JP3536052B2 - 改良された逆転写方法 - Google Patents

改良された逆転写方法

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JP3536052B2
JP3536052B2 JP19820197A JP19820197A JP3536052B2 JP 3536052 B2 JP3536052 B2 JP 3536052B2 JP 19820197 A JP19820197 A JP 19820197A JP 19820197 A JP19820197 A JP 19820197A JP 3536052 B2 JP3536052 B2 JP 3536052B2
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良英 林崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、mRNAから完全長cD
NAを得ることができる逆転写方法に関する。
【0002】
【従来の技術】逆転写酵素(RAN 依存性DNA ポリメラー
ゼ)を用いてin vitroでmRNAからcDNAを得ることができ
ることが知られている。また、ヒトの遺伝子配列を解明
するプロジェクトが進行されているが、その中で、遺伝
子を鋳型としてmRNAを作成し、さらに、作成されたmRNA
を鋳型として完全長cDNAを得ることが試みられている。
即ち、mRNAからcDNAの第一鎖を合成し、これがcDNAライ
ブラリー作成法やRT-PCRの第一ステップとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記mRNAから完全長cD
NAを得るために逆転写方法が利用される。しかるに、従
来の逆転写方法では、mRNAの最先端であるcap サイトま
で逆転写が到達しないため、mRNAから完全長のcDNAを得
ることができなかった。本発明者の検討によれば、タン
パク質の2次構造と同様に、長鎖のmRNAは1本のmRNAの
鎖内で2次構造を形成してしまい、2次構造を形成して
いる部分で逆転写酵素の伸長が立体的構造による阻害を
受け、その結果、mRNAの末端まで逆転写が行われないた
めであることが判明した。
【0004】即ち、現在の技術的限界は、mRNAの安定な
2次構造の為、反応が早期に終了し転写単位の5'末端ま
で到達する効率が非常に低いことである。この技術的な
限界はライブラリーの品質に影響を与える。何故ならオ
リゴdTをプライマーとし、3'端のpoly Aより合成された
cDNAは、途中で合成が停止するため、殆どのクローンが
3'端のみを持ち、完全長を持たないことが多い。このス
テップを克服する為、今までにいくつかの試みがなされ
てきた。例えば、第一鎖の合成の前に、mRNAの2次構造
を解く為に70℃の前処理をすることが挙げられる。ま
た、mRNAの熱処理の代わりに水酸化メチル水銀で処理す
ることも可能である。これらの方法は第一鎖合成の効率
を上げるのにある程度効果的であるにも拘わらず、完全
長cDNAを効率良く回収するには十分でなかった。特に数
Kbp 以上の長いmRNAを逆転写する場合には、特に効率が
悪い。
【0005】そこで本発明の第1の目的は、長鎖のmRNA
を鋳型とする場合であっても、mRNAの全長に渡って逆転
写が可能であり、その結果、完全長のcDNAを得ることが
できる方法を提供することにある。
【0006】それに対して、本発明者は、逆転写を行う
温度をmRNAが2次構造を形成しない温度とすることによ
り上記本発明の第1の目的を達成できることを見いだし
た。さらに、mRNAが2次構造を形成しない状態にある温
度は、緩衝液の組成等にも依存するが、例えば、45℃以
上、特に60℃以上の温度である。
【0007】これらの温度下では、mRNAを2次構造を取
らない状態に維持でき、第一鎖の合成を効率よく行うこ
とができるのであるが、上記のような温度条件下では、
酵素の種類によっては逆転写酵素の活性が低下または
失活するという問題があること、及び逆転写酵素の活
性化に必要なマグネシウムのような金属イオンと緩衝
剤、例えばトリス(Tris)〔トリス(ヒドロキシメチル)
アミノメタン〕が共存するとmRNAの安定性が低下する
(切断される)という問題があることが、それぞれ判明
した。
【0008】そこで本発明の第2の目的は、逆転写をmR
NAが2次構造を取らない温度で行うことにより、長鎖の
mRNAを鋳型とする場合であってもmRNAの全長に渡って逆
転写が可能であり、かつ非耐熱性の逆転写酵素を用いる
場合であってもこの酵素の熱による活性低下も防止で
き、即ち熱活性化でき、その結果、高い信頼性のもと完
全長のcDNAを得ることができる方法を提供することにあ
る。
【0009】本発明の第3の目的は、逆転写をmRNAが2
次構造を取らない温度で行うことにより、長鎖のmRNAを
鋳型とする場合であってもmRNAの全長に渡って逆転写が
可能であり、かつ耐熱性の逆転写酵素を用い、その結
果、高い信頼性のもと完全長のcDNAを得ることができる
方法を提供することにある。
【0010】さらに本発明の第4の目的は、逆転写をmR
NAが2次構造を取らない温度で行うことにより、長鎖の
mRNAを鋳型とする場合であってもmRNAの全長に渡って逆
転写が可能であり、かつ逆転写酵素の活性化に必要な金
属イオンが存在する場合、特に、さらにトリス(Tris)の
ような緩衝液が共存する場合であっても、mRNAの安定性
を維持でき、その結果、高い信頼性のもと完全長のcDNA
を得ることができる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記本発明の第1の目的
を達成する本発明の第1の態様は、mRNAからcDNAを逆転
写酵素を用いて調製する方法であって、前記逆転写をmR
NAが2次構造を取らない温度で行うことを特徴とする方
法である。
【0012】上記本発明の第2の目的を達成する本発明
の第2の態様は、mRNAからcDNAを逆転写酵素を用いて調
製する方法であって、前記逆転写をmRNAが2次構造を取
らない温度で、非耐熱性酵素を用い、かつ糖類の存在下
で行うことを特徴とする方法である。
【0013】上記本発明の第3の目的を達成する本発明
の第3の態様は、mRNAからcDNAを逆転写酵素を用いて調
製する方法であって、前記逆転写をmRNAが2次構造を取
らない温度で、かつ耐熱性酵素を用いて行うことを特徴
とする方法である。
【0014】上記本発明の第4の目的を達成する本発明
の第4の態様は、mRNAが2次構造を取らない温度で、mR
NAからcDNAを逆転写酵素を用いて調製する方法であっ
て、前記逆転写を前記逆転写酵素の活性化に必要な金属
イオンとトリス緩衝液の存在下で行うに際して、前記金
属イオンに対するキレート剤を存在させることを特徴と
する方法である。
【0015】発明の好ましい態様の1つは、mRNAからcD
NAを逆転写酵素を用いて調製する方法であって、 前記逆転写をmRNAが2次構造を取らない温度で行うこ
と、 前記逆転写を非耐熱性逆転写酵素を用い、かつ1種ま
たは2種以上の糖類の存在下で行うこと、及び 前記逆転写を前記逆転写酵素の活性化に必要な金属イ
オンの存在下で行うに際して、前記金属イオンに対する
キレート剤を存在させて行うことを特徴とする方法であ
る。
【0016】さらに発明の好ましい別の態様の1つは、
mRNAからcDNAを逆転写酵素を用いて調製する方法であっ
て、 前記逆転写をmRNAが2次構造を取らない状態にある温
度で行うこと、 前記逆転写を非耐熱性逆転写酵素を用い、かつ1種ま
たは2種以上の糖類と1種または2種以上の多価アルコ
ールとの存在下で行うこと、及び 前記逆転写を前記逆転写酵素の活性化に必要な金属イ
オンの存在下で行うに際して、前記金属イオンに対する
キレート剤を存在させて行うことを特徴とする方法であ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明について説明する。本
発明のmRNAからcDNAを逆転写酵素を用いて調製する方法
の第1の態様は、前記逆転写をmRNAが2次構造を取らな
い温度で行うことを特徴とする。前記「mRNAが2次構造
を取らない温度」とは、例えば、45℃以上の温度であ
り、さらに詳しくは、45〜90℃の範囲の温度である。但
し、温度が高くなるにつれてmRNAを2次構造を取らない
状態にすることは容易になるが、逆転写酵素の活性やmR
NAの安定性が低下する傾向があるので、上記温度は好ま
しくは50〜75℃の範囲である。
【0018】また、本発明の方法に用いるmRNAの鎖の長
さについては特に制限はない。但し、2次構造を取りに
くい鎖長の短いmRNAについては本発明を適用する必要が
ないのに対して、4Kbp超え、特に7Kbpを超えるmRNAにつ
いて2次構造を解かなければ、完全長のcDNAを逆転写は
困難である。そこで、このような観点から、本発明の方
法は、4Kbp超え、特に7Kbpを超えるmRNAの逆転写に特に
有効である。しかし、本発明の範囲から4Kbp以下のmRNA
を対象から排除する意図ではない。
【0019】本発明のmRNAからcDNAを逆転写酵素を用い
て調製する方法の第2の態様は、非耐熱性逆転写酵素を
用い、かつ前記逆転写をシャペロン作用のある物質の存
在下で行うことを特徴とする。
【0020】本発明において非耐熱性逆転写酵素とは、
至適温度が約45℃以下の酵素を言う。そのような非耐熱
性逆転写酵素の例として、Superscript II、AMV 逆転写
酵素及びMuLV逆転写酵素等を挙げることができる。但
し、これらに限定する意図はない。上記のように45℃以
上の温度におていは、常温で使用されるタイプのSupers
cript IIのような逆転写酵素は、至適温度における酵素
活性に比べて低い活性しか示さず、一定温度以上ではほ
とんど活性を示さなくなる。また、50℃で一定時間以上
高い温度に放置すると、室温に戻しても活性を示さなく
なる。
【0021】特に、mRNAの鎖長が長い場合、酵素の熱失
活のため合成途中で逆転写が停止する確率が高く、全長
の転写を困難にする。そこで、本発明では、昇温下にお
いても逆転写酵素が活性を維持できる(活性の低下の防
止と熱による失活の防止ができる)ことを目的として、
上記逆転写の系にシャペロン作用のある物質を共存させ
る。
【0022】ここでシャペロン作用を有する物質として
は、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導
体、並びにシャペロンタンパク質を挙げることができ
る。但し、これらに限定されるものではなく、シャペロ
ン作用を有する物質であればよい。尚、本明細書におい
て「シャペロン作用」とは、熱等によるストレスの為、
変性したタンパク質を再生するか、またはネイティブの
構造を保持させる為、熱によるタンパク質の完全変性を
防止する作用を言う。
【0023】糖類として、例えば、オリゴ糖類や単糖類
を挙げることができ、さらにその具体例として、例え
ば、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロー
ス、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セ
ロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−
グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロー
ス、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、
タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及
びアラビトール等を挙げることができる。但し、これら
に限定する意図はない。上記糖類は、単独で用いても、
2種以上を併用しても良い。尚、特に、トレハロース、
ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビト
ールは、シャペロン作用が強く、酵素の熱活性化の効果
が著しい。
【0024】アミノ酸又はその誘導体として、 Ne −ア
セチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、
ベタイン、 Na −カルバモイル−L−グルタミン−1−
アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタ
メート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プ
ロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN
−オキシドを挙げることができる。上記アミノ酸類は、
単独で用いても、2種以上を併用しても良い。尚、特
に、ベタイン及びサルコシンは、シャペロン作用が強
く、酵素の熱活性化の効果が著しい。
【0025】シャペロン作用を有する物質として多価ア
ルコールを挙げることができる。上記糖類も多価アルコ
ールではあるが、それ以外の多価アルコールの例として
は、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ポリ
エチレングリコール等を挙げることができる。上記多価
アルコールは、単独で用いても、2種以上を併用しても
良い。
【0026】さらに、シャペロン作用を有する物質とし
てシャペロンタンパク質を挙げることができ、シャペロ
ンタンパク質としては耐熱性菌のシャペロンタンパク質
やヒートウョックタンパク質、例えば、HSP60、H
SP70、HSP90等を挙げることができる。上記シ
ャペロンタンパク質は、単独で用いても、2種以上を併
用しても良い。
【0027】これらシャペロン作用を有する物質は、そ
の種類により、また酵素の種類により、酵素に対する最
適安定化濃度が異なる。従って、シャペロン作用を有す
る物質の種類と酵素の種類に応じて、反応系に対する添
加濃度を適宜決定することができる。また、シャペロン
作用を有する物質の効果を補強するという観点から、上
記1種または2種以上の糖類、アミノ酸またはシャペロ
ンタンパク質にさらに、1種または2種以上の多価アル
コールを併用することもできる。多価アルコールの例と
しては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、
ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0028】本発明のmRNAからcDNAを逆転写酵素を用い
て調製する方法の第3の態様は、耐熱性逆転写酵素を用
いて行うことを特徴とする。本発明において耐熱性逆転
写酵素とは、約40℃を超える至適温度を有する酵素を言
う。そのような耐熱性逆転写酵素の例として、Tth ポリ
メラーゼを挙げることができる。但し、これに限定され
る意図はない。Tth ポリメラーゼは至適温度が70℃であ
り、上記45℃以上の温度において高い活性で逆転写を行
うことができる。
【0029】本発明のmRNAからcDNAを逆転写酵素を用い
て調製する方法の第4の態様は、前記逆転写を前記逆転
写酵素の活性化に必要な金属イオンの存在下で行うに際
して、前記金属イオンに対するキレート剤を存在させる
ことを特徴とする。酵素は活性化のため金属イオンを必
要とすることがあり、例えば、逆転写酵素であるSupers
cript IIは、活性化のため、金属イオンとしてマグネシ
ウムイオンを必要とする。ところが、上記のような温度
条件下のマグネシウムイオンを含む緩衝液、例えば、ト
リス(Tris)緩衝液中では、mRNAの切断が進み、完全長の
cDNAを得ることが困難である。同様に、Tth ポリメラー
ゼは、活性化のため、金属イオンとしてマンガンイオン
を必要とする。ところが、マンガンイオンを含む緩衝
液、例えば、トリス(Tris)緩衝液中、上記のような温度
条件下で逆転写反応を行うと、mRNAの切断が極めて進
み、完全長のcDNAを得ることが困難である。
【0030】それに対して、本発明の方法では、逆転写
酵素の活性は維持しながら、かつmRNAの切断を阻止でき
る方法として、金属イオンに対するキレート剤を存在さ
せる。但し、逆転写酵素の活性化のための金属イオンを
完全にキレートしてしまうと逆転写酵素が活性を示さな
くなるので、キレート力の比較的弱いキレート剤を用い
ることが適当である。キレート力の比較的弱いキレート
剤としては、例えば、デオキシヌクレオチド トリフォ
スフェート(dNTP)を挙げることができる。キレート力の
比較的弱いキレート剤は、金属イオンに対して当モル数
前後の濃度を用いることが適当である。
【0031】キレート剤としてデオキシヌクレオチド
トリフォスフェートを使用する場合は、金属イオンに対
して当モル数前後を添加することが適当である。従っ
て、キレート剤の添加量は、対象となる金属イオンに対
するキレート力を考慮して、逆転写酵素活性は維持で
き、かつmRNAの切断も阻止できる量を適宜決定できる。
尚、デオキシヌクレオチド トリフォスフェートはdAT
P、dGTP、dCTP、dTTPのいずれか1種を使用しても或い
は2種以上を併用してもよい。また、dATP、dGTP、dCT
P、dTTPの4種を併用しても良い。しかもこれらは全て
逆転写の基質としての役割も果たす為、4種を併用する
ことが通常である。
【0032】発明のmRNAからcDNAを逆転写酵素を用いて
調製する方法の好ましい、しかし非限定的な態様は、 前記逆転写をmRNAが2次構造を取らない温度、例え
ば、45〜90℃の温度、特に好ましくは60℃前後の温度で
行うこと、 前記逆転写を1種または2種以上の糖類と1種または
2種以上の多価アルコールの存在下で行うこと、及び 前記逆転写を前記逆転写酵素の活性化に必要な金属イ
オンの存在下で行うに際して、前記金属イオンに対する
キレート剤を存在させて行うこと、例えば、キレート剤
としてデオキシヌクレオチド トリフォスフェートとマ
グネシウムイオンを含むトリス(Tris)緩衝液中、逆転写
酵素としてSeperscript IIを用いて行うことを特徴とす
る方法である。
【0033】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明について詳細
に説明する。 参考例1金属イオン含有バッファーにおけるmRNAの安定性(dNTP
の付加) バッファー(50mM Tris pH8.3, 3mM MgCl2)に幾つかの
添加剤を添加した場合のRNA の安定性について検討する
ため、トータルリバー(Total Liver)RNAを用い、下記の
組成のバッファー中でインキュベーションした。
【0034】
【表1】
【0035】インキュベーション後のRNA の切断を見る
為に検体をSambrookらが記載しているRNA アガロースゲ
ル泳動に供した(Molecular Cloning, The second edit
ionpp 7.43-7.45)。ゲルはエチジウムプロマイドで染
め、RNA の切断の程度の評価はリポゾームRNA のバンド
の相対的強度を比較することにより評価した。アガロー
スゲル泳動の結果(レーン1〜7)を図1に示す。
【0036】レーン1に示すように、高濃度フリーのマ
グネシウムイオン(フリー Mg2+ )の下、つまりRNA を5
0mM Tris pH8.3, 3mM MgCl2 15%(v/v) グリセロール
でインキュベーションしたときには、グリセロールはRN
A を切断から守るのに十分働かなかった。事実、切断の
程度は50mM Tris pH8.3, 3mM MgCl2、グリセロール非存
在下で処理したもの(レーン2)と同程度であった。レ
ーン3に示すように、50mM Tris pH8.3, 3mM MgCl2, 2m
M dNTPで処理してもRNA の切断を十分には防ぎ切れなか
った。一方、レーン4に示すように、50mM Tris pH8.3,
3mM MgCl2, 3mM dNTP(NTPとMg2+は同一モル濃度)
の条件下ではRNA の切断を部分的に防止することができ
た。
【0037】さらに、レーン5に示すように、50mM Tri
s pH8.3, 3mM MgCl2, 4mM dNTPの存在下、つまりMg2+
よりNTP が 1mM多く含まれている条件下では、RNA は非
常に安定であったが、この条件下では逆転写酵素の活性
が下がるという結果を得ている。そこで、レーン6に示
すように、50mM Tris pH8.3, 3mM MgCl2, 3mM dNTP (NT
P とMg2+は同一モル濃度) に15%グリセロールを加え
ると、RNA は切断を受けなかった。また、この条件下で
は逆転写酵素活性は完全に保たれることが別の実験から
明らかになった。レーン6で使用した条件下ではRNA の
安定性は、レーン7に示す滅菌水の安定性と殆ど変わら
なかった。
【0038】実施例1逆転写酵素の耐熱化による逆転写効率の向上 上記レーン6で使用した新しい条件下において、逆転写
活性を見る為、T7 RNAポリメラーゼでin vitro転写され
たRNA を鋳型RNA として用い、それからcDNAを合成し、
その産物に関して評価した。T7 RNAポリメラーゼでin v
itro転写されたRNA は、制限酵素NotIによる切断により
直線状に開裂したpBluescript II SK をT7 RNAポリメラ
ーゼでin vitro転写することにより調製した。この反応
はpBluescript II SK の使用説明に書いてあるT7プロモ
ーターから開始される。in vitroで転写されたRNA を鋳
型にして変性ゲル電気泳動を用いると、逆転写反応の効
率を各々の検体で比較でき、また、早期の逆転写の終結
や反応効率の減少を示す非特異的転写の終結を評価でき
る。
【0039】コントロールとして、逆転写の標準バッフ
ァーの条件は次のものを用いた。 50mM Tris-HCl pH8.3, 75mM KCl, 3mM MgCl2, 10mMジチ
オスレイトール, 各0.75mMdNTP (dATP, dGTP, dCTP, dT
TP) 。 上記標準バッファーに 1μg 鋳型RNA, 400ngプライマー
(20mer SK プライマー, CGCTCTAGAACTAGTGGATC), とsu
perscript II 200unitを20μl に調整する。0.2 μl の
[α-32P]dGTP を逆転写産物標識の為に用いた。その他
の全ての基質を入れる前に、RNA とプライマーの混合検
体は65℃にインキュベートされた。その後の反応は42℃
1時間で実行した。反応産物は変性アガロース電気泳動
法に供され、完全長cDNAの回収率と、短い不完全伸長に
よる産物との割合を調べる為にオートラジオグフィで電
気泳動パターンを調べた。結果を図2のレーン1に示
す。尚、逆転写酵素superscript IIは、上記標準バッフ
ァー条件下では50℃以上の温度にすると失活した。
【0040】オリゴ糖類を添加すると酵素反応が安定化
されることを示す為に、逆転写のバッファー条件を次の
ように設定した。 50mM Tris-HCl pH8.3, 75mM KCl, 3mM MgCl2, 10mM ジ
チオスレイトール, 各dNTP (dATP, dGTP, dCTP, dTTP)
0.75mM, 20 %(w/v) トレハロース、20%(v/v) グリセ
ロール。 上記バッファーに 1μg 鋳型RNA, 400ngプライマー(20m
er SK プライマー) と200unit のsuperscript IIを24μ
l の水溶液中で反応させた。0.2 μl の [α-32P]dGTP
を逆転写産物標識の為に用いた。この条件下では逆転写
酵素superscript IIは標準温度 (42℃) のコントロール
反応より高い活性を有した。酵素活性はプライマーと鋳
型RNA を37℃で2分間アニールした後、60℃で測定し
た。
【0041】反応産物は上記と同様に変性アガロース電
気泳動法に供され、完全長cDNAの回収率と、短い不完全
伸長による産物との割合を調べる為にオートラジオグフ
ィで電気泳動パターンを調べた。結果を図2に示す。レ
ーン1に示すように、標準バッファー42℃での条件下で
は、途中の特異的な部分で逆転写が止まった産物や非特
異的に逆転写が停止した産物がみられる。レーン2に示
すように、同じく42℃においては20%トレハロース20%
グリセロールを加えてもこれらの途中で停止した産物は
同様にみられた。レーン3に示すように、60℃に温度を
上げると、途中で合成反応が停止した産物は極めて少な
くなり、完全長が合成されている。レーン5に示すよう
に、レーン3の条件にさらに0.125 μg/μl のBSAを
加えると、更に酵素活性が安定化した。しかし、20%ト
レハロース20%グリセロールを添加せず、BSAのみで
は酵素の耐熱化は十分ではなかった。レーン4に示すよ
うに、レーン3の条件にさらにtriton X100 を0.05%加
えると、途中で停止した不完全逆転写反応物はさらに減
少した。しかし、逆転写酵素全体の活性がやや低下し
た。
【0042】尚、レーン3で採用した条件と同様の条件
で、但し、トレハロースの代わりにグルコースまたはマ
ルトースを用いて電気泳動パターンを調べた結果、トレ
ハロースを用いた場合と同様に途中で合成反応が停止し
た産物は極めて少なくなり、完全長が合成された。
【0043】mRNAを出発材料としたcDNA合成 上記参考例及び実施例1で得られた知見から、ブァッフ
ァー条件として(50mMTris-HCl pH8.3, 75mM KCl, 3mM
MgCl2, 10mMジチオスレイトール, dNTP 0.75mM それ
ぞれ, 20 %(w/v) トレハロース、20%(v/v) グリセロ
ール)を用いることで、mRNAを出発材料として高効率で
cDNAを合成することが出来ることが明らかになった。
尚、反応条件は、1μgの鋳型RNA 、400ng オリゴ dT
(12-18) プライマーと200unit のsuperscript IIが [α
-32P]dGTP 存在下で24μl 中とし、さらに、37℃でプラ
イマーと鋳型RNA を2分間アニールしたのち60℃での反
応とした。得られる第一鎖cDNAは、続いて完全長cDNAラ
イブラリーの構築long RT-PCR に用いられる。
【0044】実施例2 トレハロースの代わりにアラビトール、ソルビトール、
レブロース、キシリトール又はベタインを用いた以外、
実施例1におけるレーン3で採用した条件と同様の条件
で逆転写を行い、産物の電気泳動パターンを調べた。そ
の結果、実施例1のレーン3のトレハロースを用いた場
合と同様に途中で合成反応が停止した産物は極めて少な
くなり、完全長が合成された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1で得られたアガロースゲル泳動結果
を示す図面に代わる写真。
【図2】 実施例1で得られたアガロースゲル泳動結果
を示す図面に代わる写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Biochemistry,1991年, Vol.30, No.31, p. 7661−7666 Circulation,1995年,V ol.92, No.2,p. 238− 243 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 C12N 9/00 - 9/99 C07H 21/00 - 21/04 C07K 14/00 - 16/46 C12P 21/00 - 21/08 C12N 1/00 - 7/08 G01N 33/50 - 33/98 C12Q 1/00 - 1/70 PubMed MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) EUROPAT(QUESTEL)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mRNAからcDNAを逆転写酵素を用
    いて調製する方法であって、前記逆転写を、非耐熱性逆
    転写酵素を用い、かつ糖類、アミノ酸およびその誘導体
    から選ばれる少なくとも1種の存在下で45〜90℃の
    温度で行うことを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 糖類が、トレハロース、マルトース、グ
    ルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、
    アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キト
    ビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロ
    ース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドー
    ス、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロー
    ス、キシリトールおよびアラビトールからなる群から選
    ばれる少なくとも1種の糖である請求項に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 糖類がトレハロース、ソルビトール、レ
    ブロース、キシリトールまたはアラビトールである請求
    に記載の方法。
  4. 【請求項4】 アミノ酸またはその誘導体がNe −アセ
    チル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベ
    タイン、Na −カルバモイル−L−グルタミン−1−ア
    ミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメ
    ート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロ
    リン、サルコシン、タウリンおよびトリメチルアミンN
    −オキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種であ
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 アミノ酸またはその誘導体がベタインま
    たはサルコシンである請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の方法。
  6. 【請求項6】 前記逆転写を1種または2種以上の
    類、アミノ酸またはその誘導体と1種または2種以上の
    多価アルコールの共存下で行う、請求項1〜5のいずれ
    か1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記逆転写を前記逆転写酵素の活性化に
    必要な金属イオンの存在下で行うに際して、前記金属イ
    オンに対するキレート剤を存在させる請求項1〜のい
    ずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 金属イオンがマグネシウムイオンまたは
    マンガンイオンである請求項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 キレート剤が1種または2種以上のデオ
    キシヌクレオチド トリフォスフェートである請求項
    または8に記載の方法。
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Biochemistry,1991年,Vol.30, No.31, p. 7661−7666
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