JPH07237961A - 耐摩耗性アルミナ焼結体及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性アルミナ焼結体及びその製造方法

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JPH07237961A
JPH07237961A JP6030298A JP3029894A JPH07237961A JP H07237961 A JPH07237961 A JP H07237961A JP 6030298 A JP6030298 A JP 6030298A JP 3029894 A JP3029894 A JP 3029894A JP H07237961 A JPH07237961 A JP H07237961A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】平均平均結晶粒子径1μm以下で、且つ比表面
積5m2 /g以上の易焼結性アルミナ粉末90〜95重
量%に対し、SiO2 3.0〜5.0重量%、MgO
1.0〜1.5重量%、B2 3 0.5〜3.5重量%
の範囲でそれぞれ添加して粉砕・造粒・成形を行ったあ
と、焼成温度1400〜1500℃の酸化雰囲気中で焼
成して、焼結体中のアルミナ平均結晶粒子径が2〜5μ
mで、且つロックウェル硬度が89kg/mm2 以上の
アルミナ焼結体を得る。 【効果】比較的低純度のアルミナ焼結体にもかかわら
ず、優れた耐摩耗性が得られ、また、低温焼成が可能で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミナ含有率が90
〜95重量%と比較的低純度のアルミナ焼結体であっ
て、低温焼成が可能で、且つ耐摩耗性に優れるアルミナ
焼結体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、アルミナ焼結体は耐熱性、耐
食性、絶縁性、機械的強度、ならび耐摩耗性に優れた材
質であることから電子部品材料や産機部品材料、あるい
は構造材料など各種工業材料として幅広く利用されてい
る。例えば、産機部品材料として、固体輸送経路におけ
るシュートやダクトなどの内張り材や粉砕機用部材、あ
るいは軸受部材やメカニカルシール、さらには糸道、定
盤、治工具などに使用されている。
【0003】このような用途に使用されるアルミナ焼結
体は、主原料のAl2 3 に対し、添加剤としてCa
O、MgO、SiO2 のうち一種または二種以上を添加
したものが最も多く用いられており、さらにアルミナ焼
結体の耐摩耗性を高めるために、アルカリ金属、アルカ
リ土類金属、遷移金属、あるいは希土類からなる酸化物
等の添加剤を適宜選択して添加したものが提案されてい
る。
【0004】例えば、特開昭56−17980号公報に
は、添加剤としてY2 3 、MgO、CaO、NiOを
添加し、ホットプレスにより焼成した耐摩耗性を有する
アルミナ磁器が開示されている。
【0005】また、特公平4−13313号公報には、
TiO2 、CuO、Fe2 3 、MnO2 、ZrO2
SiO2 等の添加剤を5種類以上添加した耐摩耗性に優
れるアルミナ焼結体が開示されている。
【0006】さらに、特公昭62−6037号公報に
は、添加剤としてMgO、B2 3 を添加したアルミナ
純度98〜99.5%の高純度アルミナ焼結体からなる
抄紙機用支持部材が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特開昭56
−17980号公報に開示されているアルミナ磁器は、
添加剤に高価なY2 3 を添加する必要があり、原料費
が高くついてしまうという問題や、焼成工程ではホット
プレスを用いなければならないことから特殊な焼成装置
が必要となるなどの問題があった。
【0008】また、特公平4−13313号公報に開示
されているアルミナ焼結体は、5種類以上もの添加剤を
添加しなければならず、調合作業が大変であった。
【0009】さらに、特公昭62−6037号公報に開
示されているような高純度のアルミナ焼結体では、主原
料に高純度のアルミナ粉末が必要となるため、非常に高
価なものとなってしまうはかりか、アルミナ純度が高い
ことから完全に焼結させるためには1600℃以上の温
度で焼成しなければならず、その結果、アルミナ粒子の
成長が促進され、満足のいく耐摩耗性を得ることは難し
いものであった。しかも、焼成温度が高いことから、炉
壁材やサヤ等の高温による耐久性の低下や、消費電力が
大きいなどの問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は上記
問題に鑑みて種々実験を繰り返した結果、主原料に易焼
結性アルミナ粉末を用い、添加剤として少なくともSi
2 、MgO、B2 3 の三種類の酸化物をそれぞれ所
定の範囲で添加することにより、比較的低いアルミナ純
度でも、高硬度で耐摩耗性に優れたアルミナ焼結体が得
られることを見出したのである。
【0011】即ち、本発明に係るアルミナ焼結体は、主
原料として平均粒子径1μm以下で、且つ比表面積5m
2 /g以上の易焼結性アルミナ粉末90〜95重量%に
対し、SiO2 、MgO、B2 3 の三種類の添加剤を
SiO2 3.0〜5.0重量%、MgO1.0〜1.5
重量%、B2 3 0.5〜3.5重量%の範囲でそれぞ
れ添加し、粉砕・造粒・成形を行ったあと、焼成温度1
400〜1500℃の酸化雰囲気中で焼成することによ
り、焼結体中のアルミナ平均結晶粒子径2〜5μmで、
且つロックウェル硬度89kg/mm2 以上としたこと
を特徴とする。本発明のアルミナ焼結体を製造するに
は、まず主原料に易焼結性アルミナ粉末を使用すること
が重要である。ここで、易焼結性アルミナ粉末とはアル
ミナ原料を予め仮焼きして高密度にしたアルミナ粉体の
ことである。
【0012】即ち、易焼結性アルミナ粉末は、既に一度
焼成した粉体であるために硬く、また、微小径で均一な
粒度分布をもっている。しかも、焼成時の粒子成長が遅
いものの、低い温度での焼成でも高い焼結性が得られ
る。
【0013】その為、この易焼結性アルミナ粉末を用い
て焼成すれば、低い温度で焼成しても緻密質体とするこ
とができ、高硬度を持ったアルミナ焼結体とすることが
できる。
【0014】また、アルミナ焼結体の耐摩耗性を高める
ためには、焼結体のアルミナ平均粒子径を小さくするこ
とが重要となるが、そのためには、主原料であるアルミ
ナ粒子の粒子径が小さく、且つ均一な粒度分布をもって
いなければならず、特に本発明のアルミナ焼結体を製造
するには、アルミナ粉末の平均粒子径を1μm以下で、
且つ比表面積を5m2 /g以上とする。
【0015】このようにアルミナ粉末の平均粒子径を1
μm以下で、且つ比表面積を5m2/g以上とするの
は、平均粒子径が1μmより大きいと、焼成時のアルミ
ナ粉末の活性度を高めることができず、通常の焼成温度
より低い温度で焼成することが難しくなるとともに、焼
結体のアルミナ粒子径が大きくなり過ぎるため、耐摩耗
性を高めることができないからである。一方、比表面積
が5m2 /g未満であると、アルミナ粒子同士の結合面
積が小さいために結合力が弱く、やはり耐摩耗性を高め
ることができないからである。
【0016】また、本発明に係るアルミナ焼結体は、ア
ルミナ含有率を90〜95重量%と比較的低いアルミナ
含有率とし、添加剤に少なくともSiO2 、MgO、B
2 3 の三種類を添加する。
【0017】ここで、アルミナ含有率を90〜95重量
%とするのは、アルミナ含有率が90重量%未満である
と、アルミナの含有量が少なすぎるために硬度を高める
ことができないからである。なお、アルミナ含有率が9
5重量%より多くなると、アルミナ純度が高くなりすぎ
るために焼成温度を下げることができず、その結果、ア
ルミナ粒子の成長を伴い焼結体の耐摩耗性を高めること
ができないばかりか、高純度アルミナとなってしまい、
本発明の主旨に反する。
【0018】一方、上記添加剤は、アルミナ焼結体の添
加剤として既に公知のものであるが、ある範囲で含有す
れば比較的低純度のアルミナ焼結体であっても高硬度で
耐摩耗性に優れたものとすることができる。
【0019】即ち、各添加剤のちSiO2 を3.0〜
5.0重量%、MgOを1.0〜1.5重量%、及びB
2 3 を0.5〜3.5重量%の範囲でそれぞれ含有す
ることが重要で、いずれか一つでも範囲からはずれてし
まっては所望の硬度を得ることができない。
【0020】特に、上記三種類の添加剤の中でも、B2
3 は焼成時のアルミナ粒子の成長を抑制する作用が大
きく、焼成温度を下げることができる。その為、B2
3 の含有率が0.5重量%未満であると、含有量が少な
過ぎるために充分なアルミナ粒子の成長を抑制する作用
が得られず、耐摩耗性を高めることができないばかり
か、焼成温度を下げることができない。ただし、B2
3 の含有率が3.5重量%より多いと、アルミナ焼結体
の持つ優れた特性の一つである耐食性が低下するため、
2 3 の含有率は3.5重量%までとする。
【0021】また、SiO2 およびMgOにはアルミナ
粒子同士を強固に結合させる作用を有しており、さらに
SiO2 にはアルミナ粒子の成長を抑制する作用があ
る。その為、SiO2 の含有率が3.0重量%未満であ
ると、含有量が少な過ぎるためにアルミナ粒子同士を強
固に結合することができず、また、アルミナ粒子の成長
を充分に抑制することができないため、焼結体の硬度を
高めることができず、逆にSiO2 の含有率が5.0重
量%より多いと、アルミナの含有率が低下するために、
やはり硬度を高めることができない。また、MgOの含
有率が1.0重量%未満であるとアルミナ粒子同士の結
合が弱く、逆にMgOの含有率が1.5重量%より大き
いと、アルミナの含有率が低下する。
【0022】なお、本発明のアルミナ焼結体は、上記3
種類の添加剤以外に他の添加剤、あるいは不純物を含ん
でいてもよいが、合計で1.0重量%以下の範囲で含有
していることが好ましい。
【0023】ところで、本発明のアルミナ焼結体を焼成
するには、1400〜1500℃の温度範囲で焼成を行
う。
【0024】これは、焼成温度が1500℃より高い
と、アルミナ粒子の成長を促進してしまうばかりか、添
加剤として添加しているB2 3 が蒸発してしまうため
にアルミナ焼結体の内部に多数の空孔が形成され、緻密
質体とすることができないことから硬度を高めることが
できないためで、逆に、焼成温度が1400℃未満で
は、充分なアルミナ粒子同士の焼結が得られず、やはり
緻密質体とすることができないからである。
【0025】また、本発明のアルミナ焼結体は、焼結体
のアルミナ平均結晶粒子径が2〜5μm、好ましくは2
〜3μmの範囲にあり、且つロックウェル硬度が89k
g/mm2 以上でなければならなず、いずれか一方でも
範囲外であると本発明が望む耐摩耗性を得ることができ
ない。
【0026】
【実施例】以下、本発明実施例を具体的に説明する。
【0027】例えば、主原料として純度99.9%で、
平均粒子径0.6μm、比表面積7m2 /gの易焼結性
アルミナ粉末に、焼結助剤としてSiO2 を3.0〜
5.0重量%、及びMgOを1.0〜1.5重量%の範
囲で添加するとともに、粒子成長抑制剤としてB2 3
を0.5〜3.5重量%の範囲で添加し、さらに成形の
ための有機バインダーを添加して、ボールミル、アトラ
クションミル、ピンミル、振動ミル等により混練し、ス
プレードライヤーなどにより造粒して2次原料の顆粒を
製作した。次に、この2次原料を800〜1200kg
/cm2 のプレス圧で成形したあと、バッチ炉、電気
炉、トンネル炉等の焼成炉にて焼成温度1400〜15
00℃の酸化雰囲気中で焼成した。
【0028】以上の条件により焼成したアルミナ焼結体
は、見掛け比重3.7以上で、ロックウェル硬度89k
g/mm2 以上と高い硬度を備えるとともに、曲げ強度
についても40〜50kg/mm2 と高強度を備えてい
た。
【0029】〔実験例1〕ここで、本発明実施例に係る
アルミナ焼結体と、比較例として仮焼きしていない従来
のアルミナ粉末に、添加剤としてSiO2 、MgO、B
2 3 、CaOを添加し、各添加剤の添加量を変化させ
たアルミナ焼結体を試作して、焼結体中のアルミナ平均
結晶粒子径、ロックウェル硬度、及び曲げ強度について
測定した。なお、比較例のアルミナ焼結体は、主原料に
平均粒子径が2.5〜4.0μmで、且つ比表面積が
1.0〜2.0m2 /gの範囲にある仮焼きしていない
アルミナ粉末を用い、このアルミナ粉末に上記添加剤を
それぞれ添加し、さらに有機バインダーとともに混練乾
燥して顆粒を製作し、この顆粒を800〜1200kg
/cm2 程度のプレス圧で成形したあと、酸化雰囲気中
にて焼成したものである。
【0030】それぞれの測定結果については、表1に示
す通りである。
【0031】
【表1】
【0032】表1より判るように、試料8のアルミナ焼
結体は、アルミナ含有率が99%と高いことから、焼成
温度が1680℃と非常に高い。しかも、出発原料は易
焼結性アルミナ粉末でないため、焼結体中のアルミナ平
均結晶粒子径は20μmと非常に大きく、ロックウェル
硬度も89kg/mm2 未満であった。また、曲げ強度
についても、アルミナ平均結晶粒子径が非常に大きいこ
とから30kg/cm 2 と小さいものであった。
【0033】また、試料5及び試料6のアルミナ焼結体
は、共にB2 3 の含有率が0.5重量%未満であるた
め、焼成温度は1500℃以上であった。しかも、B2
3の含有率が0.5重量%未満で有るため、アルミナ
粒子成長の抑制作用が不充分であり、また、出発原料が
易焼結性アルミナ粉末でないため、焼結体中のアルミナ
平均結晶粒子径を5μm以下とすることができず、ロッ
クウェル硬度も89kg/mm2 未満であった。
【0034】なお、試料6のアルミナ焼結体はB2 3
の含有率は0%であるが、試料5のアルミナ焼結体と比
べ差ほど違いが見られないことから、B2 3 が0.5
重量%未満ではB2 3 の持つ作用が充分得られていな
いことが判る。
【0035】さらに、試料7のアルミナ焼結体では、添
加剤であるB2 3 の含有率が0.5〜3.5重量%の
範囲内にあるため、1500℃以下の温度で焼成するこ
とができた。しかも、B2 3 によるアルミナ粒子成長
の抑制作用が充分得られているため、焼結体のアルミナ
平均結晶粒子径は5μm程度と均一なものとなってい
た。しかし、出発原料が易焼結性アルミナ粉末でないた
め、ロックウェル硬度は89kg/mm2 未満であっ
た。
【0036】これに対して、試料1〜4の本発明に係る
アルミナ焼結体は、添加剤であるSiO2 が3.0〜
5.0重量%、MgOが1.0〜1.5重量%、B2
3 が0.5〜3.5重量%とそれぞれ本発明の範囲内に
あり、出発原料に易焼結性アルミナ粉末を用いているた
め、焼成温度が1420℃と低温焼成が可能であった。
また、焼結体のアルミナ平均結晶粒子径は2〜3μmと
微小径で且つ均一なものとなっており、ロックウェル硬
度も89kg/mm2 以上を有していた。しかも、曲げ
強度が40〜50kg/cm2 とアルミナ焼結体として
は高い強度が得られた。
【0037】〔実験例2〕次に、本発明実施例に係るア
ルミナ焼結体と、比較例のアルミナ焼結体を用いて乾式
及び湿式状態における耐摩耗試験を行った。
【0038】まず、乾式状態における耐摩耗試験は、多
数のビーズをブラストノズルから噴射してテストピース
に一定時間衝突させた時の摩耗量を測定するサンドブラ
スト法によって測定を行った。
【0039】この実験に使用したビーズは、平均結晶粒
子径710μmのガラスビーズで、テストピースから5
0mm離して配置したブラストノズルより上記ガラスビ
ーズを5kg/cm2 の噴射圧にてテストピースに噴射
・衝突させ、2分おきにその時の摩耗量を測定し、この
作業を8分間行った。ただし、ここで摩耗量とは単位面
積当たりの摩耗量のことであり、その算出方法は下式に
示す通りである。
【0040】単位面積当たりの摩耗量=(減少重量(g)
/比重(g/cm3) )/噴射面積(cm2) ただし、噴射面積は15cm2 である。
【0041】この実験では、噴射角度をテストピースに
対して45°と90°にそれぞれ取って行い、その評価
基準は、噴射角度45°における試験では8分後の摩耗
量が7×10-4cm以下のものを優れたものとし、噴射
角度90°における試験では8分後の摩耗量が5×10
-4cm以下のものを優れたものと判断した。
【0042】なお、本発明実施例として表1の試料1に
かかるアルミナ焼結体をテストピースに使用し、比較例
として表1の試料5〜8にかかるアルミナ焼結体をテス
トピースに使用した。
【0043】それぞれの結果は表2、3及び図1
(a),(b)に示す通りである。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】図1(a),(b)より判るように、試料
8のアルミナ焼結体は、焼結体のアルミナ平均結晶粒子
径が20μmと非常に大きく、また、ロックウェル硬度
も89kg/mm2 未満であるため、短時間で摩耗して
しまった。
【0047】また、試料5及び試料6のアルミナ焼結体
は、焼結体中のアルミナ平均結晶粒子径が5〜10μm
と試料8のアルミナ焼結体と比べ小さいことから、耐摩
耗性が向上しているものの、ロックウェル硬度が89k
g/mm2 未満であるため、各噴射角度における耐摩耗
性を満足しなかった。
【0048】さらに、試料7のアルミナ焼結体は、焼結
体のアルミナ平均結晶粒子径が5μm程度と均一で且つ
微小径を有しているものの、ロックウェル硬度が89k
g/mm2 未満であるためにやはり8分後の摩耗量はそ
れぞれの基準値を満足しなかった。
【0049】これに対し、試料1の本発明に係るアルミ
ナ焼結体は、焼結体のアルミナ平均結晶粒子径が5μm
以下で、且つロックウェル硬度が89kg/mm2 以上
を有しているため、8分後の摩耗量はそれぞれの基準値
を満足した。
【0050】なお、この実験では噴射角度を45°と9
0°についてそれぞれ試験を行ったが本発明に係るアル
ミナ焼結体は共に、高い耐摩耗性を有していた。この結
果、例えば、あらゆる方向から破砕粒子が衝突する粉砕
機用部材や内張り材などに最適に使用することができ
る。
【0051】〔実験例3〕次に、湿式状態における耐摩
耗試験では、攪拌羽根の表面に表1のうち試料1,5,
7のアルミナ焼結体をそれぞれ張り付け、スラリー液を
8時間攪拌した時の各試料の摩耗率を測定した。
【0052】スラリー液には、平均結晶粒子径710μ
mのアルミナ砥石を33重量%含んだものを用い、2時
間ごとに各試料の重量を測定し、摩耗による重量の減少
率を求め、この減少率を摩耗率として測定した。
【0053】なお、評価基準として、8時間後の攪拌に
おいて摩耗率が3%未満のものを優れているとした。
【0054】それぞれの結果は表4に示す通りである。
【0055】
【表4】
【0056】表4より判るように、比較例である試料5
のアルミナ焼結体は、焼結体のアルミナ平均結晶粒子径
が5〜10μmとばらつきがあり、しかも、ロックウェ
ル硬度が89kg/mm2 未満であるため、8時間後の
摩耗率が7%と基準値から大きく掛け離れた結果であっ
た。
【0057】また、比較例である試料7のアルミナ焼結
体は、焼結体のアルミナ平均結晶粒子径が5μm程度と
均一で且つ微小径を有しているものの、ロックウェル硬
度が89kg/mm2 未満であるために8時間後の摩耗
率は4%と基準値を満足していなかった。
【0058】これに対して、本発明である試料1のアル
ミナ焼結体は、焼結体のアルミナ平均結晶粒子径が2〜
3μm程度と5μm以下のアルミナ粒子径からなり、ロ
ックウェル硬度も89kg/mm2 以上であるため、8
時間後の摩耗率は2.8%と基準値を満足した。
【0059】この結果より、湿式状態においても本発明
のアルミナ焼結体は優れた耐摩耗性を有しており、例え
ばミルの内張り材や、ポンプなどスラリーへの耐摩耗性
が要求される用途にも最適に使用することができる。
【0060】以上のように、本発明に係るアルミナ焼結
体は、乾式・湿式状態に関係なく優れた耐摩耗性を有し
ているため、例えば、シューやダクトなどの内張り材、
粉砕機用部材、軸受部材、メカニカルシール、ガイド
軸、糸道、ワイヤガイド、工作機械の案内面、定盤、治
工具、紡糸ノズル、ブラストノズル、射出成形用ノズル
などのノズル、抄紙機用の支持部材、ポンプ、工業用あ
るいは民生用の刃物、カッター、キャプスタンなどの耐
摩耗性を要する様々な用途に最適に用いることができ
る。
【0061】
【発明の効果】本発明に係るアルミナ焼結体は、主原料
に易焼結性アルミナ粉末を用い、添加剤としてSi
2 、MgO、B2 3 の添加剤をそれぞれ所定の範囲
で添加し、焼成温度1400〜1500℃の酸化雰囲気
中で焼成したことにより、比較的低純度のアルミナ焼結
体にもかかわらず、高硬度を有し耐摩耗性に優れたアル
ミナ焼結体とすることができ、電子部品材料や産機部品
材料、あるいは構造材料などの各種工業材料として好適
に用いることができる。
【0062】しかも、本発明に係るアルミナ焼結体は、
低温で焼成することができるため、炉の寿命低下を防止
することができるとともに、消費電力を低減することが
でき、非常に経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び比較例のアルミナ焼結体における乾
式状態での耐摩耗性試験結果を示すグラクであり、
(a)は噴射角度が45°のグラクであり、(b)は噴
射角度が90°のグラクである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Al2 3 を90〜95重量%と、SiO
    2 、MgO、B2 3の添加剤を以下の範囲でそれぞれ
    含有してなり、焼結体中のアルミナ平均結晶粒子径が2
    〜5μmで、且つロックウェル硬度が89kg/mm2
    以上であることを特徴とする耐摩耗性アルミナ焼結体。 SiO2 :3.0〜5.0重量% MgO :1.0〜1.5重量% B2 3 :0.5〜3.5重量%
  2. 【請求項2】平均粒子径1μm以下で、且つ比表面積5
    2 /g以上の易焼結性アルミナ粉末90〜95重量%
    に対し、SiO2 、MgO、B2 3 の添加剤を以下の
    範囲で添加し、さらに成形用バインダーとともに粉砕・
    造粒を行ったあと成形し、焼成温度1400〜1500
    ℃の酸化雰囲気中で焼成することを特徴とする耐摩耗性
    アルミナ焼結体の製造方法。 SiO2 :3.0〜5.0重量% MgO :1.0〜1.5重量% B2 3 :0.5〜3.5重量%
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Cited By (9)

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