JP2000160436A - 炭素繊維、及び炭素繊維用プリカーサーの製造方法 - Google Patents

炭素繊維、及び炭素繊維用プリカーサーの製造方法

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JP2000160436A
JP2000160436A JP33945098A JP33945098A JP2000160436A JP 2000160436 A JP2000160436 A JP 2000160436A JP 33945098 A JP33945098 A JP 33945098A JP 33945098 A JP33945098 A JP 33945098A JP 2000160436 A JP2000160436 A JP 2000160436A
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yarn
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Makoto Kobayashi
真 木林
Masashi Ise
昌史 伊勢
Tomihiro Ishida
富弘 石田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高性能かつ安価な複合材料を製造するのに好適
な、強度と樹脂接着性に優れる炭素繊維、及び炭素繊維
用プリカーサーの製造方法を提供すること。 【解決手段】表面積比が1.02〜1.09である炭素
繊維、及び、湿式紡糸法において、膨潤度が50量%以
上である糸条を4倍以下で延伸する工程を含む、炭素繊
維用プリカーサーの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強度と樹脂との接
着性を両立し、かつコストパフォーマンスに優れた炭素
繊維、及び炭素繊維用プリカーサーの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は他の繊維に比べて優れた比強
度及び比弾性率を有するため、その軽量性と、優れた機
械的特性を利用して樹脂と共に複合材料を製造する際の
補強材として工業的に広く利用されている。近年、炭素
繊維強化複合材料の優位性はますます高まり、特にスポ
ーツ、航空宇宙用途において、炭素繊維と、炭素繊維強
化複合材料に対する、さらなる高性能化が要求されてい
る。
【0003】炭素繊維は、その殆どが、その表面に存在
する微小な欠陥(以下、表面欠陥と略記)が開始点とな
って破断しており、そのため、炭素繊維の高性能化を図
るためには、かかる表面欠陥の生成を極力抑えるよう、
製造工程において配慮する必要がある。表面欠陥を、発
生後に除去する方法としては、特開昭58−21452
7号公報、特開昭61−225330号公報に、炭素繊
維に気相処理、液相処理、電解酸化処理などの後処理を
施すことにより、表層部分をエッチング処理して表面欠
陥を強制除去する方法が提案されている。
【0004】しかし、これら方法によれば、得られる炭
素繊維の強度は向上するものの、操作、工程が非常に煩
雑となり、製造コストも大幅に上昇するため、実際の生
産技術としては採用が困難であった。炭素繊維は、高性
能化とともに、一層の低価格化への要望も大きく、コス
トパフォーマンスの高い炭素繊維でないと市場に受け入
れられないというのが現状である。
【0005】湿式紡糸法により、炭素繊維用プリカーサ
ーを製造する場合は、湿式紡糸法に特徴的に発生するフ
ィブリル構造の凹凸部から破断が開始し、強度を損なっ
ている場合が多い。そこで特開昭62−141124号
公報には、乾湿式紡糸法を採用して、凝固張力を下げる
ことによりかかる凹凸部を低減する方法が提案されてい
る。
【0006】しかし、この方法によれば、得られる炭素
繊維の強度は向上するものの、繊維表面の凹凸部が減少
することによって、樹脂との接着性が低下し、補強繊維
としての炭素繊維の特性を存分に発揮できない場合があ
った。
【0007】一方、近年、エネルギー関連用途として、
電力需要の平準化や無停電電源用に高い性能を有するフ
ライホイールが、二酸化炭素の排出削減のため、圧縮天
然ガス(CNG)自動車が開発されつつあり、各々ロー
ター、ガス貯蔵用タンクの素材として炭素繊維の採用が
予定されている。
【0008】これら用途は主に炭素繊維の、優れた引張
強度特性を利用するものであるが、ローターでは高速回
転時に半径方向に遠心力で膨張変形し、繊維と樹脂を引
き剥がそうとする力に耐えるため、また、ガス貯蔵用タ
ンクでは、ガスの充填と放出による繰り返し疲労後の特
性の悪化や、物体が衝突した後の残存強度の劣化を防止
するため、それぞれ引張強度と共に樹脂との高い接着性
が要求されている。
【0009】上記事情を背景として、高い引張強度を有
しながら、樹脂との高い接着性を確保した炭素繊維と、
該炭素繊維が安価かつ容易に得られる製造方法が強く要
望されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、通常
はトレードオフの関係である、炭素繊維の引張強度と樹
脂との接着性を高いレベルで両立しながら、かつコスト
パフォーマンスにも優れる炭素繊維、及び炭素繊維用プ
リカーサーの製造方法を提供することにある。さらに
は、かかる炭素繊維を使用することにより、強度特性に
優れた炭素繊維強化複合材料を製造することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の炭素繊維は、上
記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、
表面積比が1.02〜1.09である炭素繊維である。
【0012】また、本発明の炭素繊維用プリカーサーの
製造方法は、上記課題を達成するために次のいずれかの
構成を有する。すなわち、湿式紡糸法において、糸条を
紡出した後、その膨潤度が50〜300重量%である状
態で4倍以下で延伸し、その後乾燥緻密化して得られる
ことを特徴とする炭素繊維用プリカーサーの製造方法、
又は、湿式紡糸法において、糸条を紡出した後、その膨
潤度を225重量%以下に保持した状態で延伸し、その
後乾燥緻密化して得られることを特徴とする炭素繊維用
プリカーサーの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】発明者らは、炭素繊維の表面形態
に着目し、その制御を適切に行うことによって、通常は
相反する特性である、0゜引張強度に代表される強度特
性(以下、単に強度と略記)と層間剪断強度に代表され
る樹脂との接着性(以下、単に樹脂接着性と略記)とを
両立できることを見出し、本発明に至った。
【0014】本発明の炭素繊維は、乾湿式紡糸法によっ
て得られるような表面が非常に平滑な炭素繊維と、湿式
紡糸法によって得られるような表面に凹凸部を多く有す
る炭素繊維との中間の表面形態を有するものである。す
なわち、本発明の炭素繊維は、高い強度を有するという
前者の特徴と、高い樹脂接着性を有するという後者の特
徴を兼ね備えた、高い性能を有するものである。以下、
本発明について詳細に説明する。
【0015】本発明の炭素繊維は、表面積比が1.02
〜1.09であることを特徴とするものである。従来、
表面が平滑と云われる炭素繊維の表面積比は、通常、1
以上1.02未満の範囲にあり、かかる炭素繊維は、強
度には優れるが、樹脂接着性に劣っていた。一方、表面
に凹凸部が多いと云われる炭素繊維の表面積比は、通
常、1.09を超えるものであり、樹脂接着性には優れ
るが、強度に劣っていた。 そこで、発明者らが鋭意検
討を重ねた結果、表面積比が1.02〜1.09の範囲
にある炭素繊維が、強度と樹脂接着性を高いレベルで両
立することが判明した。表面積比は、1.025〜1.
08であれば、強度と樹脂接着性の両立に当たり好まし
い結果が得られる。かかる観点より、表面積比は、より
好ましくは1.03〜1.07、さらに好ましくは1.
035〜1.06が良い。
【0016】表面積比の他に、炭素繊維の表面形態を定
量化する指標として、三次元粗さの二乗平均粗さRqが
採用できる。この指標によれば、強度と樹脂接着性の両
立に当たり、Rqは10〜24nmが良く、好ましくは
13〜23nm、より好ましくは16〜22nmが良
い。
【0017】また、本発明による炭素繊維の引張強度に
ついては、炭素繊維強化複合材料(以下、単に複合材料
と略記)の性能を高めるために、5.5GPa以上であ
ることが好ましく、より好ましくは5.7GPa以上、
さらに好ましくは6GPa以上、特に好ましくは6.5
GPa以上であることが良い。引張強度は、10GPa
程度あれば本発明の効果を奏するに充分であることが多
い。また、本発明における炭素繊維のILSSは、複合
材料の特性を高めるために、90MPa以上であること
が好ましく、より好ましくは92MPa以上、さらに好
ましくは94MPa以上、特に好ましくは96MPa以
上であることが良い。ILSSは、120MPa程度あ
れば本発明の効果を奏するに充分であることが多い。
【0018】本発明による炭素繊維は、アクリル系、ピ
ッチ系、レーヨン系などいずれの由来でも良い。特に、
アクリル系の炭素繊維用プリカーサー(以下、単にプリ
カーサーと略記)を、後述するような望ましい方法と条
件により紡糸して得た後、焼成して得られるものであ
る。紡糸法としては、湿式紡糸法が好ましいが、乾湿式
紡糸法や乾式紡糸法でも良い。本発明において焼成と
は、製糸工程で得られたプリカーサーを、耐炎化に引き
続いて予備炭化及び炭化して最終生産物たる炭素繊維と
する一連の処理をいう。以下にプリカーサーを湿式紡糸
法により製造する方法を例として、本発明の炭素繊維の
製造方法について説明する。
【0019】プリカーサーの原料としては、アクリロニ
トリルを85重量%以上含み、アクリロニトリルと共重
合可能な重合性不飽和単量体を15重量%以下含む重合
体が好適に使用される。重合性不飽和単量体の具体例と
しては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及び
それらのアルカリ金属塩、並びにアクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、及びそれらのアンモニウム塩、並び
にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びそれら
のアルキルエステル類、並びにアクリルアミド、メタク
リルアミド及びそれらの誘導体、並びにアリルスルホン
酸、メタリルスルホン酸及びそれらの塩類、並びにアル
キルエステル類などが挙げられる。
【0020】耐炎化反応を促進するためには、前記重合
性不飽和単量体に不飽和カルボン酸などを共重合させる
のが良い。その共重合量は、重合体全体に対して、0.
1〜10重量%が良く、好ましくは0.3〜5重量%、
より好ましくは0.5〜3重量%が良い。不飽和カルボ
ン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イ
タコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、
マレイン酸、メサコン酸などが挙げられ、中でもアクリ
ル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましい。
【0021】得られる炭素繊維の強度を極力向上させる
ためには、前記重合性不飽和単量体に不飽和カルボン酸
のアルキルエステル、酢酸ビニルから選ばれた1種以上
を共重合させるのが良い。その共重合量は、重合体全体
に対して、0.1〜10重量%が良く、好ましくは0.
3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%が良
い。不飽和カルボン酸のアルキルエステルの具体例とし
ては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタク
リル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イ
ソブチル、メタクリル酸セカンダリーブチルなどを挙げ
ることができるが、その中でもアクリル酸、メタクリル
酸のプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチ
ルエステルが好ましい。
【0022】重合体を得る際の重合法としては、懸濁重
合法、溶液重合法、乳化重合法など、を採用することが
できる。重合体の重合度としては、極限粘度(以下、
[η]と略記)基準で、1以上が良く、好ましくは1.
25以上、より好ましくは1.5以上が良い。なお、
[η]は高々5以下とするのが紡糸安定性の点から好ま
しい。
【0023】かかる重合体を溶媒に溶解してなる重合体
溶液を紡糸原液として用いる。重合体溶液に使用する溶
媒としては、有機、又は無機の溶媒が使用できるが、紡
糸原液を、口金を介して直接凝固浴中へ紡出する湿式紡
糸法による場合は、有機溶媒が好ましい。具体的には、
ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルアセトアミドなどが挙げられる。硝酸、ロダンソーダ
水溶液、塩化亜鉛水溶液などの無機塩の濃厚水溶液をで
ある無機溶媒を用いると、所望する表面形態の炭素繊維
を得られないときがある。
【0024】凝固浴中に紡出後、糸条を水洗しないで直
接、延伸浴中で延伸しても良いし、溶媒を水洗して除去
した後に延伸浴中で延伸しても良い。かかる延伸浴は、
通常、50〜98℃に温調された温水からなり、また前
記溶媒の濃度が0重量%から凝固浴の濃度までの範囲に
なるよう設定される。
【0025】本発明において、得られる炭素繊維の表面
形態に最も影響を及ぼすのは、プリカーサーを製造する
製糸工程、特に乾燥緻密化前の糸条が膨潤状態にあると
きに延伸する条件であるため、これに特に注意する必要
がある。
【0026】乾燥緻密化前に、浴中で糸条が膨潤状態に
あるときの延伸倍率が高過ぎると、糸条表面の凹凸部の
発現が過剰となる傾向があるため、目標とする適切な表
面形態を有する炭素繊維を得るには、乾燥緻密化前の糸
条の膨潤度が50〜300重量%にある状態で、延伸倍
率を4倍以下として延伸することが必要である。より高
い強度を有する炭素繊維を得るために、かかる延伸倍率
は、好ましくは3倍以下、より好ましくは2.5倍以
下、さらに好ましくは2倍以下とするのが良い。
【0027】かかる延伸倍率は、少なくとも1.1倍程
度ないと、プリカーサーの製造工程全体での延伸性を確
保できなくなることがある。
【0028】従来、かかる延伸倍率を低くすると、生産
性が低下し製造コストが上昇するため、延伸倍率を低く
する条件は採用し難いものがあったが、後述するように
乾燥緻密化後の延伸倍率を適正化することによって、プ
リカーサーの製造工程全体での延伸性は意外にも低下す
ることなく、生産性の低下や製造コスト上昇を伴わずに
高い性能を有する炭素繊維を得ることができる。
【0029】また、延伸浴中での糸条の延伸倍率が高め
の場合、糸条の膨潤度が上昇する領域が認められ、かか
る領域において糸条表面の凹凸部が多く発生しており、
かかる状態の糸条を延伸すると、プリカーサー及び炭素
繊維における表面の凹凸部の発現が顕著となることが判
明した。したがって、所望する適切な表面形態を有する
炭素繊維を得るには、延伸浴中での糸条の膨潤度を、延
伸する際に225重量%以下に保持し、かかる表面の凹
凸部の発現を抑制することが必要である。かかる糸条の
膨潤度は215重量%以下が好ましく、205重量%以
下がより好ましい。なお、ホットローラーとの接触によ
る加熱などによって特別に乾燥操作を施すことなく糸条
の膨潤度を50重量%未満とするのは現状では困難であ
る。
【0030】延伸浴の温度が高めの場合は、入り側ロー
ラーによる熱圧着のため、単繊維間の接着が起こり易い
ため、入り側ローラーは延伸浴から外に出すのが良い。
また、単繊維間での弱い接着を解除するために、延伸浴
中に振動ガイドを設けて、糸束を振動させながら延伸す
るのが良い。その際の振動数としては、5〜100Hz
が良く、振幅は0.1〜10mmが良い。
【0031】また、本発明によるプリカーサーは、従来
の湿式紡糸法により得られるプリカーサーと比較して表
面が平滑なため、乾燥緻密化時や焼成工程において単糸
間接着が発生し易いため、乾燥緻密化に先立って、糸条
にシリコーン油剤を付与するのが良い。ここで、シリコ
ーン油剤は、エマルジョンの形態で付与するのが好まし
い。また、アルキレンオキサイド変性シリコーンをシリ
コーン油剤に含ませるのが、乳化安定性を高める観点か
ら好ましい。アルキレンオキサイド変性シリコーンにつ
いては、エチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイ
ド変性、又は両者で変性されているものが好ましい。ア
ルキレンオキサイドで変性することによって、シリコー
ン油剤に適度な親水性が付与され、自己乳化性を付与し
て界面活性剤に類似する機能を持たせることができる。
【0032】かかる処理により、シリコーン油剤に、水
中における安定性や糸条表面への均一な付着性など、望
ましい特性が生じるものと考えられる。また、シリコー
ンのアルキレンオキサイドによる変性量は、10〜80
重量%が良く、好ましくは20〜70重量%が良い。1
0重量%未満では、自己乳化性が不足することがあり、
また、80重量%を超えると耐熱性が低下することがあ
る。
【0033】アルキレンオキサイドのユニット(=繰り
返し単位)数は、シリコーン油剤の耐熱性を確保する観
点から、25個以下が好ましい。また、シリコーンは分
子量が大きい程、即ち動粘性率が大きい程、耐熱性が向
上するため、25℃における動粘性率は100cSt以
上のものが良く、好ましくは200cSt以上、より好
ましくは300cSt以上のものが良い。なお、動粘性
率が10000cStを超えると水中に分散させること
が困難になる場合がある。
【0034】さらにアルキレンオキサイド変性シリコー
ンに加え、アミノ変性シリコーン又は/及びエポキシ変
性シリコーンを組み合せることもできる。
【0035】アミノ変性シリコーンについては、モノア
ミン型でもポリアミン型でも良い。ここでアミノ基は側
鎖に導入されていても良く、また、分子鎖末端に導入さ
れていても良いが、分子鎖末端のみの変性の場合、変性
量が小さくなることがある。さらには側鎖と分子鎖末端
の両方に導入されていてもよい。アミノ変性シリコーン
は分子量が大きい程、即ち動粘性率が大きい程、耐熱性
が向上するため、25℃における動粘性率が1000c
St以上のものが良く、好ましくは2000cSt以
上、より好ましくは3000cSt以上のものが良い。
また、変性基の末端アミノ基を−NH2 と換算した変性
量は、0.05〜10重量%が良く、好ましくは0.1
〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%が良い。
0.05重量%未満では糸条との親和性が不足すること
があり、10重量%を超えると耐熱性が低下することが
ある。
【0036】エポキシ変性シリコーンについては、グリ
シジル基でも脂環式エポキシ基でも良いが、糸条との親
和性を確保する観点から、1、2−エポキシシクロヘキ
シル基や1、2−エポキシシクロペンチル基のような脂
環式エポキシ変性が好ましい。ここでエポキシ基は側鎖
に導入されていても良く、また、分子鎖末端に導入され
ていても良い。さらには側鎖と分子鎖末端の両方に導入
されていてもよいが、分子鎖両側の末端に導入されてい
るものが、エポキシ基の反応性の観点から好ましい。エ
ポキシ変性シリコーンは、分子量が大きい程、即ち動粘
性率が大きい程、耐熱性が向上するため、25℃におけ
る動粘性率が100cSt以上のものが良く、好ましく
は500cSt以上、より好ましくは1000cSt以
上のものが良い。エポキシ変性シリコーンの末端エポキ
シ基を−CHCH2 Oと換算した変性量は、0.05〜
10重量%が良く、好ましくは0.1〜5重量%、より
好ましくは0.2〜3重量%が良い。0.05重量%未
満では糸条との親和性が不足することがあり、10重量
%を超えると耐熱性が低下することがある。
【0037】アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリ
コーンとを組み合わせる場合は、それらの混合比率はそ
れぞれの変性量によっても最適点が異なるが、アミノ基
とエポキシ基のモル数が当量に近い状態が良い。ここで
エポキシ変性シリコーンよりアミノ変性シリコーンの比
率が高めの方が、糸条との親和性とシリコーン油剤の耐
熱性を高める観点から好ましい。したがって、アミノ変
性シリコーンとエポキシ変性シリコーンとの重量比は
1:10〜100:1が良く、好ましくは1:3〜3
0:1、より好ましくは1:2〜10:1、さらに好ま
しくは1:1〜3:1が良い。
【0038】糸条に付与するシリコーン油剤の耐熱性は
高い程良い。したがって、かかるシリコーン油剤の加熱
残存率rは、20重量%以上が良く、好ましくは30%
以上、より好ましくは40%以上が良い。現状では加熱
残存率rを90%を超えるようにすることは困難であ
る。加熱残存率rの測定は、後述する方法による。
【0039】また、シリコーン油剤の糸条への付着量
は、糸条の乾燥重量当たり0.2〜2重量%になるよう
付与するのが良い。好ましくは0.4〜1.6重量%、
より好ましくは0.6〜1.2重量%が良い。
【0040】糸条に油剤を付与する方法には、浸漬法、
キスローラー法、ガイド給油法、油剤浴中の駆動・非駆
動ローラーによる方法、固定・非固定のガイドバーへ走
行する糸条を掛けて付与する方法、上方へ吹き出した油
剤中に糸条を走行させて付与する方法、走行する糸条へ
上方から油剤を滴下させて付与する方法、油剤液を噴霧
した空間に糸条を走行させて付与する方法、又はこれら
を複数組み合わせた方法など、多様な付与方法があり、
これら方法から糸条の種類や用途に応じて適宜選択する
ことができる。
【0041】ここで、シリコーン油剤の量が多すぎる
と、得られる炭素繊維に充分な樹脂接着性が得られない
場合があるため、付与するシリコーン油剤の量は必要最
小限に止め、前記付与方法により糸条へ均一に付与する
よう配慮するのが好ましい。
【0042】糸条への油剤の均一付着性をより高めるた
めには、前記方法により油剤を付与した後に、糸条がフ
リーローラーとなす接触角の総和が8π以上になるよう
に、ジグザグに複数個配置して並べたフリーローラーで
糸条を搬送させることが有効である。かかる接触角の総
和は、大きいほど効果が高く好ましいが、設備コストの
低減及び省スペースを図るため、16π以下とするのが
実用的である。
【0043】次いで、浴中延伸後の糸条を、ホットドラ
ムなどで乾燥することによって乾燥緻密化する。ここで
の乾燥温度、所要時間などは適宜選択することができ
る。
【0044】また、必要に応じて乾燥緻密化後の糸条
を、加圧スチーム中で延伸するなどして、より高温の環
境で延伸するのが好ましい。
【0045】乾燥緻密化後の延伸倍率は、乾燥緻密化前
の延伸倍率を従来法と比較して低下させているため、極
力高くする方がプロセス性の観点から好ましい。したが
って、かかる延伸倍率は、3倍以上が良く、好ましくは
4倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは
6倍以上が良い。なおかかる延伸倍率は10倍程度有れ
ば、本発明の効果を奏するに充分であることが多い。
【0046】乾燥緻密化により、膨潤糸表面に存在する
多孔質のフィブリル構造は、膨潤糸内部のボイドの消失
により無構造化するため、乾燥緻密化後に再延伸を行っ
ても表面の凹凸部は発達せず、乾燥緻密化の時点そのま
まの表面構造が維持される。
【0047】さらに乾燥緻密化後の糸条にシリコーンス
トレート油剤を付与するのが好ましい。シリコーンスト
レート油剤は、焼成工程において耐炎化に先立って付与
することもできる。シリコーンストレート油剤とは、油
剤全体に対する含水比率を10重量%以下としたシリコ
ーン油剤をいう。含水比率が10重量%を超えると、油
剤付与後に乾燥工程が必要となる場合があり好ましくな
い。
【0048】高い強度を有する炭素繊維を得るために
は、緻密性の高いプリカーサーを用いることが有効であ
る。かかるプリカーサーは、緻密性の尺度となる、ヨウ
素吸着法による明度差ΔLが、45以下のものが良く、
好ましくは35以下、より好ましくは30以下のものが
良い。ΔLが45以下の緻密性の高いプリカーサーを得
るためには、紡糸原液の高濃度化、紡糸原液もしくは凝
固浴液の低温化、又は凝固時の低張力化などにより凝固
糸の膨潤度を低く抑えると共に、浴延伸時に延伸する段
数、延伸倍率及び延伸温度の最適化などにより浴延伸後
の糸条の膨潤度を低く抑えるのが好ましい。乾燥緻密化
後のスチーム延伸時に糸条に架かる張力を下げることに
よっても得られるプリカーサーの緻密性を向上させるこ
とができる。
【0049】前記明度差ΔLについては、次に示す方法
により測定できる。よく乾燥させたプリカーサーを、繊
維長5〜7cmとして約0.5g精秤し、200mlの
共栓付三角フラスコに採り、これにヨウ素水溶液(ヨウ
素:51g、2、4−ジクロロフェノール10g、酢酸
90g及びヨウ化カリウム100gを、1lのメスフラ
スコを使用して水で溶解させたもの)100mlを加え
て、60℃、50分間振盪しながら、ヨウ素をよく繊維
中に吸着させる。ヨウ素を吸着した繊維を流水中で約3
0分間水洗後、遠心脱水(2000rpm×1分)して
直ちに風乾せしめる。さらに繊維を開繊後、ハンター型
色差計(ここでは、カラーマシン(株)製、CM−25
型を使用)で、L値(明度)を測定する。これをL1
する。一方、ヨウ素の吸着のない繊維を開繊後、前記の
色差計で測定した明度を、Loとして、両者の差分(L0
−L1)を明度差ΔLとする。プリカーサーは、炭素繊
維の強度向上の観点から引き続く耐炎化工程で焼成ムラ
を起こさないよう細繊度とするのが良い。プリカーサー
の単繊維繊度としては1.5d(d:デニール)以下が
良く、好ましくは1d以下、より好ましくは0.8d以
下が良い。
【0050】また、プリカーサーは、続く焼成工程にお
ける毛羽立ち、糸切れなどを防止して無撚の焼成を工程
通過性良く行うため、フックドロップ長が20cm以下
であるのが良い。フックドロップ長は、好ましくは15
cm以下、より好ましくは10cm以下が良い。
【0051】上述のような製造プロセスを経ることによ
り、所定の繊度、配向度を有するプリカーサーが得ら
れ、焼成後に所望の表面形態を有する炭素繊維を得るこ
とができる。
【0052】耐炎化条件としては、酸化性雰囲気中20
0〜300℃の範囲で、緊張又は延伸する条件が好まし
く採用され、繊維の比重が1.25以上、好ましくは
1.3以上になるまで耐炎化するのが良い。この比重に
ついては、1.6以下とするのが一般的であり、これを
超えると、炭素繊維の性能が損なわれることがある。ま
た、耐炎化工程における雰囲気については、空気、酸
素、二酸化窒素、塩化水素などの各酸化性雰囲気を採用
できるが、空気雰囲気がローコストであり、好ましい。
【0053】耐炎化糸の糸束や単糸内部に耐炎化ムラが
存在すると、炭素繊維の強度や引張弾性率が低下した
り、炭化工程のプロセス性に悪影響を及ぼすときがあ
る。かかる耐炎化ムラを観測する手段として、プリカー
サーの耐炎化ムラが増加するにつれ、そのギ酸への溶解
度(以下、ギ酸溶解度と略記)が高くなることを利用し
て、かかる溶解度が0.1〜5重量%となるように耐炎
化するのが良い。溶解度は、3重量%以下であること
が、高性能の炭素繊維を得るに当たって好ましく、2重
量%以下であることがより好ましい。
【0054】固体微粒子がプリカーサー表面に存在する
と、単繊維間に空間が生じ易くなり、糸束内への酸素の
拡散向上に有効であり、ギ酸溶解度を低下させることが
できる。かかる固体微粒子の径としては、0.05〜5
μmが良く、好ましくは0.07〜3μm、より好まし
くは0.1〜1μmが良い。固体微粒子の材質として
は、有機系の化合物又はシリコーン化合物のいずれでも
良いが、硬さが硬すぎず、プリカーサーに傷を与えにく
い有機系の微粒子が好ましい。かかる有機系の材質の中
で、特に架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリスチ
レンが好ましい。これら微粒子は、耐炎化工程の前に、
プリカーサー表面に均一に付与するのが好ましく、乳化
剤により水系のエマルジョンとしてシリコーン油剤に混
合して付与するか、又は、油剤付与後に、別途、乳化剤
と混合して噴霧又は滴下することにより、付与するのが
好ましい。この際の乳化剤としては、ノニオン系界面活
性剤が好ましい。
【0055】耐炎化を完了した糸条は、常法により、不
活性雰囲気中で炭化する。ここでの雰囲気温度は、得ら
れる炭素繊維の性能を高める観点から、1000℃以上
が良く、1400℃以上が好ましい。さらに必要に応じ
て2000℃以上で炭化して、黒鉛化繊維とすることも
できるが、強度は低下することがある。また、ボイドな
ど、炭素繊維内部の欠陥の少ない、緻密性の高い炭素繊
維を得るために、350〜500℃及び1000〜12
00℃における昇温速度は、500℃/分以下が良く、
好ましくは300℃/分以下、より好ましくは150℃
/分以下が良い。昇温速度が10℃/分以下では生産性
が低下してしまう。さらにまた、炭素繊維の緻密性を向
上させるためには、350〜500℃において、1%以
上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上延
伸するのが良い。なお、40%を超える延伸は毛羽が発
生し易くなるため好ましくない。比較的分解発生物が多
い600〜1000℃までの低温部分とそれ以上の温度
領域の複数の炉に分けて炭化することが、炭素繊維の物
性向上、プロセス性向上の観点から好ましい。また、上
述したような、プリカーサーに付与されるシリコーン
は、架橋していることが、より高い性能の炭素繊維を得
るに当たって好ましい。
【0056】こうして得られた炭素繊維は、電解液中で
電解酸化処理を施したり、気相又は液相での酸化処理に
よって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂
との親和性や、樹脂接着性を向上させることができる。
【0057】特に、短時間で酸化処理することができ、
酸化処理のコントロールも容易なことから電解酸化処理
が好ましい。電解酸化処理の電解液としては酸性、アル
カリ性、いずれも採用できる。酸性の電解液に溶存させ
る電解質の具体例としては、硫酸、硝酸などの無機酸、
酢酸、酪酸などの有機酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素
アンモニウムなどの塩が挙げられる。中でも強酸性を示
す硫酸、硝酸が好ましく使用できる。アルカリ性の電解
液に溶存させる電解質の具体例としては、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、アンモニア、炭
酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩類、酢
酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機塩類、さ
らにこれらのカリウム塩、バリウム塩又は他の金属塩、
及びアンモニウム塩、水酸化テトラエチルアンモニウム
又はヒドラジンなどの有機化合物が挙げられるが、樹脂
の硬化障害を防止する観点から、アルカリ金属を含まな
い炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テ
トラアルキルアンモニウム類が好ましく使用できる。
【0058】通電する電気量は、炭素繊維の炭化度に応
じて最適化することができる。表層の結晶性の低下を適
度に抑える観点から、かかる電気量は3〜500クーロ
ン/g、さらには5〜200クーロン/gの範囲とする
のが好ましい。
【0059】電解酸化処理の後、糸条を水洗及び乾燥す
るのが良い。乾燥に際しては、温度が高過ぎると炭素繊
維の最表面に存在する官能基が熱分解により消失しやす
いため、乾燥温度はできる限り低くするのが望ましく、
250℃以下、好ましくは210℃以下で乾燥するのが
良い。
【0060】さらに、必要に応じて常法により、サイジ
ング剤を付与することもできる。また、本発明による炭
素繊維は、その拡がり性指数が20〜40であることが
良い。拡がり性指数は、好ましくは25〜40、より好
ましくは30〜40であることが良い。拡がり性指数
は、繊維目付当たりの糸の拡がり幅を示しており、この
値が高い程、均一な性能の複合材料を製造でき、炭素繊
維の優れた性能を、複合材料の特性に反映し、かかる特
性を高めることができる。拡がり性指数が20を下回る
と、均一な特性の複合材料が得難くなり、工程におい
て、十分な糸幅を確保するために高い圧力で拡幅するこ
とにもなり、糸を損傷する原因ともなる。拡がり性指数
が40を超えると、炭素繊維の集束性が不足し、複合材
料を成型する際のハンドリング性が悪くなることがあ
る。
【0061】拡がり性指数を適正な範囲とするために
は、プリカーサーを実質的に無撚の状態で焼成するのが
好ましい。実質的に無撚の状態とは、プリカーサーに1
ターン/mを超える撚りが存在しないことを意味する。
かかる撚りは、好ましくは、0.5ターン/m以下が良
い。プリカーサーに1ターン/mを超える撚りが存在す
ると、適正な拡がり性指数を有する炭素繊維を得るのが
困難になることがあるだけでなく、前記ギ酸溶解度が高
くなり、糸束内部における耐炎化反応が不均一になるこ
ともある。
【0062】本発明による炭素繊維は、樹脂含浸ストラ
ンドにおける引張弾性率が200GPa以上のものが良
く、好ましくは220GPa以上、より好ましくは24
0GPa以上、さらに好ましくは280GPa以上のも
のが良い。また必要に応じてさらに高い引張弾性率の炭
素繊維とすることもできるが、かかる引張弾性率を、黒
鉛の理論値である1020GPa程度とするのは現状で
は困難である。引張弾性率が200GPa未満である
と、複合材料とした場合、所望の特性が得られないとき
があり好ましくない。
【0063】また、本発明による炭素繊維は、SIMS
により求まる、繊維表面から50nmの深さ部における
SiとCとの原子数比(Si/C)が1以下であること
が良い。これにより、表層のSiを減少して強度を向上
させるとともに、高い樹脂接着性を得ることができる。
かかる原子数比(Si/C)は、0.5以下であること
が好ましく、0.2以下であることがより好ましい。シ
リコーン油剤を工程で使用する場合、かかる原子数比
(Si/C)を0.001以下とするのは現状では困難
である。
【0064】また、本発明による炭素繊維は、ESCA
により求まる、繊維表面におけるSiとCとの原子数比
(Si/C)が0.01以下であることが良い。これに
より、表面のシリカを減少して樹脂接着性を向上させる
ことができる。かかる原子数比(Si/C)は、0.0
07以下であることが好ましく、0.004以下である
ことがより好ましい。かかる原子数比(Si/C)の、
ESCAの検出限界は、現状、0.001程度である。
【0065】このような方法で得られた炭素繊維を、常
法により、マトリックスと組み合わせて、中間基材であ
るプリプレグや、最終生産品である複合材料とすること
ができる。マトリックスとして使用する樹脂としては、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビ
ニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロ
ピレン樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。また、マト
リックスには、前記樹脂以外に、セメント、金属、セラ
ミックスなどを使用することもできる。
【0066】プリプレグは、炭素繊維を一方向に引き揃
えた樹脂含浸シート、すなわち、一方向プリプレグとし
て使用でき、また、予め炭素繊維を織物にしておいてか
ら、樹脂含浸する織物プリプレグとしても使用できる。
【0067】複合材料は、前記プリプレグを任意の方向
に積層して硬化せしめることによって製造でき、また、
直接樹脂を含浸しながら巻き付けるフィラメントワイン
ド法によっても製造できる。さらに、複合材料は、予め
炭素繊維をチョップドファイバーにカットしておき、樹
脂と混練しながら押し出す、長繊維を樹脂と共に引き抜
く、シートモールデイングコンパウンド(SMC)法、
又は、チョップドファイバーなどに一旦加工した後に、
ハンドレイアップ法、プレス成形法、オートクレーブ
法、プルトルージョン法などの方法により製造すること
もできる。
【0068】前記複合材料は、航空機の一次・二次構造
材料、ゴルフシャフト、釣竿、スノーボード、スキース
トックなどのスポーツ用品、ヨットのマスト、舟艇のハ
ルなどのマリーン用品、フライホイール、CNGタン
ク、風車、タービンブレードなどのエネルギー関連の一
般産業用途、道路・橋脚などの補修・補強材、カーテン
ウォールなどの建築用材料として用いることができる
が、中でもエネルギー関連用途のフライホイール、CN
Gタンクなどに、高度の耐破壊特性と耐繰り返し疲労特
性を有する本発明による複合材料の利点を活かして、好
適に用いることができる。
【0069】なお、後述する実施例においては、各物性
値は以下に示す方法で測定した。<炭素繊維の表面積比
>測定する炭素繊維を長さ数mm程度にカットし、銀ペ
ーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、Di
gital Instruments社製 NanoScope IIIa原子間力顕微
鏡(AFM)においてDimension 3000ステージシステム
を使用し、下記条件にて、単糸の中央部について3次元
表面形状の像を得る。
【0070】・走査モード:タッピングモード ・探針:オリンパス光学工業製Siカンチレバー一体型
探針OMCL-AC120TS ・走査範囲:2.5μm×2.5μm ・走査速度:0.4Hz ・ピクセル数:512×512 ・測定環境:室温、大気中 各試料について、単糸1本から1箇所ずつ観察して得ら
れた像について、前記装置に付属のソフトウエア(Nano
Scope IIIバージョン4.22r2)によりデータ処理し、1
次Flattenフィルタ、Lowpassフィルタ、3次Plane Fit
フィルタを用いてフィルタリングし、得られた像全体を
対象として実表面積と投影面積を算出する。なお、投影
面積については、繊維断面の曲率を考慮し近似した3次
曲面への投影面積とする。表面積比は次式で求める。各
試料について、任意に選んだ5箇所について上記の測定
を行い、最大値、最小値を除いた3カ所の相加平均値を
最終的な表面積比とする。 表面積比=実表面積/投影面積
【0071】<三次元粗さの二乗平均粗さRq>上記の
方法に従いAFMにより得られた原像について、前記装
置に付属のソフトウエアによりデータ処理し、繊維断面
の曲率を考慮した3次元近似曲面を求める。原像からこ
の3次元近似曲面をバックグラウンドとして差し引き、
二乗平均粗さを求める。任意の5箇所について同様の測
定を行い、最大値、最小値を除いた3カ所の相加平均値
を最終的な三次元粗さの二乗平均粗さRqとする。
【0072】<炭素繊維の引張強度、引張弾性率>測定
する炭素繊維に、ユニオン・カーバイド(株)製 、ベ
ークライト(登録商標)ERL−4221を1000g
(100重量部)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン
(BF3・MEA)を30g(3重量部)及びアセトン
を40g(4重量部)混合した樹脂組成物を含浸させ、
次に130℃で、30分間加熱して硬化させ、樹脂含浸
ストランドを得る。樹脂含浸ストランド試験法(JIS
R7601)により引張強度と引張弾性率を求める。
【0073】<ILSS>油化シェルエポキシ社製、エ
ピコート(登録商標)1001を3.5kg(35重量
部)、同社製、エピコート828を2.5kg(25重
量部)と大日本インキ化学工業社製、エピクロン(登録
商標)N740を3.0kg(30重量部)、油化シェ
ルエポキシ社製、エピコート152を1.5kg(15
重量部)、電気化学工業社製、デンカホルマール(登録
商標)#20を0.8kg(8重量部)とジクロロフェ
ニルジメチルウレア0.5kg(5重量部)を混合し、
30分間撹拌して樹脂組成物とし、これをシリコーンを
塗布した離型紙にコーティングして樹脂フィルムとす
る。
【0074】次いで、表面温度が60〜70℃になるよ
う加熱した、周囲約2.7mの鋼製円形ドラムに、上記
樹脂フィルムを巻き付け、次にクリールスタンドから巻
き出した炭素繊維を、トラバースを介して上記円形ドラ
ムで巻き取りながら該樹脂フィルム上に配列せしめ、さ
らにその上から前記樹脂フィルムで再度被覆した後、加
圧ロールで回転加圧して樹脂を繊維束の内部に含浸せし
め、ドラムの回転数とトラバースの送り速度を適宜変更
しながら、繊維目付が約200g/m2 、樹脂量が約3
5重量%のプリプレグを作製する。このプリプレグを繊
維方向が同一になるよう積層後、約2.9×105Pa
の加圧下、135℃、2時間硬化せしめて巾200m
m、長さ250mm、厚み2mmの複合材料片を得る。
この材料片から、巾12.7mm、長さは厚みの7倍と
したものを試験片として切り出し、これを通常の3点曲
げ試験治具を用い、支持スパンを試験片肉厚の4倍、歪
速度を1.27mm/分とした条件下で、破断荷重を測
定する。このn=8の平均値を破断荷重値とし、次式に
より求める。 ILSS(MPa)=0.75×(破断荷重値)/{(試験片
厚み)×(試験片幅)}
【0075】<0゜引張強度>ASTMのD3039−
76に従って測定する。ILSSの測定法と同様にして
プリプレグを作製する。このプリプレグを繊維方向が同
一になるよう積層後、約2.9×105Paの加圧下、
135℃、2時間硬化せしめて巾200mm、長さ25
0mm、厚み1mmの複合材料片を得る。ゲージ長を1
27mmとしてその両側に長さ約50mmのガラス繊維
複合材料からなる厚み約1mmのタブを貼り付け、この
材料片から、巾12.7mm、長さ230mmの試験片
を切り出し、これを通常の引張試験治具を用い、歪速度
2mm/分で、破断荷重を測定する。また、繊維体積分
率Vfを60%とし、得られた値より次式により0゜引
張強度を求める。 0゜引張強度=(破断荷重)×60/{(試験片厚み)
×(試験片幅)×(繊維体積分率Vf)} ここで、破断荷重は、6個の試験片について測定した平
均値であり、繊維体積分率Vf(%)は次式より求まる
ものである。 繊維体積分率Vf(%)=10×Y×p×n/(d×
t) ここで、 Y:炭素繊維目付(g/m) p:プリプレグ作成時の炭素繊維本数密度(本/cm) n:試験片作成時のプリプレグ積層数 d:炭素繊維密度(g/cm3) t:試験片厚さ(mm)
【0076】<表面から50nmの深さ部におけるSi
とCとの原子数比(Si/C)>SIMSにより測定す
る。測定する炭素繊維を整列させ、真空環境下、下記測
定装置、測定条件で、繊維の側面から一次イオンを照射
し、発生する二次イオンを測定し、得られる炭素繊維の
表面から50nmの深さ部における、ケイ素のカウント
数と炭素のカウント数との比を(Si/C)とする。
【0077】・装置:ドイツATOMIKA社製 A-DIDA3000 ・一次イオン種:O2+ ・一次イオンエネルギー:12keV ・一次イオン電流:100nA ・ラスター領域:250×250μm ・ゲート率:30% ・分析領域:75×75μm ・検出二次イオン:正イオン ・電子スプレー条件:0.6kV−3.0A(F7.
5) ・測定時真空度:1×10-6Pa ・H−Q−H:#14
【0078】<繊維表面におけるSiとCとの原子数比
(Si/C)>ESCAにより測定する。測定する炭素
繊維についてはサイジング剤が付着している場合は、次
に示す前処理方法でサイジング剤を除去する。
【0079】メタノールとクロロホルムの2:1(重量
比)の混合液を用いてソックスレー抽出器で2時間環流
後、12時間、室温で硫酸に浸漬後、メタノールで充分
洗浄、風乾する。続いて、下記測定装置、測定条件で、
100eV付近に観察されるSi2PのピークとC1Sピー
クとのピーク面積比を求め、次に示す装置の装置定数
0.814を測定値に乗じて原子数比(Si/C)とす
る。
【0080】・装置:島津製作所製、ESCA750 ・励起X線:MgのKα1、2線 ・C1Sメインピークの結合エネルギー値:284.6e
【0081】<フックドロップ長>予め長さ約3cm、
直径約0.5mmのステンレス製針金を、円弧部の直径
が5mmになるように、フック状に折り曲げ、その一端
に5gの重りをつけたものを用意する。
【0082】測定するプリカーサーを約1m採取し、一
端を固定後、もう一端に単繊維本数12000本当たり
500gの重りをつけ、適当な場所で垂下する。
【0083】前記フック部をプリカーサー上部の固定端
から5cm下の糸束中心に差し入れ静かに放し、フック
部が自重で鉛直方向に落下後、静止するまでズレ落ちた
移動距離を測定する。少なくとも10回の測定を行い、
その相加平均値をフックドロップ長とする。
【0084】<油剤の加熱残存率r>測定する油剤試料
を約1g、直径が約60mm、高さが約20mmのアル
ミ製の容器に採取し、オーブンで105℃、5時間乾燥
する。得られた物質を空気中240℃で120分、次い
で窒素中450℃で30分、次に示す条件下で熱天秤
(TG)により測定し、熱天秤におけるトータルの重量
保持率を加熱残存率rとする。 ・試料パン:アルミニウム製、直径5mm、高さ5mm ・試料量:15〜20mg ・空気中熱処理(手順1) 空気流量:30ml/分 昇温速度:10℃/分(範囲:室温〜240℃) 熱処理時間(240℃):120分 ・雰囲気変更(手順2) 240℃のまま空気から窒素へ変更して5分間保持 ・窒素中熱処理(手順3) 窒素流量:30ml/分 昇温速度:10℃/分(範囲:240〜450℃) 熱処理時間(450℃):30分
【0085】<糸条の膨潤度>乾燥緻密化前の膨潤糸約
10gを測定試料とする。延伸脱水機を用いて、300
0rpmで15分間、表面付着水分を強制除去した後の
重量w(g)と、さらにこれを110℃で2時間熱風乾
燥機で乾燥した後の重量w0(g)から、次式により糸
条の膨潤度を求める。 糸条の膨潤度(%)=(w−w0)×100/w0
【0086】<耐炎化糸のギ酸溶解度>測定する耐炎化
糸約2.5gを熱風オーブンなどで120℃、2時間乾
燥した後、乾燥後の重量を精秤し、Gp(g)とする。
200ccのビーカーに乾燥後の試料を入れ、純度90
〜100%のギ酸を100cc注ぎ、そのまま25℃で
100分間、振盪し処理する。この後、試料を取り出
し、流水中で60分間、次に90℃の温水中で2時間洗
浄する。さらに、120℃で2時間乾燥した後、乾燥後
の重量を精秤し、Gl(g)とする。得られた値より、
次式によりギ酸溶解度(%)を求める。 ギ酸溶解度(%)={(Gp−Gl)/Gp}×100
【0087】<重合体の[η]>測定するアクリル系重
合体の乾燥試料75mgを25mlのメスフラスコに入
れ、0.1Nチオシアン酸ソーダ−ジメチルホルムアミ
ド溶液を標線まで加えて完全に溶解した後、オストワル
ド粘度計を用いて25℃で比粘度ηspを測定する。比粘
度ηspから、次式により[η]を求める。 [η]={(1+1.32ηsp1/2−1}/0.19
【0088】<耐炎化糸の炎収縮保持率>測定する耐炎
化糸を約40cm採取し、試長20cmとなるようにク
リップなどの不燃物で2点マークを付する。次に、一端
を固定し、もう一端から3000d当たり10gの張力
を架け、糸条をブンゼンバーナー炎で加熱する。この
際、ブンゼンバーナーへの空気供給を調節し還元性の黄
色い炎を発生させ、マーク間を約15秒/20cmの速
さで1往復半移動させ加熱する。加熱後のマーク間の糸
条の長さをWb(mm)とし、次式により炎収縮保持率
(%)を求める。 炎収縮保持率(%)=(Wb/200)×100
【0089】<炭素繊維の拡がり性指数>単繊維本数が
3000本以上の炭素繊維束を試料とし、単繊維本数1
2000本当たり1000gfの張力でクリールスタン
ドより巻き出し、油化シェルエポキシ社製、エピコート
(登録商標)828を含浸せしめた後、離型紙で表面を
覆った直径730mm、幅500mmの回転可能な鋼製
円形ドラムに一定速度でトラバースさせながら巻き取
る。ドラムを数回転させた後、巻き取り状態での糸幅を
0.1mm単位で測定し、n=30の相加平均値をW
(mm)とし、試料である炭素繊維1m当たりの重量を
Gm(g)として拡がり性指数を次式により求める。 拡がり性指数=W/Gm
【0090】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。製糸条件、焼成条件及びプリカーサーに関す
る主なデーターを表1に、炭素繊維、及び複合材料に関
する主なデーターを表2にそれぞれ示す。
【0091】(実施例1)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により、アクリロニトリル(AN)9
7.6重量%とイタコン酸2.4重量%とからなる、
[η]が1.7、重合体の濃度が22重量%の紡糸原液
を得た。重合後、アンモニアガスをpHが8.5になる
まで吹き込み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基
をポリマーに導入することにより、紡糸原液の親水性を
向上させた。得られた紡糸原液を70℃として、湿式紡
糸法により、直径0.065mm、孔数6000の紡糸
口金を用いて、直接70℃に温調した60重量%ジメチ
ルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に紡出して凝固
させた。
【0092】次に、凝固糸を75、85、95℃の温水
中でトータルの延伸倍率が2倍になるよう延伸した後、
50℃で水洗した。この浴延伸糸の膨潤度は200%で
あった。
【0093】次いで、浴延伸糸に、アミノ変性シリコー
ン、エポキシ変性シリコーン、及びエチレンオキサイド
変性シリコーンの混合物からなるシリコーン系油剤を付
与した。アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコー
ン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンの25℃に
おける粘度は、それぞれ、4000cSt、12000
cSt、及び500cStとし、混合比率は10:1
0:1(重量比)である。ここで油剤の加熱残存率rは
42%であった。
【0094】さらに、180℃に温調した加熱ローラー
により乾燥緻密化を行った。
【0095】乾燥緻密化の後、3kg/cm2−Gの加
圧スチーム中で、さらに延伸することにより、全延伸倍
率を13倍とした。その後、糸条を3本合糸し、1kg
/cm2−Gの加圧空気で交絡処理を行って単糸繊度
0.8d(d:デニール)、単繊維本数18000本の
プリカーサーを得た。このプリカーサーのΔL(明度
差)は26であった。
【0096】得られた繊維束を無撚状態のまま、240
〜280℃の空気中、延伸倍率1.0倍で加熱して、炎
収縮保持率78%、ギ酸溶解度1.1%の耐炎化繊維に
転換した。さらに耐炎化繊維を300〜900℃の不活
性雰囲気中で延伸倍率1.04で予備炭化後、最高温度
1500℃で炭化した。
【0097】この後、重炭酸アンモニウムの水溶液中
で、20クーロン/g−CFの電解酸化処理を行い、炭
素繊維を得た。得られた炭素繊維の品位は非常に良好で
あり、高い性能を示した。
【0098】(実施例2)1kg/cm2−Gの加圧空
気で交絡処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様
にして炭素繊維を得た。焼成工程において毛羽は多かっ
たが、得られた炭素繊維の性能は良好であった。
【0099】(実施例3)耐炎化、予備炭化の延伸倍率
をそれぞれ0.95、1.0とし、炭化における最高温
度を1700℃とした以外は実施例1と同様にして炭素
繊維を得た。得られた炭素繊維の品位は非常に良好であ
り、高い性能を示した。
【0100】(比較例1)温水浴での延伸倍率を5倍と
した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。な
お、本例では浴延伸糸の膨潤度は260%まで上昇し
た。得られた炭素繊維の性能はやや劣るものであった。
【0101】(比較例2)1kg/cm2−Gの加圧空
気で交絡処理を行わなかったこと以外は比較例1と同様
にして炭素繊維を得た。焼成工程において毛羽が発生
し、製造を途中で中断した。
【0102】(比較例3)耐炎化、予備炭化の延伸倍率
をそれぞれ0.95、1.0とし、炭化における最高温
度を1700℃とした以外は実施例1と同様にして炭素
繊維を得た。得られた炭素繊維の性能はやや劣るもので
あった。
【0103】(比較例4)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により、アクリロニトリル(AN)9
8.8重量%とイタコン酸1.2重量%とからなる、
[η]が1.7、重合体の濃度が22重量%の紡糸原液
を得た。重合後、アンモニアガスをpHが8.5になる
まで吹き込み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基
をポリマーに導入することにより、紡糸原液の親水性を
向上させた。得られた紡糸原液を70℃として、乾湿式
紡糸法により、直径0.15mm、孔数6000の紡糸
口金を用いて、一旦空気中へ吐出し、10℃に温調した
40%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に
紡出して凝固させた。
【0104】得られた凝固糸を水洗した後、70、8
0、90℃の温水中でトータルの延伸倍率が4倍になる
よう延伸した。この浴延伸糸の膨潤度は80%であっ
た。
【0105】次いで、浴延伸糸に、アミノ変性シリコー
ン、エポキシ変性シリコーン、及びエチレンオキサイド
変性シリコーンの混合物からなるシリコーン油剤を付与
した。アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコー
ン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンの25℃に
おける粘度は、それぞれ、4000cSt、12000
cSt、及び500cStとし、混合比率は10:1
0:1(重量比)である。ここで、油剤の加熱残存率r
は42%であった。
【0106】さらに、180℃に温調した加熱ローラー
により乾燥緻密化を行った。
【0107】乾燥緻密化の後、3kg/cm2−Gの加
圧スチーム中で、さらに延伸することにより、全延伸倍
率を13倍とした。その後、糸条を3本合糸し、単糸繊
度0.8d、単繊維本数18000本のプリカーサーを
得た。
【0108】さらに、比較例1と同様の焼成工程を経
て、炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の性能はやや劣
るものであった。
【0109】(実施例4)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により、アクリロニトリル(AN)9
4.9重量%、イタコン酸1.2重量%とイソブチルメ
タクリレート3.9重量%とからなる、[η]が1.
8、重合体の濃度が18重量%の紡糸原液を得た。重合
後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込
み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基をポリマー
に導入することにより、紡糸原液の親水性を向上させ
た。得られた紡糸原液を70℃として、湿式紡糸法によ
り、直径0.07mm、孔数12000の紡糸口金を用
いて、直接70℃に温調した60重量%ジメチルスルホ
キシドの水溶液からなる凝固浴に紡出して凝固させた。
【0110】次に、凝固糸を75、85、95℃の温水
中でトータルの延伸倍率が2倍になるよう延伸した後、
50℃で水洗した。この浴延伸糸の膨潤度は205%で
あった。
【0111】次いで、浴延伸糸に、アミノ変性シリコー
ンからなるシリコーン油剤を付与した。アミノ変性シリ
コーンの25℃における粘度は4000cStとした。
ここで、油剤の加熱残存率rは25%であった。
【0112】さらに、180℃に温調した加熱ローラー
により乾燥緻密化を行った。
【0113】乾燥緻密化の後、3kg/cm2−Gの加
圧スチーム中で、さらに延伸することにより、全延伸倍
率を13倍とした。その後、1.5kg/cm2−Gの
加圧空気で交絡処理を行って単糸繊度1.1d、単繊維
本数12000本のプリカーサーを得た。
【0114】得られた繊維束を無撚状態のまま、240
〜280℃の空気中、延伸倍率0.95倍で加熱して、
炎収縮保持率85%、ギ酸溶解度1.5%の耐炎化繊維
に転換した。さらに耐炎化繊維を300〜900℃の不
活性雰囲気中で延伸倍率1.0倍で予備炭化後、最高温
度1300℃で炭化した。
【0115】この後、重炭酸アンモニウムの水溶液中
で、10クーロン/g−CFの電解酸化処理を行い、炭
素繊維を得た。得られた炭素繊維の品位は非常に良好で
あり、高い性能を示した。
【0116】(実施例5)重合体に、アクリロニトリル
(AN)98.8重量%とイタコン酸1.2重量%から
なる共重合体を用いたこと以外は、実施例4と同様にし
て炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の品位は非常に良
好であり、高い性能を示した。
【0117】(実施例6)耐炎化、予備炭化の延伸倍率
をそれぞれ0.90、0.95としたこと以外は実施例
4と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の品
位は非常に良好であり、高い性能を示した。
【0118】(比較例5)温水浴での延伸倍率を5倍と
した以外は、実施例4と同様にして炭素繊維を得た。得
られた炭素繊維の性能はやや劣るものであった。
【0119】(比較例6)耐炎化、予備炭化の延伸倍率
をそれぞれ0.90、0.95としたこと以外は実施例
5と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の性
能はやや劣るものであった。
【0120】(比較例7)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により、アクリロニトリル(AN)9
8.8重量%とイタコン酸1.2重量%とからなる、
[η]が1.7、重合体の濃度が22重量%の紡糸原液
を得た。重合後、アンモニアガスをpHが8.5になる
まで吹き込み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基
をポリマーに導入することにより、紡糸原液の親水性を
向上させた。得られた紡糸原液を70℃として、乾湿式
紡糸法により、直径0.15mm、孔数6000の紡糸
口金を用いて、一旦空気中へ吐出し、10℃に温調した
40%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に
紡出して凝固させた。
【0121】次に、凝固糸を水洗した後、70、80、
90℃の温水中でトータルの延伸倍率が4倍になるよう
延伸した。この浴延伸糸の膨潤度は80%であった。
【0122】次いで、浴延伸糸に、アミノ変性シリコー
ン、エポキシ変性シリコーン、及びエチレンオキサイド
変性シリコーンの混合物からなるシリコーン油剤を付与
した。アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコー
ン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンの25℃に
おける粘度は、それぞれ、4000cSt、12000
cSt、及び500cStとし、混合比率は10:1
0:1(重量比)である。ここで、油剤の加熱残存率r
は42%であった。
【0123】さらに、180℃に温調した加熱ローラー
により乾燥緻密化を行った。
【0124】乾燥緻密化の後、4kg/cm2−Gの加
圧スチーム中で、さらに延伸することにより、全延伸倍
率を13倍とした。その後、糸条を2本合糸し、単糸繊
度1.1d、単繊維本数12000本のプリカーサーを
得た。
【0125】さらに、比較例6と同様の焼成工程を経
て、炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の性能はやや劣
るものであった。
【0126】(比較例8)重合体に、アクリロニトリル
(AN)94.9重量%、イタコン酸1.2重量%とイ
ソブチルメタクリレート3.9重量%とからなる共重合
体を用いたこと以外は、比較例7と同様にして炭素繊維
を得た。得られた炭素繊維の性能はやや劣るものであっ
た。
【0127】
【表1】
【表2】
【0128】
【発明の効果】本発明の炭素繊維により、従来になく、
軽量、高性能、かつコストパフォーマンスに優れる炭素
繊維強化複合材料が得られる。かかる複合材料は、フラ
イホイールのローター、CNGタンクなどのエネルギー
関連用途、航空機の一次構造材などに好適に使用するこ
とができる。
【0129】本発明のプリカーサーの製造方法により、
強度と樹脂接着性の特性を両立した高い性能を有する炭
素繊維を、安価かつ容易に得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 101:40 Fターム(参考) 4F072 AA01 AA07 AA08 AB10 AD03 AD04 AD08 AD13 AD23 AD37 AD41 AD44 AD45 AD52 AL02 AL04 AL05 AL16 AL17 4L031 AA27 AB01 CA02 CA08 CB10 DA00 DA11 DA21 4L033 AA09 CA59 CA61 CA64 CA70 4L035 FF01 MB03 4L037 AT02 FA03 FA05 FA06 FA08 FA09 FA12 PA55 PA64 PC09 PC13 PF45 PS00 PS02 PS17 UA20

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面積比が1.02〜1.09であること
    を特徴とする炭素繊維。
  2. 【請求項2】引張強度が5.5GPa以上、かつ層間剪
    断強度が90MPa以上であることを特徴とする請求項
    1記載の炭素繊維。
  3. 【請求項3】湿式紡糸法により得られるアクリル系繊維
    をプリカーサーとする請求項1又は2記載の炭素繊維。
  4. 【請求項4】SIMSにより求まる、繊維表面から50
    nmの深さ部におけるSiとCとの原子数比(Si/
    C)が1以下である請求項1〜3のいずれかに記載の炭
    素繊維。
  5. 【請求項5】ESCAにより求まる、繊維表面における
    SiとCとの原子数比(Si/C)が0.01以下であ
    る請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維。
  6. 【請求項6】拡がり性指数が20〜40である請求項1
    〜5のいずれかに記載の炭素繊維。
  7. 【請求項7】フックドロップ長が20cm以下であるプ
    リカーサーを焼成して得られるものである請求項1〜6
    のいずれかに記載の炭素繊維。
  8. 【請求項8】湿式紡糸法において、糸条を紡出した後、
    その膨潤度が50〜300重量%である状態で4倍以下
    で延伸し、その後乾燥緻密化して得られることを特徴と
    する炭素繊維用プリカーサーの製造方法。
  9. 【請求項9】湿式紡糸法において、糸条を紡出した後、
    その膨潤度を225重量%以下に保持した状態で延伸
    し、その後乾燥緻密化して得られることを特徴とする炭
    素繊維用プリカーサーの製造方法。
  10. 【請求項10】請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊
    維から得られる、強度特性に優れた炭素繊維強化複合材
    料。
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