JP6155647B2 - フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ製剤の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、溶液状態の製剤(溶液製剤)には、使用時に溶解する必要がないため、操作が煩雑にならず、溶解液の取り違えや汚染の可能性が低減する長所がある。
また、液状試薬では、安定性が悪くとも測定のたびに基準物質を用いてキャリブレーションすれば正しい結果が得られるが、センサではキャリブレーションを行わないため、さらなる保存安定性の向上が必要である。
酵素を乾燥させた場合、タンパク質変性による活性の損失や再溶解時の濁質生成等の問題が発生することがある。そのような場合は、酵素タンパク質を保護し変性失活を防ぐための安定化剤が添加されることが多い。
また、FVHOの溶液製剤を安定化する方法について、エチレンジアミン4酢酸を添加し、さらに硫酸アンモニウム、キシリトール、グリシンより選ばれる1種以上をFVHOと共存させて凍結乾燥させる技術が知られていた(特許文献5参照)。
さらに、本発明者らは、センサ等への適用という観点から、より好ましい状態で、乾燥状態でFVHOを使用する方法を提供することを目的に、改めて先行技術においてFVHO乾燥製剤に添加されている組成物を検討した。
[項1]
Bicineを共存させる工程を含むことを特徴とするFVHO乾燥製剤の製造方法。
[項2]
メリビオースを共存させる工程を含む、項1に記載のFVHO乾燥製剤の製造方法。
[項3]
以下の(A)から選ばれるいずれか1つ以上を共存させる工程を含むことを特徴とするFVHO製剤の製造方法。
(A)リン酸、カゼインペプトン、D−グルコサミン塩酸塩、メリビオース、ソルボース、ラクトース、フルクトース、メレジトース、グルコノ−1,5−ラクトン、リビトール、ソルボース
[項4]
Bicineを含有することを特徴とするFVHO乾燥製剤。
[項5]
メリビオースを含有する、項3に記載のFVHO乾燥製剤。
[項6]
以下の(A)から選ばれるいずれか1つ以上を含有する、FVHO製剤。
(A)リン酸、カゼインペプトン、D−グルコサミン塩酸塩、メリビオース、ソルボース、ラクトース、フルクトース、メレジトース、グルコノ−1,5−ラクトン、リビトール、ソルボース
[項7]
項4から6のいずれかに記載のFVHO乾燥製剤を含む、ヘモグロビンA1c測定試薬。
[項8]
項4から6のいずれかに記載のFVHO乾燥製剤を含む、ヘモグロビンA1cセンサ。
[項9]
項7または項8に記載のヘモグロビンA1c測定試薬またはヘモグロビンA1cセンサを用いる、ヘモグロビンA1c測定方法。
また、本発明により、FVHOの乾燥製剤の吸湿性を低下させることができる。
凍結乾燥は酵素の失活を極力防止する観点から好ましい。また、風乾の場合は乾燥温度と時間を適宜コントロールすることで酵素の失活を防止することが可能であり好ましい。
本発明のFVHO製剤の製造方法においては、FVHO製剤の製造にあたり、以下の(A)から選ばれるいずれか1つ以上の試薬を共存させる工程を含むことを特徴とする。
(A)リン酸、カゼインペプトン、D−グルコサミン塩酸塩、メリビオース、ソルボース、ラクトース、フルクトース、メレジトース、グルコノ−1,5−ラクトン、リビトール、ソルボース
これらは、種々の市販の試薬を用いることができる。
緩衝液としては、組成は特に限定しないが、好ましくはpH4〜9の範囲で緩衝能を有するものであればよく例えばホウ酸、トリス塩酸、リン酸カリウム等の緩衝剤や、ACES、BES、Bicine、Bis−Tris,CHES、EPPS、HEPES、HEPPSO、MES、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TAPS、TAPSO、TES、Tricineといったグッド緩衝剤が挙げられる。また、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸などのような、ジカルボン酸をベースとした緩衝剤も挙げることができる。これらのうち1種のみを適用してもよいし、2種以上を用いてもよい。更には上記以外を含む1種以上の複合組成であってもよい。
これらは、種々の市販の試薬を用いることができる。
これらは、上記で説明した方法により作製したFVHO製剤を、種々の公知の方法で試薬またはセンサに含ませることで製造できる。そして、そのような試薬またはセンサを用いて、公知の方法により、ヘモグロビンA1cを測定することができる。
後述のFVHO酵素活性の測定方法に記載の活性測定法において、乾燥化を行った後の乾燥品重量あたりのFVHOオキシダーゼ活性値(a)と、一定温度で一定期間保存した後の乾燥品重量あたりのFVHOオキシダーゼ活性値(b)を測定し、測定値(a)を100とした場合に対する相対値((b)/(a)×100)を求めた。この相対値を残存率とした。そして、該化合物の添加の有無を比較して、添加により残存率が増大した場合、安定性が向上したと判断した。
本発明のFVHO乾燥製剤の製造方法においては、FVHO乾燥製剤の製造にあたり、Bicineを共存させる工程を含むことを特徴とする。Bicineはグッド緩衝剤の一つであって生化学分野で広く使用されている代表的な緩衝剤であり、市販品を容易に入手することができる。
好ましくは、Bicine濃度がFVHO:Bicineの重量比で2:1〜1:2、かつ、メリビオース濃度がFVHO:メリビオースの重量比で2:1〜4:3である。更に好ましくは、Bicine濃度がFVHO:Bicineの重量比で1:1〜1:2、かつ、メリビオース濃度がFVHO:メリビオースの重量比で2:1〜4:3である。
緩衝液としては、上記のBicineの緩衝能を利用してもよいが、pH4〜9の範囲で緩衝能を有するものを適宜加えてよく、例えばホウ酸、トリス塩酸、リン酸カリウム等の緩衝剤や、ACES、BES、Bis−Tris,CHES、EPPS、HEPES、HEPPSO、MES、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TAPS、TAPSO、TES、Tricineといったグッド緩衝剤が挙げられる。また、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸などのような、ジカルボン酸をベースとした緩衝剤も挙げることができる。これらのうち1種のみを適用してもよいし、2種以上を用いてもよい。更には上記以外を含む1種以上の複合組成であってもよい。
これらは、種々の市販の試薬を用いることができる。
本発明でいう吸湿性の低さとは、FVHO凍結乾燥製剤を湿度70%、25℃で7時間保存した後、スパチュラ等で粉末を混ぜたときに、粉末が粘土状になったり、スパチュラに吸着してこないことをいう。
<測定原理>
フルクトシルバリルヒスチジン+O2→L−バリルヒスチジン+グルコノソン+H2O2
2H2O2+4−AA+フェノール→Quinoneimine色素+4H2O
FVHOの触媒する反応により生成した過酸化水素(H2O2)2分子、4−アミノアンチピリン(4−AA)、およびフェノールが溶液中に共存するペルオキシダーゼの触媒する反応によって酸化縮合し、Quinoneimine色素が生じる。この色素の存在は、500nmにおける分光光度法により測定した。
1単位は、以下に記載の条件下で1分間にH2O2を1マイクロモル生成させるFVHOの酵素量をいう。
試薬の調製
A.0.5%(w/v)4−AA溶液
B.1.5%(w/v)フェノール溶液
C. 500U/mLペルオキシダーゼ(東洋紡績製、製品コード:PEO−301)溶液
D.50mM MES緩衝液(pH6.5)
E.1.0mg/mLフルクトシルバリルヒスチジン水溶液 (用時調製)
F. 酵素希釈液:0.1% TritonX−100を含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)
G. 粉末溶解液:50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)
1.遮光瓶に以下の反応混合物を調製し、氷上で貯蔵した(用時調製)。
0.4mL 1.5%フェノール水溶液(A)
0.6mL 0.5%4−AA溶液 (B)
0.3mL 500U/mLペルオキシダーゼ溶液(C)
3.7mL 50mM MES緩衝液(pH6.5)(D)
・反応混合物2.5mLと0.5mL(E)を試験管に入れ、37℃で約5分間予備加温した。
・ 0.1mLの酵素溶液を加え、穏やかに混合した。
・ 37℃に維持しながら500nmでの吸光度(水対照)の増加を2.5分間記録し、1分から2.5分までの1分間当たりのΔODを計算した(ΔODtest)。
同時に、酵素溶液に代えて酵素希釈液(F)を加えることを除いては同一の方法を繰り返し、ブランク(ΔODblank)を測定した。
アッセイの直前に氷冷した粉末溶解液(G)で酵素粉末を溶解し、酵素希釈液(F)で0.5−0.1U/mLに希釈した。
活性は以下の式を用いて計算する:
U/mL={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×Vt×df}/(13.3×1/2×1.0×Vs)
U/mg=(U/mL)×1/C
Vt:総体積(3.1mL)
Vs:サンプル体積(0.1mL)
13.3:上記測定条件でのQuinoneimine色素のミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)
1/2:酵素反応で生成したH2O2の1分子から形成するQuinoneimine色素は1/2分子であることによる係数
1.0:光路長(cm)
df:希釈係数
C:溶解時の酵素濃度(c mg/mL)
<乾燥製剤の調製>
まず、50mM、pH6.5のリン酸緩衝液をベースに、FVOHおよび各種添加剤を含有する溶液を作製した。
FVHOは、東洋紡績製:製品コードFPO−301を使用し、A280(280nmにおける吸光度)=40になるように調整した。
各種添加剤の濃度は酵素濃度(A280=1を1mg/mLとする)に対する割合で計算した。各種添加剤は酵素濃度の50%濃度(重量比)で添加した。具体的には、酵素濃度のA280=40なので、終濃度20mg/mLになるように各種添加剤を添加した。(この場合、乾燥製剤における酵素量と添加剤量の重量比は2:1となる。)
FVOHおよび各種添加剤を添加後、フィルターろ過(ポアサイズ;0.2μm)し、これらを正確に2mLずつ、バイアルに分取した。また、コントロールには何も添加剤を加えていないものを用意した。これを凍結真空乾燥(FDR)して、水分を完全に蒸発させた後、スパチュラで粉砕して粉末化した。
<吸湿性試験>
その後、約10mgの粉末をスピッツロールに正確に計量して入れ、湿度70%、25度、7時間保存した後、スパチュラで混ぜ、以下の基準で判定した。
++;吸湿前と変わらない形状
+;吸着前と同じではないが、粘土状にならず、スパチュラにも吸着しない
−;粘土状になるまたは、スパチュラに吸着する
<安定性試験>
約10mgの粉末をスピッツロールに正確に計量し、(1)直ちにFVHO活性測定(このときの活性値を(a)とする。)、(2)37℃で1週間保存してからFVHO活性測定(この時の活性値を(b)とする。)、を行い粉末重量あたりの活性を計算した。活性残存率は、測定値(a)を100%とした場合に対する相対値((b)/(a)×100)を求め、この相対値を残存率とした。
緩衝液組成の変更を検討した。組成および方法は実施例1に準じ、各緩衝液は50mM、pH6.5のものを用いた。その結果、リン酸以外の各緩衝液を用いた場合、リン酸緩衝液に比べて安定性が低下した(表3)。このことは、意外にも、リン酸に安定化効果があったことを示している。
実施例2で安定化効果があることが判明したリン酸緩衝液は、緩衝域も広く、安価で容易に入手できるが、リン酸とカルシウムが共存するとリン酸カルシウムが形成され、濁りが生じることが一般的に知られている。血液中にはカルシウムが含まれるため、粉末にリン酸を含むと、濁りが生じて正しく吸光度が測定できない恐れがある。そこで、リン酸緩衝液とカルシウムとの混合濃度を検討し、濁質が生じるか否かを検証した。
組成および方法は実施例1に準じた。血液中のカルシウム濃度は最大10mg/dLであり、これと各濃度のリン酸緩衝液を含む溶液を混合して濁度を測定した。具体的には、(1)20mg/dLの塩化カルシウム水溶液と(2)60、50、40、30、20、10mMのリン酸カリウム水溶液pH6.5を含む溶液を用意した。次に、(1)と(2)をそれぞれ1対1で混合し、濁度(OD660nm)を測定した。
なお、センサであれば電流値を直接検出するので、多少の濁り発生は差し支えない。
次に、表2で示した安定化剤はリン酸緩衝液と共存して初めて効果があるのか、それとも緩衝液組成を問わず効果があるのかを検証した。方法は実施例2に準じる。使用した緩衝液は実施例24で残存活性率が最も高かったBicineと最も低かったクエン酸を用いている。
その結果、リン酸緩衝液以外でも同様に実施例2で示した添加剤に安定性向上効果が見られた(表5)。
次に、実施例2で最も残存活性率の高かったメリビオースを共存させた状態での吸湿後形状を改善するために、メリビオースと組み合わせる添加剤を検討した。
乾燥製剤の作製は実施例1と同様に行った。FVOHおよび各種添加剤を含有する溶液の作製において、FVHOは、東洋紡績製:製品コードFPO−301を使用し、A280(280nmにおける吸光度)=40になるように調整した。メリビオースの濃度は酵素濃度の重量比50%(終濃度20mg/mL)および重量比25%(終濃度10mg/mL)の2水準で添加した。(この場合、乾燥製剤における酵素量と添加剤量の重量比はそれぞれ2:1、4:1となる。)また、その他の各種添加剤の濃度は酵素濃度の50%(終濃度20mg/mL)とした。(この場合、乾燥製剤における酵素量と添加剤量の重量比は2:1となる。)添加後、実施例1と同様の手順で粉末化を行った。
次に、メリビオース濃度、Bicine濃度の至適化を行った。
乾燥製剤の作製は実施例1と同様に行った。FVOHおよび各種添加剤を含有する溶液の作製において、FVHOは、東洋紡績製:製品コードFPO−301を使用し、A280(280nmにおける吸光度)=40になるように調整した。メリビオースの濃度は酵素濃度の重量比75%(終濃度30mg/mL)、重量比50%(終濃度20mg/mL)および重量比25%(終濃度10mg/mL)の3水準で添加した。(この場合、乾燥製剤における酵素量と添加剤量の重量比はそれぞれ4:3、4:2(2:1)および4:1となる。)また、Bicineの濃度は酵素濃度の重量比200%(終濃度80mg/mL)、重量比100%(終濃度40mg/mL)および重量比50%(終濃度20mg/mL)の3水準とした。(この場合、乾燥製剤における酵素量と添加剤量の重量比は1:2、1:1および2:1となる。)添加後、実施例1と同様の手順で粉末化を行った。
Bicineの添加量については、FVHO:Bicineの重量比で2:1〜1:2の範囲で添加した場合、さらに好ましくは1:1〜1:2の範囲で添加した場合、吸湿性が改善されることが確認できた。
このときメリビオースの添加量を、FVHO:メリビオースの重量比で2:1〜4:3の範囲で添加した場合、良好な安定性を確保できることが確認できた。
Claims (1)
- フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ乾燥製剤の製造方法であって、乾燥前のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを含む溶液として、Bicineをフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ:Bicineの重量比で1:1〜1:2で含み、かつ、メリビオースをフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ:メリビオースの重量比で2:1〜4:3で含む溶液を用い、該溶液を凍結真空乾燥する工程を含む、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ乾燥製剤の製造方法。
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