JPWO2009107816A1 - 酵素の反応性を改善する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
DNAを精製・回収する方法として、ビオチン標識したプライマーを使って鋳型のDNA又はRNAから標的となるDNAを合成し、得られた標的DNAを常磁性のストレプトアビジンビーズによって精製・回収する方法がこれまでに広く用いられている。本方法によれば、ストレプトアビジンとビオチンの特異かつ安定な結合特性を利用することにより、ビーズの洗浄と磁気による凝集だけで、高純度のcDNAを効率よく回収することができる。したがって、本方法をcDNAライブラリー作製に応用すれば、高純度のcDNAライブラリーを効率よく作製することが期待でき、本方法をシークエンス反応に応用すれば、効率よく配列決定することが期待できる。さらに、本発明者らが確立した、cDNAの5’末端と3’末端を最小化でき、かつ1度のシーケンス反応で多くのcDNAの情報を得ることができる、GSC(Gene Signature Cloning)法に、本方法を応用することもまた可能である(小島ら、第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会公演要旨集、p.495を参照、これらの記載は、ここに特に開示として援用される)。
本発明者らは、上記GSC法に上記磁気ストレプトアビジンビーズを利用した標的DNAの精製・回収方法を応用させてみたところ、簡便かつ短時間で標的DNAを回収することに成功した。しかし、標的DNAの回収量は、液相均一系で予想される量と比べて非常に低いものであった。さらに、本発明者らは、ビーズではなく、ストレプトアビジンプレートを用いた標的DNAの精製・回収方法をDNA合成反応に応用してみたところ、ビーズを用いた系と同じく、液相均一系で予想される量と比べて十分量の標的DNAを回収することができなかった。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討したところ、担体に固定化された標的物質に対する酵素反応系において、トレハロースなどの糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を添加することにより酵素の反応性が向上することを見出した。本発明者らは、得られた知見に基づいて、上記物質の存在下で担体上でのcDNAライブラリーの作製、制限酵素反応、DNA合成反応、上記GSC法等を実施したところ、いずれにおいても酵素反応が改善し、高い回収率で標的DNAを精製・回収することに成功した。さらに、本発明者らは、DNAマイクロアレイ様の超高密度フローセル上で鋳型増幅反応及びシークエンス反応を実施するSOLEXAシークエンスシステムや、油水エマルジョンにおいてビーズに固定化されたオリゴプライマーにDNA断片を相補的に相互作用させてPCRを行う、いわゆるエマルジョンPCRを利用した454シークエンスシステム等において、それらの反応液中に上記物質を添加したところ、反応効率を向上させることに成功した。したがって、本発明は、上記知見に基づいて完成された発明である。
(1)糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法。
(2)糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法。
(3)前記糖類が、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビトールからなる群から選ばれる糖である、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記アミノ酸又はその誘導体が、Ne −アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、グリシンベタイン、Na −カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドからなる群から選ばれる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記標的物質が核酸である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記核酸が一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNAである上記(5)に記載の方法。
(7)前記核酸がDNAとRNAとがハイブリダイズした核酸である上記(5)に記載の方法。
(8)前記酵素が、転移酵素、加水分解酵素及び合成酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種の酵素である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10)前記酵素が、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(11)前記酵素が制限酵素である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(12)前記担体がビーズ状担体又はプレート状担体である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記ビーズ状担体がストレプトアビジンビーズである上記(12)に記載の方法。
(14)前記プレート状担体がストレプトアビジンプレート又はDNAマイクロアレイ用プレートである上記(12)に記載の方法。
(15)前記方法が担体上でのcDNAライブラリー作製、シークエンス反応若しくはDNA合成反応又はGSC法に用いられる方法である上記(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)前記DNA合成反応がエマルジョンPCR又はブリッジPCRである、上記(15)に記載の方法。
本発明によれば、トレハロースなどの糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を所定の濃度で添加するだけという簡便、安全かつ安価な方法により、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を向上すること、及び標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性の阻害効果を緩和又は抑制することができる。すなわち、本発明によれば、簡便、安全かつ安価に、担体に固定化された標的DNAに対するDNA合成反応、制限酵素反応、核酸分解反応、シークエンス反応等を促進することができる。
本発明の方法は、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法、及び糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法である。本発明によれば、上記いずれの方法においても、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質が存在しない場合に比べて、糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を改善することができる。
本発明の方法は、上記した以外にも、次世代シークエンサー、例えば、Helicosシークエンサー (Helicos Biosciences社)などの装置を用いたシークエンスシステムなどにも適用することができる。
D(+)トレハロースはFluka Biochemika 90208を、D(+)ソルビトールはFluka Biochemika (85529)、D(+)グルコースはWAKO(041-00595)、ベタインはWAKO(023-10862)を使用した。ストレプトアビジンビーズはTAKARAのMAGNOTEX-SA 9088を、ストレプトアビジンプレートは、Thermo ScienceのBioBind Streptavidine coat plate (FN-95029263)を使用した。各種酵素は、次のものを使用した。M-MLV reverse transcriptase(Promega 90208)、RNaseH(NEB M0297S)、E coli DNA polymeraseI(NEB0209S)、E. coli DNA ligase (NEB M0205S)、Xho I (NEB R0146S)、Pst I (NEB R0140S)、HindIII (NEB R0104S)、Not I (NEB R0189S) 、EcoRI(Fermentas ER0273)。ファージパッケージングにはEpicentreのMAXplax Packaging Extract MP5120を使用した。使用したDNAは配列表の配列番号1〜6に示した。
ビオチン標識300bpのDNA断片を、ストレプトアビジンビーズに吸着させたまま、制限酵素BceAI反応を行う系について、添加するトレハロースの最終濃度を変えて以下の通りに検討した。
pFLCIIIベクターを鋳型に、300bpのDNA断片をビオチン標識したプライマー(配列番号1及び2)を用いてPCRを行い、TypeIIの制限酵素サイトBceAIで切断して遊離する50bpのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁した。PCR産物含溶液と2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×BceAI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×BceAI Buffer、1×BSA、制限酵素20unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したcDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたcDNA沈殿を0.1×TE(pH7.5)で溶解して12%PAGE電気泳動を行った。
その結果、切断され遊離してくる50bp断片は、トレハロース添加時に収量が向上し、0M、0.3M、0.6M、0.8Mの中で0.6Mから変化が見られなかった(図1)。そこで、0.6Mを最適濃度として後の反応に設定した。
各種制限酵素サイトを持ったUnique oligo-dTによってRNAを逆転写し、cDNA/RNAハイブリットとなったものをビーズに吸着させたままGubler-Hoffman法により2本鎖合成反応を以下の通りに行った。
Total RNA(Mouse embrio17.5 ♀)12ugに対し、5’末端にビオチン標識した逆転写用のプライマー(配列番号3)15ugを使用した。逆転写反応溶液(1×GC buffer(TAKARA)、0.3mM dNTP mix、飽和ソルビトール/トレハロース溶液30ul、M-MLV 3000unit)を加え、α[32P]dGTPを添加して42℃で30分間、50℃で10分間、56℃で10分間反応させた。Proteinase K反応後、CTAB/Ureaで沈殿させ、7M Gu-HClで再溶解した。さらにEtOH沈殿を行った。
常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁した。cDNA/RNAハイブリッド溶液と2×Binding bufferを混合し、ビーズ溶液を加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。
cDNA/RNAハイブリット吸着ストレプトアビジンビーズを、2本鎖合成用反応Buffer(10×Ecoli. Ligase buffer Invitrogen)で1回洗浄した。反応溶液(1×Ecoli. Ligase buffer、0.2mM dNTP mix、E coli.DNA Ligase 10unit、E coli.DNA polymerase I 40unit、E coli.RNase H 2unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズと混合し、α[32P]dGTPを加えて16℃で3時間反応させた。1×Binding bufferで3回の洗浄し、液体シンチレーションカウンターにて測定、2本鎖cDNAの合成率とその収量を計算した(Scheme 1)。
その結果、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件での2本鎖合成効率を比較したところ、Trehalose(+)での合成率がTrehalose(-)に比べ1.25倍の上昇を示した(図2)。これによって、ビーズ表面上でのRNAニック反応、DNA伸長反応、DNA Ligation反応など様々な酵素反応がトレハロースによって促進されることが示された。
制限酵素反応
2本鎖cDNAが吸着したままのストレプトアビジンビーズを、各種制限酵素のBufferにて洗浄する。制限酵素はXho I、Pst I、Hind III、Not Iを使用した。反応溶液(各種1×Buffer、酵素によって1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応した。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したcDNAを含む上清を液体シンチレーションカウンターにて測定した。RIカウント数値から、cDNA収量と制限酵素効率を計算した(Scheme 2)。
その結果、ビーズに固定して2本鎖合成を行ったcDNAについて、1本鎖合成で使用したUnique Oligo-dT上の各種制限酵素サイト(3‘末端側)をそれぞれ切断した。遊離するcDNAの回収量の測定結果を図3に示す。いずれもTrehalose(+)の方が回収量の上昇がみられた。
λファージcDNAライブラリーの作製
ストレプトアビジンビーズに固定したcDNA/RNAハイブリットサンプルについて、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件でそれぞれ2本鎖合成したものを用い、λファージcDNAライブラリーの作製を行った。2本鎖cDNAを合成後、ビーズをBlunting buffer(T4 DNA polymerase buffer)で洗浄した。Blunting反応溶液(1×T4 DNA polymerase buffer、0.6Mトレハロース、0.1mM dNTP mix、T4 DNA polymerase 5unit)を加え、12℃で20分間温置した。反応後のビーズを0.1×TEで3回洗浄した後、1×Ligation bufferでさらにもう一度洗浄する。Ligation反応溶液(1×T4 DNA Ligation buffer、0.6Mトレハロース、5'末端BamH I突出アダプター 2ug、T4 DNA Ligase 800unit)を加え、16℃で一晩反応させた。ビーズを0.1×TEで3回洗浄し、1×Xho I用 bufferでさらにもう一度洗浄した。制限酵素Xho I反応溶液(1×Xho I buffer、0.6Mトレハロース、Xho I 40unit)を加え、37℃で3時間温置した。ビーズをマグネチックスタンドで回収し、Xho Iカットされて遊離したcDNAを含む上清を分離した。Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたcDNA沈殿を0.1×TE(pH7.5)で溶解した。モル濃度比(cDNA:λファージベクター=1:1)でライゲーションを行った。Ligation反応溶液(cDNA、λファージベクター、T4 DNA Ligase 200unit)を16℃で一晩反応させた。λファージパッケージング溶液(Epicentre)を加え、室温で1時間45分間静置した。SM bufferとクロロホルム2〜3滴を加えて4℃で保存した。前日にλファージのホストバクテリアC600をLBMM液体培地(抗生物質無し、10mM MgSO4、0.2% Maltose)30mlに植菌し、37℃で14時間培養した。培養した菌体を遠心分離によって集菌し、20mM MgSO4 10mlに再懸濁した。ファージサンプル溶液を100倍希釈し、そのうち10ul、100ulをC600/MgSO4懸濁液にそれぞれ混合してファージ感染させた。感染溶液をM-soft agarに加えて手早くボルテックスし、LB寒天培地(抗生物質無し)に表面を均一にムラなく流し広げた。37℃で14〜16時間培養し、出現するプラークをカウントして力価を計算した(Scheme 3)。
ビーズに固定したcDNA/RNAハイブリットサンプルについて、Trehalose(+)、Trehalose(-)の条件でそれぞれ2本鎖合成したものを用い、λファージcDNAライブラリーの作製を行った。λファージにパッケージングし、形成されたプラークの数からファージライブラリーの力価を計算したところ、Trehalose(+)で作製したサンプルのほうが明らかに良い結果を示していた(図4)。トレハロース添加条件下で精製されたcDNAの構造は、各反応においてその活性の促進だけでなく、高い精度を保っており、最終的なベクターライゲーションの反応系で大きな差を示すことになった。
ビオチン標識DNA断片を、様々な形状の担体表面上で制限酵素反応を行った。このとき反応条件としてトレハロースの有無の系を設定し、遊離するDNA断片の回収量の差に連動する酵素活性が、反応表面の形状にどう関係し、トレハロースがどのような影響を及ぼしているのかを以下の通りに検討した。
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、溶液中において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。反応溶液(DNA断片III 500ng、1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える反応溶液Trehalose(+) 計50ul、加えない反応溶液Trehalose(-) 計50ul、の2種類を調製した。37℃で3時間反応後、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、ストレプトアビジンビーズ表面において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。DNA断片III(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、1×Binding bufferで懸濁したビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄する。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製する。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビオチン標識されたDNA断片III(配列番号6;Scheme 4.)を、ストレプトアビジンコートプレート水平表面において制限酵素サイトPstIで切断し、遊離するDNA断片104bpを検出した。DNA断片III(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに加えて室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
球体表面としてストレプトアビジンビーズ、水平表面としてストレプトアビジンコートプレート、フリーの系として通常の反応溶液のみ、以上3種類について酵素反応を行った(Scheme 5.)。結果を図5に示す。通常の反応系では、3時間の制限酵素反応において、トレハロース添加、無添加ともに同様の収量を得た。ビーズに吸着させて固定したDNAの切断反応では、トレハロース添加のほうが高い収量を示していた。同様の実験を水平表面系であるプレートを使っても行ったが、やはりトレハロース添加時のほうが高い収量を示した。以上の結果より、通常の反応溶液のみの酵素反応は、トレハロースの有無にかかわらずに進むが、担体表面上での反応では、トレハロース添加によって酵素活性の不活化を阻害し、その働きを促進させていることが示唆された。
酵素反応表面とDNA認識位置までの距離によって酵素活性に違いがあるかを以下の通りに比較した。
ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。3種類のビオチン標識DNA断片(500ng)にそれぞれ2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合した3種類のビオチン標識DNA断片(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
切断部位をDNA吸着表面から近い順に3段階設定し、それぞれトレハロース有無の条件について切断反応効率を検討した。表面から切断部位までの距離は、20bp、50bp、100bpで設定し、切断されて遊離してくるそれぞれ3種類のDNA断片104bp、81bp、22bpの回収量について比較検討した(Scheme 6)。その結果、酵素反応は表面に近くなるほど活性が低下してDNA収量が減少するが、トレハロース添加によってその向上が見られた。その差は反応表面に近くなるほど顕著に示された(図6A)。また、反応表面形が球体(ビーズ)でも平面(プレート)でも同様の傾向が示された(図6B)。
酵素の担体表面反応において、トレハロース以外の物質が存在したときの酵素活性について検討した。添加試薬として、ソルビトールを用いた。さらに、トレハロースと混合した、ソルビトール+トレハロースの反応系についても検討を行った(Scheme 7)。
ビオチン標識されたDNA断片II(配列番号5;Scheme 4.)をビーズ表面において、トレハロース、グルコース、ソルビトール、ベタインを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片II(500ng)に2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)、最終濃度0.6MD(+)グルコースを加える系、最終濃度0.6Mソルビトールを加える系、最終濃度2Mベタインを加える系の4種類を調製した。さらに最終濃度0.6Mトレハロース+2Mベタイン、0.6Mトレハロース+0.6Mグルコース、0.6Mトレハロース+0.6Mソルビトールなどのコンビネーション反応溶液3種類も調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビオチン標識されたDNA断片II(配列番号5;Scheme 4.)をプレート水平表面において、トレハロース、ソルビトールを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合したDNA断片II(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)、最終濃度0.6Mソルビトールを加える系を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
球体(ビーズ)、水平(プレート)表面上において各物質存在下で制限酵素の切断反応を行った結果、回収されるDNAの収量を図7に示す。制限酵素反応を3時間行った後のビーズ反応溶液の様子を参考として図8に示す。トレハロース添加時と同様に、ソルビトール添加時にはビーズの溶液中均一性が保持されていた。これはトレハロースやソルビトールの粘度と拡散効果などの特性によるものと考えられる。各反応条件において、トレハロース添加時ほどではなかったにせよ、ソルビトール添加時においても酵素活性がどの反応表面上でも高く示されていた。
各反応表面形と、トレハロース有無の条件反応において、酵素の種類によって活性の違いがみられるか検討した。制限酵素は、XhoI、PstI、HindIII、EcoRIを用い、DNA断片の同じ位置を違う酵素で切断する反応を行った(Scheme 8)。
ビオチン標識されたDNA断片I、II、III(配列番号4〜6;Scheme 4.)をビーズ表面上において、様々な制限酵素より切断反応を行った。DNA断片I、IIのXhoI、PstI部位(ビーズ表面から50bpの距離)での切断反応により、遊離する80bpのDNA断片を検出した。DNA断片IのEcoRI部位、DNA断片IIのHindIII部位、DNA断片IIIのPstI部位(いずれもビーズ表面から20bpの距離)での切断反応より、遊離する104bpのDNA断片を検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片I、II、III(500ng)それぞれに2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で15分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。各DNA断片に対して、1×XhoI buffer、1×PstI buffer、1×HindIII buffer、1×EcoRI bufferでさらにもう一度洗浄した。各反応溶液(1×XhoI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)、(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)、(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)、(1×EcoRI Buffer、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
ビオチン標識されたDNA断片II、III(配列番号5、6;Scheme 4.)をストレプトアビジンコートプレート水平表面上において、異なる制限酵素より切断反応を行った。DNA断片IIのHindIII部位、DNA断片IIIのPstI部位(いずれもプレート表面から20bpの距離)での切断反応より、遊離する104bpのDNA断片を検出した。1×Binding bufferで洗浄したプレートのウェルに、2×Binding bufferを等容量で混合したDNA断片II、III(500ng)をそれぞれ加え、室温で15分間緩やかに振とうしながら混合、吸着させた。上清を取り除き、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行う。それぞれのDNA断片に対して、1×HindIII buffer、1×PstI bufferでさらにもう一度洗浄した。それぞれの反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit)、(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのウェルに加えて37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離したDNA断片を含む上清を回収し、Proteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
上記の結果を図9に示す。球形(ビーズ)、水平(プレート)表面上での切断反応において、酵素によって活性の違いが見られたが、いずれもトレハロース添加による活性の向上が示された。
担体表面上の酵素反応に対するトレハロースの影響は、表面形状が球状、水平面状に関わらず反応の促進、または酵素活性の保持・向上に関すると考えられる。また、担体表面から酵素の基質となるDNA断片の反応認識部位までの距離と酵素活性の関係では、表面近くになるほど活性の低下が生じるが、トレハロースを添加することによってその活性が向上する。また、酵素によって表面近くの活性状況に差があることから、酵素の立体的な構造、および認識部位の特異性などもトレハロースと相互的に関係していると考えられる。以上の結果を合わせると、担体固定DNA酵素反応におけるトレハロースの作用は、反応溶液中のビーズなどによる物質の凝集阻害効果だけでなく、表面反応の酵素または基質となるDNA、もしくは両者の複合体に直接何らかの影響を及ぼしていることが考えられる。
SOLEXAシークエンスシステムは、DNA鋳型を平面形Chip上で吸着、固定、増幅する過程を経る。SOLEXAシークエンスシステムの鋳型増幅反応において、トレハロース添加によりシークエンス解析量にどのような変化がみられるのか検討した。
454シークエンスシステム(Scheme 10)は、DNA鋳型を球状のビーズに吸着、固定し、油水エマルジョンの中に包み込み増幅する過程(エマルジョンPCR)を経る。そこで、このエマルジョンPCRにおいて、トレハロースを添加したとき、シークエンス解析量にどのような変化がみられるのか検討した。
上記7と同様に、ビオチン標識された3つのDNA断片I、II、III(配列番号4〜6.)を、それぞれの制限酵素サイトPstIで切断し、遊離する各サイズのDNA断片を検出した。反応溶液(1×PstI Buffer、1×BSA、制限酵素40unit)について、最終濃度0.6M D(+)トレハロースを加える系Trehalose(+)、加えない系Trehalose(-)の2種類を調製した。それぞれの反応溶液を加えて混合し37℃で3時間反応させた。制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清をProteinase K反応、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った(図15及び図16)。
D(+)トレハロースをはじめ、その他の物質が存在する条件下でのビーズ球体表面上DNA断片HindIII切断反応
上記8と同様に、ビオチン標識されたDNA断片I(配列番号4;Scheme 4.)をビーズ表面において、トレハロース、ソルビトール、グルコース、ベタイン、エチレングリコール、グリシンを加えてHindIII切断反応を行い、遊離するDNA断片104bpを検出した。常磁性のストレプトアビジンビーズを付属の1×Binding bufferで洗浄し、マグネチックスタンドで回収して上清を取り除いた後、同Bufferで懸濁しておいた。DNA断片I(1μg)に2×Binding bufferを等容量で混合し、ビーズ溶液をさらに加えて室温で20分間緩やかに転倒回転しながら混合、吸着させた。マグネチックスタンドでサンプル吸着ビーズを回収し、1×Binding bufferで3回洗浄作業を行った。1×HindIII bufferでさらにもう一度洗浄した。反応溶液(1×HindIII Buffer、制限酵素40unit、及び以下の各種各濃度の添加試薬)について、加えない系(SDW)、各種各濃度の添加試薬を加える系の合計23種類を調製した。それぞれの反応溶液を洗浄済みのビーズに加えて混合し37℃で3時間反応させた。マグネチックスタンドでビーズを回収し、制限酵素で切断して遊離した各サイズのDNAを含む上清についてエタノール沈殿を行い、得られたDNA断片の沈殿を1×TE(pH7.5)で溶解してBioanalyzer DNA1000 assay(Agilent technologies)にて解析を行った。
上記11に記載の454シークエンスシステムにおいて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加して増幅反応を行い、シークエンス量にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果を、図18及び図19に示す。
上記10と同様にして、SOLEXAシークエンスシステムについて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加して増幅を行い、無添加の場合と結果を比較した。今回使用したサンプルは、上記10と異なるCAGE法(cDNAの5' 末端の27bpのみを切断して得るもの)によって作製した27bpのDNA断片である。このシークエンスシステムによって得られた結果を図20及び図21に示した。
(1)方法
Genome Analyzer system(GAI)の酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.15M,0.3M,0.51Mの三種類で実験を行った。比較項目は、サイクルごとに算出される蛍光強度をクラスター数で割った平均値を元に、その減少割合を用いた。
D(+)トレハロースはD(+)-Trehalose(90208 BioChemika, ≧99.5% (HPLC) (Fluka)を使用した。Genome Analyzer(illumina社)のシーケンスには36-cycle Illumina Sequencing Kit (FC-204-2036)を使用した。今回使用したサンプルはPhiX コントロール(CT-901-1001)である。
36-Cycle SBS Reagent Kit v2(illumina catalog # FC-204-2036)に含まれるSBS Kit, Box 2のIMX36(42ml)を融解後、D(+)-Trehaloseを表3の分量で加えた。
図22は、各runのPhiXコントロールの平均値を計算して作成したものである。図22が示す通り、トレハロース(-)、トレハロース(+)のシーケンスにおける蛍光強度減少率はトレハロース(+)の条件下で全体的に優位な差を示し、蛍光強度が一番低い35cycle目で比較しても約20%以上の差があった。Trehalose(-)のエラーバーはばらつき度合いを示すためにMaxとMinの値を示している。図23には、PhiXコントロールのマッピング率(mapping rate)を示してあり、こちらも全体的にトレハロース(-)よりも優位な差が見られた。
(1)方法
SOLiD system 2.0のライゲーション酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.3Mで実験を行った。比較項目は、サイクルごとに出るノイズとシグナル比(N2S)を用いた。N2Sとは2番目に明るい蛍光強度を最も明るい蛍光強度で割ったものである。
D(+)トレハロースは、D(+)−トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を使用した。SOLiD system(Applied Biosystems)のシーケンスにはSOLiD(登録商標)フラグメント ライブラリ シーケンシング キット v2(4400466)を使用した。今回使用したサンプルはSOLiD(登録商標)DH10B フラグメント ライブラリ コントロール キット(4391889)である。
SOLiD(登録商標)フラグメント ライブラリ シーケンシング キット v2(4400466)に含まれる試薬で作製するProbe Mix A及びB、Bridge Probeに1.7Mに調整したD(+)-Trehalose(90208 BioChemika, ≧99.5% (HPLC) (Fluka)を1シーケンスプライマーあたり下記の分量加えた。
上記11に記載の454シークエンスシステムにおいて、反応溶液に最終濃度0.3Mトレハロースを添加してシークエンス反応を行い、シークエンス量にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果を、図25に示す。
(1)方法
Genome Sequencer FLX systemシーケンス酵素反応液にD(+)トレハロースを添加し、その効果を測定した。D(+)トレハロースは終濃度0.15M,0.3Mの二種類で実験を行った。比較項目は、読み取り長の長さと解読可能サンプルの割合を用いた。
D(+)トレハロースは、D(+)-トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を使用した。 Genome Sequencer FLX systemのシーケンスにはGS LR 25 Sequencing Kit(502906)を使用した。今回使用したサンプルは自家調整したPolyA minus full length cDNA libraryとmanufacture's protocolどおりに作製したHuman genomeを用いた。
GS LR 25 Sequencing Kit (502906)に含まれる試薬のBuffer CBにD(+)-トレハロースニ水和物(201-02253 試薬特級)(Wako)を下記の分量加えた。
Claims (16)
- 糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、担体に固定化された標的物質に対する酵素の反応性を高める方法。
- 糖類、アミノ酸、多価アルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質を存在させることにより、標的物質を固定化させた担体による前記標的物質に対する酵素の反応性を阻害する効果を緩和又は抑制する方法。
- 前記糖類が、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース、キトビオース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトール及びアラビトールからなる群から選ばれる糖である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記アミノ酸又はその誘導体が、Ne−アセチル−β−リジン、アラニン、γ−アミノブチル酸、ベタイン、グリシンベタイン、Na−カルバモイル−L−グルタミン−1−アミド、コリン、ジメチルテチン、エコトイン、グルタメート、β−グルタミン、グリシン、オクトパイン、プロリン、サルコシン、タウリン及びトリメチルアミンN−オキシドからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記標的物質が核酸である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記核酸が一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNAである請求項5に記載の方法。
- 前記核酸がDNAとRNAとがハイブリダイズした核酸である請求項5に記載の方法。
- 前記酵素が、転移酵素、加水分解酵素及び合成酵素からなる群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酵素が、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNase及びDNAリガーゼである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記酵素が制限酵素である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記担体がビーズ状担体又はプレート状担体である請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ビーズ状担体がストレプトアビジンビーズである請求項12に記載の方法。
- 前記プレート状担体がストレプトアビジンプレート又はDNAマイクロアレイ用プレートである請求項12に記載の方法。
- 前記方法が担体上でのcDNAライブラリー作製、シークエンス反応若しくはDNA合成反応又はGSC法に用いられる方法である請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記DNA合成反応がエマルジョンPCR又はブリッジPCRである、請求項15に記載の方法。
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