JP7482667B2 - 炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維束の製造方法に関する。より具体的には、所定の束繊度であって高い物性である炭素繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は他の繊維と比較して優れた比強度及び比弾性率を有する。炭素繊維はその有する軽量性及び優れた機械的特性を利用して、樹脂と複合化する補強繊維として、広く工業的に利用されている。
近年、炭素繊維を利用する複合材料の工業的な用途は、多くの分野に広がりつつある。特にスポーツ・レジャー分野、航空宇宙分野においては、より高性能化(高強度化、高弾性率化)に向けた要求が強まっている。炭素繊維と樹脂との複合化において高性能化を追求するためには、樹脂の持つ物性だけでなく、炭素繊維そのものの物性を向上させることが不可欠である。
炭素繊維の物性を向上するためには、炭素繊維の結晶配向度を高くすることが必要である。炭素繊維の結晶配向度を向上するためには、炭素化(焼成)工程で高張力を付与しながら炭素化する必要がある。しかし、炭素化工程で高張力を付与すると、炭素繊維束を構成する一部の単糸が切断されてしまい、高い物性の炭素繊維束を得ることができない。この問題を解決するために、炭素繊維前駆体繊維に均一な交絡を形成することによって、炭素化工程において単糸にかかる張力を均一化する方法がある(特許文献1)。しかし、フィラメント数が多い炭素繊維前駆体繊維に均一な交絡を形成することは困難であるため、炭素化工程で高張力を付与することは困難である。
特許文献2には、耐炎化工程における焼成むらを誘起しないシリコーン油剤を使用することにより、焼成プロセス性を向上させる炭素繊維の製造方法が記載されている。
特許5561446号公報 特開2007-162144号公報
本発明の課題は、フィラメント数が多い炭素繊維前駆体繊維を耐炎化及び炭素化する際に、高張力を付与しながら炭素化しても単糸切れが生じ難い炭素繊維束の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題について検討した結果、所定の交絡を有し、所定量の油剤が付着された炭素繊維前駆体繊維を炭素化することにより、高張力を付与しながら炭素化しても単糸切れが生じ難く、且つ高い物性を有する炭素繊維束が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕 束繊度1,200[tex]以上の炭素繊維束の製造方法であって、交絡度12~45[cm-1]の交絡を有し、かつ、不揮発分として0.12~0.40[質量%]の油剤が担持された炭素繊維前駆体繊維を耐炎化及び炭素化することを特徴とする炭素繊維束の製造方法。
〔2〕 前記油剤がシリコーン油剤である〔1〕に記載の炭素繊維束の製造方法。
〔3〕 炭素化温度が1,200~1,600[℃]である〔1〕又は〔2〕に記載の炭素繊維束の製造方法。
〔4〕 炭素化時の張力が0.5[cN/dtex]以上である〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の炭素繊維束の製造方法。
〔5〕 交絡処理を行った後に前記油剤を付与する〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の炭素繊維束の製造方法。
本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、所定量の油剤を付与するともに、所定の交絡を付与しているため、単糸間の摩擦力が上がり、繊維束を構成する単糸に均一に張力を付与することができる。そのため、得られる炭素繊維の結晶配向度等を高くすることができる。さらには、高物性の炭素繊維束を低温で製造することができるため、界面せん断強度が高い炭素繊維束を製造することができる。
本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、繊維束を構成する単糸に均一に張力を付与することができ、単糸の切断が生じ難いため、工程安定性が高い。また、本発明による製造方法によって得られる炭素繊維束は、単糸強度のばらつきが小さいため、樹脂複合材料用の炭素繊維束としての品質が安定する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、得られる炭素繊維束の束繊度が1,200[tex]以上の炭素繊維束の製造方法である。この製造方法は、炭素繊維前駆体繊維に交絡度12~45[cm-1]の交絡を形成するとともに、この炭素繊維前駆体繊維に不揮発分として0.12~0.40[質量%]の油剤を担持させ、次いで、この交絡が形成され且つ油剤が担持されている炭素繊維前駆体繊維を耐炎化及び炭素化することを特徴とする。
(1) 炭素繊維前駆体繊維
本発明における炭素繊維前駆体繊維としては、ポリアクリロニトリルやピッチ、レーヨン(セルロース)等の種々の前駆体繊維束を用いることができる。高強度の所望の炭素繊維を得やすいポリアクリロニトリル繊維束を好適に用いることができる。ポリアクリロニトリル繊維束としては、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独重合又は共重合した重合体を含む紡糸溶液を紡糸して製造することができる。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸処理することにより、炭素繊維前駆体繊維が得られる。
炭素繊維前駆体繊維の単繊維の繊度は、0.50~1.30[dtex]であることが好ましく、0.60~0.90[dtex]であることがより好ましい。
炭素繊維前駆体繊維束のフィラメント数は、製造効率の面では24,000本以上が好ましく、36,000本以上がより好ましく、42,000本以上であることが更に好ましく、48,000本以上であることが特に好ましい。フィラメント数の上限は特に限定されるものではないが、100,000本以下であることが、高強度の炭素繊維束を得やすいため好ましい。
炭素繊維前駆体繊維束の束繊度は、25,000~45,000[dtex]であることが好ましく、30,000~40,000[dtex]であることがより好ましい。
(2) 炭素繊維前駆体繊維束への交絡の形成
本発明においては、炭素繊維前駆体繊維束に交絡を形成するインターレース処理が施される。このインターレース処理により、紡糸工程において生じた炭素繊維前駆体繊維束の単糸同士の局所的な交絡や擬似接着を解消するとともに、炭素繊維前駆体繊維束の全体にわたって均一な交絡を付与する。
インターレース処理は、例えばインターレースノズル内に炭素繊維前駆体繊維束を通過させて、炭素繊維前駆体繊維束に圧縮空気を吹き付けることにより行う。圧縮空気の吹出し圧は、ゲージ圧で60~200[kPa]であることが好ましく、100~160[kPa]であることがより好ましい。60[kPa]未満の場合、炭素繊維前駆体繊維束に均一且つ十分な交絡を形成することができない場合がある。200[kPa]を超える場合、炭素繊維前駆体繊維束の交絡が進み過ぎ、繊維が損傷し易い。
炭素繊維前駆体繊維束の交絡度は、12~45[cm-1]であり、15~40[cm-1]であることが好ましく、20~30[cm-1]であることがより好ましい。炭素繊維前駆体繊維束の交絡度をこの範囲とすることで、繊維束を構成する単糸に均一に張力を付与することができ、得られる炭素繊維の結晶配向度を高くすることができる。その結果、比較的低い温度で炭素化処理を行っても、十分な引張弾性率を有する炭素繊維を得ることができる。交絡度が12[cm-1]より低い場合、炭素繊維前駆体繊維束に均一且つ十分な交絡を形成することができない場合がある。その結果、炭素化工程での張力が低下し、得られる炭素繊維束を構成する炭素繊維の結晶配向度が低下する場合がある。また、単糸が破断しやすくなるため、単糸強度にバラツキが生じ易くなる。45[cm-1]を超える場合、炭素繊維前駆体繊維束の交絡が進み過ぎ、繊維が損傷し易い。
なお、本発明における交絡度は、JIS L 1013にしたがって測定される交絡度を意味する。前駆体繊維束の交絡度は、インターレース処理の時間や回数、圧縮空気の吹出し圧などを適宜調節することにより調整できる。
(3) 炭素繊維前駆体繊維束への油剤の付与
本発明においては、炭素繊維前駆体繊維束に不揮発分として0.12~0.40[質量%]の油剤を担持させる。不揮発分とは、油剤中の水や有機溶媒を除いた量である。具体的には、油剤が付着した炭素繊維前駆体繊維束を105[℃]で3時間乾燥させた後に残存する成分を意味する。油剤の担持量は、0.13~0.40[質量%]であることが好ましい。油剤の担持量が上記の範囲内であることにより、炭素繊維前駆体繊維束を構成する単糸同士に適度な摩擦が生じる結果、後工程で付与される張力は各単糸において略均一となり易い。油剤の担持量が0.12[質量%]未満である場合、後工程で付与される張力は各単糸において略均一となり難い。その結果、得られる炭素繊維の結晶配向度や炭素繊維束の引張強度を十分に高くできない場合がある。また、油剤の担持量が0.40[質量%]を超える場合、油剤が炭素繊維前駆体繊維に浸透し炭素化工程で繊維内部にボイドを発生させるため炭素繊維束の引張強度が低下する場合がある。
本発明において用いる油剤は、従来公知の油剤が使用できる。例えば、シリコーン油剤、芳香族エステル系油剤、アルキルエステル系油剤、ポリアミド系油剤、ウレタン系油剤、リン酸エステル系油剤、ホウ酸系油剤などを用いることができ、中でもシリコーン油剤を用いることが好ましく、特にアミノ変性シリコーンやエポキシ変性シリコーンを好ましく用いることができる。炭素繊維前駆体繊維束全体に均一に油剤を担持させるために、これらの油剤は水中油型エマルション(O/W型エマルション)の形態であることが好ましい。
炭素繊維前駆体繊維束への油剤の付与方法は、特に限定されないが、ディッピング法、ローラー浸漬法、スプレー法のような公知の方法を用いることができる。中でも、ディッピング法、ローラー浸漬法は、水中油型エマルションを均一に付与し易いので好ましく用いられる。油剤浴の液温は用いる油剤の特性に応じて適宜調整すればよい。例えば、シリコーン油剤を水中油型エマルションの形態で用いる場合、油剤浴の液温は、溶媒の蒸発によるシリコーン油剤の濃度の変動やエマルションの破壊を抑えるために、10~50[℃]の範囲が好ましい。
油剤浴中の不揮発分量は、0.5~40[質量%]であることが好ましく、1.5~30[質量%]であることがより好ましい。油剤として水中油型エマルション形態のシリコーン油剤を用いる場合、不揮発成分を5~70[質量%]含むシリコーン油剤を水で適宜希釈してシリコーン含有量を調整する。
(4) 耐炎化及び炭素化工程
上記のように交絡が形成され且つ油剤を担持している炭素繊維前駆体繊維束は、加熱空気中で耐炎化処理される。PAN系繊維を原料とする場合、PAN系繊維束は加熱空気中230~260[℃]で30~100分間耐炎化処理される。この耐炎化処理により、繊維に環化反応を生じさせ、酸素結合量が増加されて耐炎化繊維束が得られる。この耐炎化処理は、一般的に、延伸倍率0.90~1.15倍の範囲で延伸されることが好ましい。耐炎化時の張力は上記延伸倍率の範囲を超えない限り特に限定されない。
このようにして得られた耐炎化繊維束は、不活性雰囲気下で300[℃]以上に加熱して炭素化される。炭素化の条件は従来公知の条件を採用できる。例えば、窒素雰囲気下300~800[℃]で第一炭素化処理し、次いで800~1,800[℃]で第二炭素化する方法が例示される。
第二炭素化温度(最高温度)は1,200~1,700[℃]であることが好ましく、1,400~1,550[℃]であることがより好ましい。炭素か温度が高すぎる場合、得られる炭素繊維は樹脂との接着性が低下する場合がある。そのため、樹脂との複合材料とした場合に界面剪断強度(IPSS)が低下し易い。
第一炭素化時の張力は0.20~0.90[mN/dtex]であることが好ましく、高性能の炭素繊維束を得るためには、0.50[mN/dtex]以上であることがより好ましい。延伸倍率は0.95~1.15倍であることが好ましい。
第二炭素化時の張力は0.50[cN/dtex]以上であることが好ましく、0.55~0.80[cN/dtex]であることがより好ましい。0.50[cN/dtex]未満では繊維の延伸が十分に行われず、結晶配向度が低くなり、得られる炭素繊維の強度を低下させる場合がある。0.80[cN/dtex]を超えると繊維内部にボイドを発生させ易くなったり、単糸の切断を生じさせ易くなったりする場合がある。なお、本発明において、炭素化時の張力は、炭素繊維前駆体繊維の束繊度(dtex)に対する、第二炭素化炉出側で測定した張力(cN)である。第二炭素化工程での延伸倍率は1.0~1.1倍とすることが好ましい。第二炭素化炉での滞留時間は、2.0分以上であることが好ましく、2.5~10分であることがより好ましい。
このように製造された炭素繊維束は、必要に応じて公知の表面処理やサイジング処理がなされる。また、本発明の効果を妨げない限度において、各工程間に他の公知の工程が介在することを妨げない。
(5) 炭素繊維束
上述の本発明によって、繊度が1,200[tex]以上であり、樹脂含浸ストランドの引張強度が好ましくは5,800[MPa]以上であり、引張弾性率が好ましくは320[GPa]である高物性の炭素繊維束が得られる。繊度は1,400~2,000[tex]であることが好ましい。引張強度は5,900[MPa]以上であることがより好ましく、6,000[MPa]以上であることが更に好ましい。引張強度の上限は特に限定されないが、一般的には10,000[MPa]である。引張弾性率は、320~340[GPa]であることがより好ましい。樹脂含浸ストランドの引張強度及び引張弾性率は、JIS R 7608にしたがって測定される値を意味する。
この炭素繊維束を構成する炭素繊維の結晶子サイズ(Lc)は、18.0~19.0[Å]であることが好ましく、18.1~18.8[Å]であることがより好ましい。結晶子サイズ(Lc)は、JIS R 7651にしたがって測定される値を意味する。
この炭素繊維束を構成する炭素繊維の結晶配向度は、83.0[%]以上であることが好ましく、83.5[%]以上であることがより好ましい。結晶配向度の上限は、特に限定されないが、一般的には90[%]である。
この炭素繊維束を構成する炭素繊維の単糸強度のワイブル形状係数は5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましい。このようなワイブル形状係数を有することにより、単糸強度のバラツキが小さい炭素繊維束を得ることができる。単糸強度のバラツキを小さくすることで、樹脂複合材料用の炭素繊維束としての品質が安定する。単糸強度は、JIS R 7606にしたがって測定される値を意味する。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
[交絡度]
測定する繊維束を1[m]採取し、一端に100[g]の重りを取り付け、これを垂直に吊した。10[g]の分銅にかぎ状のフックの付けた冶具を、前記つるした繊維束に引っ掛け、治具を自然落下させた。フックを引っかけた場所は、繊維束幅方向の中央、且つ繊維束の上端から5[cm]下方であった。フックを引っかけた場所から、分銅が落下して停止した場所までの距離をA[cm]とした。下記式(1)より交絡度を求めた。測定回数はn=10とし、その平均値をその繊維束の交絡度として表示した。
交絡度 = 100/A ・・・(1)
[油剤の担持量]
油剤が付与された繊維束を105[℃]で3時間乾燥し、油剤付与前後における質量差から油剤の担持量を求めた。
[炭素繊維束の樹脂含浸ストランドの引張強度、引張弾性率]
JIS R 7608に準じて測定し、測定回数5回の平均値で示した。
[単糸強度、ワイブル形状係数]
株式会社オリエンテック製 テンシロン万能材料試験機 「RTC-1150A」を使用し、JIS R 7606に準じて炭素繊維の単糸引張強度を測定した。単糸の試験長10mm、試験速度1mm/分にて引張試験を行い、破断最大荷重と単糸直径から、単糸引張強度(σ)を算出した。炭素繊維束を構成する単糸のうち50本を抜き取り測定した単糸引張強度について、下記式(2)よりワイブル形状係数(m)を求めた。式(2)中、Fは対称試料累積分布法により求めた破壊確率であり、mはFが0~1全範囲のワイブル形状係数であり、Cは定数である。lnσに対してlnln{1/(1-F)}をプロットし、1次近似した傾きからmを求めた。
lnln{1/(1-F)} = m・lnσ + C ・・・(2)
[炭素繊維の結晶子サイズ(Lc)、結晶子面間隔(d002)、結晶配向度]
JIS R 7651にしたがって、X線回折装置(リガク社製RINT2000)を使用し、透過法により面指数(002)の回折ピークの半値幅βから、下式(3)
結晶子サイズLc[nm] = 0.9λ/βcosθ ・・・(3)
λ: X線の波長、
β: 半値幅、
θ: 回折角
を用いて、結晶子サイズ(Lc)を算出した。
また、この回折ピーク角度を円周方向にスキャンして得られる二つのピークの半値幅H1/2及びH'1/2(強度分布に由来)から下式(4)
結晶配向度(%) = 100×[360-(H1/2-H'1/2)]/360 ・・・(4)
1/2及びH’1/2: 半値幅
を用いて結晶配向度を算出した。
[界面剪断強度(IPSS)の測定]
界面剪断強度(IPSS)とは、炭素繊維と樹脂の接着力を測る指標で、次の手順に従って求めたものである。IPSSの測定方法は、ASTM法に準拠する。IPSSのサンプルには、サイジングを行った後の炭素繊維及びマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(特公平08-861号公報の実施例1に記載の樹脂組成物)を使用し、炭素繊維目付け270[g/m]、樹脂含有率33[%]の一方向性プリプレグを作製し、[+45°/-45°]2Sの擬似等法に積層した。積層した供試体(サンプル)を180[℃]、2時間で硬化させた後、25(幅)×250(長さ)×2.5(厚さ)[mm]の供試体(サンプル)を作製した。サンプルは各試験片の寸法測定後、試験機(島津製作所製オートグラフAG-10TD型)において、試験片が破断するまで引張試験を行い、破断するまでの伸び[mm]を測定した。
[実施例1]
PAN系繊維(単繊維繊度:0.72[dtex]、フィラメント数:48,000本、束繊度:34,560[dtex])を炭素繊維前駆体繊維束として用いた。油剤としては、アミノ変性シリコーン油剤(O/W型エマルション)を水で希釈して浴濃度が20[g/L]の油剤浴を調製した。炭素繊維前駆体繊維に圧縮空気(140kPa)を吹き付けて交絡を形成した。その後、油剤浴中にこの交絡が形成されている炭素繊維前駆体繊維束を走行させて油剤を担持させた。このときの油剤付着量は、0.25[質量%]であった。この油剤を担持する炭素繊維前駆体繊維束を、温度250[℃]の耐炎化炉で85分間耐炎化処理し、耐炎化繊維束を得た。次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度600[℃]の第一炭素化炉において、工程張力0.60[mN/dtex]で第一炭素化処理を行い、さらに最高温度1,500[℃]の第二炭素化炉において窒素ガス雰囲気下、工程張力0.58[cN/dtex]で180秒間第二炭素化することにより炭素繊維束を得た。これを硫酸アンモニウム水液中で20[C/g]の電気量で電解酸化により表面処理した後、エポキシ系樹脂にてサイジング処理を施した。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
[実施例2]
油剤付着量を0.13[質量%]に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
[比較例1]
油剤付着量を0.10[質量%]に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
[比較例2]
油剤付着量を0.54[質量%]に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
[比較例3]
インターレース圧を50[kPa]とし、交絡度を10[/cm]に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
表1に示す通り、実施例1及び2の炭素繊維束は、炭素化時に高張力を付与できたため、高い結晶配向度を有しており、樹脂含浸ストランドの引張強度及び引張弾性率が高かった。特に、実施例1の炭素繊維束は、単糸強度のワイブル形状係数が6.12と大きく、単糸強度のバラツキが小さくなった。また、1,500[℃]という比較的低温で炭素化しているため、結晶子サイズ(Lc)が大きくなり過ぎず、界面剪断強度(IPSS)が145MPaと高くすることができた。
一方、比較例1の炭素繊維束は、油剤の担持量が少なかったため、炭素化時に付与される張力が均一にならず、結晶配向度が低くなった。その結果、樹脂含浸ストランドの引張強度及び引張弾性率が低くなった。
比較例2の炭素繊維束は、油剤の担持量が多かったため、炭素繊維束の引張強度が低くなった。
比較例3の炭素繊維束は、交絡度が低かったため、炭素化時に付与される張力が低く、且つ均一にならず、結晶配向度が低くなった。また、単糸強度のワイブル形状係数が5.40と小さく、単糸強度にバラツキが見られた。
[実施例3]
第二炭素化炉の最高温度を1,700[℃]に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
[比較例4]
インターレース圧を50[kPa]とし、交絡度を10[/cm]に変更した以外は、実施例3と同様にして炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の物性を表1に示した。
実施例3では、高張力で炭素化しているため、高い結晶配向度を有しており、樹脂含浸ストランドの引張弾性率が、同じ温度で炭素化処理を行った比較例4と比べ高かった。実施例3では、1,700[℃]という実施例1に比べ高温炭素化しているため、結晶子サイズ(Lc)が大きくなり、引張弾性率が340[GPa]と高くなった。そのため、実施例1と比べ界面剪断強度(IPSS)が120[MPa]とやや低くなり、引張強度も若干低下したものの、340[GPa]という高い弾性率を有する炭素繊維としては、十分使用できるものであった。
比較例4の炭素繊維束は、高温で炭素化しているため、結晶子サイズ(Lc)及び結晶配向度がともに高くなったものの、交絡度が低く、炭素化時に高い張力を付与できなかったため、実施例3と比較して、十分な引張弾性率を得ることができなかった。また、高温で炭素化しているため、界面剪断強度(IPSS)が120[MPa]と実施例1と比較して低くなった。
Figure 0007482667000001

Claims (4)

  1. 束繊度1,200[tex]以上の炭素繊維束の製造方法であって、交絡度12~45[cm-1]の交絡を有し、不揮発分として0.12~0.40[質量%]の油剤が担持された炭素繊維前駆体繊維を耐炎化し、次いで張力が0.50[cN/dtex]以上で炭素化することを特徴とする炭素繊維束の製造方法。
  2. 前記油剤がシリコーン油剤である請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
  3. 炭素化温度が1,200~1,600[℃]である請求項1又は2に記載の炭素繊維束の製造方法。
  4. 交絡処理を行った後に前記油剤を付与する請求項1乃至3の何れか1項に記載の炭素繊維束の製造方法。
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