JP2018141251A - 炭素繊維束およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】破断起点となる欠陥を一定の範囲に制御し、散乱体長さを長くすることで、高引張強度を発現する炭素繊維束、ならびにその製造方法を提供すること。【解決手段】試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下であって、マイクロビームの小角散乱で得られる散乱体長さが46nm以上であることを特徴とする炭素繊維束である。【選択図】なし

Description

本発明は、高性能かつ高品位な炭素繊維束、およびその製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、更なる高性能化と低コスト化両立の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル系炭素繊維は、その前駆体となるポリアクリロニトリル系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維束(以降、前駆体繊維束と略記することがある)を得た後、それを180〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維束へ転換し、少なくとも1000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
炭素繊維は脆性材料であり、わずかな表面欠陥、内在欠陥により引張強度低下を引き起こすため、欠陥の生成に関しては、繊細な注意が払われてきた。原料中の粉塵などの異物を取り除くことは当然のことながら、紡糸溶液が一部滞留、熱劣化することでできたゲル状物を口金から吐出前に取り除くことが引張強度低下だけではなく、口金から吐出時、製糸・焼成工程での糸切れを低減するためにも行われてきた。例えば、5μm以下の開孔径を持つフィルターを用いて濾過する方法(特許文献1参照)や濾過精度が5μm以下の金属焼結フィルターを用いて濾過する方法(特許文献2参照)、開孔径を段階的に小さくして多段濾過する方法(特許文献3参照)が提案されている。さらに、ポリアクリロニトリル系重合体の高分子量化、油剤の2段付与、前駆体繊維の緻密化、製造プロセスのクリーン化ならびに細繊度化を組み合わせることで、欠陥の少ない高い引張強度の炭素繊維を得られることが提案されている(特許文献4参照)。また、クリーン化、緻密化ならびに電解処理による欠陥の除去によって高い引張強度の炭素繊維を得られることが提案されている(特許文献5参照)。
また、炭素繊維の小角X線散乱(以下、SAXSと略記することがある)の0.5〜5°までの積算強度が低い場合に圧縮強度が高まることや(特許文献6参照)、炭素繊維のSAXSの0.5〜3°までの積算強度が低い場合にミクロボイドが低下することで炭素繊維の引張強度が向上することが提案されている(特許文献7参照)。さらに、前駆体繊維束のSAXSの0.4°の散乱強度が前駆体繊維束の乾熱処理により低下し、耐炎化工程での毛羽発生を低下させ、炭素繊維の引張強度が向上することが提案されている(特許文献8参照)。
特開昭58―220821号公報 特開昭59―88924号公報 特開2004―27396号公報 特開平11−241230号公報 特公平8−6210号公報 特開2008―038327号公報 特開2009−256833号公報 特開2000−96353号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2のように単にフィルターの開孔径や濾過精度を小さくする方法では、フィルターの目詰まりが早くなることで圧損が高まり、必ずしも異物を除去しきれずに大きさ50nm以上の欠陥が存在し、引張強度が低下することがある。特許文献3の方法では、多段で濾過を行っているものの、目開きのみで制御しているため、大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が高まる。
また、特許文献4のように細繊度化することで単繊維の表面積を低減し、単位長さあたりの欠陥数を低減する手法は引張強度の向上には有効であるものの、マクロ欠陥の比率が多く、欠陥低減の効果は十分でないこともあった。
特許文献5では電解処理によって炭素繊維表面の欠陥を効果的に除去することができているものの、引張強度レベルが低く、散乱体長さの制御には至っていない。
また、特許文献6は引張強度向上を狙ったものではなく、引張強度が低いことからマクロ欠陥の比率および散乱体長さの制御には至っていない。特許文献7、8においても引張強度レベルが低いため、マクロ欠陥の比率および散乱体長さの制御には至っていなかった。
本発明は、かかる課題を解決すべく、破断起点となる欠陥を一定の範囲に制御し、さらにSAXSで得られる散乱体を長くすることで、高い引張強度を発現する炭素繊維束を得ること、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の炭素繊維束は、試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下であって、マイクロビームの小角散乱で得られる散乱体長さlが46nm以上である炭素繊維束である。
また、かかる炭素繊維束は、以下の工程(A)および(B)により得ることができる。
(A)ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm)と濾材目付C(g/m)を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間)が下記式(1)〜(3)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過する前駆体繊維束の製造工程。
C − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(1)
α = 1−1/(1+exp(7−A)) ・・・(2)
β = 1−1/(1+exp(−0.23×B)) ・・・(3)。
(B)工程(A)で得た前駆体繊維束を、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比が0.98〜1.10の範囲となるまで8〜25分間耐炎化する第1耐炎化工程を行い、さらに、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比を0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1254cm−1ピーク強度の比を0.50〜0.65の範囲となるまで5〜14分間耐炎化する第2耐炎化工程を行って耐炎化繊維束を得て、その後、耐炎化繊維束を1000〜3000℃の不活性雰囲気中で炭素化する炭素化工程。
本発明によれば、引張強度を支配する欠陥が極めて少なく、炭素繊維の微細構造が制御された引張強度を高いレベルで達成できる炭素繊維束が得られる。
図1は炭素繊維の破断面の走査電子顕微鏡(SEM)像である。一点に収束する放射状の条痕が確認される。 図2は図1の破断起点近傍の拡大像である。付着物状の欠陥が確認される。 図3は別の破断面の破断起点近傍の拡大像である。凹み状の欠陥が確認される。 図4は別の破断面の破断起点近傍の拡大像である。50nm以上の目立った形態的特徴は確認されない。 小角散乱で得られる2次元像の解析方法を示す図である。
本発明者らは、欠陥が少ないことと、欠陥があっても引張強度が発現しやすい炭素繊維束であること、およびそれを得るための要件について鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の炭素繊維束は、試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下である。炭素繊維の引張破壊は欠陥を起点として開始することが知られている。炭素繊維の破断起点となる欠陥としては、ボイド、繊維表面の傷、凹み、付着物、あるいは単繊維同士が熱処理の熱で接着して剥がれたあとに残る接着痕など様々なタイプが存在することが広く知られているが、本発明ではこれら全てを特に区別することなく、走査電子顕微鏡(SEM)観察によって破断起点に観察可能な形態的特徴のことをまとめて「欠陥」と総称する。本発明者らが検討した結果、試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率を35%以下とすれば、炭素繊維束の引張強度(特に断りない場合は一方向コンポジット引張強度の一種である樹脂含浸ストランド引張強度のことを指す)が大きく高まることを見いだした。大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましい。ここで重要なことは試長を10mmとすることである。本発明者らの検討の結果、より長い試長、例えば50mm、において、上記と同様に任意の大きさ以上の欠陥の存在する確率を調べても、炭素繊維束の引張強度とは必ずしも相関しないことがわかった。試長を10mmとすることが有効な理由としては、引張強度を支配する試長(一般に有効試長と呼称される)は10mmよりも短いためであると考えられる。試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率を35%以下とすれば、引張強度に影響する欠陥が効果的に低減されており、その結果引張強度が高いレベルのものとなる。
本発明において欠陥は、単繊維引張試験により破断面を回収し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて以下のようにして破断面を観察することにより同定する。単繊維引張試験は、試長を10mmとして、水中において引張速度0.4mm/分で行い、破断面を回収する。本発明において破断面とは単繊維の引張試験によって生成する一次破断面のことであり、一次破断面が形成したあとにその反動によって生じる場合のある二次破断面は含まない。二次破断面の判定方法は後述する。一次破断面を効率的に回収するために、単繊維引張試験は水中で行う。ついで、回収した破断面を、SEMを用いて観察する。本発明においては、50nmという微小な欠陥を高精度に観察するため、表面凹凸の原因となることのある導電性コートは行わず、電界放出型(FE)−SEMを用いて加速電圧1keVで観察する。加速電圧を1keVにすることで、一次電子の試料への侵入深さを抑え、微小な表面凹凸をありのままに観察することが可能となる。加速電圧はさらに小さく設定することもできるが、小さすぎると発生する二次電子の量が減る結果、得られるSEM像の鮮明さが損なわれる場合がある。また、観察倍率は2万5千〜5万倍とする。FE−SEMの観察条件を上記のようにした上で、微小な欠陥を確実に捉えるため、破断起点を斜めから見下ろす角度で観察を行う。具体的には、ステージ操作によって破断起点が手前を向くように調節し、さらに電子線の照射方向と繊維軸とのなす角が25〜30°の範囲になるように破断面を傾斜させることで、破断起点を斜めから見下ろす角度で観察する。さらに、同時に生成する一対の破断面のうち片側に全く形態的特徴がみられないか、大きさが50nm以上の欠陥がみられない場合であっても、もう一方に大きさが50nm以上の欠陥が存在することがあるため、欠陥の数え落としがないよう、必ず両方の破断面を観察することが重要である。そのため、単繊維引張試験において同時に生成する一対の破断面のうち、片方しか回収できなかったものについては観察から除外する。また、統計的に精度の高い評価になるよう、破断面は少なくとも30対、すなわち60本について観察を行うことが必要である。
欠陥の判定方法について説明する。前記のとおり、欠陥には形態的特徴の異なる様々なタイプが存在しその大きさもまちまちであるため、大きさが50nm以上の欠陥が存在する確率を正確に評価するためには、恣意性を極力排除することが不可欠である。本発明においては、以下の基準に従って判定する。まず、先述のように取得したSEM像から破断起点の位置を特定する。炭素繊維は脆性材料であるため、通常、引張破壊させると破断起点から放射状に延びた条痕が形成される。かかる条痕が1カ所で交わる点が破断起点の位置である。これは破壊が繊維内部から生じた場合も、繊維表面から生じた場合であっても共通である。このとき破断起点とは反対側の破断面の表面凹凸が少ないものがあれば、その破断面は二次破断面である可能性が高いため、かかる破断面を含む破断面の対は解析を取りやめ、別の破断面の対を追加でSEM観察することで、少なくとも30対、すなわち60本の破断面が評価されるようにする。次に、破断起点がその周辺と比較して何らかの形態的特徴を有しているか確認する。形態的特徴とは傷や凹み、付着物、その他先述の方法で取得したSEM像においてコントラスト変化として目視可能なもの全てを含む。最後に、形態的特徴の大きさを評価する。本発明においては、形態的特徴の大きさとして、繊維表面と破断面の交差する円周上における形態的特徴の長さを採用する。ボイドなど繊維の表面から離れて存在する欠陥の場合は、これとは別に、SEM像から読み取れる最大の長さを形態的特徴の大きさとする。これらの長さは、SEM像を画像解析ソフトウェアに読み込み、定規ツールに類するツールを用いて評価する。このとき、形態的特徴の大きさが単繊維直径に対して10分の1以下と小さければ、円周に沿った長さの代わりに直線距離で代用することができる。また、形態的特徴が繊維軸方向など円周方向以外の方向に長く続いている場合であっても、繊維表面と破断面の交差する曲線(すなわち、円周)に沿った形態的特徴の長さを、形態的特徴の大きさとする。破断面に条痕が存在しない、破断面に条痕は存在するが破断起点付近が汚れていて観察できない、などの場合、その破断面の対は解析を取りやめ、別の破断面の対を追加でSEM観察することで、少なくとも30対、すなわち60本の破断面が評価されるようにする。このようにして評価した「大きさが50nm以上の欠陥が存在する破断面の対の個数」を「観察した破断面の対の総数」で割ることで、「大きさが50nm以上の欠陥が存在する確率」を算出する。
本発明の、「試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさが50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下の炭素繊維束」を得るには、重合原料や紡糸溶液のろ過や、製糸工程の環境クリーン化、焼成工程の環境クリーン化、接着を抑制する油剤の付与、などの公知の手法だけでは不十分であり、これらの手法に加えて、さらなる欠陥抑制が必要である。本発明者らの検討の結果、後述する方法に従って前駆体繊維束を製造し、それを用いることで、本発明の炭素繊維束が得られることがわかった。ただし、後述する前駆体繊維束の製造方法は例示にすぎず、本発明の炭素繊維束の製造方法を限定するものではない。
本発明の炭素繊維束は、マイクロビームの小角散乱で得られる散乱体長さlが46nm以上であり、好ましくは48nm以上であり、より好ましくは49nm以上である。汎用装置ではSAXSのビーム径が炭素繊維束あるいは単繊維の直径よりも大きいことにより繊維表面由来の強い全反射成分が重畳するため、特に低角度側における空隙構造の精密解析が困難である。そのため、散乱体長さlを高精度に測定するためには単繊維直径(4μm以上)よりも小さなビーム径を有するマイクロビームを用い、繊維表面由来の強い全反射成分を回避することが重要である。マイクロビームの発生手法は特に限定されないが、ピンホールやフレネルゾーンプレートなどの集光工学素子を用いる方法など公知のものを用いることができる。マイクロビームの縦×横方向のビーム強度の半値全幅は、6μm×2μm以下である。全反射とは、入射X線が繊維境界面を透過せず全て反射する現象で散乱強度が極めて大きいため、散乱体に由来する散乱に重畳し、散乱体長さの解析が困難となる。X線源は、汎用装置のCu−Kα線などを用いることもできるが、ビーム径を細くしていることから散乱強度が低くなるため、十分なシグナル/ノイズ比を得るためには放射光X線を用いることが好ましい。マイクロビームは、全反射抑制の観点から単繊維に照射し、中心部に確実に照射するため、繊維軸直交方向に走査しながら複数点測定する。カメラ長はコラーゲンなどの標準物質を用いて公知の方法により求めることができる。高アスペクト比の散乱体長さlを測定するための検出器は、方位角方向の散乱強度の情報が必要となるため2次元検出器を用いる必要がある。2次元検出器の種類は特に限定されないが、2次元半導体検出器PILATUS(リガク製)や、イメージングプレートR−AxisVII(リガク製)などを用いることができる。得られる2次元散乱像からは、公知の方法により空気の散乱を差引く。2次元散乱像の解析には、フリーソフトウェアのFit2dなどを用いることができる。散乱体長さは、Ranの手法(S.Ran et al., Polymer42(2001)1601−1612)の方法を参考に、方位角方向の強度の半値幅Bobs、散乱ベクトルs(nm−1)、散乱体長さl(nm)、散乱体の配向角Bφとして下記式(a)により散乱体長さlを評価する。
obs = 1/l×1/s+Bφ ・・・(a)。
散乱体の構造は炭素繊維内の密度ゆらぎに対応しており、ボイドではなく高密度相に対応していると推定している。また、散乱体長さlが46nm以上であるとき、炭素繊維束の引張強度が高いレベルのものとなる理由については明確に理解できているわけではないが、次のように考えられる。すなわち、炭素繊維単繊維が破断する際に欠陥(初期亀裂)先端から散乱体を迂回して亀裂が進展していくため、亀裂進展経路が複雑である(散乱体長さlが長い)ほど、亀裂が進展するときに多くの応力を必要とする(高い引張強度を発現する)と考えられる。かかる散乱体長さlが46nm以上であれば、欠陥サイズが同等の場合においても引張強度を十分高めることができ好ましい。耐炎化繊維束の赤外スペクトルの値を特定の範囲に制御するように耐炎化温度を制御することで散乱体長さlを制御することができる。
本発明の炭素繊維束は、結晶子サイズLcが好ましくは1.5〜2.6nmであり、より好ましくは1.6〜2.4nmであり、さらに好ましくは1.9〜2.3nmである。炭素繊維は、実質的に無数の黒鉛結晶子から構成された多結晶体であり、炭化処理の最高温度を上げると、結晶子の結晶性が増す。すなわち、炭素網面の再配列が生じ結晶サイズが増し、これと同時に結晶の配向も進むため炭素繊維の引張弾性率が上がる関係にある。結晶子サイズLcが1.5nm以上であれば炭素繊維の引張弾性率を向上することができ好ましい。結晶子サイズLcが2.6nmより大きい場合は引張弾性率が大きく向上するが、引張強度が低下する傾向にある。そのため、引張強度の観点から結晶子サイズLcは2.6nm以下であることが好ましい。結晶子サイズLcは広角X線回折装置を用いた公知の方法により測定できる。結晶子サイズLcは炭素化の最高温度により制御することができる。
本発明の炭素繊維束は、引張強度が7.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは7.7GPa、さらに好ましくは7.9GPaである。ここで、引張強度は炭素繊維束の樹脂含浸ストランド引張試験によって評価した値である。本発明の前駆体繊維束の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維は異物が低減しているため、破壊原因となる欠陥を僅かしか含まない炭素繊維が得られ、先述した特定の焼成工程を通過させることによる引張強度の向上効果が発現しやすく、引張強度が7.5GPa以上の炭素繊維束を得ることができる。
本発明の炭素繊維束の好ましい態様において、樹脂含浸ストランド引張試験における引張弾性率(単に、ストランド弾性率とも略記する。)は好ましくは240〜440GPaであり、より好ましくは280〜400GPaであり、さらに好ましくは310〜400GPaである。引張弾性率が240〜440GPaであれば、引張弾性率と引張強度のバランスに優れるために好ましい。引張弾性率は、後述する<炭素繊維のストランド引張試験>に記載の方法により求めることができる。このとき、歪み範囲を0.1〜0.6%とする。炭素繊維束の引張弾性率は、主に炭素繊維束の製造工程におけるいずれかの熱処理過程で繊維束に張力を付与するか、炭素化温度を変えることにより制御できる。
次に、本発明の炭素繊維束を得るのに好適な炭素繊維束の製造方法について述べる。
本発明の前駆体繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して得られる。本発明で用いられるポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られる単独重合体だけではなく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を用いたポリアクリロニトリル系共重合体であっても良い。
アクリロニトリルと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
前記したポリアクリロニトリル系重合体を、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、硝酸、塩化亜鉛水溶液、ロダンソーダ水溶液などポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒に溶解し、紡糸溶液とする。ポリアクリロニトリル系重合体の製造に溶液重合を用いる場合、重合に用いられる溶媒と紡糸溶媒を同じものにしておくと、得られたポリアクリロニトリル系重合体を分離し、紡糸溶媒に再溶解する工程が不要となり、好ましい。
本発明では、上記したような紡糸溶液を紡糸するに先立ち、フィルター装置に通し、重合体原料および各工程において混入した不純物を除去する。本発明におけるフィルター装置とは、紡糸溶液中に存在する異物を濾過して除去する設備を意味し、濾過処理を施す紡糸溶液をフィルター装置内に導くための流入路と、紡糸溶液を濾過するためのフィルター濾材と、濾過された紡糸溶液をフィルター装置外に導くための流出路と、これらを収納するための容器とより構成される。ここで、フィルター濾材とは、フィルター装置内に収納される紡糸溶液の濾過手段である。
フィルター濾材の形態としては、リーフディスク型、キャンドル型、プリーツキャンドル型などが用いられる。フィルター濾材が一定の曲率を持つキャンドル型、プリーツキャンドル型に対し、リーフディスク型フィルターはフィルター濾材をほぼ平面状に使用できるため、開孔径分布が広がりにくく、洗浄性も維持し易いという利点があり、好ましい。
本発明で使用されるフィルター濾材は、紡糸溶液中に存在する異物を除去するための直接的役割を担う部分であり、定められた開孔径を狭いばらつきで保有することが求められ、加えて、被処理物質に対する化学的安定性と耐熱性とある程度の耐圧性とが要求される。このようなフィルター濾材としては、金属の繊維を織って作製した金網や、ガラス不織布、焼結金属繊維組織よりなるフィルター濾材などが好ましく使用される。また、フィルター濾材の材質は、紡糸溶液に不活性であり、かつ溶媒への溶出成分がなければ特に限定されるものではないが、強度や価格の観点から金属が好ましい。具体的な金属としては、ステンレス鋼(SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等)、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)の他、ニッケル、チタン、コバルトベースの種々合金が選択される。金属繊維の製造方法は、特に多数本の線材を束としてまとめて線引き細径化したのち、各線を分離して線材を細径化するいわゆる集束繊維製造方法や、コイル切削法、ビビリ振動切削法などが挙げられる。金網の場合には、繊維束ではなく、単繊維である必要があるため、伸線と熱処理を繰り返す方法などによって得られる。
紡糸溶液の濾過に際して、濾過精度が小さいほど紡糸溶液中の異物を除去し易くなるが、フィルター濾材の目詰まりが起こり易くなる。また、フィルター厚みが厚くなるほど紡糸溶液中の異物を除去し易くなるが、フィルター濾材での圧力損失が大きくなり、製造プロセスの安定性が低下する。これまで、上記のような傾向は知られていたが、フィルター濾材ごとに最適な濾過条件が異なっており、紡糸溶液の濾過について一般化できる知見は得られていなかった。そのため、フィルター濾材の変更時には、濾過条件の最適化に膨大な時間とコストが必要となっていた。
そこで本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明の別の実施態様として、濾過速度A(cm/時間)とフィルター濾材の濾過精度B(μm) 、濾材目付C(g/m)が下記式(1)〜(3)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過することにより、紡糸溶液中の異物の効率的な除去とフィルターの目詰まり抑制を両立し、安定して高い品質の前駆体繊維束を製造することができることを見出した。
C − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(1)
α = 1−1/(1+exp(7−A)) ・・・(2)
β = 1−1/(1+exp(−0.23×B)) ・・・(3)。
本発明において、濾材目付C(g/m)とはフィルター濾材本体を保護する目的で積層されていることがあるメッシュ層を除く、フィルター濾材本体の総目付のことであり、任意の面積に切り出したフィルター濾材の質量を測定し、この質量を面積で割ることにより算出することができる。
濾材目付Cが大きいほど異物の捕捉率が高まり、逆に小さいほど異物が捕捉しきれずにすり抜けやすくなる。そこで、濾材目付Cが前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制に与える影響を、濾過速度Aおよび濾過精度Bを変更しながら測定したところ、任意の濾過速度および濾過精度において前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制を両立可能な最低の濾材目付(以下、最低濾材目付と記載)が存在することが確認された。本実験結果によると、該最低濾材目付は式(1)の左辺第2項に示すように互いに独立な媒介変数αおよびβを用いて表すことができ、αは式(2)で示される濾過速度Aの関数として、βは式(3)で示される濾過精度Bの関数として定義される。かかるα×βが大きいほど最低濾材目付は小さく、α×βが小さいほど最低濾材目付は大きくなる。個別の変数の動きとしては、濾過速度Aが大きいほどαは小さくなり最低濾材目付としては大きく、濾過速度Aが小さいほどαは大きくなり最低濾材目付としては小さくなる。また、同様に、濾過精度Bが大きいほどβは小さくなり最低濾材目付としては大きく、濾過精度Bが小さいほどβは大きくなり最低濾材目付としては小さくなる。式(1)〜(3)を満足する条件で濾過を行うことで、前駆体繊維束の品質の向上とフィルターの目詰まり抑制が両立できるメカニズムは必ずしも明らかになったわけではないが、次のように考えられる。すなわち、濾過精度が小さいほど異物がフィルター濾材中の流路に引っかかりやすく、効果的に異物を捕捉することができる反面、フィルターが目詰まりしやすくなるが、濾過速度が十分小さいと、圧損によるフィルター濾材中における異物の変形ならびに広がりが抑制されるため、フィルター濾材中の流路が目詰まりしにくくなるものと考えられる。
また、本発明においては、濾過精度B(μm)が下記式(4)を満たすことが好ましい。
B≧3 ・・・(4)。
濾過精度Bが3以上である場合、フィルターの目詰まり抑制をより効果的にすることができる。この現象の理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。濾過速度Aを小さくすることで異物の変形を抑えられ、異物の変形によってフィルター濾材中の流路が完全に塞がることを抑制できるが、濾過精度Bの値が大きいほど濾過圧力が低くなり易く、異物の変形度合いが小さくなるため、フィルター目詰まり抑制効果が現れ易くなる。
本発明では、上述のようにして濾過した紡糸溶液を湿式、または乾湿式紡糸法により紡糸することにより、前駆体繊維束を製造する。特に、乾湿式紡糸法が好ましく用いられる。
紡糸溶液を凝固浴中に導入して凝固させ、得られた凝固糸を、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を通過させることにより、前駆体繊維束が得られる。また、上記の工程に乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えても良い。凝固糸は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことが好ましい。
このようにして得られた前駆体繊維束が含む単繊維の平均繊度は、0.5〜1.5dtexであることが好ましい。単繊維繊度を0.5dtex以上とすることで、ローラーやガイドとの接触による糸切れ発生を抑え、製糸工程および炭素繊維束の焼成工程のプロセス安定性を維持することができる。また、単繊維繊度を1.5dtex以下とすることで、耐炎化後の各単繊維における内外構造差を小さくし、続く炭素化工程でのプロセス性や得られる炭素繊維束の引張強度および引張弾性率を向上させることができる。
得られる前駆体繊維束は、通常、連続繊維の形状である。また、その1糸条あたりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜36,000本である。
本発明の前駆体繊維束は異物が減少した、高品位な前駆体繊維束となっているため、焼成工程(具体的には、耐炎化処理、予備炭素化処理、および炭素化処理を行う工程)において高いプロセス安定性を維持でき、高品位な炭素繊維束を得ることが可能である。さらに、以下に述べる焼成工程を通過させることにより、異物減少による引張強度向上効果を最大化することができる。具体的には、前駆体繊維束を耐炎化工程に供する際に、得られた耐炎化繊維が、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルの1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1のピーク強度の比が0.50〜0.65の範囲になるように制御することが好ましい。赤外スペクトルにおける1453cm−1のピークはアルケン由来であり、耐炎化の進行とともに減少していく。1370cm−1のピークと1254cm−1のピークは耐炎化構造(それぞれナフチリジン環および水素化ナフチリジン環構造と考えられる。)に由来するピークであり、耐炎化の進行とともに増加していく。得られた耐炎化繊維の比重が1.35の場合に、1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が、0.63〜0.69程度である。耐炎化工程においては、ポリアクリロニトリルに由来するピークをなるべく減少させて炭化収率を高めるようにすることが一般的であるが、本発明の好ましい様態ではあえて多くのアルケンを残すように、耐炎化工程の条件を設定する。このような構造を有する耐炎化繊維を予備炭素化工程に供することにより、得られる炭素繊維束の引張強度を効果的に高めることができる。さらに、1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1のピーク強度の比が0.50〜0.65となるように耐炎化条件を設定することも好ましい態様である。1254cm−1のピークは耐炎化が不十分な部分で多く見られ、明確な理由は明らかではないが、この構造が多いと、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。かかるピーク強度比は耐炎化の進行とともに減少していき、特に初期の減少が大きいが、耐炎化条件次第では、時間を増やしてもかかるピーク強度比が0.65以下とならないこともある。
この2つのピーク強度比を目的の範囲内で両立させるためには、基本的には、前駆体繊維束を構成するポリアクリロニトリル系重合体に含まれる共重合成分の量が少ないこと、前駆体繊維束の繊度を小さくすること、および耐炎化温度を後半に高くすることに主に注目して条件設定すればよい。赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比が0.98〜1.10の範囲となるまで熱処理し(第1耐炎化工程)、続いて、第1耐炎化工程よりも高い温度で、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1453cm−1のピーク強度の比を0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルにおける1370cm−1のピーク強度に対する1254cm−1ピーク強度の比が0.50〜0.65の範囲となるまで耐炎化時間を5〜14分、好ましくは5〜10分として熱処理(第2耐炎化工程)することが好ましい。第2耐炎化工程の耐炎化時間を短くするためには耐炎化温度を高く調整すればよいが、適切な耐炎化温度はポリアクリロニトリル前駆体繊維束の特性に依存する。炭素繊維束中心温度が好ましくは280〜310℃、より好ましくは280〜300℃、さらに好ましくは285〜295℃になるようにすることが、上述の赤外スペクトルの範囲に制御するために好ましい。耐炎化温度は一定である必要はなく、多段階の温度設定でも構わない。得られる炭素繊維の引張強度を高めるためには、耐炎化温度は高く、耐炎化時間を短くすることが好ましい。第1耐炎化工程は、耐炎化時間が好ましくは8〜25分、より好ましくは8〜15分で、上述の範囲となるような耐炎化温度で耐炎化することが好ましい。
ここで述べる耐炎化時間とは耐炎化炉内に繊維束が滞留している時間を意味し、耐炎化繊維束とは予備炭素化前の繊維束を意味する。また、ここで述べるピーク強度とは、耐炎化繊維を少量サンプリングして赤外スペクトルを測定して得られたスペクトルをベースライン補正した後の各波長の吸光度のことであり、特にピーク分割などは行わない。また、試料の濃度は0.67質量%となるようにKBrで希釈して測定する。このように、耐炎化条件設定を変更するたびに赤外スペクトルを測定して、後述の好ましい製造方法にしたがって試行錯誤的に条件検討すればよい。耐炎化繊維の赤外スペクトルピーク強度比を適切に制御することで、炭素繊維の引張強度を制御することができる。
本発明において、耐炎化とは空気中の酸素雰囲気濃度±5質量%の酸素雰囲気濃度で200〜400℃で熱処理することをいう。
本発明において、耐炎化のトータルの処理時間は、好ましくは13〜20分の範囲で適宜選択することができる。また、得られる炭素繊維束の引張強度を向上させる目的から、得られる耐炎化繊維束の比重が好ましくは1.28〜1.32、より好ましくは1.30〜1.32の範囲となるように耐炎化の処理時間を設定する。より好ましい耐炎化の処理時間は耐炎化温度に依存する。耐炎化繊維束の比重は1.28以上なければ炭素繊維束の引張強度が低下することがあり、耐炎化繊維束の比重が1.32以下であれば引張強度を高めることができる。耐炎化繊維束の比重は耐炎化の処理時間と耐炎化温度により制御する。また、第1耐炎化工程から第2耐炎化工程に切り替えるタイミングは比重1.21〜1.23の範囲とすることが好ましい。この際も赤外スペクトルでの規定範囲を優先して制御する。これらの耐炎化の処理時間や耐炎化温度の好ましい範囲は前駆体繊維束の特性やポリアクリロニトリル系重合体の共重合組成によって変化する。
耐炎化工程において、前駆体繊維束の比重が1.22以上であって、かつ、220℃以上で熱処理される間に繊維に与えられる熱量の積算値を、好ましくは50〜150J・h/g、より好ましくは70〜100J・h/gとするのがよい。耐炎化工程後半に与えられる熱量の積算値をかかる範囲に調整することで、得られる炭素繊維の引張強度を高めやすい。熱量の積算値は、耐炎化温度T(K)と耐炎化炉の滞留時間t(h)、およびポリアクリルニトリル系前駆体繊維束の熱容量1.507J/g・℃を用いて、下式により求めた値である。
熱量の積算値(J・h/g)=T×t×1.507
ここで耐炎化工程に温度条件が複数ある場合には、各温度での滞留時間から熱量を計算して、積算すればよい。
耐炎化工程で得られた繊維束を予備炭素化する予備炭素化工程においては、得られた耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度500〜1000℃において熱処理することが好ましい。予備炭素化工程の延伸倍率は0.9〜1.3であるのがよく、好ましくは1.1〜1.2である。かかる温度領域では、延伸処理による炭素繊維束のマクロ欠陥が生じにくく、予備炭素化工程の延伸倍率が0.9以上であれば散乱体長さを大きくできるため、結果として炭素繊維束の引張強度を高めることができる。予備炭素化工程の延伸倍率が1.3以下であれば予備炭素化繊維束に高い張力がかかることによる炭素繊維束のマクロ欠陥の発生を抑制できるため、結果として炭素繊維束の引張強度を高めることができ好ましい。
予備炭素化された繊維束を不活性雰囲気中、最高温度1000〜3000℃において炭素化するのが好ましい。炭素化工程の温度は、得られる炭素繊維のストランド弾性率を高める観点からは、高い方が好ましいが、高すぎると引張強度が低下する場合があり、両者を勘案して設定するのがよい。より好ましい温度範囲は1200〜2000℃であり、さらに好ましい温度範囲は、1200〜1600℃である。
以上のようにして得られた炭素繊維束は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。液相電解酸化の方法については特に指定はなく、公知の方法で行えばよい。
かかる電解処理の後、得られた炭素繊維束に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、複合材料に使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<炭素繊維束の引張強度・引張弾性率>
炭素繊維樹脂含浸ストランドの引張弾性率、引張強度および応力−ひずみ曲線は、JIS R7608(2008)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。引張弾性率Eは歪み範囲0.1〜0.6%の範囲で測定し、初期弾性率は歪み0における応力−ひずみ曲線の傾きから求めた。なお、試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維束に含浸し、130℃の温度で35分間熱処理の硬化条件により作製した。
[樹脂組成]
・3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100質量部)
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)
・アセトン(4質量部)。
また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の算術平均値をその炭素繊維束の引張弾性率および引張強度とした。なお、後述の実施例および比較例においては、上記の3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレートとして、セロキサイドP2021P(ダイセル製)を用いた。ひずみは伸び計を用いて測定した。
<耐炎化繊維の比重>
1.0〜3.0gの繊維を採取し、120℃で2時間絶乾した。次に絶乾質量A(g)を測定した後、エタノールに含浸させ十分脱泡してから、溶媒浴中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求めた。
<赤外スペクトルの強度比>
測定に供する耐炎化繊維は、凍結粉砕後に2mgを精秤して採取し、それをKBr300mgと良く混合して、成形用治具に入れてプレス機を用いて40MPaで2分間加圧することで測定用錠剤を作製した。この錠剤をフーリエ変換赤外分光光度計にセットし、1000〜2000cm−1の範囲でスペクトルを測定した。なお、バックグラウンド補正は、1700〜2000cm−1の範囲における最小値が0になるようにその最小値を各強度から差し引くことで行った。なお、上記フーリエ変換赤外分光光度計として、パーキンエルマー製Paragon1000を用いた。
<大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率>
JIS R7606(2000年)に準じて単繊維引張試験を実施し、破断面を回収した。このとき、試長は10mmとし、試験片台紙への炭素繊維の固定には市販のシアノアクリレート系の瞬間接着剤を用い、水中で実施できるように設計した試験冶具を用いて、A&D社製テンシロン「RTC−1210A」により実施した。また、試験に供する単繊維本数は50本を1セットとし、両側の破断面が30組以上回収できなかった場合は、さらに50本からなる1セットを追加で実施し、両側の破断面を30組以上回収した。なお、引張試験の際の歪速度は0.4mm/分とした。このようにして回収した破断面を、日立ハイテクノロジーズ社製の走査電子顕微鏡(SEM)「S−4800」を用いて観察した。観察前に導電性付与のための蒸着処理は行わず、加速電圧は1keV、倍率は2万5千〜5万倍として観察した。また、微小な欠陥の有無を判別しやすくするために、破断起点が手前を向くようステージを回転させ、ステージを30°傾斜させることで破断起点を斜め上方から観察した(図1〜4を参照)。なお、観察は前記のように回収した破断面の組から、30組を無作為に選んで行った。
炭素繊維の引張破壊による一次破断面には、破断起点から放射状に破壊が進展した痕跡が、放射状の条痕として残るため、SEM観察像に存在する条痕を辿っていき一点に収束する部分が破断起点と特定した(図1)。条痕が認識できないものや、条痕は認識できたが破断起点付近に汚れが付着しており観察が難しいものが、両側の破断面のいずれか一方にでも存在した場合、かかる破断面は組ごと評価から除外した。除外することで減った破断面は適宜補充し、最終的に30組の破断面が観察されるようにした。破断起点が特定できたら、そこに何らかの形態的特徴が見られるか調べた。形態的特徴としては付着物(図2)や凹み(図3)、繊維表面が一部剥離したような跡、傷、接着痕、など様々なタイプが存在するが、繊維の円周方向に沿って測定した長さ、つまり本発明における大きさが50nm以上のものは外観の違いによらず一律に“大きさ50nm以上の欠陥が存在する破断面”に分類した。なお、50nm以上の目立った形態的特徴が確認されなかった(すなわち“大きさ50nm以上の欠陥が存在する破断面”に分類されなかった)例を、図4に示した。
これを両側の破断面に対して行い、いずれか一方でも“大きさ50nm以上の欠陥が存在する破断面”に分類された場合、その組は“大きさ50nm以上の欠陥が存在する破断面”とした。これをSEM観察した30組の破断面全てに対して行い、“大きさ50nm以上の欠陥が存在する破断面”の総数を、SEM観察した破断面の組の総数である30で割って100を掛けることで、“大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率”を算出した。
<散乱体長さlの測定>
散乱体長さlは、SPring−8のビームラインBL03XUにて測定した。フレネルゾーンプレートにより集光したマイクロビームを用いた走査SAXSにより測定した。単繊維に、波長0.13nm、縦、横方向のビーム強度の半値全幅がそれぞれ3.1μm、1.2μmのマイクロビームX線をビームの長軸が単繊維長手方向に一致するように照射した。測定は、繊維軸直交方向に1μmステップで15点測定し、繊維中心部の2点を採用することを3回行い、計6点の繊維中心部データを積算したものを解析に供した。2次元半導体X線検出器PILATUS(リガク製、ピクセルサイズ172μm)で検出した。コラーゲンの回折から補正したカメラ長は648mmであった。得られた2次元散乱像を、Ranの手法(S.Ran et al., Polymer42(2001)1601−1612)により解析し、散乱体長さlを導出した。解析はフリーソフトウェアのFit2dにより行った。単繊維中心部から得られた2次元散乱像から、試料を設置せずに取得した2次元散乱像(エアブランク)を1:1で引き算することで炭素繊維中心部の2次元散乱像を得た。繊維軸中心付近に照射できた2次元散乱像を重ね合わせ、図5に示すように2θ方向に0.05°刻みで0.3〜2.0°の範囲まで、方位角方向へ180°分の強度を取得した。0.3〜2.0°それぞれの方位角方向の散乱強度分布を擬Voigt関数によりフィッティングし、半値全幅Bobsを得た。式(2)のように2θ=0.35〜0.95°の範囲において式(1)で得られる散乱ベクトルs(nm−1)の逆数に対して半値幅Bobsをプロットしたときの傾きの逆数から散乱体長さl(nm)を算出した。ここで切片Bφは散乱体の配向角である。
s=2×sinθ/0.1305 ・・・(1)
obs = 1/l×1/s+Bφ ・・・(2)。
<結晶子サイズLcの測定>
測定に供する炭素繊維を引き揃え、広角X線回折装置を用いて、次の条件により測定を行った。
・X線源:CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=10〜40°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.01°、スキャン速度1°/min。
得られた回折パターンにおいて、2θ=25〜26°付近に現れるピークについて、半値全幅を求め、この値から、次のシェラー(Scherrer)の式により結晶子サイズを算出した。
結晶子サイズ(nm)=Kλ/βcosθ
ただし、
K:1.0、λ:0.15418nm(X線の波長)
β:(βE−β 1/2
β:見かけの半値全幅(測定値)rad、β:1.046×10−2rad
θ:Braggの回折角
である。なお、上記広角X線回折装置として、XRD―6100(島津製作所製)を用いた。
[実施例1]
アクリロニトリルとイタコン酸からなる共重合体を、ジメチルスルホキシドを溶媒として溶液重合法により得て、紡糸溶液とした。その紡糸溶液をフィルター装置に流入させ、濾過を行った。使用したフィルター濾材は、濾過精度Bが1μm、濾材目付Cが2500g/mの金属焼結フィルターであり、濾過速度Aが3cm/時間の濾過条件で濾過した。
濾過された紡糸溶液を、孔数3000の紡糸口金から一旦空気中に吐出し、空間を通過させた後、ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸し凝固糸とした。また、その凝固糸を水洗した後、90℃の温水中で3倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにシリコーン油剤を付与し、160℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥を行い、5倍の水蒸気延伸倍率条件で加圧水蒸気延伸を行い、単繊維繊度0.8dtexの前駆体繊維束を得た。紡糸条件ならびに用いたフィルターのスペックを表1に示す。
得られた各前駆体繊維束を、それぞれ表2に示す耐炎化温度および耐炎化時間の条件を用いて、空気雰囲気のオーブン中で、延伸比1で延伸しながら耐炎化処理した。第1炉耐炎化後の繊維束および耐炎化繊維束の特性は表2に示す通りであった。得られた耐炎化繊維束を、温度300〜800℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.1で延伸しながら予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維束を得た。得られた予備炭素化繊維束を、窒素雰囲気中において、最高温度1500℃、張力14mN/dTexで炭素化処理を行った。
[実施例2]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材目付Cが6400g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例1と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[比較例1]
フィルター濾材を、濾過精度Bが10μm、濾材目付Cが3200g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例1と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[実施例3]
濾過条件において、濾過速度Aを6cm/時間に変更した他は、実施例1と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[比較例2]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材目付Cが6400g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例3と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[実施例4]
フィルター濾材を、濾過精度Bが9μm、濾材目付Cが12800g/mの金属焼結フィルターに変更した他は、実施例3と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[比較例3]
濾過条件において、濾過速度Aを12cm/時間に変更した他は、実施例3と同様にして前駆体繊維束および炭素繊維束を得た。
[実施例5〜11]
実施例4と同様にして得た前駆体繊維束を表2に示す条件で実施例1と同様に炭素化して炭素繊維束を得た。
[比較例4〜9]
実施例4と同様にして得た前駆体繊維束を表2に示す条件で実施例1と同様に炭素化して炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束に、表面処理およびサイジング剤塗布処理を行って最終的な炭素繊維束としたものの物性および品位を表3に示す。表3から読み取れるように、比較例1〜3では散乱体長さは46nm以上であったが、大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が36%以上であり、引張強度が7.5GPa以上の炭素繊維束が得られなかった。比較例4〜9では、大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下であったが、散乱体長さが46nm以下であり、引張強度が7.5GPa以上の炭素繊維束が得られなかった。

Claims (7)

  1. 試長を10mmとして単繊維引張試験を実施した際に、回収した破断面に大きさ50nm以上の欠陥が存在する確率が35%以下であって、マイクロビームの小角散乱で得られる散乱体長さlが46nm以上である炭素繊維束。
  2. 結晶子サイズ(Lc(nm))が1.5〜2.6nmである、請求項1に記載の炭素繊維束。
  3. 以下の工程(A)および(B)を含む、請求項1または2に記載の炭素繊維束の製造方法。
    (A)ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、紡糸に先立ち、濾過精度B(μm)と濾材目付C(g/m)を有するフィルター濾材を用い、濾過速度A(cm/時間)が下記式(1)〜(3)を満足する条件で、紡糸溶液を濾過する炭素繊維前駆体繊維束の製造工程
    C − 600/(α×β) ≧ 0 ・・・(1)
    α = 1−1/(1+exp(7−A)) ・・・(2)
    β = 1−1/(1+exp(−0.23×B)) ・・・(3)
    (B)工程(A)で得た炭素繊維前駆体繊維束を、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比が0.98〜1.10の範囲となるまで8〜25分間耐炎化する第1耐炎化工程を行い、さらに、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1453cm−1ピーク強度の比を0.70〜0.75の範囲、かつ、赤外スペクトルの1370cm−1ピーク強度に対する1254cm−1ピーク強度の比を0.50〜0.65の範囲となるまで5〜14分間耐炎化する第2耐炎化工程と、該耐炎化工程で得たれた繊維束を最高温度500〜1000℃の不活性雰囲気中で延伸倍率を0.9〜1.3として予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた繊維束を最高温度1000〜3000℃の不活性雰囲気中で炭素化する炭素化工程
  4. 濾過精度B(μm)が下記式(4)を満たす、請求項3に記載の炭素繊維束の製造方法。
    B≧3 ・・・(4)
  5. 耐炎化のトータルの処理時間を13〜20分の範囲とする、請求項3または4に記載の炭素繊維束の製造方法。
  6. 耐炎化中の繊維の比重が1.22以上の範囲において220℃以上の空気中で熱処理される際に与えられる熱量の積算値が50〜150J・h/gの範囲内となるように耐炎化する、請求項3〜5のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
  7. 耐炎化繊維束の比重が1.28〜1.32の範囲となるように耐炎化する、請求項3〜6のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
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