飽和カルボン酸の
具体例としては、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル
酸などが挙げられる。さらに、そのカルボキシル基の一
部または全部をアンモニアで中和することにより、さら
に親水性を上げ、また繊維の緻密性も高めることができ
る。さらにまた、製糸延伸性向上効果と酸素透過性促進
効果を一種の不飽和カルボン酸エステルで得ることもで
きる。この不飽和カルボン酸エステルの具体例として
は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げら
れる。また、親水性向上効果と酸素透過性促進効果とを
一種の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、具体
的にはジエチルアミノエチルメタクリレートなどで得る
ことも可能である。
【0066】ビニル化合物は、比較的安価であるが、炭
素繊維の製造コストと得られる機械的特性とのバランス
から選択するのが良い。また、前記親水性向上成分、製
糸延伸性向上成分、耐炎化反応促進成分、および酸素透
過性促進成分以外に、アクリロニトリルと共重合可能な
重合性不飽和単量体を共重合するのも可能である。
【0067】また、共重合体は、その極限粘度が2.5
〜4.0の範囲になるようにモノマー濃度、触媒量、重
合温度・時間、ラジカル重合用連鎖移動剤の量などの条
件などで調整し、重合するのが良い。
【0068】共重合体の分子量分布は、狭いほど製糸延
伸性に優れ、得られる炭素繊維の強度特性も向上するた
め、できる限り狭くするのが良い。具体的には、重量平
均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが、
3.5以下であることが良く、好ましくは2.5以下、
より好ましくは2.0以下が良い。分子量分布を狭くす
るためには、モノマーを重合開始時から一度に添加せ
ず、重合過程で逐次添加して重合させるのが有効であ
る。かかる逐次添加はモノマー反応速度を考慮し、生成
ポリマー組成が重合過程で一定となるように添加モノマ
ー量、添加速度を決定することが好ましい。
【0069】重合法については、溶液重合法、懸濁重合
法、乳化重合法など、従来公知の重合法を適用すること
ができるが、中でも、均一な紡糸原液が得られ、異物の
混入が少ない溶液重合法が好ましい。さらに重合槽に仕
込む前に、共重合体と溶剤からなる紡糸原液は、目開き
0.5μm以下のフィルターを通過させるのが良く、
0.2μm以下のフィルターを通過させるのが好まし
い。さらに、重合槽は撹拌軸から異物が混入しない構造
となっているのが良い。
【0070】前記共重合体は、その紡糸原液中の濃度が
高い程、凝固浴での溶剤と水などの沈殿剤との置換量が
減り、ボイドの発生が少なくなり、繊維の緻密性が高ま
り、炭素繊維の強度特性の向上に有利となるが、紡糸原
液の粘度が高くなる、一部成分がゲル化し易くなる、製
糸延伸性が低下する、など製糸プロセス性全般が悪化す
るため、共重合体の分子量を考慮して決定するのが良
い。具体的には、紡糸原液は、45℃での粘度が30〜
150Pa・sの範囲になるよう調整するのが良い。
【0071】紡糸法としては、溶融紡糸法、湿式紡糸
法、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法などを採用することでき
るが、繊維が緻密化し易く、高い強度特性を有する炭素
繊維が比較的容易に得られる湿式紡糸法または乾湿式紡
糸法が好ましく、特に乾湿式紡糸が好ましい。
【0072】溶剤としては、DMSO、DMF、DMA
c、NaSCN、ZnCl2 などの従来公知のものを使
用することができるが、生産性向上の観点から凝固速度
が早いDMSO、DMF、またはDMAcが好ましく、
中でもDMSOがより好ましい。
【0073】紡糸原液は、口金から吐出される前に目開
き5μm以下のフィルターを通してゲル化成分などをろ
過して除去することが良く、この場合の目開きは3μm
以下とすることが好ましく、1μm以下とすることがよ
り好ましい。
【0074】凝固浴における凝固工程は、紡糸原液中の
共重合体が相分離して繊維が形成される工程である。従
って、凝固工程の条件は、前駆体繊維および炭素繊維の
構造形成および引張特性に大きく影響することから、特
にボイドが少なく、緻密性の高い凝固糸を得るために
は、凝固速度が低いことが好ましく、凝固浴は、なるべ
く低温に保持することが好ましい。この凝固浴の温度
は、具体的には、20℃以下にするのが良く、10℃以
下が好ましく、5℃以下がより好ましい。この凝固浴の
温度は、−10℃程度有れば本発明の効果を奏するに充
分であることが多い。
【0075】凝固浴には、紡糸原液に使用したものと同
種の溶剤と、沈殿剤としての水とを混合して水溶液とし
たものを用いるのが、溶剤回収の点から好ましい。凝固
後の繊維の断面形状は溶剤の種類、凝固浴での溶剤の濃
度、凝固浴の温度、紡糸原液での共重合体の濃度、共重
合体の親水性などに影響されるので、凝固した繊維の断
面形状が実質的に真円となるような条件を選ぶのが好ま
しい。
【0076】さらに凝固浴に使用する水は、異種元素の
混入を防止する観点から、電気伝導度が5μS以下の純
水を用いるのが好ましく、凝固浴液の循環ラインに目開
き1μm以下のフィルターを組み込み異物を除去するの
が好ましい。
【0077】また、口金から吐出する紡糸原液の温度
は、凝固浴の温度とほほ等温とするのが好ましいことか
ら、なるべく低温とし、かつ凝固浴の温度に接近させる
のが好ましい。具体的には、紡糸原液の温度は、60℃
以下とするのが良く、好ましくは50℃以下、より好ま
しくは40℃以下とすつのが良いが、低温過ぎると紡糸
原液の粘度が上昇したり、極端な場合はその一部がゲル
化したりしてトラブルの原因となることがあるので、そ
の下限値は20℃程度とするのが好ましい。
【0078】凝固糸のフィブリル構造、ボイド構造は微
細な程、後の工程で、繊維の緻密化が促進される傾向に
あるので好ましい。凝固糸条の膨潤度は、このボイド構
造の量と対応関係があり、低い程良い。凝固浴の温度を
70℃以上として浴延伸することによって緻密化を促進
させ、凝固糸条の膨潤度を100%以下とすることがで
きる。
【0079】口金としては、通常円形の孔を有するもの
を用いて円形またはそれに準ずる断面形状を有する凝固
糸を得るが、スリットまたは小円形孔の集合から吐出後
に合流させることにより三角形、四角形、五角形といっ
た異形断面の凝固糸を得ることもできる。また、口金
は、口金1個当たりの孔数が3000以上のものが好ま
しく、6000以上のものがより好ましい。口金の孔数
は、多過ぎると口金が大きくなり過ぎ、取扱性が悪くな
るので100000以下が適当である凝固後、水洗、浴
延伸を行うが、必要に応じて酸処理などを行う。特に浴
延伸における温度条件が、繊維の緻密化を促進する上で
重要である。浴延伸の最高温度は、60〜100℃の範
囲に設定することが重要であり、かかる範囲は70〜1
00℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。
【0080】浴延伸は、2段以上の多段で延伸すること
が、得られる炭素繊維の強度特性の向上にとり好まし
く、浴間で段階的に温度差をつけ、後段程、高温とする
ことおよび隣り合う浴間の温度差を20℃以下とするこ
とが、延伸浴での単糸間接着を抑制する上で好ましい。
【0081】水洗浴および延伸浴には、目開き1μm以
下のフィルターを通した、電気伝導度が5μS以下の純
水を用いて、異種元素や異物の糸条内部への混入を防止
することが好ましい。浴延伸の延伸倍率は、全体で1.
5〜8倍が好ましく、2〜5倍がより好ましい。
【0082】温度の高い延伸浴では、入り側ローラーで
熱圧着により単糸間接着が起り易いので入り側ローラー
を延伸浴の外に出すのが効果的である。また単糸間接着
に至る前の疑似的な接着を外すため、延伸浴中に超音波
振動ガイドを設けて糸条に振動を与えることも効果的で
ある。その際の振動数は、5〜100Hzが好ましく、
振動ガイドの振幅は、0.1〜10mmが好ましい。こ
れらの技術を統合することによって、乾湿式紡糸法にお
いて、60〜100℃といった比較的、高温領域で浴延
伸しても、単糸間接着が発生し難い糸条が得られるよう
になる。
【0083】炭素繊維用前駆体繊維は、単糸間接着が少
ないこと、後の焼成工程でも単糸間接着を発生しないこ
とが必要である。そのために耐熱性に優れる油剤を糸条
に均一に付与することが重要である。
【0084】アクリロニトリルに共重合する成分の比率
を高くすると、共重合体の融点が低下して融着し易くな
るため、単糸間接着が発生し易くなる。また、得られる
炭素繊維の強度特性を高めるために、単糸繊度の小さい
ものを用いると、油剤を繊維束の単糸間に均一に付与す
ることが困難となり、単糸間接着が増えて強度特性が向
上しないことが多い。このように、油剤の性能いかんに
よって炭素繊維の引張強度や伸度特性が大きく左右され
る。
【0085】優れた油剤の条件としては、糸条に均一に
付与でき、乾燥緻密化や加熱工程でのローラーなどへの
転写量が少なく、耐熱性が高く、かつ焼成工程での単糸
間接着を有効に防止することなどが挙げられ、これによ
り製糸プロセス性を高めることができる。従って、油剤
には、シリコーン系化合物、高級アルコール、高級脂肪
酸エステルなどからなる混合油剤を使用するのが良い
が、単糸間接着を抑制する効果の大きいシリコーン系化
合物からなるものが好ましい。
【0086】ここで、シリコーン系化合物はジメチルシ
ロキサンを含むのが好ましい。なお、製糸プロセス性を
高めるため、水系で使うことのできる水溶性または自己
乳化性のもの、またはノニオン系などの界面活性剤で乳
化し、安定なエマルジョンとなったものが好ましい。
【0087】ジメチルシロキサンとしては、アミノ変性
シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキ
サイド変性シリコーンなどの変性シリコーン、またはそ
れらの混合物を用いるのが好ましい。中でもアミノ変性
シリコーンを含むのが好ましく、アミノ変性シリコーン
およびエポキシ変性シリコーンを含むのがより好まし
く、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、
およびシリコーンレジンを含むのがさらに好ましい。ジ
メチルシロキサンの混合比率(重量比)としては、アミ
ノ変性シリコーン:エポキシ変性シリコーン:アルキレ
ンオキサイド変性シリコーンの比率で1:0.1〜5:
0.1〜5が好ましく、1:0.5〜2:0.2〜1.
5がより好ましい。ジメチルシロキサンとシリコーンレ
ジンとの混合比率(重量比)としては、1:0.01〜
0.3が好ましく、1:0.02〜0.1がより好まし
い。
【0088】アミノ変性シリコーンの変性量としては、
末端アミノ基量を−NH2 に換算した比率が、0.05
〜10重量%のものが良く、好ましくは0.1〜5重量
%のものが良い。エポキシ変性シリコーンの変性量とし
ては、エポキシ基−CHCH2 Oの比率が、0.05〜
10重量%のものが良く、好ましくは0.1〜5重量%
のものが良い。アルキレンオキサイド変性シリコーンの
変性量としては、アルキレンオキサイド変性部の比率
が、10〜80重量%のものが良く、好ましくは15〜
60重量%のものが良い。アミノ変性シリコーンとエポ
キシ変性シリコーンは、その25℃における粘度が、そ
れぞれ200〜20000cStおよび1000〜40
000cStのものを用いるのが好ましい。
【0089】なお、シリコーンレジンとしては、水溶性
化したものを用いるのが好ましく、例えば、日本ユニカ
ー社製のシロキサン水溶液、型番:RZ7703などが
良い。
【0090】シリコーン系化合物は、最終的に得られる
前駆体繊維が、0.01〜5重量%のケイ素を付着する
ように、油剤に含ませて付与するのが良い。ケイ素の付
着量は、好ましくは0.05〜2.0重量%、より好ま
しくは0.1〜1.0重量%が良い。
【0091】油剤を水膨潤糸条に付与した後、乾燥緻密
化する。ここで、水膨潤糸条は、その膨潤度が高く、か
つシリコーン系化合物の付与量が多い場合には、最終的
に得られる前駆体繊維の単糸中心部までケイ素が浸入し
ていることがSIMSで確認され、かかる侵入部分に
は、微細なボイド構造が存在することが透過型電子顕微
鏡(略称:TEM)などで確認できることが多い。ま
た、この現象は、前駆体繊維のヨウ素吸着による明度差
ΔLが25を超えることによっても確認することができ
る。このような前駆体繊維から得られた炭素繊維は、前
述のとおり高い強度特性を発現することは困難である。
【0092】従って、水膨潤糸条に付与するシリコーン
系化合物は、乾燥緻密化の工程における単糸間接着を有
効に防止するために最少限必要な量を乾燥緻密化前に付
与してから、一旦乾燥緻密化を完了し、その後、焼成工
程での単糸間接着を有効に防止するために、シリコーン
系化合物を含む油剤を付与し、さらに熱処理を施すこと
によって、シリコーン系化合物を繊維に固定し、単糸中
心部への浸透を抑制すると共に、焼成工程における単糸
間接着を防止することもできる。これら乾燥緻密化の前
後に付与するシリコーン系化合物は同種である必要はな
いが、乾燥緻密化前に付与するシリコーン系化合物は単
糸中心部に浸透し難く、また耐熱性が高く、少量でも単
糸間接着を有効に防止するものが良く、分散安定性の面
で問題のない範囲でオイル粘度が高めのシリコーン系化
合物を用いるのが好ましい。また、乾燥緻密化の温度
は、できるだけ低い方がシリコーン系化合物が少量でも
乾燥緻密化における単糸間接着を有効に防止する上で好
ましいが、乾燥緻密化の温度は、乾燥緻密化の所要時間
が延長されることにより生産性が低下することを考慮す
ると、低くとも100〜180℃程度に設定するのが良
い。乾燥緻密化後の熱処理の温度は、高めの方が、シリ
コーン系化合物の樹脂化が促進され、焼成工程における
単糸間接着を防止する効果が高められるため、150〜
220℃程度に設定するのが良い。
【0093】シリコーン系化合物は、繊維への付与量が
少量である程、焼成工程での発生タールや排ガス量の削
減にとり有利であるので、単糸間接着を抑制しうる範囲
で少なめとするのが良い。従って、シリコーン系化合物
を含む油剤は、繊維の表面に均一に付与するのが好まし
い。また、油剤浴において、超音波振動ガイドや、斜行
ジグザグローラーを使用するのも、油剤の単糸間移動を
促進するため有効である。
【0094】さらに付与後に、複数個ジグザグ状に連続
して並べたフリーローラーに糸条を通し、走行する糸条
の接触角の合計が8π以上になるようにするのも油剤の
均一付与に有効である。接触角は大きい程、付与均一性
のために良いが、製造コストやスペースを考慮すると、
16π以下とするのが良い。その際、糸条がローラーに
架かる前に、潤滑剤として、水またはシリコーン系化合
物を、噴霧、滴下などの方法により、糸条に付与するの
も好ましい。かかる処理により、より少量の油剤で付与
均一性を確保することができる。
【0095】シリコーン系化合物の乳化のための界面活
性剤はノニオン系が好ましく、この際、希釈に用いる水
は、電気伝導度が5μS以下の純水を目開き1μm以下
のフィルターでろ過したものを使用するのが好ましい。
【0096】耐炎化遅延元素の最大濃度部が、前駆体繊
維の単糸中心部に存在するようにするは、耐炎化遅延元
素を有する化合物を、単糸の表面から中心に向けて侵入
させることが必要である。従って、耐炎化遅延元素は、
シリコーン系化合物に混合して、乾燥緻密化前の水膨潤
糸条に付与するのが好ましい。
【0097】耐炎化遅延元素を単糸表層部に導入し、単
糸内外濃度比R1を5〜1000とし、かつ該元素の含
有率が、0.01〜0.5重量%である前駆体繊維を得
るためには、糸条の膨潤度に応じて、シリコーン系化合
物中の、耐炎化遅延元素の濃度を調整するのが良く、水
膨潤糸条の膨潤度を100%以下として、単糸の中心部
まで耐炎化遅延元素が浸入するのを防止するのが好まし
い。
【0098】耐炎化遅延元素および/またはシリコーン
系化合物を含む油剤を付与してから乾燥緻密化し、さら
に乾燥緻密化後に、シリコーン系化合物を含む油剤を付
与してから、熱処理し、さらに必要に応じて、結晶配向
度が90%以上、単糸繊度が0.25〜0.6デニール
の範囲になるように、加圧水蒸気などの高温熱媒中で延
伸を行う。ここでの延伸倍率は2〜7倍が好ましい。な
お、ここで使用する加圧水蒸気は、直前で目開き1μm
以下のフィルターを通過させた後に使用するのが好まし
い。この後、必要に応じて、さらに熱処理を施し、糸条
を収束するために鉱物油などを仕上げ用の油剤として付
与しても良い。
【0099】前駆体繊維のフィラメント数については、
生産性の観点から1000フィラメント以上が良く、好
ましくは10000フィラメント以上、より好ましくは
20000フィラメント以上が良い。フィラメント数
は、500000フィラメント程度有れば充分である。
【0100】なお、製糸工程において使用する液体中の
異物や雰囲気気体中の粉塵は繊維の表面に付着して、焼
成時に繊維の欠陥の原因となることがある。従って、製
糸工程は、その雰囲気気体を目開き0.3μm以下のフ
ィルターを通して、クリーンな環境とするのが好まし
く、具体的には粒子径が0.3μm以上の粉塵が気体1
リットル当たり1000個以下とするのが良く、100
個以下とするのが好ましい。製糸工程を外気から遮断
し、前記フィルターでろ過した清浄な気体を供給するこ
とによって、クリーンな環境とすることができ、また工
程の一部を適当な手段で囲って、局部的に環境をクリー
ン化することもできる。
【0101】ここで、雰囲気気体に含まれる粉塵量はリ
オン(株)社製のパーティクルカウンターKC−01B
で測定することができる。
【0102】また、シリコーン系化合物を付与して乾燥
緻密化した繊維は、静電気を帯び易く、環境中に浮遊す
る粉塵を吸着し易くなるので、その表面の静電気を1K
V以下に除電することも高い強度特性を有する炭素繊維
を得る上で極めて有効である。
【0103】次に、このようにして得られた前駆体繊維
を焼成して炭素繊維とする。以下に焼成工程について説
明する。
【0104】耐炎化条件は、単糸表層部と単糸中心部と
の構造差を決定づけるため重要である。特に耐炎化温度
は、かかる構造差への影響が大きいので重要である。耐
炎化温度としては200〜300℃の範囲が好ましく、
耐炎化が進む過程において糸切れが発生する温度より1
0〜20℃程度低い温度で耐炎化を進めるのが製造コス
トおよび、得られる炭素繊維の性能を高める上で好まし
い。
【0105】耐炎化時に糸条に架かる張力は、得られる
炭素繊維の引張強度を向上させる観点から、毛羽が発生
しない範囲で高くするのが好ましい。耐炎化時の張力
は、同じ延伸倍率でも、前駆体繊維の結晶配向度や、繊
維を構成する共重合体の分子量などにより大きく変化す
るので、毛羽の発生状態により適正化することが好まし
い。具体的には、張力は0.1〜0.5gf/デニール
が好ましい。
【0106】耐炎化時の延伸倍率は、0.8〜1.2が
良いが、擦過による毛羽の発生が少なく、マクロ欠陥の
少ない炭素繊維を得るために、好ましくは0.85〜
1.1、より好ましくは0.95〜1.05とするのが
良い。
【0107】耐炎化は、得られる炭素繊維の引張強度と
炭化工程のプロセス性を高める観点から、繊維の比重が
1.2〜1.5の範囲になるまで継続して耐炎化するの
が良く、好ましくは1.25〜1.45、より好ましく
は1.3〜1.4まで継続するのが良い。
【0108】耐炎化は、空気などの酸化性雰囲気中で行
うが、耐炎化工程の一部を、窒素などの不活性雰囲気中
で行うのも生産性の向上に有効である。耐炎化は、熱に
よる環化反応と酸素による不飽和化反応とからなるた
め、酸素の共存量を適度に抑え、不飽和化反応の暴走が
発生する恐れのない状態で、高温で処理することによ
り、耐炎化の効率を高めることができる。
【0109】耐炎化時間は、得られる炭素繊維の性能を
高める観点から、10〜100分の範囲とするのが良
く、好ましくは20〜60分の範囲とするのが良い。こ
こで、耐炎化時間とは、繊維束が耐炎化炉内に滞留して
いる全時間をいう。耐炎化時間が10分未満であると、
単糸表層部と単糸中心部との構造差が顕著になり得られ
る炭素繊維の性能が低下することがあり、100分を超
えると、生産性が低下してしまう。
【0110】こうして得られた耐炎化繊維を炭化して炭
素繊維とするが、炭化工程は、工程を2つに分割して処
理するのが良い。先ず前炭化工程で、不活性雰囲気中
で、室温から最高温度650〜1000℃までの昇温温
度の炭化炉を通して処理する。かかる前炭化工程で約4
00〜500℃の温度範囲で耐炎化糸は激しく熱分解し
て配向が緩和する。従って、この温度範囲での昇温勾配
は、できるだけ緩やかとして配向の緩和を抑制するのが
好ましい。昇温勾配としては、200℃/分以下が良
く、好ましくは100℃/分以下、より好ましくは50
℃/分以下が良い。配向の緩和を抑制するためには、前
炭化工程の延伸比を高くして張力を高めることも有効で
あるが、この際、毛羽の発生状態を観察しながら適正化
するのが好ましい。従って、延伸倍率は、0.9〜1.
3として張力を0.03〜0.3gf/デニールの範囲
とするのが好ましい。続いて、後炭化工程では、不活性
雰囲気中で最高温度が1100℃以上、好ましくは12
00℃以上で炭化するのが良い。1100℃未満では、
得られる炭素繊維の水分率が高くなり、好ましくない。
なお、1600℃を超える高温では、窒素が繊維内部か
ら脱離することにより、ミクロボイド発生の原因となる
ため、炭素繊維の引張強度を8GPa以上とすることが
困難となる。従って、ここでの炭化温度の上限は160
0℃以下とするのが好ましい。
【0111】また、炭化工程においては、繊維からガス
が発生して重量が減少し始める温度領域から、高温領域
に至るまで、工程の排気を続けるのが、発生ガスによる
工程内の汚染を防ぎ、炭素繊維のマクロ欠陥を減らす上
で有効である。前炭化工程においては、400〜500
℃の温度領域から排気を始めるのが有効であり、さらに
後炭化工程においては、1000〜1200℃の温度領
域から排気を始めるのが有効である。
【0112】また、工程環境の改善のために、前駆体繊
維を耐炎化工程に供給する工程から、耐炎化工程を経て
前炭化工程に入るまでの工程を、できる限りクリーンな
環境とするため、目開き0.3μm以下のフィルターを
通した清浄な気体をこれら工程に供給するのが好まし
い。具体的には、粒子径が0.3μm以上の粉塵が環境
中の気体1リットル当たり1000個以下とするのが良
く、100個以下とするのが好ましい。さらに、繊維の
表面に帯電する静電気を1KV以下に除電することも、
粉塵の付着を防ぎ、炭素繊維の強度特性を高める上で有
効である。
【0113】さらに、本発明における炭素繊維は、20
00〜3300℃の不活性雰囲気中で黒鉛化することに
より、従来の黒鉛化糸と比較して、強度特性が飛躍的に
優れる黒鉛化糸を得ることが可能となる。
【0114】こうして得られた炭素繊維に、表面処理を
施してマトリックスとの接着性を向上させることができ
る。表面処理には、気相、液相処理なども用いることが
できるが、生産性を高める観点から、電解処理が好まし
い。
【0115】電解処理に用いられる電解液には、硫酸、
硝酸、塩酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといった
アルカリ、またはそれらの塩が使用できるが、中でもア
ンモニウムイオンを含む水溶液が好ましい。アンモニウ
ムイオンの具体例としては、硝酸アンモニウム、硫酸ア
ンモニウム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、
臭化アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸水素
2アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニ
ウムなどや、それらの混合物が挙げられる。
【0116】電解処理に要する通電電気量は、処理する
炭素繊維により異なり、例えば炭化度の高い炭素繊維ほ
ど、高い通電電気量が必要となる。表面処理は、X線光
電子分光法(ESCA)により測定される炭素繊維の表
面酸素濃度O/Cと表面窒素濃度N/Cが、それぞれ
0.05〜0.40、0.02〜0.30の範囲になる
ように処理するの好ましい。
【0117】かかる表面処理により、炭素繊維とマトリ
ックスとの接着性を適度に高めることができる。これに
より、接着性が高過ぎて、炭素繊維の脆弱化により複合
材料が破壊を受けたり、接着性が低過ぎて、縦方向以外
の方向で、複合材料の機械的特性が充分に発現されな
い、などの現象を効果的に予防できるようになる。
【0118】得られた炭素繊維は、さらに必要に応じて
サイジングがなされる。サイジング剤には、先ずマトリ
ックスとの相溶性の良いものが良く、各々使用するマト
リックスに合せ選択するのが好ましい。
【0119】次に、本発明における炭素繊維を用いた複
合材料について説明する。プリプレグまたは複合材料と
する際にマトリックスとなる樹脂としては、具体的に
は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹
脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイ
ミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポ
リプロピレン樹脂、ABS樹脂などが挙げられるが、複
合材料の用途に応じて耐熱性、製造コスト、靭性、接着
性、成形法などの諸特性を考慮して最適なものを選択す
るのが好ましい。またマトリックスとしては、前記樹脂
に限らず、セメント、金属、セラミックスなども使用で
きる。
【0120】プリプレグまたは複合材料の製造方法とし
ては、炭素繊維を一方向に引き揃えて樹脂含浸シート、
すなわち一方向プリプレグとする方法もあるし、また予
め炭素繊維を織物にしておいてから樹脂を含浸せしめて
織物プリプレグとする方法もある。複合材料は、それら
プリプレグを任意の方向に積層して硬化することによっ
ても得られるし、また、直接樹脂を含浸しながら巻き付
けるフィラメントワインド法などによっても得ることが
できる。その他にも、繊維を予め短くカットしてチョッ
プドファイバーとして、樹脂と混練しながら押し出して
成形する、または長繊維を樹脂を含浸した状態で切断し
てペレット化し、この後押し出して成形する方法も有効
であり、樹脂および用途に応じて最適化するのが好まし
い。
【0121】本発明における炭素繊維複合材料は、プリ
プレグを適用する方法以外にも、シートモールデイング
コンパウンド(SMC)、または、チョップドファイバ
ーなどに一旦加工した後に適用するハンドレイアップ
法、プレス成形法、オートクレーブ法、プルトルージョ
ン法などの成型法によっても製造することができる。
【0122】本発明における炭素繊維、プリプレグおよ
び複合材料は、航空機の一次構造材料、ゴルフシャフ
ト、釣竿、スノーボード、スキーストックなどのスポー
ツ用品、ヨットのマスト、舟艇のハルなどのマリーン用
品、フライホイール、CNGタンク、風車、タービンブ
レードなどのエネルギー・一般産業用途、道路・橋脚な
どの補修・補強用途、カーテンウォールなどの建築用途
などに幅広く適用できる。これにより、炭素繊維の利用
範囲を拡大することができるとともに、従来になく軽量
で高性能な部材、構造物を得ることが可能となる。
【0123】なお、後述する実施例においては、各物性
値は以下に示す方法で測定した。 <炭素繊維の単糸断面積・平均単糸径>測定する繊維束
について、単位長さ当たりの重量(g/m)を密度(g
/m3)で除して単糸断面積を求め、さらにフィラメン
ト数で除して求められる単糸断面積から断面形状が真円
と仮定して算出する。
【0124】従って、まゆ型断面または三角形断面とい
った非円形断面の場合にも真円と仮定して算出し、平均
単糸径を定義する。
【0125】<樹脂含浸ストランド引張強度・引張弾性
率>測定する炭素繊維に、BAKELITE(登録商標)ERL422
1/3フッ化ホウ素モノエチルアミン/アセトン=10
0/3/4(重量部)で混合した樹脂組成物を含浸さ
せ、次に130℃で、30分間加熱して硬化させ、樹脂
含浸ストランドを得る。樹脂含浸ストランド試験法(J
IS R7601)により引張強度と引張弾性率を求め
る。
【0126】<単糸強度>測定する炭素繊維束として2
0cm程度のものを準備し、アセトンに浸漬してサイジ
ング剤を除去する。次に繊維束をほぼ4等分し、4つの
繊維束から順番に、束全体からできるだけ均等にサンプ
リングして測定サンプルの単糸を採取する。 次に四角
形状の5mm幅のスリット孔を設けた紙製カードを準備
し、単糸を、その両端部を仮止めして前記スリット孔に
渡し、さらに瞬間接着剤を塗布した同カードの断片で、
単糸がカードから浮き上がらないようにしっかりと固定
する。単糸を固定したカードを引張試験機に取り付け、
単糸を切らないようにカードのスリット孔の両側を切
り、カード全体を水に浸漬した後、歪速度1%/分で引
張試験を行う(測定サンプル数:50本以上)。
【0127】<繊維軸方向の結晶配向度π400>測定す
る前駆体繊維約20mg/4cmを1mm幅の金型にコ
ロジオンで固めて測定に供する。X線源としてNiフィ
ルターで単色化したCuのKα線(波長:1.5418
A)を使用し、出力35kV、15mAで測定し、2θ
=17゜付近に観察された面指数(400)のピークを
円周方向にスキャンして得られたピークの半値幅H
(゜)より、次式より求める。 π400(%)={(180−H)×100}/180 ここで、 ゴニオメーターのスリット直径:2mm 計数管:シンチレーションカウンター スキャン速度:4゜/分 タイムコンスタント:1秒 チャートスピード:1cm/分
【0128】<前駆体繊維におけるホウ素およびケイ素
の含有率>測定する前駆体繊維をテフロン製密閉容器に
とり、硫酸、次いで硝酸で加熱分解した後、定容とす
る。
【0129】ここでは、ICP発光分析装置に、セイコ
ー電子工業社製シーケンシャル型ICP SPS120
0−VRにより、各元素の含有率を測定する。
【0130】<ポリマーの極限粘度[η]>測定するポ
リマーを絶乾後、150mg精秤し、0.1NのNaS
CNを溶解したDMFを加え、完全に溶解後、25℃で
50mlとする。25℃にコントロールされた恒温槽中
でオストワルド粘度計を使用して、ブランクDMF液と
試料を溶解したサンプルDMF液の落下時間を測定す
る。それぞれ5回の平均値をt0 、tとして、比粘度η
spを下記(5)式で、極限粘度[η]を(6)式により
求める。 ηsp=(t/t0 )−1 …(5) [η]={(1+1.32×ηsp)1/2 −1}/0.198 …(6)
【0131】<ヨウ素吸着による明度差ΔL>測定する
前駆体繊維を乾燥し、長さ約6cmにカットし、精評し
て0.5gの試料を2つ作成し、内一つを200mlの
共栓付き三角フラスコに入れる。該フラスコにヨード溶
液(ヨウ素(I2) :50.76g,2,4−ジクロロ
フェノール10g,酢酸90gおよびヨウ化カリウム1
00gを評量し、1リットル容量のメスフラスコに移し
て水で溶解して定容としたもの)100mlを添加し
て、60±0.5℃で50分間振とうしながらヨウ素を
吸着処理する。
【0132】吸着処理後の試料を流水中で30分間、水
洗後、遠心脱水する。遠心脱水後の試料を約2時間、風
乾後、再度ハンドカードで開繊する。次にヨウ素吸着前
後の試料につき、繊維方向を揃えてから、色差計で同時
にL値を測定し、ヨウ素吸着前後の試料のL値をそれぞ
れL1およびL2とし、かかる値の差(L1−L2)を
ΔLとする。
【0133】<糸条の膨潤度>膨潤した糸条を測定試料
とする。これを延伸脱水機により、3000rpm,1
0分間の条件で付着水を除去した後の重量wと、これを
110℃,2時間熱風乾燥機で乾燥した後の重量w0 か
ら下記(7)式により求める。 膨潤度(%)={(w−w0 )/w0 }×100 …(7)
【0134】<耐炎化遅延元素およびケイ素の前駆体繊
維中濃度>SIMSにより測定する。測定する炭素繊維
を整列させ、真空環境下、下記測定装置、測定条件で、
繊維の側面から一次イオンを照射し、発生する二次イオ
ンを測定することにより求める。
【0135】・装置:ドイツATOMIKA社製 A-DIDA3000 ・一次イオン種:O2+ ・一次イオンエネルギー:12keV ・一次イオン電流:100nA ・ラスター領域:250×250μm ・ゲート率:30% ・分析領域:75×75μm ・検出二次イオン:正イオン ・電子スプレー条件:0.6kV−3.0A(F7.
5) ・測定時真空度:1×10-6Pa ・H−Q−H:#14
【0136】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお、これら実施例、比較例において、主要
な前駆体繊維の製糸条件は表1に、前駆体繊維の特性は
表2に、焼成条件および炭素繊維の特性は表3に、それ
ぞれまとめて示した。
【0137】(実施例1)アクリロニトリル(AN)9
9.4モル%とイタコン酸(IA)0.6モル%からな
る共重合体をDMSOを溶剤とした溶液重合法により重
合し、極限粘度が3.4である共重合体の濃度が12.
0重量%の紡糸原液を得た。共重合体液と溶剤は、順に
配置した、目開き1μm、0.6μm、0.2μmのフ
ィルターを通して重合に供した。重合後、pHが9.0
になるまでアンモニアガスを吹き込むことにより、イタ
コン酸を中和してアンモニウム基を共重合体に導入し
た。
【0138】次に紡糸原液を、30℃として直径0.1
0mm、孔数6000の口金を用いて、乾湿式紡糸法に
より、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させ
た後、0℃に温調した、DMSOを35重量%含む水溶
液からなる凝固浴に導き凝固させた。
【0139】得られた凝固糸を水洗した後、延伸浴中で
延伸した。延伸浴には4槽用い、第1浴から10℃づつ
昇温して、第4浴の温度を95℃とした。またこのとき
トータルの延伸倍率は2.5倍とした。単糸間接着を防
止するため、入り側のローラーを浴外に設置した状態と
した。得られた浴延伸糸の膨潤度は95%であった。
【0140】続いて浴延伸糸を、アミノ変性シリコーン
(オイル粘度:7500cst)、エポキシ変性シリコ
ーン(オイル粘度:10000cst)およびエチレン
オキサイド変性シリコーン(オイル粘度:500cs
t)より成るシリコーン系化合物0.4重量%とホウ酸
0.6重量%を含む油剤浴を通過させた。
【0141】さらに、120℃に温調した加熱ローラー
で水分率が0.5重量%以下になるまで乾燥緻密化した
後、アミノ変性シリコーン(オイル粘度:4500cs
t)、エポキシ変性シリコーン(オイル粘度:7000
cst)およびエチレンオキサイド変性シリコーン(オ
イル粘度:200cst)より成るシリコーン系化合物
を2.0重量%含む油剤浴を通過させ、170℃の加熱
ローラーで乾燥緻密化した。引き続き圧力が6kgf/
cm2・Gの水蒸気中で4倍に延伸した後、180℃の
加熱ローラーで乾燥し、単糸繊度が0.49デニールの
前駆体繊維を得た。
【0142】なお凝固浴、水洗、浴延伸などの製糸工程
では、電気伝導度が5μS以下の純水を、目開き0.8
μmのカートリッジフィルターでろ過して使用した。ま
た、熱処理用の加圧水蒸気は目開き1μmの金属繊維焼
結フィルターでろ過した。
【0143】製糸工程では、糸道に囲いを設け、目開き
0.2μmのフィルターでろ過した空気を供給し、0.
3μm以上の粉塵量が1000個/リットル以下になる
ように、環境をクリーン化した。
【0144】得られた前駆体繊維を250〜280℃の
加熱空気中で、延伸比を1.00として繊維比重が1.
34の耐炎化繊維に転換した。さらに耐炎化繊維を窒素
雰囲気の最高温度が800℃を有する前炭化炉で400
〜500℃の温度領域での昇温速度を100℃/分、延
伸比を1.10として前炭化した。次いで窒素雰囲気の
最高温度が1450℃の後炭化炉で1000〜1200
℃の温度領域での昇温速度を200℃/分、延伸比を
0.99として後炭化した。焼成完了後、炭酸アンモニ
ウムの水溶液で10クーロン/g−CFの陽極酸化処理
を行った。
【0145】焼成工程では、耐炎化炉内へ供給する空気
を、目開き0.2μmのフィルターでろ過し、0.3μ
m以上の粉塵量が1000個/リットル以下になるよう
にして環境をクリーン化した。前駆体繊維を前炭化炉に
供給する箇所では、糸道に囲いを設け、同様な方法で、
環境をクリーン化した。
【0146】(実施例2)前駆体繊維の単糸繊度が0.
37デニールになるように紡糸原液の吐出量を調整した
以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。
【0147】(実施例3)前駆体繊維の単糸繊度が0.
29デニールになるように紡糸原液の吐出量を調整した
以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。
【0148】(実施例4)共重合体の極限粘度を2.
7、紡糸原液の共重合体の濃度を14.5重量%とした
以外は実施例2と同様にして炭素繊維を得た。
【0149】(実施例5)前炭化工程における延伸倍率
を1.11とした以外は実施例2と同様にして炭素繊維
を得た。
【0150】(実施例6)共重合体組成を、アクリロニ
トリル(AN)98.8モル%、イタコン酸(IA)
0.6モル%、イソブチルメタクリレート(iBMA)
0.6モル%とし、共重合体の極限粘度を3.3、紡糸
原液の共重合体の濃度を13.0重量%とした以外は実
施例2と同様にして炭素繊維を得た。
【0151】(実施例7)乾燥緻密化前に付与する油剤
にホウ酸を混合しなかった以外は実施例6と同様にして
炭素繊維を得た。
【0152】(実施例8)油剤として、アミノ変性シリ
コーン(オイル粘度:7500cst)、エポキシ変性
シリコーン(オイル粘度:10000cst)、エチレ
ンオキサイド変性シリコーン(オイル粘度:500cs
t)および水溶性シリコーンレジン(日本ユニカー社
製、型番:RZ7703)を適用し、かつ前駆体繊維の
単糸繊度を0.3デニール、前炭化工程における延伸倍
率を1.15とした以外は実施例7と同様にして炭素繊
維を得た。
【0153】(実施例9)共重合体組成を、アクリロニ
トリル(AN)98.8モル%、イタコン酸(IA)
0.6モル%、イソブチルメタクリレ−ト(iBMA)
0.6モル%とし、前駆体繊維の単糸繊度を0.43デ
ニールとした以外は実施例8と同様にして炭素繊維を得
た。
【0154】(比較例1)共重合体組成を、アクリロニ
トリル(AN)94.9モル%、イタコン酸(IA)
0.6モル%、イソブチルメタクリレート(iBMA)
4.5モル%とし、共重合体の極限粘度を3.3、紡糸
原液の共重合体の濃度を13.0重量%とした以外は実
施例2と同様にして炭素繊維を得た。
【0155】(比較例2)共重合体の極限粘度を1.
7、紡糸原液の共重合体の濃度を20.0重量%とし、
浴延伸倍率を3.0倍として前駆体繊維の総延伸倍率を
12.0倍とした以外は実施例2と同様にして炭素繊維
を得た。
【0156】(比較例3)前駆体繊維の単糸繊度を0.
80デニールとした以外は実施例3と同様にして炭素繊
維を得た。
【0157】(比較例4)前駆体繊維の単糸繊度を0.
62デニールとした以外は実施例9と同様にして炭素繊
維を得た。本例では、前炭化工程で若干の毛羽の発生が
認められた。
【0158】(比較例5)前駆体繊維の単糸繊度を0.
20デニールとした以外は実施例9と同様にして前駆体
繊維を得た。本例では、前駆体繊維の製糸工程で毛羽が
発生し、高品質で高配向の前駆体繊維を得ることが困難
であった。
【0159】(比較例6)乾燥緻密化前に付与する油剤
にホウ酸を混合しなかった以外は比較例3と同様にして
炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の単糸径は5.55
μmで、引張強度および引張弾性率は、それぞれ6.9
0GPa、286GPaであり、強度特性はやや低いも
のであった。
【0160】(比較例7)乾燥緻密化前に付与する油剤
として、シリコーン系化合物の濃度2.5重量%、ホウ
酸の濃度0.6重量%の油剤を使用し、乾燥緻密化後に
油剤を付与しなかったこと以外は比較例3と同様にして
前駆体繊維および炭素繊維を得た。前駆体繊維の明度差
ΔLは38と高く、得られた炭素繊維の引張強度および
引張弾性率は、それぞれ7.21GPa、295GPa
であり、強度特性はやや低いものであった。
【0161】(比較例8)製糸・焼成工程の環境クリー
ン化対策を全くとらなかったこと以外は比較例3と同様
にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の引張強度お
よび引張弾性率は、それぞれ6.87GPa、294G
Paであり、大幅な強度特性の低下を示した。
【0162】
【表1】
【表2】
【表3】
【0163】
【発明の効果】本発明により、強度特性が高い炭素繊
維、品位に優れる炭素繊維用前駆体繊維、プリプレグお
よび複合材料を安定かつ安価に得ることができる。
【0164】本発明の炭素繊維から得られる複合材料
は、ILSS、圧縮強度、曲げ強度などの機械的特性に
優れたものであり、従来になく高い強度特性と低価格性
が要求される用途に展開できるようになる。

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均単糸径が5μm未満であり、かつ樹
    脂含浸ストランド引張強度が8GPa以上であることを
    特徴とする炭素繊維。
  2. 【請求項2】 樹脂含浸ストランド引張弾性率が290
    GPa以上であることを特徴とする請求項1記載の炭素
    繊維。
  3. 【請求項3】 試長5mmでの単糸強度が10GPaを
    超える単糸を5%以上含むことを特徴とする請求項1ま
    たは2記載の炭素繊維。
  4. 【請求項4】 単糸破断面の観察によるマクロ欠陥に起
    因する破壊の割合が50%以下であることを特徴とする
    請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維。
  5. 【請求項5】 平均単糸径が4以上5μm未満であり、
    耐炎化遅延元素を50〜1000ppm含むことを特徴と
    する請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維。
  6. 【請求項6】 95モル%以上のアクリロニトリルから
    なるアクリル系共重合体で構成される炭素繊維前駆体繊
    維であって、極限粘度が2.5〜4.0であり、ヨウ素
    吸着による明度差ΔLが5〜35であり、単糸繊度が
    0.25〜0.45デニールであることを特徴とする炭
    素繊維用前駆体繊維。
  7. 【請求項7】 95モル%以上のアクリロニトリルから
    なるアクリル系共重合体で構成される炭素繊維前駆体繊
    維であって、極限粘度が2.5〜4.0であり、ヨウ素
    吸着による明度差ΔLが5〜35であり、単糸繊度が
    0.6デニール以下であり、かつ単糸表層部に耐炎化遅
    延元素の最大濃度部を有することを特徴とする炭素繊維
    前駆体繊維。
  8. 【請求項8】 ヨウ素吸着による明度差ΔLが5〜25
    であり、単糸繊度が0.45〜0.6デニールであるこ
    とを特徴とする請求項7記載の炭素繊維用前駆体繊維。
  9. 【請求項9】 耐炎化遅延元素が、B、Ca、Zr、M
    g、Ti、Y、Cr、Fe、Al、Srおよびランタノ
    イド元素から選ばれた一種以上の元素、もしくはそれを
    含む化合物であることを特徴とする請求項7または8記
    載の炭素繊維用前駆体繊維。
  10. 【請求項10】 X線配向度が90%以上であることを
    特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の炭素繊維前
    駆体繊維。
  11. 【請求項11】 下記(1)式で定義される耐炎化遅延
    元素の単糸内外層濃度比R1が5〜1000であること
    を特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の炭素繊
    維用前駆体繊維。 R1=Co /Ci …(1) Co :SIMSで測定した繊維表面から25nm深さの
    単糸外層の元素カウント数 Ci :SIMSで測定した繊維表面から600nm深さ
    の単糸内層の元素カウント数
  12. 【請求項12】 下記(2)式で定義されるケイ素の単
    糸内外層濃度比R2が1〜10であることを特徴とする
    請求項6〜11のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊
    維。 R2=Co /Ci …(2) Co :SIMSで測定した繊維表面から25nm深さの
    単糸外層の元素カウント数 Ci :SIMSで測定した繊維表面から600nm深さ
    の単糸内層の元素カウント数
  13. 【請求項13】 95モル%以上のアクリロニトリルか
    らなる極限粘度が2.5〜4.0の共重合体を、湿式紡
    糸法または乾湿式紡糸法で紡糸した後、70℃以上の温
    水中で延伸して膨潤度100%以下の糸条を得、その
    後、該糸条にシリコーン系化合物を含む油剤を付与して
    得られる単糸繊度が0.6デニール以下の炭素繊維用前
    駆体繊維を耐炎化した後、炭化することを特徴とする炭
    素繊維の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記炭素繊維用前駆体繊維の単糸繊度
    が0.25〜0.6デニールであることを特徴とする請
    求項13記載の炭素繊維の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記油剤が、耐炎化遅延元素および/
    または該元素を含む化合物を含むことを特徴とする請求
    項13または14記載の炭素繊維の製造方法。
  16. 【請求項16】 シリコーン系化合物が、アミノ変性シ
    リコーンおよびエポキシ変性シリコーンを含むことを特
    徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の炭素繊維
    の製造方法。
  17. 【請求項17】 シリコーン系化合物が、シリコーンレ
    ジンを含むことを特徴とする請求項16記載の炭素繊維
    の製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項1〜5のいずれかに記載の炭素
    繊維を含む複合材料。
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