JP2007228842A - 酵素の安定化方法 - Google Patents
酵素の安定化方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2007228842A JP2007228842A JP2006052608A JP2006052608A JP2007228842A JP 2007228842 A JP2007228842 A JP 2007228842A JP 2006052608 A JP2006052608 A JP 2006052608A JP 2006052608 A JP2006052608 A JP 2006052608A JP 2007228842 A JP2007228842 A JP 2007228842A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- enzyme
- amino acid
- amino acids
- oligopeptides
- ascorbate oxidase
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Enzymes And Modification Thereof (AREA)
Abstract
【課題】本発明はアスコルビン酸オキシダーゼ(EC 1.10.3.3)およびアスコルビン酸オキシダーゼを含有する組成物の安定化および製造法に関する。
【解決手段】少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによるアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる酵素の安定化方法。
【解決手段】少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによるアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる酵素の安定化方法。
Description
本発明はアスコルビン酸オキシダーゼ(EC 1.10.3.3)およびアスコルビン酸オキシダーゼを含有する組成物の安定化および製造法に関する。
現在、酵素を構成成分とし、酵素の機能を利用した組成物は、その基質特異性や簡便性により、様々な用途に応用されている。一例を挙げると、分子生物学用途の分析用試薬、生化学用途の分析試薬、食品成分の分析用試薬、体外診断薬(液状体外診断薬、チップ状またはスリット状に加工したドライ系の体外診断薬を含む)、酵素センサーや酵素電極、医薬品、食器洗浄剤、衣類洗浄剤、食品および飲料の改質剤などである。これらに用いられる原料酵素は、現在、乾燥粉末状の製品が主流である。
酵素蛋白を乾燥粉末状態で流通させることが好まれる理由として、製品が軽く体積が小さく、保管や搬送といった取り扱いが容易であり、乾燥しているために微生物汚染による腐敗の心配のないことが挙げられる。また、酵素の溶解濃度を使用目的に応じて自由に調整出来、溶解するための緩衝液の種類も任意に選定出来るため、さまざまな用途に展開できる。更に、一般的に乾燥粉末である方が、溶液状態であるよりも酵素活性が安定的に長期間保持出来る。
酵素蛋白を乾燥粉末化する手段は、さまざまである。たとえば、酵素蛋白を含む溶液中からアセトンやアルコールなどの有機溶媒によって目的酵素を析出させ、これを回収して乾燥粉末とする方法。酵素を含む溶液を噴霧し熱風をあてて乾燥させるスプレードライ法。酵素を含む溶液を凍結させ、減圧して乾燥粉末化するフリーズドライ法などがある。
いずれの条件にしても、酵素を不用意に乾燥させた場合、蛋白変性による活性の損失や再溶解時の濁質生成などの問題が発生することが多いため、酵素蛋白を保護し変性失活を防ぐための安定化剤の添加が不可欠である。
酵素製品に添加する安定化剤は、単に製品化時、乾燥による酵素蛋白の変性失活を防止するだけでなく、保存中や流通過程での活性損失を防止する能力も具備する必要がある。
たとえば、酵素を凍結乾燥粉末化する際の安定化剤として、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ(EC 1.13.11.3)にヘキソースおよびヘキソース誘導体を添加する例(特許文献1)などが知られている。また、ウシ血清アルブミン(BSA)を酵素の凍結乾燥時の安定化剤とする方法(特許文献2)が知られている。
特開2005−52044
特開昭60−156386
たとえば、酵素を凍結乾燥粉末化する際の安定化剤として、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ(EC 1.13.11.3)にヘキソースおよびヘキソース誘導体を添加する例(特許文献1)などが知られている。また、ウシ血清アルブミン(BSA)を酵素の凍結乾燥時の安定化剤とする方法(特許文献2)が知られている。
酵素製品は、酵素活性の安定性だけでなくその用途に適した成分組成を選択する必要がある。アスコルビン酸オキシダーゼは検体中の還元性物質であるアスコルビン酸を消去する作用を持つため、臨床医療の分野で体外診断薬の測定値の正確性を向上させる目的で汎用されており、例えば、体液中のクレアチニンを測定する体外診断薬に含有せしめる例(特許文献;特開2003-116539)などが知られているが、このような用途に使用することを前提とする場合、検体の分析結果に干渉しない成分を酵素の安定化剤として選定することは当然である。
酵素安定化剤のひとつとして、古くからウシ血清アルブミン(BSA)が使用されてきた。BSAは溶解性が高く、高塩濃度の条件下でも析出せず、比較的広いpH域で使用できることから、汎用性の高い酵素安定化剤である。しかし、BSAは天然物であり、ウシ血液を原料とするためしばしば原料由来成分が製品中に残留し、このような混入物が、酵素の製品品質に好ましくない影響を与えることが多い。たとえば、BSA中に微量のプロテアーゼが含まれることがあるが、このようなプロテアーゼが酵素製品と共に最終製品に組み込まれた場合、その製品に致命的な影響をもたらすことがある。また、血液中の黄色の色素であるビリルビンがBSAの製品中に持ち込まれることがあるが、着色の強いBSAを添加すると酵素製品も着色し外観上問題となる他、この色素は還元性を示し、BSA由来の着色物質を含有した酵素を分析用途に用いる場合、酸化還元反応により分析値に影響を与える恐れがある。
BSAのこのような混入物の種類や含有量は、原料と製造法の両方に影響を受けるものであるため、各製造元によってBSA製品の混入物の種類や量が異なり、また、同一製造元の製品であっても製品の型番や製造ロットによって、品質にばらつきがあり、所望の品質のBSAを必要量確保することが難しいという問題があった。
更に、BSAの製造原料として、ヒト感染性の病原体を含有しない事が保証されたウシ血液を大量に確保する必要があるが、近年ウシ海面脳症(BSE)や口蹄疫の問題により原料に対する制限が生じており、品質の良いBSAの安定的な入手が、ますます困難となっている。
本発明が解決しようとする課題は、アスコルビン酸オキシダーゼの安定化剤として、入手が容易で、品質が均一であり、水やbufferへの溶解性が高く、酵素製品や酵素を含む組成物の外観や性能、品質に影響を与えない安定化剤の提供、および、該安定化剤を使用することによるアスコルビン酸オキシダーゼ及び/またはアスコルビン酸オキシダーゼを構成成分とする組成物の安定化方法を提供することである。
本発明者は、乾燥状態のアスコルビン酸オキシダーゼ製品の保存安定性を向上させるため、種々の物質を検討した結果、アミノ酸の一部に優れたアスコルビン酸オキシダーゼ安定化作用を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は(1)少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによるアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる酵素の安定化方法。
(2)アスコルビン酸オキシダーゼが乾燥粉末状の製品または組成物である、請求項1に記載のアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法。
(3)少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加する工程を含む、安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法。
(4)少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物である。
(2)アスコルビン酸オキシダーゼが乾燥粉末状の製品または組成物である、請求項1に記載のアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法。
(3)少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加する工程を含む、安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法。
(4)少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物である。
本発明により、アスコルビン酸オキシダーゼの乾燥粉末製品、特に凍結乾燥粉末製品の安定性を確保し、長期間酵素の失活を防止することが出来る。
本発明で使用するアミノ酸及びアミノ酸塩、および/またはオリゴペプチドは、酵素の安定化剤に使用する目的である以上、室温以下の水温で、水または中性付近の緩衝液に十分量溶解するものであることが好ましい。この目的を達成するためには、アミノ酸が水温25℃で水1リットルあたり0.5g以上の溶解性を示すことが好ましい。また、酵素と共存するアミノ酸の側鎖が、酵素蛋白や酵素を構成成分とする最終製品の中で意図しない反応に関与したり、製品の性能に干渉することは好ましく無い。例えば側鎖にチオール基を持つアミノ酸は強い還元性を示し、酵素を分析用途に使用した場合、測定値に影響を与えるため好ましくない。本発明の目的を達成するためアミノ酸の側鎖は、水素、メチル基、カルボニル基、アミド基を持つものである事が好ましい。
本発明において、アミノ酸及びアミノ酸塩、及び/またはオリゴペプチドは、単独で使用しても良いし、組み合わせても良い。
このようなアミノ酸及びアミノ酸塩として、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシンおよび各アミノ酸の塩を上げることが出来る。
また、本発明で使用するオリゴペプチドとしてとして、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシル−L−グルタミン、グリシル−L−アラニン、グリシル−L−グルタミン酸、グリシル−L−アスパラギン酸、L−アラニル−L−グルタミン、L−アラニル−L−アラニンなどが上げられる。
また、本発明で使用するオリゴペプチドとしてとして、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシル−L−グルタミン、グリシル−L−アラニン、グリシル−L−グルタミン酸、グリシル−L−アスパラギン酸、L−アラニル−L−グルタミン、L−アラニル−L−アラニンなどが上げられる。
また、本発明では、アミノ酸及びアミノ酸塩、及び/又はオリゴペプチドを酵素の安定化剤として使用する際、糖類、糖アルコール類、有機酸、補酵素、金属塩、界面活性剤、をはじめとする他の酵素安定化剤や成分と組み合わせて使用しても良い。
例えば、糖類として、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−ソルボース、D−タロース、D−フルクトース、D−リボース、D−キシロース、二糖類として、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、セロビオース、三糖以上のオリゴ糖として、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが上げられ、水溶性の中性多糖としてイヌリン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、プルランなどが上げられる。糖アルコール類としてグルシトール、マンニトール、イノシトール、キシリトールが上げられる。有機酸として、グルコン酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、りんご酸、乳酸、酢酸およびこれら有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩が上げられる。本発明では、これらの物質はアミノ酸及びアミノ酸塩、及び/またはオリゴペプチドと、自由な比率と組み合わせで使用することが可能である。
補酵素として、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、ビオチン、ピリドキサルリン酸、アデノシン三リン酸(ATP)およびATPのナトリウム塩又はカリウム塩、グアノシン三リン酸(GTP)及びGTPのナトリウム塩またはカリウム塩、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ピロロキノリンキノン(PQQ)などを、あるいは金属を要求する酵素の場合、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなどを、酵素に添加して使用することが出来る。
また、界面活性剤としてオクチルグリコシド、オクチルチオグリコシド、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのコール酸類及びコール酸類のナトリウム塩またはカリウム塩、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、ラウロイルザルコシンおよびラウロイルザルコシン塩類、ラウリル硫酸及びラウリル硫酸塩などを添加することも出来る。
その他、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の金属塩などのキレート剤を必要に応じて添加することも出来るが、アスコルビン酸オキシダーゼが金属酵素であるため、添加量は最低限に留める事が酵素の安定性を保持する上で好ましい。
本発明の実施にあたり、緩衝液の種類は特に限定されず、生化学の分野で一般的なものを使用する事が出来るが、酵素の安定pH域に緩衝能のある物が好ましい。例えば、リン酸カリウム塩、リン酸ナトリウム塩、トリス塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、硼砂、ホウ酸、炭酸塩などの他、酢酸、りんご酸、マレイン酸などの有機酸塩、PIPES,TES,MES,MOPS,HEPES、BisTris,Bicine,CHES等の各種Good bufferを使用することが出来る。また、本発明の安定化剤としてグリシルグリシンを選択した場合、これを緩衝液として利用する事は可能である。
更に、アミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチド類はそれ自体が弱電解質であるため、pHの設定や添加濃度、種類の選択によっては、それ自体を緩衝剤とする事は可能である。
また、酵素を含有する組成物では、組成物が測定用組成物の場合、検出系に導くための追随酵素類、追随酵素の補酵素、反応メディエーター、発色基質、トリンダー試薬類なども含有する事が出来る。
本発明で言うアスコルビン酸オキシダーゼの給源は特に限定されない。アスコルビン酸オキシダーゼは、動物組織、植物組織、動物あるいは植物の培養細胞、真核および原核微生物を給源とするものを用いる事が出来る。これらを給源とするアスコルビン酸オキシダーゼの遺伝子をゲノムから切り出し、微生物に組み換えて生産する事や、無細胞蛋白合成系により生産する事も出来る。この時、目的蛋白をコードする遺伝子に対して核酸塩基の置換や挿入・削除を導入し、遺伝子を所望の特性を持つように改変したり、あるいは異なる蛋白をコードする遺伝子を結合させキメラ遺伝子として機能を付与する事も可能である。また、ヒスチジン-タグなどのタグを付けて目的蛋白の回収を容易にするような修飾も可能である。
しかしながら、生物学用途の分析用試薬、生化学用途の分析試薬、食品成分の分析用試薬、体外診断薬に用いる場合、アスコルビン酸オキシダーゼは植物由来の酵素が好ましく、特にかぼちゃに属する植物(Cucurbita sp.)より得られるものが好ましい。
酵素の純度は、その酵素の用途や目的によって必要な純度レベルが決まるものであるため、本発明に適用する酵素の純度を制限するものではない。不純物を多く含む粗酵素の状態であっても、高度に精製されたものであっても、本発明に使用する事が可能である。また、酵素蛋白が糖鎖や合成高分子の修飾を受けていても良い。
酵素の安定化剤として添加する、アミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチドは、酵素の乾燥製品化の工程で酵素蛋白を保護し工程での回収率を向上させ、乾燥製品の保存期間中の失活を防止する目的であるから、その目的を達成し得る濃度範囲で適宜添加量を設定出来る。このとき、添加するアミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチドの溶解性に応じて、添加濃度を設定する事は当然である。また、添加されたアミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチドは酵素が溶液の状態であっても保護作用を有し、溶液中酵素活性の安定的な保持に寄与する。
安定化剤の製品固形分中に占める割合は、上記目的を達成し得る範囲なら制限は無く、特に添加量の上限に制限は無く、結果として製品固形分の大部分を占めていても良い。特に精製された比活性の高い酵素の場合、安定化剤の添加量によって乾燥製品重量当たりの活性値(例えばU/mg,U/gなど)を調整する事も可能である。具体的には、酵素蛋白への保護作用を有する濃度として、製品固形分あたり重量パーセントとして0.1%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上の含有量になるように、乾燥前の酵素溶液に添加、溶解する。
乾燥工程に供する酵素溶液は、安定化剤として添加するアミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチドの他、緩衝液の成分や他の安定化剤、補酵素、キレート剤、界面活性剤などを含み、製品が酵素含有組成物の場合、追随酵素、発色試薬などを含むが、溶液中固形分量が、1リットル当たり5g以上,好ましくは10g以上、更に好ましくは30g以上であるように調整する。酵素溶液の濃度の上限は特に制限しないが、乾燥工程に入る前に均一な状態である事は当然であり、あまりに高濃度過ぎて成分が析出するなど不均一な状態にならないように調整する。
乾燥工程に供する酵素液があまりに希薄な場合、乾燥工程で回収率が低下する事が多く、得られた乾燥製品が取り扱いにくい形状となる事が多い。また、過度に高濃度である場合、乾燥に時間が掛かる事がある。
酵素溶液のpHは酵素のpH安定域で設定されることが好ましく、植物由来のアスコルビン酸オキシダーゼの場合、酵素液のpH範囲は5.0〜11.0、好ましくはpH5.5〜10.0、更に好ましくはpH6.0〜9.0である。
以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、実施例によって本発明の範囲がなんら限定されるものではない。
尚、本発明におけるアスコルビン酸オキシダーゼの活性は以下のように定義される。
活性の定義
下記条件で一分間に一マイクロモルのアスコルビン酸を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
A.基質溶液・・・1mM アスコルビン酸溶液
アスコルビン酸の10mM溶液を、使用直前に1.0mMのEDTAを含む0.2Mの リン酸二水素カリウムで10倍に希釈する。
B.pH調整試薬・・・・10mM リン酸水素二ナトリウム溶液
C.反応停止剤・・・・0.2N HCl溶液
酵素希釈液・・・0.05%のL−グルタミン酸ナトリウムを含む10mM リン酸水素二ナトリウム溶液
酵素票品は5℃付近に冷却した酵素希釈液を用いて、0.2±0.05U/ml前後 に希釈する。
操作
1.試験管に試薬A 0.5ml と 試薬B 0.5ml を混合し(このときpHは 5.6になる)、30℃で5分間予備加温する。
2.酵素溶液0.1mlを添加して反応を開始する。
3.30℃で正確に5分間反応後、試薬C 3.0mlを添加して反応を停止し、245 nmの吸光度を測定する。(ODtest)
4.盲検は反応混液1を30℃で5分加温後、反応停止液を3.0ml添加し、次いで酵 素溶液を0.1ml添加して調製する。これを上3と同様に245nmの吸光度を測定 する。(ODblank)
計算式 上記245nmの測定値から下記計算式によって活性(U/ml)を求める。
U/ml=(ODtest−ODblank)×Vt(ml)×希釈倍数/{ε×光路 長(cm)×反応時間(分)×Vs(ml)}
Vt(ml)=4.1
Vs(ml)=0.1
ε=10.0 (この条件下でのアスコルビン酸のミリモル分子吸光係数)
光路長(cm)=1.0
反応時間(分)=5
尚、本発明におけるアスコルビン酸オキシダーゼの活性は以下のように定義される。
活性の定義
下記条件で一分間に一マイクロモルのアスコルビン酸を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
試薬
A.基質溶液・・・1mM アスコルビン酸溶液
アスコルビン酸の10mM溶液を、使用直前に1.0mMのEDTAを含む0.2Mの リン酸二水素カリウムで10倍に希釈する。
B.pH調整試薬・・・・10mM リン酸水素二ナトリウム溶液
C.反応停止剤・・・・0.2N HCl溶液
酵素希釈液・・・0.05%のL−グルタミン酸ナトリウムを含む10mM リン酸水素二ナトリウム溶液
酵素票品は5℃付近に冷却した酵素希釈液を用いて、0.2±0.05U/ml前後 に希釈する。
操作
1.試験管に試薬A 0.5ml と 試薬B 0.5ml を混合し(このときpHは 5.6になる)、30℃で5分間予備加温する。
2.酵素溶液0.1mlを添加して反応を開始する。
3.30℃で正確に5分間反応後、試薬C 3.0mlを添加して反応を停止し、245 nmの吸光度を測定する。(ODtest)
4.盲検は反応混液1を30℃で5分加温後、反応停止液を3.0ml添加し、次いで酵 素溶液を0.1ml添加して調製する。これを上3と同様に245nmの吸光度を測定 する。(ODblank)
計算式 上記245nmの測定値から下記計算式によって活性(U/ml)を求める。
U/ml=(ODtest−ODblank)×Vt(ml)×希釈倍数/{ε×光路 長(cm)×反応時間(分)×Vs(ml)}
Vt(ml)=4.1
Vs(ml)=0.1
ε=10.0 (この条件下でのアスコルビン酸のミリモル分子吸光係数)
光路長(cm)=1.0
反応時間(分)=5
[実施例1]
アスコルビン酸オキシダーゼの安定化剤として、本発明の安定化剤と組み合わせてホウ砂を使用した。
50mM ホウ酸バッファー pH8.0中、アスコルビン酸オキシダーゼが 2400U/ml になるように調製し、溶液中固形分を調整するためホウ砂を添加溶解した。
ここに(表1)に示す物質をそれぞれ添加し凍結乾燥した。各物質は、最終固形分中の比率が12.5±2.5%(w/w)になるように添加量を調整した。比較のため、安定化剤を添加しないものを対照として調製した。
凍結乾燥したアスコルビン酸オキシダーゼを(表1)記載の条件で保存し、凍結乾燥直後の活性値を100%としてそれぞれ保存後の活性残存率(%)を求めた。
結果、25℃×一週間、4℃×5ヶ月、冷凍−20℃保存×6ヶ月の全ての条件で、対照に比較して本発明の安定化剤を添加した酵素の活性残存率(%)が高く、特に冷凍−20℃の温度条件下では6ヶ月保存後、対照が10%の活性低下を示すのに対して、本発明の安定化剤を添加したものに、実質的な活性の低下は認められなかった。
アスコルビン酸オキシダーゼの安定化剤として、本発明の安定化剤と組み合わせてホウ砂を使用した。
50mM ホウ酸バッファー pH8.0中、アスコルビン酸オキシダーゼが 2400U/ml になるように調製し、溶液中固形分を調整するためホウ砂を添加溶解した。
ここに(表1)に示す物質をそれぞれ添加し凍結乾燥した。各物質は、最終固形分中の比率が12.5±2.5%(w/w)になるように添加量を調整した。比較のため、安定化剤を添加しないものを対照として調製した。
凍結乾燥したアスコルビン酸オキシダーゼを(表1)記載の条件で保存し、凍結乾燥直後の活性値を100%としてそれぞれ保存後の活性残存率(%)を求めた。
結果、25℃×一週間、4℃×5ヶ月、冷凍−20℃保存×6ヶ月の全ての条件で、対照に比較して本発明の安定化剤を添加した酵素の活性残存率(%)が高く、特に冷凍−20℃の温度条件下では6ヶ月保存後、対照が10%の活性低下を示すのに対して、本発明の安定化剤を添加したものに、実質的な活性の低下は認められなかった。
Claims (4)
- 少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによるアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる酵素の安定化方法。
- アスコルビン酸オキシダーゼが乾燥粉末状の製品または組成物である、請求項1に記載のアスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法。
- 少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによる安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加する工程を含む、安定化したアスコルビン酸オキシダーゼ組成物の製造方法。
- 少なくとも一種類以上のアミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物であって、アミノ酸およびオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、側鎖に水素、メチル基、カルボニル基、アミド基のいずれかを持つものであり、25℃の水1リットル当たり0.5g以上の溶解性を示す事を特徴とする、アミノ酸及びアミノ酸塩および/またはオリゴペプチドを添加することによって安定化されたアスコルビン酸オキシダーゼ組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006052608A JP2007228842A (ja) | 2006-02-28 | 2006-02-28 | 酵素の安定化方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006052608A JP2007228842A (ja) | 2006-02-28 | 2006-02-28 | 酵素の安定化方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007228842A true JP2007228842A (ja) | 2007-09-13 |
Family
ID=38550063
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006052608A Pending JP2007228842A (ja) | 2006-02-28 | 2006-02-28 | 酵素の安定化方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007228842A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011120500A (ja) * | 2009-12-09 | 2011-06-23 | Toyobo Co Ltd | 乳酸オキシダーゼ組成物 |
WO2013176225A1 (ja) | 2012-05-25 | 2013-11-28 | 協和メデックス株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
WO2016135950A1 (ja) * | 2015-02-27 | 2016-09-01 | キユーピー 株式会社 | 粉末酵素製剤及びその製造方法、並びにその用途 |
JP2019165679A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
JP2019165680A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
-
2006
- 2006-02-28 JP JP2006052608A patent/JP2007228842A/ja active Pending
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011120500A (ja) * | 2009-12-09 | 2011-06-23 | Toyobo Co Ltd | 乳酸オキシダーゼ組成物 |
WO2013176225A1 (ja) | 2012-05-25 | 2013-11-28 | 協和メデックス株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
KR20150014927A (ko) | 2012-05-25 | 2015-02-09 | 교와 메덱스 가부시키가이샤 | 아스코르브산옥시다아제의 안정화 방법 |
US9546363B2 (en) | 2012-05-25 | 2017-01-17 | Kyowa Medex Co., Ltd. | Method for stabilizing ascorbic acid oxidase |
WO2016135950A1 (ja) * | 2015-02-27 | 2016-09-01 | キユーピー 株式会社 | 粉末酵素製剤及びその製造方法、並びにその用途 |
JPWO2016135950A1 (ja) * | 2015-02-27 | 2017-08-31 | キユーピー株式会社 | 粉末酵素製剤及びその製造方法、並びにその用途 |
JP2019165679A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
JP2019165680A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
JP7131008B2 (ja) | 2018-03-23 | 2022-09-06 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
JP7131009B2 (ja) | 2018-03-23 | 2022-09-06 | 東洋紡株式会社 | アスコルビン酸オキシダーゼの安定化方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2007228842A (ja) | 酵素の安定化方法 | |
EP2408909B1 (en) | Improved blends containing proteases | |
HU181539B (en) | Reagent for the determination of lipase and process for the production thereof | |
KR20190112197A (ko) | 디파이브로타이드의 생물학적 활성 측정을 위한 유우글로불린에 기초한 방법 | |
Gulla et al. | Enhancement of stability of immobilized glucose oxidase by modification of free thiols generated by reducing disulfide bonds and using additives | |
JP2007228840A (ja) | 酵素の安定化方法 | |
JP4399615B2 (ja) | トロンビンの安定化手段および組成物 | |
WO2001094370A1 (fr) | Derives de coenzymes et enzymes appropries | |
JPH06284886A (ja) | 酵素の溶液中での安定化方法 | |
EP3384001B1 (en) | Chemically defined media for the detection of microorganisms | |
JP3696267B2 (ja) | 生理活性蛋白質の安定化方法 | |
JP2007228843A (ja) | 酵素の安定化方法 | |
JP2007228841A (ja) | 酵素の安定化方法 | |
CN110331186A (zh) | 一种5’-核苷酸酶质控品 | |
JP5468299B2 (ja) | Impdh含有組成物及びimpdhの安定化方法 | |
Goodwin et al. | Succinoxidase inactivation by a lecithinase in barley seedlings | |
Tafazoli et al. | Safety evaluation of amylomaltase from Thermus aquaticus | |
JP6349452B1 (ja) | L−グルタミン酸オキシダーゼ乾燥組成物 | |
JP6155647B2 (ja) | フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ製剤の製造方法 | |
Choi et al. | Safety evaluation of highly-branched cyclic dextrin and a 1, 4-α-glucan branching enzyme from Bacillus stearothermophilus | |
JPH0466087A (ja) | 安定化されたアスコルビン酸酸化酵素組成物 | |
JP3674964B2 (ja) | キサンチンデヒドロゲナーゼの安定化方法 | |
JP6160094B2 (ja) | ジアホラーゼ組成物 | |
Rottem et al. | Membrane-bound thioesterase activity in mycoplasmas | |
JPS63230085A (ja) | 安定なフラクト−スデヒドロゲナ−ゼ組成物 |