JP3047731B2 - フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法

Info

Publication number
JP3047731B2
JP3047731B2 JP9988694A JP9988694A JP3047731B2 JP 3047731 B2 JP3047731 B2 JP 3047731B2 JP 9988694 A JP9988694 A JP 9988694A JP 9988694 A JP9988694 A JP 9988694A JP 3047731 B2 JP3047731 B2 JP 3047731B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon fiber
less
molding
fiber
yarn
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP9988694A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07310240A (ja
Inventor
正芳 鷲山
幾雄 竹内
秀雄 玉井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP9988694A priority Critical patent/JP3047731B2/ja
Publication of JPH07310240A publication Critical patent/JPH07310240A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3047731B2 publication Critical patent/JP3047731B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
  • Inorganic Fibers (AREA)
  • Chemical Treatment Of Fibers During Manufacturing Processes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィラメントワインデ
ィング(以下、FWと略す)成形法により複合材料など
を成形するに適した炭素繊維およびその製造方法に関す
る。さらに詳しくは、FW成形法により複合材料などを
成形するに際して、毛羽立ち、糸切れ等が少なく、さら
には炭素繊維の機械的特性をFW成形法により作製した
複合材料の機械的特性に効率良く反映し得る炭素繊維お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維はその優れた機械的特性、特に
比強度、比弾性率が高いという特徴を有しているため、
航空宇宙用途、レジャー用途、一般産業用途などに広く
使用されており、その成形方法も様々である。この中で
もFW成形法は元来ガラス繊維に適用されてきた方法で
あり、その優れた成形性、あるいは得られる複合材料の
特性から炭素繊維にも広く適用されるようになってき
た。特に現在注目されている天然ガス自動車などの燃料
用ボンベは、その軽量かつ高性能化のために、炭素繊維
を補強繊維としてFW成形法で成形しており、FW成形
に適した炭素繊維の要求が日増しに高まっている。
【0003】一般に、FW成形法に要求される補強繊維
の特性としては、耐毛羽性などに代表される高いハンド
リング性能、耐擦過性、耐糸切れ性などに代表される高
い工程通過性能、または高速樹脂含浸性能などが挙げら
れる。ハンドリング性能を改善する方法として、炭素繊
維にサイジング剤を付与すること(例えば、特開昭62
−299580号公報、特公平1−46636号公報、
特公昭57−49675号公報)などがこれまでに提案
されている。しかしながら、FW成形に用いる場合に
は、樹脂含浸前後での、炭素繊維と固定ガイドあるいは
ローラーとの擦過など、過酷な条件下でも高い工程通過
性能を維持することが要求されるが、この要求に対して
サイジング剤による炭素繊維の集束のみで改善すること
には無理があった。また一方、炭素繊維自体をFW成形
法に適した特性とする検討は、これまでに十分になされ
ていないのが現状であった。したがって、従来の炭素繊
維では、FW成形法において、成形工程で毛羽立ち、糸
切れ等がしばしば発生し、さらには炭素繊維の特性が、
得られる複合材料の特性に十分に反映されていないとい
う問題点があった。
【0004】本発明者らは、この様な点に鑑み、FW成
形法に適した炭素繊維について鋭意検討した結果、ある
一定値以上のストランド引張強度、後述する糸切れ限界
張力、さらに引掛強度を有する炭素繊維が、成形工程で
の工程通過性能が著しく向上すること、そして得られる
複合材料の特性も著しく向上することを見い出し、本発
明に至ったのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、FW
成形法に適した炭素繊維、具体的にはFW成形工程にお
いて毛羽立ち、糸切れ等が少なく、さらにはFW成形法
により作製した複合材料の特性を効率良く反映し得る炭
素繊維を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のフィラメントワ
インディング成形用炭素繊維は上記課題を解決するた
め、次の構成を有する。すなわち、ストランド引張強度
が400kgf/mm2 以上であり、糸切れ限界張力が0.2
g/D以上であり、および引掛強度が100kgf/mm2
上であることを特徴とするフィラメントワインディング
成形用炭素繊維である。
【0007】また、本発明のフィラメントワインディン
グ成形用炭素繊維の製造方法は上記課題を解決するた
め、次の構成を有する。すなわち、単繊維繊度が0.8
d以下であり、ヨウ素吸着法による明度差(ΔL)が5
0以下であるアクリル系繊維を原料として、温度230
℃以上280℃以下の空気中、0.80以上1.00以
下の延伸比で耐炎化し、引き続いて最高温度1100℃
以上2000℃以下の不活性雰囲気中、1000℃から
最高温度までの温度域における延伸比を0.98以下と
し、該温度域における昇温速度を1000℃/分以下と
て炭素化処理した後、電解表面処理、サイジング処理
することを特徴とするフィラメントワインディング成形
用炭素繊維の製造方法である。
【0008】さらに詳細に本発明について説明する。
【0009】本発明の炭素繊維の原料としては特に限定
されるものではないが、ポリアクリロニトリル(以下、
PANと略す)、ピッチ、レーヨン等を挙げることがで
きる。得られる炭素繊維のハンドリング性能、工程通過
性能をより高いものとし、さらにはFW成形法によって
得られる複合材料の性能を良好なものとするためには、
PANを原料とした炭素繊維が好ましい。
【0010】本発明の炭素繊維は、ストランド引張強度
が400kgf/mm2 以上、好ましくは450kgf/mm2 以上
であることが必要である。ストランド引張強度が400
kgf/mm2 未満であると、FW成形工程において特にマト
リックス樹脂が付着する前の炭素繊維と固定ガイドある
いはローラーとの擦過による毛羽立ちが多くなる他、得
られる複合材料の機械的特性が低いものとなる。ストラ
ンド引張強度の上限については特に限定されず、適用す
る複合材料のコストパフォーマンスの点から適宜選択で
きるが、必要以上にストランド引張強度が高くてもFW
成形方法によっては工程通過性能のさらなる向上が認め
られない場合があり、またその強度が複合材料の特性に
十分効率良く反映しない場合もあるので好ましくは80
0kgf/mm2 以下、より好ましくは750kgf/mm2 以下で
あることが望ましい。
【0011】ここで、ストランド引張強度とは次のよう
にして測定したものである。ベークライト(登録商標)
ERL4221(ユニオン・カーバイド(株)製)/三
フッ化ホウ素モノエチルアミン/アセトン=100/3
/4部からなる樹脂を炭素繊維に含浸し、得られた樹脂
含浸ストランドを130℃で30分間加熱して硬化させ
た後、JIS−R−7601に規定する樹脂含浸ストラ
ンド試験法に従って測定する。
【0012】また本発明の炭素繊維は、その糸切れ限界
張力が0.2g/D以上、好ましくは0.25g/D以
上であることが必要である。糸切れ限界張力が0.2g
/D未満であると、FW成形工程において特にマトリッ
クス樹脂が付着した後の炭素繊維と固定ガイドあるいは
ローラーとの擦過によって、毛羽立ちおよび糸切れが頻
発するようになり、生産性が著しく低下する。糸切れ限
界張力の上限については特に限定されず、適用する複合
材料のコストパフォーマンスの点から適宜選択できる
が、必要以上に糸切れ限界張力が高くても、FW成形方
法によっては工程通過性能のさらなる向上が認められな
い場合もあるので、好ましくは15g/D以下、より好
ましくは10g/D以下であることが望ましい。
【0013】ここで、糸切れ限界張力とは次のようにし
て測定したものである。図1に示したように、一定の目
付を有する炭素繊維束をボビンに巻き取り、張力調整が
可能なクリール(a)にボビンを仕掛け、ボビンから横
取りして該炭素繊維束(b)を25m/分の一定速度で
引き出す。表面が梨地の回転ローラー4個(c1〜c
4)を介して糸道を固定させた後、該炭素繊維束(b)
を、“エピコート828”100重量部、および“エピ
コート1001”300重量部(油化シェルエポキシ社
製)が均一に混合された濃度55重量%、温度20℃の
メチルエチルケトン溶液(f)に、直径15mmφ、表面
平滑度3Sのステンレス製固定バー(d1)を介して浸
漬させ、さらに50mm間隔で3本水平に固定された直径
15mmφ、表面平滑度3Sのステンレス製棒(d2〜d
4)を介して、ドラム(g)に巻き取る。ボビンに巻回
された前記炭素繊維束の引き出し張力を徐々に大きく
し、該固定擦過棒を通過する繊維束に糸切れが発生した
ときのC3とC4間の最大張力を5回測定し、その平均
値から次式により糸切れ限界張力を求める。
【0014】糸切れ限界張力[ g/D] =(最大張力[
g] )/(目付[ g/m] ×9000) さらに本発明の炭素繊維は、その引掛強度が100kgf/
mm2 以上、好ましくは140kgf/mm2 以上、より好まし
くは170kgf/mm2 以上であることが必要である。引掛
強度が100kgf/mm2 未満であると、FW成形工程にお
いて特にマトリックス樹脂が付着する前の炭素繊維と固
定ガイドあるいはローラーとの擦過による毛羽立ち、ま
たはマトリックス樹脂が付着した後の毛羽立ちおよび糸
切れが頻発するようになり、生産性が著しく低下すると
ともに、得られる複合材料の機械的特性、特に強度利用
率あるいは耐衝撃特性が低下する。引掛強度の上限につ
いては特に限定されず、適用する複合材料のコストパフ
ォーマンスの点から適宜選択できるが、必要以上に引掛
強度が高くてもFW成形方法によっては工程通過性能の
さらなる向上が認められない場合もあるので、好ましく
は400kgf/mm2 以下、より好ましくは350kgf/mm2
以下であることが望ましい。
【0015】ここで、引掛強度は次のようにして測定し
たものである。テンシロン引張試験機(UTM−4−2
00)を用い、クロスヘッド間隔200mmでJIS−L
−1013(1992)、7.7項目に記載の炭素繊維束のル
ープを作る。そしてクロスヘッド速度50mm/分で引張
り、破断荷重[kgf] を測定する。破断荷重より次式を用
いて引掛強度を求める。
【0016】引掛強度[ kgf/mm2 ] =(破断荷重[kgf]
)/(目付[g/m] /密度[ g/cm3 ] ) 測定を50回行ない、その平均値を求めた。
【0017】本発明のFW成形用炭素繊維は、上記した
ストランド引張強度、糸切れ限界張力および引掛強度の
いずれもが前記した値を満足することによって初めて、
FW成形時の過酷な条件下においてもハンドリング性が
良好なものとなり、しかも炭素繊維の特性を、複合材料
の特性に十分に反映し得るものとなる。
【0018】本発明のFW成形用炭素繊維は、例えばP
AN系の炭素繊維の場合、次のようにして製造すること
ができる。
【0019】プリカーサ(前駆体)として用いるアクリ
ル系繊維は緻密性の高いものであることが好ましい。プ
リカーサーの緻密性は、ヨウ素吸着法による明度差(Δ
L)として次のようにして測定することができる。
【0020】長さが5〜7cmの乾燥されたアクリル系
繊維を約0.5g精秤して、200mlの共栓付三角フ
ラスコに採り、ヨウ素溶液(I2 :51 g、2,4-ジクロロ
フェノール:10 g、酢酸:90 g、およびヨウ化カリウ
ム:100gを秤量し、1リットルのメスフラスコに移して
水で溶解して定容とする)100mlを加えた後、60
±0.5℃で50分間振とうしながら吸着処理を行う。
ヨウ素を吸着した試料を流水中で30分間水洗した後、
遠心脱水(2000rpm ×1分)を行い、すばやく風乾す
る。この試料を開繊した後、ハンター型色差計で明度
(L値)を測定する(L1 )。一方、ヨウ素吸着を行わ
ない対応の試料を開繊し、同様にハンター型色差計で明
度を測定する(L0 )。そして、L1 −L0 より、明度
差ΔLを求める。
【0021】このヨウ素吸着法による明度差(ΔL)
が、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは3
0以下であるアクリル系繊維をプリカーサとして用い
る。ΔLが50を越えると、焼成工程で繊維に欠陥が多
く発生し、FW成形に耐えられなくなるばかりでなく、
得られる複合材料の特性を十分に発現できなくなる。
【0022】アクリル系繊維のΔLを50以下の高い緻
密性にするための好ましい紡糸方法としては、湿式紡糸
法、乾式紡糸法、あるいは乾湿式紡糸法が挙げられる
が、より緻密性の高いアクリル系繊維を得るためには乾
湿式紡糸法がより好ましく用いられる。また、湿式紡糸
法でも、紡糸原液の吐出量を適正化し、延伸倍率を後述
する範囲として、単繊維繊度を0.8d以下としたプリ
カーサー繊維とすることによってΔLを50以下とする
ことができる。また緻密性を高める方法としては、上記
紡糸方法に加えて、紡糸原液のポリマ濃度を15%以
上、好ましくは18%以上とすること、また紡糸により
得られた吐出糸条を8倍、好ましくは10倍以上に延伸
すること、さらには延伸糸条に油剤を付与して乾燥緻密
化することが挙げられる。ここで延伸は温水中で行なう
ことが好ましく、さらに油剤付与後に乾燥した糸条を加
圧スチーム中で二次延伸を行ってもよい。油剤には繊維
の融着、あるいは焼成工程における単繊維間接着を防ぐ
ためにシリコーン系化合物を含むものが好ましい。
【0023】プリカーサー繊維は、空気中で耐炎化ある
いは不融化され、さらに不活性雰囲気中高温で炭素化処
理して炭素繊維に変換される。空気中での耐炎化あるい
は不融化処理は、温度230℃以上280℃以下で、か
つ延伸比が0.80以上1.00以下、好ましくは0.
83以上0.98以下、より好ましくは0.84以上
0.94以下とする。ここでの延伸比が1.00を越え
ると、単繊維間の接着が生じ易くなるため、得られる炭
素繊維のストランド引張強度が低いものとなるばかりで
なく、得られる複合材料の特性までもが低下してしま
う。また、延伸比が0.80未満では他の糸条と交絡し
て毛羽が多発するばかりでなく、連続運転が不可能にな
る。引き続く炭素化処理工程では、最高温度を1100
℃以上2000℃以下とする。最高温度が1100℃未
満であると、得られる炭素繊維の吸着水分が多くなり複
合材料とした時にマトリックス樹脂の硬化不良が生じ、
所望の特性が得られず、最高温度が2000℃を越える
と炭素繊維に生起する欠陥が生じやすくなるとともに、
炭素繊維の弾性率が高くなり過ぎてFW成形工程の工程
通過性能が低下する。また炭素化処理工程において10
00℃から最高温度までの温度域における延伸比を0.
98以下とする。ここでの延伸比が0.98を越えると
毛羽の多い糸条となり、FW成形工程の工程通過性能低
下の原因になる。さらに、炭素化処理工程において炭素
繊維に欠陥を生じにくくするため、たとえば300℃か
ら600℃、または1000℃から1300℃(最高温
度が1300℃未満の場合は1000℃から最高温度)
の温度域における昇温速度を1000℃/分以下、好ま
しくは800℃/分以下とすることが望ましい。
【0024】かくして得られた炭素繊維には、複合材料
としたときのマトリックス樹脂との接着性を良好なもの
とするため電解表面処理を行う。電解表面処理は、処理
の効率をよくするため、およびストランド引張強度の低
下を抑制するため行う。電解表面処理に用いる電解液と
しては、有機または無機の酸、アルカリ、あるいは塩化
合物の水溶液を用いることができる。
【0025】さらに炭素繊維には、FW成形でのハンド
リング性能を向上させるために公知のサイジング剤を付
与することができる。サイジング剤の付着量としてはサ
イジング剤の種類にもよるが、0.1重量%以上10重
量%以下、好ましくは0.2重量%以上5重量%以下に
設定することが望ましい。サイジング付着量が0.1重
量%未満であると、サイジング剤の種類によってはFW
成形でのハンドリング性能、工程通過性能に劣る場合が
あり、サイジング付着量が10重量%を越えるとFW成
形時に繊維束内部まで樹脂が均一に含浸しにくくなるこ
とにより、得られる複合材料の特性が低いものとなる場
合がある。サイジング剤の付与は、電解表面処理後の乾
燥直後、またはFW成形において樹脂浸漬付与に先だっ
ても行うことができる。
【0026】サイジング剤の種類としては、均一に炭素
繊維に含浸することのできる溶液状態、あるいはエマル
ジョン状態で付与し、溶剤または水を乾燥除去すること
が好ましい。また、サイジング剤の樹脂の主成分として
は、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポ
リエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポ
リウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル
イミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、
ビスマレイミド樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリ
ビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポ
リエーテルサルフォン樹脂など、あるいはこれらを二種
以上の組合せてもよい。
【0027】このような炭素繊維の単繊維直径は3〜2
0μ、フィラメント数は1000〜100000本であ
ることが好ましい。
【0028】PAN系炭素繊維の場合、上記したような
条件を厳密に制御することにより、ストランド引張強
度、糸切れ限界張力、引掛強度の良好なFW成形用炭素
繊維を製造することができる。
【0029】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお本例中の各種特性は以下の方法により求
めた。
【0030】(1)サイジング付着量 約2gの炭素繊維束を精秤(W1)した後、50リットル
/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉(容
量約120cm3 )に15分間放置し、サイジング剤を完
全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒
素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の繊維束を
精秤(W2)して次式よりサイジング付着量を求める。
【0031】サイジング付着量[%]={W1[g] −(W2
[g] ×1.00046 )}×100 /W1[g] (2)円管引張強度 炭素繊維と、ストランド引張強度測定に使用した樹脂を
用いて、ASTM D2291に準じてFW成形法(糸
速30m/秒)により、タイプA型円管試験片(内径1
46.1mm、肉厚1.52mm、幅6.35mm、繊
維重量含有率65%)を作製する。得られた円管をAS
TM D2290に規定する円管引張試験法に準じて引
張強度を測定する。測定は5個の円管試験片について行
い、その平均値を求めた。
【0032】[実施例1]アクリロニトリル(AN)9
9.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなる、固有
粘度[η]が1.80のAN共重合体のジメチルスルホ
キシド(DMSO)溶液にアンモニアを吹き込み、該共
重合体のカルボキシル末端基をアンモニウム基で置換し
てポリマを変性し、このポリマの濃度が20重量%であ
るDMSO溶液を紡糸原液とした。
【0033】この紡糸原液を40℃にて、紡糸口金を通
して一旦空気中に吐出させ空間を走行させた後に、温度
10℃、30%のDMSO水溶液中に導入して凝固糸と
した。そして、この凝固糸条を水洗し、温水中で4倍に
延伸した後に変性シリコン系化合物を主成分とする油剤
を付与し、150℃の加熱ロールを用いて乾燥、および
緻密化した。さらに加圧スチーム中で3倍に延伸して、
単繊維繊度0.8d、フィラメント数12000、ΔL
=28のアクリル系プリカーサー繊維糸条を得た。
【0034】このプリカーサーを240〜280℃の空
気中で延伸比0.90で耐炎化処理し、引き続いて窒素
雰囲気中、最高温度1800℃、300〜600℃の温
度域および1000〜1300℃の温度域における昇温
速度をいずれも800℃/分以下として炭素化処理し
た。1000〜1800℃における延伸比は0.96と
した。引き続き、水溶液中で電解表面処理した後、エポ
キシ樹脂を主成分としたエマルジョン溶液中に、付着量
1.5重量%となるように含浸させ、サイジング剤を施
して炭素繊維を得た。
【0035】得られた炭素繊維を用い、FW成形法でボ
ンベを作製した。先ず、金属製マンドレル(直径92m
m、容量2000リットル)に、エポキシ樹脂を含浸し
た炭素繊維束をFW法にて糸速30m/分、張力2kg
で巻き上げた。繊維の配向角は±10/±45/90の
組合せとした。この成形の間に発生した糸切れ回数と、
樹脂含浸槽内、および糸道ガイド類に溜った毛羽を採取
して秤量した。なお、樹脂含浸槽内の毛羽は、残存樹脂
を温度450℃で焼き飛ばし、毛羽のみとして秤量し
た。得られた炭素繊維の特性およびFW成形時の糸切れ
回数、毛羽量を表1に示す。
【0036】[実施例2]実施例1と同様のポリマーを
実施例1と同様に紡糸して、単繊維繊度1.0d、フィ
ラメント数12000、ΔL=30のアクリル系プリカ
ーサー繊維糸条を得た。
【0037】このプリカーサーを240〜280℃の空
気中で延伸比0.87で耐炎化処理し、引き続いて窒素
雰囲気中、最高温度1400℃、300〜600℃の温
度域および1000〜1300℃の温度域における昇温
速度をいずれも800℃/分以下として炭素化処理し
た。1000〜1800℃における延伸比は0.95と
した。引き続き、実施例1と同様に表面処理を行い、サ
イジング剤を施して炭素繊維を得た。
【0038】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0039】また、得られた炭素繊維を用いて円管引張
強度を測定した。結果を表2に示す。引張強度の発現の
割合(円管強度/ストランド引張強度)は、0.96と
大きかった。
【0040】[比較例1]耐炎化処理における延伸比を
1.03とした以外は、実施例2と同様にして炭素繊維
を得た。
【0041】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0042】[実施例3]紡糸原液を60℃にて、紡糸
口金を通して直接温度60℃、50%のDMSO水溶液
中に吐出させたこと以外は、実施例1と同様にして単繊
維繊度0.7d、フィラメント数12000、ΔL=3
8のアクリル系プリカーサー繊維糸条を得た。
【0043】このプリカーサーを230〜280℃の空
気中で延伸比0.98で耐炎化処理した。引き続いて実
施例2と同様に炭素化処理し、表面処理を行い、サイジ
ング剤を施して炭素繊維を得た。
【0044】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0045】また、得られた炭素繊維を用いて円管引張
強度を測定した。結果を表2に示す。
【0046】引張強度の発現の割合(円管強度/ストラ
ンド引張強度)は、0.97と大きかった。
【0047】[比較例2]実施例3と同様のポリマーを
実施例3と同様に紡糸して、単繊維繊度1.0d、フィ
ラメント数12000、ΔL=48のアクリル系プリカ
ーサー繊維糸条を得た。
【0048】このプリカーサーを230〜280℃の空
気中で延伸比0.98で耐炎化処理した。引き続いて実
施例1と同様に炭素化処理、表面処理を行い、サイジン
グ剤を施して炭素繊維を得た。
【0049】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0050】[比較例3]炭素化処理における1000
〜1400℃の延伸比を1.02とした以外は、実施例
3と同様にして炭素繊維を得た。
【0051】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0052】[比較例4]実施例3において炭素化処理
の後、さらに最高温度2500℃で黒鉛化処理し、引き
続き、実施例1と同様に表面処理を行い、サイジング剤
を施して黒鉛化繊維を得た。
【0053】得られた黒鉛化繊維を用いて実施例1と同
様にFW成形を行った。得られた黒鉛化繊維の特性およ
びFW成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0054】[比較例5]非シリコーン系の油剤を付与
させたこと以外は、実施例3と同様にして単繊維繊度
1.1d、フィラメント数12000、ΔL=55のア
クリル系プリカーサー繊維糸条を得た。
【0055】次いで、このプリカーサーを230〜28
0℃の空気中で延伸比0.94で耐炎化処理した。引き
続いて1000〜1300℃の昇温速度を800℃/分
として、実施例2と同様に炭素化処理、表面処理を行
い、サイジング剤を施して炭素繊維を得た。
【0056】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0057】また、得られた炭素繊維を用いて円管引張
強度を測定した。結果を表2に示す。
【0058】引張強度の発現の割合(円管強度/ストラ
ンド引張強度)は、0.79と実施例2、3に比べて小
さかった。
【0059】[比較例6]実施例3と同様のアクリル系
プリカーサー繊維糸条を230〜280℃の空気中で延
伸比0.94で耐炎化処理した。引き続いて1000〜
1300℃の昇温速度を1500℃/分とした以外は、
実施例2と同様に炭素化処理、表面処理を行い、サイジ
ング剤を施して炭素繊維を得た。
【0060】得られた炭素繊維を用いて実施例1と同様
にFW成形を行った。得られた炭素繊維の特性およびF
W成形時の糸切れ回数、毛羽量を表1に示す。
【0061】
【表1】
【表2】
【0062】
【発明の効果】本発明の炭素繊維は、FW成形工程での
毛羽立ち、糸切れを抑制することができ、またそのこと
などによりFW成形工程のライン速度を高く設定するこ
とができる、さらにFW成形法により得られる複合材料
の特性を大幅に改善することができるので、天然ガス燃
料用ボンベなどのFW成形法による製造に好適に利用す
ることができ、工業的価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いる糸切れ限界張力測定装置
の概略側面図である。
【符号の説明】
a:張力調整可能なクリール b:炭素繊維束 c1、c2、c3、c4:表面梨地の回転ローラー(直
径15mmφ) d1、d2、d3、d4:表面平滑度3Sのステンレス
棒(直径15mmφ) e:樹脂槽 f:樹脂のメチルエチルケトン溶液 g:ドラム(直径750mmφ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 9/22 D01F 11/14 D06M 15/55

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ストランド引張強度が400kgf/mm2 以上
    であり、糸切れ限界張力が0.2g/D以上であり、お
    よび引掛強度が100kgf/mm2 以上であることを特徴と
    するフィラメントワインディング成形用炭素繊維。
  2. 【請求項2】単繊維繊度が0.8d以下であり、ヨウ素
    吸着法による明度差(ΔL)が50以下であるアクリル
    系繊維を原料として、温度230℃以上280℃以下の
    空気中、0.80以上1.00以下の延伸比で耐炎化
    し、引き続いて最高温度1100℃以上2000℃以下
    の不活性雰囲気中、1000℃から最高温度までの温度
    域における延伸比を0.98以下とし、該温度域におけ
    る昇温速度を1000℃/分以下として炭素化処理した
    後、電解表面処理、サイジング処理することを特徴とす
    るフィラメントワインディング成形用炭素繊維の製造方
    法。
JP9988694A 1994-05-13 1994-05-13 フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3047731B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9988694A JP3047731B2 (ja) 1994-05-13 1994-05-13 フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9988694A JP3047731B2 (ja) 1994-05-13 1994-05-13 フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07310240A JPH07310240A (ja) 1995-11-28
JP3047731B2 true JP3047731B2 (ja) 2000-06-05

Family

ID=14259271

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9988694A Expired - Fee Related JP3047731B2 (ja) 1994-05-13 1994-05-13 フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3047731B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014125698A (ja) * 2012-12-26 2014-07-07 Toho Tenax Co Ltd サイジング剤付着炭素繊維束及びその製造方法並びにこのサイジング剤付着炭素繊維束を用いる圧力容器の製造方法
JP2018009280A (ja) * 2017-08-11 2018-01-18 東邦テナックス株式会社 サイジング剤付着炭素繊維束及びその製造方法並びにこのサイジング剤付着炭素繊維束を用いる圧力容器の製造方法

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5581580B2 (ja) * 2008-10-03 2014-09-03 日本精工株式会社 ラックアンドピニオン式電動パワーステアリング装置の製造方法
JP5772012B2 (ja) * 2011-01-27 2015-09-02 東レ株式会社 フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法
JP2015067910A (ja) * 2013-09-27 2015-04-13 東レ株式会社 炭素繊維およびその製造方法
KR102150732B1 (ko) 2014-12-22 2020-09-02 효성첨단소재 주식회사 필라멘트 와인딩(Filament winding)용 탄소섬유 다발

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014125698A (ja) * 2012-12-26 2014-07-07 Toho Tenax Co Ltd サイジング剤付着炭素繊維束及びその製造方法並びにこのサイジング剤付着炭素繊維束を用いる圧力容器の製造方法
JP2018009280A (ja) * 2017-08-11 2018-01-18 東邦テナックス株式会社 サイジング剤付着炭素繊維束及びその製造方法並びにこのサイジング剤付着炭素繊維束を用いる圧力容器の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07310240A (ja) 1995-11-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5772012B2 (ja) フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法
US8129017B2 (en) Carbon fiber strand and process for producing the same
TWI620843B (zh) 碳纖維束、碳纖維束的製造方法及樹脂系複合材料
JP5161604B2 (ja) 炭素繊維の製造方法
JP2006307407A (ja) 炭素繊維および、炭素繊維の製造方法
JP2015067910A (ja) 炭素繊維およびその製造方法
US6503624B2 (en) Carbon fiber precursor fiber bundle and manufacturing method of the same
JPH11217734A (ja) 炭素繊維およびその製造方法
JP3047731B2 (ja) フィラメントワインディング成形用炭素繊維およびその製造方法
JPWO2019172247A1 (ja) 炭素繊維束およびその製造方法
JP5741815B2 (ja) 炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束
JP3892212B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維束
JP2000160436A (ja) 炭素繊維、及び炭素繊維用プリカーサーの製造方法
KR102212026B1 (ko) 탄소섬유의 제조방법 및 이를 이용하여 제조된 탄소섬유
JP3448994B2 (ja) 炭素繊維束およびその製造方法
JP3890770B2 (ja) 炭素繊維束、およびその製造方法
JP5313797B2 (ja) 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束およびその製造方法、ならびに炭素繊維束
JP4624571B2 (ja) 炭素繊維前駆体糸条の製造方法
JP4216873B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維束の製造方法
JPH10195718A (ja) 炭素繊維およびその製造方法
JP2013181264A (ja) 炭素繊維束
WO2019146487A1 (ja) 耐炎化繊維束および炭素繊維束の製造方法
JP2000248432A (ja) 炭素繊維チョップドストランドの製造方法および炭素繊維チョップドストランド
JP2004060126A (ja) 炭素繊維及びその製造方法
JPH09255227A (ja) 炭素繊維前駆体アクリル系糸条パッケージおよび炭素繊維前駆体アクリル系糸条の巻き取り方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080324

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090324

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090324

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100324

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110324

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110324

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120324

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120324

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130324

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130324

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140324

Year of fee payment: 14

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees