JPH1084954A - 酵素を熱活性化する方法 - Google Patents
酵素を熱活性化する方法Info
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- JPH1084954A JPH1084954A JP9198202A JP19820297A JPH1084954A JP H1084954 A JPH1084954 A JP H1084954A JP 9198202 A JP9198202 A JP 9198202A JP 19820297 A JP19820297 A JP 19820297A JP H1084954 A JPH1084954 A JP H1084954A
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Abstract
し、かつ高温において高い酵素活性を発現させる方法の
提供。 【解決手段】 酵素の活性を高温下で高める方法であっ
て、前記酵素を含有する反応液中にシャペロン作用のあ
る物質、例えば、トレハロース、ソルビトール、アラビ
トールのような糖類、ベタインやサルコシンのようなア
ミノ酸類、シャペロンニン様タンパク質を存在させる方
法。
Description
有する物質を用いて酵素の高温下での活性を高める方法
に関する。
では、至適温度における酵素活性より低い活性しか示さ
ない。また、一定以上に高い温度に曝されると活性を失
うことも知られている。そのような熱失活の温度は、酵
素の種類により異なるが、常温付近に至適温度を有する
酵素の場合、50℃前後に加熱されると失活することが多
い。また、高温下でも安定であるも知られており、この
ような耐熱性酵素は一般に至適温度も高い。ところで、
各酵素の使用条件により、より高い温度条件を使用した
い場合が多々ある。そのような場合、上記のような耐熱
性酵素を利用するのが一般的であり、耐熱性酵素の例と
して、PCR に多用されているTaq ポリメラーゼがある。
しかるに、耐熱性酵素が知られていないか、あるいは知
られていても、使用条件が適合しない場合もある。
とができる逆転写酵素(RNA依存性DNA ポリメラーゼ) と
してSuperscript IIが知られている。Superscript IIは
通常、42℃が至適温度として使用されている非耐熱性酵
素であり、50℃を越える温度では10分以内に完全に失活
してしまう。それに対して、Tth DNA ポリメラーゼは耐
熱性と逆転写活性を有する酵素であるが、酵素活性の発
現のためにマンガンイオンを必要とする。しかるに、こ
の酵素を用いて高い温度においてmRNAからcDNAを得よう
とすると、共存するマンガンイオンによってmRNAが切断
されてしまい、完全長cDNAを得ることは困難である。
逆転写酵素が要求するマグネシウムイオンによっても、
適当な緩衝液または水中での高い温度条件下で、mRNAの
切断が起こる。しかし、本発明者の検討結果によれば、
マンガンイオンの方がmRNAの切断効果が強く、キレート
剤等によるコントロールが難しい。また別の例として、
Taq ポリメラーゼはもともと耐熱性があるが、一般にPC
R等で用いられる25サイクル〜30サイクル以上では、Taq
ポリメラーゼですら活性の低下が起こる。より強力な
増幅効果を期待した場合、Taq ポリメラーゼの活性低下
を防止することができれば、より少ないユニット数でよ
り高い増幅効果、より高いサイクル数を実現することが
できる。
因から、50℃を越える温度で逆転写を行いたい場合があ
る。例えば、高温においてmRNAが2次構造を形成するこ
とを阻止しながら逆転写を行って完全長cDNAを得たい場
合である。しかるに、逆転写活性のある酵素について
は、耐熱性酵素であるTth DNA ポリメラーゼでは完全長
cDNAは得られない。そこで、現在入手可能な常温で使用
されるタイプの逆転写酵素を利用する他ない。
同様な状況は多々ある。変異を導入して遺伝子工学的に
至適温度の高い酵素を合成できることが一部の酵素につ
いて知られている。しかし、あらゆる酵素についてその
ような耐熱性の改善が可能な訳ではなく、少なくとも逆
転写酵素については知られていない。また、耐熱性を有
する酵素として知られている酵素についてもより高い温
度でより高い活性を示すことができれば、その利用価値
はさらに向上する。
果的に酵素の耐熱性を改善し、かつ高温において高い酵
素活性を発現させる方法を提供することにある。
高温下で高める方法であって、前記酵素を含有する反応
液中にシャペロン作用を有する物質を存在させることを
特徴とする方法に関する。
発明の方法において、対象となる酵素には特に制限はな
い。例えば、高温下でも失活せずかつ活性も示す酵素を
挙げることができる。また、通常の条件では、高温下で
永久失活はしないが、ほとんど活性を示さない酵素や永
久失活する酵素であっても、高温下で活性化を補助する
条件下であれば、本発明の方法を適用して高温下での酵
素活性を高めるができる。
な例はポリメラーゼ及び制限酵素である。ポリメラーゼ
として、例えば、DNA ポリメラーゼやRNA 依存性DNA ポ
リメラーゼ(逆転写酵素)、DNA リプリカーゼ、ターミ
ナルデオキシトランスフェラーゼ、ポリA ポリメラー
ゼ、テロメラーゼ等を挙げることができる。但し、これ
らに限定する意図はない。
ーゼVer.2 、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラー
ゼ、DNA ポリメラーゼI 等を例示することができる。さ
らに、耐熱性のDNA ポリメラーゼとして、Taq ポリメラ
ーゼ、VentDNA ポリメラーゼ、pfu ポリメラーゼ、Tth
ポリメラーゼ、サーモシーケネス等も上記DNA ポリメラ
ーゼに含めることができる。これら耐熱性のDNA ポリメ
ラーゼについては、本発明の方法を利用することによ
り、耐熱性をさらに高めることが可能であることから、
PCR の増幅率や増幅回数を上げることが可能になり、PC
R の安定性を向上させることもできる。RNA 依存性DNA
ポリメラーゼ(逆転写酵素)としては、Seperscript I
I、AMV逆転写酵素、MulV逆転写酵素等を例示することが
できる。
のような制限酵素の中にも、高温下でも失活せずかつ比
較的活性も示す酵素もあり、このような制限酵素も本発
明の方法により熱安定化することができる。本発明の方
法により熱安定化することができる制限酵素としては、
高温下でも失活せずかつある程度の活性も示す、酵素遺
伝子工学で使用されるあらゆる制限酵素を挙げることが
できる。制限酵素としては、例えば、StyI、Eco
RI、MluI、NcoI、DNaseI、RNase
I、NdeI、PvuII、PstI、DraI、Hi
nDIII、HincII等を挙げることができる。但
し、これらに限定されるものではない。
作用を有する物質を存在させる。シャペロン作用を有す
る物質としては、糖類、アミノ酸、多価アルコール及び
それらの誘導体、並びにシャペロンタンパク質を挙げる
ことができる。但し、これらに限定されるものではな
く、シャペロン作用を有する物質であればよい。尚、本
明細書において「シャペロン作用」とは、熱等によるス
トレスの為、変性したタンパク質を再生するか、または
ネイティブの構造を保持させる為、熱によるタンパク質
の完全変性を防止する作用を言う。
を挙げることができ、さらにその具体例として、例え
ば、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロー
ス、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セ
ロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−
グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロー
ス、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、
タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及
びアラビトール等を挙げることができる。但し、これら
に限定する意図はない。上記糖類は、単独で用いても、
2種以上を併用しても良い。尚、特に、トレハロース、
ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビト
ールは、シャペロン作用が強く、酵素の熱活性化の効果
が著しい。
アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル
酸、ベタイン、 Na −カルバモイル−L−グルタミン−
1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グ
ルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイ
ン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルア
ミンN−オキシドを挙げることができる。上記アミノ酸
類は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
尚、特に、ベタイン及びサルコシンは、シャペロン作用
が強く、酵素の熱活性化の効果が著しい。
ルコールを挙げることができる。上記糖類も多価アルコ
ールではあるが、それ以外の多価アルコールの例として
は、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ポリ
エチレングリコール等を挙げることができる。上記多価
アルコールは、単独で用いても、2種以上を併用しても
良い。
てシャペロンタンパク質を挙げることができ、シャペロ
ンタンパク質としては耐熱性菌のシャペロンタンパク質
及びヒートショックタンパク質、例えば、HSP60、
HSP70、HSP90等を挙げることができる。上記
シャペロンタンパク質は、単独で用いても、2種以上を
併用しても良い。
の種類により、また酵素の種類により、酵素に対する最
適安定化濃度が異なる。従って、シャペロン作用を有す
る物質の種類と酵素の種類に応じて、反応系に対する添
加濃度を適宜決定することができる。また、シャペロン
作用を有する物質の効果を補強するという観点から、上
記1種または2種以上の糖類、アミノ酸またはシャペロ
ンタンパク質にさらに、1種または2種以上の多価アル
コールを併用することもできる。多価アルコールの例と
しては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、
ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
限酵素等の酵素の活性を高温下で高めることができ、こ
こで、高温とは、例えば、45〜110 ℃の範囲である。但
し、酵素を熱安定化できる温度は、酵素の種類により異
なる。通常常温で使用される酵素については、常温より
高い温度で熱安定化でき、耐熱性酵素については、至適
温度より高い、より高温においても熱安定化できる。本
発明の方法により、糖類を共存させることにより、ポリ
メラーゼや制限酵素等の酵素の耐熱性を改善することが
できるばかりでなく、高温下でのポリメラーゼや制限酵
素等の酵素の活性を高めることもできる。
に説明する。 実施例1逆転写酵素の耐熱化による逆転写効率の向上 superscript IIの高温下における逆転写活性を見る為T7
RNAポリメラーゼでinvitro転写されたRNA からcDNAを
合成し、その産物に関して評価した。in vitroで転写さ
れたRNA を鋳型にして変性ゲル電気泳動を用いると、逆
転写反応の効率を各々の検体で比較でき、また、早期の
逆転写の終結や反応効率の減少を示す非特異的転写の終
結を評価できる。制限酵素NotIによる切断により直線状
に開裂したpBluescript II SK をT7 RNAポリメラーゼで
in vitro転写することにより鋳型RNA を調製した。この
反応はpBluescript II SK の使用説明に書いてあるT7プ
ロモーターから開始される。
ァーの条件は次のものを用いた。 50mM Tris-HCl pH8.3, 75mM KCl, 3mM MgCl2, 10mMジチ
オスレイトール, 各dNTP (dATP, dGTP, dCTP, dTTP) 0.
75mM。 上記標準バッファーに 1μg 鋳型RNA, 400ngプライマー
(20mer SK プライマー, CGCTCTAGAACTAGTGGATC), とsu
perscript II 200unitを20μl に調整する。0.2 μl の
[α-32P]dGTP を逆転写産物標識の為に用いた。その他
の全ての基質を入れる前に、RNA とプライマーの混合検
体は65℃にインキュベートされた。その後の反応は42℃
1時間で実行した。反応産物は変性アガロース電気泳動
法に供され、完全長cDNAの回収率と、短い不完全伸長に
よる産物との割合を調べる為にオートラジオグフィで電
気泳動パターンを調べた。結果を図1のレーン1に示
す。尚、逆転写酵素superscript IIは、上記標準バッフ
ァー条件下では50℃以上の温度にすると失活した。
されることを示す為に、逆転写のバッファー条件を次の
ように設定した。 50mM Tris-HCl pH8.3, 75mM KCl, 3mM MgCl2, 10mM ジ
チオスレイトール, 各0.75mM dNTP (dATP, dGTP, dCTP,
dTTP) , 20%(w/v) トレハロース、20%(v/v) グリセ
ロール。 上記バッファーに 1μg 鋳型RNA, 400ngプライマー(20m
er SK プライマー) と200unit のsuperscript IIを24μ
l の水溶液中で反応させた。0.2 μl の [α-32P]dGTP
を逆転写産物標識の為に用いた。この条件下では逆転写
酵素superscript IIは標準温度 (42℃) のコントロール
反応より高い活性を有した。酵素活性はプライマーと鋳
型RNA を37℃で2分間アニールした後、60℃で測定し
た。
気泳動法に供され、完全長cDNAの回収率と、短い不完全
伸長による産物との割合を調べる為にオートラジオグフ
ィで電気泳動パターンを調べた。結果を図1に示す。レ
ーン1に示すように、標準バッファー42℃での条件下で
は、途中の特異的な部分で逆転写が止まった産物や非特
異的に逆転写が停止した産物がみられる。レーン2に示
すように、同じく42℃においては20%トレハロース20%
グリセロールを加えてもこれらの途中で停止した産物は
同様にみられた。レーン3に示すように、60℃に温度を
上げると、途中で合成反応が停止した産物は極めて少な
くなり、完全長が合成されている。レーン5に示すよう
に、レーン3の条件にさらに0.125 μg/μl のBSAを
加えると、更に酵素活性が安定化した。しかし、20%ト
レハロース20%グリセロールを添加せず、BSAのみで
は酵素の耐熱化は十分ではなかった。レーン4に示すよ
うに、レーン3の条件にさらにtriton X100 を0.05%加
えると、途中で停止した不完全逆転写反応物はさらに減
少した。しかし、逆転写酵素全体の活性がやや低下し
た。
用いた以外、実施例1におけるレーン3で採用した条件
と同様の条件で逆転写を行い、産物の電気泳動パターン
を調べた。その結果、実施例1のレーン3のトレハロー
スを用いた場合と同様に途中で合成反応が停止した産物
は極めて少なくなり、完全長が合成された。
レブロース、キシリトール、ベタインを用いた以外、実
施例1におけるレーン3で採用した条件と同様の条件で
逆転写を行い、産物の電気泳動パターンを調べた。その
結果、実施例1のレーン3のトレハロースを用いた場合
と同様に途中で合成反応が停止した産物は極めて少なく
なり、完全長が合成された。
A0.5μg、さらにベタイン0〜0.6Mまたはサル
コシン0〜3.6Mを含む反応液20μlを37、4
5、50、55、60℃の各温度で1時間インキュベー
トした。反応液の調製は、氷上で迅速に行い、インキュ
ベート以前に酵素反応が始まらないように注意した。イ
ンキュベート終了後、0.25%ブロモフェノールブル
ー、0.26%XC(キシレンシアノール)、30%グ
リセロール、120mM EDTAを4μl添加して酵
素反応を終了させた。この反応液を65℃で5分間加温
し、cos siteを完全に開いた後、0.05% EtBrを含んだ0.
8%アガロースゲルで電気泳動した。ベタイン添加の場合
の電気泳動写真を図2に示し、サルコシン添加の場合の
電気泳動写真を図3に示す。
FOTODYNE社製) でゲルの画像解析を行い、1kbp付近のバ
ンド(図中に矢印を示す)の強度により酵素の活性を比
較した。ベタイン0M、37℃のときの強度を100と
した場合の各バンドの相対強度を図4に示す。また、サ
ルコシン0M、37℃のときの強度を100とした場合
の各バンドの相対強度を図5に示す。この結果から、適
当濃度のベタインまたはサルコシンを添加することで、
制限酵素の熱活性化することができることが分かる。
を示す図面に代わる写真。
ガロースゲル泳動結果を示す図面に代わる写真。
アガロースゲル泳動結果を示す図面に代わる写真。
バンドの相対強度を示す。
各バンドの相対強度を示す。
Claims (11)
- 【請求項1】 酵素の活性を高温下で高める方法であっ
て、前記酵素を含有する反応液中にシャペロン作用を有
する物質を存在させることを特徴とする方法。 - 【請求項2】 反応液の温度が45〜110 ℃の範囲である
請求項1に記載の方法。 - 【請求項3】 シャペロン作用を有する物質が糖類、ア
ミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体、並びにシ
ャペロンタンパク質からなる群から選ばれる1種または
2種以上の物質である請求項1または2に記載の方法。 - 【請求項4】 糖類が、トレハロース、マルトース、グ
ルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、
アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キト
ビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロ
ース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドー
ス、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロー
ス、キシリトール及びアラビトールからなる群から選ば
れる少なくとも1種の糖である請求項3に記載の方法。 - 【請求項5】 糖類がトレハロース、ソルビトール、レ
ブロース、キシリトール又はアラビトールである請求項
4に記載の方法。 - 【請求項6】 アミノ酸が Ne −アセチル−β−リジ
ン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、 Na −
カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、
ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グル
タミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシ
ン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドからな
る群から選ばれる請求項3に記載の方法。 - 【請求項7】 アミノ酸がベタイン又はサルコシンであ
る請求項6に記載の方法。 - 【請求項8】 シャペロンタンパク質が耐熱性菌のシャ
ペロンタンパク質またはヒートショックタンパク質であ
る請求項3に記載の方法。 - 【請求項9】 1種または2種以上の多価アルコールを
共存させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 - 【請求項10】 酵素がポリメラーゼまたは制限酵素で
ある請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 - 【請求項11】 ポリメラーゼが逆転写酵素またはDN
Aポリメラーゼである請求項7に記載の方法。
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