JPH11217734A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

炭素繊維およびその製造方法

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JPH11217734A
JPH11217734A JP10329456A JP32945698A JPH11217734A JP H11217734 A JPH11217734 A JP H11217734A JP 10329456 A JP10329456 A JP 10329456A JP 32945698 A JP32945698 A JP 32945698A JP H11217734 A JPH11217734 A JP H11217734A
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carbon fiber
fiber
flame
precursor
yarn
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JP10329456A
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Masashi Ise
昌史 伊勢
Makoto Kobayashi
真 木林
Tomihiro Ishida
富弘 石田
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】コストパフォーマンスに優れ、剛性及び曲げ強
度に優れた炭素繊維強化複合材料を製造するのに好適な
炭素繊維、及びその製造方法を提供する。 【解決手段】引張弾性率YM(GPa)及び窒素含有量
NC(%)が下記式(A)及び(B)を満たすことを特
徴とする炭素繊維。 NC≧−30.102×LOG(YM)+77.785 …(A) 200≦YM≦340 …(B)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コストパフォーマ
ンスに優れ、剛性及び曲げ強度に優れた炭素繊維強化複
合材料を製造するのに好適な炭素繊維及びその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は他の補強用繊維に比べて高い
比強度及び比弾性率を有するため、その優れた機械的特
性を利用して複合材料用補強繊維として工業的に広く利
用されている。
【0003】近年、炭素繊維強化複合材料の優位性はま
すます高まり、特にスポーツ、航空宇宙用途において
は、この炭素繊維強化複合材料(以下コンポジットと称
す)に対する高性能化要求が強い。コンポジットとして
の特性は炭素繊維そのものの性能に起因するところが大
きく、この要求はとりもなおさず炭素繊維自体への高性
能化要求である。炭素繊維に要求される性能は、引張強
度、圧縮強度、引張弾性率などの物性値を基準として判
断されるが、用途によってその要求性能は異なる。中で
も、航空機の一次構造材やゴルフクラブのシャフトな
ど、曲げに対する強さや剛性が問題となる用途では、材
料内側には圧縮力、外側には引張力がかかるため、圧縮
強度を中心に、弾性率、引張強度が高いレベルでバラン
ス良く備わっていることが要求される。また、かかる炭
素繊維の性能を充分にコンポジットの特性に反映させる
には、樹脂との接着性や、成形時の拡がり性が良好であ
ることも必要となる。
【0004】一般に、炭素繊維の焼成温度を上げていく
と弾性率は上昇していくが、圧縮強度、引張強度、樹脂
との接着性は低下してくるという、いわゆるトレードオ
フ関係があり、特に焼成温度が2000℃を超え、結晶
サイズが30オンク゛ストロームを超えるいわゆる黒鉛化糸の領
域ではこの低下が著しい。かかるトレードオフ関係に対
して、黒鉛化糸の圧縮強度を向上させる、又は炭化糸の
弾性率を向上させるという2方向から、いくつかの技術
が提案されている。
【0005】特開昭63−211326号公報には、弾
性率と結晶サイズの関係、及びミクロボイド径を特定す
ることで、黒鉛化糸の圧縮強度を向上させる技術が提案
されている。しかし、かかる技術では、圧縮強度の向上
は認められるものの、その絶対値は1350MPaと決
して高いレベルとはいえず、また、かかる技術は、焼成
温度が2000℃を超え、結晶サイズが30オンク゛ストローム
を超えるいわゆる黒鉛化糸に関するものであり、高い剛
性は期待できるものの、曲げ強度という点では、その高
い結晶性が問題となり、別途、何らかの引張強度の向上
技術、樹脂との接着性を向上させる技術が必要となる。
【0006】また、特開平3−180514号公報に
は、イオン注入により表層の結晶性を低下させることに
よって、単繊維の圧縮強度を向上させる技術が提案され
ている。この技術は、黒鉛化糸、炭化糸を問わず適用で
き、また、単繊維の圧縮強度の向上への効果は認められ
るものの、コンポジット特性についてはその効果が開示
されておらず、全く不明である。発明者らの考えでは、
イオン注入により繊維表面が損傷する可能性が非常に高
く、仮に単繊維としての圧縮特性が高くても、コンポジ
ット特性へ充分に反映させることは困難である。また、
イオン注入なる手段は、その設備費もさることながら、
大量生産するには著しく不利であり、今日の根強いコス
ト削減要求に応じるのも難しいといわざるを得ない。
【0007】炭素繊維の弾性率を向上させるために、従
来より、耐炎化工程及び炭化工程における延伸・焼成条
件を適正化する試みがなされている。例えば、特開昭5
8−214534号公報には、プリカーサーに、エアー
処理による開繊又は/及び加撚を施した後、耐炎化工程
において延伸しながら焼成することで、引張強度を向上
させている。かかる製造方法は、弾性率向上には有効で
あるが、発明者らが検討したところ、毛羽の発生によ
り、むしろプロセス性を低下させていることがわかり、
コストを考慮に含めると従来公知の方法は適用が困難で
あるとの結論に達した。プリカーサーに撚りを施すこと
で、見かけ上の毛羽発生は抑制でき、プロセス性の低下
をある程度まで抑えることは可能であるが、糸束内での
焼けムラ発生による品質及び生産性の低下や、得られた
炭素繊維の拡がり性の低下が生じることは避けられず、
安定な焼成を可能とするには至っていないのが現状であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来の問題点を解消し、コストパフォーマンスに優れ、
剛性及び曲げ強度に優れたコンポジットを製造するのに
好適な炭素繊維及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0009】さらに詳しくは、生産性を下げることなく
耐炎化工程における焼けムラを抑制し、従来より低い熱
処理量で弾性率を発現できる炭素繊維及びその製造方法
を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の炭素繊維は、上
記課題を達成するために次の構成を有する。すなわち、
引張弾性率YM(GPa)及び窒素含有量NC(%)が
下記式(A)及び(B)を満たすことを特徴とする炭素
繊維である。
【0011】 NC≧−30.102×LOG(YM)+77.785 …(A) 200≦YM≦340 …(B) また、本発明の炭素繊維の製造方法は、上記課題を達成
するために次の構成を有する。すなわち、アクリル系プ
リカーサーを、ギ酸溶解度が0.05〜5%となるよう
に耐炎化した後、300〜800℃の不活性雰囲気にお
いて予備炭化し、さらに800〜1600℃の不活性雰
囲気において炭化することを特徴とする炭素繊維の製造
方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題に対し、
より低い熱処理量により、所望する引張弾性率(以下、
単に弾性率と称す)を発現する炭素繊維を得るために
は、耐炎化における焼けムラの効果的な抑制が重要であ
ることを見出し、本発明に達した。本発明の炭素繊維
は、従来の炭素繊維と比較し、より低い熱処理量すなわ
ち同一時間での処理においては、より低い炭化温度で同
等の弾性率を発現するため、弾性率を低下させることな
く、引張強度や圧縮強度に代表される強度(以下、単に
強度と称す)、マトリックス樹脂に対する樹脂との接着
性を向上させることが可能となる。したがって、本発明
の炭素繊維を用いることにより、剛性及び曲げ強度に優
れたコンポジットの製造が可能となるのである。以下、
本発明についてさらに詳しく説明する。
【0013】本発明において、耐炎化における焼けムラ
とは、耐炎化糸を構成する各単繊維間及び各単繊維内に
おいて、相対的に耐炎化反応の進行の程度が低い部分が
存在する状態のことを言う。耐炎化糸に焼けムラが存在
すると、続く炭化工程において、結晶の配向緩和や毛羽
の発生が生じ、最終的に得られる炭素繊維の弾性率や強
度、品質が低下するなどの不都合が生じ易くなる。
【0014】本発明の炭素繊維は、引張弾性率YM(G
Pa)及び窒素含有量NC(%)が下記式(A)及び
(B)を満たすことを特徴とするものであり、好ましく
は、下記式(A’)及び(B’)を満たすことを特徴と
するものである。
【0015】 NC≧−30.102×LOG(YM)+77.785 …(A) 200≦YM≦340 …(B) NC≧−35.575×LOG(YM)+91.928 …(A’) 220≦YM≦330 …(B’) (ただし、LOG:対数) 引張弾性率YM及び窒素含有量NCの測定方法は後述す
る。
【0016】窒素含有量NCは、炭素繊維が焼成工程で
受けた熱処理量と良い相関があるパラメータであり、熱
処理量が増す程、低下していく。すなわち、式(A)
は、炭素繊維が製造に当たり受けた熱処理量と、その弾
性率の関係を規定したものと言い換えることもできる。
【0017】ここで熱処理量とは、焼成工程における熱
処理温度と時間の積分を意味しており、弾性率への影響
という意味では、特に炭化炉における温度と炉内滞留時
間が重要となる。一般に、弾性率は熱処理量を増す程、
高くなる傾向にある。確かに、熱処理量を増すことによ
って、弾性率を上げることは容易ではあるが、熱処理温
度を上げることは、エネルギーコストの上昇はいうまで
もなく、結晶化を促進し、強度、特に圧縮強度や樹脂と
の接着性の低下を招くことになり、一方、熱処理時間を
増加させることは、生産設備の大型化もしくは生産性の
低下につながり所要コストの上昇に直結する。
【0018】従来、上記式(A)を満たすような低熱処
理量により、弾性率を発現する炭素繊維は、見出されて
いない。式(A)において、窒素含有量NC(%)が1
2%を超えると、結晶性が著しく低くなり、強度や弾性
率において不利となる場合がある。
【0019】また、本発明の炭素繊維は上記式(A)と
ともに式(B)も満足する。弾性率が200GPaを下
回る領域では、コンポジット剛性の点で不利となり、弾
性率が340GPaを超える領域では、強度の低下が顕
著となり、高いコンポジット曲げ特性を得難くなる。
【0020】本発明における炭素繊維は、X線回折によ
り求められる、結晶配向度π002 (%)と結晶サイズL
c(オンク゛ストローム)とが下記式(C)及び(D)を満たす
ことが好ましく、下記式(C’)及び(D’)を満たす
ことがより好ましい。
【0021】 π002 ≧21.778×LOG(Lc)+55.427 …(C) 15≦Lc≦25 …(D) π002 ≧21.933×LOG(Lc)+55.976 …(C’) 15≦Lc≦22 …(D’) 結晶サイズLcと結晶配向度π002 の測定方法は後述す
る。
【0022】上記式(C)を満たすことにより、従来に
ない高いレベルで、強度と弾性率及び樹脂との接着性が
バランスした炭素繊維を得ることができ、かかる炭素繊
維を使用することにより、高度のコンポジット曲げ特性
が得られる。またπ002 は、95%程度あれば、本発明
の効果を奏するに当たって充分であることが多い。
【0023】前記結晶サイズLcは、結晶性を表すパラ
メータであり、結晶サイズLcが、15オンク゛ストロームを下
回るような結晶が未発達な炭素繊維では、充分な強度が
得られない場合がある。また、25オンク゛ストロームを超える
ような高い結晶性を有すると、弾性率の点では有利なも
のの、充分な強度及び樹脂との接着性が得られない場合
がある。
【0024】本発明における炭素繊維は、走査トンネル
顕微鏡を用いて後述する方法により測定される表面積比
が、1.02〜1.2であることが好ましい。また、か
かる表面積比は、より好ましくは1.04〜1.18、
さらに好ましくは1.05〜1.15が良い。ここで、
表面積比が、1.02を下回ると樹脂との接着性の低下
が顕著となり、1.2を超えると特に引張強度の低下が
顕著となる場合がある。かかる表面積比は、炭素繊維の
表面の実表面積と投影面積との比で表され、表面の粗さ
の度合いを示している。表面積比が1に近付く程、平滑
であることを意味し、炭素繊維の引張強度の向上には有
利であるが、樹脂との接着性が低下する傾向にあり、表
面積比を、得られる炭素繊維の性能を判断する尺度とす
ることができる。
【0025】また、本発明における炭素繊維は、原子間
力顕微鏡を用いて後述する方法により測定される表面積
比が1.01〜1.17であることが好ましい。また、
かかる表面積比は、より好ましくは1.02〜1.1
2、さらに好ましくは1.03〜1.09が良い。かか
る表面積比が1.01を下回ると、樹脂との接着性の低
下が顕著となり、1.17を超えると引張強度の低下が
顕著となるため好ましくない。かかる表面積比は炭素繊
維の表面粗さの尺度として使用でき、表面積比をもって
引張強度と樹脂との接着性を、適度に兼ね備える炭素繊
維を選ぶことができる。
【0026】本発明における炭素繊維は、後述する方法
で測定される拡がり性指数が20〜40であることが好
ましい。また、かかる拡がり性指数は、より好ましくは
25以上、さらに好ましくは30以上が良い。この拡が
り性指数は、繊維目付当たりの拡がり幅を表しており、
この値が高い程、コンポジットが均一な特性で成型で
き、繊維の補強性能をコンポジット特性に反映するのに
有利となる。拡がり性指数が20を下回ると、均一な特
性のコンポジットを得難くなり、また、十分な糸幅を確
保するためには高い圧力で拡幅することになり、糸傷み
の原因となる。一方、拡がり性指数が40を超えると、
炭素繊維束の集束性が不足しコンポジット成型時のハン
ドリング性が悪くなる場合がある。
【0027】本発明における炭素繊維は、単繊維径が4
〜8μmであり、かつ単繊維本数が10000〜600
00本の炭素繊維束として使用するのが好ましい。より
好ましくは、単繊維径が5〜7μmかつ単繊維本数が1
5000〜48000本の炭素繊維束として使用するの
が良い。単繊維径が4μmを下回るか、又は単繊維本数
が10000本を下回ると、コンポジット成型時の生産
効率が低下する場合がある。また、単繊維径が8μmを
超えたり、単繊維本数が60000本を超えると、糸束
が剛直となったり、拡がり性が低下する場合がある。
【0028】本発明における炭素繊維は、高い曲げ強度
を得るために、その引張強度が、5.7GPa以上が良
く、好ましくは6.0GPa以上、より好ましくは6.
3GPa以上が良い。
【0029】本発明における炭素繊維は、その比重が小
さい程コンポジットの軽量化効果が高いため好ましい。
かかる比重は、好ましくは1.8以下、より好ましくは
1.78以下、さらに好ましくは1.76以下が良い。
【0030】本発明における炭素繊維は、アクリル系、
ピッチ系、レーヨン系などいずれの由来であっても良い
が、コストパフォーマンスに優れ、剛性及び曲げ強度に
優れたコンポジットを得るには、アクリル系が望まし
い。以下、アクリル系の例について本発明の炭素繊維の
製造方法を説明する。
【0031】ポリマー成分には、95モル%以上、好ま
しくは98モル%以上のアクリロニトリル(AN)と、
5モル%以下、好ましくは2モル%以下の耐炎化を促進
し、アクリロニトリル(AN)と共重合性のある、耐炎
化促進成分を共重合したものが好適に使用できる。耐炎
化促進成分としては、ビニル基含有化合物(以下ビニル
系モノマーと云う)からなる共重合体が好適に使用でき
る。ビニル系モノマーの具体例としては、アクリル酸、
メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。また、一
部又は全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタ
クリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共
重合体は、耐炎化促進成分としてより好適に使用でき
る。なお、重合法については、従来知られている溶液重
合法、懸濁重合法、乳化重合法などを適用することがで
きる。
【0032】前記ポリマー成分から成る紡糸原液を、湿
式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、又は溶融紡糸法
により紡糸するが、中でも湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法
が好ましく採用できる。紡糸後の凝固糸を、水洗、延
伸、乾燥及び油剤付与などの製糸工程を経て、アクリル
系プリカーサーを製造する。
【0033】湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法において、プ
リカーサー表面に前記する適度な表面粗さを付与するた
めには、凝固速度、延伸方法などを適度に制御すること
ができる。
【0034】一般に、凝固速度を遅くする程、繊維表面
に形成されるスキン層が薄くかつ繊維を構成するフィブ
リル単位が大きい凝固糸が得られる傾向にあり、かかる
凝固糸を後述するような方法で延伸することにより、表
面の粗いプリカーサーが得られるようになる。但し、凝
固速度が遅過ぎると、紡糸速度が上げられないなどの不
都合が生じる場合があり、一方、凝固速度が速過ぎる
と、凝固糸の内部構造が粗くなり、高い強度を有する炭
素繊維が得られない場合がある。凝固浴に含まれる凝固
促進成分の濃度が低く、凝固浴温度が低い程、凝固速度
は遅くなる傾向があり、かかる凝固速度は、凝固浴液の
組成や凝固浴の温度などにより適宜制御することができ
る。
【0035】凝固促進成分としては、前記ポリマー成分
を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性がある
ものを使用できる。具体的には、取り扱い性の点から水
を使用するのが好ましい。
【0036】紡糸原液に使用する溶媒としては、有機、
無機の従来公知の溶媒が使用できる。特に、有機溶媒を
使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキ
シド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドな
どが挙げられる。硝酸、ロダンソーダ水溶液、塩化亜鉛
水溶液などの無機塩の濃厚水溶液を溶媒とすると、所望
する表面粗さを有する炭素繊維を得られないときがあ
る。
【0037】凝固浴中に紡出後、糸条を水洗しないで直
接延伸浴中で延伸しても良いし、溶媒を水洗して除去し
た後に延伸浴中で延伸しても良い。かかる浴中延伸は、
通常、30〜98℃に温調された単数又は複数の延伸浴
中で行われる。通常、これら水洗浴や延伸浴における前
記溶媒の水溶液中の濃度は、0重量%から凝固浴におけ
る溶媒の濃度の間に設定される。
【0038】かかる浴中延伸において、延伸倍率を上げ
ることにより、糸条表面の凹凸部の発現を促進できる。
その発現の度合いは、前記した凝固糸表層のスキン層の
厚み、及び凝固糸を構成するフィブリル単位の大きさに
より異なり、スキン層の厚みが薄く、かかるフィブリル
単位が大きくなる程、顕著となる傾向にある。一方、ス
キン層が厚過ぎたり、又はフィブリル単位が小さ過ぎる
と、延伸倍率の調節によっては凹凸部の発現を促進でき
ない場合がある。
【0039】したがって、本発明において、プリカーサ
ーや炭素繊維の表面粗さを適度な範囲とするには、前記
凝固速度を適正とした上で、かかる延伸倍率を6倍以下
として浴中延伸するのが好ましい。より高い強度を有す
る炭素繊維を得るために、かかる延伸倍率は、好ましく
は5倍以下、より好ましくは4倍以下、さらに好ましく
は3倍以下とするのが良い。なお、複数の延伸浴を使用
する場合は、後続する延伸浴程、延伸浴の温度を上昇さ
せ、各浴における延伸倍率を単繊維間接着が発生しない
ように適宜調整するのが、得られる炭素繊維の性能を高
める観点から、好ましい。
【0040】延伸浴の温度が高い場合、入り側ローラー
による熱圧着のため、単繊維間の接着が起こり易いの
で、入り側ローラーを延伸浴の外に出すのが効果的であ
る。また、単繊維間の疑似接着を解除するために、延伸
浴中に振動ガイドを設けて、糸束を振動させながら延伸
するのも有効である。その際の振動数としては、5〜1
00Hzが良く、振幅は0.1〜10mmが良い。
【0041】浴延伸糸の単繊維の外層部及び内層部の緻
密性は、後述する耐炎化遅延元素の単繊維内の濃度分布
に直接影響を与え、ひいては炭素繊維の性能にも影響す
る。
【0042】単繊維の外層部の緻密性を上げるために
は、なるべく高温で浴延伸するのが良い。したがって、
延伸浴の最高温度は、50℃以上が良く、好ましくは7
0℃以上、より好ましくは90℃以上が良い。単繊維の
内層部の緻密性を上げるためには、前記耐炎化促進成分
を共重合する、紡糸原液中のポリマー成分の濃度を上げ
る、又は、凝固浴温度をなるべく低温にするのも有効で
ある。
【0043】浴延伸の後、糸条にシリコーン油剤を付与
する。シリコーン油剤は、変性シリコーンで、かつ、耐
熱性の高いものが好ましい。ここで、油剤の主成分であ
るシリコーン系化合物は、ポリジメチルシロキサンが好
ましく使用できる。なお、プロセス性を向上させるため
に、水系で使用できる水溶性もしくは自己乳化性のも
の、又はノニオン系の界面活性剤で乳化することで、安
定なエマルジョンとなるものがより好ましく使用でき
る。さらには、ポリジメチルシロキサンのアミノ変性、
エポキシ変性、アルキレンオキサイド変性のシリコーン
系化合物、又はそれらの混合物を用いるのが好ましく使
用できる。中でも、アミノ変性シリコーン系化合物を含
むものがより好ましく、アミノ変性シリコーン系化合物
とエポキシ変性シリコーン系化合物の両方を含むものが
さらに好ましい。さらには、アミノ変性、エポキシ変
性、及びアルキレンオキサイド変性のシリコーン系化合
物を含むものが好ましい。それらの混合比としては、ア
ミノ変性:エポキシ変性:アルキレンオキサイド変性の
重量比で1:0.1〜5:0.1〜5が好ましく、1:
0.5〜2:0.2〜1.5がより好ましい。
【0044】ここで、アミノ変性の変性量としては、末
端アミノ基量を−NH2 の重量に換算して、0.05〜
10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好まし
い。エポキシ変性の変性量としては、エポキシ基−CH
CH2 Oの重量に換算して、0.05〜10重量%が好
ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。アルキレン
オキサイド変性の変性量としては、アルキレンオキサイ
ド変性部の重量に換算して、10〜80重量%が好まし
く、15〜60重量%がより好ましい。
【0045】シリコーン油剤は、シリコーン系化合物
の、糸条への付着量が、糸条の乾燥重量当たり0.01
〜5重量%となるよう、油剤浴などによって付与するの
が良く、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましく
は0.1〜1.5重量%となるよう付与するの良い。か
かる付着量は少ない程、焼成工程でのタール、排ガス量
の減少に有利であるので、単繊維間の接着を防止しうる
範囲で、少なめに抑えるのが、コスト削減にとって有効
であるが、かかる付着量が、0.01重量%未満である
と、糸束内部へ均一に浸透せしめ難くなる。油剤付与後
に、フリーローラーを複数個連続して並べ、接触角の合
計が8π以上になるように、ジグザグに、プリカーサー
を通すのが、油剤の均一付与のために有効である。接触
角は、大きい程良いが、所要コスト又はスペースの関係
から、16π以下が実際的である。
【0046】プリカーサーが前記ローラーに導入される
前に、水又はシリコーン油剤を、潤滑剤として噴霧、滴
下などの方法により付与すると、より均一に油剤を付着
させることができる。かかる方法により、油剤の、糸束
内への均一な拡散が促進され、より少量の油剤で、油剤
の均一付与が可能となる。さらに、油剤浴中における超
音波振動の付与、又は斜行ジグザグローラーによって、
糸束内の単繊維間における油剤の移動を促進させるの
も、糸条に油剤を均一に付与するために有効である。
【0047】シリコーン油剤は、空気中及び窒素中での
加熱残存率(r)が、いずれも20%以上であることが
良く、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以
上が良い。加熱残存率(r)は、100%あることが理
想的であるが、実用上は95%程度が上限値である。
【0048】ここで、加熱残存率(r)とは、シリコー
ン油剤を240℃の空気中で60分間熱処理した後、引
き続いて450℃の窒素中で30秒間熱処理した後の残
存率のことをいい、油剤の耐熱性の指標となるものであ
る。かかる加熱残存率(r)が大きい程、耐炎化及び炭
化の初期段階での、単繊維間の接着を、防止する効果が
大きい。測定は、次の手順による。付与するシリコーン
油剤が、エマルジョンや溶液の場合には、直径が約60
mm、高さが約20mmのアルミ製の容器に、エマルジ
ョン又は溶液約1gを採取し、オーブンにより、105
℃で5時間乾燥した後のシリコーンについて、次の条
件、手順で、熱天秤(TG)により、その耐熱残存率を
測定する。
【0049】(使用機材、サンプル) サンプルパン:アルミニウム製、直径5mm、高さ5m
m サンプル量:15〜20mg 空気中熱処理条件:空気流量30ml/分、昇温速度1
0℃/分、240℃ 熱処理時間:60分 雰囲気変更:240℃のまま空気から窒素へ変更して5
分間保持 窒素中熱処理条件:窒素流量30ml/分、昇温速度1
0℃/分、450℃ 熱処理時間:30秒 この熱処理における、トータルの重量保持率を、加熱残
存率(r)とする。
【0050】加熱残存率(r)を大きくするためには、
前記変性シリコーンを含むシリコーン油剤を、前記した
ような所定の割合に混合するとともに、油剤の成分であ
るシリコーンを、高分子量化するのが有効である。具体
的には、シリコーンの25℃における粘度が、300c
St以上であることが良く、好ましくは1000cSt
以上、より好ましくは2000cSt以上、さらに好ま
しくは3000cSt以上であることが良い。かかる粘
度については、工程における取り扱い性及び糸条への均
一付与性を確保するために、20000cSt以下であ
ることが良い。
【0051】前記粘度の最適値については、変性基の種
類によって異なり、アミノ変性、エポキシ変性、アルキ
レンオキサイド変性のシリコーン油剤の場合、25℃に
おける粘度で、それぞれ、(a)100〜100000
cSt、100〜100000cSt、及び10〜10
000cStが好ましく、(b)1000〜50000
cSt、1000〜50000cSt、及び50〜50
00cStがより好ましく、(c)2000〜3000
0cSt、2000〜30000cSt、及び100〜
5000cStがさらに好ましい。すなわち、粘度は高
い程、耐熱性の点で有利であるが、高過ぎると油剤の安
定性、均一付着性などが低下する場合があるので、この
点に注意するのが良い。
【0052】浴延伸後の糸条は、ホットドラムなどで乾
燥することによって乾燥緻密化が達成されるが、この際
の乾燥温度や乾燥時間は、単繊維内のホウ素の濃度分布
に影響するため、適宜最適化するのが良い。必要に応じ
て、乾燥緻密化後のアクリル系プリカーサーを、加圧ス
チームなどの高温環境中で延伸することにより、所望す
る繊度、配向度を付与することができる。
【0053】本発明における炭素繊維の製造方法におい
て、アクリル系プリカーサーは、原子間力顕微鏡を用い
て後述する方法により測定される表面積比が1.01〜
1.25の表面粗さを有していることが良い。かかる表
面積比は、好ましくは1.02〜1.25、より好まし
くは1.02〜1.18、さらに好ましくは1.03〜
1.12が良い。
【0054】プリカーサー繊維の表面粗さは、プリカー
サー繊維束の集束性と相関があり、前記表面積比が1.
01を下回るような表面粗さを有すると、プリカーサー
繊維束の集束性が高すぎ焼けムラ発生の原因となる。一
方、表面積比が1.25を超えると、集束性が低くなり
すぎてプロセス性が低下する傾向にある。特に無撚で焼
成を行う場合には、その低下がより一層顕著となる。
【0055】微粒子がプリカーサー表面に存在すると、
単繊維間に空間ができ易くなり、繊維束内への酸素の拡
散を促進する効果が高まる。微粒子の径としては、0.
05〜5μmが良く、好ましくは0.07〜3μm、よ
り好ましくは0.1〜1μmが良い。微粒子の材質とし
ては、有機系の化合物やシリコーン系化合物などを使用
することもできるが、硬度が適切であり、プリカーサー
に傷を生じさせる恐れの少ない有機系の微粒子が好まし
い。有機系の化合物の中では、架橋ポリメチルメタクリ
レート、架橋ポリスチレンが好ましく使用できる。ま
た、かかる化合物をアミノ基で変性することによりプリ
カーサーとの親和性を向上させることも可能である。こ
れら微粒子は、耐炎化工程の前に、プリカーサー表面に
均一に付与しておくのが良い。具体的には、乳化剤によ
り水系のエマルジョンとしてシリコーン油剤に混合して
シリコーン油剤と共に付与するか、又は油剤付与後に、
別途、噴霧又は滴下により、付与する方法が挙げられ
る。この際の乳化剤としては、ノニオン系の界面活性剤
が好ましく使用できる。
【0056】これら好ましい方法により製造されたアク
リル系プリカーサーを耐炎化、炭化することによって、
所望する性能を有する炭素繊維が得られる。耐炎化に供
されるプリカーサーは、生産性の点から、単糸繊度が
0.5〜1d、1糸条当たりの単繊維本数が10000
〜60000本が好ましく、それぞれ0.6〜0.9
d、12000〜48000本がより好ましい。
【0057】以下、耐炎化条件について具体的に示す。
なお、耐炎化条件としては、これに限定されるものでは
ない。耐炎化の延伸比としては、プリカーサーが実質的
に無撚の状態及び/又は交絡がない状態で、0.85〜
1.0として耐炎化するのが好ましい。かかる延伸比
は、糸束としての焼けムラを抑制するために、0.87
〜0.94がより好ましい。かかる延伸比が0.85を
下回ると、プロセス性が低下し、1.0を超えると糸束
内への酸素の拡散が妨げられ、糸束中心部の焼けムラが
顕著となる傾向がある。
【0058】本発明において、実質的に無撚の状態と
は、プリカーサーに1ターン/mを超える撚りが存在し
ない状態を意味する。好ましくは、撚りが0.5ターン
/m以下であることが良い。プリカーサーに1ターン/
mを超える撚りが存在すると、糸束内への酸素の拡散促
進の点で不利となり、焼けムラが生じ易く、本発明の炭
素繊維を得難くなる。また、実質的に交絡がない状態と
は、プリカーサーにおいて、後述する方法で測定される
フックドロップ長が20cm以上、より好ましくは40
cm以上の状態のことを意味する。フックドロップ長が
20cmを下回るようであると、糸束内への酸素の拡散
促進の点で不利となり、焼けムラが生じ易く、本発明の
炭素繊維のような、高い性能を有する炭素繊維を得難く
なる。
【0059】耐炎化温度は、200〜300℃が良く、
それぞれの耐炎化進行度において、反応熱の蓄熱によっ
て糸切れが生じる温度より10〜20℃低い温度で、耐
炎化するのがコスト削減及び炭素繊維の性能を高める観
点から好ましい。耐炎化進行度は、得られる耐炎化糸に
ついて後述する方法によって測定される炎収縮保持率に
よって観測することができる。かかる炎収縮保持率は、
70〜90%となるように耐炎化するのが良く、好まし
くは74〜86%、より好ましくは76〜84%となる
ように耐炎化するのが良い。
【0060】耐炎化時間は、生産性及び炭素繊維の性能
を高める観点から、10〜100分間が良く、好ましく
は30〜60分間が良い。この耐炎化時間とは、プリカ
ーサーが耐炎化炉内に滞留している全時間をいう。この
時間が短か過ぎると、焼けムラが顕著になり、得られる
炭素繊維の性能が低下する場合がある。
【0061】耐炎化は、耐炎化後の糸束のギ酸への溶解
度(以下、ギ酸溶解度と略記)が0.05〜5%となる
ようにする必要があり、好ましくは0.08〜3%、よ
り好ましくは0.1〜1%となるようにするのが良い。
このようにギ酸溶解度を指標とすることにより、特に炭
化工程における熱処理量を節減しながら、高い弾性率を
発現する本発明の炭素繊維が得られるのである。前記ギ
酸溶解度については、その値が低い程、本発明の効果が
大きいが、その下限は、通常0.05%程度である。ま
た、ギ酸溶解度が5%を超えると、本発明の効果が低下
する傾向がある。
【0062】本発明の効果を得るために、すなわち、特
に炭化工程における熱処理量を節減しながら、高い弾性
率を発現する炭素繊維を得るために、前記ギ酸溶解度が
指標となる理由は、必ずしも明確でないが、次のように
推定される。一般に、アクリル系プリカーサーの耐炎化
反応は、環化反応とそれに続く酸化反応に分けられる。
酸化反応の十分進んでいない部分は耐熱性が低く、続く
炭化工程において配向緩和し易いため、結果としてその
部分の弾性率は低いものとなってしまう。本発明者らが
検討したところ、かかる酸化反応を律している要因は酸
素の拡散であり、各単繊維の中心部及び糸束の中心部に
至る程、酸化の程度が不足し、弾性率が低下しているこ
とが判った。耐炎化糸をギ酸中に浸漬したときに、かか
る酸化反応が充分に進行していない部分が溶出するもの
と考えられる。したがって、各単繊維及び糸束全体とし
て、ギ酸溶解度が特定値となるよう耐炎化することによ
って、焼けムラを抑制でき、本発明の炭素繊維が得られ
るようになると考えられる。従来、各単繊維の中心部に
おいて酸化の程度が不足していると考えられる部分は、
光学顕微鏡による観察により認められていたが、この方
法では、かかる部分が存在するか否かについては判定で
きるものの、定量的に把握するに至らず、また、糸束全
体として把握することもできなかった。
【0063】アクリル系プリカーサーの焼けムラを抑制
し、ギ酸溶解度を前記範囲となるようにするために、単
繊維及び糸束全体を対象として、多様な手段を講じるこ
とができる。具体的には、単繊維の焼けムラを抑制する
手段としては、プリカーサーの単繊維表層部へ、後述す
る耐炎化遅延元素を導入することが挙げられる。一方、
糸束としての焼けムラを抑制する手段としては、前述の
とおり、耐炎化工程における延伸比や、プリカーサーの
撚り数、交絡度、表面積比を特定の範囲とすることなど
が挙げられる。
【0064】以下、プリカーサーの単繊維表層部への耐
炎化遅延元素の導入について説明する。ここで、単繊維
表層部とは、単繊維の表面からの距離が単繊維の半径の
1/3以下である領域をいう。具体的には、耐炎化遅延
元素が、プリカーサーの単繊維表層部における濃度分布
がリング形状を呈しており、単繊維の中心部に向かっ
て、その濃度が漸次低下するような分布となるよう導入
されているのが、単繊維の焼けムラを抑制する上で良
い。ここで、単繊維表層部における耐炎化遅延元素の濃
度分布のピーク値は、0.01〜10重量%が良く、好
ましくは0.5〜3重量%が良い。
【0065】本発明において耐炎化遅延元素とは、耐炎
化工程において、プリカーサー繊維の酸化反応、すなわ
ち、耐炎化反応を遅延させる作用のある元素を言う。具
体的には、B(ホウ素)、Ca、Zr、Mg、Ti、
Y、Cr、Fe、Al、Sr及びランタノイド元素から
なる群から選ばれる少なくとも一種の元素が挙げられ
る。中でも、B、Ca、Zr、Ti及びAl元素からな
る群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、B、Ca
及びZr元素からなる群から選ばれる少なくとも一種が
より好ましい。この場合、これらの元素は、単体であっ
ても良いし、これらの元素を含む化合物の形態であって
も良い。特に、耐炎化遅延の効果が大きく、かつ、安全
性、価格、取り扱い易さなどから、ホウ素化合物が好ま
しい。ホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、メタホ
ウ酸、四ホウ酸、及びそれらの金属塩とアンモニウム
塩、三酸化二ホウ素、及びホウ酸エステル類が挙げられ
る。ホウ素化合物は、ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、
及びそれらの金属塩とアンモニウム塩などを水溶液とし
て付与するのが好ましい。また、金属を含むと、焼成時
に繊維に欠陥を生じて、かえって強度を低下させる場合
があるため、ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、及びそれ
らのアンモニウム塩など、金属を含まないものがより好
ましい。なお、これらホウ素化合物が、油剤中のシリコ
ーンと反応して、油剤の架橋を促進し、油剤が糸条表面
に形成する皮膜が強固となって、単繊維の傷や単繊維間
接着を抑制する効果が得られるようになる。
【0066】プリカーサー繊維全体に対する耐炎化遅延
元素の含有率(DV)は、0.001〜10重量%が好
ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。0.00
1重量%より低濃度では、単繊維内の焼けムラを抑制す
る効果が充分に発揮されない。また10重量%を超える
と、耐炎化遅延元素により、単繊維内にボイドが生じる
など粗い構造となり、得られる炭素繊維の性能が低下す
る場合がある。
【0067】耐炎化遅延元素は、耐炎化工程より前であ
ればどこで付与しても良いが、中でも、浴延伸後、乾燥
緻密化の前の膨潤状態にある浴延伸糸に付与するのが良
い。具体的には、耐炎化遅延元素は、前記シリコーン油
剤に混合して、油剤とともに、浴延伸糸に付与するの
が、工程が簡便になるとともに、シリコーン油剤の架橋
を促進する効果もあるため、好ましい。なおここで、浴
延伸糸の膨潤度を低下させることにより単繊維の外層部
の緻密性を上げ、耐炎化遅延元素の内部への浸透を抑制
するとともに、内層部を緻密にして、中心部の耐炎化遅
延元素の濃度が高くなり過ぎないよう配慮するのが好ま
しい。
【0068】アクリル系プリカーサー繊維の表層部の耐
炎化反応が遅延されると、表層部の耐熱性が低下するた
めに、耐炎化工程及び続く炭化工程で、単繊維間の接着
が発生し易くなる。前記したシリコーン油剤を糸条に付
与することにより、プリカーサーの表層部にケイ素の最
大濃度部を存在させ、単繊維間接着を抑制し、得られる
炭素繊維の引張強度を高めることができる。ここで、プ
リカーサー繊維全体に対するケイ素の含有率(SV)
(以下、ケイ素含有率と略記)は、0.01〜3重量%
が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。0.0
1重量%より低濃度では、単繊維間接着を抑制する効果
が充分に発揮されず、3重量%を超えると、焼成プロセ
スで飛散する排ガス、微粒子の量が多くなり、炭素繊維
の性能及びプロセスに悪影響を及ぼす場合がある。
【0069】耐炎化遅延元素のプリカーサー繊維内含有
量は、ICP発光分光分析法で測定できる。試料約0.
2gを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び水酸化ナトリ
ウムの混合融剤で加熱溶融し、さらに希塩酸に溶解した
ものを、測定に供する。一方、ケイ素の繊維内含有量
も、同様にICP発光分光分析法で測定できる。
【0070】耐炎化遅延元素は、前述のとおり、単繊維
表層部で高濃度、それより内部で低濃度の分布であるこ
とが、単繊維の内部が均一に耐炎化されるために好まし
い。したがって、次の(I)式で定義される耐炎化遅延
元素の単繊維の内外層における濃度比(DCR)は、5
〜1000が良く、好ましくは10〜1000、より好
ましくは20〜1000が良い。濃度比(DCR)が1
000を超えると、表層部の耐炎化遅延元素の濃度が高
くなり過ぎるか、内層部の濃度が低くなり過ぎるため、
炭素繊維に充分な強度が得られない場合がある。
【0071】DCR=Co /Ci …(I) ここで、Co は、二次イオン質量分析計(以下、SIM
Sと略記)で測定した単繊維外層部の元素カウント数、
Ci は、SIMSで測定した単繊維内層部の元素カウン
ト数である。単繊維外層部とは、表面から単繊維の直径
の1%の深さの領域のことであり、単繊維内層部とは、
表面から単繊維の直径の15%の深さの領域を意味す
る。
【0072】また、前記シリコーン油剤に由来するケイ
素は、炭化後にも残存して、欠陥の原因となり、炭素繊
維の強度を低下させる場合があるため、前述のとおり、
単繊維表面付近に局在化させて、できるだけ単繊維の内
部には浸透させないようにするのが好ましい。かかる観
点から前記(I)式で同様に定義されるケイ素の単繊維
の内外層における濃度比(SCR)は、10〜1000
0が良く、好ましくは100〜10000、より好まし
くは400〜10000が良い。かかる濃度比(SC
R)は、大きい程好ましいが、発明者らの検討によれ
ば、この濃度比(SCR)を10000以上とするのは
現状では困難であった。
【0073】SIMSによる耐炎化遅延元素及びケイ素
の、単繊維内における濃度の測定条件は、次のとおりで
ある。プリカーサーを並べ、真空中で、繊維の側面から
一次イオンを照射し、発生する二次イオンを測定する。
【0074】装置:ドイツATOMIKA社製 A-DIDA3000 一次イオン種:O2 + 一次イオンエネルギー:12keV 一次イオン電流:100nA ラスター領域:250×250μm ゲート率:30% 分析領域:75×75μm 検出二次イオン:正イオン 電子スプレー条件:0.6kV−3.0A(F7.5) 測定時真空度:1×10-8Torr、H−Q−H:#1
4 このような手段により、耐炎化工程における焼けムラを
抑制した後、続く炭化工程で炭化して炭素繊維とする。
【0075】炭化工程では、不活性雰囲気中、300〜
800℃で予備炭化し、さらに不活性雰囲気中、800
〜1600℃で炭化する必要がある。後者の炭化温度
は、1100℃以上が良く、好ましくは1200℃以上
が良い。すなわち、1100℃未満では、得られる炭素
繊維に含まれる水分率が高くなる場合がある。また、炭
化の温度は1600℃を上限値とするのが良く、好まし
くは1500℃を上限値とするのが良い。1600℃を
超えると、繊維内において結晶の成長が顕著となり、圧
縮強度、樹脂との接着性が低下する傾向がある。
【0076】予備炭化工程における延伸比としては、
1.0〜1.5が良く、好ましくは1.02〜1.3、
より好ましくは1.04〜1.15が良い。かかる延伸
比は高い程、弾性率発現の点で有利であるが、1.5を
超えるとプロセス性の低下が顕著となる場合がある。従
来、大きな収縮が生じる予備炭化において延伸比を上昇
させると、特に1を超えたとき、毛羽発生、糸切れによ
り著しくプロセス性が低下する問題があった。しかし、
前記したようにギ酸溶解度を適正化することで、安定し
た予備炭化が可能となった。
【0077】炭化工程における昇温速度及び処理時間に
ついては、所望する炭素繊維の性能と所要コストを勘案
の上、適宜選択できる。特に、300〜500℃/分及
び1000〜1200℃/分の、通常採用する昇温速度
を、それぞれ1000℃/分以下にすることが好まし
く、500℃/以下がより好ましい。また、炭化の処理
時間は、炭化の程度が問題とならない範囲で、できるだ
け短くするのが、コスト削減の観点から好ましい。
【0078】このようにして得られた炭素繊維に、さら
に表面処理することにより、コンポジットのマトリック
スとして、樹脂との接着性をより高めることが可能であ
る。
【0079】表面処理方法としては、気相、液相処理を
採用できるが、生産性、品質バラツキを考慮すると、液
相処理における電解処理が好ましく採用できる。
【0080】電解処理に用いられる電解液としては、硫
酸、硝酸、塩酸などの酸性溶液、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
といったアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用で
きるが、好ましくはアンモニウムイオンを含む水溶液が
良い。具体的には、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウ
ム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アン
モニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸水素2アンモ
ニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、又
は、それらの混合物を含む水溶液を用いることができ
る。
【0081】電解処理に要する電気量は、適用する炭素
繊維により異なり、例えば、炭化度の高い炭素繊維であ
る程、大きな電気量が必要となる。表面処理量として
は、X線光電子分光法(ESCA)により測定される炭
素繊維の表面酸素濃度O/C及び表面窒素濃度N/C
が、それぞれ0.05〜0.40、及び、0.02〜
0.30となるように処理するのが良い。
【0082】これら条件の適用により、コンポジットに
おいて炭素繊維とマトリックスとの接着性を適正化でき
るため、接着が強すぎて非常にブリトルな破壊となり、
コンポジットの、繊維方向における引張強度が低下する
といった問題や、繊維方向における引張強度は高いもの
の、樹脂との接着性に劣るために非繊維方向における機
械的特性が発現しないといった問題が解消され、繊維及
び非繊維方向にバランスのとれたコンポジット特性が発
現されるようになる。
【0083】さらに必要に応じて炭素繊維にサイジング
処理がなされる。サイジング剤には、マトリックスとの
相溶性の良いサイジング剤が良く、マトリックスに応じ
て適宜選択される。
【0084】なお、後述する実施例においては、各物性
値は以下の方法により測定した。 <炭素繊維中の窒素含有量NCの測定方法>柳本製作所
CHNCorder ModelMT−3を用いて測定
することができる。試料は重量約1〜2mgを精秤して
用い、燃焼条件としては、試料分解用炉温度930℃、
酸化用炉温度850℃、還元用炉温度550℃、ヘリュ
ウム流量180ml/分、酸素流量20ml/分とす
る。なお、その際試料中の水分率を前もって測定してお
き、試料の重量を補正するのが好ましい。
【0085】<強度及び引張弾性率YMの測定方法>炭
素繊維の強度は、日本工業規格(JIS)−R−760
1「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法によ
り、求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸
ストランドは、”BAKELITE”ERL4221
(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン
(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含
浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。ま
た、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の
平均値を、その炭素繊維の強度、引張弾性率とする。
【0086】<炭素繊維の結晶サイズLc及び配向度π
002 の測定方法>40mm長に切断した繊維束を20m
gを精秤し、試料繊維軸が正確に平行になるようそろえ
た後、薄いコロジオン液を含浸させ幅1mmの厚さが均
一な角柱試料とする。得られた試料について、X線源と
してNiフィルターにより単色化したCuKα線を用
い、出力40KV−20mA、計数管としてシンチレー
ションカウンターを用いX線回折測定を行う。2θ=2
6゜近傍の面指数(002)に対応した回折ピークの半
価幅Be及び同ピークについて円周方向にスキャンして
得られる半価幅Hから、下記式により結晶サイズLc及
び配向度π002 を求めることができる。 結晶サイズLc(オンク゛ストローム)=λ/(B0×COS
θ) λ:X線の波長 B0=(Be2 −B12 1/2 (B1は装置定数。ここでは1.046×10-2ra
d) θ:Bragg角 配向度π002 (%)={(180−H)/180}×1
00
【0087】<炭素繊維の拡がり性指数の定義及び測定
方法>測定する炭素繊維の1m当たりの重量を精秤しG
m(g)とする。直径約730mm、幅500mmの鋼
製で回転可能なドラムに離型紙を巻く。炭素繊維をその
単繊維本数12000本当たり1000gの張力で引き
出しつつ、樹脂組成物として油化シェルエポキシ社製、
エピコート(登録商標)828を含浸せしめた後、前記
ドラムを回転させかつ糸条を一定速度でトラバースさせ
ながら、離型紙上に巻き付ける。数回転巻き付けた後、
離型紙上における糸幅を定規により0.1mm単位で3
0点測定し、その平均値をW(mm)とする。拡がり性
指数は以下の式で定義される。測定は少なくとも単繊維
本数が3000本以上の炭素繊維束を用いる。 拡がり性指数=W/Gm
【0088】<ギ酸溶解度の測定方法>耐炎化糸約2.
5gを熱風オーブンなどを用い120℃で2時間の乾燥
した後、その重量を精秤しGp(g)とする。200c
cのビーカーに該サンプルを入れ、純度90〜100%
のギ酸を100cc注ぎ、そのまま室温で100分放置
しギ酸処理する。処理後、該サンプルを取り出し、流水
中で1時間、90℃の温水中で2時間洗浄する。続い
て、前記同様120℃で2時間の乾燥した後、その重量
を精秤しGl(g)とする。ギ酸溶解度(%)は以下の
式で定義される。 ギ酸溶解度(%)={(Gp−Gl)/Gp}×100
【0089】<フックドロップ長の測定方法>測定に供
するプリカーサーを約1m採取し、一端を固定し、もう
一端に単繊維本数12000本当たり500gの張力が
かかるよう重りをつけ、垂直にぶらさげる。長さ約3c
m、直径約0.5mmのステンレス製針金の一端を、直
径5mmの円に沿うようフック状に折り曲げ、他端に5
gの重りをつけたものを用意する。このフック部をプリ
カーサーの糸束の中心部に差し入れ静かに放し、落下後
静止するまでの距離を定規を用い測定する。少なくとも
10回の測定を行い、その平均値をフックドロップ長と
する。
【0090】<炭素繊維及びプリカーサーの表面積比の
測定方法>測定に供するプリカーサー又は炭素繊維を試
料台に固定し、Digital Instruments社製 NanoScopeI
IIを用い、下記条件にて3次元表面形状の像を得る。 炭素繊維(走査トンネル顕微鏡) 探針:タングステン電解研磨針 測定環境:室温大気中 観察モード:定電流モード 試料バイアス電圧:1〜2V トンネル電流:0.2〜0.3nA 走査速度:0.2〜0.5Hz 走査範囲:2.4μm×2.4μm 炭素繊維(原子間力顕微鏡) 探針:Siカンチレバー一体型探針(オリンパス光学工
業社製 OMCL-AC120TS) 測定環境:室温大気中 観察モード:タッピングモード 走査速度:0.3〜0.4Hz 走査範囲:2.5μm×2.5μm ピクセル数:512×512 プリカーサー(原子間力顕微鏡) 探針:SiNカンチレバー(オリンパス光学工業社製、
バネ定数0.7N/m) 測定環境:室温大気中 観察モード:コンタクトモード(力一定) 走査速度:0.2〜0.5Hz 走査範囲:2.4μm×2.4μm 得られた像全体について、前記装置付属ソフトウエア(N
anoScopeIIIバーション4.22r2、1次Flattenフィ
ルタ、Lowpassフィルタ、3次Plane Fitフィルタ使用)
によりデータ処理し、実表面積と投影面積を算出する。
なお、投影面積については、繊維断面の曲率を考慮し近
似した2次曲面などへの投影面積を算出し、用いる。表
面積比は以下の式で定義される。表面積比=実表面積/
投影面積
【0091】<炎収縮保持率の測定方法>耐炎化後の糸
束を約40cm採取し、試長20cmとなるようにクリ
ップなどの不燃物でマークをつける。次に、一端を固定
し、もう一端に1d、3000本当たり10gの張力を
かけ、マークした試長間をブンセンバーナーの炎によっ
て加熱する。この際、ブンセンバーナーの炎の高さは約
15cmとし、炎の上部約1/3の部分を用い、マーク
間を約15秒/20cmの速さで1往復半移動させなが
ら加熱する。その後、マーク間の長さを測定し、これを
Wb(mm)とすると、炎収縮保持率(%)は以下の式
で定義される。 炎収縮保持率(%)=(Wb/200)×100
【0092】
【実施例】以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体
的に説明する。なお、これら実施例、比較例の主要な物
性データは表1と表2に一括して示した。
【0093】コンポジットの特性は、以下の方法により
評価した。樹脂は、特公平4−80054号公報開示の
実施例1に倣って、次のように調整した。すなわち、油
化シェルエポキシ社製、エピコート(登録商標)100
1を3.5Kg(35重量部)、同社製、エピコート8
28を2.5Kg(25重量部)と大日本インキ化学工
業社製、エピクロン(登録商標)N740を3.0Kg
(30重量部)、油化シェルエポキシ社製、エピコート
152を1.5Kg(15重量部)及び電気化学工業社
製、デンカホルマール(登録商標)#20を0.3Kg
(3重量部)とジクロロフェニルジメチルウレア0.5
Kg(5重量部)を添加し、30分間撹拌して樹脂組成
物を得た。これを離型紙にコーティングし、樹脂フィル
ムとしたものを用いた。先ず、円周約2.7mの鋼製ド
ラムに、炭素繊維と組み合わせる樹脂を、シリコン塗布
ペーパー上に前記樹脂フィルムを巻き、次にこの樹脂フ
ィルム上に、クリールから引き出した炭素繊維を、トラ
バースを介して巻き取り、配列して、さらに、その繊維
の上から、前記樹脂フィルムを再度かぶせた後、加圧ロ
ールで回転加圧して、樹脂を繊維内に含浸せしめ、巾3
00mm、長さ2.7mの一方向プリプレグを作製し
た。このとき、繊維間への樹脂の含浸を良くするため
に、ドラムは、60〜70℃に加熱し、また、プリプレ
グの繊維目付は、ドラムの回転数とトラバースの送り速
度を調整することによって、繊維目付約200g/
2 、樹脂量約35重量%のプリプレグを作製した。こ
のように作製したプリプレグを、裁断し、肉厚約2mm
の一方向硬化板を作製した。得られた一方向硬化板か
ら、幅12.7mm、長さ90mmの曲げ試験用試験片
及び層間剪断試験用試験片を作製し、以下に示す試験法
によりコンポジット曲げ強度及び層間剪断強度(ILS
S)を得た(曲げ強度は繊維体積分率60%に換算して
求めた)。曲げ試験は3点曲げにより行い、サポート棒
直径6.35mm、ロード棒直径12.7mm、サポー
トスパン32×t(tは試料厚み)mm、歪速度は3.
4mm/分とした。層間剪断試験は、ASTMのD23
44−84に準拠して行った。
【0094】[実施例1]アクリロニトリル(AN)9
9.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合
体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によ
り重合し、濃度22%の紡糸原液を得た。重合後、アン
モニアガスをpHが8.5になるまで吹き込み、イタコ
ン酸を中和して、アンモニウム基をポリマー成分に導入
することにより、紡糸原液の親水性を向上させた。得ら
れた紡糸原液を、40℃として、直径0.15mm、孔
数6000の紡糸口金を用いて、一旦空気中に吐出し、
約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールし
た35%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴
に導入する乾湿式紡糸法により凝固させた。得られた凝
固糸を、水洗した後、温水中で延伸した。延伸浴は4槽
用い、第1浴から10℃づつ昇温して、第4浴の温度を
90℃とした。また、浴延伸倍率は3.5倍とした。得
られた浴延伸糸の膨潤度は、73%であった。得られた
延伸糸を、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコ
ーン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンから成る
シリコーン系油剤に、ホウ酸と、ジビニルベンゼンで架
橋したポリメチルメタクリレートの微粒子(平均粒子
径:0.3μm)を乳化したエマルジョンを混合した油
剤を用いた油剤浴中を通すことにより、油剤及び微粒子
を繊維に付与した。アミノ変性シリコーン、エポキシ変
性シリコーン、及びエチレンオキサイド変性シリコーン
の25℃における粘度は、それぞれ、4000cSt,
12000cSt、及び500cStとした。これらの
成分を混合した油剤の、空気中及び窒素中の加熱残存率
(r)は、それぞれ、82%及び71%であった。
【0095】さらに、150℃の加熱ローラーを用い
て、乾燥緻密化処理を行った。
【0096】得られた乾燥緻密化処理糸を、さらに、3
kg/cm2−Gの加圧スチーム中で、延伸することに
より、製糸全延伸倍率を13倍とし、単糸繊度0.8
d、単繊維本数18000本のアクリル系プリカーサー
を得た。
【0097】得られた繊維束を、無撚状態で240〜2
80℃の空気中で、延伸比0.90で加熱して、炎収縮
保持率が80%の耐炎化糸に転換した。得られた耐炎化
糸を300〜800℃の不活性雰囲気中で延伸比1.0
4で予備炭化した後、最高温度1500℃で炭化した。
焼成後、硫酸の水溶液中で、10クーロン/g−CFの
陽極酸化処理を行った。最終焼成速度は、10m/分と
した。得られた炭素繊維の性能は非常に良好であり、高
い強度と弾性率を示した。
【0098】[実施例2]単糸繊度が0.95d、単繊
維本数が12000本のアクリル系プリカーサーを用
い、耐炎化工程における延伸比が0.87、予備炭化工
程における延伸比が1.0、炭化工程における最高温度
を1250℃とした以外は実施例1と同様にして炭素繊
維を得た。得られた炭素繊維の性能は非常に良好であ
り、高い強度と弾性率を示した。
【0099】[実施例3]耐炎化工程における延伸比が
0.93、予備炭化工程における延伸比が1.1、炭化
工程における最高温度を1400℃とした以外は実施例
1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の性
能は非常に良好であり、高い強度と弾性率を示した。
【0100】[実施例4]最終焼成速度を12m/分と
した以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得ら
れた炭素繊維の性能は非常に良好であり、高い強度と弾
性率を示した。
【0101】[実施例5]実施例1と同様の方法で得ら
れた紡糸原液を、50℃として、直径0.15mm、孔
数6000の紡糸口金を用いて、一旦空気中に吐出し、
約4mmの空間を通過させた後、20℃にコントロール
した45%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固
浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固させた。得られた
凝固糸を、水洗した後、温水中で延伸した。延伸浴は4
槽用い、第1浴から10℃づつ昇温して、第4浴の温度
を90℃とした。また、浴延伸倍率は5倍とした。得ら
れた浴延伸糸の膨潤度は、130%であった。得られた
延伸糸を、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコ
ーン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンから成る
シリコーン系油剤を用いた油剤浴中を通すことにより、
油剤を繊維に付与した。アミノ変性シリコーン、エポキ
シ変性シリコーン、及びエチレンオキサイド変性シリコ
ーンの25℃における粘度は、実施例1と同様とした。
これらの成分を混合した油剤の、空気中及び窒素中の加
熱残存率(r)は、それぞれ、79%及び63%であっ
た。
【0102】さらに、170℃の加熱ローラーを用い
て、乾燥緻密化処理を行った。得られた乾燥緻密化処理
糸を、さらに、4kg/cm2−Gの加圧スチーム中
で、延伸することにより、製糸全延伸倍率を13倍と
し、単糸繊度0.8d、単繊維本数18000本のアク
リル系プリカーサーを得た。
【0103】得られたプリカーサー繊維束を、無撚状態
で240〜280℃の空気中で、延伸比0.90で耐炎
化して、炎収縮保持率が81%の耐炎化糸に転換した。
得られた耐炎化糸を300〜800℃の不活性雰囲気中
で延伸比1.04で予備炭化した後、最高温度1550
℃で炭化した。焼成後、硫酸の水溶液中で、10クーロ
ン/g−CFの陽極酸化処理を行った。最終焼成速度
は、10m/分とした。得られた炭素繊維の性能は非常
に良好であり、高い強度と弾性率を示した。
【0104】[実施例6]単糸繊度が0.95d、単繊
維本数が12000本のアクリル系プリカーサーを用
い、炭化工程における最高温度を1300℃とした以外
は実施例5と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の性能は非常に良好であり、高い強度と弾性率を示
した。
【0105】[実施例7]実施例1と同様の方法で得ら
れた紡糸原液を、60℃として、直径0.06mm、孔
数6000の紡糸口金を用いて、70℃にコントロール
した70%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固
浴中に直接導入する湿式紡糸法により凝固させた。得ら
れた凝固糸を、水洗した後、温水中で延伸した。延伸浴
は4槽用い、第1浴から10℃づつ昇温して、第4浴の
温度を95℃とした。また、浴延伸倍率は2倍とした。
得られた浴延伸糸の膨潤度は、200%であった。得ら
れた延伸糸を、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シ
リコーン、及びエチレンオキサイド変性シリコーンから
成るシリコーン系油剤を用いた油剤浴中を通すことによ
り、油剤を繊維に付与した。アミノ変性シリコーン、エ
ポキシ変性シリコーン、及びエチレンオキサイド変性シ
リコーンの25℃における粘度は、実施例1と同様とし
た。これらの成分を混合した油剤の、空気中及び窒素中
の加熱残存率(r)は、それぞれ、79%及び63%で
あった。
【0106】さらに、180℃の加熱ローラーを用い
て、乾燥緻密化処理を行った。
【0107】得られた乾燥緻密化処理糸を、さらに、4
kg/cm2−Gの加圧スチーム中で、延伸することに
より、製糸全延伸倍率を13倍とし、単糸繊度0.8
d、単繊維本数18000本のアクリル系プリカーサー
を得た。 得られた繊維束を、無撚状態で240〜28
0℃の空気中、延伸比0.90で耐炎化して、炎収縮保
持率が78%の耐炎化糸に転換した。得られた耐炎化糸
を300〜800℃の不活性雰囲気中で延伸比1.04
で予備炭化した後、最高温度1550℃で炭化した。焼
成後、硫酸の水溶液中で、8クーロン/g−CFの陽極
酸化処理を行った。最終焼成速度は、10m/分とし
た。得られた炭素繊維の性能は非常に良好であり、高い
強度と弾性率を示した。
【0108】[実施例8]単糸繊度が0.95d、単繊
維本数が12000本のアクリル系プリカーサーを用
い、炭化工程における最高温度を1300℃とした以外
は実施例5と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の性能は非常に良好であり、高い強度と弾性率を示
した。
【0109】[比較例1]製糸工程においてホウ酸と、
ジビニルベンゼンで架橋したポリメチルメタクリレート
の微粒子を付与せず、耐炎化工程の温度を230〜27
0℃、予備炭化工程における延伸比を0.97、炭化工
程における最高温度を1700℃とした以外は実施例1
と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の強度
と弾性率はやや不満足なものであった。
【0110】[比較例2]単糸繊度が0.95d、単繊
維本数が12000本のアクリル系プリカーサーを用
い、炭化工程における最高温度を1200℃とした以外
は比較例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の強度と弾性率はやや不満足なものであった。
【0111】[比較例3]アクリル系プリカーサーに5
ターン/mの撚りを導入しながら耐炎化し、耐炎化工程
における延伸比を1.02、予備炭化工程における延伸
比を1.04、炭化工程における最高温度を1500
℃、最終焼成速度を6m/分とした以外は比較例1と同
様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維は、解撚の
後、コンポジットの物性評価に供した。得られた炭素繊
維の強度と弾性率はやや不満足なものであった。
【0112】[比較例4]アクリル系プリカーサーに1
0ターン/mの撚りを導入しながら耐炎化した以外は実
施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維
は、解撚の後、コンポジットの物性評価に供した。得ら
れた炭素繊維の強度と弾性率はやや不満足なものであっ
た。
【0113】[比較例5]予備炭化工程における延伸比
を1.04、炭化工程における最高温度を1500℃と
した以外は比較例1と同様にして炭素繊維を得た。得ら
れた炭素繊維の強度と弾性率はやや不満足なものであっ
た。
【0114】
【表1】
【表2】
【0115】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の炭素繊維
の製造方法により、コストの上昇、プロセス性の低下を
招くことなく、引張強度、圧縮強度、弾性率、樹脂との
接着性が高いレベルでバランスした炭素繊維を得ること
ができる。また、上記本発明の炭素繊維を用いることに
より、高い曲げ強度を有するコンポジットが得られ、航
空機の一次構造材などに適用すれば、より一層の軽量化
を図ることができる。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】引張弾性率YM(GPa)及び窒素含有量
    NC(%)が下記式(A)及び(B)を満たすことを特
    徴とする炭素繊維。 NC≧−30.102×LOG(YM)+77.785 …(A) 200≦YM≦340 …(B)
  2. 【請求項2】X線回折により求められる、結晶配向度π
    002(%)と結晶サイズLc(オンク゛ストローム)とが下記式
    (C)及び(D)を満たすことを特徴とする請求項1記
    載の炭素繊維。 π002 ≧21.778×LOG(Lc)+55.427 …(C) 15≦Lc≦25 …(D)
  3. 【請求項3】該炭素繊維の走査トンネル顕微鏡により測
    定される表面積比が、1.02〜1.2であることを特
    徴とする請求項1又は2記載の炭素繊維。
  4. 【請求項4】該炭素繊維の原子間力顕微鏡により測定さ
    れる表面積比が、1.01〜1.17であることを特徴
    とする請求項1又は2記載の炭素繊維。
  5. 【請求項5】該炭素繊維の拡がり性指数が20〜40で
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    炭素繊維。
  6. 【請求項6】単繊維径が4〜8μmである請求項1〜5
    のいずれかに記載の炭素繊維からなり、単繊維本数が1
    0000〜60000本であることを特徴とする炭素繊
    維束。
  7. 【請求項7】アクリル系プリカーサーを、ギ酸溶解度が
    0.05〜5%となるように耐炎化した後、300〜8
    00℃の不活性雰囲気において予備炭化し、さらに80
    0〜1600℃の不活性雰囲気において炭化することを
    特徴とする炭素繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】実質的に無撚であるアクリル系プリカーサ
    ーを、延伸比0.85〜1.0で耐炎化し、かつ延伸比
    1.0〜1.5で予備炭化することを特徴とする請求項
    7記載の炭素繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】実質的に無撚であって、かつ交絡がないア
    クリル系プリカーサーを、延伸比0.85〜1.0で耐
    炎化し、かつ延伸比1.0〜1.5で予備炭化すること
    を特徴とする請求項7記載の炭素繊維の製造方法。
  10. 【請求項10】該アクリル系プリカーサーの原子間力顕
    微鏡により測定される表面積比が、1.01〜1.25
    であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載
    の炭素繊維の製造方法。
  11. 【請求項11】該アクリル系プリカーサーが、95モル
    %以上のアクリロニトリルと5モル%以下の耐炎化促進
    成分からなり、耐炎化遅延元素が単繊維の表層部に存在
    し、かつ、単繊維の表層部にケイ素の最大濃度部が存在
    することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載
    の炭素繊維の製造方法。
  12. 【請求項12】該アクリル系プリカーサーが、有機系の
    化合物またはシリコーン系化合物からなる微粒子を繊維
    表面に有することを特徴とする請求項7〜11のいずれ
    かに記載の炭素繊維の製造方法。
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