JP5515121B2 - 酵素の反応性を改善する方法 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2008年2月29日出願の日本特願2008−50744号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を用いて、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法、及び糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を用いて、担体による酵素の標的物質への反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法に関する。
背景技術
DNAを精製・回収する方法として、ビオチン標識したプライマーを使って鋳型のDNA又はRNAから標的となるDNAを合成し、得られた標的DNAを常磁性のストレプトアビジンビーズによって精製・回収する方法がこれまでに広く用いられている。本方法によれば、ストレプトアビジンとビオチンの特異かつ安定な結合特性を利用することにより、ビーズの洗浄と磁気による凝集だけで、高純度のcDNAを効率よく回収することができる。したがって、本方法をcDNAライブラリー作製に応用すれば、高純度のcDNAライブラリーを効率よく作製することが期待でき、本方法をシークエンス反応に応用すれば、効率よく配列決定することが期待できる。さらに、本発明者らが確立した、cDNAの5’末端と3’末端を最小化でき、かつ1度のシーケンス反応で多くのcDNAの情報を得ることができる、GSC(Gene Signature Cloning)法に、本方法を応用することもまた可能である(小島ら、第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会公演要旨集、p.495を参照、これらの記載は、ここに特に開示として援用される)。
一方、標的DNAの回収率を高める手段として、酵素反応において酵素の活性を高める種々の方法がこれまでに試みられている。特に、液相均一系の酵素反応において、高温下で酵素を活性化させる方法が知られている。この方法によれば、トレハロースなどの糖、ベタイン、サルコシンなどのシャペロン作用のある物質を共存させることにより、高温下で酵素を活性化させることができる(特許第3206894号公報及び特許第3536052号公報、並びにPiero Carninci et. al, (1998), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95, Issue 2, 520-524; Y. Nagasawa et al., (2003), Cryobio. Cryotech. 49, 87-95;及びLei Chena,b,1 et al., (2007), Journal of Biotechnology, 127, 402-407を参照、これらの記載は、ここに特に開示として援用される)。
発明の開示
本発明者らは、上記GSC法に上記磁気ストレプトアビジンビーズを利用した標的DNAの精製・回収方法を応用させてみたところ、簡便かつ短時間で標的DNAを回収することに成功した。しかし、標的DNAの回収量は、液相均一系で予想される量と比べて非常に低いものであった。さらに、本発明者らは、ビーズではなく、ストレプトアビジンプレートを用いた標的DNAの精製・回収方法をDNA合成反応に応用してみたところ、ビーズを用いた系と同じく、液相均一系で予想される量と比べて十分量の標的DNAを回収することができなかった。
以上の結果から、本発明者らは、ビーズやプレートなどの担体に固定化された標的DNAに酵素を作用させる酵素反応においては、酵素反応が十分に行われず、そのために標的DNAの回収率が低下するのではないかと考えた。さらに、ビーズやプレート等の担体に固定化された標的DNAに対する酵素の反応性を高めることや、担体による酵素反応の阻害効果を緩和又は抑制することで、上記条件下で標的DNAの回収率を高めることができるのではないかと考えた。
しかし、担体に固定化されたDNAなどの標的物質に対する酵素の反応性を高める方法や担体による酵素反応の阻害効果を緩和又は抑制する方法についてはこれまでに知られていない。
そこで、本発明は、上記方法を提供することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明は、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法や担体による酵素反応の阻害効果を緩和又は抑制する方法を提供することを解決すべき課題とした。
課題を解決するための手段
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討したところ、担体に固定化された標的物質に対する酵素反応系において、トレハロースなどの糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を添加することにより酵素の反応性が向上することを見出した。本発明者らは、得られた知見に基づいて、上記物質の存在下で担体上でのcDNAライブラリーの作製、制限酵素反応、DNA合成反応、上記GSC法等を実施したところ、いずれにおいても酵素反応が改善し、高い回収率で標的DNAを精製・回収することに成功した。さらに、本発明者らは、DNAマイクロアレイ様の超高密度フローセル上で鋳型増幅反応及びシークエンス反応を実施するSOLEXAシークエンスシステムや、油水エマルジョンにおいてビーズに固定化されたオリゴプライマーにDNA断片を相補的に相互作用させてPCRを行う、いわゆるエマルジョンPCRを利用した454シークエンスシステム等において、それらの反応液中に上記物質を添加したところ、反応効率を向上させることに成功した。したがって、本発明は、上記知見に基づいて完成された発明である。
すなわち、本発明によれば、以下の方法が提供される:
(1)糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法。
(2)糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法。
(3)前記糖類が、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビトールからなる群から選ばれる糖である、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記アミノ酸又はその誘導体が、Ne −アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、グリシンベタイン、Na −カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドからなる群から選ばれる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記標的物質が核酸である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記核酸が一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNAである上記(5)に記載の方法。
(7)前記核酸がDNAとRNAとがハイブリダイズした核酸である上記(5)に記載の方法。
(8)前記酵素が、転移酵素、加水分解酵素及び合成酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種の酵素である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10)前記酵素が、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(11)前記酵素が制限酵素である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(12)前記担体がビーズ状担体又はプレート状担体である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記ビーズ状担体がストレプトアビジンビーズである上記(12)に記載の方法。
(14)前記プレート状担体がストレプトアビジンプレート又はDNAマイクロアレイ用プレートである上記(12)に記載の方法。
(15)前記方法が担体上でのcDNAライブラリー作製、シークエンス反応若しくはDNA合成反応又はGSC法に用いられる方法である上記(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記DNA合成反応がエマルジョンPCR又はブリッジPCRである、上記(15)に記載の方法。
発明の効果
本発明によれば、トレハロースなどの糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を所定の濃度で添加するだけという簡便、安全かつ安価な方法により、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を向上すること、及び標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性の阻害効果を緩和又は抑制することができる。すなわち、本発明によれば、簡便、安全かつ安価に、担体に固定化された標的DNAに対するDNA合成反応、制限酵素反応、核酸分解反応、シークエンス反応等を促進することができる。
本発明によれば、担体表面付近でのDNA合成の反応性を向上させることができるので、その後に続くDNAの高純度回収と特異的分離、精製の簡易性、操作時間の短縮化などが可能となる。さらに、本発明によれば、担体に固定化された核酸やペプチドなどの標的物質に対する様々な条件下での酵素反応に応用でき、担体により酵素の反応性を保持することが困難な局面でも、有利な効果をもたらし得る。したがって、本発明は、cDNAライブラリーの作製やGSC法に応用できるだけでなく、大規模かつ自動で行われるシークエンスシステム、例えば、SOLEXAシークエンスシステムや454シークエンスシステム等に応用でき、これらのさらなる性能の向上につながることが期待される。
図1は、トレハロース濃度に依存する50bpDNA断片量の変化を測定した結果を示す。 図2は、2本鎖cDNA合成量を測定した結果を示す。 図3は、各種制限酵素反応効率を測定した結果を示す。 図4は、cDNAファージライブラリー力価の測定結果を示す。 図5は、各担体表面上での制限酵素反応効率を測定した結果を示す。 図6Aは、各担体反応表面からDNA切断反応位置までの距離とその反応効率を測定し、距離ごとに担体の形状を比較した結果を示す。 図6Bは、各担体反応表面からDNA切断反応位置までの距離とその反応効率を測定し、担体の形状ごとに距離を比較した結果を示す。 図7は、各反応条件下における酵素反応効率を測定した結果を示す。 図8は、ビーズ固定化DNA制限酵素静置反応3時間後の様子を示す。 図9は、ビーズ表面及びプレート表面における切断反応の酵素による活性の差異を測定した結果を示す。 図10は、SOLEXAシークエンスシステムによる測定結果を示す。 図11は、ShortRNAを逆転写したcDNAをPCRによって増幅したDNA断片を示す。 図12は、454シークエンスシステムにおける、DNA増幅ウェル数を比較した結果を示す。 図13は、454シークエンスシステムによる結果を示す。 図14は、454シークエンスシステムのエマルジョンPCRにおけるトレハロースの影響について、シークエンスRead数及びcDNA Tag数の評価結果を示す。 図15は、液相均一系におけるトレハロースの影響について、DNA断片の大きさを変えて評価した結果を示す。 図16は、液相均一系におけるトレハロースの影響について、電気泳動により評価した結果を示す。 図17は、実施例13における各種各濃度の添加試薬の存在下における、酵素反応効率を測定した結果を示す。 図18は、実施例14における454シークエンスシステムの測定結果を示す。 図19は、実施例14における454シークエンスシステムの測定結果を示す。 図20は、実施例15におけるSOLEXAシークエンスシステムの測定結果を示す。 図21は、実施例15におけるSOLEXAシークエンスシステムの測定結果を示す。 図22は、実施例16におけるSOLEXAシークエンスシステムの測定結果を示す。 図23は、実施例16におけるSOLEXAシークエンスシステムの測定結果を示す。 図24は、実施例17におけるSOLiDシークエンスシステムの測定結果を示す。 図25は、実施例18における454シークエンスシステムの測定結果を示す。
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の方法は、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法、及び糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法である。本発明によれば、上記いずれの方法においても、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質が存在しない場合に比べて、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を改善することができる。
糖類としては、例えば、オリゴ糖類や単糖類を挙げることができる。さらに糖類の具体例としては、例えば、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビトールなどを限定せずに挙げることができ、その中でもトレハロース、グルコース、ソルビトールなどが好ましく用いられる。糖類は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
アミノ酸又はその誘導体として、Ne −アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、グリシンベタイン、Na −カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドを挙げることができる。上記アミノ酸類は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。なお、特に、ベタイン及びサルコシンが好ましく用いられる。
多価アルコールとしては、上記糖類も含まれるが、それ以外の多価アルコールの例としては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができ、その中でもエチレンクリコールが好ましい。上記多価アルコールは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体は、合成品及び市販品のいずれのものも用いることができ、無水和物及び水和物のいずれのものを用いてもよい。糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体の使用量は特に制限されず、酵素量や担体による酵素の反応性の阻害効果などにより適宜調整することができるが、例えば、トレハロースやソルビトールを単独で用いる場合、溶液中でのトレハロースやソルビトールの最終濃度は0.1〜1M、好ましくは0.4〜0.8M、より好ましいのは0.6Mである。
本明細書にいう「標的物質」としては、用いられる酵素の標的となる物質であれば特に制限されないが、例えば、核酸、ペプチド、糖、脂肪酸などを挙げることができ、好ましくは核酸であり、より好ましくはRNAとDNAとがハイブリダイズした核酸並びに一本鎖及び二本鎖のDNAである。
本明細書にいう「酵素」とは、通常用いられる意味において特に制限がなく、例えば、酸化還元酵素(EC 1)、転移酵素(EC 2)、加水分解酵素(EC 3)、脱離酵素(EC 4)、異性化酵素(EC 5)、合成酵素(EC 6)を挙げることができる。そのような酵素として、下記の酵素を例示することができる:T4 DNAリガーゼ及びE.coli DNAリガーゼなどのDNAリガーゼ;T4 RNAリガーゼなどのRNAリガーゼ;T4 ポリヌクレオチドキナーゼ及びポリヌクレオチドキナーゼなどのポリヌクレオチドキナーゼ;アルカリンフォスファターゼ(E.coli C75)、アルカリンフォスファターゼ(Calf Intestine)及びアルカリンフォスファターゼ(Shrimp)などのアルカリンフォスファターゼ;DNAポリメラーゼI及びT4 DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ;プライムスクリプトリバーストランスクリプターゼ、リバーストランスクリプターゼXL及びM−MLVリバーストランスクリプターゼなどのリバーストランスクリプターゼ;ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ;SP6 RNAポリメラーゼ及びT7 RNA ポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼ;ポリ(A)ポリメラーゼ;S1ヌクレアーゼ、マンビーンヌクレアーゼ、ミクロコッカルヌクレアーゼ及びBAL 31ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼ;エキソヌクレアーゼI及びエキソヌクレアーゼIIIなどのエキソヌクレアーゼ;デオキシリボヌクレアーゼI;DNaseI;RNaseH及びRNaseAなどのRNase;DNAトポイソメラーゼI;DNAメチルトランスフェラーゼ;DNAグルコシラーゼ;並びにメチラーゼ。
上記酵素の好ましい例としては、転移酵素であるDNAポリメラーゼ、より好ましくはDNAポリメラーゼI;加水分解酵素であるRNase、より好ましくはRNaseH、合成酵素であるDNAリガーゼ、より好ましくはE.coli DNAリガーゼ;並びに逆転写酵素であるトランスクリプターゼ、より好ましくはM−MLVリバーストランスクリプターゼを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上記酵素の好ましい例には、制限酵素が含まれる。制限酵素としては、遺伝子工学で使用されるあらゆる制限酵素を挙げることができる。例えば、StyI 、EcoRI 、MluI 、NcoI 、DNaseI 、RNaseI 、NdeI 、PvuII 、PstI 、DraI 、XhoI、NotI、HindIII 、HincII 等を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明の方法は、用いられる酵素の有する最適温度及び失活温度などに合わせて温度を設定することができるが、通常1〜100℃の温度下、好ましくは5〜60℃の温度下、より好ましくは10〜40℃の温度下で行うことができる。具体的には、酵素にE.coli DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼI及びRNaseHを用いてGubler−Hoffman法により二本鎖cDNAを合成する場合、本発明の方法は16℃の温度下で行うことができる。さらに、酵素に制限酵素を用いて制限酵素反応をする場合、本発明の方法は、37℃の温度下で行うことができる。
本明細書にいう「担体に固定化された標的物質」及び「標的物質を固定化させた担体」としては、担体の少なくとも一部と標的物質の少なくとも一部とが付された状態にある標的物質及び担体であれば特に制限されないが、そのような状態を形成するためには、イオン結合、水素結合、疎水結合、共有結合、ファンデルワールス結合、疎水結合、アフィニティー結合、物理及び化学吸着などが利用され得る。担体と標的物質との付され方は、例えば、標的物質が担体の表面上に付されていても、標的物質が担体に埋め込まれていても、どちらでもよく、特に制限されない。
本明細書にいう「担体」とは、標的物質を付すことができれば特に制限されないが、形状はビーズ、プレート、繊維、管、容器(試験管やバイアル)などを挙げることができ、その中でもビーズ及びプレートが好ましい。担体の材質は、無機及び有機のいずれでもよく、例えば、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックスもしくはニューセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織物、編み物、不織布、濾紙、短繊維、メンブレンフィルター等の多孔質物質、金などの導電性材料などを挙げることができ、その中でもガラス及びシリコンが好ましい。担体の表面は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基などの官能基やストレプトアビジンなどの高分子を導入する処理が施されていてもよい。このような担体の具体例として、ストレプトアビジンビーズ、ストレプトアビジンプレート及びDNAマイクロアレイ用プレートなどを挙げることができる。担体の大きさは特に制限されないが、その担体によって酵素反応が低下することが確認される程度の大きさが好ましい。例えば、ビーズ状の担体を用いる場合、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上、なおさらに好ましくは2.5μm以上の直径のものを挙げることができる。担体の直径の上限については特に制限されないが、ビーズ状担体の場合は10〜100μm程度である。ビーズ状の担体の具体例として、TAKARAのMAGNOTEX-SAを挙げることができ、このビーズ状担体の直径は2.3±0.3μmである。
本発明の方法における、担体と担体に固定化された標的物質の酵素に対する反応部位との距離は、例えば、標的物質が核酸である場合、上記反応部位は担体から1〜200塩基、好ましくは5〜150塩基、より好ましくは5〜100塩基、さらに好ましくは10〜80塩基、なおさらに好ましくは10〜50塩基、最も好ましくは10〜20塩基離れていればよい。ただし、上記距離は標的物質及び酵素の種類によって変わりうる。
一般に、担体と担体に固定化された標的物質の反応部位との位置が近接しているほど酵素の反応性は低減する。しかし、本発明の方法によれば、上記位置が近接しているほど、担体の形状や材料によらず、酵素の反応性の向上がみられる傾向にある。例えば、本発明の方法において、担体をビーズ又はプレートとし、酵素を制限酵素とし、かつ標的物質を担体から制限酵素部位が20塩基、50塩基又は100塩基離れた二本鎖DNAとした場合、ビーズ又はプレートに関係なく、担体から制限酵素部位が20塩基離れた二本鎖DNA、50塩基離れた二本鎖DNA及び100塩基離れた二本鎖DNAの順に、酵素の反応性は向上する傾向にある。
本発明の方法をcDNAライブラリーの作製法に適用する場合、高品質のcDNAが効率よく回収できる傾向にある。例えば、本発明の方法は、λファージcDNAライブラリー作製法に適用できる。その具体例として、mRNAをビオチン化したプライマーで逆転写し、合成されたcDNA/mRNAハイブリッドをストレプトアビジンビーズ又はストレプトアビジンプレートで固定化させ、次いで、本発明の方法を適用して二本鎖cDNAを合成し、次いで、回収されたcDNAをλファージベクターにライゲーションしてλファージcDNAライブラリーを作製する方法が挙げられる。このようにして作製されたλファージcDNAライブラリーの力価は、本発明の方法を適用しない場合と比べて高い値を示すことが期待できる。
本発明の方法は、例えば、GSC法に適用することができる。GSC法とはcDNAライブラリー作製方法の一種であり、この方法を用いれば、cDNAの5’末端と3’末端を最小化でき、かつ1度のシーケンス反応で多くのcDNAの情報を得ることができる。ビーズを利用したGSC法の概略を以下のスキームにそって説明する。
5’末端をビオチン化した1st Gsul−T14 primerを用いてmRNAから一本鎖cDNAを合成する(上記図中の1〜4)。合成して得たcDNAにGS 5'Adaptorをライゲートし、次いで、cDNAの相補鎖を合成する(上記図中の5及び6)。得られた二本鎖cDNAをGsulで処理した後に、cDNAにGS 3'Adaptorをライゲートし、次いで、XhoI処理することにより、両末端にAdaptorをライゲートしたcDNAを得ることができる。得られたcDNAを、ファージベクターでパッケージングするなどの調節を経て、λ−pFLC−III−Fmプラスミドにクローニングする(上記図中の9)。クローニング後のプラスミドについて、Mmel処理、GS Fill−in Adaptorのライゲーション及びMva1269I処理を順に施し、その後セルフライゲーションすることによりcDNAの5’末端及び3’末端を含むプラスミド構築物を得ることができる(上記図中の10〜14)。得られたプラスミド構築物を末端がビオチン化されたGS primer F1−Biotin及びGS primer R1−Biotinを用いてPCR増幅し、得られた増幅産物をストレプトアビジンビーズで捕集し、次いで、BceAI処理することによりcDNAの5’末端及び3’末端を含むDNA断片であるGSC diTagを得ることができる(上記図中の15〜17)。GSC diTagは精製後互いに連結することができる(上記図中の18)。上記手順に従えば、cDNAの5’末端及び3’末端の塩基配列を最小化させたGSC diTagを得ることができ、さらにGSC diTagを連結してシーケンスすることにより、一度のシーケンスで大量のcDNA情報を得ることができる。上記GSC法は、このような手順を踏むことで、転写開始点と転写終結点を大規模に検出することができる、非常に有用な方法である。
本発明の方法は、上記したGSC法において、一本鎖cDNAを得る工程(上記図中の1〜4)及びGSC diTagを得る工程(上記図中の15〜17)に適用することができる。すなわち、担体に固定化された標的物質をGSC法の標的物質である上記一本鎖cDNA及びGSC diTagとすることにより、本発明の方法をGSC法に適用することができる。このように本発明の方法をGSC法に適用することにより、上記一本鎖cDNA及びGSC diTagの回収率を向上させることができる。上記適用の具体的な方法として、実施例に記載の方法を挙げることができる。
さらに、本発明の方法は、担体上でのPCRなどのDNA合成反応又はシークエンス反応に用いられ得る。例えば、DNAマイクロアレイ用プレートを担体とし、標的物質を担体上の一本鎖DNAとし、かつ酵素をDNAポリメラーゼとした場合、本発明の方法はSOLEXAシークエンスシステムにおけるブリッジPCRによるクラスター増幅反応に適用することができる。SOLEXAシークエンスシステムとは、Illumina社(http://www.illuminakk.co.jp/を参照、これらの記載は、ここに特に開示として援用される)により提供されるシークエンスシステムであり、数百万もの多量のDNA断片を同時並行に塩基配列を決定することができる大規模シークエンサーである。安定性及び正確性が非常に高いため、大量シークエンスデータの獲得と、生産性、経済性及び正確性が備わった大規模なDNA解析を提供することができる有効なシークエンスシステムである。本発明の方法を、例えば、実施例の記載に基づき、SOLEXAシークエンスシステムのブリッジPCRに適用した場合、クラスター増幅反応、すなわち、DNA合成におけるDNAポリメラーゼの反応性が向上することによってテンプレートDNAのクラスター増幅数が上昇する。また、各塩基の蛍光発色強度が強くなる、それらの結果として配列決定されたシークエンス量が上昇する。さらに、SOLEXAシークエンスシステムのシークエンス反応に適用した場合、シークエンス反応での酵素活性が上昇され、より多くの分子の伸長反応が起きることにより、反応サイクルに伴う蛍光発光強度の減少が改善され、配列決定されたシークエンスのゲノムへのmapping rateが上昇した。
別の例としては、本発明の方法は、454シークエンサー(454Life sciences;Roche)を用いたシークエンスシステムに応用できる。より詳細には、本発明の方法は、454シークエンスシステムにおける、ビーズ上でPCRを行うエマルジョンPCRおよびシークエンス反応、それぞれに応用できる。
454シークエンサー(Genome Sequencer FLX System)とは、全ゲノムシークエンスを迅速に解読・アセンブリするための革新的なメソッドとして、リード長、リード数において圧倒的な処理能力を提供する大規模シークエンサーの一つである。1リードあたり平均200〜300塩基長を解読し、40万リードの塩基配列を解読するため、1ランで1億塩基以上の配列データを7.5時間で解析することができる。さらに、判読された200塩基を超える配列の各塩基解読精度は99.5%以上である。この454シークエンスシステムは、DNA鋳型を球状のビーズに吸着、固定し、油水エマルジョンの中に包み込み増幅する過程、すなわちエマルジョンPCRを経る。例えば、実施例で示すように、このエマルジョンPCRにおいて本発明を適用することで、エマルジョンPCRにおける酵素活性を上昇させ、シークエンス解析量が格段に向上する。また、エマルジョンPCR後のシークエンス反応においても、本発明の方法を適用することもできる。
さらに別の例としては、本発明の方法は、SOLiDシークエンサー(Applied Biosystems社)を用いたシークエンスシステムに応用できる。より詳細には、本発明の方法は、SOLiDシークエンスシステムにおける、ビーズ上でPCRを行うエマルジョンPCRおよびシークエンス反応、それぞれに応用できる。例えば、実施例で示すように、このエマルジョンPCRにおいて本発明を適用することで、エマルジョンPCRにおける酵素活性を上昇させ、シークエンス解析量が格段に向上する。また、エマルジョンPCR後のシークエンス反応においても、本発明の方法を適用することでノイズ上昇を改善できる。
本発明の方法は、上記した以外にも、次世代シークエンサー、例えば、Helicosシークエンサー (Helicos Biosciences社)などの装置を用いたシークエンスシステムなどにも適用することができる。
本発明を以下の実施例でさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
1.実験材料
D(+)トレハロースはFluka Biochemika 90208を、D(+)ソルビトールはFluka Biochemika (85529)、D(+)グルコースはWAKO(041-00595)、ベタインはWAKO(023-10862)を使用した。ストレプトアビジンビーズはTAKARAのMAGNOTEX-SA 9088を、ストレプトアビジンプレートは、Thermo ScienceのBioBind Streptavidine coat plate (FN-95029263)を使用した。各種酵素は、次のものを使用した。M-MLV reverse transcriptase(Promega 90208)、RNaseH(NEB M0297S)、E coli DNA polymeraseI(NEB0209S)、E. coli DNA ligase (NEB M0205S)、Xho I (NEB R0146S)、Pst I (NEB R0140S)、HindIII (NEB R0104S)、Not I (NEB R0189S) 、EcoRI(Fermentas ER0273)。ファージパッケージングにはEpicentreのMAXplax Packaging Extract MP5120を使用した。使用したDNAは配列表の配列番号1〜6に示した。
2.D(+)トレハロース存在下でのDNA断片の切断
ビオチン標識300bpのDNA断片を、ストレプトアビジンビーズに吸着させたまま、制限酵素BceAI反応を行う系について、添加するトレハロースの最終濃度を変えて以下の通りに検討した。
DNA断片の切断
pFLCIIIベクターを鋳型に、300bpのDNA断片をビオチン標識したプライマー(配列番号1及び2)を用いてPCRを行い、TypeIIの制限酵素サイトBceAIで切断して遊離する50bpのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁した。PCR産物含溶液と2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×BceAI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×BceAI Buffer、1×BSA、制限酵素20unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したcDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたcDNA沈殿を0.1×TE(pH7.5)で溶解して12%PAGE電気泳動を行った。
結果
その結果、切断され遊離してくる50bp断片は、トレハロース添加時に収量が向上し、0M、0.3M、0.6M、0.8Mの中で0.6Mから変化が見られなかった(図1)。そこで、0.6Mを最適濃度として後の反応に設定した。
3.2本鎖cDNA合成効率の比較
各種制限酵素サイトを持ったUnique oligo-dTによってRNAを逆転写し、cDNA/RNAハイブリットとなったものをビーズに吸着させたままGubler-Hoffman法により2本鎖合成反応を以下の通りに行った。
RNAの逆転写(1本鎖cDNAの合成)
Total RNA(Mouse embrio17.5 ♀)12ugに対し、5’末端にビオチン標識した逆転写用のプライマー(配列番号3)15ugを使用した。逆転写反応溶液(1×GC buffer(TAKARA)、0.3mM dNTP mix、飽和ソルビトール/トレハロース溶液30ul、M-MLV 3000unit)を加え、α[32P]dGTPを添加して42℃で30分間、50℃で10分間、56℃で10分間反応させた。Proteinase K反応後、CTAB/Ureaで沈殿させ、7M Gu-HClで再溶解した。さらにEtOH沈殿を行った。
常磁性ストレプトアビジンビーズへのビオチン標識cDNA/RNAハイブリットの吸着
常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁した。cDNA/RNAハイブリッド溶液と2×Binding bufferを混合し、ビーズ溶液を加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。
2本鎖cDNA合成(Gubler-Hoffman法)
cDNA/RNAハイブリット吸着ストレプトアビジンビーズを、2本鎖合成用反応Buffer(10×Ecoli. Ligase buffer Invitrogen)で1回洗浄した。反応溶液(1×Ecoli. Ligase buffer、0.2mM dNTP mix、E coli.DNA Ligase 10unit、E coli.DNA polymerase I 40unit、E coli.RNase H 2unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズと混合し、α[32P]dGTPを加えて16℃で3時間反応させた。1×Binding bufferで3回の洗浄し、液体シンチレーションカウンターにて測定、2本鎖cDNAの合成率とその収量を計算した(Scheme 1)。
結果
その結果、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件での2本鎖合成効率を比較したところ、Trehalose(+)での合成率がTrehalose(-)に比べ1.25倍の上昇を示した(図2)。これによって、ビーズ表面上でのRNAニック反応、DNA伸長反応、DNA Ligation反応など様々な酵素反応がトレハロースによって促進されることが示された。
4.ストレプトアビジンビーズ固定ビオチン標識cDNAの各種制限酵素反応
制限酵素反応
2本鎖cDNAが吸着したままのストレプトアビジンビーズを、各種制限酵素のBufferにて洗浄する。制限酵素はXho I、Pst I、Hind III、Not Iを使用した。反応溶液(各種1×Buffer、酵素によって1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応した。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したcDNAを含む上清を液体シンチレーションカウンターにて測定した。RIカウント数値から、cDNA収量と制限酵素効率を計算した(Scheme 2)。
結果
その結果、ビーズに固定して2本鎖合成を行ったcDNAについて、1本鎖合成で使用したUnique Oligo-dT上の各種制限酵素サイト(3‘末端側)をそれぞれ切断した。遊離するcDNAの回収量の測定結果を図3に示す。いずれもTrehalose(+)の方が回収量の上昇がみられた。
5.cDNAファージライブラリー作製におけるトレハロースの影響評価
λファージcDNAライブラリーの作製
ストレプトアビジンビーズに固定したcDNA/RNAハイブリットサンプルについて、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件でそれぞれ2本鎖合成したものを用い、λファージcDNAライブラリーの作製を行った。2本鎖cDNAを合成後、ビーズをBlunting buffer(T4 DNA polymerase buffer)で洗浄した。Blunting反応溶液(1×T4 DNA polymerase buffer、0.6Mトレハロース、0.1mM dNTP mix、T4 DNA polymerase 5unit)を加え、12℃で20分間温置した。反応後のビーズを0.1×TEで3回洗浄した後、1×Ligation bufferでさらにもう一度洗浄する。Ligation反応溶液(1×T4 DNA Ligation buffer、0.6Mトレハロース、5'末端BamH I突出アダプター 2ug、T4 DNA Ligase 800unit)を加え、16℃で一晩反応させた。ビーズを0.1×TEで3回洗浄し、1×Xho I用 bufferでさらにもう一度洗浄した。制限酵素Xho I反応溶液(1×Xho I buffer、0.6Mトレハロース、Xho I 40unit)を加え、37℃で3時間温置した。ビーズをマグネチックスタンドで回収し、Xho Iカットされて遊離したcDNAを含む上清を分離した。Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたcDNA沈殿を0.1×TE(pH7.5)で溶解した。モル濃度比(cDNA:λファージベクター=1:1)でライゲーションを行った。Ligation反応溶液(cDNA、λファージベクター、T4 DNA Ligase 200unit)を16℃で一晩反応させた。λファージパッケージング溶液(Epicentre)を加え、室温で1時間45分間静置した。SM bufferとクロロホルム2〜3滴を加えて4℃で保存した。前日にλファージのホストバクテリアC600をLBMM液体培地(抗生物質無し、10mM MgSO4、0.2% Maltose)30mlに植菌し、37℃で14時間培養した。培養した菌体を遠心分離によって集菌し、20mM MgSO4 10mlに再懸濁した。ファージサンプル溶液を100倍希釈し、そのうち10ul、100ulをC600/MgSO4懸濁液にそれぞれ混合してファージ感染させた。感染溶液をM-soft agarに加えて手早くボルテックスし、LB寒天培地(抗生物質無し)に表面を均一にムラなく流し広げた。37℃で14〜16時間培養し、出現するプラークをカウントして力価を計算した(Scheme 3)。
cDNAファージライブラリー作製結果
ビーズに固定したcDNA/RNAハイブリットサンプルについて、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件でそれぞれ2本鎖合成したものを用い、λファージcDNAライブラリーの作製を行った。λファージにパッケージングし、形成されたプラークの数からファージライブラリーの力価を計算したところ、Trehalose(+)で作製したサンプルのほうが明らかに良い結果を示していた(図4)。トレハロース添加条件下で精製されたcDNAの構造は、各反応においてその活性の促進だけでなく、高い精度を保っており、最終的なベクターライゲーションの反応系で大きな差を示すことになった。
ストレプトアビジンビーズに吸着させたビオチン標識DNAに、D(+)トレハロースを最終濃度0.6Mで加えた各種酵素反応溶液では、トレハロースを添加することにより、長時間の反応でもそれまで底に凝集していたストレプトアビジンビーズが溶液中に拡散し、反応溶液の均一性をより保つようになった。そのため酵素活性にムラができず、各酵素反応が促進される結果となり、それに伴って目的DNAの回収量も上昇した。
トレハロース存在下でDNA断片を切断する反応について、反応表面形体、切断位置、添加する試薬の関係を検討するため、新たに設計したDNAの断片反応を様々な条件下で以下の通りにおこなった。
6.トレハロース存在下におけるDNA断片の反応表面形体評価
ビオチン標識DNA断片を、様々な形状の担体表面上で制限酵素反応を行った。このとき反応条件としてトレハロースの有無の系を設定し、遊離するDNA断片の回収量の差に連動する酵素活性が、反応表面の形状にどう関係し、トレハロースがどのような影響を及ぼしているのかを以下の通りに検討した。
溶液中のPstI切断反応
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、溶液中において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。反応溶液(DNA断片III 500ng、1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える反応溶液Trehalose(+) 計50ul、加えない反応溶液Trehalose(-) 計50ul、の2種類を調製した。37℃で3時間反応後、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビーズ球体表面上でのPstI切断反応
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、ストレプトアビジンビーズ表面において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。DNA断片III(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、1×Binding bufferで懸濁したビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄する。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製する。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
プレート水平表面上でのPstI切断反応
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、ストレプトアビジンコートプレート水平表面において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。DNA断片III(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに加えて室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
様々な反応表面系上での酵素活性の比較結果
球体表面としてストレプトアビジンビーズ、水平表面としてストレプトアビジンコートプレート、フリーの系として通常の反応溶液のみ、以上3種類について酵素反応を行った(Scheme 5.)。結果を図5に示す。通常の反応系では、3時間の制限酵素反応において、トレハロース添加、無添加ともに同様の収量を得た。ビーズに吸着させて固定したDNAの切断反応では、トレハロース添加のほうが高い収量を示していた。同様の実験を水平表面系であるプレートを使っても行ったが、やはりトレハロース添加時のほうが高い収量を示した。以上の結果より、通常の反応溶液のみの酵素反応は、トレハロースの有無にかかわらずに進むが、担体表面上での反応では、トレハロース添加によって酵素活性の不活化を阻害し、その働きを促進させていることが示唆された。
SHAPE \* MERGEFORMAT
7.トレハロース存在下におけるDNA断片の切断位置評価
酵素反応表面とDNA認識位置までの距離によって酵素活性に違いがあるかを以下の通りに比較した。
ビーズ球体表面からDNA切断反応位置までの距離が違う場合のPstI切断反応
ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。3種類のビオチン標識DNA断片(500ng)にそれぞれ2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
プレート水平表面からDNA切断反応位置までの距離が違う場合のPstI切断反応
ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合した3種類のビオチン標識DNA断片(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
酵素反応表面からDNA切断反応位置までの距離とトレハロースの影響
切断部位をDNA吸着表面から近い順に3段階設定し、それぞれトレハロース有無の条件について切断反応効率を検討した。表面から切断部位までの距離は、20bp、50bp、100bpで設定し、切断されて遊離してくるそれぞれ3種類のDNA断片104bp、81bp、22bpの回収量について比較検討した(Scheme 6)。その結果、酵素反応は表面に近くなるほど活性が低下してDNA収量が減少するが、トレハロース添加によってその向上が見られた。その差は反応表面に近くなるほど顕著に示された(図6A)。また、反応表面形が球体(ビーズ)でも平面(プレート)でも同様の傾向が示された(図6B)。
8.トレハロース存在下におけるDNA断片の添加試薬影響評価
酵素の担体表面反応において、トレハロース以外の物質が存在したときの酵素活性について検討した。添加試薬として、ソルビトールを用いた。さらに、トレハロースと混合した、ソルビトール+トレハロースの反応系についても検討を行った(Scheme 7)。
D(+)トレハロースをはじめ、その他の物質が存在する条件下でのビーズ球体表面上DNA断片HindIII切断反応
ビオチン標識されたDNA断片II(配列番号5;Scheme 4.)をビーズ表面において、トレハロース、グルコース、ソルビトール、ベタインを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片II(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)、最終濃度0.6MD(+)グルコースを加える系、最終濃度0.6Mソルビトールを加える系、最終濃度2Mベタインを加える系の4種類を調製した。さらに最終濃度0.6Mトレハロース+2Mベタイン、0.6Mトレハロース+0.6Mグルコース、0.6Mトレハロース+0.6Mソルビトールなどのコンビネーション反応溶液3種類も調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
D(+)トレハロースに、その他の物質が存在する条件下でのプレート水平表面上DNA断片HindIII切断反応
ビオチン標識されたDNA断片II(配列番号5;Scheme 4.)をプレート水平表面において、トレハロース、ソルビトールを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合したDNA断片II(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)、最終濃度0.6Mソルビトールを加える系を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
トレハロース以外の物質を添加したときの酵素活性の比較結果
球体(ビーズ)、水平(プレート)表面上において各物質存在下で制限酵素の切断反応を行った結果、回収されるDNAの収量を図7に示す。制限酵素反応を3時間行った後のビーズ反応溶液の様子を参考として図8に示す。トレハロース添加時と同様に、ソルビトール添加時にはビーズの溶液中均一性が保持されていた。これはトレハロースやソルビトールの粘度と拡散効果などの特性によるものと考えられる。各反応条件において、トレハロース添加時ほどではなかったにせよ、ソルビトール添加時においても酵素活性がどの反応表面上でも高く示されていた。
9.トレハロース存在下におけるDNA断片の制限酵素影響評価
各反応表面形と、トレハロース有無の条件反応において、酵素の種類によって活性の違いがみられるか検討した。制限酵素は、XhoI、PstI、HindIII、EcoRIを用い、DNA断片の同じ位置を違う酵素で切断する反応を行った(Scheme 8)。
ビーズ球体表面上での様々な制限酵素によるDNA切断反応
ビオチン標識されたDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)をビーズ表面上において、様々な制限酵素より切断反応を行った。DNA断片I、IIのXhoI、PstI部位(ビーズ表面から50bpの距離)での切断反応により、遊離する80bpのDNA断片を検出した。DNA断片IのEcoRI部位、DNA断片IIのHindIII部位、DNA断片IIIのPstI部位(いずれもビーズ表面から20bpの距離)での切断反応より、遊離する104bpのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片I、II、III(500ng)それぞれに2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。各DNA断片に対して、1×XhoI buffer、1×PstI buffer、1×HindIII buffer、1×EcoRI bufferでさらにもう一度洗浄した。各反応溶液(1×XhoI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)、(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)、(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)、(1×EcoRI Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
プレート水平表面上での異なる制限酵素によるDNA断片切断反応
ビオチン標識されたDNA断片II、III(配列番号5、6;Scheme 4.)をストレプトアビジンコートプレート水平表面上において、異なる制限酵素より切断反応を行った。DNA断片IIのHindIII部位、DNA断片IIIのPstI部位(いずれもプレート表面から20bpの距離)での切断反応より、遊離する104bpのDNA断片を検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合したDNA断片II、III(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。それぞれのDNA断片に対して、1×HindIII buffer、1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。それぞれの反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)、(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
酵素の違いによる反応表面上の酵素活性の比較結果
上記の結果を図9に示す。球形(ビーズ)、水平(プレート)表面上での切断反応において、酵素によって活性の違いが見られたが、いずれもトレハロース添加による活性の向上が示された。
担体表面上の酵素反応に対するトレハロースの影響は、表面形状が球状、水平面状に関わらず反応の促進、または酵素活性の保持・向上に関すると考えられる。また、担体表面から酵素の基質となるDNA断片の反応認識部位までの距離と酵素活性の関係では、表面近くになるほど活性の低下が生じるが、トレハロースを添加することによってその活性が向上する。また、酵素によって表面近くの活性状況に差があることから、酵素の立体的な構造、および認識部位の特異性などもトレハロースと相互的に関係していると考えられる。以上の結果を合わせると、担体固定DNA酵素反応におけるトレハロースの作用は、反応溶液中のビーズなどによる物質の凝集阻害効果だけでなく、表面反応の酵素または基質となるDNA、もしくは両者の複合体に直接何らかの影響を及ぼしていることが考えられる。
10.DNAチップ上におけるDNAシークエンスシステムのトレハロースの影響評価
SOLEXAシークエンスシステムは、DNA鋳型を平面形Chip上で吸着、固定、増幅する過程を経る。SOLEXAシークエンスシステムの鋳型増幅反応において、トレハロース添加によりシークエンス解析量にどのような変化がみられるのか検討した。
SOLEXAシークエンスシステムを進める過程において、DNA固定Chip上で行われる、クラスター増幅反応に注目した。この反応は、Chip上に固定化されたDNAをDNA polymeraseにより増幅し、クラスターと呼ばれる同一断片を得るものである(Scheme 9)。この反応溶液に最終濃度0.6Mトレハロースを添加して増幅を行い、無添加の場合と結果を比較した(図10)。今回使用したサンプルは、CAGE法(cDNAの5' 末端の27bpのみを切断して得るもの)によって作製した27bpのDNA断片である。その後のシークエンス反応によって得られた結果を表1に示した。
Scheme 9. トレハロースを添加した条件下での鋳型増幅反応
トレハロース添加でクラスターの増幅反応を行ったほうが、配列決定されたシークエンス量は上昇していた。解析されたDNA断片の中身についても、CAGE法で作製された領域(CAGE tag)をより多く含んでいた(図10)。また、クラスター増幅反応後の塩基配列の読み取り過程では、トレハロース添加条件で進めたDNAサンプルの方が、各塩基の蛍光発色強度が強く表示されていた(Data not shown)。これらの結果より、トレハロースは水平表面上での酵素反応(今回はDNA伸長反応)の効率に影響を及ぼすことから、酵素の活性に関わる有効な特性を持つことが示された。
11.エマルジョンPCRを伴うDNAシークエンスシステムにおけるトレハロースの影響評価
454シークエンスシステム(Scheme 10)は、DNA鋳型を球状のビーズに吸着、固定し、油水エマルジョンの中に包み込み増幅する過程(エマルジョンPCR)を経る。そこで、このエマルジョンPCRにおいて、トレハロースを添加したとき、シークエンス解析量にどのような変化がみられるのか検討した。
このエマルジョンPCRは、ビーズに固定されたオリゴプライマーにDNAを相補的相互作用によって結合させ、油水エマルジョンの中に包み込みこむことにより、ビーズ1つとDNAフラグメント1つを持つマイクロリアクターを形成させ、DNAポリメラーゼによる増幅反応によって各DNAフラグメントが1ビーズあたり数百万コピーにまで増幅されるものである。この反応溶液に最終濃度0.6Mトレハロースを添加して増幅反応を行い、シークエンス解析結果にどのような影響を及ぼすか検討した(Scheme 11)。
今回使用したサンプルは、Short RNAを逆転写したcDNAをPCRによって増幅したDNA断片である(図11)。この反応によって得られた結果を図12、13及び14並びに表2に示す。
エマルジョンPCRにおいてトレハロース(−)に比べて、トレハロース(+)は、DNA増幅ウェルの増加をもたらす結果となっている(図12)。さらに、シークエンス解析結果では、トレハロース(−)に比べてトレハロース(+)の方が解読されるシークエンス数とその領域が相互に増大する結果になっている(図13)。
トレハロース添加でエマルジョンPCRを行ったサンプルDNAのシークエンスRead数は、トレハロース無添加に比べ、約1.6倍の上昇を示していた(図14(a))。解析されたDNA断片(Tag)の精度についても良い結果を示しており、目的領域をより多く含んでいた(図14(b))。以上の結果より、トレハロースはやはりビーズなど反応表面上における酵素反応(DNA伸長反応)の効率に影響を及ぼし、酵素の活性の促進などに関わる有効な特性を持つことが示された。このようなトレハロースの特性は、担体上で酵素反応を行う大規模シークエンスシステムに応用され、さらなる性能の向上につながることが期待される。
12.液相均一系におけるトレハロースの影響評価
上記7と同様に、ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を加えて混合し37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った(図15及び図16)。
その結果、トレハロースの有無によって、遊離したDNA断片の回収量に変化はなかった(図15及び図16)。この結果と上記7の結果とを合わせると、トレハロースの添加は、担体に固定化された標的DNAに対する酵素の反応性を高めるか、又は担体による酵素の標的物質への反応性の阻害を緩和又は抑制することが明らかになった。
13.糖類、アミノ酸、多価アルコール及びこれらの組み合わせの存在下におけるDNA断片の添加試薬影響評価
D(+)トレハロースをはじめ、その他の物質が存在する条件下でのビーズ球体表面上DNA断片HindIII切断反応
上記8と同様に、ビオチン標識されたDNA断片I(配列番号4;Scheme 4.)をビーズ表面において、トレハロース、ソルビトール、グルコース、ベタイン、エチレングリコール、グリシンを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片I(1μg)に2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で20分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit、及び以下の各種各濃度の添加試薬)について、加えない系(SDW)、各種各濃度の添加試薬を加える系の合計23種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清についてエタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
各種各濃度の添加試薬は、最終濃度がそれぞれ0.1、0.3、0.5、0.6M Trehalose、0.6M Sorbitol、0.1、0.3、0.6、0.8M Glucose、0.5M Betain、0.3M Ethylene glycol、0.5MGlycin+0.5M Betain、0.6M Trehalose+0.6M Sorbitol、0.3M Trehalose+0.3M Sorbitol、0.6M Trehalose+0.6M Glucose、0.3M Trehalose+0.3M Glucose 、0.5M Trehalose+0.5M Betain、0.3M Trehalose+0.3M Betain 、0.5M Trehalose+0.5M Glycine、0.3M Trehalose+0.3M Glycin 、0.5M Trehalose+0.5M Glycin+0.5M Betain、0.3M Trehalose+0.3M Glycin+0.3M Betainとなるように調製した。
上記解析の結果を図17に示した。今回使用したいずれの各種各濃度の添加試薬及びそれらの組み合わせにおいても、これらの無添加時と比べて、DNA断片の回収量は増加した。
14.エマルジョンPCRを伴うDNAシークエンスシステムにおけるトレハロースの影響評価(2)
上記11に記載の454シークエンスシステムにおいて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加して増幅反応を行い、シークエンス量にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果を、図18及び図19に示す。
図18が示す通り、トレハロースの添加によりシークエンス数が増えたことから、トレハロースを添加するとエマルジョンPCRによって増えるDNAがさらに多くなる、つまり、トレハロースによってエマルジョンPCRにおける酵素活性が増加したことが示された。
また、エマルジョンPCRでは、長いものより短いものが優先的に増えてしまうとの課題があった。しかし、シークエンスの長さにおけるトレハロース添加の効果をみると(図19を参照)、トレハロースを添加することによって短いもの(a)が減り、長いもの(b)が増えた。つまり、トレハロースを添加すると、エマルジョンPCRにおける上記課題が改善されることがわかった。
15.DNAチップ上におけるDNAシークエンスシステムのトレハロースの影響評価(2)
上記10と同様にして、SOLEXAシークエンスシステムについて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加して増幅を行い、無添加の場合と結果を比較した。今回使用したサンプルは、上記10と異なるCAGE法(cDNAの5' 末端の27bpのみを切断して得るもの)によって作製した27bpのDNA断片である。このシークエンスシステムによって得られた結果を図20及び図21に示した。
トレハロース添加でクラスター増幅反応を行った方が、シークエンス量は上昇した(図20を参照)。また、クラスター増幅反応後のシークエンス反応では、トレハロース添加条件で進めたCAGEサンプルの方が、各塩基の蛍光発色強度が強く表示されていた(図21を参照)。これらの結果より、トレハロース添加によって水平表面上での酵素活性(今回はDNA伸長活性)が上昇したことが示された。
16.Solexaシークエンスシステムのシークエンス反応におけるトレハロースの影響評価
(1)方法
Genome Analyzer system(GAI)の酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.15M,0.3M,0.51Mの三種類で実験を行った。比較項目は、サイクルごとに算出される蛍光強度をクラスター数で割った平均値を元に、その減少割合を用いた。
(2)使用材料
D(+)トレハロースはD(+)-Trehalose(90208 BioChemika, ≧99.5% (HPLC) (Fluka)を使用した。Genome Analyzer(illumina社)のシーケンスには36-cycle Illumina Sequencing Kit (FC-204-2036)を使用した。今回使用したサンプルはPhiX コントロール(CT-901-1001)である。
(3)D(+)トレハロースの添加条件
36-Cycle SBS Reagent Kit v2(illumina catalog # FC-204-2036)に含まれるSBS Kit, Box 2のIMX36(42ml)を融解後、D(+)-Trehaloseを表3の分量で加えた。
添加後は遮光させた状態を保ちながら10分間室温で緩やかに転倒混和し、溶解を目視で確認後にフィルターろ過(フィルター孔系0.22μm)を行った。ろ過後の混合液から必要量の42mlだけを採取し、その後はmanufacturer's protocolどおりに作業を進めた。
(4)結果(図22及び図23)
図22は、各runのPhiXコントロールの平均値を計算して作成したものである。図22が示す通り、トレハロース(-)、トレハロース(+)のシーケンスにおける蛍光強度減少率はトレハロース(+)の条件下で全体的に優位な差を示し、蛍光強度が一番低い35cycle目で比較しても約20%以上の差があった。Trehalose(-)のエラーバーはばらつき度合いを示すためにMaxとMinの値を示している。図23には、PhiXコントロールのマッピング率(mapping rate)を示してあり、こちらも全体的にトレハロース(-)よりも優位な差が見られた。
これらの結果から、蛍光強度減少率が低いことから、トレハロースの存在下では酵素の活性が上昇し、トレハロース(-)より多くの分子の伸長反応が行われていると考えられる。その結果として、マッピング率の向上にも繋がり、酵素の活性化が示された。
17.SOLiDシークエンスシステムのシークエンス反応におけるトレハロースの影響評価
(1)方法
SOLiD system 2.0のライゲーション酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.3Mで実験を行った。比較項目は、サイクルごとに出るノイズとシグナル比(N2S)を用いた。N2Sとは2番目に明るい蛍光強度を最も明るい蛍光強度で割ったものである。
(2)使用材料
D(+)トレハロースは、D(+)−トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を使用した。SOLiD system(Applied Biosystems)のシーケンスにはSOLiD(登録商標)フラグメント ライブラリ シーケンシング キット v2(4400466)を使用した。今回使用したサンプルはSOLiD(登録商標)DH10B フラグメント ライブラリ コントロール キット(4391889)である。
(3)D(+)トレハロースの添加条件
SOLiD(登録商標)フラグメント ライブラリ シーケンシング キット v2(4400466)に含まれる試薬で作製するProbe Mix A及びB、Bridge Probeに1.7Mに調整したD(+)-Trehalose(90208 BioChemika, ≧99.5% (HPLC) (Fluka)を1シーケンスプライマーあたり下記の分量加えた。
添加後はmanufacturer's protocolどおりに作業を進めた。
SOLiDシークエンスシステムでは、サイクルが進むたびにノイズが上がる課題があったが、図24が示す通り、トレハロースの添加によりノイズ上昇が減っており、この課題が改善されたことが示された。
18.454シークエンスシステムのシークエンス反応におけるトレハロースの影響評価
上記11に記載の454シークエンスシステムにおいて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加してシークエンス反応を行い、シークエンス量にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果を、図25に示す。
(1)方法
Genome Sequencer FLX systemシーケンス酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.15M,0.3Mの二種類で実験を行った。比較項目は、読み取り長の長さと解読可能サンプルの割合を用いた。
(2)使用材料
D(+)トレハロースは、D(+)-トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を使用した。 Genome Sequencer FLX systemのシーケンスにはGS LR 25 Sequencing Kit(502906)を使用した。今回使用したサンプルは自家調整したPolyA minus full length cDNA libraryとmanufacture's protocolどおりに作製したHuman genomeを用いた。
(3)D(+)トレハロースの添加条件
GS LR 25 Sequencing Kit (502906)に含まれる試薬のBuffer CBにD(+)-トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を下記の分量加えた。
マグネチックスターラーで攪拌、溶解を目視で確認後にフィルターろ過(フィルター孔系0.22μm)を行った。ろ過後の混合液から必要量の2×1000mlだけを採取し、その後はmanufacturer's protocolどおりに作業を進めた。
図25が示す通り、トレハロースの添加によりシークエンス数が増えたことから、トレハロースを添加するとシークエンス伸長反応における酵素活性が上昇し、解読できるシークエンス数がより多くなることが示された。

Claims (15)

  1. 糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法。
  2. 前記糖類が、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビトールからなる群から選ばれる糖である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記アミノ酸又はその誘導体が、Ne−アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、グリシンベタイン、Na−カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドからなる群から選ばれる請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記標的物質が核酸である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記核酸が一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNAである請求項に記載の方法。
  6. 前記核酸がDNAとRNAとがハイブリダイズした核酸である請求項に記載の方法。
  7. 前記酵素が、転移酵素、加水分解酵素及び合成酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記酵素が、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記酵素が制限酵素である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記担体がビーズ状担体又はプレート状担体である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記ビーズ状担体がストレプトアビジンビーズである請求項11に記載の方法。
  13. 前記プレート状担体がストレプトアビジンプレート又はDNAマイクロアレイ用プレートである請求項11に記載の方法。
  14. 前記方法が担体上でのcDNAライブラリー作製、シークエンス反応若しくはDNA合成反応又はGSC法に用いられる方法である請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記DNA合成反応がエマルジョンPCR又はブリッジPCRである、請求項14に記載の方法。
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