JP2009195250A - 可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ(gdh)を含む組成物の安定性を向上する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、可溶性のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物の安定性を向上する方法に関するものである。可溶性GDHとしては、糸状菌由来FAD依存型GDHが好ましく、特に、A.オリゼ由来のFAD−GDH、あるいは、A.テレウス由来のFAD−GDHにおいて、最も効果が認められている。
【解決手段】
可溶性のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物において該酵素と該酵素の基質とならない糖類、またはアミノ酸類、より選ばれるいずれか1つ以上の化合物を共存させることによりGDHの安定性を向上することができ、グルコース測定試薬の測定精度を高めることが期待できる。
【選択図】 なし
Description
さらに詳しくは、フラビン化合物などを補酵素とする可溶性グルコースデヒドロゲナーゼを含む組成物の安定性を向上する方法および該方法を用いた組成物に関するものである。
しかし、これは、あくまでも野生株から培養、精製して得られた酵素標品での結果であり、我々が検討したところ、該酵素の大腸菌組換え体においては、酵素表面に多糖が付加されておらず、著しく熱安定性が低下することがわかった。
また、我々はアスペルギルス・テレウス株(NBRC 33026)から取得したFADGDHと、アスペルギルス・テレウスのFADGDH遺伝子を大腸菌で発現して取得したFADGDH組換え体(ATGDH)の熱安定性を比較したところ、同じ、50℃、15分処理において、前者は約90%の活性を維持していたが、後者のrFADGDHでは、約2%の活性しか維持できていなかった。
血糖センサ用チップの作製工程においては、加熱乾燥処理を施す場合があり、組換え体を利用する場合には、大幅な熱失活をおこす危険性があり、熱安定性を向上させる必要があった。
項1.
補酵素を必要とする可溶性のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物において、該酵素と該酵素の基質とならない糖類、またはアミノ酸類、より選ばれるいずれか1つ以上の化合物を共存させる工程を含む、該化合物を共存させない場合と比べてGDHの安定性を向上させる方法。
項2.
補酵素がピロロキノンキノリンまたはフラビン化合物またはニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)であるGDHを含む組成物における、項1に記載の安定性を向上させる方法。
項3.
溶液中で共存させる各化合物の終濃度が0.01重量%以上であり、かつ、各化合物の合計の濃度が30重量%以下である項1または2記載の安定性を向上させる方法。
項4.
添加する化合物がトレハロース、マンノース、メレジトース、グルコン酸ナトリウム、グルクロン酸ナトリウム、ガラクトース、メチル―α―D−グルコシド、シクロデキストリン、α−D−メリビオース、スクロース、セロビオース、グリシン、アラニン、セリン、BSA、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸アンモニウム、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アラビノース、ソルビタン、2−デオキシーDーグルコース、キシロース、フルクトース、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸、フェニルアラニン、プロリン、リジン塩酸塩、サルコシン、タウリンからなる群より選ばれるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の熱安定性を向上させる方法。
項5.
フラビン化合物を補酵素とするGDHが糸状菌由来であることを特徴とする項1〜4記載の熱安定性を向上する方法。
項6.
項1〜5のいずれかに記載の方法により熱安定性が向上した、可溶性GDHを含む組成物。
項7.
フラビン化合物結合型のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)組換え体を含む組成物において、4℃で保存した該組成物と比べて、50℃、15分処理した場合でも、20%以上のGDH活性を残存することを特徴とする項6記載のGDH含有組成物。
項8.
フラビン化合物結合型GDHを含む組成物において、4℃で保存した該組成物と比べて、50℃、30分処理した場合でも、10%以上のGDH活性を残存することを特徴とする項6記載のGDH含有組成物。
項9.
項6〜8の組成物を用いるグルコース濃度の測定方法。
項10.
項6〜8の組成物を含むグルコースセンサ。
項11.
可溶性の補酵素結合型のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物において、該酵素と該酵素の基質とならない糖類、またはアミノ酸類、より選ばれるいずれか1つ以上の化合物を共存させる工程を含む、該化合物を共存させない場合と比べてGDHの熱安定性が向上した組成物の製造方法。
D−グルコース + 電子伝達物質(酸化型)
→ D−グルコノ−δ−ラクトン + 電子伝達物質(還元型)
D−グルコースを酸化してD−グルコノ−1,5−ラクトンを生成するという反応を触媒する酵素であり、由来や構造に関しては特に限定するものではない。
補酵素としては、例えばフラビン化合物をとることができる。
例えば、ペニシリウム属のペニシリウム・リラシノエキヌラタムは、寄託番号NBRC
6231として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている。また、アスペルギルス属のアスペルギルス・テレウスは、寄託番号NBRC 33026として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている。
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実験例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実験例1[5])、取得した。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなっているのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同用の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra−Plus−TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up―(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
上記で精製したPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるよう添加し37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号9)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号10)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid
−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
このような改変は当該技術分野における公知技術を用いて当業者であれば容易に実施することが出来る。例えば、蛋白質に部位特異的変異を導入するために当該蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を置換または挿入するための種々の方法が、Sambrookら著、Molecular Cloning; A Laboratory Manual 第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
例えば、本発明におけるFADGDHの濃度は特に制約がないが、溶液中の場合、好ましい下限は、0.01U/mL、さらに好ましくは、0.1U/mL、さらに好ましくは0.2U/mLである。好ましい上限は、5000U/mL、さらに好ましくは、500U/mL、さらに好ましくは50U/mLである。粉末あるいは凍結乾燥物中でも同程度の濃度が望ましいが、粉末標品を調製する目的では、5000U/mL以上の濃度にすることができる。
添加する化合物として好ましいものとして、トレハロース、マンノース、メレジトース、グルコン酸ナトリウム、グルクロン酸ナトリウム、ガラクトース、メチル―α―D−グルコシド、シクロデキストリン、α−D−メリビオース、スクロース、セロビオース、グリシン、アラニン、セリン、BSAからなる群より選ばれるいずれか1つ以上を挙げることができる。
これらの共存させる各化合物の濃度は特に限定されるものではないが、溶液中の場合、好ましい下限は、0.001重量%、さらに好ましくは、0.01%、さらに好ましくは0.1%である。夾雑物の持込の危険性から、好ましい上限は、30重量%、さらに好ましくは、20%、さらに好ましくは10%である。なお、実施例で記載されている化合物の濃度は、溶液中の場合は、溶媒に対する重量%、粉末乾燥物に対しては、GDH酵素に対する重量%で表している。例えば、粉末乾燥物では、40mg/mlのGDHに対して60%の安定化剤を添加したとすると、24mg安定化剤を溶解したことになり、その際の溶液中での濃度は約2.4%になる。粉末安定化の検証実験でも、溶液中で熱安定化効果を示した濃度範囲内で粉末安定化効果が見られており、粉末安定性に関しても溶液中の濃度と同様範囲で効果を発揮することが容易に推測できる。
これらの共存させる各化合物の濃度は特に限定されるものではないが、溶液中の場合、好ましい下限は、0.01mM、さらに好ましくは、0.1mM、さらに好ましくは1mMである。好ましい上限は、10M、さらに好ましくは、5M、さらに好ましくは1Mである。
粉末あるいは凍結乾燥物を作製する場合には、溶液中の場合と同程度の化合物濃度を含有する組成にて乾燥処理を施すことにより同様の効果を持った乾燥標品を取得することができる。
なお、実施例で記載されている化合物の濃度は、GDH酵素と共存して保存する時の終濃度である。
これらのうち1種のみを適用してもよいし、2種以上を用いてもよい。さらには上記以外を含む1種以上の複合組成であってもよい。
また、これらの添加濃度としては、緩衝能を持つ範囲であれば特に限定されないが、好ましい上限は100mM以下、より好ましくは50mM以下である。好ましい下限は5mM以上である。
粉末あるいは凍結乾燥物中においては緩衝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1%(重量比)以上、特に好ましくは0.1〜80%(重量比)の範囲で使用される。
これらは、種々の市販の試薬を用いることが出来る。
後述のGDH酵素活性の測定方法に記載の活性測定法において、4℃保存した溶液のGDH活性値(a)と、一定温度で一定時間熱処理した後のGDH活性値(b)を測定し、測定値(a)を100とした場合に対する相対値((b)/(a)×100)を求めた。この相対値を残存率(%)とした。そして、該化合物の添加の有無を比較して、添加により残存率が増大した場合、熱安定性が向上したと判断した。
これらの各メディエーターは感度に様々な違いが存在するために、添加濃度を一律に規定する必要性はないが、一般的には1mM以上の添加が望ましい。
これらのメディエーターは測定時に添加してもよいし、後記するグルコース測定用試薬、グルコースアッセイキットあるいはグルコースセンサを作製するときに予め含有させておくこともできる。なお、その際には、液体状態、乾燥状態などの形態は問われず、測定時に解離してイオンの状態になるようにしておけばよい。
本発明のグルコース測定用試薬、グルコースアッセイキット、グルコースセンサは、液状(水溶液、懸濁液等)、真空乾燥やスプレードライなどにより粉末化したもの、凍結乾燥など種々の形態をとることができる。乾燥法としては、特に制限されるものではなく常法に従って行えばよい。本発明の酵素を含む組成物は凍結乾燥物に限られず、乾燥物を再溶解した溶液状態であってもよい。
本発明においては以下の種々の方法によりグルコースを測定することができる。
本発明のグルコース測定用試薬は、典型的には、GDH、緩衝液、メディエーターなど測定に必要な試薬、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明のキットは、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。好ましくは本発明のGDHはホロ化した形態で提供されるが、アポ酵素の形態で提供し、使用時にホロ化することもできる。
本発明はまた、本発明に従うGDHを含むグルコースアッセイキットを特徴とする。本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従うGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従うGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。好ましくは本発明のGDHはホロ化した形態で提供されるが、アポ酵素の形態で提供し、使用時にホロ化することもできる。
本発明はまた、本発明に従うGDHを用いるグルコースセンサを特徴とする。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはメディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、また、これらを組み合わせて用いてもよい。好ましくは本発明のGDHはホロ化した形態で電極上に固定化するが、アポ酵素の形態で固定化し、補酵素を別の層としてまたは溶液中で供給することも可能である。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
本発明において、FAD依存型GDHの活性測定は以下の条件で行う。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
163mM PMS溶液
6.8mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.6ml、DCPIP溶液0.2ml、D―グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
反応試薬3mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
活性(U/ml)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
アスペルギルス・オリゼTI株(土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。)、および、アスペルギルス・テレウスNBRC33026株の菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号3,4、および、配列番号7,8に示す4種類のオリゴDNAを合成し、夫々のmRNAから調製した夫々のcDNAをテンプレートとしてKOD−Plus(東洋紡績製)を用いてアスペルギルス・オリゼ、および、アスペルギルス・テレウスのGDH(AOGDH)遺伝子を増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、2種類の組換えプラスミド(pAOGDH,pATGDH)を構築した。これらの組換えプラスミドを、コンピテントハイ DH5α(東洋紡績製)を用いて夫々導入した。常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子、および、ATGDHの塩基配列の決定を行った(配列番号1、5)。cDNA配列から推定されるアミノ酸配列は、アスペルギルス・オリゼで593アミノ酸(配列番号2)、および、アスペルギルス・テレウスで568アミノ酸(配列番号6)であった。また、同様の手法により、ペニシリウム・イタリカムのGDH(PIGDH)遺伝子を含有する組換えプラスミド(pPIGDH)を導入した形質転換体も取得した。
これら形質転換体をTB培地(2.4%酵母エキス、1.2%ポリペプトン、1.25%リン酸1水素2カリウム、0.23%リン酸2水素1カリウム、0.4%グリセロール、50μg/mlアンピシリンナトリウム、pH7.0)にて10L−ジャーファーメンターを用いて培養温度25℃、通気量2L/分、攪拌回転速度170rpmで48時間培養した。
培養菌体を遠心分離で集めた後、50mMのリン酸バッファー(pH5.5)に660nmでの菌体濁度が約50となるように懸濁し、65MPaの圧力でホモジナイザー破砕を行った。破砕液を遠心分離して得た上清に終濃度9%となるようポリエチレンイミンを添加することで核酸等を沈殿させ、遠心分離して上清を得た。これに硫酸アンモニウムを飽和量溶解させて目的タンパク質を沈殿させ、遠心分離で集めた沈殿を50mMのリン酸バッファー(pH5.5)に再溶解させた。そしてG−25セファロースカラムによるゲルろ過、Octyl−セファロースカラムおよびPhenyl−セファロースカラムによる疎水クロマト(溶出条件は共に25%飽和〜0%の硫酸アンモニウム濃度勾配をかけてピークフラクションを抽出)を実施し、さらにG−25セファロースカラムによるゲルろ過で硫酸アンモニウムを除去しGDH組換え体標品を調製した。
糸状菌野生株由来FAD依存型GDH生産菌としてアスペルギルス・テレウスNBRC33026株とアスペルギルス・オリゼTI株を用い、それぞれのL乾標本をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌後に上記の菌糸懸濁液をそれぞれ投入、培養を開始した。培養条件は、温度30℃、通気量2L/分、攪拌数380rpmで行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、ヌッチェろ過器を用いて吸引ろ過によりろ紙上にそれぞれの菌株の菌体を集めた。培養液5Lを分子量10,000カットの限外ろ過用中空糸モジュールで1/10量に濃縮し、濃縮液にそれぞれ硫酸アンモニウムを終濃度が60%飽和(456g/L)となるように添加、溶解した。続いて日立高速冷却遠心機で8000rpm15分遠心し残渣を沈殿させたのち、上清をOctyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム濃度0.6〜0.0飽和でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25セファロースカラムでゲルろ過を行ってタンパク質画分を回収することで脱塩を行い、脱塩液に0.6飽和相当の硫酸アンモニウムを添加して溶解した。これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム濃度0.6〜0.0飽和でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。さらに、得られたGDH溶液を、G−25セファロースカラムでゲルろ過を行ってタンパク質画分を回収し、取得した精製酵素をFAD依存型GLD評価標品として使用した。
検討は、先述の試験例1のFADGDH活性の測定方法に準じて行った。
まず、実施例5で所得したアスペルギルス・オリゼ由来FADGLD組換え体標品(rAOFADGDH)を約2U/mlになるように酵素希釈液(50mM リン酸カリウム緩衝液(pH5.5)、0.1% TritonX−100)にて溶解したものを50ml用意した。この酵素溶液0.9mlに、表1記載に各種安定化剤を夫々の終濃度となるように添加して、合計容量を1.0mlとしたものを2本用意した。また、コントロールには、各種化合物の代わりに蒸留水0.1mlを添加したものを2本用意した。
2本のうち、1本は4℃で保存し、もう1本は、50℃、15分間処理を施した。処理後、夫々のサンプルのFADGDH活性を測定した。各々、4℃で保存したものの酵素活性を100として、50℃、15分間処理後の活性値を比較して活性残存率(%)として算出した。
これらの検討の結果、FADGDHの基質とならない糖類やある種のアミノ酸類を添加することにより、FADGDHの熱安定性が増大することが明らかとなった(表1)。
アミノ酸類よりも糖類の方が高い熱安定化効果が見られ、その中でも、トレハロース、マンノース、グルコン酸ナトリウム、ガラクトース、メチル―α―D−グルコシド、α−D−メリビオースで高い効果が見られた。
次に、高い熱安定化効果の見られたトレハロースについて、その効果を発揮する有効濃度について検討した。方法は、先の実施例7に準じて行った。その結果、添加濃度の増加にしたがって、効果が増大する傾向が見られ、たとえ終濃度0.01%トレハロースの添加においても、安定化効果を発揮することが明らかとなった(表2)。
基本的な方法は、先の実施例7に準じて、その他の安定化剤においても、各々組み合わせることにより、相乗効果が見られないか検討した。その結果、セリンxBSAの組合せ(表3)やトレハロースxマンノース、トレハロースxグリシン、マンノースxグリシンの組合せ(表4)においても単独で使用した場合と比べて明らかな熱安定化効果が確認できた。
実施例10の検討で高い熱安定化効果の見られたトレハロースxグリシン、マンノースxグリシンの組み合わせについて、その効果を発揮する有効濃度について検討した。方法は、先の実施例7に準じて行った。その結果、これら混合物においても添加濃度の増加にしたがって、効果が増大する傾向が見られた。終濃度0.01%で各化合物を添加した場合でも、50℃,30分間処理において、20%前後の残存活性が見られ、先の0.01%トレハロースを単独で使用した場合と比べて2倍近い安定化効果が認められた(表5)。
基本的な方法は、先の実施例7に準じて、各種FADGDHにおける安定化剤の熱安定化効果について検討した。安定化剤として4%D−グルクロン酸ナトリウムx4%グリシンの混合組成を利用した。その結果、野生株由来GDH、組換え体GDHを問わず、安定化剤の効果が見られることが明らかとなった(表6)。
検討は、実施例5で所得したアスペルギルス・オリゼ由来FADGLD組換え体標品(rAOFADGDH)を用い、先述の試験例1のFADGDH活性の測定方法に準じて行った。FADGDH酵素溶液中に占めるのFADGDHタンパク質量を測定し、これに対して60%あるいは30%に相当する安定化剤を溶解したものを1ml用意した。例えば、10mgのFADGDHを含有する酵素液に対して、60%相当のBSAを添加する場合には、6mgのBSAを溶解した。
各種安定化剤を添加した酵素溶液から正確に0.2mlずつバイアルに分取したものを数本用意した。また、コントロールには、安定化剤を添加しないものを用意した。用意したバイアルを凍結真空乾燥(FDR)して、水分を完全に蒸発させた後、同じ安定化剤を添加したサンプルの内2本のみ、直ちに、活性測定を行った。一方、検体バイアルでは、25℃、湿度70%で数時間処理した後、37℃で保存して、1週間後の残存活性を測定した。活性残存率は、FDR直後の活性平均値を100%として、37℃処理後の各サンプルの活性平均値を測定して活性残存率(%)を算出した。そして、活性残存率が高くなっているほど、保存安定性が向上していると判断した。
その結果、BSA,セリン,トレハロース単独でも粉末酵素の保存安定性の向上が見られたが、BSAxセリンを組み合わせることにより、更なる、保存安定化効果が認められた。酵素標品の量の関係から、2,3の組合せのみで検討を行ったが、熱安定化効果のあった化合物では、いずれにおいても同様の保存安定化効果があるものと思われる。(表7、表8)
検討は、先述の試験例1のFADGDH活性の測定方法に準じて行った。
まず、実施例5で所得したアスペルギルス・テレウス由来FADGLD組換え体標品(rATFADGDH)を約2U/mlになるように酵素希釈液(50mM リン酸カリウム緩衝液(pH5.5)、0.1% TritonX−100)にて溶解したものを50ml用意した。この酵素溶液0.9mlに、表1記載に各種安定化剤を夫々の終濃度となるように添加して、合計容量を1.0mlとしたものを2本用意した。また、コントロールには、各種化合物の代わりに蒸留水0.1mlを添加したものを2本用意した。
2本のうち、1本は4℃で保存し、もう1本は、50℃、15分間処理を施した。処理後、夫々のサンプルのFADGDH活性を測定した。各々、4℃で保存したものの酵素活性を100として、50℃、15分間処理後の活性値を比較して活性残存率(%)として算出した。
これらの検討の結果、FADGDHの基質とならない糖類やある種のアミノ酸類を添加することにより、FADGDHの熱安定性が増大することが明らかとなった(表9、表10)。
アミノ酸類よりも糖類の方が高い熱安定化効果が見られ、その中でも、トレハロース、マンノース、メレジトース、グルコン酸ナトリウム、グルクロン酸ナトリウム、ガラクトース、メチル―α―D−グルコシド、α−D−メリビオース、スクロース、グリシン、アラニン、セリン、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、硫酸アンモニウム、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アラビノース、ソルビタン、2−デオキシーDーグルコース、キシロース、フルクトース、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸、フェニルアラニン、プロリン、リジン塩酸塩、サルコシン、タウリンで高い効果が見られた。
Claims (8)
- フラビン化合物を補酵素とする可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物において、該酵素とトレハロースを共存させる工程を含む、トレハロースを共存させない場合と比べてGDHの安定性を向上させる方法。
- GDHが糸状菌由来である請求項1に記載の方法。
- GDHがアスペルギルス属由来である請求項2に記載の方法。
- GDHがアスペルギルス・オリゼまたはアスペルギルス・テレウス由来である請求項3に記載の方法。
- フラビン化合物を補酵素とする可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)およびトレハロースを含む、トレハロースを共存させない場合と比べて熱安定性が向上した、可溶性GDHを含む組成物。
- 請求項5の組成物を用いるグルコース濃度の測定方法。
- 請求項5の組成物を含むグルコースセンサ。
- フラビン化合物を補酵素とする可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む組成物において、該酵素とトレハロースを共存させる工程を含む、トレハロースを共存させない場合と比べてGDHの熱安定性が向上した組成物の製造方法。
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