【発明の詳細な説明】
アミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランを使用する
RTVシリコーン組成物
発明の背景
本発明は、室温で硬化してエラストマー生成物となる一成分系シリコーン組成
物に関する。より詳細には、本発明は、硬化中に向上した亀裂抵抗性を達成する
だけでなく貯蔵期間中に向上した硬化安定性を達成する接着促進剤としてのアミ
ノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランを含有する室温加硫可能な(R
TV)シリコーンゴム組成物に関する。
米国特許第3,189,576号は、一成分系室温硬化コーティングおよびコ
ーキング用の有用な中間体としてある種のオキシムシランを記載している。この
開示されている部類のオルガノシリコンはメチルエチルケトキシムを含むオキシ
ム置換基から成る。しかし、アミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシラ
ンは開示されていない。米国特許第4,705,877号は、カップリング剤と
して、アミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランを記載しているが、
室温加硫可能なシリコーンゴム組成物における接着促進剤としての使用は示唆し
ていない。今日まで発行されている多くの他の特許は、架橋剤としてのオキシム
シランの有用性およびRTVコーキング材料とオキシムシランとの配合法を記載
している。また、ケトキシミノシラン架橋一成分系RTVの接着促進剤として有
機官能性シランを使用することも当該技術分野では公知である。米国特許第4,
720,530号は、架橋剤としてケトキシミノシランを用い、接着促進剤とし
てアミノアルキルアルコキシシランを用いる一成分系シリコーンRTVを教示し
ている。しかし、当該技術分野では、一成分系室温加硫シリコーンシーラントに
おける接着促進剤としてのアミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシラン
の使用または利点は公知ではない。本発明は、ケトキシミノシランまたはアルコ
キシケトキシミノシランをも架橋剤として使用する一成分系室温加硫シリコーン
シーラントにおけるアミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランの接着
促進剤としての利点を見出した。
発明の説明
本発明は、水分の存在下で硬化してエラストマーになることができる貯蔵安定
性のあるシリコーン組成物であって、
(A) 架橋すると硬化してエラストマーになることができるシリコーン組成
物を生成させるのに十分な量の、シラノールを末端基とする少なくとも1種のジ
オルガノシロキサンポリマー;ならびに
(B) 水分の存在下で該ジオルガノシロキサンポリマーを架橋させるのに十
分な量の場合により存在してもよい少なくとも1種のシラン架橋剤;
(C) 該シリコーン組成物を増粘させるのに十分な量の場合により存在して
もよい少なくとも1種の充填剤;および
(D) 支持体に対する該組成物の接着を高めるのに十分な量の、アミノヒド
ロカルビルで置換した少なくとも1種のケトキシミノシラン接着促進剤
を含む組成物を提供する。
本発明は、また、まず成分AおよびDの混合物をつくり、次ぎにその混合物に
成分BおよびCを加えることによるそのような貯蔵安定性のあるシリコーン組成
物の製造法を提供する。本発明は、さらに、まず成分A,BおよびCの混合物を
つくり、次いで前記混合物に成分Dを加えることによるそのような貯蔵安定性の
ある組成物の製造法を提供する。
本発明の組成物は、水分から防護されると室温下で安定であるが、水分にさら
されると硬化する。該組成物は、少なくとも4成分、つまり(A)少なくとも1
種のヒドロキシルで末端封鎖したポリオルガノシロキサンポリマー、(B)三官
能または四官能性ケトキシミノシラン架橋剤またはそのブレンド、(C)補強性
または非補強性充填剤、および(D)アミノヒドロカルビルで置換したケトキシ
ミノシラン接着促進剤を含有する。場合により、(E)触媒、(F)可塑剤、お
よび(G)種々の他の添加剤が含まれる。
本組成物は、(A)基礎成分として、粘度が25℃において、概して100か
ら500,000センチポアズ、好ましくは約100から350,000センチ
ポアズ、もっとも好ましくは約2,000から150,000センチポアズであ
ることができる、シラノールを末端基とするジオルガノシロキサンポリマーを含
有する。好ましい1つのポリマーは式
(式中、nはこのポリマーの粘度が100から500,000センチポアズまで
変わるように変動する)を有する。これらオルガノR1およびR2は独立して一価
の炭化水素基または一価のハロゲン化炭素基である。これらオルガノ基はメチル
、エチル、フェニル、ビニルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルであるの
が好ましい。このポリジオルガノシロキサンは、さらに、モノオルガノシルセス
キオサン単位、トリオルガノシロキシ単位、およびSiO2単位を有することが
できる。ヒドロキシルならびにトリオルガノシロキシの両方で末端封鎖したポリ
ジオルガノシロキサンは当該技術分野では公知であり、参照により本明細書中に
組み入れられる米国特許第3,274,145号に記載されている。ポリマー(
A)は混合物の平均粘度が上述の範囲内にありさえすれば、上記ポリオルガノシ
ロキサンの2種以上の混合物であることもできる。本発明に用いられるポリマー
(A)の量は全組成物の約15から約90重量%におよぶが、好ましくは約30
から約70重量%におよぶ。本発明に有用なポリマーはミシガン州、AdrianのWa
cker Silicones、ペンシルベニア州、ピッツバークのMiles およびイリノイ州、
Guerney Gurnee の PPG のような供給業者から市販されている。
架橋剤(B)は式:R4-nSi(OR’)p(ON=CR”R''')n-pを有する
のが好ましい。この式において、RおよびR’はそれぞれ独立して、炭素原子が
1から8個の飽和の直鎖状または分枝鎖状アルキル基であることができ、nは0
ないし4、pは0ないし3、ただし、nとpの合計は少なくとも3であり、かつ
、R”およびR'''はそれぞれ独立して、炭素原子が1から8個の飽和の直鎖状
または分枝鎖状アルキル基であることができる。架橋剤は加水分解基として3又
は4個のケトキシミノ基を有することが概して好ましいけれども、本発明で
はアルコキシ−ケトキシミノシランも含まれる。上記アルコキシ−ケトオキシム
の式中にアルコキシ基が存在する場合は、それは通常は混合物として存在する。
すなわち、四官能性シランについては、テトラケトキシミノシラン、トリケトキ
シミノ−モノアルコキシシラン、ジケトキシミノ−ジアルコキシシラン、および
トリアルコキシ−モノケトキシムシランの混合物であることができる。同様に、
三官能性シランは、トリケトキシミノシラン、ジケトキシミノ−モノアルコキシ
シラン、およびモノケトキシム−ジアルコキシシラン等の混合物として存在する
ことができる。このようなケトキシミノシランおよびアルコキシ−ケトキシミノ
シランの製造法は、米国特許第4,380,660号および同第4,400,5
27号により当該技術分野で公知である。また、1992年9月17日に出願さ
れた米国特許出願第947,015号、1993年11月1日に出願された同第
143,777号および1993年11月29日に出願された同第158,66
0号に記載されているシランも本明細書における架橋剤として有用である。これ
らの特許及び出願ならびに米国特許第3,189,576号は参照により本明細
書中に組み入れられるものとする。ケトキシムの非限定例は、メチルエチルケト
キシム、ジエチルケトンオキシム、アセトンオキシム、メチルイソブチルケトキ
シム、メチルアミルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等である。本発明に
おいてもっとも好ましいオキシムはメチルエチルケトキシムである。好ましい架
橋剤はメチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランおよびビニルトリス(
メチルエチルケトキシミノ)シランである。本発明に有用な架橋剤は、ニュージ
ャージー州、Morrinstown にある Allied-Signal,Inc.から市販されている。架
橋剤(B)は全組成物中約2から約20重量%の量で存在することができるが、
約3から約7重量%が好ましく、約3から約6重量%が最も好ましい。本発明で
は単一の架橋剤(B)を使用するのが好ましいけれども、架橋剤の混合物を使用
する組成物を提供することも本発明の範囲内にある。これらには、メチルトリス
(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケ
トキシノミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テト
ラキス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルアミルケ
トキシミノ)シランが含まれるが、これらに限定されない。また、下記のものを
モジュラス改良剤として本組成物中に存在させることもできる:ジメチルビス(
メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルビニルビス(メチルエチルケトキシ
ミノ)シラン、メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシミノ)シラン、お
よびメチルビニルビス(メチルアミルケトキシミノ)シラン。米国特許第4,6
57,967号および同第4,973,623号に開示されている四官能性アル
コキシ−ケトキシムシランも架橋剤として使用することができ、両特許は参照に
より本明細書中に組み入れられるものとする。架橋剤(B)は、速硬性組成物を
得るためには、接着促進剤(D)を添加した後に本組成物に加えるのが好ましい
。架橋剤は、ポリマーと可塑剤との混合物の後に添加することもできるが、組成
物の硬化中にそれを(D)よりも前に加えるならば、ゆっくりしたゴム化時間と
なるであろう。
本発明の組成物は、補強性シリカ充填剤、半補強性充填剤、非補強性充填剤ま
たはこれらの混合物であることができる充填剤(C)も含有する。補強性シリカ
充填剤の例は、米国特許第3,837,878号、同第2,938,009号、
同第3,004,859号、および同第3,635,743号に記載されており
、いずれも参照により本明細書中に組み入れられるものとする。使用される補強
性ヒュームドシリカの量は、全組成物の0から約20重量%、好ましくは約0か
ら約14重量%、もっとも好ましくは2から8重量%にわたる。補強性ヒューム
ドシリカは硬化した組成物に高い引張強度を付与するだけでなく、未硬化の組成
物にチキソトロピック性をもたらす。非補強性または半補強性充填剤を使用する
こともできる。これらには、重質または沈降炭酸カルシウム、石英粉末、シリカ
エーロゲル、けいそう土、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、けい酸ジル
コニウム、焼成クレー、酸化マグネシウム、タルク、ウォラストナイト、水和ア
ルミナ、およびカーボンブラックが含まれる。これら充填剤は、全組成物の0か
ら約70重量%の量を使用することができる。組成物中の全ての充填剤の総量は
、全組成物中の少なくとも約3から約70重量%、好ましくは約6から約55重
量%におよぶ。充填剤は、通常、架橋剤とポリマーとを混合した後に添加され、
そしてそのように無水条件下で包含される。補強性充填剤は、オハイオ州、Dubl
inのDegussa、およびイリノイ州、Tuscola の Cabot Corp.から市販されている
。
非補強性充填剤は、ジョージア州、Atlanta の Georgia Marble、ペンシルベニ
ア州、Easton の Pfizer およびバーモント州、Proctor の Omya から市販され
ている。
本組成物は、式(R3R4C=NO)xR5 (3-x)SiR6NHR7(式中、R3およ
びR4は同一かまたは異なる一価の直鎖または分枝鎖状炭化水素基で、炭素原子
を好ましくは1から20個、より好ましくは1から6個含有する)によって表さ
れる、アミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランである接着促進剤(
D)も含有する。1つの好ましい態様では、R3およびR4は一緒になってシクロ
アルキル基を形成する。別の好ましい態様では、R3およびR4はそれぞれメチル
およびエチルである。R5は一価の炭化水素基、一価のフッ素化炭化水素基、ま
たは炭素原子が1から4個のアルコキシ基であるが、ただし2個以上のR5置換
基が存在する場合には、これら置換基は同一であっても異なっていてもよい。R6
は炭素原子が2から20個の二価の炭化水素基、R7は一価の炭化水素基または
水素原子、そしてxは1、2または3の整数である。この接着促進剤(D)は、
参照により本明細書中に組み入れられるものとする米国特許第4,705,87
7号に示されているような当該技術分野で公知のあらゆる方法によって作ること
ができる。接着促進剤の量は、全組成物の約0.5から約5重量%、好ましくは
0.5から1.5重量%にわたることができる。典型的には、(D)はアミノアル
キルアルコキシ−ケトキシミノシランの混合物として存在する。例えば、γ−ア
ミノプロピルジケトキシミノ−モノアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリ
ケトキシミノシラン、およびγ−アミノプロピルジアルコキシモノケトキシムシ
ランは混合接着促進剤(D)中に共に存在するであろう。γ−アミノプロピルジ
ケトキシミノモノアルコキシシランはかかる混合物中に最高濃度で存在するのが
好ましいであろう。接着促進剤(D)の総量中に、x=1の部分は、約2から約
45重量%、好ましくは約3から約42重量%、もっとも好ましくは約5から約
20重量%の量で存在することが出来る。x=2の部分は、約20から約90重
量%、好ましくは約21から約88重量%、もっとも好ましくは約50から約7
0重量%の量で存在することができる。x=3の部分は、約0から約50重量%
、好ましくは約1から約46重量%、もっとも好ましくは約1から約
10重量%の量で存在することができる。x=0の部分は、約0から約1重量%
の量で存在することができる。好ましい態様では、このシラン上の相互の非オキ
シム置換基はC1ないしC4アルコキシ基であり、もっとも好ましくはメトキシ
またはエトキシである。(D)をどのように使用し、本発明の組成物にどのよう
に加えるかもまた重要である。混合順序および添加量は得られるシーラントの硬
化にとって重要である。接着促進剤(D)をポリマーと可塑剤との混合物(また
は可塑剤がない場合)に添加しかつ(D)を架橋剤(B)よりも先に加えると、
より速硬性のシーラントが得られる。これは(D)が全組成物に対して約1重量
%かそれに近いレベルで生じる。1%未満では速硬性シーラントが得られないか
もしれない。1%を上回るとさらに速硬性のシーラントを得ることもできよう。
接着促進剤として従来技術のアミノアルキルアルコキシシランを使用する同一の
組成物と比較してより速い硬化性を得ることができる。なお、この硬化性はゴム
化時間によって定義される。
本組成物は、さらにポリマー(A)と架橋剤(B)との反応を促進させる任意
成分の触媒(E)を含有することができる。成分(E)の例には、非限定的に、
ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクト
エート、ジブチルスズマレエート、ジアルキルスズヘキソエート類、ジオクチル
スズジラウレートのような有機スズカルボキシレート類、オクタン酸鉄、オクタ
ン酸亜鉛、オクタン酸鉛、ナフテン酸コバルト等が含まれる。触媒の使用量は、
全組成物の0から約2重量%、好ましくは約0.01から約2重量%、もっとも
好ましくは約0.02から約0.1重量%にわたることができる。本発明に有用な
触媒は、ペンシルベニア州、Philadelphia の Elf Atochem およびテキサス州、
Houston の Witco Chemical Company から市販されている。
本組成物は、押出性を改善し、そして硬化組成物のモジュラスを変えるために
、場合により可塑剤(F)を含むこともできる。このものは、有機基が一価の炭
化水素基、好ましくは炭素原子が1ないし8個のアルキル基である場合には、2
5℃において10から100,000センチポアズにわたる粘度を有する、トリ
オルガノシリルで末端封鎖したジオルガノポリシロキサンであることができる。
これら有機基は、アルケニル基、単核基、シクロアルキル基、およびハロアルキ
ル
基を含む一価の炭化水素基であってもよい。この可塑剤は、全組成物の重量を基
準として0から40%、好ましくは約10から約30%の量で添加される。可塑
剤の好ましい粘度は、25℃において約100から約1000センチポアズにわ
たる。一般に、可塑剤は、本組成物中に用いる場合には、接着促進剤(D)およ
び架橋剤(B)を添加する前に、ポリマー(A)に加えるのが好ましい。ポリマ
ー(A)および接着促進剤(D)を加えた後に、可塑剤を添加することもできる
。本発明に有用な可塑剤は、ミシガン州、Adrian の Wacker Silicones、ペンシ
ルベニア州 Pittsburghの Miles およびイリノイ州、Gurnee の PPG のような供
給業者から市販されている。
本組成物を特定の所望の用途に合わせるために、酸化防止剤、チキソトロビッ
ク剤、殺菌剤、殺カビ剤、紫外線吸収剤、耐熱性改良剤、難燃剤、熱及び電気伝
導性充填剤、熱安定剤、着色剤等の他の任意の添加剤(G)を添加することがで
きる。これらは、通常、混合操作のどの段階で加えてもよい。これらは全組成物
を基準として約0から約10重量%にわたる量を存在させることができる。
使用時に包装を破ると、本組成物は大気中の水分に曝されて硬化し、シリコー
ンエラストマーとなる。配合されると本組成物は、硬化中の動きに対してすぐれ
た亀裂抵抗性を有する一成分系シーラントとなる。硬化プロフィール(スキンオ
ーバータイム、不粘着時間、およびゴム化時間で規定される)並びに亀裂抵抗性
は、架橋剤、充填剤、接着促進剤および触媒の選択によって調節することができ
る。スキンオーバータイムは、シーラント組成物でできたフィルムの外表面上に
周囲の水分によって薄皮ができるのに要する時間である。ゴム化時間は、シーラ
ント組成物の表面上に耐ニック性層が周囲の水分によって事実上出来るのに要す
る時間である。この発明のために良好な亀裂抵抗性を有すると思われる組成物に
ついては、スキンオーバータイムとゴム化時間との差は30分未満であるべきで
ある。本発明の亀裂抵抗性とは、硬化中に組成物のビーズが動いて形成される亀
裂に対する抵抗性を意味する。
先行技術のオキシム架橋シーラントの硬化プロフィールは経時的に劣化するこ
とが多い。すなわち、かかる組成物の不粘着時間およびゴム化時間は、つくった
ばかりのシーラントについての値と比べると、貯蔵期間中に劇的に長くなる。こ
れが起こると、硬化中に動くこの組成物の亀裂抵抗性は低下する傾向がある。ア
ミノヒドロカルビルで置換したケトキシミノシランを使用する本発明の組成物は
、長期の貯蔵期間中、不粘着時間、スキンオーバータイムおよびゴム化時間に対
して著しくすぐれた安定性を有する。長期貯蔵後でさえも亀裂抵抗性のある速く
かつ安定した硬化プロフィールを有する組成物が得られる。アミノアルキルアル
コキシシラン系接着促進剤を使用する先行技術のRTV組成物は、その組成物を
配合したばかりの時にはゴム化時間が30分未満の組成物を生成する。しかし、
貯蔵時間が2週間以内に、その組成物はしばしばまたは典型的には2倍ないし3
倍のゴム化時間を示す。本発明の組成物では、ゴム化時間は時間が経っても依然
として安定である。すなわち、ゴム化時間は、数カ月の貯蔵期間後も実質的には
同じままである。
生成するシーラントにおいて得られる硬化プロフィールに対して、諸成分の添
加順序が重要である。もっとも好ましい態様では、まずポリマー(A)と接着促
進剤(D)との混合物を作る。次に架橋剤(B)および充填剤(C)を相前後し
て、または同時に添加する。
あまり好ましくない態様では、まず、ポリマー(A)を架橋剤(B)および充
填剤(C)と混合する。この際、それらを相前後してまたは同時に添加する。そ
の後に加える接着促進剤(D)をこの混合物に添加する。(D)を架橋剤および
充填剤の後で加えると、ゴム化時間が非常に長くなる。このようにして調製した
組成物は、硬化中の動きに対する亀裂抵抗性は低いが、異常に大きい伸びと低モ
ジュラスを示す傾向があるので、ある場合には有利である。
次ぎの非限定な実施例は本発明を説明するのに役立つ。実施例中の部はすべて
重量基準である。
実施例1
シラノールを末端基とする25℃の粘度が50,000センチポアズのポリジ
メチルシロキサン(65.9部)を、トリオルガノシリルで末端封鎖した25℃
の粘度が1000センチポアズのジオルガノポリシロキサン(20部)およびア
ミノヒドロカルビルで置換した1部の下記ケトキシミノシラン混合物(以下、接
着促進剤Aという)と充分に混合する。
7% メチルエチルケトキシム
12% γ−アミノプロピルジメトキシ(メチルエチルケトキシミノ)シラン
72% γ−アミノプロピルビス(メチルエチルケトキシミノ)メトキシシラン
3% γ−アミノプロピルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
5.5% ダイマーおよび高沸点物
0.5% γ−アミノプロピルトリメトキシシラン。
諸成分は、真空ポートを備えた Ross ダブル遊星形ミキサー内で混合する。こ
の組成物を真空下10分間混合する。ついで、上記組成物に5部のメチルトリス
(メチルエチルケトキシミノ)シランを加え、真空下15分間混合する。次ぎに
未処理のヒュームドシリカ(130m2/gm)(8部)をこの組成物に添加する
。ヒュームドシリカは、充填物がこの組成物の液状部分により濡れるまで非真空
下で混合する。ついで、真空中で10分間このヒュームドシリカを混合する。最
後に、この組成物に0.1部のジブチルスズジラウレートを加え、真空下で10
分間混合する。これを組成物#1と呼ぶ。
組成物#2は、接着促進剤Aの添加順序を変える以外は組成物#1と同様に調
製する。成分の種類および各成分の量は組成物#1と同じである。接着促進剤A
はヒュームドシリカの添加後に加える。すなわち、メチルトリス(メチルエチル
ケトキシミノ)シランをポリマーおよび可塑剤と一緒に加え、真空下で15分間
混合する。ヒュームドシリカを組成物#1と同様に加えた後に接着促進剤Aを添
加する。ついで、最後にジブチルスズジラウレートを加えて真空下で10分間混
合する。
組成物#3は、接着促進剤Aの代わりにγ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ンを用いる以外は、組成物#1と同様に調製する。
組成物#4は、接着促進剤Aの代わりにγ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ンを使用する以外は、組成物#2と同様に調製する。
調製したばかりの組成物をポリエチレンシート上に約2mmの厚さに垂らして、
通常の実験室雰囲気条件(約50%相対温度および22℃)に1週間曝す。つい
で、シートから切り取ったダンベル形の試験片(DIN 53 504、Die type S2、4m
m×2mm×75mm)および Lloyd L500 引張試験機を用いて、硬化したばかりの
材料の物理的性質を測定する。これらサンプルは西独基準法 DIN 53 504 に従っ
て試験する。Lloyd 非接触赤外伸び計 TTOX10/1000 を使用する。硬度は、プラ
ットホーム(コンベローダー)上においたショアーA押込硬度計を用い、標準の
荷重および速度で測定する。ショアーAの測定値は瞬時に得られる。スキンオー
バータイム(SOT)は、組成物を水分に曝してから、硬化しつつある組成物の表
面に軽く触れた指を上にあげる時に組成物が指に付着しなくなるまでの時間を観
察することによって測定する。不粘着時間(TFT)は、組成物を水分に曝してか
ら、ポリエチレンシート片をその組成物の上に置き、僅かな圧力で引っ張っても
ポリエチレンに組成物が移らなくなるまでに測定される時間である。スクラッチ
時間またはゴム化時間は、曝してから、指をシーラントの小領域に優しく動かし
ても組成物の表面に亀裂が生じない時点までの時間から測定される。表Iは、上
記組成物から作ったばかりのシーラント(作製後24時間以内)および加熱エー
ジングしたチューブの両方から得られた結果を示す。加熱エージングしたシーラ
ントは前記と同じ方法および試験装置を用いて測定する。
組成物#1から明らかにわかるように、架橋剤を添加する前にケトキシムで置
換したアミノアルキル接着促進剤をポリマーに加えるとスクラッチ時間が大幅に
短くなる。これは意外なことである。さらに驚くべきことは、ビニルトリス(メ
チルエチルケトキシミノ)シランまたはテトラ(メチルエチルケトキシミノ)シ
ランのような速硬性架橋剤を用いなくても、急速なスクラッチ/ゴム化時間が得
られるということである。
組成物#3および#4は、接着促進剤としてアルコキシ同等物(γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシラン)を使用する同じ配合を示す。いずれのシーラントも
スクラッチ時間は長くて望ましくない。これら(組成物I−4の)結果は、ケト
キシムで置換したアミノアルキルシランの新規性(並びに添加方法の重要性)を
明示するものである。
実施例2
実施例1に記載した方法と同じ混合方法を用いて一連の組成物を調製する。
組成物#5:シラノールを末端基とする25℃の粘度が50,000センチポ
アズのポリジメチルシロキサン(65.95部)をトリオルガノシリルで末端封
鎖した25℃の粘度が1000センチポアズのジオルガノポリシロキサン(20
部)および接着促進剤B(1部)と組成物#1におけるのと同様に充分に混合す
る。3成分全てを真空下で10分間混合する。接着促進剤Bは下記の組成を有す
る。
50−55% γ−アミノプロピルビス(メチルエチルケトキシミノ)メトキシ
シラン
30−35% γ−アミノプロピルジメトキシ(メチルエチルケトキシミノ)シ
ラン
1−5% メチルエチルケトキシム
3% テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
該組成物にビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(5部)を加え
て真空下で10分間混合する。次ぎに、組成物#1に記載したのと同様なやり方
でヒュームドシリカ(130m2/gm)(8部)を加える。最後に組成物#1と
同様なやり方でジブチルスズジラウレート(0.05部)を添加する。
組成物#6:この材料は、接着促進剤Bの代わりにγ−アミノプロピルトリメ
トキシシランを用いる以外は組成物#5と同様に調製する。
組成物#7:この材料は、架橋剤としてフェニルトリス(メチルエチルケトキ
シミノ)シランを使用し、さらに25部の可塑剤および60.95部のポリマー
を用いる以外は組成物#5と同様に調製する。最後にジブチルスズジラウレート
(0.05部)を添加する。
組成物#8:この材料は、接着促進剤Bの代わりにγ−アミノプロピルトリメ
トキシシランを使用する以外は組成物#7と同様に調製する。
組成物#9:この材料は、架橋剤としてテトラキス(メチルエチルケトキシミ
ノ)シラン(トルエン中シラン45%)1部とメチルトリス(メチルエチルケト
キシミノ)シラン4.5部との混合物を用いる以外は組成物#7と同様に調製す
る。
組成物10:この材料は、接着促進剤Bの代わりにγ−アミノプロピルトリメ
トキシシランを使用する以外は組成物#9と同様に調製する。
実施例1に記載した通りに調製したばかりのシートを硬化させる。表IIに示す
結果は、実施例1に記載した方法と同じ方法で測定したものである。
組成物#5ないし#10は、硬化時間の安定性を示し、それは、ビニルトリス
(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ
)シランまたはフェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランを含有する
組成物にケトキシムで置換したアミノアルキルシランを添加するときに達成する
ことができる。
ケトキシムで置換したアミノアルキルシランを含有する各組成物では、アミノ
アルキルアルコキシシランを含有する同じ組成物よりもスクラッチ時間がずっと
短い(オーブンエージング後)。また、接着促進剤Bを含有する組成物について
は、オーブンエージング後、スキンオーバータイムとスクラッチ時間との差が3
0分未満である。これは、ケトキシムで置換したアミノアルキルシランを使用し
かつ正しい添加順序で使用すると、長期にわたり亀裂抵抗性が維持されるという
望ましい特徴を証明するものである。
実施例3
実施例1に記載した方法と同じ混合方法を用いて一連の組成物を調製する。
組成物#11:トリオルガノシロキシ基で少なくとも80%の末端を封鎖した
25℃の粘度が14,000センチポアズのポリジオルガノシロキサン(85.
9部)を接着促進剤A(1部)と、組成物#1の場合と同様に真空下で10分間
充分に混合する。
この組成物にメチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(5部)を加
え真空下で10分間混合する。次ぎに、組成物#1において記載したのと同様な
やり方でヒュームトシリカ(130m2/gm)(8部)を添加する。最後に、組
成物#1と同様なやり方でジブチルスズジラウレート(0.10部)を加える。
組成物#12:この材料は、接着促進剤Aの代わりにγ−アミノプロピルトリ
メトキシシランを使用する以外は組成物#11と同じく調製する。
組成物#13:この組成物は、接着促進剤Aについての添加順序を変えた以外
は組成物#11と同様に調製する。(諸成分の種類および各成分の量は組成物#
1と同じである)。接着促進剤Aは、ヒュームドシリカの添加後に加える。すな
わち、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランをポリマーに添加して
、真空下で10分間混合する。組成物#11におけるのと同様にヒュームドシリ
カを加えた後に接着促進剤Aを添加する。ついで、最後にジブチルスズラウレー
トを加えて真空下で10分間混合する(0.1部)。
組成物#14:この材料は、ポリマー(43.95部)および可塑剤(13部
)を真空下で10分間接着促進剤B(1部)と混合する以外は組成物#1と同様
に調製する。次ぎに、この混合物にメチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)
シラン(4部)を加え、真空下で10分間混合する。次いで平均粒度が約3ミク
ロンのステアレート処理したCaCO3充填剤(35部)をこの混合物に加えて真空
下で5分間混合する。ついで、組成物#1で用いたヒュームドシリカ(3部)を
加えて組成物#1におけると同様に10分間混合する。最後に、組成物#1にお
けるようにジブチルスズジラウレート(0.05部)を添加して混合する。
組成物#15:この材料は、接着促進剤Bの代わりにγ−アミノプロピルトリ
メトキシシランを使用する以外は組成物#14と同様に調製する。
組成物#16:この材料は、ポリマー(65.9部)および可塑剤(20部)
を接着促進剤C(1部)と真空下で10分間混合する以外は組成物#1と同様に
調製する。メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン(4部)を下記の
アルコキシオキシムシラン組成物1部と予備混合し、ポリマー、可塑剤および接
着促進剤Cの先の混合物と真空下で10分間混合する。次ぎに、組成物#1にお
ける通りにヒュームドシリカ(8部)を添加する。ついで、最後に組成物#1に
おける通りにジブチルスズジラウレート(0.1部)を加えて混合する。
0.4% メチルエチルケトキシム
7.4% テトラエトキシシラン
29.8% トリエトキシモノ(メチルエチルケトキシミノ)シラン
51.8% ジエトキシビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
5.4% エトキシトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
5.2% 高沸点物。
接着促進剤Cは次の組成を有する:
6.3% メチルエチルケトキシム
38.69% γ−アミノプロピルジエトキシ(メチルエチルケトキシミノ)シラ
ン
42.43% γ−アミノプロピルジ(メチルエチルケトキシミノ)エトキシシラ
ン
3.84% テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
2.3% ダイマーおよび高沸点物
6.44% γ−アミノプロピルトリエトキシシラン。
組成物#17:この材料は、接着促進剤Cの代わりにγ−アミノプロピルトリ
エトキシシランを用いる以外は組成物#16と同様に調製する。
調製したばかりのシートを実施例1に記載した通りに硬化させる。表IIIに示
す結果は、実施例1に記載した方法と同じ方法により測定したものである。
表IIIのデータから、ケトキシミノで置換したアミノアルキルアルコキシシラ
ンを使用する効果は、ヒドロキシルとトリオルガノシロキシの両方で末端封鎖さ
れたシリコーンポリマーについての効果と同じであることが(組成物#11、#
12および#13で)わかる。組成物#14は、四官能性またはビニル官能性架
橋剤を用いなくとも、どれほど急速かつ望ましい硬化プロフィールを得ることが
できるかを示している。組成物#16は、本発明のアミノシランが、オキシムな
らびにアルコキシの両方の加水分解基を含有する架橋とともにどれほど効果的に
使用し得るかを示している。
実施例4
組成物#18:この材料は、接着促進剤Bの代わりに接着促進剤Cを使用し、
かつ触媒(ジブチルスズジラウレート)を用いない以外は組成物#5と同様に調
製する。この組成物では、組成物#5で用いた65.95部の代わりに66部の
ポリマーを使用する以外の他の重量および成分はすべて同一である。
組成物#19:この材料は、接着促進剤Cを組成物に最後に添加する以外は組
成物#18と同様に調製する。すなわち、ビニルトリス(メチルエチルケトキシ
ミノ)シランを可塑剤およびポリマーとともに加えて真空下で10分間混合する
。ヒュームドシリカを添加して真空下で混合した後、接着促進剤Cを添加して混
合する。
組成物#20:この材料は、接着促進剤Cを直接ポリマーと真空下でまず10
分間混合する以外は組成物#18と同様に調製する。次に、ビニルトリス(メチ
ルエチルケトキシミノ)シランを加えて真空下で10分間混合する。次に可塑剤
を加えて真空下で5分間混合する。最後にヒュームドシリカを添加して真空下で
5分間混合する。重量および成分はすべて組成物#18におけるのと同じである
。
組成物#21:この材料は、接着促進剤Cの代わりにγ−アミノプロピルトリ
エトキシシランを使用する以外は組成物#18と同様に調製する。
組成物#22:この材料は、接着促進剤Cの代わりにγ−アミノプロピルトリ
エトキシシランを使用する以外は組成物#19と同様に調製する。
組成物#23:この材料は、架橋剤メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ
)シランを4.5部の量で添加する以外は組成物#1と同様に調製する。ポリマ
ーは66.4部の量を使用する。
調製したばかりのシートは実施例1に記載した通りに硬化させる。表IVに示し
た結果は、実施例1に記載した方法と同じ方法により測定したものである。
表IVのデータから、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランととも
にケトキシムで置換したアミノアルキルエトキシシランを使用すると、スズ触媒
がなくても、急速かつ安定なスクラッチ時間が達成できることがわかる。組成物
#20は、可塑剤をそれほど異なる添加順序で添加しうるか、および硬化安定性
にどれほど悪影響を与えないかということを示している。組成物#23は、少な
い量の架橋剤がどれほどスクラッチ時間を改善しうるかを示している。
【手続補正書】
【提出日】1996年11月25日
【補正内容】
請求の範囲
1.水分の存在下で硬化してエラストマーになることができる貯蔵安定性のあ
るシリコーン組成物であって、
(A) 架橋すると硬化してエラストマーになることができるシリコーン組成
物を生成させるのに十分な量の、シラノールを末端基とする少なくとも1種のジ
オルガノシロキサンポリマー;ならびに
(B) 水分の存在下で該ジオルガノシロキサンポリマーを架橋させるのに十
分な量の場合により存在してもよい少なくとも1種のシラン架橋剤;
(C) 該シリコーン組成物を増粘させるのに十分な量の場合により存在して
もよい少なくとも1種の充填剤;および
(D) 支持体に対する該組成物の接着を高めるのに十分な量の、アミノヒド
ロカルビルで置換した少なくとも1種のケトキシミノシラン接着促進剤
を含む組成物。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,
MG,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,RO,R
U,SD,SG,SI,SK,TJ,TT,UA,UZ
,VN
(72)発明者 アサーバタム,エトワード・タナライ
アメリカ合衆国ニュージャージー州07928,
チャタム,エラーズ・ドライブ 44